「ウクライナの子供たち」の意味2022/05/10 19:18

アゾフに憧れ、極右キャンプで兵士として訓練されるウクライナ西部の子供たち
遅まきながらいろいろ勉強したので、現在のウクライナという国が東部と西部ではまったく異なる文化圏、社会なのだということは分かった。
今、日本で「戦争で避難を余儀なくされるウクライナ人」と報道されるときの「ウクライナ人」は基本的には西部ウクライナの人たちのことで、「爆撃で殺されている」と報じられる「ウクライナ人」は主に東部ドンバス地域の人たちのことだったりする。
その区別もできないまま日本のテレビ報道を見て「戦争反対」と叫んでいる人たちがたくさんいるが、世界の知性からしたら笑いものになるだけだ。
ウクライナ西部の人たちとはどんな人たちなのか。
英国ガーディアンのYouTube公式チャンネルに、こんなドキュメンタリー番組がのっている。↓

↑Guardianの番組なので英語だが、映像を見るだけでも内容は分かるので、ぜひ




↑16歳のアントン ↓その父親





タイトルの「Ukraine's far-right children's camp: 'I want to bring up a warrior'」を翻訳するとこうなる↓



イギリスはいわゆる「西側諸国」の代表であり、NATO軍でもアメリカと共にリーダーシップをとっている国だが、その国の一流紙、日本でいえば朝日新聞のようなジャーナリズムであるガーディアンが、こうしたリポートを世界に向けて発信している。
これをフェイクだとかロシア寄りのプロパガンダだとかいうのは無理があるだろう。

他にもこんなのがある。

幼稚園でこうで……、

もう少し大きくなると↑こういうことになるらしい。

幼稚園での動画には「1」のロゴがあるので、ロシアのテレビ局「チャンネル1」の放送だ。「なんだ、ロシアのプロパガンダ番組じゃないか」と言われそうだが、ロシア=フェイク、西欧メディア=真実、と決めつけるのは危険である。
どちらにもフェイクやプロパガンダは存在しうる。というよりも、テレビメディアの番組では、フェイクはともかく、プロパガンダの意味合いがまったくない報道などないだろう。
実際の映像や証言を記録し、伝えているとしても、どこを使ってどこをカットするかという編集はされているわけだから。
日本にも、教育勅語を暗唱させるトンデモ幼稚園は存在していた。その経営者は時の首相とその夫人に気に入られ、小学校建設用地取得を巡ってとんでもない不正が行われた事件があったのは記憶に新しい。
そうした極端な例を切り取って放送している可能性はあるが、すべてがでっち上げの作り物ではないと思う。
というのも、この手の報道は山のようにあり、西側諸国のジャーナリストらも報告しているからだ。
ウクライナからの「避難民」を大勢受け入れているヨーロッパ諸国では、きれいな身なりをして高級車でやってくる「避難民」が、大声で「ウクライナに栄光を!」のスローガンを叫び、ナチス式の敬礼をしたり、街中でアジ演説をする姿に、一般の国民もさすがに「これはおかしいんじゃないか」と気づき始めているという。

子どもが子どもを殺す世界

「戦争の犠牲になるウクライナの子供たち」と言ったとき、多くの日本人は爆撃や撃ち合いに巻き込まれて殺される子どもたちを想像する。
殺されているのは主に東部の子供たちであることは間違いない。
その戦闘を生みだしている根本原因の一つである歪んだ愛国思想を幼いときから刷り込まれた子供たちの悲劇もある。

極右思想教育を受けた子供たちを救うにはどうすればいいか、という難しい問題に向き合うこともなく(あるいは問題の存在すら知らず)、「ウクライナのために募金を」と呼びかけているのは政治家や一部のNGOだけではない。何よりもメディアである。
マスメディアだけではない。SNSに「ウクライナ」という文字の入った文章を投稿すると、自動的に頭に募金への案内が表示されたりする。
その金が国境なき医師団や赤十字にまるまる渡るならともかく、現ウクライナ政府に入ったりしたら、それこそ、こうした「愛国戦士」として訓練される子供たちの手に渡る銃や弾丸になっているかもしれない。

日本と同じ「西側」の一員であるイギリス、ドイツ、オーストラリア、カナダ……などのジャーナリズムには、NATOプロパガンダを意識的に進める連中もたくさんいるが、そうではない者もいる。基本的に、今の大多数の日本人のように「なんにも分かってない」まま行動している人は少ないだろう。
どう動くにせよ、状況が分かった上で、自分の意思でどう報道するか、行動するかを決めていると思う。
現実をちゃんと伝えようとして、組織を出て、フリーランサー的立場で動いている人たちもいるが、そういう人たちは媒体に恵まれないため、発信してもなかなか届かなかったり、発信を妨害されたり、ひっそり「消される」恐怖と戦わなければならない。
日本のメディア界や政界はどうか。「分かった上で」動いている者は非常に少ないのではないか。プロパガンダ要員として利用されていることに気づかず、能天気に熱弁をふるう人たちを見ていると、恥ずかしさを通り越して、異空間に放り込まれたような気持ちになる。

今日、買い物の帰りに車の中でテレビを「聞いて」いたら、ようやくテレ朝のワイドショー番組で「バンデラ主義」「バンデラとナチスの関係」という話題に触れていた。
解説役の人はものすごく気を使って言葉を選びながら解説していたが、日本のテレビに「バンデラの思想」という話が出てきただけでも少しは正常化する空気が生まれつつあるのだろうか?
そう願いたいけれど、連日、信じられないような報道ばかりだからなあ……。

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