中古住宅物件の選び方(1) 立地面での注意点2021/01/18 11:19

豊かな自然環境の中に住めると思ったら……

地方移住のススメ(5)

さて、ここまで地方移住の考え方として、地域選びや災害危険度についてまとめてみましたが、いよいよ個別の中古住宅物件の選び方について、私の経験をまとめてみます。
よくある「こんな物件は買ってはいけない」編ですが、すべてに満足のいく物件がビンボー人に購入可能な価格で見つかることはまずないので、多少の欠点にどう対処するかについても触れていきます。

車を使えない人は地方移住は無理なのか?

 都市部やその近郊での住まい選びでは、交通の便という要素が非常に重視されますし、不動産価格にも直接跳ね返ってきます。
 駅まで徒歩圏なのか、バスを使わなければならないのか、バス便は多いのか……といったことですが、田舎物件では、まず、電車やバスという交通手段をほぼ諦めなければならないような物件も多数あります。
 となると、車を使えない(免許を持っていない、高齢で運転が不安といった)人は田舎暮らしはハナから諦めなければいけないのでしょうか?
 ある意味そうとも言えるのですが、ここで少し考え方を変えてみましょう。
 田舎といっても、タクシーを呼べるくらいの場所であれば、車を持たない生活も不可能ではありません
 例として、地方都市郊外で、最寄り駅、あるいは大型スーパーや病院まで2.5kmほどの場所を考えてみます。
 2.5kmというのは、健脚なら徒歩30分くらいですから、歩けないとは言いきれません。しかし、雨の日も風の日も雪の日もあります。歳を取って足腰が弱ってくれば、2.5km歩くのはかなりの重労働ですし、ましてや荷物を持っていたら……。
 しかし、駅前にタクシーが常駐していて、家からでも呼べばタクシーがすぐに来てくれるような環境であれば話は別です。
 タクシー料金は地域によって違いますが、例えば栃木県では、普通車は全域で、
  • 距離制運賃 初乗運賃 1100mまで500円
  • 加算運賃 以後271mごとに100円
  • 時間距離併用制運賃※ 1分40秒ごとに100円加算
 です(2020年12月25日改定)。
 ※時間距離併用制運賃:時速10km以下になると時間を距離に換算する方式が併用される。

 神奈川県の小田原・泉地区では、
  • 距離制運賃 初乗運賃 1800mまで780円
  • 加算運賃 以後243mごとに90円
  • 時間距離併用制運賃※ 1分30秒ごとに90円加算
です。

 群馬県A地区(太田市、館林市、桐生市、みどり市など)では、
  • 距離制運賃 初乗運賃 1452mまで600円
  • 加算運賃 以後274mごとに90円
  • 時間距離併用制運賃※ 1分40秒ごとに90円加算
です。

 家から駅やスーパーなどまでの2.5kmをこれにあてはめると、栃木県(例えば宇都宮市)の場合、初乗りの1.1kmを超えて残り1.4kmを271mで割ると5.17なので、およそ6UPとなり、500円+100円×6で1100円となります。
 小田原市では1050円、群馬県A地区(例えば太田市)では、960円です。
 この中でいちばん高い宇都宮市の場合でも、往復で2200円。ひと月に5回利用すると、年間で60回。2200円×60回=13万2000円です。
 太田市だと往復で1920円。ひと月に5回利用すると年間で11万5200円です。
 これを高いと考えるか安いと考えるか……。
 自家用車を所有すると、まったく使わなくても、自動車税、重量税などの税金、車検代、保険料……と、維持費だけで年間20万円は下りません。これに燃料代や修理代、タイヤなどの消耗品代などが加わります。
 車を運転すれば事故を起こす危険性がありますし、間違って人を傷つけたりしたら大変なことになります。
 タクシーを月に5回使って駅やスーパーまで往復するのに年間十数万円は安いのではないでしょうか。

 地方のスーパーマーケットやショッピングモール、ホームセンターなどには、入口にタクシーの案内表示があります。これは、タクシーで買い物をしている人たちが相当数いることを示しています。都会人はこうした発想の転換がなかなかできませんが、一度実践してみれば「なんでもっと早く気づかなかったのだろう」と思うかもしれません。

道路と玄関の位置関係

 玄関前に車が直接つけられない家というのがあります。車が入れる道から少し歩かないといけないような立地です。
 また、家の前に道路があっても、そこから玄関まで階段になっている家もあります。これらは田舎物件ではそれほど多くはないのですが、リゾート物件などにはよくあります。
 さて、ここで問題です。
  1.  物件Aは、車が入っていける道路の終点から十数mほど緩い坂道を歩かなければなりませんが、家自体は平坦な土地にある庭も広い平屋。
  2.  物件Bは、車が横付けできる道に面していて、立派な地下車庫(大型車が3台も余裕で入る電動シャッター付き)がありますが、家の玄関まではかなり急な階段がおよそ20段。
  3.  物件Cは、車が直接つけられる道に面していますが、斜面に建っており、玄関が二階でメインの生活空間であるLDKは一階(玄関から屋内階段を降りる)。庭はさらにその下。
 あなたならこの3つの物件のどれがいちばん住みやすいと思いますか?

物件A:十数メートル緩やかな坂道を歩くが、平坦地の平屋で庭も余裕がある


物件B:立派な電動シャッター付き地下車庫があるが、玄関までは階段


物件C:車はつけられるが、玄関が2階で斜面に建つ
※コンプラ上、上記画像B、Cは実際の物件とは違う外観に加工してあります。

 どれも欠点を抱えていますが、まず、前述の「タクシー生活」をするなら物件Aがお勧めです。
 車が直接つけられないのが決定的な弱点のように思えますが、これはタクシー生活にはほとんど関係ありません。
 アプローチはそれほど長くはなく傾斜も緩やかですし、大きな荷物を運び込むのもさほど問題ありません。配送業者や引っ越し業者のプロにとって、こうした場所よりずっと嫌なケースが都市部にはたくさんあります(マンションなど)。
 平坦な土地に建つ平屋なので、災害時にも安全ですし、大工さんなどの職人さんが入ったときの作業スペースも十分です。
 緊急時にも、消防車や救急車はすぐそばまで入れるので問題ありません。
 しかし、言うまでもなく、すでに車を使っている生活や、自家用車が必須の生活スタイルを考えている場合は対象外です。

 物件Bは、一見立派な豪邸ですが、玄関までの急な階段が最大の問題です。車から荷物を運び込むのも大変ですし、足腰が弱った老人や病人、怪我人はひとりでは無理です。
 雪が降ったり凍結したりしたときの危険度も高いので、事故の可能性もあります。
 建物は1階と2階に25畳くらいの広い部屋があり、大変立派なのですが、夫婦二人暮らしなどでは広すぎてもてあますでしょうし、冬季の暖房も大変です。
 しかし、若い人が広い部屋を生かす生活スタイル(アトリエにするとか教室にするとかスタジオにするなど)を考えた場合、これだけの広さの物件が1000万円以下なら魅力的です。

 物件Cはリゾート分譲地などによくある「斜面物件」です。車は玄関横のカースペースにつけられるのですが、玄関が2階で、主たる居住空間が階段を下りた場所にあるため、なんとなくモグラ生活のような雰囲気があります。慣れれば問題ないのですが、階段を必ず上り下りしないといけないので、歳を取って足腰が弱ったときや、大きな荷物の運び入れ、運び出しには苦労します。また、斜面なので、地震に襲われたときの土砂崩れや地盤の沈下なども心配です。
 このタイプの物件は、一階のさらに下側斜面にも土地所有分が伸びている場合が多いのですが、この部分は斜面なので庭としてもほとんど利用できず、役に立ちません。ただ草が生えるままになり、管理が面倒なだけになりがちです。
 しかし、子供のいる若い家族などであれば、こういう立地のために価格が安くなっていることが魅力でしょう。室内階段も、運動になると考えれば悪い面ばかりでもありません。終の棲家ではなくても、人生のうちのいちばん充実しそうな30代~50代あたりを過ごす家として、安く手に入るなら悪くないかもしれません。

 このように、欠点を持つ物件は、その欠点を包み込める生活ができるかどうかで魅力度が変わります
 なんらかの欠点がある物件は、高い価格をつけても売れないために、相場より相当安く売られていることが多いです。ビンボー生活者にとって「安い」ということは大変重要なことなので、無視できません。
 しかし、いくら安くても、前項で説明したように、河川のそばや崖下、崖上の物件は避けましょう。

設備面でのチェック

 生活に欠かせないライフラインは、個人の力ではどうにもできないものもあります。都会生活しか経験していない人は見落としがちですので注意してください。
 自治体が運営している公営水道が引かれていればそれほど問題ないとは思いますが、水源の健全性は重要な問題です。公営水道だから安心とは言いきれません。現代は、自然災害だけではなく、人災や犯罪によっても水源の健全性が損なわれることが増えています。ゴミの不法投棄や、塩谷町のように、国の政策によって、ある日突然、水源地が放射性ゴミを含んだ処分場予定地にされるという青天の霹靂のような事態も起きます。
栃木県塩谷町は原発爆発で出た放射性ゴミの処分場建設地として狙われ、町全体が騒然となった。時間と共に、誘致によって金が入りそうな地元の業者と、環境を死守したい住民が対立して、住民間の関係がズタズタに引き裂かれるという悲劇も起きる。
 水道には、地域の管理組合や集落の自治会が管理している私設水道に近いようなものもあります。その場合の運営費負担額や管理状態はチェックしておかなければなりません。中には「水道」と名がついていても、水源がたまに涸れてしまうとか、大雨の後では水が濁ることがあるといったものもあります。
 水道が引かれていない場合は、井戸か沢水利用しかありませんが、これは田舎ではごく普通のことです。私が7年暮らしていた福島県の川内村は、東京都千代田区の17倍の面積を持つ村でしたが、村に一切水道がない村でした。学校や役場も井戸水で、村の中心部でも水は井戸を掘るしかありません。
 井戸がすでにある物件でも、それが浅井戸なのか深井戸なのか、自噴するほど水量・水圧がある井戸なのか、ポンプで組み上げないといけない井戸なのかなど、井戸の品質を確認しなければなりません。もちろん井戸水の水質も大切で、中には飲料に適さない水しか出ない井戸もあります。
 私が購入した家は、不動産屋の説明では深井戸とのことでしたが、実際には浅井戸で、しかも水源がほぼ沢水であることが分かったので、後から業者に依頼して別途深井戸を掘ることになりました。しかし、掘削業者は「ここなら間違いなく出る」と言っていたのに、50m以上掘っても出ず、2本目でようやくなんとかなる程度の水が出るという、ひやひやの挑戦でした。岩盤地盤だったために掘り進むのが大変で、日数はひと月、費用は軽く100万円以上かかりました。
 なんとか水が出たからいいものの、出なければ100万円以上が無駄になるところでした。
場所を変えて2本目を掘っているところ(2008年12月)
 ポンプで吸い上げないといけない井戸では、停電になったりポンプが壊れたりすると水が使えないことも覚えておいてください。寒冷地では井戸ポンプが凍結で壊れることはよくあります。
 しかし、良質の地下水が豊富に出る井戸があることは大変贅沢なことで、1年中美味しい水がただで飲めますし、災害時にも最低限のライフラインとなります。
排水
 田舎物件では、本下水がついていない物件は普通にあります。その場合は浄化槽と簡易下水が普通ですが、浄化槽には合併浄化槽(トイレも生活排水も一緒に浄化)と単独浄化槽(トイレのみの浄化槽)があり、現在は多くの自治体で単独浄化槽は基本的に新規設置を認めていません。生活排水が浄化されずに垂れ流しになるからです。
 単独浄化槽であっても、合成洗剤やシャンプーリンスを使わない(石鹸や重層だけ使う)、台所排水に油を一切流さない(吸い取るか拭き取ってゴミとして処理する)生活であれば問題は起きませんが、そうでない場合は生活排水で下水が汚染されることになり、周辺住民とのトラブルのもとにもなります。
 本下水が来ていれば問題ないかというと、そう簡単ではなく、大地震などで下水が壊滅的に破壊されたときなどは、復旧ができず、大問題になります。
 私が12年二地域居住をしていた新潟県の川口町では、山奥の限界集落に水道、都市ガス、本下水があるという信じられない環境でしたが、皮肉なことにこれが仇となり、震災後は道路が簡単に復旧できなくなりました。町は住民に「ガスや本下水を放棄するならすぐに道路復旧に取りかかれるが、そうでなければすぐには無理だ」と告げ、住民はすぐにガスと下水の放棄を選びました。その後、住民は「元の土地を諦め、もう住まないと約束するなら、代替地を斡旋する」という条件をのみ、集落は完全消滅しました。中には新築したばかりで、地震にも耐えた家もあったのに、そこに住めなくなってしまったのです。
 普通の田舎の集落のように、プロパンガス、浄化槽排水、井戸水なら、建物を直せば生活が続けられたので、状況は全然違っていたでしょう。  本下水、都市ガスというのは、災害には弱いライフラインなのです。
中越地震で本下水のマンホールが浮き上がった道路。ガス管や下水管の再埋設には金も時間もかかるため、道路復旧を急ぐためには下水を諦めるしかなかった。

ガス
 田舎物件では都市ガスが引かれていることは稀で、プロパンガスがあたりまえです。
 プロパンガス自体は災害時にも止まることがないですし、火力も強いのでいいのですが、プロパンガス業者がしっかりしていないとガス切れになったり、後継者がいなくて店が廃業したりということがあります。
 また、都市ガスと違って、プロパンガスは同一地域でも業者によって販売価格が違います。また、同じ業者でも顧客別に価格を違えていることもあります。古くからの顧客や飲食店などには安く販売し、別荘の住民には高く販売するということは珍しくないので、そのへんも事前にしっかり調べておく必要があります。
 どうしてもガスが使えない場合、炊事は電気で、お湯は灯油のボイラーでという方法もありえますが、田舎暮らしで火を使わない生活というのも味気ないですし、災害時、停電時にはどうにもなりません。
通信
 田舎では、特に山間部でなくともテレビの地上波が入らない地域というのはよくあります。しかし、インターネット高速回線が引けるのであれば、テレビはひかりテレビなどを利用すればいいので大きな問題ではありません。
 ケータイの電波も、届いたほうがいいに決まっていますが、届かなくてもネットの高速回線があれば家庭内Wi-Fiで家にいるときはケータイが使えます。
 つまり、何よりも、ネットの高速回線(光回線)が引けないというのは大問題です。
 元より、田舎ほどネットを使いこなす生活は必須といえますが、これからのウィズコロナ時代ではますます重要です。
電気
 ほとんどの場合、電気は心配ないでしょう。よほどの山の中でも、電力会社はしっかり電線を引いてくれますし、現代で電気が来ていない家が売りに出されているということはまずありませんから。(もっとも、川内村で暮らしていたときは、電気が来ていない獏原人村で暮らす友人や、わざと電気を引かないという友人もいましたが)
 ただ、電線が切れやすい場所とか、そうした事故が起きたときにすぐに修理に駆けつけてもらえなさそうな場所というのはあります。また、家にどのような形で電線が引き込まれているかもチェックしましょう。引き込み線が道路を横切っている場合、大型車が引っ掛けたり、木の枝がかかりやすかったりしていないか、という点です。
進入路
 道路と家との位置関係などについては最初に解説したとおりですが、家までの進入路が公道なのか私道なのか、私道の場合は他人の土地になっていないか、他人の土地になっている場合、共益権などの通行権利が保証されているかといったことが重要です。
 また、道が細くなっていたり、急なカーブがあったり、橋やトンネルがあったり、道の上を大木の大枝が横切っているような場合、大型トラックが通れるかも重要です。引っ越し業者や配送業者が入って来れないようだと、大変な苦労をします。

迷惑施設建設地として狙われる可能性
 現代では、ある日突然襲ってくる災害は自然災害だけではありません。自然環境の素晴らしい田舎ほど、大型風力発電施設、廃棄物処分場、メガソーラーといった迷惑施設、環境破壊施設の建設地として狙われやすいのです。
伊豆の大瀬漁港から見た風景。大型風車のせいで風景が一変。(2010年1月)

↑2000kw級の大型風車のブレード(羽根)。今は3000kw級以上にさらに大型化している。(2010年6月。川内村にて


静かな環境を求めて都会から引っ越して来たのに、風力発電のおかげで人生がすっかり狂ってしまった……と嘆く男性。妻は大型風車からの低周波健康被害で身体を壊し、別居しながらの病院通い生活になってしまった(2010年1月。南伊豆にて


奈良県の例。大量のソーラーパネルを山を伐採して急斜面にいい加減に設置。下の集落の生活は、土砂崩れの危険度が一気に上がっただけでなく、水質汚染、田畑への泥水流入、そして何よりストレス増大による健康被害が深刻。

住宅地の空き地に設置されたソーラーパネル。小規模であってもこんな風にシートで覆われてしまうと下の土は死ぬ。今まで熱を吸っていた緑地が消えて、逆にその面積分が熱を持つので、隣接する住宅の環境も変わる。設置面積が大規模だとシートで被うこともできず、草ぼうぼうになると除草剤を撒いたりするので、水質汚染や薬剤吸引による健康被害も心配。いずれにしてもこういうものが隣地などに設置されると住環境が破壊される。また、天候次第で急に発電したり止まったりするので、周囲の電力線の電圧状態が不安定になり、精密機器が狂ったり、瞬間停電を起こしたりすることもある。

 田舎の自然環境やのんびりした雰囲気に惹かれて移住してきたのに、その直後にこうした悲劇に襲われるケースを私はたくさん見てきました。何より、私自身がそうです。川内村から日光に移った最大の理由は、原発爆発よりも大型風力発電施設建設による周囲の山の破壊でした。
 これはなかなか予測がつかないのでやっかいですが、引き起こされる被害(特にストレスによる精神的な被害)は大変なものです。
 不愉快なことですが、田舎暮らしにはこうしたリスクもあるということは覚えておいてください。

 これら様々な立地環境をまずは調べた上で、次に建物のチェックとなるわけですが、それは次の項に分けます。


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中古住宅物件の選び方(2) 建物のチェックポイントとリフォーム2021/01/18 11:36

地方移住のススメ(6)

中古住宅を見に行った際、素人は外見の立派さ、きれいさ、新しさなどに気を取られがちですが、しっかりチェックすべきポイントを見落とすと大失敗します。今回は、見逃してはいけないポイントと、欠陥や弱点をどうカバーできるかについて、経験をもとにまとめてみます。

まずは基礎と屋根を見る

 中古住宅を見る際にいちばん見落としがちなのは基礎と屋根です。どちらも位置的に目に入りにくいから見逃すのですが、外壁や内装よりも重要なポイントです。
基礎
 基礎とは建物を支えている下の部分です。外からは、ごく一部しか見えませんので、中古住宅を購入したことがない人の中には、まったく見ないまま家の中に入ってしまう人もいますが、とんでもないことです。
 基礎はやり直しが効きません。
 すでに上に建物が乗っかっているわけですから、建物をどかさなければ根本的な作り直しなどできません。それだけに重要なチェックポイントなのです。基礎に欠陥がある場合は、一見新しくきれいな建物に見えても、すぐにあちこちに狂いが生じたり、壁にひびが入ってきたり、建物全体が傾いてきたりします。
 明らかに目立つ亀裂が複数箇所入っている場合は、地盤沈下や基礎部分の不完全施行など、致命的な原因があると疑ってみるべきでしょう。

 基礎は大きく分けて布基礎ベタ基礎に分けられます。
 
布基礎:建物の外周部や主要な間仕切り壁の骨組(軸組)の下、トイレや浴室の下だけに設置する。建物を「線」で支えている。
隙間部分は土が露出したままの場合と、コンクリートを薄く流し込む場合があり、後者は見ただけではベタ基礎と区別するのが難しい。


ベタ基礎:基礎の立ち上がりだけでなく、建物の床下全面が鉄筋入りのコンクリートになっている。家の荷重を全体の「面」で支えている。

 地震に対しては、面で支えているベタ基礎のほうが強いことは素人でも理解できます。
 大地震に襲われたときのベタ基礎と布基礎の違いを、私は2004年の中越地震で嫌というほど知らされました。
 集落には昭和時代の古い家と、最近建て替えたばかりの新しい家が混在していましたが、古い家が軒並み全壊したのに対して、新しく建てたベタ基礎の家は被害が少なく、ほとんど壊れることがなかったのです。
 私の家は布基礎ですらなく、主要な柱部分の下に石やコンクリートを入れただけ(線ですらなく、「点」で支えている)基礎だったので、ひとたまりもありませんでした。
 この苦い経験から、川内村に引っ越した後に建てた6坪のスタジオ兼ゲストハウスでは、予算がない中で、設計士には「何はなくとも基礎はベタ基礎で」と要求し、実現させました。
 基礎工事をした基礎屋の親方は「こんな小さな建物でベタ基礎なんて聞いたことない」と半ば呆れていましたが、おかげでその後の東日本大震災でもびくともしなかったのです。
川内村で人生最初で最後の「新築」体験。6坪の小さな建物でも、基礎はベタ基礎にした。


床下全面に鉄筋を入れている。この鉄筋の間隔が狭いほど強度が上がる。この基礎は「役所仕様」で、鉄筋の間隔が狭い。


上からコンクリートを流し込むと、鉄筋は隠れて見えなくなるため、鉄筋を入れていない「なんちゃってベタ基礎」との区別がつかない。

 かつてはベタ基礎と布基礎ではコストがかなり違ったので、布基礎の家が多かったのですが、現在は工法も合理化されてコスト面での差があまりなくなったため、多くの家がベタ基礎になっています。
 古い建物で基礎がベタ基礎になっている場合は、建て主がそれだけ気合いを入れて建てた証拠といえるかもしれません。

 ただ、布基礎でも、隙間部分に後からコンクリートを薄く被せてしまえば、見た目はベタ基礎と同じになるため、見分けるのは困難です。
「なんちゃってベタ基礎」(左)と本物のベタ基礎(右)
布基礎の隙間にコンクリートを薄く敷いただけの「なんちゃってベタ基礎」(↑左)は、ベタ基礎ではない。布基礎に化粧をしただけ。ベタ基礎と呼べるのは底面全面に鉄筋を入れている場合だけ。

 通風口の狭い隙間から懐中電灯で照らして覗きこんだくらいでは、ベタ基礎と「なんちゃってベタ基礎(=化粧布基礎)」との区別はつきません。
通風口に虫除け、ネズミ除けの網が張ってあるのはちゃんとしている証拠だが、おかげで中がよく見えず、基礎の種類が分かりづらい。土台や土台周辺の外壁にひびが入っていないかどうかもチェックしたい。

 しかし、ベタ基礎の家には、たいてい家の中のどこか(多くは台所や洗面所の床あたり)に床下点検口があり、そこから床下に入れたりしますので、徹底的にチェックするには、床下点検口を捜しだして床下に潜ってみるといいでしょう。
 仲介不動産屋に訊いても、そこまでは分かっていないことが多いですが、建物の設計図面が残っている場合は確認できます。

 ただし、布基礎でも、地下にしっかりとした土台を作った上で布基礎にしてある場合は、ベタ基礎同様の安定度を得られるでしょうし、二階建てと平屋では、基礎にかかる負荷が違います。  斜面に建つ家や敷地に段差がある場合はベタ基礎が不可能ですから、円柱などの基礎柱や基礎ブロックを使うしかありません。この場合、土に埋まっている部分がどのくらい深いのか、その下にしっかり土台を築いているかが問題ですが、掘ってみるわけにもいかないので、なかなかそこまでは確認できません。

このような円柱や角柱の基礎は、斜面に建つ家や倉庫などの簡易的建物でよく見る。この下がどのくらいしっかり固められているかが問題。

 また、ベタ基礎であっても、基礎面が周囲の地面より低くなっているような建物では、流入した水が溜まってしまい、建物に湿気が入り込んで床下が腐ったりシロアリにやられたりすることになるので、その点もチェックしてください。
 ベタ基礎の場合は、水分が地下に浸透していかない分、湿気を抜く対策が重要です。
 最近の建築では、基礎の外側に通風口を開けず、建物との間全体に、外からは見えないような隙間を開けて湿気を逃す構造のものもあります。
屋根
 基礎同様に目が届きにくいのが屋根です。
 上から見ることができないので、欠陥があってもなかなか気づきません。
 しかし、屋根の材質や苔や錆のつき具合くらいは分かるはずなので、しっかり見てください。

 屋根材は、大きく分けて次のようなものがあります。
  1. 粘土系瓦……古来からある一般的な焼き物の瓦。釉薬をかけたものと素焼きのものがある。遮音性、耐熱性、耐久性に優れるが、重い。
  2. セメント・コンクリート系瓦……セメント・水・砂を主原料とした瓦。重いわりに粘土瓦より耐久性が劣るなど欠点が多いため、現在、新築ではまず使われない。
  3. スレート瓦(コロニアル、カラーベスト)……薄くて軽く、着色も楽なので一時期大流行したが、耐久性がないので、今ではあまり使われない。
  4. 金属系……昔は「トタン屋根」などと呼ばれる亜鉛メッキ鋼板がよく使われていたが、今はほとんどない。代わりにアルミニウムが55%程度含まれるガルバリウム鋼板がどんどん進化してきて主流になった。現在はガルバリウム鋼板の表面に細かな石粒を吹き付けたジンカリウム鋼板と呼ばれるものも登場し、お洒落な瓦風屋根も登場している。
 このうち、中古住宅の屋根として点数が低いのは、2のセメント・コンクリート瓦と3のスレート瓦です。
 まず、コンクリート瓦は傷んできた場合の吹き替えが面倒です。上から塗料を塗ってもすぐにボロボロと剥げていきますし、費用が無駄になるため、全部剥がして別の屋根材でやり直ししなければならず、かなりのコストがかかります。
 地震などにも弱く、重さがあるために建物への負荷が高く、落下してきたときの危険性も無視できません。遠目には普通の瓦と区別がつきにくいので、よく確かめましょう。

 スレート(コロニアル)も避けたい材質です。一時期大流行したため、都会風のお洒落な建物にも使われていたりします。別荘地物件にも非常に多いのですが、耐久性がなく、バブル期に建てられたお洒落な別荘などでは、屋根が苔だらけでボロボロになっているのをよく見かけます。
 そもそもこの素材は、商店の庇屋根などに使うために開発されたもので、外国では一般住宅の屋根に使っている例はまずありません。
苔が付き風化が進んだスレート瓦の屋根。これ以上傷みが進むと撤去して吹き替えるしかない。



この手のお洒落な瓦も、10年に1度くらい塗装が必要になることがある。

 1の一般的な瓦屋根は、瓦の材質は変わらなくても、施工した職人の技術が劣っていると、地震や暴風のときに瓦が落ちたり飛ばされたりします。
 あまり知られていないことですが、この「施工技術の差」は大変なもので、隣り合っている家の同じような瓦屋根が、災害に遭ったとき、片や無残に飛ばされ、片やまったく無傷のままだったということもよくあります。
 また、瓦の材質も、セラミック系の軽い素材のものも出てきて、見た目だけでは分からない性能差があります。
中越地震と大雪でペシャンコになった我が家。皮肉なことに、吹き替えたセラミック瓦の屋根は、瓦1枚剥がれることなく、きれいなまま落下していた。

屋根のリフォーム
 スレート屋根や古い金属系の屋根(トタン屋根など)は、傷みが進んで屋根裏に水が漏れる前に張り替えなければなりません。屋根から水が入り込んでいても、屋根裏で止まっている場合は気づくのが遅れ、壁や配線関連などにまでダメージが進んでからようやく気づくことになります。そのときはもう手遅れで、修繕費が桁違いにかかってきますので、「まだ大丈夫かな」という甘さは大敵です。
 スレートや古い金属系の屋根の場合は、上から最新のガルバリウム系鋼板を被せる方法(重ね葺き・カバー工法)がオススメです。今までの屋根がそっくり下に残るため、断熱や遮音の点で有利ですし、古い屋根の撤去費用(これがかなりな金額になる)もかかりません。
 屋根だけはケチってはいけません。重ね葺きで改修する場合も、鋼板の裏には防音ウレタンを張ったものを選び、古い屋根との間にはゴムアスの厚い防水シート(ルーフィング)を貼ります。
 ガルバリウム系鋼板の性能はこの10年くらいで驚くほど向上しています。昔の製品のように錆が出ることもなく、一度張ればほぼ一生心配はいらないでしょう。

裏に防音材(ウレタン)を張ったガルバリウム鋼板の屋根材。

古い屋根の上にゴムアスファルト系の防湿シートを貼る。接着剤のついているものは高価だが、隙間をピッタリ塞いでくれるので、防音効果もある。

二階建て以上の建物は足場を組む必要があるため、平屋より工事費が高くつく。屋根の勾配も問題で、きつい勾配の屋根は格好はいいが、修理や吹き替えのときは大変苦労するので、コストもかかる。



 このように、屋根が傷んでいる場合は後からかなり大がかりな工事が必要になるため、購入時にはしっかりチェックする必要があります。傷みが進んだ屋根の物件でも、他の長所を考えると「買い」だと思ったら、屋根のリフォーム代を最初から購入費に算入して考えましょう。
外壁
 外見でいちばん目につきやすく、建物の印象を支配するのが外壁です。
 しかし、それだからこそ、見た目の印象に左右されず、実質的な判断をするための基礎知識が必要です。

 中古物件の外壁には次のようなものがあります。
  1. モルタル系(湿式吹き付け塗装。吹付けタイル、リシン、スタッコ)
  2. サイディング(窯業系、金属系、樹脂系、木質系)
  3. 板張り
  4. ALC(軽量コンクリート)

 古いローコスト建築ではリシン吹きつけに代表されるモルタル系の外壁が中心でした。下地建材の上に骨材(細かい石や砂の粒)を混ぜた塗装材をスプレーガンで吹き付けていくもので、工事も簡単、コストもかからないということで、広く使われていました。仕上げ材の種類や吹きつけ方によって、吹付けタイル、リシン、スタッコなどの種類があります。
 この工法の外壁はひび割れが生じやすいという欠点があります。塗装を定期的に施さないと、はがれや塗膜の膨張などが生じかねません。
 特に、凹凸が多いスタッコ仕上げの壁は、細かい表面のリシンや吹きつけタイルに比べると凸凹に汚れが入り込んだり、空気が入って膨らんだりしやすいので、再塗装の際に手間や塗料代が何倍もかかったりします。新築時の見た目がリシンなどより豪華なので、一時期流行りましたが、今ではスタッコ仕上げを勧める業者はいないと思います。
 リシンや吹きつけタイルの壁は、その気になれば素人でも塗り替えやある程度のメンテナンスはできます。ただし、二階建て以上では足場を組んだりしなければならないので、素人では難しいし、危険でしょう。

 サイディングは現在最も多く使われている外壁です。中でも多いのは窯業系で、新築一戸建ての70%以上が窯業系サイディングだそうです。
 セメント系の素材に繊維を混ぜた薄い板を張り合わせていくもので、外見は石、タイル、木の板、煉瓦など、どんな柄にも似せられます。
一見すると煉瓦貼りに見えるが、煉瓦風のサイディング。↓
 
 重厚感はないですが、とにかく手軽にきれいな仕上がりになるし、防火性能や耐震性にも優れているので、コストパフォーマンスのよい外壁ではあります。
 この外壁の弱点は板と板の合わせ目で、シーラント剤が劣化して、そこから雨水が染み込むことがあります。
 しかし、これは素人でも補修は可能です。市販のシリコンシーラントを埋め込むだけで、当面は防水面での心配はなくなります。
 プロは、乾燥した後に上からの塗装も可能な変成シリコンシーラントのコーキング剤を使うのですが、今までの経験では、防水性だけなら、一般の安いシリコンシーラントのほうがむしろ劣化しにくいようにも感じています。透明なものがいちばん使いやすいのでお勧めです。はみ出しても目立ちません。
 透明のシリコンシーラントはパイプの割れ目を塞ぐ補修剤代わり、石やセメントブロックに冬季や金属の小物などを貼り付けるときの接着剤代わりにもなる便利なものなので、我が家では常備しています。
 



サイディングのつなぎ目のコーキングが劣化していくと、そこから水が染み込む恐れが出る。

透明なシリコンシーラントを塗り込んで補修。透明なので目立たず、劣化も少ない。

これは建築時に大工さんが釘を打ち損ねたのだろう。こういう傷もシーラントで補修しておくとよい。

 古いサイディングは、表面が劣化して粉を吹いたような状態になります。これは、できれば早いうちに、表面に透明なコーティング剤を上塗りすると、耐久性が上がります。その際、汚れや、粉吹き成分をしっかり水洗いして落としてから塗ることが大切です。
 これも、平屋なら素人にもできます。
↑二液性のUVプロテクトクリヤーというコーティング剤がお勧め。塗る前に2液を混ぜ合わせ、薄めるのはシンナーで。


↑UVプロテクトクリヤーを塗った後の外壁。見違えるように雨水を弾くようになった。5年以上経った今でも撥水性能はほとんど変わらない。




 純粋な木の板張りの家というのは、古い農家物件などの他は、あまり見なくなりました。地域によっては防火上、新築では許可されていないこともあります。
 古い家で、板がすでに落ち着いている場合などはいいのですが、塗装が傷んだり、色が変わってきたり、劣化・風化でどんどん薄くなってきたりといったことがありますので、メンテナンスはある程度覚悟しなければなりません。
 傷みが激しい場合は、いっそその上から新しい板を貼り重ねるとか、下地板を貼った上でサイディングにするといった改装もありえます。

 ALCを使った中古住宅はかなり新しい建築でしょう。火災保険料なども安くて済みますし、特に問題はないので、こういう物件があれば、ポイントが高いと思います。
 木造住宅でも、外壁は耐火性の高い軽量コンクリート系の板を使っているものもあります。風合いはないので、古民家趣味の人などは好まないかもしれませんが、性能的には板張りや吹きつけ塗装などより優れています。

 特殊な物件として、ログハウスというのもあります。
 ログハウスはカッコいいのですが、建てるときのコストがかなりかかります。
 安い土地にログハウスキットを購入して自分で建てられないかと考える人がいますが、簡単ではありません。
 安いキットは部材が薄いので、仕上がりもチープですし、本格的なログであっても、建てて1年後には必ず狂いが出るので(ログハウスの宿命)、調整・修正が必要です。これは素人には難しいでしょう。
 ログハウスは落ち着いてしまえば、頑強で地震にもびくともしないという長所がありますが、後から細かく改装したり増築したりするのはほぼ無理ですし、電気などの配線が難しい(剥き出し配線になる)という不便さもあります。ログとログの間に隙間が空いてしまったときの補修なども、かなり専門的な技術が必要です。
 木の風合いが好きな人は、ログハウスにするのではなく、外見はある程度諦めて、内装をすべて板張りにするといった方法のほうが、後々改装などの自由度が高くなります。
外壁はサイディングだが、内装はすべて無垢板張りという豪華な作りの家。外見と中の印象がまったく違った。(2011年、秩父)

古い板張りの上から、新たに板を貼る。越後の家でDIY中。危険なので、高い場所の素人工事はお勧めしない。
この家の屋根はコンクリート瓦なので、後にセラミック瓦に吹き替えたのだが、その後、中越地震で全壊した。


 このように、基礎、屋根、外壁という外側部分だけでもかなりのチェックポイントがあります。

 安い物件、古い物件にはいろいろと欠点もありますので、その後のリフォームのやりやすさやコストまで考えて購入計画を立てることが必要です。

 長くなりましたので、内部のチェックポイントは次項に分けます。


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