20km圏内の放射線量データが隠されていた理由2011/04/23 14:39

20km圏内放射能汚染状況はなぜ公表されなかったか?

文科省のモニタリングカーによる原発周辺地域放射能測定値は、今まで20km圏内についてはデータが出ていませんでした。
これが突然発表されたのは、4月21日のことです。
内容は、
A.3月30日から4月2日にかけて計測された50箇所分
B.4月18日から19日にかけて計測された120箇所分
の2つで、Aについては調査後、20日も公表せず隠し持っていたことになります。
それを問い質したガジェット通信の記事によれば、文科省は「最初の調査は、測定ポイントが少なく、情報を面として捉えるには不十分だった。そのため、測定ポイントを増やした次の調査を待って一緒に公開した」と答えたとのことですが、3月15日の第1回調査ではたった3地点のデータでしたがすぐに公表しています。その後も、20km圏外のデータは随時即時公開しているのですから、まったく理由になっていません。
20km圏内を一律危険区域指定して立ち入りをさせないようにしたい福島県や国の意向を汲んだものと疑われても仕方がないでしょう。
あるいは、文科省のモニタリングカーチームは頑張って事実を外に出したいと思っていても、「上」から圧力がかかり、20km圏内は測定をさせなかったとも考えられます(むしろその可能性が高そうです)。

ちなみに、一部マスメディアに発表された20km圏内の「汚染状況」も極めて恣意的です。
数値の高いところだけを記入してあるのです。

発表された20km圏内の測定値マップ


文科省の発表データを見れば、20km圏内でも数値が低いところが多数あります。その一部を書き加えてみたのが以下の図です。

↑放射線量が低い場所も書き加えた図


110μSv/hの大熊町夫沢(西南西約3km)が強調的に記されていますが、同じ大熊町でも、野上(西約14km)は1.43μSv/hしかなく、非常にばらつきがあります。
南相馬市や浪江町の海岸線一帯が概して線量が低いことも分かります。自衛隊が大袈裟に防護服を身につけて遺体捜索している映像が流れていますが、1μSv/h以下は首都圏とそう変わりませんから、そんな必要はないのです。福島市や伊達市のほうがずっと数値は高いのですから、1μSv/h以下の場所で重装備しなければならないとすれば、福島市民はみんなあの格好をしなければいけなくなります。
汚染がひどかった飯舘村、葛尾村、浪江町津島周辺が30kmにさえ入っていないことは当初から分かっていました。分かっていたからこそ、文科省のモニタリングカーも測定の初回、まっ先に北西方向に走っていったのです。そして実際に高い線量を確認したのに、政府も県も、いちばん危険だった最初の1か月、これらの地区を放置しておき、今頃になって「計画的避難区域」などというとぼけたことを言っています。
緊急性や住民の健康被害を考えるなら、20km圏内を危険区域にして立ち入り禁止にすることよりも、飯舘村周辺の住民を一刻も早く避難させなければならなかったことは言うまでもありません。

本当に危険な地域にいた人たちに情報を伝えず放置し、ある程度安全が分かった今になって住民の一時帰宅さえ排除して苦痛を増やす。でたらめぶりもここまでくると戦慄を覚えます。

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