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『3.11後を生きるきみたちへ 福島からのメッセージ』

『3.11後を生きるきみたちへ 福島からのメッセージ』

(2012/04/20発売 岩波ジュニア新書本)…… 3.11後1年を経て、経験したこと、新たに分かったこと、そして至った結論
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裸のフクシマ

『裸のフクシマ 原発30km圏内で暮らす』(たくき よしみつ・著)

(2011/10/15発売 講談社 単行本)…… ニュースでは語られないフクシマの真実を、原発25kmの自宅からの目で収集・発信。
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「斑目スケール」だといくつでしょう2012/05/09 11:19

斑目春樹
日本では珍しい竜巻被害で、久しぶりに「藤田スケール」という言葉を聞いた。
Wikiで確認すると、ものすごいことが書いてある。

F5:ありえないほどの莫大な壊滅的被害。強固な建造物も基礎ごと吹き飛んでいってしまい、自動車大の物がミサイルとなって数百メートルを超過して空を飛び交い、どこからともなく大型トラックが降ることもあるという。樹木も根こそぎ宙を舞い、とにかく信じられないような大惨事になる。

ちなみに、今回の北関東での竜巻被害はF2に相当するらしい。

藤田教授には失礼だが、これにならって「斑目スケール」というのを考えてみた。


藤田スケール F(竜巻被害の度合を示す指数)と斑目スケール M(原子力事故被害の度合を示す指数)の比較



F0:被害は比較的軽微。煙突の損傷、木の枝が折れる、根の浅い木が傾く、道路標識等の損傷など。
M0:被害は比較的軽微。パイプの損傷、少量の冷却水漏れなど。うまくやれば隠蔽できる。

F1:中程度の被害。屋根がはがされたり、自動車で引く移動住宅などは壊れたりひっくり返ったりする。移動中の自動車は道から押し出される。壁続きのガレージは破壊される。
M1:中程度の被害。もんじゅの燃料装填クレーンの部材が炉心に落ちたりする。隠しきれないが、莫大な金を注ぎ込んで何度でも挑戦すれば収拾できるかもしれない。

F2:大きな被害。家の壁ごと屋根が飛び、強度の弱い木造住宅や移動住宅などは破壊され、貨車は脱線したりひっくり返ったりし、大木でも折れたり根から倒れたりする。軽いものはミサイルのように飛び、車は横転したり数十メートル程度飛んだりする。
M2:大きな被害。JCO事故のように強力な放射線が施設の外に漏れ、住民が被曝する。作業員は急性放射線障害で悲惨な死に方をする。しばらくは騒がれるが、やがて人々の記憶からは消えていく。

F3:重大な被害。建て付けの良い家でも屋根と壁が吹き飛ぶ。列車は脱線転覆、森の大半の木は引っこ抜かれ、ダンプカーなどの重い車でも地面から浮いて飛んだりする。
M3:重大な被害。建て付けが良いと思っていた建屋も水素爆発で屋根と壁が吹き飛ぶ。汚染水はだだ漏れ。敷地内の「野鳥の森」の木は伐採され、汚染水を貯めたタンクの貯蔵場所に変わる。それでも原子力ムラは解体されず、地位や利権構造はしっかり守られ、除染ビジネスという新たな利権を生み出すこともできるので、そうそう悲観することはない。

F4:深刻な大被害。建て付けの良い家でも基礎が弱いものはちょっとした距離を飛んでいき、車は大きなミサイルのように飛んでいく。
M4:深刻な大被害。どうも単純な水素爆発ではなさそうだぞというような大爆発が起き、使用済み核燃料プールに貯蔵されていた燃料棒がミサイルのように飛んでいく。海外の専門家からは「即発臨界による爆発ではないか」と指摘されるが、一般の人たちには知られないように情報隠蔽はできる。

F5:ありえないほどの莫大な壊滅的被害。強固な建造物も基礎ごと吹き飛んでいってしまい、自動車大の物がミサイルとなって数百メートルを超過して空を飛び交い、どこからともなく大型トラックが降ることもあるという。樹木も根こそぎ宙を舞い、とにかく信じられないような大惨事になる。
M5:ありえないほどの莫大な壊滅的被害。強固な圧力容器ごと吹き飛んでいってしまい、原発を構成していたあらゆる構造物がミサイルとなって数百メートルを超過して空を飛び交い、世界中どこにいてもどこからともなく放射性物質が大量に降ることもあるという。土も水も根こそぎ放射能汚染され、とにかく信じられないような大惨事になる。

F6:もし発生するようなことがあるならば、未曾有(みぞう)の超壊滅的な被害が予想される。この階級以上の竜巻の発生率は全体から見てもごくごくまれな割合である。
M6:もし発生するようなことがあるならば、未曾有(みぞう)の超壊滅的な被害が予想される。この階級以上の原子力事故の発生率は全体から見てもごくごくまれな割合である。そんなことになるまで自分は生きていないと思うので、知ったことではない。

「今まで(壊滅的な事故にならなくて)よかったよかったで来ています。ただし、よかったじゃないシナリオもあるでしょうね。そのときは原子力発電所とまっちゃいます」
「安心なんかできるわけないじゃないですかぁ、あんな不気味なもの~」
「最後の処分地の話は……最後は結局お金でしょ」(by 斑目春樹)


この人が今でも原子力安全委員会のトップなのである。
本当の「危険物」は人間。こういう危険物を取り除く「除染」をまっ先にやらなければいけないのは、議論するまでもないだろうに。

原発のない社会を実現させるためにまず必要なこと2012/04/30 19:33

送られてきた本と資料
槌田敦さんと室田武さんから同時に本と原稿のコピーが届いた。
エネルギーとエントロピーの問題に気がつかせてくださったお二人には、拙著『3.11後を生きるきみたちへ 福島からのメッセージ』を謹呈した。その返礼としてお送りいただいたもの。
むさぼるようにして読んだ。
『福島原発多重人災 東電の責任を問う  被害者の救済は汚染者負担の原則で』(日本評論社)は かなり衝撃的な内容も含まれていて、今さらながらびっくり。

いくつか興味深い記述を抜き出してみる。


 原発は運転を停止している間であっても、核燃料や使用済み燃料の冷却を続けるためのポンプなどの動力、制御用のシステム、回収工事などの動力として電力を大量に必要とする。これを「所内電力」という。その量は1基あたり約4~5万キロワットにも上る。(中略)
 2007年、柏崎刈羽原発が中越沖地震で7基全部止まったときには、約40万キロワットもの電力を東京から送らなければならなかった。それは柏崎刈羽原発が新潟県最大の「電力消費地点」になったことを意味する。そのためにも東電は、1日も早く柏崎刈羽原発を1基でも動かしたかった。
 3.11後の今も同じことが起きている。(中略)1ワットも電気を生まない福島第一と第二で、これだけの電力(約50万キロワットと推定)が消費されている。(中略)私たちが節電しているのは、福島第一と第二を冷やすためなのかといいたくなるような実態だ。
(第5章冒頭 P49 担当・山崎久隆)

 原発は、一度止まってしまえば、どんなに早くとも安全点検などで1週間程度は再稼働できない。これほど不安定な電源にいつまで依存するつもりなのだろうか。
 「脱・原発依存」という言葉は、計画停電で生産活動に支障があったと主張している経団連などがまっさきにいうべきであろう。
(第5章の最後 P57 担当・山崎久隆)

 かつて、東電の勝俣恒夫会長が総務部長だった頃、東電が自然エネルギーに取り組むことについて「自然エネルギーではだめだということをわかってもらうためです」と語ったことがある。今回もそのやり方で自然エネルギーに資金が投じられる。この資金に人々が群がって大騒ぎするが、結局は勝俣会長のいったように自然エネルギーは失敗する。これを原子力(推進側)は狙っている。
(挿入コラム「エネルギー問題」という大ウソ P135 担当・槌田敦)



2号機、4号機の破壊がどういう経過で起きたのかという点、また、福島県を中心とした汚染の実態を踏まえた上で、被曝してしまった我々が今後どのように生きていけばいいのかという点について、山崎氏と槌田氏の意見は食い違っているが、二人とも3号機が単なる水素爆発ではないという見解では一致している。
同時に手紙と資料を送ってくださった室田武さんも、やはり3号機が水素爆発などではないという見解ではガンダーセン氏、槌田敦氏らの見解は正しいだろうとおっしゃっている。
まあ、僕が生きている間には、本当のことは分からないのだろう。

何がどうなっていたのかということを正確に分析・認識することはもちろん大切なのだが、今、まっ先にしなければいけないことは、エネルギー行政、原子力事故の後始末を、引き続き犯罪者たちの手で行わせてはならないということだ。一旦、原子力ムラを完全解体して、まともな人間、組織にしてから始める。それができないところに最大の問題があり、危険が存在している。

もうひとつ、出版されているものとして『原発廃炉に向けて ──福島原発同時多発事故の原因と影響を総合的に考える』(エントロピー学会編、日本評論社)の中から、室田武さんが担当した「原発廃炉の経済学」の最後の部分を抜き書き。

 再生可能エネルギーとされているもののうち、たとえば太陽光発電、風力発電は、全面的に天候に依存する技術です。送配電網のないところではそうした発電技術は大いに役立ちます。しかし、送配電網が整備されている地域では大きな意味はありません。むしろ高速回転する風車による低周波公害が問題ですし、太陽光パネルも寿命が尽きればゴミの山です。原発を廃炉にしてその代わりに再生可能エネルギーを、といってしまうと、それは幻想に終わります。
 太陽や風力は特殊電源として有用なのであって、常用電源としては、石炭、石油、天然ガスを中心に考え、そのうえで節電、省エネルギー、そして公害対策を進めればいいのです。


室田さんは、脱原発社会を実現するための最大の障壁は、多くの人たちが「CO2温暖化説」に洗脳され、その結果「低炭素社会」を実現せねばと勘違いしていることであって、人々がこの間違った思いこみから一刻も早く抜け出すことが必要だと説いている。
まったくもってこの呪縛はやっかいで、相当なインテリでさえ簡単に引っかかって、しかもその後ずっと強い呪縛にとらわれている。
この呪縛が続く限り、人々の「よき社会を実現したい」という思いは空回りするどころか、原子力ムラの妖怪たちに利用され、税金を吸い取られ続け、自然環境はますます破壊されていく。これではどうにもならない。
僕自身、悪人たちの所業に怒りを覚えるのは当然なのだが、それよりも、善人たちが洗脳されていることへの絶望のほうが大きい。
悪党に殺されるより、善良な人たちに殺されるほうがはるかに哀しい。阿武隈の生活で、実際にそれを経験してきた。これは太平洋戦争に突入していったときと同じような構図だろう。
権力を間違った方向に行使させないためには、善良なる人々の「数」で勝負するしかない。しかし、現代社会では、その「数の力」を、利権にあぐらをかく少数権力者たちがいいようにコントロールし続けている。
原発は、本来やってはいけない事業、成立しえない事業に莫大な税金を投入してごり押ししてきた。まったく同じことが、「再生可能エネルギー」の高額買い取りという形で始まってしまった。
今、この国が全力でやるべきことは、すべての原発を確実に安全に廃炉にしていくことであり、金と人材はそこに注ぎ込まなければならない。これ以上、税金を無駄に捨て、自然破壊を続けてどうする。
これだけひどいことになりながらもまだ目が醒めないこの国に未来はない。

福島第一だからまだ助かったという話2012/04/23 13:53

玄海原発の立地
■こんな場所に建てた時点で稼働させる資格なし■ 元東電社員という人たちが、次々に原発犯罪を告発している。
木村俊雄さんに続いて、医師・小野俊一さんも積極的に発言している。
遅ればせながら、小野医師の講演動画を見てみた(※下のほうに貼り付けました)。
それはちょっと誇張では? と思うような箇所もあったが、いろいろな視点を提示してくれる有意義な内容だ。
例えば、玄海原発、美浜原発の立地図を見せて、「こんなところで連鎖事故が起きたら人が近づけないから対処不能でしょ。福島第一はそういう意味では海岸に一列に並んでいて(陸側から容易にどの号機にもアクセスできるから)理想的な配置」と述べているところ。
まったくその通りだ。
美浜にしても玄海にしても、進入路である橋が落ちたり、半島の付け根が高濃度汚染されて人が近づけなくなればまったくのお手上げ状態。1Fのような同時進行形事故が起きたら離れたところからなす術なく見ているしかない。
ということは暴走するに任せるまま。その後どうなるかは想像したくもない。
こんな場所に作ってしまったということ自体がダメなわけで、ストレステストだのなんだのと言っている以前に、ロケーションからして失格。
小野医師に言わせれば「いちばんきれいに建てられている」福島第一があんなことになったのだから、他の原発は論外ということになる。どの原発も再稼働なんてありえないでしょ、と。
再稼働を議論していること自体がおかしい。

↑美浜原発の立地(Google Maps より クリックで拡大)


↑玄海原発の立地(Google Maps より クリックで拡大)

どちらも根っこが細い半島の先に位置している。1Fのような同時進行事故が起きた場合、高線量に汚染された場所を通らないと原子炉に近づけなくなるため、お手上げになる。

そもそも、地震大国日本に原子力発電所を建ててはいけないということを福島第一の事故は教えている。
↓これは小出裕章氏の著書『子どもたちに伝えたい──原発が許されない理由』のカバーだが、巨大地震の巣の上に原発を平気で建てている国は日本くらいだということを如実に示している。

↑クリックで拡大

地震大国日本に原発を建て続けてきて、まともな保守管理もしなかったことは「国家犯罪」だが、全世界に放射能をばらまいてしまった今、日本は「犯罪国家」になったのだ。


線量の高い場所に「避難」している意味2012/04/19 11:52

郡山市内の空間線量を表示させたところ

ようやく線量の低い場所に戻ってきた役場と学校

文科省WEBサイトに「全国及び福島県の空間線量測定結果」というページができた。
今までは地名と数値がずらずら並んでいるPDFなどで出していたが、原発が爆発して1年以上経ってから、ようやくこのように多少は視覚的に分かりやすいものが出てきた。
今までPDFの資料をダウンロードしてまで読もうと思わなかった人たちも、これで少しは見る気が起きて、現状を分かってもらえるようになるかもしれない。

川内村の村長が「帰村宣言」をしたことに対して「子供たちを汚染された村に戻そうなんて、とんでもない話だ」と憤っている人が未だにたくさんいるようなのだが、事実は逆なのだ。
川内村の村民の多くは、郡山ビッグパレットそばの仮設住宅、あるいは郡山市内のマンションやアパート、戸建て住宅を「借り上げ」て仮設と同じにみなしてもらう制度(入居者数により最高月額9万円まで家賃補助)を使って郡山市内に「避難」しているのだが、空間線量のことだけをいうなら、川内村から郡山市に「避難」する意味はまったくないことがよく分かる。
ビッグパレットからいちばん近い計測ポイントを抜き出してみると、

日出山公園
0.518μSv/h

虹保育園
0.520μSv/h


……といった数値が出てくる。
一方、川内村の中心部を見ると、

川内村立川内小学校
0.110μSv/h

川内村立川内中学校
0.129μSv/h

かわうち保育園
0.168μSv/h

川内村役場
0.146μSv/h

……となっている(2012年4月19日時点)。この0.1xμSv/hというのは、首都圏とあまり変わらない。柏市あたりよりはよほど低い。

その他、ざっと見たところでも、郡山市内のほうが川内村中心部より、どう考えても線量は高い。
郡山市に「避難」している子供たちが川内村に戻って川内小学校や川内中学校、かわうち保育園に通うことは、被曝線量を下げることになる

川内村中心部の線量(0.1xμSv/h)でも十分に高いから危険だと主張する人がたくさんいる。となると、郡山市、福島市、二本松市、本宮市、伊達市といった福島県の都市部は、問題外で住めないということになる。
中心都市部に居住できないなら、福島県は廃県にするしかない。
そういう議論を仕掛けていることになる。
壇上に上がって「帰村宣言などとんでもない!」と声高に叫ぶ人が、川内村の名称すら正しく言えない(かわうちちょう、とか、かわまたむら、とか言っている)というシーンも見たことがある。
考え方がいろいろあることは分かるが、少なくとも単純な事実誤認は避けてほしいものだ。

30km圏の住民が、線量の高い都市部に「避難」していていつまでも戻って来ないのは、被曝が怖いからではないのだ。

↑郡山市内の学校は除染でかなり線量が下がった。こういう場所からピンポイントで除染していくことは必須。


↑クリックで拡大


↑クリックで拡大

尾米タケル之一座 ガンバレ 「スイシンジャー」!2012/04/17 12:17

これがまともな日本の姿 3.11以降、日本のテレビから原発ネタのお笑いがまったく出てこない。
北朝鮮のことを言えない国になってしまっている。
ようやくほっと一息つけるものを見つけて嬉しいな。






まだまだ再生回数が少なすぎる。
ネットの力、フル稼働だ。
細かいことだけど、テーマソングの字幕の worry のスペルが間違ってるよ

東電品川火力が福島第一だったら2012/03/20 13:56

もしも東電品川火力発電所が福島第一原発だったら


23区内はすべて立ち入り禁止、横浜、さいたま、千葉も生活不能



前にも出したが、「もしも東電品川火力発電所が福島第一原発だったら」という地図の分かりやすいやつがようやくできたので公開したい。(上の図 クリックで拡大)
4月20日に出版する『3.11後を生きるきみたちへ 福島からのメッセージ』(岩波ジュニア新書)の冒頭で使うために岩波の編集部に作っていただいたものを元に着色した。

3.11後1年以上経った今でも、事故原発20km圏内は立ち入り禁止の「警戒区域」で、入ると罰せられる。
30km圏では学校や病院が再開できていないから、事実上生活ができない。
また、30km圏までの住民には、「避難中の精神的損害補償」として1人あたり10万円/月の賠償金が支払われているが、これを首都圏でやったら完全に日本は破産する。
ざっと2000万人が該当するとして、1年で、これだけで24兆円なのだから。

★3月24日の富士見市の講演会用に項目まとめを作ったので、それも併せて公開。
まだ空きはたくさんあるそうです。申し込みは

tel:049-261-5371 (ふじみ野交流センター)までお願いします。


■ あの日何が起きたのか + 最近分かったこと

●もしも1Fが東電品川火力の位置だったら……富士見市は最も汚染された津島の位置
●絶対に停電してはいけない場所でのお粗末すぎる備え
●津波が来る前に壊滅状態……2Fは今でも相当ひどい
●見捨てられた人たち・見捨てた人たち……県は国より先に知っていた
●徹底して隠された汚染の事実……ヨウ素131は南に流れていた
●最も危険な場所に避難誘導された……津島で何が起きていたか
●川内村全村避難劇の裏側……東電と富岡町長は最後まで避難を渋った
●線量計で汚染状況をいち早く検証……最初に情報が流れたのはmixi

■ 放射能とつき合うしかなくなった

●放射能汚染の基礎知識……ベータ線、アルファ線源はほとんど検査していないという実情
●外部被曝と内部被曝……怖いのは内部被曝
●テレビが放射能被害を拡大させた……警戒すべきときに安全といい、安全になってから煽る
●放射能とどこまで「共存」できるのか……福島の農家、さまざまなスタンス

■ 壊されたコミュニティ

●わざわざ線量の高い学校に通わされた子供たち
●30km圏の我が家に帰ったときの気持ちとその後の展開
●テレビで伝えられる映像とのギャップ
●義援金はどこにどう渡ったのか……津波被害地域にもっと配るべき
●家に戻ると補償金がもらえない……「帰れない」の本当の理由
●同じ福島県民同士がいがみ合う……飲み屋、パチンコ屋、タクシーは儲かるけれど
●汚染していないコメを捨てさせる……農家から誇りや生き甲斐を奪うことの怖ろしさ

■ 放射能より怖いもの

●「除染」によって危険が広がることもある……除染は単純な正義ではない
●森の除染は「儲かる」……優先順位もやり方もおかしい
●除染作業は内部被曝が心配……わざわざ再拡散~粉塵を吸い込んで内部被曝
●「国策」に潜む大きな危険……税金投入がなければそもそも原発はなかった
●命にとって本当の「危険」とは……生き甲斐、楽しさのない人生こそ危険

■ これからの時代の「自治力」「地域力」
●中越地震が教えてくれたこと……土地に根ざして生きることの大切さ
●永遠に成長し続けることはできない……石油が涸渇すれば「自然エネルギー」も使えない
●価値観の多様な世界に生きたい……マイナス成長時代を楽しむ
●「田舎で起業」「熟年王国建設」の勧め……発想を変えて生き抜く工夫。本当に住みたい土地、住みやすい町とは?

いわき市民のヨウ素内部被曝が隠されていたわけ2012/03/14 17:49

セシウム(青)とヨウ素(赤)の拡散分布ははっきり分かれた

いわき市はヨウ素131で汚染された

隠された「福島最大の都市」の初期被曝

『裸のフクシマ』(講談社)に詳しく書いたが、私は3月26日に避難先の川崎市から川内村の自宅に「自主一時帰宅」した。避難が長期化しそうなのと、いつ立ち入りができなくなるか分からないので、重要な荷物などを回収してくることが目的だった。

 守谷SA:0.33μSv/h。(川崎市の仕事場の倍以上だが、まだまだどうということはない)
 日立北IC付近、通過している車の中で1.08μSv/h(このへんはトンネルが続くのだが、トンネルに入ると一気に下がり、0.1~0.5μSv/hくらいに一気に下がる)
 関本PA:1.6μSv/h
 いわき湯ノ岳PA通過:2μSv/h(時速80kmくらいで走行中の車の中でこれだけ上がった。その後、いわきジャンクションから磐越道に入るところまでは高かったが、磐越道を西に折り返すように進むにつれ、線量はどんどん下がっていった)
 差塩PA:0.5μSv/h
 小野ICで降りると線量は一気に下がり、町の中では0.3μSv/hくらい(驚くほど低くて拍子抜けした)

……とこんな状況だった。
その後、何度も常磐道を通ったが、他の地域の線量に比べると、いわき市はぐんぐん下がって、数か月後には首都圏とあまり変わらない程度になっていた。
3月下旬のときに高かったのはなんだったのだろうと、ずっと気になっていたのだが、1年経って放送されたNHKのETV特集『ネットワークでつくる放射能汚染地図5 埋もれた初期被ばくを追え』を見てその謎が解けた。
セシウムとヨウ素では、汚染地帯が正反対だったというのだ。

↑青いのがセシウム、赤いのがヨウ素131

これは文科省データだけで証明できている。ただ、文科省データは別々に計測地点と数値だけを出しているから、このようにきれいに可視化されず、気がつく人は少なかった。

番組では、独立行政法人海洋研究開発機構の2人の研究者などがまとめたヨウ素131の拡散状況が公開されていた。


いわき市を通過して茨城、栃木、群馬方向に流れていったという。
セシウムとヨウ素の拡散状況がこれだけ違ったのは、放出時期とそのときの風向きによるものだろう。あのとき、風は大半が東に、つまり海側に流れていったので、放射性物質もほとんどが太平洋に流れていってくれたが、ちょっと風向きが変わっていただけで首都圏が飯舘村並みに汚染されていた可能性もあるのだ。

で、問題はいわき市などに降ったヨウ素131による内部被曝だ。
ヨウ素131は半減期が8日だから、もはや痕跡は残っていない。今からホールボディカウンターを使ったところで出ない。
空中を流れていったのだから、風下にいた人たちは微粒子ごと体内に吸い込んでいる。
その初期被曝でどれだけ健康に問題が出るのかは分からない。ヨウ素の放射能がすでに消えてしまっているのだから、今からできることはない。
1年前にDNAが壊されたとすれば、その後の自然修復に期待するしかない。
いわき市は今はもうほとんど汚染されていないと言ってもいいので、今から避難してもあまり意味はないだろう。くよくよせず前向きに行動し、栄養のあるものを食べて、よく眠り、傷ついたDNAを修復することがいちばんかと思う。

いわき市民に避難地区と同レベルの「精神的損害補償」を支払うと4000億円/年

いわき市は福島県最大の都市だから、ここでシビアなヨウ素131被曝があったと認めてしまうと、賠償問題などが今とは桁違いに膨れあがる。
避難していた精神的障害への賠償という名目で避難区域の人たちには10万円/月が支払われているが、同様にいわき市の人たちに、「状況を知らされないまま初期被曝をさせられ、その恐怖を今後ずっと抱え続けることへの精神的障害」への賠償を行ったらどれくらいの金額になるのだろうか。
いわき市の人口は約34万人。避難地域並みに1人10万円/月の「精神的損害補償」を支払ったら、ひと月で340億円。1年で4000億円を超える。
当然、セシウム汚染がひどかった福島市や郡山市など、中通りの人たちの精神的苦痛も無視できないから、その人たちにも全員10万円/月を支払えば、軽く兆を超える賠償金が必要になる。
福島県全体なら約200万人だから、月に2000億円、年2兆4000億円……。
だから国も東電もひたすら都市部の汚染には目を向けないようにさせているのだろう。
都市部の汚染は数値的に明らかなのに、国民やマスコミの目を都市部よりも原発周辺の過疎地に向けることで、賠償問題が大きくなることを防ごうとしている。

せめて今からできることは、これから出てくるかもしれない子供の甲状腺癌の兆候を見逃さないようにしっかり見守る態勢を作ること。兆候が出たらすぐにできうる限りのケアを施せるように準備すること。せめてそのくらいはしっかりやってもらわないと。


青がセシウム汚染、赤がヨウ素131汚染。はっきり分かれている


(独)海洋研究開発機構の研究者がまとめたヨウ素131の流れ


ヨウ素131の拡散シミュレーション(1)


その2 まず南方向に流れ出した


その3 いわき市を直撃してさらに南へ


風が東寄りに代わり、茨城・栃木へ


宇都宮あたりもヨウ素131はかなり飛んできた


日光や南会津もかなりやられた。そして群馬に……

※いずれもNHK 『ETV特集 ネットワークでつくる放射能汚染地図5 埋もれた初期被ばくを追え』 より

■講演会 「災害とコミュニティ ~震災後、原発30km圏内で起きたこと」

●日時 2012年3月24日 午後1.30~3.30
●場所 富士見市立ふじみ野交流センター(最寄り駅 ふじみ野)
●講師 たくき よしみつ
●参加費 無料
●定員50人・要申込 tel:049-261-5371 (ふじみ野交流センター)

原発運命共同体が壊す福島の和2012/02/19 14:37

原発運命共同体が壊す福島の和

俺たちは賭けに勝った……?

2つ前のトピックで「『運命共同体』という賭けに破れた人たち 」 という文章を載せた。
原発を誘致した人たちは、原発誘致という賭けに負けたという意味のタイトルだったが、最近、彼らは本当に「賭け」に負けたのかどうか、疑問に思うようになっている。
立地4町の富裕層は一時的には財産を失ったし、収入基盤もなくなったかもしれない。しかし、川内村の人たちのように、事故前より実質収入が増えて、予想外の都市生活を家賃ただで始めているケースを見ていると、この人たちは買った記憶もないくじを当てたのかもしれないと思えてくる。

多くの村民は仮設や借り上げ住宅を手続きして「避難中」という証明を担保した上でちょこちょこ自宅に戻っている。どっちが別荘なのか分からないが、家賃ただの都市生活をしながら、仕事をしないことで収入補償を得られる根拠としての30km圏の自宅を維持するという、新種の二地域居住をしている。
「今日はどっちに泊まるんだ?」
「今日は郡山に戻る。明日また来て草取りの続きすっから」
……村にいると、こんな会話が毎日交わされているのに出くわす。統計上は「避難中」で家に戻っていないことになっているし、それによって東電からの「避難生活等による精神的損害」補償(1人あたり月額10万円)もしっかり受け取っている人たちの会話だ。
庭の草むしりや家の周囲での畑作業は以前と同じようにしているが、田んぼは放置したまま。下手にいじると農業補償が減らされかねないという恐れからだ。
おかげで村中の田んぼは草ボウボウになった。夏にはメマツヨイグサが、秋にはセイタカアワダチソウが人の背丈ほども生えた。
この草が刈られたのは冬が迫ってからだった。村から日当が出た。自分の田んぼの草刈りをするのに日当が出たというので、ずいぶん話題になった。
作業中、マスクをしている人はほとんどいない。みんな「放射能なんて大したことねえっぺ」と高をくくっている。
村は、田んぼは荒れ果てたので今期も作付けは無理であるから全面補償をしてほしいと願い出ている。
おそらくそうなるのだろう。2年続けて農業補償。それだけなら米を普通に作って売っていたときより安いかもしれないが、ほとんどの家は兼業農家で、給与収入分は全額就労不能損害補償されているし、失業保険をもらえる人はそれももらっているから二重に補償され、仕事をしないほうがしていたときより収入増になった。
金のことだけを考えれば、彼らは賭けに負けたとは言えない。「想定外」の金を得て、戸惑いながらも都会生活の中で虚しく使っているように見える。

福島県人同士が憎しみ合う構図

今、福島市、郡山市、いわき市などの都市部では、市民が原発立地や周辺自治体(「30km圏利権」が生じたエリア)から来ている人たちへの憎悪が激化している。県外の人たちもようやくそのことに気づき始めたようだ。
都市部の市民は、放射能汚染された自宅を捨ててどこかに行きたくても補償されない。仕方なく、ものすごいストレスを抱えたまま、今日も黙々と、普通に生活している。
タクシーの運転手は客が増えた。「避難」してきている人たちが毎晩飲み屋で遊ぶから。飲み屋に呼ばれて客を乗せ、行き先を訊くと「○○の仮設住宅へ」とか、借り上げしているアパートの場所を告げられる。

3.11前、毎日うちに宅急便を届けてくれていた村の人は、郡山の借り上げ住宅に一家で避難したまま戻って来ない。代わりに、富岡やいわきで、津波で家を流された人が毎日山を越えて届けてくれていた。
事故後ひと月で再開した川内郵便局の局員には、津波で家を流されたいわき市の人もいた。
彼らは自分たちの仕事の公益性を十分に承知していて、仕事をすることが当然と思い、誇りも持っていた。
彼らのおかげで物流を確保できた村の人たちはどうしていたか……。
仕事に復帰すれば就労不能損害補償がなくなるからと、避難したまま遠巻きに村の様子を見ているだけだった。
働けば働いた分だけ補償が減らされるのだから、厳しい仕事に戻ろうなどと思うはずがない。なんとか理由をつけて「失業中」を維持しようとするだろう。そのことを非難できる人がいるだろうか。後は「恥」とか「尊厳」の問題になってくる。

郡山やいわきのパチンコ屋、飲み屋は連日繁盛している。
パチンコ屋の駐車場には、日が経つにつれ、ピカピカの新車が目立つようになった。補償金や義援金で潤った人たちが車を買い換えたからだ。

前双葉町長・岩本忠夫氏(昨年、避難先の福島市で死去)が、双葉地方原発反対同盟委員長を務めていた1972年に造られた「原発落首」(「落首」=世相を風刺した狂歌の類)を再掲したい。


 このごろ双葉に流行るもの、飲み屋、下宿屋、弁当屋。
 のぞき、暴行、傷害事件。汚染、被曝、ニセ発表。
 飲み屋で札びら切る男、魚の出どころ聞く女。
 起きたる事故は数あれど、安全、安全、鳴くおうむ。
 なりふりかまわずバラまくものは、粗品、広報、放射能。
 運ぶあてなき廃棄物、山積みされたる恐ろしや。
 住民締め出す公聴会、非民主、非自主、非公開。
 主の消えたる田や畑、減りたる出稼ぎ、増えたる被曝。
 避難計画作れども、行く意志のなき非避難訓練。
 不安を増したる住民に、心配するなとは恐ろしや。



原発運命共同体は賭けに負けたのだろうか? 勝ったのだろうか?
麻薬中毒は立ち直ることが難しい。
人間、みな弱い。金を目の前にぶら下げられて拒否できる人は少ない。
しかも、家と土地を見えない汚物で汚され、仕事も失っている身となれば、「こんな金はいらん。俺は仕事をする!」と宣言する意志力を持てる人は極めて少ないだろう。

「ありがとうございました。またどうぞ」
今夜も福島のどこかで、飲み屋のマスターやタクシーの運転手が、原発30km圏からの「避難者」たちにこう挨拶している。
心の中では、その客への憎しみをまたひとつ増大させて。

福島で今起きている本当のことを、日本中の人に知ってほしい。
この国は、こういう手口で我々を手懐けてきたのだということを。
そして、その手口に使われた金は、我々が仕事をして、なけなしの稼ぎから納めた税金であり、せっせと節電に協力しながらも支払わなければならない電気料金から出ているのだということを。
放射能より怖いもの……それは「フクシマ」のような惨劇を経験しながらも何の反省もなく、こうした「手口」を今もってこの国は使い続けていること。そして、国民がそれを許し続けているということだ。

「1人10万円/月」だけではない高額補償を捨ててまで帰る者などいない2012/02/19 12:18

この内容では帰る者が出てくるはずがない

「30km圏利権」という罠

■家に帰れば補償打ち切り、仕事を再開すれば補償減額

先日、某新聞社記者から電話があって、「川内村がいち早く帰村宣言をしたが、今の気持ちと村の現状を聞かせてほしい」という。
逆にその記者に、「本当のことを書けるのですか?」と訊いた。

テレビでは「除染が完全に済んでいないのに帰れない」といったことを言う「避難者」が映し出される。それを見て視聴者は「汚染された村に帰れだなんて、村長は人殺しか」などというトンチンカンなコメントをネットに書き散らす。

全然違う。

放射能汚染はもはや関係ない。最初から、村の中心部の汚染は避難先の郡山市などより低いということをここでも何度も書いている。
帰れないのは、帰ると補償金がもらえなくなるから
非常にシンプル、かつ切実な理由からだ。

東電の「賠償金ご請求の解説」というパンフレットが僕の手元にも届いている。
そこにはこう書いてある。

避難生活等による精神的損害
1人あたり10万円/月 または 12万円/月
開始日:平成23年3月11日
終了日:賠償終期の前に帰宅された場合は、初めて帰宅された日

つまり、家に帰ればその日をもって1人あたり月10万円の賠償金が打ち切られるというのだ。
この「精神的損害賠償金」はすでに今年2月末分までは確定しているので、今も「避難している」と主張する人たちには全員120万円/年以上が支払われる。(仮払い金も含めてすでに過去の分は支払われている)
ちなみに12万円/月は、体育館などの集団避難所にいた期間について支払われる金額。仮設住宅や借り上げ住宅制度(貸し家、マンション、アパート、個人所有の別荘などを避難先として登録すると、月9万円までの家賃を出してくれる制度)が始まってもなかなか避難所を出て行こうとしなかった人たちの理由のひとつになっている。仮設や借り上げに移ると、食費光熱費がかかる上に、補償金が減らされるから移りたくない、ということだ。
この「精神的損害補償」だけで、例えば5人家族なら年600万円の支給になる。

「1人10万円/月」だけではない高額補償

これは賠償項目の1つに過ぎない。
「就労不能損害」補償では、「事故がなければ得られた収入 - (事故後)実際に得た収入」の差額を支払うということになっている。つまり、仕事を再開しなければ事故前の収入が全額補償されるが、仕事を再開して少しでも収入を得るとその分は差し引くということだ。
例えば、月収40万円あった人は、原発事故のせいで仕事を失ったとして仕事につかなければ事故前の40万円という月収がまるまる補償されるが、頑張ってバイトを見つけ、月15万円稼ぐようになれば、その15万円は差し引かれる。仕事をしてもしなくても収入が変わらないと言われ、仕事をする人がどれだけいるだろうか。
ちなみに、これとは別に失業手当は出ているから、正規雇用者は二重に補償されている。
また、ほとんどの家は兼業農家だから、農業補償などの補償も加わっている。
「今年度も全面作付け禁止にしてほしい」と村のほうから願い出るのも、不労収入を減らしたくないという村民の「総意」を受けたものだ。



働いて稼いだ分だけ補償額から引くという信じがたい内容↑(クリックで拡大)

ついでに、「過去の実績給与等の証明ができない場合の賠償額」の決め方も実に奇妙だ。
3.11時点で月140時間以上勤務していて、「就労する期間が決まっていない(期間の定めがない)雇用形態」の人は15万円/月。就労する期間が決まっていた雇用形態の人は9万円/月だという。不定期就労のほうが補償額が多い。これでは、いわゆる臨時雇いやパートであっても「私は月140時間以上勤務していたが雇用期間は決まっていなかった」と申請して15万円/月を得ることになるだろう。
月140時間以下の労働時間であっても、最低補償が3万円/月もらえる。
田んぼの除染が始まると、歩くのがやっとの老人が草刈り機を手にして田んぼの脇に1日座っている光景を見たが、あれは日当をもらうための頭数増やしにかり出されたものだ。同じように、どんな内容であっても「不定期に勤労していた」と申告すれば、3万円/月が支払われるのだから、就学児以外の家族はじいさんばあさんも総動員させて「就労不能損害補償」を申請していることだろう。
精神的損害補償1人10万円/月、就労不能損害補償は3.11前の収入分の全額、失業保険は別途支給で期間も延長、たまにアルバイトしていた、あるいは近所のお手伝いで謝礼をもらっていた程度の就労実績でも申請の仕方によっては毎月定額の「就労不能損害補償」。草ぼうぼうにしている農地があればあるほど農業補償上乗せ……これだけでも、ざっと計算してみれば、総収入が1000万円/年を超える世帯が続出しているであろうことが分かる。

以前の給与証明ができない場合、不定期就労者のほうがなぜか補償額が大きいという不思議↑(クリックで拡大)

家に戻ればその時点で1人10万円/月がなくなる。仕事を再開して収入を得れば、その分賠償金が減らされる。
そんな腐った補償規定で村をシャブづけ状態にしておいて、復興だの再生だのがありえないことは明白ではないか。
補償金がもらえる間は極力何もしないでもらい続ける。それがいよいよ打ち切られたら、今度は「除染ビジネス」で金をもらう。放射性物質を含んだゴミ処分場建設でも金がいっぱい落ちそうだ。なるべく国有地ではなく、村有地や私有地を指定してもらえ……。

村の行政としても、村民が仕事をせず、村に戻らないことがいちばん高収入という今の状況を少しでも長く維持することが「村民の意志」「総意」であると認識して、そのように動いている。村長の苦悩はいかばかりか。

……取材を求めてきた記者さんにこんな話をしたところ、「う~ん、やはりそれは書けませんね。私たちが考えている内容とは違うので……」と言われた。
かくして、日本中、今日もまた「一日も早く故郷へ帰りたい」「除染を急げ、住民の願いは届くのか」みたいな的外れな記事を読み、間違った福島情報を積み重ねていく。


私は当初、東電とは闘ってきちんと賠償金をもらうつもりでいた。しかし、今はこの土俵の上に乗ることが嫌だ。
私は「緊急時避難準備区域」が解除される前から村に戻って普通に生活を再開していたが、それによって「精神的損害補償」は打ち切られたことになる。
その後、村人たちの様子がどんどんおかしくなっていくことに耐えられず、昨年末、自費で移転先を探し、今は安い中古住宅を見つけてそこに移ってきている。
川内村の自宅を失った上に、なけなしの預金をはたいての引っ越し。大変な財産損失だが、しばらくは東電への「賠償金請求」という土俵には乗らないつもりだ。今のままではシャブづけの仲間入りになってしまうからだ。
アヘン巣窟のようになってしまった村を見ているのは辛い。
放射能が怖くて帰れないのではない。人々がまともに生きる気持ちを失い、補償金の維持という一点で強く結ばれている「運命共同体」に参加したら、意味のある人生を送ることができなくなる。阿武隈で暮らす意味がない。
阿武隈の自然が壊される前に、コミュニティが──人間の心が壊されてしまった。
あそこでもう暮らすことはできないと覚悟を決めるしかない。
この悲しみと悔しさは、3.11直後のショックよりはるかに大きい。

「川内村のミミズ」記事で騒いでいる人たちへ2012/02/06 16:57

線量が高いところでは土壌も汚染されたというだけの話

農水省所轄の独立行政法人である森林総合研究所の長谷川元洋主任研究員(土壌動物学)が、昨年8月下旬~9月下旬に川内村の国有林で採取した数十匹のミミズから1キロあたり約2万ベクレルの放射性セシウムが検出されたと報告したというニュースが大きく報じられている。
このニュースを受けて、「そんなとんでもない汚染の村で帰村宣言とは何事か」「村長は住民の命を何だと思っているのか」といったコメントがネット上に溢れている。
この問題についていくつか確認しておきたい。

調べたのは3か所だけ

 この調査の元サンプルになったミミズは、昨年8月~9月に農水省が、川内村、大玉村、只見町の3か所で杉などの木を伐採して採取したときの副産物らしい。
 この調査は、杉などを伐採して木の部位別(葉、枝、樹皮、辺材、心材)および林内の落ち葉などの堆積物、土壌の放射性セシウム濃度を調べることが目的とされている⇒中間報告書はこちら
 調査地点は3か所だけで、この3か所の中では川内村が第一原発に一番近い(一部は20km圏内の警戒区域)。
 そのときの空間放射線量は、川内村の調査地点で3.11μSv/h、大玉村が0.33μSv/h、只見町が0.12μSv/hだったという。
 ちなみにニュースでは調査したのは昨年8月下旬から9月下旬となっていたが、この報告書には8月8日~12日の5日間と書かれている。後からミミズなどを追加で採取したのかもしれないが、空間線量を計測したのはおそらくこの8月8日~12日だろう。

空間線量が高いところほど土壌汚染もひどいというだけのデータ

 さて、昨年8月時点で空間線量が3μSv/hを超える場所といったら、川内村の20km圏外では極めて限られていた。思い当たるのは、大津辺山の一部あたりか。川内村といわき市との境界あたりにはホットスポットがあり、荻や志田名という地名はNHKの番組でも報じられたので有名になった。そこにある民家は川内村よりもいわき市のほうが多い。ちなみに、川内村でそのホットスポットにあった1軒は「特定避難勧奨地点」に指定された。
 具体的には下川内三ツ石 勝追という場所で、7月の時点で空間線量が3.2μSv/hを超えていたという。該当の家はすでに新潟県に避難していた。
 こうしたホットスポットは存在していたので、おそらくそのそばの国有林か、あるいは20km圏警戒区域内の国有林だろう。
 ちなみに我が家は家の両側が国有林だが、昨年8月の時点で林の中の空間線量は1μSv/h以下、家の外で0.5μSv/h程度だった。
 

 で、森林総合研究所のミミズ調査の件だが、これは「空間線量が高い場所は土壌もそれだけ汚染されている」というデータにすぎない。サンプルは3か所だけ。空間線量が0.12μSv/hや0.33μSv/hの土地より、その10倍、30倍の線量がある土地はもっと汚染されていますよ、ということが証明されただけで、あたりまえすぎる話。
 要するに、空間線量が3μSv/h程度ある森林の土壌に棲むミミズは2万ベクレル/kgくらいのセシウムを含んでいる可能性がありますよ、ということになる。
 ミミズ1kgというのはあんまり想像したくない図だが、仮に体重が10gのミミズであれば、1匹あたり20ベクレル程度のセシウムを含んでいますよ、ということだ。

川内村の広さと位置関係を把握していますか?

 たった3か所のサンプル採取地の1つがたまたま川内村のホットスポットだったことで、ニュースを読んだ人たちの多くは「川内村ってとんでもなく汚染された村なのだな」と思いこむ。
 これはまったく違う。
 川内村の面積は千代田区の17倍ある。
 福島第一原発を東電の品川火力発電所の位置だと仮定すると、警戒区域の20km境界線は横浜市の緑区役所あたり。村の中心部はそこから数km離れているだけだが、空間線量は柏市のホットスポットなどより低い。
 モリアオガエル繁殖地として国の特別天然記念物指定を受けている平伏沼(へぶすぬま)は第一原発から29kmほど離れているが、上の品川火力発電所からの位置に喩えるなら、横浜市を通り越して大和市市役所あたりに該当する。ここは今でも1μSv/h前後あり、第一原発に近い村の中心部よりずっと線量が高い。
 もし、森林総合研究所が調査した地点が下川内のホットスポットに近い森の中だとすれば、品川火力発電所からの位置だと、横浜市緑区の鴨居あたりだろうか。
 首都圏の人に思い描いてほしいのは、もしも品川火力発電所の位置に福島第一原発があったとすれば、横浜市緑区の住民も大和市の住民もみんな川内村の住民に該当するということ。で、緑区でも緑区役所周辺の人は0.2~0.3μSv/hだから、かなり安全な場所だけれど、鴨居に住んでいる人は3μSv/h以上の線量ホットスポットになってしまい、避難しなければならないということだ。
 今回の「川内村のミミズからセシウムが2万ベクレル/kg」というニュースに反応して「川内村は汚染されている。そこに暮らすなんてとんでもない」と主張する人たちに知ってほしいのは、その主張は、「横浜市緑区鴨居の杉林のミミズから高濃度のセシウムが検出された⇒こんなところに住んでいるのはとんでもない⇒東京都内はもちろん、神奈川県も全部避難しろ」……というようなスケールの話だということだ。

 こんな風に、ホットスポットの存在やまだら状に汚染された状況は複雑で、千代田区の17倍の土地に家が千戸もない川内村を地理的にひとくくりにして「危険な村」と把握してもらっても困るのだ。
 川内村の中心部(役場の周辺。小学校や中学校もこのへんに集まっている)では、昨年8月時点での空間線量はせいぜい0.2μSv/h~0.3μSv/h程度だった。川内小学校のグラウンドやウッドデッキの上で、僕は実際に線量を計ってもみたが、そのとき川内小学校が間借りしていた郡山市の小学校よりずっと線量は低かった。川内小学校の子供たちは、母校よりずっと汚染がひどい小学校に通わされていたことも知っておいてほしい。


↑東電品川火力発電所の位置に福島第一原発があったとすると、川内村の位置はこんな感じ

この調査発表の真意は?

森林総合研究所が去年発表した中間報告書では、杉の葉と落ち葉に高い濃度のセシウムが付着していると報告している。


これもまあ、あたりまえのことで、杉のような常緑樹では上から降ってきた放射性物質は、あの細かなブラシ状の葉に多く絡め取られるだろうし、それをすり抜けた分は地表に落ちるのだから、そこにすでに落ちていた落ち葉に付くのも当然すぎる結果だ。
ただ、勘違いしてはいけないのは、この調査時点での「落ち葉」というのは、前年に落ちた葉であって、4月以降に芽吹いた新緑ではないということだ。
だから、事故後の冬に落ちた落ち葉にはほとんど放射性物質は付着していないはずで、むしろその「新しい落ち葉」は、すでに地表に積もっていた放射性物質の上に被さって、放射線を遮蔽し、放射性物質の再拡散(粒子として飛び散る)を防ぐ働きをしているはずだ。
であれば、無理にこの「新しい落ち葉」をかき集めるのは、放射性物質の再拡散を促すだけではないかということも考えられる。
それでも、この報告を鵜呑みにした人たちは「森を除染しなければ除染は完了しない。いつまでも森から放射性物質が流れ出して、里の人々の健康や農地を脅かす」と言いたいのだろう。

はっきり言おう。
汚染された土地から出て行ける人、出たいと思う人は出たほうがいい。そうした人たちへ移転費用を出すのはあたりまえである。
しかし、それでは原発利権を築いてきた連中が「儲からない」のだ。
除染という名目であれば、巨額の税金を投入できる。その新たな「公共事業」で利権が生じて、原発で儲けた企業や、原発を推進してきた官僚たちも安泰である。事実、政府から除染を請け負っているのは「もんじゅ」を運営している原子力機構(独立行政法人日本原子力研究開発機構)だ。
原子力機構が除染ビジネスを仕切って、原発建設をしてきたゼネコンなどに新たな事業を丸投げし(当然、「中抜き」はして)、ゼネコンなどの原発関連企業が原発立地の建設会社、土建会社などに下請けさせ、そこからさらに、原発に「人夫出し」をしていた地元の有力者たちがおこぼれにあずかる。
原発を推進してきたときとまったく同じ構図が、すでにできあがって、動いている。もう誰にも止められない勢いだ。

森林の除染などという、できるはずのないこと、意味のないことに莫大な税金を注ぎ込むような愚かなことは許されない。そんな金があるなら、汚染された土地から移住したいと思う人たちへの援助や、汚染が低かった土地での産業や文化の再構築といった、人間と自然を守る方向に使うべきだ。
川内村の低汚染地域について言えば、帰村宣言というよりは、外から新たに志を持った熟年世代、農業者を呼び込むくらいの政策を打ち出してほしかった。
しかし、すでに除染、除染で動き始めてしまった村に、僕自身、安心して住んではいられないし(内部被曝のリスクは除染作業が盛んになるにつれ上がるだろう)、ましてや村の外から人を呼び入れて村の再建を……ということもできない。今の状況では無責任すぎるからだ。
すでに阿武隈の友人たちのほとんどは、新天地を求めて北海道、岡山、佐渡、長野、山形……と、散り散りになっていった。
今の僕は、遠くへ行ってしまった友人たちとはネットワークが途切れないようにし、移転先を探している友人たちには知りうる限りの物件情報を提供し、村に残って頑張っている友人たちには、今回のようなバカげた誤解情報が拡散しないよう、日本中の人に事実を知ってもらう努力をしている。

帰村宣言は人殺しだ、などというお門違いなことを叫ぶ人たちに言いたい。問題はそんなに単純ではない。本当の悪はそんなところにはない。
原発推進と同じ手口で騙され続けてはいけない。
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