新国立競技場の予算を1万円札で並べると… ― 2015/07/14 19:59
2520億円って1万円札並べるとどのくらい?
新国立競技場の建設予算がとりあえず2520億円ということになったらしい。
新国立競技場構想の事業主体となる日本スポーツ振興センター(JSC)は7月7日、有識者会議(委員長・佐藤禎一元文部事務次官)を開き、総工費(実施設計段階の目標工事費)が2520億円に膨らむことを了承……。
(Nikkei BP)
これは「目標額」であり、実際に今の案を通そうとすると3000億円突破は間違いないらしいし、その後の維持費も50年間で1000億円はかかるという。
で、ここでは「有識者会議」なるものが認めたという2520億円のみを考えてみる。
最近では日本国の借金が1000兆円超えなどというニュースもあって、「億円」という単位に鈍感になってしまっている日本国民だが、どうすればこの金額をイメージできるだろうか。
例えば、2520億円分の1万円札を並べてみるとどのくらいの長さになるのか?
1万円札の長さは16cm。0.16m。0.00016km。2520億を1万で割ると2520万。これに0.00016kmをかけると4032だから、約4000kmということになる。
2520億円分の1万円札を並べると約4000kmの長さになる。
では、4000kmというのはどのくらいの長さなのか?
北海道最北端の駅は稚内駅。九州のいちばん端の駅は枕崎駅。これを結ぶルートはいろいろあるが、最短時間で走るルートは2700km~2800kmくらい。走り続けて約36時間と出た。(Googleマップで調べた↑)
鉄道ルートだと約3100km、約27時間(新幹線使いまくりで)になるらしい(JORDANの乗換案内で調べた↓)
つまり、道路でも鉄道でも、そこにびっしり1万円札を並べていっても、稚内から枕崎まででは足りない。そういう金額が2520億円なのだね。
もう少しイメージを膨らませてみよう。
道路に1万円札をびっしり並べるのは人手がいるから、日本中の人を動員して、このルートの道路沿いに1mおきに並んでもらうとする。
2800kmのルートだとして、2800kmは280万mだから、280万人動員することになる。
この280万人がポケットから財布を出して1万円札を道の上に置いたとしても280億円にしかならない。
10枚、つまり10万円ずつ財布から出して自分の前に並べると(横に並べると1.6mになって隣の人の領域に食い込むから、縦に並べる必要がある)、1mに1万円札が10枚ずつ並んだものが稚内から枕崎まで続くことになる。これで2800億円。その金額で、ようやく神宮にあの自転車のヘルメットみたいな建物が1つ建つ、ということになる。
新国立競技場という建物1つを建てるのに、1万円札を日本列島端から端まで並べてもまったく足りない金額を注ぎ込むというのだ。
いや、実際には技術的にも建てられるのかどうか怪しいらしい。アーチ型の屋根レールをつけるには杭を斜めに打ち込まなければならないから地下鉄大江戸線にぶつかるとか、そんな話が飛び交っている。
……これって、落語ですか?
とても正気とは思えない。
(イメージしやすいように、1mに1万円札を10枚並べた図を写真に撮ろうかと思ったが、今、我が家には1万円札が10枚もないので断念した)
都倉俊一が「コンサートをやるためには絶対に屋根が必要だ」とか言ったそうだが、競技場で音楽鑑賞するという発想がそもそも貧しい。まともに音楽鑑賞などできるはずがない。
東京ドームができる前の後楽園球場にサイモン&ガーファンクルのコンサートを聴きに行ったことがあった。遠くのステージでドラマーがシンバルを叩くのがかすかに見えたかと思うと、1秒くらい遅れてシンバルの音が汚く届く。エコー音が球場内を駆け巡り、音楽を楽しむどころではなかった。こんなところに大枚はたいて来てしまった自分を呪った。
あれ以来、大きな場所でやるコンサートには行かないことにしている。
イベントの意義やクオリティは別にしても、屋根をつけようがつけまいが、レンタル料が馬鹿高い箱を借りてやれるだけの巨大イベントがこれから先どれだけあると思っているのだろうか。
原発爆発で支払った賠償金が現在までで5兆円超
で、「そんな金があるなら3.11の被災者救済に使え」「東北復興はまだ全然進んでいない」といった声もよく聞く。僕にとっての3.11は原発爆発なので、久々にそっち関連に目を向けてみる。
原発爆発させて世界中に大量の放射性物質をばらまいた東京電力は黒字決算で、社員にボーナスも出ている。
去年(2014年)3月の時点で、原発が爆発したことによる損害額総額は、11兆1600億円余りというニュースをNHKでやっていた。
内訳は、▽除染費用が2兆5000億円、▽除染で出た廃棄物を貯蔵する中間貯蔵施設の整備費用が1兆1000億円、▽東京電力が行う廃炉と汚染水対策の費用が2兆円、さらに、▽賠償についても、去年12月に新たな指針がまとまり、それに基づく東京電力の見通しでは5兆円を超える……のだそうだ。
このうちの賠償金はすでに支払われている金額が分かっているので、それを見てみたい。
今年7月10日時点で、東電がこれまでに被災者に支払った賠償金総額は5兆円を超えている。
これは予測とかではなく、すでに支払われた金額であり、東電自身が発表しているものだ。
では、5兆円分の1万円札を並べると……。
2520億円分の1万円札を並べると約4000kmだったから、この20倍で約8万km。
8万kmというのはどのくらいかというと、地球1周が約4万キロなので、地球2周分の長さということになる。
1万円札を赤道に沿って並べて2周させただけの金額を、東電は現時点で支払ったのだ。
もちろんこれでおしまいではない。これからもずっと続く。
間違えないでほしいのは、これは「すでに支払われた賠償金」の額であって、1F構内の後始末作業やら除染だのなんだので今後気が遠くなるほどの時間、使い続けなければならない金額は一切含んでいない。
再稼働? 核燃サイクル? どの口が言うのですか?
というか、こういう状況で新国立競技場の屋根がどうのこうのとか言っていること自体、頭おかしいでしょ。
国の借金1000兆円は月まで20往復以上の長さに
最後に、日本国の借金1000兆円……。⇒ここに「日本の借金時計」というのがある。「借入金」や「短期国債」などを含まず、単純に「普通国債の発行残高」だけをとってもすでに1000兆円を超えていて、刻々と増え続けている。
ざっくりと1000兆円だとすると、すでに支払われた原発賠償金5兆円の200倍。1万円札を並べると8万kmの200倍だから1600万キロ。地球を400周。
月までの距離が平均で38万4400キロなので、その約42倍。月まで20往復してもまだ余る。
人間、あまりにも途方もない数字になると、イメージができなくなって思考停止するのだね。