福島原発事故の経過と付近住民の対応まとめ(1)2011/03/17 15:23

今回の原発事故は120%人災です。
呆れ返るのは、バックアップ電源を海側に置いていたということ。まったく馬鹿げています。
そもそも、陸側のエリア(東北電力)は停電になっていないのですから、東北電力からの電源供給ルートを複数確保しておくことで電源喪失は起きなかったはずです。

それ以上に許し難いのは、電源が全部流され、冷却手段を完全に失った時点で、そのことを発表しなかったということです。海側にあった補助電源やポンプが全部流されてしまったということを日本のメディアが伝え始めたのは16日くらいから。それまで保安院の発表では「バックアップ電源が作動しない」「理由は分からない」などとすっとぼけたことを言っていましたが、作動しないのではなく「流されてなくなってしまった」のです。なくなったものが作動するはずはないでしょう。

首相官邸WEBサイトで出している情報を見ると、11日15時42分に、東電は「全交流電源喪失のため、原子力災害対策特別措置法第10条の規定に基づき、1,2,3号機について特定事象発生の通報」を行っています。これがどういう事態なのか、分かる人は分かるわけで、その時点で公表してくれれば、付近に住んでいる我々も、覚悟を決め、避難準備に入っていました。

ところがこの重大なことを最初に知らせたのは、政府でも保安院でも東電でも日本のメディアでもなく、グーグルアースだったのです。
12日になって、ネット上には「海側にあったポンプや非常用電源設備が全部流されている! 政府がいくら隠しても、衛星写真が事実を突きつけている」といった報告が流れ始めました。
私はこれを、ネットが不通になる直前に読みました。
そして、本当か? まさか補助電源が海側にあるわけがないだろう、と、信じようとしたのですが、どんどん不安になっていきました。
大変なことを隠している。本当のことを言っていない。……と思わざるをえなかったところに、いきなり、最初の爆発です。
これではパニックになるなというのが無理です。

情報をすぐに出してくれていたら。
「冷却手段がすべて失われたため、今は大丈夫ですが、これから使用済み燃料も含めて、核燃料がどんどん熱くなり、放射能漏れが起きてくることが予想されます。そうなってもすぐにどうこうはなりません。避難が必要になることが想定されますので、落ち着いて避難の準備に入ってください。今後は風向き情報に注意して、風下に位置する場所では不用意に外に出ないでください。情報はすみやかに、逐一発信しますので、くれぐれも流言飛語に惑わされるようなことなく、落ち着いて行動してください」
……たとえばこんな風に第一声を出してくれたら、どれだけ気持ちが落ち着いたことでしょう。

私が住んでいた川内村では、地震直後に携帯電話網がシャットアウトされ、12日午前中からネットが不通になり、12日午後からは固定電話も使えなくなりました。外から入ってくる情報はテレビだけ(私の家ではラジオの電波はほとんど入らない)。その唯一の情報入手手段となったテレビは、どうやら事実を即座に流していない。あるいは情報を流すことを躊躇っている。
最初にそう感じたのは、地上波で原発関連の報道になると、画面が中央局から地方局に切り替わって、延々と死亡が確認された人の名前を読み上げたり、避難所の風景を映したりし始めたことです。これは意図的に原発情報を地元の視聴者に伝えまいとしていたのか、それとも単に地元局が「そのほうが親切」と判断してのことなのか、今も分かりませんが、仕方なく、そのたびに系列のBS民放に切り替えて中央局が出している原発情報を見る必要がありました。情報はNHKが早いわけではなく、民放のほうが1時間以上早いこともありました。

時系列で、主な事象が起こった日時と報道の様子、公式発表の様子をまとめてみます。

11日 15.24 第一原発ですべての交流電源喪失。1~3号機に関して10条通報
11日 16.36 1、2号機のECCS(非常用炉心冷却装置)注水不能を報告
11日 16.45 2号機についての第15条通報

※11日午後、津波が去った後、電源関連、注水ポンプ関連の施設が失われたと分かった時点で、これから起きることは完全に予想できていた。政府や保安院、周辺自治体にそのことを全部隠さず、いち早く告げるべきだった。それなのに、付近住民への通報はなし。
津波で電源や注水ポンプ設備、タンクが完全喪失したのだから、冷やす手段はないのに、法令に定められた「○○になったので通報」ということしかしていない。これから起きることを明確に示さないで、事後報告しているだけ。バカじゃないのか! 本当に

11日 20.50 福島県が発電所半径2kmの住民に避難指示
11日 21.23 菅首相、福島県知事、大熊町長、双葉町長、富岡町長、浪江町長に対して、住民への避難指示
※内容は「1号機から半径3km圏内の住民は避難。半径10km圏内の住民は屋内待避。現地の対策本部長から新たな指示が出された場合は、その指示に従うことを区域内居住者に周知されたい」というもの。

12日 00.30 対象住民の避難措置完了。大熊町2805人、双葉町3057人
12日 時間不明 グーグルアースで津波後の原発上空からの写真が公開される

※ネット上で「電源が動かないのではなく、そもそも流出して存在していない!」ことがツイッターなどのSNS経由で広まり始める。海外メディアはすでにこの時点で事態を把握していたのに、日本国民だけが知らされていない!

12日 05.44 菅首相から福島県知事、大熊町長、双葉町長、富岡町長、浪江町長に対して避難指示
※内容は「半径10kmの住民は避難」。該当住民は5万1207人

12日 15.36頃 1号機で爆発。建屋上部が吹き飛ぶ

※定点観測カメラがこの映像をとらえていたのに、テレビではその後1時間半、この映像を出さなかった!
12日 17時頃 地上波テレビで、最初の映像が流れる

※その映像に対する最初の解説は「建屋の外で爆発があった模様」といったもの。これを見て、解説者は「建屋の外ですか? 建屋が爆発していないですか?」「建屋が1つなくなっていませんか?」「映像を巻き戻してください。爆発の瞬間前の映像を見せてください」「ここにあったのが1号機ですよね。今はその1号機が見えていませんよね。これは1号機の建屋が吹き飛んだということではないですか」と、相当慌てた口調で解説を始める。その後「格納容器が爆発して建屋が吹き飛んだのか、それとも格納容器と建屋の間で爆発して、吹き飛んだのは建屋だけなのか、それが大変重要な問題です」という意味のことを発言。この時点でまだ真相が分からず。分かったのは、爆発はすでに1時間半も前に起きていたということ。
私は急遽、避難準備に入りました。それまではじっとしているつもりだったのです。地震による建物被害がなく、電気が来ていて、水も食料も心配ないのですから、混乱している外に出て行くほうが危険だから家にいる、という判断です。
しかし、情報が次々に遮断されていき、最後に残ったテレビの報道からは、実際に何が起きているのか伝わってきません。しかも、重要な情報が隠されていることは明らかです。もし、発表されているよりはるかに多い量の放射能が流れ出しているとしたら……。風が海に向かっている今が移動のチャンス。海側から吹き始めたら、逃げようがない。もはや一刻の猶予もないと、焦りました。

12日 16.17 放射線量が500μSv/h(マイクロシーベルト/時)を超えたことで、原子力災害対策特別措置法15条通報
12日 18時頃 枝野官房長官の会見が始まるが、爆発についての具体的な言及がまったくない

テレビを見ていた私は、この時点で政府がまったく対応能力を失っていることを知り、愕然としました。同時にすぐに家を離れ、風上方向へ避難を始めました。

12日 18.25 首相から、県知事、大熊、双葉、富岡、浪江町長に避難指示
※内容は「半径20kmは避難」。該当住民合計17万7503人。

12日 20.20 1号機に消火系ラインを通じて海水の注水を開始

※ここに来てようやく東電は原子炉廃炉を決めたようです。

12日 20.41 官房長官が「原子炉格納容器は破損していないので安心するように」と発言

※爆発からすでに5時間!!も経っています。


13日 05.10 3号機にECCS注水不能状態で15条通報

※それまで(電気がなくても使える)高圧注入系を使って注水をしていたが、内圧に負けて不能になり、ECCSを起動させようとしたが起動しなかった⇒ECCSが起動しなかったので15条通報に該当するため通報した、という説明。バックアップ電源が「ない」のだから、ECCSで注水できないのはあたりまえで、15条通報するなら11日の時点でしなければならないはず。法令に書いてあることだけを「報告しました」と言っているだけで、馬鹿さ加減もここまでくると怖ろしすぎる!

13日 05.58 3号機に15条による特定事象発生の通報
13日 08.56 放射線量が500マイクロシーベルト/hを超えたため15条通報
13日 09.20 3号機にベント(換気)開放処置

※冷却水が回っていない、注水もできないのだから、内圧が上がっていくことは明々白々だったのに、ここに至るまで開放しなかったのは最大の判断ミスだと、海外の専門家などは早い時点で指摘している。多少放射能が漏れたところで炉が破壊されないこと、一刻も早く水を入れて冷やすことが必要だったのに、放射線量増加を恐れて判断を遅らせたとしか思えない。最悪の事態を避けるため、多少の漏れは諦めてさっさと開放すべきだった

13日 13.12 3号機に対して海水注入開始

14日 01.00 1号機、3号機ともに、汲み上げ箇所の海水がなくなって注入不能に
14日 06.10 3号機のドライウェル(蒸気を溜めておく容器)圧力が設計上の最高使用耐圧427キロパスカルを超える460キロパスカルに
14日 07.44 3号機もベント開放で内圧を下げる作業を行う予定と発表
14日 11.01 3号機で爆発。建屋が吹き飛ぶ

※こうなることは分かっていたのだから、もっと早く穴を開けるとかして作業をしやすくすべきだったはず。この爆発で東電社員、作業員、自衛隊員ら11人が負傷

14日 11.01 2号機の建屋パネルを開放して水素を逃がす対応
14日 11.15 東電から3号機の爆発は1号機と同じ水素爆発であり、格納容器、圧力容器は無事との報告
14日 18.06 2号機の逃がし安全弁開放により、水位がマイナス1500からマイナス1100mmに。40cmほど回復
14日 18.22 2号機の原子炉水位がマイナス3700mmに達して燃料棒が全露出

※こうなるととっくに炉心溶融が起こっていて、溶けた燃料棒の一部が原子炉下部に溜まってきているはず。
こうした事態が起きていた14日、富岡町からの避難民を収容している川内村には、原発関係の作業員から、冷却ポンプが11日の地震による津波ですべて流されたことが非公式に(口コミで)伝わりました。
川内村商工会長・村議会議員の井出茂氏は、後日、mixiにこう書いています。

「大きな流れからいうと、冷却できないということは、メルトダウンを避けることが出来ない状況にあるということだ。国、県、東電は大局的な見地から予測できる被害を発表して、避難の対策と事故を最小限に抑える対策を講じるべきである。結果的に予想を下回る結果になれば幸いだということである」

この間、川内村には国からも県からもなんの指示もなかったとのこと。
同じことは南相馬市市長もテレビの取材に答えて言っていました。

15日 03.00 2号機でドライウェル圧力が設計圧力を超える。減圧操作、注水操作がうまくいかず、減圧できない状況に
15日 06.14 4号機で爆発音がして壁に穴が空く。3号機からは発煙。2号機は圧力抑制プール付近で爆発音がして内圧が低下。明らかな異常発生
15日 06.42 2号機の圧力抑制プールに一部欠損がある模様だと官房長官が会見で発表
15日 06.56 4号機の建屋が変形・破壊され始める
15日 08.25 2号機建屋から白煙
15日 09.38 4号機で火災発生を確認。消防に通報
15日 10.01 4号機の火災について、経産省から米軍に応援依頼

※現場はもはやお手上げ状態で、これを見ていた地元消防団員らから、村に「現場は想像を絶する状況で、特に4号機が深刻だ」という情報が伝わる。
15日 11.00 菅首相が「20km~30km圏内の住民は屋内待避」の指示
15日 14時頃 対象住民の避難措置完了

※周辺自治体は、現場の壮絶な状況をリアルに口伝えで知らされながらも、県からも国からもなんの直接指示もないまま「30kmまでは屋内待避」という指示をテレビを通じて知らされるだけ。
この「20~30km圏は屋内待避」という指示は最悪でした。
すでに空は30km圏内飛行禁止になっているので、村に空から救援物資は届かないということです。もちろん、急病人を運ぶ救急ヘリも来ません。
陸路は確保されていますから、ガソリンさえあれば、より遠くへ移動できます。しかし、それも時間が経てばガソリンが尽きてきて、移動手段さえなくなります。すでに村にはガソリン補給が経たれていて、村内にある車のガソリンタンクに残っているだけになっていました。過疎の村では徒歩の移動はできません(川内村の面積は川崎市の約1.5倍。家はたったの千戸)。「待機」が続けば続くほど、ガソリンは減っていき、いざ避難命令が出ても、避難することができなくなるのです。
それなのに「避難しろ」ではなく「屋内待避」つまり「動くな」と命じたのです。


この件を、前出井出氏はこう書いています。

「原発事故があってから、遅まきながら30キロ圏を屋内退避命令を総理が発表。
二号機、四号機が危険から脱したとの報道にもかかわらず、30キロで屋内退避は解せない話である。11時過ぎの報道では、燃料棒の冷却に失敗したとあり、急遽富岡町・川内村合同の災害対策会議が開かれ、この時点で川内村長は村民の強制避難を決定したのだが、現地対応の東電職員と経済産業省の役人、そして原子力保安院ナンバー2の「20キロ圏外であれば、絶対安全です」という言葉によって、強制避難から自主避難に変更した。
15日川内村長遠藤雄幸は防災無線を通して、以下のようなメッセージを発表した。
『川内村長の遠藤雄幸です。本日災害対策本部は、大変重大な決定を行いました。この度の原子力発電所の事故が好転のきざしが見えるまで、避難できる皆さんは自主的に避難してください。
避難されない皆さんは、屋内退避を続けてください。また、自主避難をされる皆さんは、食糧、寝具、現金をご持参ください。なお、村の機能はこれまで同様に役場となっております。
皆さんお元気で、また川内村にお戻りになった時は川内村の再生のために一緒に戦っていきましょう。
お元気で!!』

翌日、16日に合同災害対策本部は郡山のビッグパレットを避難場所に決め強制避難を開始した。
14日の遠藤村長の決断は実に素晴らしい判断でした。こんな人物を県知事に推したいものです」


★まだ書きかけですが、とりあえずここまでアップします。
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首相官邸から今すぐ指示するべきことはこれだ2011/03/17 18:50

現場からの報告をとりあえず終えたということにして、今、何をするべきなのかについて書きます。

1)高速道路通行制限の緩和
現在、東北道、常磐道、磐越道はガラガラだと、民間ボランティアチームが報告しています。
まず、現在、許可証なしで車輌が通行できなくなっている高速道路に、物資運搬車、一般の運送トラック、ボランティアで現地に向かう一般車両などは簡単なチェックのみで通れるようにすること。
運送会社が放射能汚染を恐れて現地に近づかないといった現象が起きているので、安全だと宣言すること。
高速道路のサービスエリアにあるガソリンスタンドを災害対策本部管理下に置き、補給作業を行う人員を派遣すること。

2)リアルタイムで正確な風向きと各地の放射線測定量を知らせる
核爆発の危険がない以上(そう信じたい)、放射能漏れは相当ひどいけれど、ごく近い数キロ圏以外では自由に活動ができるということを周知させる。怖いのは放射線ではなく放射線を出す放射性物質を体内に取り込むことによる内部被曝。しかし、放射性物質の飛散は、風上には向かわないので、事故現場に近くても風上はかなり安全。
その安全エリア、危険エリアは、風向き、風速などで刻々と変わるので、その予想図を誰もが分かりやすい形で気象庁は全力を挙げて提供すべし。
これは「危険だ」というメッセージよりも「ここは安全だから動けますよ」という情報として活用させるために。

取り急ぎ、この2点は今すぐ実行する必要があります。
津波被災地では刻々と人が死んでいるのです。
原発に近い双葉町の病院では、数百人の入院患者を残したまま医療スタッフが全員消えてしまっているという、とんでもないことが報道されています。放射能は全然大丈夫なのに。なぜ? 物資が届かないから?
双葉町へは、陸路でいくらでも物資補給できるのに。なぜそんなことになるのですか!
三陸方面の病院でも、あちこちで入院患者が餓死!の危険にさらされているという報道があります。
「汚染は、平時に比べればひどい。でも、ごく近くでなければ、放射線の量は恐れる量ではない。放射性物質を体内に入れることは避けなければならないので、風下のときには注意を要するが、それ以外では命を賭けるようなことではなく、普通に作業できるレベルである」ということを周知させる。

一般人は徹底的に退去させ、移動できない人をケアする専門スタッフが動きやすくする。被災地人口が減ったほうが、活動はしやすいし、物資も有効に使えるのです。
「半径○○キロ」という指示は混乱をきたすだけで意味がない。市町村単位で指定すべき
「○○町、○○村……は、一般住民は極力退去して被災地活動を容易にさせる」といった指示に変える。

陸路が使えるのに、また届ける物資が用意されているのに、物資が届いていないというのはあまりにもひどすぎる。

また、津波から一週間が経過した今、完全に破壊された地区での瓦礫撤去作業よりも、孤立している避難所(公的なものだけでなく)、孤立被災者への救済、救援に全力を投入すべきでしょう。
首相官邸からはそうした指示が的確に出ているんでしょうか。

テレビメディアはヘリによる散水や放水車の放水シーンを劇的に流そうとしていますが、そんなものはどうでもいいんです。死にかけている被災者をいかに救えるかという報道に最重点を置いてください。
民間からの援助物資を集めるなどということではなく、企業や組織の援助がスムーズに届くよう、上から適確に指令が飛ぶこと。これが最重要。

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