PCR「検査をさせない」厚労省の大罪2020/02/25 19:31

なぜ日本ではPCR検査を「させない」のか?
なぜそれをメディアはもっと追及できないのか?

厚労省のサイトでPCR検査の総数データを確認して、あまりのことに驚いた。
「新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年2月21日版)」を見ると、
国内事例(2.チャーター便帰国者を除く)
・患者69例、無症状病原体保有者10例
・2月20日18時時点までに疑似症サーベイランスおよび積極的疫学調査に基づき、計693件の検査を実施。そのうち69例が陽性。559例が陰性、65例が結果待ち。
・上記患者のうち入院中52名、退院16名、死亡1名。
・無症状病原体保有者10名は入院中または入院予定。
……とある。
なんと、21日発表の時点で、国内でのPCR検査総数はわずか693件なのだ。
累計693件の内訳を日にちごとに見ると、 2/17=487人、2/18=523人、2/19=532人、2/20=603人、2/21=693人……となっていて、1日あたり9人~90人しか検査していない。
↑図は24日、25日放送の「羽鳥慎一モーニングショー(テレ朝)」の放送画面より。以下すべて同)

加藤厚労大臣が「2月18日からは1日3000件規模に検査体制を拡大する」と言ったが、実際にはこの数字は厚労省が委託可能な検査機関のPCR検査能力総数であり、COVID-19を検査する能力ではなかったというのだ。
↑1日3000件台という数字もあまりに呆れた数字だが、それがCOVID-19の検査能力ではなかった↓というトンデモ



しかも、さらに怖ろしいのは、翌22日からは、この「検査総数○○のうち感染者数は……」という方式のリポートがなくて、
本日(2月22 日)、熊本市、熊本県、和歌山県、千葉県、北海道、石川県、東京都、名古屋市、栃木県及び相模原市より、今般の新型コロナウイルスに関連した感染症について27 名の陽性者(患者22 名、無症状病原体保有者2名及び陽性確定3名(症状の有無等調査中))が、以下の通り報告されましたので、ご報告いたします。
今回の公表で、国内感染者は132 名(患者113 名、無症状病原体保有者16 名、陽性確定3名)となります。
本件について、濃厚接触者の把握を含めた積極的疫学調査を確実に行ってまいります。
(略)
※なお、自治体の公表資料の内容が当省の公表基準に合致しない場合には、当省の公表基準に合わせて公表することとしている。
という報告になり、検査総数が記されていない。
これが単に、データ集計が間に合わないということならまだしも、意図的に検査総数(累計)を隠し始めたのであれば怖ろしいことだ。
特に「自治体の公表資料の内容が当省の公表基準に合致しない場合には、当省の公表基準に合わせて公表する」とは具体的にどういうことなのか?

……とここまで書いて、録画してあった「羽鳥モーニングショー」を後から見たら、さらにとんでもないことが分かった。
番組が厚労省に「なぜこんなに検査数が少ないのか?」と問い合わせたところ、厚労省は、

「検査する自治体から報告いただいていない可能性がある」と答えたというのだ。

そんなことがありえるのかと、いくつかの自治体に問い合わせると、みな「即座に報告している」と回答した。
一例として、和歌山県の場合は、県内でのPCR検査可能能力は40件/日だが、連日その数を超える検査をしていて、足りない分は大阪府などに依頼しているという。
これが三重県となると、連日1桁しか検査していない。
↑三重県のPCR検査能力は24件/日で、実際に検査している数は1桁

和歌山県の40件/日、三重県の24件/日というのも、PCR検査の検査可能総数であって、他に結核とかHIVとかも検査しなければならない中での数字だろうから、実際にCOVID-19を検査できる数はもっと少ない。

要するに、COVID-19にかかっているかもしれず、どんどん重症化している患者がいるのに、病院に来られても医師は検査もできず、診断が下せず、まともな治療ができないということだ。
25日の「羽鳥モーニングショー」では、大谷義夫医師が、
私の医者人生30年間、今回ほど怖いことはない。検査できない。検査できなければ診断ができない。診断できなかったら治療もできない。何にも始まらない。実際、(保健所や民間検査会社に)頼んでも検査していただけない状態。それが非常に怖ろしい」
と、振り絞るような声で訴えていた。
それを如実に物語る例として番組で紹介されたのが、都内の9歳の児童(4人兄弟の長男で母親は30代)のケース。
2月16日に発熱。厚労省のガイダンスに従い、38度以上の高熱が続いても4日は受診せずに自宅で我慢させ、4日経過した19日の時点で「帰国者・接触者相談センター」に電話。近所の小児科を受診せよと言われて小児科医を受診するが、薬は出たが翌日も熱が下がらず、21日に大学病院へ。しかし、その大学病院でも「うちでは検査できない」と医師に断られる。しかたなく自ら保健所に電話して検査してほしいと訴えるが、保健所は「検査基準を満たしていないのでできない」と断る。結果、自宅で発熱したまま9日が経過。24日夜の時点で番組が確認した時点でもまだ熱は下がっていないという。
町医者~大学病院~保健所と、すべてに「検査はできない」と断られ、自宅で熱を出したまま9日目に突入した都内の9歳児のケース

さらにもう1例、都内の妊娠7か月の20代女性の例。16日から咳が出て、22日から38度の高熱が出て産婦人科医に相談。産婦人科医から「COVID-19の疑いがあるので検査したい」と保健所に連絡するが、保健所からは「感染者との濃厚接触の事実が確認できないのですぐには検査できない」と断られる。


これらの事例を知って、改めて前日の同番組の放送でサラッと触れられていた問題がずっと引っかかっていたので、考えてみた。

「指定感染症」にしたことでかえって診療が進まない?

新型コロナウイルス感染症は「指定感染症」になったが、指定感染症は原則、確定診断されると「感染症指定医療機関」のみで診療することになる。
しかし、国内に「感染症指定医療機関」は多くない
24日の放送では神奈川の例が紹介されていたが、神奈川での指定感染症に対応できる医療機関は8医療機関・74床。
そのすべてをCOVID-19関連で埋めるわけにはいかないので、すでに「原則」を超えた対応(「緊急およびやむを得ない場合」に相当すると判断)をしている。

その結果、神奈川県内では指定医療機関以外の34医療機関が対応し、

すでに「重症者を含む183人がその34医療機関に入院している」というのだ。

それでも間に合わないので、県では毎日他の医療機関にも「受け入れられないか」と問い合わせしているという。

指定医療機関から溢れた患者が183人もいて、重症者が含まれているというのだが、この人たちは全員がPCR検査で陽性が出た人たちなのだろう。ダイヤモンドプリンセス号が着岸した横浜を抱える神奈川県だから、おそらくその関連だけでこういうパンク状態なのだろうとは思うのだが、当然、すでにこんなに溢れているのだから、これから市中感染の人たちが続々と出てくるとまったく対応できない。
感染していようがいまいが、軽症者は病院で受け入れたくない。受け入れられない。
となると、感染が確認された人が大勢自宅で様子見ということになり、庶民が動揺する。
そういう事態を恐れて、とにかく「感染確認」の数を減らしたい。そのためには検査しないに限る……そういう論理が政府や厚労省内で共有されているのではないか?


ところが、厚労省は今もなおこんなことを言っている↑というのである。
市中感染は稀なケースである。検査可能な数が不足している認識はなく、専門家会議でも議論になっていない

そんなふざけた嘘が通用するわけはないだろうに。
2月8日に国立感染症研究所 戸山庁舎で行われた「新型コロナウイルス感染症への対応に関する拡大対策会議」の議事録には、こんなやりとりが記録されている。
  • 愛知医科大学客員教授・森島恒雄:PCR で対応できる、検査数の実際の量はどのくらいか
     ⇒ 計算上 3726 検体/ 日となっているが、現実可能な数字ではない。今後症例が増えていけば、検査機関が増えていく可能性、必要性がある。
  • 国内蔓延期となれば、指定医療機関の指定が外れていくのか
     ⇒指定医療機関ではより重症な患者を診療することになる
  • かわぐち心臓呼吸器病院院長・竹田晋浩(しんひろ):重症な患者が発生した場合に、現在感染症病棟や結核患者病棟があるような指定病院では、患者の治療が困難な場合があると思われるが、どのように患者の移動をするのか、また誰がそのコーディネートを行うのか
     ⇒現状では感染症指定医療機関で診療することになるが、今後重症度の高い患者が出た場合には、より高次医療機関へ搬送する必要がある。その場合には各病院や、都道府県知事がリーダーシップをとる必要があり、また政令の整備が必要である。
    議事録より)

8日の時点で、厚労省の中でもこうした議論は当然出ていたわけだが、それから2週間以上経っても具体的な対策がなされていないのだ。

他にも、感染者数を小さくしておきたい理由の一つに東京五輪開催への影響懸念があるのだろうということも察しがつく。だとしたら、日本国民は東京五輪によって危機にさらされているともいえる。

ちなみに「感染者数が急増した」とテレビが一斉に報じている韓国では、2月24日9.00の時点での検査総数は28615件、25日6.00時点では36716件と発表されているので、1日で8101人を検査したことになる。
中国では2月13日に感染者数の発表数字が突然跳ね上がったが、これは「PCR検査の結果で確定診断していたのを、肺のコンピューター断層撮影装置(CT)による画像検査の結果、肺炎の症状が認められれば、新型肺炎と診断されることになった」からである。
武漢市では医療体制がまったく追い付かず、治療どころか検査を受けるまでに相当な時間を要して悪循環を招いていた。
2月に入り2つの重症者向け病院が超突貫工事でオープン、公共施設が次々に軽症者向け病院に変わり、1日1万人の検査が可能な「火眼ラボ」も稼働を開始した。
各地から2万人の医療スタッフが武漢入りし、医療体制が拡充したタイミングでの、今回の判定基準の変更と感染者・死者数の増加は、「グレーだった人が黒に変わり、治療を受けられるようになる」というポジティブなメッセージにも受け取られたのである。
「2秒で感染、24日潜伏、節目は2月20日…中国の専門家が指摘する新型コロナウイルスの本当に重要な数字とは」浦上早苗 BUSINESS INSIDER
つまり、中国は検査体制が追いつかず、感染者の実数が分からないので、PCR検査をせずとも肺炎症状がある患者は感染していると判断するようにしたのだ。
一方、日本の厚労省は21日以降は検査数の発表をしていないようだ。

こうした日本政府のやり方を、世界は見てしまった。
中国はこうしている、韓国はこうしている、で、日本は……と、世界が知ってしまった
このことによる日本という国の信用失墜は計り知れない。


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