今こそ読んでおきたい「原発震災前の文章」2011/05/02 21:18

このゴールデンウィークが明けると、もうすぐ原発震災から2か月になります。
連休中、あまり遠出もしないで家で読書……という人も多いかと思いますので、ネット上で読めるいくつかの読み物をご紹介します。
すべて、過去において原発震災への警告を発していたり、原子力を国策として推進することの根本的な間違いについて指摘したものです。以下の各タイトルをクリックすると読めます。


●『原発事故──その時あなたはどうするか!?』(日本科学者会議福岡支部核問題研究委員会・編、1989年、合同出版)
 ……執筆・編纂したのは、森茂康九州大学名誉教授をはじめ、九州大学、九州工業大学、佐賀大学などの7人。
 20年以上昔に書かれたものですが、現在福島第一原発で起きている原発災害にそのままあてはまる内容です。今読むと、なぜこうした真摯な警告を生かせなかったのかと、改めて残念に思います。

//原子力発電所に事故が起きて放射能が漏れるような事態になったとき、国および地方自治体(知事や市町村長)には住民を被害から守る責任があります//
 ……という書き出しで始まるこの本は、「原発事故が起きたらどうすべきか」「原発事故とはどのようなものか」「放射線障害とはどのようなもので、どうすれば身を守れるか」「原発重大事故はどのようにして起こりうるか」「原発事故に対する法整備の提言」という内容を70ページ弱に収めてあり、非常に読みやすく、分かりやすい説明には感心させられるばかりです。
「あとがき」は、奇しくもこのように結ばれています。

//本書を作成する作業を進めている間にも、原発事故をめぐるさまざまなニュースが入ってきました。その中でも、福島原発の再循環ポンプの羽根の破損事故に際して警報が鳴っているのにそのまま運転を続けた、というニュースに、私たちは戦慄をおぼえると同時に、本書を作成する意義を重ねて確認することにもなりました。しかし、私たちは、本書が実際に使われるような原発事故がけっして起こらないことを願っています。//

●原発震災 ~破滅を避けるために (石橋克彦、『科学』(岩波書店) Vol.67, No.10 1997年10月号)
 …… 今年の流行語大賞候補にもなりそうな「原発震災」という言葉を、おそらく日本で初めて使い、警告を発した文章。筆者は神戸大学名誉教授(地震学、震災論)
 同じ石橋克彦氏の文章として、

●「原発に頼れない地震列島」(『都市問題』(東京市政調査会) Vol.99, No.8 2008年8月号) 

●迫り来る大地震活動期は未曾有の国難-技術的防災から国土政策・社会経済システムの根本的変革へ-
 ……第162回国会衆議院予算委員会公聴会(2005年2月23日)での公述の様子を収録

 も併せてどうぞ。

●原発がどんなものか知ってほしい (平井憲夫)
 ……「私は原発反対運動家ではありません。二○年間、原子力発電所の現場で働いていた者です。原発については賛成だとか、危険だとか、安全だとかいろんな論争がありますが、私は「原発とはこういうものですよ」と、ほとんどの人が知らない原発の中のお話をします。そして、最後まで読んでいただくと、原発がみなさんが思っていらっしゃるようなものではなく、毎日、被曝者を生み、大変な差別をつくっているものでもあることがよく分かると思います」
──と始まるこの文章は、一級プラント技能士の資格を持ち、実際に日本国中の原発建設現場で作業を指揮してきた人の「遺書」です。平井氏は1997年1月、癌で亡くなりました。

●終焉に向かう原子力と温暖化問題(京都大学原子炉実験所 小出 裕章、2010年1月)
 ……還暦を超えていてなお肩書きは「助教」(かつての呼称なら「助手」)。反原発を貫き、長いことメディアからも抹殺されていた「原子力の専門家」が福島原発事故が起きる前年に淡々と述べた、非常に読み応えのある文章。
CO2温暖化説の嘘についても、はっきりと告発しています。
//一番ひどい主張は、二酸化炭素の放出を減らすためには、化石燃料への依存をやめ、二酸化炭素を出さない原子力に切り替えなければいけないという宣伝です。今日の報告はそれが如何にでたらめかを述べるものですが、現在の二酸化炭素悪者説には、それだけでないたくさんの嘘があります。まず、地球温暖化の原因は多様であり、二酸化炭素だけが原因ではありません。そして本当に大切なことは、生命環境を守るためにはエネルギー浪費を減らすことこそ必要なのに、それがむしろ見えなくされてしまっています。//

「ウラン残土すら始末できなかった日本」という話も非常に参考になります。