参院選比例区で個人名を書く人の比率2016/07/06 11:00

選挙権を得てから40年以上になるが、あらゆる選挙で棄権したことは一度もない。
昨日、雨の中、期日前投票をしてきた。うちは栃木選挙区だが、田舎町なので、投票所には誰もいなかった。

今回改選を迎える現役議員は、6年前、民主党が圧勝したときの人たちだ。野党議員は大勢が職を失うことになり、安倍政権の衆参完全制覇、完全独裁体制が完成する。
実質の独裁者が、どんなことでもできるという恐怖時代が始まる。いつにも増して憂鬱な選挙だ。

比例区の候補者から誰を選ぶかという葛藤


今回は選挙区は何も迷う必要がないが、比例区は最後まで迷った。
反改憲勢力としていちばん揺るぎない共産党の候補者を選ぼうと思ってネットで調べまくったが、多くの共産党候補者は自身のWEBサイトさえ持っていない。ツイッターやフェイスブックのアカウントを見ると、前回の選挙(3年前)の直前にアカウントを開設し、選挙終了後(落選後)はまったく書き込みをしていないような人が何人もいる。
そんな中でも、個人で精力的にネットで情報発信をしている候補者(元衆議院議員)を見つけ、経歴や活動内容もしっかりしていそうなので、その人の名前を書こうと思っていたが、その後、他の野党でもっと活躍しそうな候補者がいるのではないかと、さらに探したところ、民進党の現役議員にひとり、この人は残っていたほうがいいなと思える候補者がいた。それで、投票所に行く直前までその人の名前を書くつもりでいたのだが、土壇場でまた思い直した。
ひとりめの共産党の候補者といいふたりめの民進党の現職といい、今回はほぼ確実に落選するだろう。そうなると、ぼくの一票は政党票として機能することになる。その場合、やはり共産党への一票として機能してほしいと思い直した。
拙著『日本のルールは間違いだらけ』(講談社現代新書)で、当選する可能性がない候補を大量に立てて結果として自公政権をサポートしてしまう共産党の姿勢を批判した身としては、今回共産党が野党統一候補戦略に舵を切った決断に対してのエールとしてもそうすべきかなとも思った。
それでも悩んだが、最後は一種の人情票というか、今まで地元の河川環境を守るために動いたりしてきたらしい人を、遠方からでも応援したいという気持ちから、最初に目をつけた候補者に決めた。
知らない人だけれど、およそ悪いことしそうもないし。
実際にはその候補者よりも、民進党の候補者のほうがグローバルな視点を持っていそうで、「参議院向き」だ。政治の闇を知っていて、国際感覚も持っている秀才タイプ。結果としては仕事ができそう……こういう人は参院での現議席を続けてほしいという気持ちがあったのだが、残念ながら、今回は当選が極めて難しいだろう。

比例区でなぜ個人名を書かない?

今回、自分でもかなり悩んだので、「そもそも比例区で政党名を書く人と個人名を書く人の比率はどのくらいだろう」と思い、前回2013年のデータを調べてみた。
結果、こうだった↓

■2013年参院選比例区での投票行動分析

●自民党 政党得票数:18,460,404(34.68%) うち「自民党」と書いた人は76.3%。個人名での投票は23.7%

●公明党 政党得票数:7,568,080(14.22%) 個人名投票:56.0
(党内最下位7位当選は新妻秀規候補の2万6,044票で、当選議員中最低投票数)

●民主党 政党得票数:7,134,215(13.40%) 個人名投票:32.3%

●日本維新の会 政党得票数:6,355,299(11.94%)個人名投票:18.3%

●共産党 政党得票数:5,154,055(9.68%) 個人名投票:9.8

●みんなの党 政党得票数:4,755,160(8.93%) 個人名投票:11.2%

●社民党 政党得票数:1,255,235(2.36%) 個人名投票:25.3%

●生活の党 政党得票数:943,836(1.77%) 個人名投票:23.3%

●緑の党 政党得票数:457,862(0.86%) 個人名投票:47.0
(党内トップ票は三宅洋平候補の17万6,970票で、落選議員中最高票数)

★公明党以外はどの政党も個人名投票者のほうがはるかに少ない。
公明党支持者の一糸乱れぬ投票行動には選挙のたびに驚かされる。6位当選の 魚住裕一郎候補は54万票で、7位当選の新妻候補(2.6万票)と20倍以上(!)違う。そこまで徹底した組織票、というか、マスゲームのような投票行動を実現しているということだ。(要するに公明党は比例区では6人当選させるつもりでしっかり地区わりで○○候補に投票せよと指示していたが、予想よりひとり増えたわけだ)

★三宅洋平候補の17万6,970票は「比例区候補者の落選者中最高得票」ということで少しだけ話題になった。
比例区で1人当選させるためには最低でも政党の全得票数が100万票を超えなければならない。(共産党は515万4000票で5人当選)
ということは、100万票取れない政党や、その所属候補者に投票しても死に票になってしまう。仮に三宅洋平候補が社民党から出ていたとすると、党幹事長の又市征治候補の15万6,155票より多いので、又一幹事長は落選、三宅候補が当選、となる。

★共産党の個人名投票が極端に低いのは、「比例区は共産党」と呼びかけていることもあるが、共産党候補の個人的知名度が低いことも原因。共産党の候補者は党の仕事は熱心だが、個人的にネットで情報発信するなどの努力が足りていない人が多い。
これは共産党に苦言の一つとして伝えたい。「開かれた党」への改革はまだまだ道半ばだ。なんとか党名変更までこぎ着けられないものか。「立憲民主党」(立民)という党名を推す。


そして今度の選挙の意味をよく考えよう。「政党よりも人柄で選ぶ」なんて言っているあなた、どんなに立派な(能力のある)人を選んでも、国会の場では所属政党の一票として機能するということを忘れないでほしい。

弁護士・水上貴央氏の説明がとてもわかりやすく、よく書けているので、あとはそちらに譲ろう。
  • 民進党が信用できなくても、共産党が怖くても(私は実際どうなのかは知りませんが)、そんなことははっきり言ってどうでもいいのです。彼らが今回ちょっと勝ったって、どうせ与党になるわけではないのですから。いま重要なことは、現在の政権与党を今回勝たせたら、日本が立憲民主主義の国でなくなるかもしれないということです。
  • わかりやすくデフォルメして言えば、あなたが共産党に投票しても日本が共産主義の国になる可能性はゼロですが、あなたが自民党その他の改憲勢力と言われる人たちに投票すると、日本が立憲民主主義の国でなくなる可能性が、現実的危険として生じます。
  • 今回野党が勝つとどうなるか、その場合の変化は、むしろ自民党の中に生じます。自民党の中で、本当はあんな改憲草案は憲法じゃないよねと思っている人たち。日本は、分厚い中間層をしっかりと回復させながら内需主導の経済を確立し、自由で民主的な国としてしっかり国際社会の信頼を確保していかないとね、と思っている人たちが、ついに意見を言い始めます。
  • あなたが信頼し、国際情勢が不安定な時には安定感を求めて応援したいと思う自民党って、むしろ、そっちの人たちじゃないですか?あなたが今の自民党に投票することって、そういう懐の深い保守政党だった自民党の息の根を止めることになりませんか?

「やっぱり自民党に投票しようと思っているあなたに知ってほしい7つのこと」より抜粋)