ミタール・タラビッチの「クレムナ予言」 その魅力と信憑性(1) ― 2022/12/18 21:19
年末状の宛名印刷も完了して、後は出すだけになったし、なんか急にやることなくなっちゃったなと思っていたら、ちょうどいい玩具?が見つかった。
In Deepの岡氏のメルマガで知ったミタール・タラビッチという19世紀のセルビア人の予言(託宣?)の話。
私はこれまでまったく知らなかったのだが、この手のものが好きな人たちの間ではだいぶ前から話題になっていたようだ。
最初に概要を紹介すると……、
内容はセルビアとその周辺の政情などがどうなっていくかという内容が多いが、あまりにも詳細に当たっていったので、セルビアでは「黒い予言」として知られるようになり、セルビア政府が懸念して内容を隠蔽した、という話もある。
そのせいか、当地以外にはあまり知られることがなかったようだが、近年になって資料を探し集めて発表する人がいろいろ現れ、セルビア地域以外にも広まっていったらしい。そのへんのことはNora Boylesという人が1998年9月29日付で書いている記録がWEB上に残っている。
↑この記述などは、かなり正直に書かれている印象があり、信用してもよさそうに思える。
で、ボイル氏が述べているセルビア語/クロアチア語で書かれた「Kremansko Prorocanstvo (クレムナからの予言)」は、その後、米国で英訳され、89ページのペーパーバック本として出版された。
著者はJura SeverとZoran Vanjaka。版元はVantage Pressということだ。
この本にはデジャン・マレンコビッチ氏が所有しているザハリヒ司祭の残したメモのコピーの内容と、その内容がいかにその後の歴史と符合するかという検証やいくつかの注釈が書かれている。
私はこの本そのものを手に入れたわけではない。ただ、ありがたいことにこの本の編者が書いた出版前の原稿からの引用がarchive.orgに残っていたために読める。
その冒頭で、編者のJura Severはこのように説明している。
本が出版される前の校正原稿のようなものらしいが、むしろそのほうが種本の内容に忠実だろうから、貴重かつ好都合かもしれない。
で、この英訳文によってようやく我々もタラビッチの予言(予言というよりは「幻視」「未来透視」「託宣」というべきか)の内容を読めるようになったわけだが、と~にかく面白い。昨日はほとんどこの英訳原文を読み込んでいた。
「予言」としては、あまりにも正確かつ詳細な部分までその後の史実と一致しすぎているので「ほんまかいな」と疑問を抱かざるを得ない。現代の誰かが創作、捏造したのではないか、と勘ぐるのが普通だろう。
しかし、その内容は、インチキだろ、と簡単に唾棄できない魅力がある。
まず、19世紀セルビアの農夫というのが絶妙だ。イギリスやフランスなら、これだけドンピシャの内容の予言が話題にならないわけはなく、ノストラダムスの予言本などを超える世界的なベストセラーになっていそうなものだ。
でも、そうした考え方もまた、現代の情報社会に毒された偏見かもしれない。例えば「日月神示」が世界的には知られていないのと同じではないか(日本国内でも知っている人のほうが少ないだろう)。今の日本で、新コロやウクライナでの戦争のまともな情報がまったく伝わってこないことを考えても、知らされないことがいっぱいあるということは分かる。
ボイルの記述を信じるとすれば、少なくともドイツで購入できた200ページを超える「Kremansko Prorocanstvo (クレムナからの予言)」が1982年に印刷されたことは本当だろう。セルビア/クロアチア語で書かれたその内容をボイルは読めなかったと明かしている。
この「親本」の内容が後世にタラビッチの子孫などが作り上げたという可能性は否定できないが、とりあえず本物だとしてみる。
それを英訳したとする米国版ペーパーバックに創作が挿入された、あるいは史実に合わせて改作したという可能性もある。しかし、ボイルがこの本を1998年には入手して読んでいるわけだから、出版されたのはそれ以前のことで、21世紀に入ってからのことは追加や改作はできない。
2020年代を生きる我々が特に興味を引かれるのは、種本の後半部分に語られている第二次大戦後の世界を幻視した部分だ。
例えば、第二次大戦後の世界を述べたこんな部分。
国際法廷(英訳本では an international court)というのは国連のことだろう。国連を金科玉条のように仕立てて好き勝手する国々が出てくる。特に強大な王国(複数)によって誘導されるいくつもの小さな戦争(All these small wars are initiated by the great kingdoms, because of their wickedness and malice; those who fight and butcher each other do it because of their blind stupidity.)……という部分は、まさにアメリカを筆頭とするNATO勢力や軍産複合体が、巧みな情報操作、世論誘導で人々の間に憎しみを植えつけ、民族紛争を誘導していくという冷戦後の世界史そのものだ。
他にも、いくつか抜き出してみる。
英訳本の編者は、この「さまざまなおかしな幻影(different strange apparitions)」とは、テレビやラジオのことかもしれないと注釈している。
これはまさに現代の情報操作、情報戦争にあてはまる。タラビッチが言う「私たちの国」はセルビアやクロアチアだが、我々日本人も、1945年の敗戦以降に世界中で起きている戦争については、文字や映像、音声による情報でしか知ることができない。
その情報が捏造され、歪曲されていれば、情報を受け取る我々は、情報戦争を仕掛ける者たちの意のままにその戦争を色づけし、操られてしまう。
これなどは特に解説はいらないだろう。タラビッチの生きた時代(1800年代後半)は日本では幕末から明治時代である。自動車はすでに発明されていたものの、空気入りタイヤや円形のステアリングが装着された自動車が登場するのはタラビッチの死後、1900年代に入ってからだ。もちろん、セルビアの小さな農村では自動車など見たこともなかっただろう。飛行機にいたっては、ライト兄弟が世界初の本格的な有人飛行を行ったのが1903年12月だから、これまたタラビッチの時代には存在もしていない。
この「白い馬に乗った青い目の男」はヨシップ・ブロズ・チトー(1892-1980)に該当する。
チトーは1920年にユーゴスラビア共産党に加入。第二次世界大戦時にはドイツ国防軍への武力抵抗を呼びかけて人民解放軍(パルチザン)の総司令官になった。
戦後はユーゴスラビア社会主義連邦共和国首相兼国防相、第2代大統領、終身大統領となり、1980年5月4日、87歳で死去した。
死因は循環障害により壊疽を起こした左足を切断する手術を受けたが回復が思わしくなく、腎機能障害、肺炎、胃腸内出血、肝機能障害などを起こしたことによるとされている。
タラビッチの予言で唯一史実と違っているとされているのが「白い馬に乗った青い目の男(チトー)」の死因が狩猟中に落馬して脚を失ったことによるもの、という部分だとされている。しかし、むしろ「落馬して脚を失った」という若干の不一致が、ザハリヒ司祭のメモがでっち上げではない本物なのではないかという信憑性を生んでいる。
チトーが乗馬の名手で、狩猟好きだったことは事実なのだ。
しかも彼はクロアチア(当時はオーストリア=ハンガリー帝国の構成国スラヴォニア王国の領内)の出身で、父親はクロアチア人、母親はスロベニア人。
まさにセルビアに「やってきて」、社会主義という新しい宗教をもたらした。
タラビッチのセルビアとその周辺地域に関する予言(幻視)は他にも数多くあり、彼の死後の歴史はまさにその通りに進むのだが、ここではとりあえずそれらは飛ばして、現代世界のことを述べていると思われる部分を見てみよう。
この「画像付きの小道具が組み込まれた箱(a box and within will be some kind of gadget with images)」は間違いなくテレビ、あるいはその後に出てくるパソコンやスマホのことだが、これに関する記述は一部が前後していて分かりにくい。
英訳本では、上に記述した通りにはなっておらず、「人間はある種の箱を作るでしょう。その中には画像付きのある種の小道具が組み込まれています。しかし、たとえこの画像付き小道具が~」と続いていて、かなり後になって「この画像ガジェットの助けを借りて、人は世界中で起こっていることすべてを見ることができます」という記述が出てくる。
英訳本の編者はこうした記述の乱れについて、
しかも、テレビや飛行機といった現代文明については、タラビッチもザハリヒ司祭も見たことも聞いたこともないわけで、なんのことか分からないまま語った内容をそのまま書き残しているのだから、なおさらのことだろう。
そう考えると、英訳本の著者や編集者が意図的に内容を改竄したという可能性も低いように思えてくる。
現代社会を幻視したと思われる記述部分をさらに抜き出してみる。
石油は black goldと呼ばれるように、現代文明にとってはまさにgoldに代わるものだ。石炭やレアメタル、レアアースといった地下資源もすべて「金」といえる。これも説明不要だろう。
このへんは少し宗教がかった言い回しになっている感じもする。タラビッチは敬虔なセルビア正教の信者であり、その言葉を記録したザハリヒは司祭であることを思えば、教条的なニュアンスが加わることはむしろ自然なことで、ある意味こうした表現になっていることも、種本が本物だという印象につながるかもしれない。
さて、長くなってきたので、とりあえずこのへんで一旦切っておこう。続きはさらに面白いのでまた次のページで……。
In Deepの岡氏のメルマガで知ったミタール・タラビッチという19世紀のセルビア人の予言(託宣?)の話。
私はこれまでまったく知らなかったのだが、この手のものが好きな人たちの間ではだいぶ前から話題になっていたようだ。
ミタール・タラビッチ(1829-1899)は、セルビアのクレムナという小さな村の農民だった。
彼は文字が読み書きできなかったが、時折予言的な幻視を経験した。信仰心が篤い彼は、彼の叔父であり、ミタールの洗礼時の代父(godfather)にもなっていた地元のセルビア正教会のザハリヘ・ザハリヒ(Zaharije Zaharich)司祭(1836-1918)に、未来を透視した話をした。
司祭はそのすべてを小さなノートに書き留めていたが、1943 年、彼の家族の家がブルガリアの占領軍の攻撃によって燃えてしまった際に一部が消失した。
しかし、コピーが存在し、現在、ザハリヒの曾孫であるデジャン・マレンコビッチ(Dejan Molenkovic)氏の家族が所有している。 (英訳本の編者・ジュラ・セーバーが提供した本の要約紹介的な文章を、Tim Hobbs氏が自分のWEBサイトに転載した Mitar Tarabich Serbian Prophetより)
内容はセルビアとその周辺の政情などがどうなっていくかという内容が多いが、あまりにも詳細に当たっていったので、セルビアでは「黒い予言」として知られるようになり、セルビア政府が懸念して内容を隠蔽した、という話もある。
そのせいか、当地以外にはあまり知られることがなかったようだが、近年になって資料を探し集めて発表する人がいろいろ現れ、セルビア地域以外にも広まっていったらしい。そのへんのことはNora Boylesという人が1998年9月29日付で書いている記録がWEB上に残っている。
思いがけず、私の親戚がドイツの書店でタラビッチ氏の予言のコピーを手に入れることができた。それはミタールが信頼して幻視の内容を打ち明けたセルビア正教会の司祭が作成したメモから、司祭の曾孫であるデジャン・マレンコビッチがゴルンボビッチ氏(Dragoljub Golubovich )の助けを借りてコピーしたものだった。
本のタイトルは「Kremansko Prorocanstvo (クレムナからの予言)」。ローマ字を使用したセルビア語/クロアチア語で書かれ、1982 年に印刷されたものだった。おそらく、現時点で入手可能な最も完全な情報だろう。
しかし、私(Nora Boyles)はその言語を理解できない。本は 200 ページを超え、司祭とその親戚、そしてタラビッチの親戚の写真が数多く掲載されている。しかし、言語の難しさのため、私はミタール・タラビッチの写真を特定できなかった。
願わくば、誰かがこの言葉の問題を解決してくれることを願っている。
(Mitar Tarabich—Serbian Prophet: An Update by Nora Boyles September 29 1998 より)
↑この記述などは、かなり正直に書かれている印象があり、信用してもよさそうに思える。
で、ボイル氏が述べているセルビア語/クロアチア語で書かれた「Kremansko Prorocanstvo (クレムナからの予言)」は、その後、米国で英訳され、89ページのペーパーバック本として出版された。
著者はJura SeverとZoran Vanjaka。版元はVantage Pressということだ。
この本にはデジャン・マレンコビッチ氏が所有しているザハリヒ司祭の残したメモのコピーの内容と、その内容がいかにその後の歴史と符合するかという検証やいくつかの注釈が書かれている。
Fortunately a printout of the material had been obtained the first trip to the site. It was from Tim Hobbs that Gail Irwin obtained Jura Sever’s name and website: Sever Jura 3js49@qlink.queensu.Ca and eventually learned of the availability of the book she and Zoran Vanjaka were writing on Mr. Tarabich. It is available from Vantage Press, 516 West 34th St., NY, NY 10001, and is titled The Balkan Prophecy (price $9.95 + S&H). It is a small paperback book with 89 pages. From the bibliography I see that they made use of the priest’s great-grandson, Dejan Malenkovic’s work, Kremansko Prorocanstvo, as well as several other reference works to provide the basis and historical support for the accuracy of Mr. Tarabich’s prophecies.
(Mitar Tarabich—Serbian Prophet: An Update by Nora Boyles September 29 1998 より)
私はこの本そのものを手に入れたわけではない。ただ、ありがたいことにこの本の編者が書いた出版前の原稿からの引用がarchive.orgに残っていたために読める。
その冒頭で、編者のJura Severはこのように説明している。
私(Jura Sever)は現在、私の友人によって書かれたタラビッチに関する本を編集している。引用はそのテキストからのものだ。
タラビッチの言葉はセルビア・クロアチア語から実際に翻訳されたものであり、その翻訳は必ずしも最終的な形ではないことに注意されたい(つまり、本が最終的に出版される前に、いくつかの言い回しを変更する可能性がある)。言い回しのいくつかがぎこちなく、ラフだが、これは彼の田舎訛りを正確に反映しているためだ。特に、タラビッチの言葉は、彼の代父であるザハリヒ司祭との会話で構成されているため、「あなた」または「あなたの子孫」という言及は、ザハリヒに関連していることに注意したい。
また、タラビッチが「私たち」と言うときは、セルビア人を意味している。しかし、彼はクロアチア人、セルビア人、スロベニア人などを区別していない。彼にとって、彼の言語を話す人は誰でもセルビア人だからだ。
さらには、タラビッチの予言の内容に、彼自身の意見がどの程度入り込んでいるのかは分からない。要するに、彼が幻視した人々や出来事を説明するために使用された形容詞や表現のいくつか、例えば「知的な」「勇敢な」「正直な」「恐ろしい」「災難」といったものは、19世紀のセルビアの農民としての彼の目を通した表現だということに留意すべきだろう。
本が出版される前の校正原稿のようなものらしいが、むしろそのほうが種本の内容に忠実だろうから、貴重かつ好都合かもしれない。
で、この英訳文によってようやく我々もタラビッチの予言(予言というよりは「幻視」「未来透視」「託宣」というべきか)の内容を読めるようになったわけだが、と~にかく面白い。昨日はほとんどこの英訳原文を読み込んでいた。
「予言」としては、あまりにも正確かつ詳細な部分までその後の史実と一致しすぎているので「ほんまかいな」と疑問を抱かざるを得ない。現代の誰かが創作、捏造したのではないか、と勘ぐるのが普通だろう。
しかし、その内容は、インチキだろ、と簡単に唾棄できない魅力がある。
まず、19世紀セルビアの農夫というのが絶妙だ。イギリスやフランスなら、これだけドンピシャの内容の予言が話題にならないわけはなく、ノストラダムスの予言本などを超える世界的なベストセラーになっていそうなものだ。
でも、そうした考え方もまた、現代の情報社会に毒された偏見かもしれない。例えば「日月神示」が世界的には知られていないのと同じではないか(日本国内でも知っている人のほうが少ないだろう)。今の日本で、新コロやウクライナでの戦争のまともな情報がまったく伝わってこないことを考えても、知らされないことがいっぱいあるということは分かる。
ボイルの記述を信じるとすれば、少なくともドイツで購入できた200ページを超える「Kremansko Prorocanstvo (クレムナからの予言)」が1982年に印刷されたことは本当だろう。セルビア/クロアチア語で書かれたその内容をボイルは読めなかったと明かしている。
この「親本」の内容が後世にタラビッチの子孫などが作り上げたという可能性は否定できないが、とりあえず本物だとしてみる。
それを英訳したとする米国版ペーパーバックに創作が挿入された、あるいは史実に合わせて改作したという可能性もある。しかし、ボイルがこの本を1998年には入手して読んでいるわけだから、出版されたのはそれ以前のことで、21世紀に入ってからのことは追加や改作はできない。
2020年代を生きる我々が特に興味を引かれるのは、種本の後半部分に語られている第二次大戦後の世界を幻視した部分だ。
例えば、第二次大戦後の世界を述べたこんな部分。
「世界大戦の後、世界に平和が訪れます。多くの新しい国が出現します...黒、白、赤、黄色。
国際法廷が形成され、国々が互いに戦うことは許されません。この法廷はあらゆる国王より上位にあります。戦争が始まると法廷は公正に裁き、憎しみと殺戮を愛と平和に変えようとします。生きてこの時代を見ることができた幸運な人々はどれほど幸せなことでしょう」
「しかし、しばらくすると、何人かの強い王たちと小さな王たちが、その国際法廷への敬意を装い、好き勝手なことをし始めます。そのせいで多くの小さな戦争が始まります。多くの死者が出ますが、大きな戦争ではありません」
「イスラエル王国の周りでいくつかの戦争が起こりますが、遅かれ早かれ、そこにも平和が訪れます」
「これらの戦争では、兄弟が兄弟と戦います。 それから彼らは和解し、お互いにキスをしますが、彼らの憎しみは残ります」
「これらの小さな戦争はすべて、その邪悪さと悪意のために、強大な王国によって先導されます。盲目的な愚かさゆえに、彼らは互いに争い、虐殺し合のです」
国際法廷(英訳本では an international court)というのは国連のことだろう。国連を金科玉条のように仕立てて好き勝手する国々が出てくる。特に強大な王国(複数)によって誘導されるいくつもの小さな戦争(All these small wars are initiated by the great kingdoms, because of their wickedness and malice; those who fight and butcher each other do it because of their blind stupidity.)……という部分は、まさにアメリカを筆頭とするNATO勢力や軍産複合体が、巧みな情報操作、世論誘導で人々の間に憎しみを植えつけ、民族紛争を誘導していくという冷戦後の世界史そのものだ。
他にも、いくつか抜き出してみる。
「私たちの国では、平和と繁栄の時代が長く続きます。多くの世代が平和な時代に生まれて死ぬでしょう。戦争は巧みに書かれた本や言葉、そしてさまざまなおかしな幻影を通してのみ知ることになります」
英訳本の編者は、この「さまざまなおかしな幻影(different strange apparitions)」とは、テレビやラジオのことかもしれないと注釈している。
これはまさに現代の情報操作、情報戦争にあてはまる。タラビッチが言う「私たちの国」はセルビアやクロアチアだが、我々日本人も、1945年の敗戦以降に世界中で起きている戦争については、文字や映像、音声による情報でしか知ることができない。
その情報が捏造され、歪曲されていれば、情報を受け取る我々は、情報戦争を仕掛ける者たちの意のままにその戦争を色づけし、操られてしまう。
「私たちの王国は強く、誰からも愛され、尊敬されます。人々は「白い」パンと全粒小麦だけを食べたい時に食べるようになります。誰もが牛なしでカートに乗ります。人々は空を旅し、タラ山の倍の高さに登ったかのように私たちの土地を見下ろします。
ウジツェの下、そしてこれらの山々の周りには多くの工場が建設され、人々は土地を離れて工場で働くようになります。彼らは長い間それを好みますが、やがて彼らは自分たちの土地を思い出し、そこに戻ってきます」
これなどは特に解説はいらないだろう。タラビッチの生きた時代(1800年代後半)は日本では幕末から明治時代である。自動車はすでに発明されていたものの、空気入りタイヤや円形のステアリングが装着された自動車が登場するのはタラビッチの死後、1900年代に入ってからだ。もちろん、セルビアの小さな農村では自動車など見たこともなかっただろう。飛行機にいたっては、ライト兄弟が世界初の本格的な有人飛行を行ったのが1903年12月だから、これまたタラビッチの時代には存在もしていない。
「セルビアは、白い馬に乗った青い目をした男が統治している間、最も繁栄するでしょう。その男はセルビアに来て、ある新しい宗教をもたらします。王位に就いた彼は、強く、健康で、100年に近い長寿をまっとうします。彼は狩猟が好きで、狩りをしているときに誤って白い馬から落ちて足を失います。彼は老齢のためではなく、この傷のせいで死ぬでしょう」
この「白い馬に乗った青い目の男」はヨシップ・ブロズ・チトー(1892-1980)に該当する。
チトーは1920年にユーゴスラビア共産党に加入。第二次世界大戦時にはドイツ国防軍への武力抵抗を呼びかけて人民解放軍(パルチザン)の総司令官になった。
戦後はユーゴスラビア社会主義連邦共和国首相兼国防相、第2代大統領、終身大統領となり、1980年5月4日、87歳で死去した。
死因は循環障害により壊疽を起こした左足を切断する手術を受けたが回復が思わしくなく、腎機能障害、肺炎、胃腸内出血、肝機能障害などを起こしたことによるとされている。
タラビッチの予言で唯一史実と違っているとされているのが「白い馬に乗った青い目の男(チトー)」の死因が狩猟中に落馬して脚を失ったことによるもの、という部分だとされている。しかし、むしろ「落馬して脚を失った」という若干の不一致が、ザハリヒ司祭のメモがでっち上げではない本物なのではないかという信憑性を生んでいる。
チトーが乗馬の名手で、狩猟好きだったことは事実なのだ。
しかも彼はクロアチア(当時はオーストリア=ハンガリー帝国の構成国スラヴォニア王国の領内)の出身で、父親はクロアチア人、母親はスロベニア人。
まさにセルビアに「やってきて」、社会主義という新しい宗教をもたらした。
タラビッチのセルビアとその周辺地域に関する予言(幻視)は他にも数多くあり、彼の死後の歴史はまさにその通りに進むのだが、ここではとりあえずそれらは飛ばして、現代世界のことを述べていると思われる部分を見てみよう。
「司祭様お分かりでしょうか。第二次世界大戦後、世界は平和で豊かに暮らし始めますが、それはすべて苦い幻想です。多くの人が神を忘れ、自分の、つまり人間の知性だけを崇拝するからです。
司祭様はご存じでしょうか? 神の意志と知識に比べて、人間の知性とはいかほどのものでしょうか? 人間の知識など、海の中の一滴でさえないのです」
「人間はある種の箱を作るでしょう。その中には画像付きのある種の小道具が組み込まれています。この画像ガジェットの助けを借りて、人は世界中で起こっていることすべてを見ることができます。しかし、たとえこの画像付き小道具が人間の頭皮の毛と同じくらい近くに別の世界を見せてくれたとしても、それらの映像はすでに死んでいて、私と通信することはできません」 「人はすぐそばにいる隣人よりも自分が持っている小道具を信頼するでしょう」
この「画像付きの小道具が組み込まれた箱(a box and within will be some kind of gadget with images)」は間違いなくテレビ、あるいはその後に出てくるパソコンやスマホのことだが、これに関する記述は一部が前後していて分かりにくい。
英訳本では、上に記述した通りにはなっておらず、「人間はある種の箱を作るでしょう。その中には画像付きのある種の小道具が組み込まれています。しかし、たとえこの画像付き小道具が~」と続いていて、かなり後になって「この画像ガジェットの助けを借りて、人は世界中で起こっていることすべてを見ることができます」という記述が出てくる。
英訳本の編者はこうした記述の乱れについて、
ザハリヒは、タラビッチが予言した時点で常に書き留めていたわけではない。ときには数週間後に書き留めていた。そのせいで、彼の記録にいくつかの繰り返しや順序の混乱が起きているのかもしれない。と説明している。
しかも、テレビや飛行機といった現代文明については、タラビッチもザハリヒ司祭も見たことも聞いたこともないわけで、なんのことか分からないまま語った内容をそのまま書き残しているのだから、なおさらのことだろう。
そう考えると、英訳本の著者や編集者が意図的に内容を改竄したという可能性も低いように思えてくる。
現代社会を幻視したと思われる記述部分をさらに抜き出してみる。
人々は地中深くに井戸を掘って黄金を掘り出し、光と速度とパワーを与えられますが、代わりに地球は悲しみの涙を流すでしょう。黄金と光は地中よりも地上にあるからです。人間が開けた穴の傷のために、地球は苦しむでしょう。
石油は black goldと呼ばれるように、現代文明にとってはまさにgoldに代わるものだ。石炭やレアメタル、レアアースといった地下資源もすべて「金」といえる。これも説明不要だろう。
「人々は畑で働く代わりに、やみくもにあちこちを掘りまくり掘り当てたり外したりしますが、本当の力(real power)は人間のすぐそば、周囲にあるのです。地球はこう言っています。『ここだ。私を見つけなさい。きみたちのすぐそばにいる私を』と。
いくつもの夏を過ごして(※メモの中によく出てくる表現で、要するに長い時間を経て、という意味)初めて、人々はこの本当の力を思い出し、あちこちに穴を掘ったことがどれほど愚かであったかを理解するでしょう。真の力は人間の内部にも存在しているのですが、人々がそれを見つけ、使えるようになるまでには長い時間がかかります。
このように、人は長い間自分自身を知ることができずにいます。本を読み、知識を得た知恵者たちは、自分たちは何でもできると勘違いします。こうした知識人たちは、人が自分自身を知ることの大きな障害になります。人々は本当のことを知ったとき、知識人たちの言うこと信じたことがいかに間違った妄想であったかを知ることになります。
本当のことを知ったとき、人々はなぜこんな簡単なことが分からなかったのだろうと呆然とするでしょう。真実とは、本当に単純なことだからです。
人は、何もわかっていないのに何でも知っていると勘違いし、何でもできると思って、多くのばかげたことをします」
「人々の魂は悪魔よりもずっと悪いものに取り憑かれます。人間の頭の中には真実など何もないのに、自分たちが抱く幻想が本当の真実であると信じるでしょう」
このへんは少し宗教がかった言い回しになっている感じもする。タラビッチは敬虔なセルビア正教の信者であり、その言葉を記録したザハリヒは司祭であることを思えば、教条的なニュアンスが加わることはむしろ自然なことで、ある意味こうした表現になっていることも、種本が本物だという印象につながるかもしれない。
さて、長くなってきたので、とりあえずこのへんで一旦切っておこう。続きはさらに面白いのでまた次のページで……。
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