ワクチン開発より既存薬の活用を2020/10/05 15:04

身体に悪いので、このところ政治関連やCOVID-19関連のことは書かないようにしていたのだが、久々に現在の世界におけるCOVID-19死者数状況を確認してみた。

ファクターXはやはりあるだろう

新型コロナで一体何人が死んだのか?
全世界の人口100万人あたり133人死亡している。これは累積の死者数。つまり、このウイルスが確認されてから現在までに、1万人に1人ちょっとがCOVID-19で死んだということになる。

やはり国・地域による偏在ぶりが目立ち、欧米に比べて東アジア諸国は極端に死亡率が低い。
世界平均より死亡率の高い国をざっと拾ってみた(worldometers.info による)。
統計に表れる死者数は、PCR検査数の多寡にも関係すると思われるので、念のため、人口100万人あたりの検査数も併記した(100以下は四捨五入)。

100万人あたり死者数100万人あたり検査数
ペルー98711万9000
ベルギー866 29万
ブラジル686 8万4000
スペイン686 27万2000
チリ 674 17万9000
米国 646 33万3400
英国 623 36万8500
メキシコ610 1万5500
イタリア595 19万3400
スウェーデン583 16万4200
フランス493 17万1100
オランダ376 14万2900
カナダ 250 20万

やはり、死亡率が高い国は欧米に集中している。
日本は100万人あたり13人が死んでいる。
100万人あたり13人という数字は、アメリカの約50分の1である。

日本のように、100万人あたりの死亡者数が2桁以下の主な国を見ていくと、
100万人あたり死者数100万人あたり検査数
インド 74 5万7100
フィンランド 62 19万5000
フィリピン 53 3万4900
ノルウェー 51 19万8000
インドネシア 41 1万2700
オーストラリア 35 30万3900
セネガル 19 1万0700
香港 14 44万1000
日本 13 1万7000
ケニア 13 1万0300
エチオピア 10 1万1200
韓国 8 4万5800
シンガポール 5 49万2200
ニュージーランド5 19万6000
中国 3 11万1200
タイ 0.8 1万0700
スリランカ 0.6 1万3500
ベトナム 0.4 1万0300
台湾 0.3 4000
モンゴル 0 2万2200
カンボジア 0 8500
ラオス 0 7400

……となっていて、やはり東アジアは極端に低い。
モンゴルは世界の平均より結核患者の数が多いそうだが、COVID-19で死んだ人は今のところ見つかっていないらしい。検査していないのではないかといわれそうだが、100万人あたり2万2000の検査数は日本の同・1万7000よりも多い。

オセアニアやアフリカも概ね低い。
アフリカ諸国のデータはどこまで信用できるのか分からない、と、多くの人は感じているだろう。検査数が少なければ、隠れコロナ死も多いはずだ……と。
でも、セネガル、ケニア、エチオピアの検査数は100万人あたり1万を超えているので、日本とあまり変わらないように見える。見落としがいっぱいある(隠れコロナ死が多い)としても、欧米に比べると少ないのは確かなのではないか。

つまり、COVID-19で死ぬ確率は、やはり遺伝子的な要因が大きく関係していると思わざるをえない

岩田健太郎教授は、日本でも高齢者の死亡率はイタリアとそれほど変わらないのだから、いわゆる「ファクターX」は存在しないのではないか、という主張をしていた
確かに、イタリアで一時期死亡者が続出したのは、高齢者施設などで集団感染が広まったことが大きく関係しているようだ。
それは確かだろうが、それだけでこんな差が出るとはどうしても思えない。

高齢者対応と既存の薬の活用が重要

ただ、ここでひとつ疑問に思うのは、高齢者施設で肺炎などで亡くなった入居者をPCR検査してみたらSARS-CoV-2が陽性だったという場合、死因は「新型コロナ感染症」とされてしまうのではないか、ということだ。
もともと身体のあちこちの機能が弱っていた終末期にある高齢者が亡くなった場合、直接の死因はコロナといえるのだろうか。
コロナが最後の駄目押し的要素になったとしても、もともと弱っていた内臓の機能や呼吸器系の障害がいちばんの要因であり、本来なら死亡診断書に「老衰」と書かれてもおかしくないような人でも、検査をしたらコロナ陽性だったから「死因は新型コロナウイルス感染症」とされている場合もあるのではないか。

いずれにしても、高齢者や病人が感染した場合は致死率が一気に上がるのは分かっているのだから、高齢者施設や病院での感染予防対策を徹底させることが第一だろう。
高齢者施設でアルコール消毒液などが足りないといっていたときに、全世帯にアベノマスクを配るだのというバカ施策をしていた官邸グループは恐ろしい。

さらには、若い人でも重篤化しやすい(サイトカインストームを起こしやすい)遺伝形質を持った人が、数は少ないとはいえ、確実に存在しているのだから、そういう重篤化しそうなケースをいち早く見抜いて、手遅れにならないうちに対応することが必要だ。
その有効策はワクチン開発ではない。既存の薬が有効だと分かってきたのだから、その治験を増やして、即応できるようなシステム作りを急がなければならない。
東京都救命救急センターでもある日赤医療センターでは、重篤化したCOVID-19患者が運び込まれる例が多いが、レムデシビル、デキサメタゾン、トシリズマブの3剤併用療法(RDT療法)を導入したところ、致死率が下がったと報告している。
トシリズマブは未承認なので、現在は臨床研究倫理委員会の承認および患者の同意を得て投与しているという。

メディアは、「早くワクチンが開発されるといいですね」などという言葉を決まり文句のように使っているが、分かっていないことが多い中で、副作用の危険性や有効度合が分からないワクチン開発よりも、既存薬による有効治療を確立するほうがはるかに重要だろう。

ワクチン開発競争には、製薬会社の利益や国家間の戦略が絡んだ不透明で怪しげな情報、金のやりとりも感じられる。そうしたものに巨額の税金が流れるよりも、地に足のついた実践的、効率的、合理的、公正公平な医療戦略に徹してほしい。
それをしっかりやった上で、大学の対面授業などはすぐに再開するべきだし、GoToだのなんだのに税金を使うよりも、「普通の生活」を再構築した上で、高齢者や、重篤化しそうな患者への医療対応に金とマンパワーと知恵をつぎ込むべきだ。
思うに、これは日本だけではないが、政府は現場の医療者より、感染症専門研究者の意見を重視しすぎたのではないか。
分からないこともまだたくさんあるが、分かってきたこともいろいろあるのだから、分かってきたことを判断材料として、冷徹な施策を進めてほしい。

ちなみに、今年、日本でCOVID-19陽性で死んだ人は1,597人(10月5日時点)だそうだが、今年に入ってからの自殺者は8月までで1万3109人である。
8月だけで1854人で、昨年8月に比べて251人増えたという。
特に若い女性が増えており、30代以下の女性の8月の自殺者数は前年に比べ74%増えている
コロナのせいで、この先も、自殺者増加の傾向は続くだろう。
誤解を恐れずにいえば、
日本では、COVID-19で死ぬ高齢者よりも、自殺する若者の数のほうがはるかに多いのである。
これから生きていく人たちに幸福を与えられる社会をどう作っていくかを、政治家や官僚には、真剣に考えてほしい。

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新型コロナとエイズ2020/08/27 14:54

エイズを題材にした小説
「感染」を巡って、恐怖や疑念が世の中に渦巻き、メディアが騒ぎ、不当な差別・偏見が広がる……かつてこれに似たことがあった。
今から30年近く前、1990年代初めの、エイズをめぐる報道や社会の風潮がそれだ。
30年も前のことだから、若い人は知らないだろうし、30代くらいの人も記憶にはないだろう。
私は強烈に覚えている。
というのも、「エイズをテーマにした映画を作るから原作を書いてみないか」と持ちかけられ、実際に書き上げたからだ。
主人公が若い男女で、エイズの絡んだ話であればなんでもいい。映画はその「原作」とは関係なく脚本家を立てて進めるので、「原作」ということにさえしてくれればOKである……という、ひどい依頼内容だった。
出版社の担当編集者の知人が持ち込んできた話だった。
日本を代表する映画会社の社長が代替わりして、その若社長が社長就任と同時に「エイズ映画を作る」とぶち上げたという。映画はもう制作着手しているが、売り出すために「原作」となる文芸作があったほうがいいから、何かないか……という。
「どうする? 話の筋はなんでもいい、って、ひどいよね。でも、あなたを売り出すきっかけにはなるかもしれない」
「受けたほうがいいでしょうか?」
「そうね。話題になれば、本を買って読んでみようという人も出るし、読めば、作品のクオリティは映画とは別にちゃんと評価されるでしょうから」
編集者にそう言われ、私も同意し、書き上げた。
当時、精神的に不安定な時期で、自分の人生、命というものを見つめ直す作業として取りかかった。
書き上げた小説は純文学路線で評価が高かったが、映画の「原作」にはならなかった。当時、テレビに多く露出していた女性「ノンフィクション作家」のルポ本を「原作」とすることにした、とのことだった。
そのルポはアメリカでのエイズ患者との交流を書いたノンフィクションだから、完全なフィクションの恋愛ドラマである映画とはなんの関係もない。それでも「原作」と銘打てるのかと呆れ、驚いたが、内心、自分の作品が「原作」として使われないことになってホッとしたものだ。

話が少しずれたが、今のコロナ騒ぎを見ていると、あのときの空気感に似ているなと思うのだ。

もちろん、HIVと新型コロナウイルスでは、感染の仕方も違うし、エイズは日本の社会をひっくり返すほどの現象は生まなかった。
しかし、連日のようにメディアが騒ぎ立て、人々がエイズという得体の知れない感染症に対して恐怖を植えつけられ、多くの人がエイズ感染者に対して偏見と差別の眼を向け、排除するような行動をとったという点で、今の社会と共通するものがある。

そこで、改めてエイズ騒動がその後どうなったのか、確認しつつ、今の新型コロナウイルスの状況と比較してみた。

HIV保有者数
  • 世界:3800万人(2020年現在の推定。UNAIDSによる)
  • 日本:2万836人(2018年末。エイズ動向調査委員会)

SARS-CoV-2陽性反応者数
……このデータを見ると、現時点で、全世界では、SARS-CoV-2陽性反応者(PCR検査陽性者)の数よりHIV保有者のほうが1.6倍くらい多いらしい。
では、それぞれのウイルスが原因で死んだ人の数はどうか。

HIV関連疾患による死者数
  • 世界:2019年1年で69万人(50万~97万人)が死亡。HIV感染が始まってからの累計では3270万人(2480万~4220万人)が死亡。(UNAIDSによる)
  • 日本:現在は治療薬が普及して年間死者が2桁を超えることはない(2018年は18名。APIネット調べ)。HIV感染者の平均余命も健康人とほぼ変わらない。

COVID-19による死者数
  • 世界:累計で約82万人(8月26日時点 ジョンズ・ホプキンス大学による)
  • 日本:累計で1218人(8月26日時点 同上)
エイズ感染者と関連死の数は、現在ではアフリカが圧倒的に多い。これは貧困層に治療薬が行き渡っていないことも大きな要因だろう。
しかし、当初は欧米での死者も多かった。

日本における死亡者は,1995年に男子52名,女子4名であり,以後,男子50名前後,女子数名の状況は変化せず,2006年には男子55名,女子5名となっている.
アメリカの状況は日本とは大きく異なる.1987年の男子12,088名,女子1,380名からはじまり,急速に死亡者が増加し,1995年には男子35,950名,女子7,165名とピークを示した.その後急激に減少し,2005年には,男子9,189名,女子3,354名となっている.
1995年以降の死亡者の急激な減少は,HAART療法の効果によるものと推定される.
一方,ポルトガル,ウクライナ,ロシアなどでは,この死亡者の急激な減少はみられず,特に南アフリカでは死亡者が1990年以降急激に増加し,減少傾向はまったく見られない.HAART療法等により,未だHIV/AIDSによる死亡者の減少が見られない諸国において,死亡者が減少することを期待したい.
東京都健康安全研究センター年報,60巻,283-289  2009年

↑この報告は2009年のものでかなり古い。
その後は少しずつ死者数が減っているが、
2017年末現在、HIVとともに生きている人は世界で3,690万人となっています。また、2017年に新たにHIVに 感染した人は180万人、エイズ関連疾患によって亡くなった人は94万人となっています(国連エイズ合同計画(UNAIDS)より)。
日本では、近年1,500人前後が新たにHIVに感染・エイズを発症していると報告されています。また、HIVに感染していたことを知らずに、エイズを発症して初めて気づいたというケースが、新規HIV感染者・エイズ患者数の約3割を占めています。
日本政府広報オンライン

……だそうで、現在は年間69万人(推定)だが、2000年代前半には世界で年間約200万人が、数年前までは年間100万人前後の人がエイズ関連で死んでいたのだ。

しかし、日本で暮らしていると、エイズで年間100万人死んでいるという話を聞くことはほぼない。エイズのことなど長い間忘れていたという人がほとんどではないだろうか。

日本国内では男子数十名、女子数名のレベルの死者だった1990年代、同じ時期、アメリカでは男子数万、女子数千名レベルでエイズで死んでいたというのも、今のCOVID-19による死亡状況に通じるものがある。2桁どころか3桁多い。

新型コロナもエイズ同様に忘れられていく?

新型コロナウイルスが、 前回の「まとめ」にあるようなものであるとすれば、今後、時間はかかるだろうが、エイズ騒動と同じように推移していくのだろうか。
つまり、

  • 世界は新型コロナウイルスと共存していく。人々はこのウイルスが存在していることを徐々に忘れて、普通に生活するようになる。
  • 日本では発病者や重症化する人の数が少ないので、メディアも徐々にこの話題に飽きて、もっと刺激的な話題へとシフトしていく。
  • しかし、世界レベルでは医療が十分受けられない国、人種、貧困層などで、毎年相当数の人がCOVID-19で死んでいく。
  • 死者は貧困層や途上国に集中するようになる。
  • ワクチンや治療薬開発、販売を巡って、製薬会社などと国家レベルでの取り引きが行われるが、詳細は一般人には知らされない。


……歴史が教えてくれるところでは、こうなっていく気がする。
また、医療現場や介護現場は疲弊し続け、今までのレベルでは医療・介護サービスを受けることが困難になり、COVID-19以外での死者も増えるが、そうしたデータや現場の事情は徐々に報道されなくなるだろう。

ちなみに、UNAIDSでは、新型コロナウイルスパンデミックによって、HIV治療薬の高騰や中低所得国への供給不足が懸念されるとしている。
これはHIVに限らず、他のあらゆる疾病や怪我の患者にもいえることだ。

冷静にデータを読み取り、医療や介護の金とマンパワー資源を合理的に配分し、福祉レベルを下げないことを目指す政治に切り替えることが急務である。

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コロナより「コロナ自粛強要」で社会が壊れる2020/08/26 22:00

暴露と感染の広がり方 高橋泰教授の説明図(https://toyokeizai.net/articles/-/365254?page=4 より)

↑「新型コロナウイルス感染の広がり方」(高橋泰教授による説明図 「東洋経済ONLINE」より)

「自然免疫で撃退説」のおさらい

前回、COVID-19に対する高橋泰教授らの「実態予測と提言」をまとめたものを紹介したが、こうした提言が複数の医師や研究者から出てきてひと月以上経つのに、未だにメディアは毎日「新規感染者数は○人でした」という伝え方を変えていない。
高橋教授の主張は、東洋経済ONLINEにいくつか出ているので読める。
●新型コロナ、日本で重症化率・死亡率が低いワケ 高橋泰教授が「感染7段階モデル」で見える化(2020/07/17)
●高橋泰教授が新型コロナをめぐる疑問に答える 暴露と感染の広がり方、PCR検査の問題を解説(2020/07/27)
●新型コロナ、「2週間後」予測はなぜハズレるのか 高橋泰教授「データに合う新型コロナ観を持て」(2020/08/07)

詳しくは原文を参照してほしいが、1つだけ重要な指摘をあげれば、
「PCR検査陽性者」イコール「新型コロナウイルス感染者」ではない、という点だ。
  • 新型コロナウイルスは暴露力(体内に入り込む力)は強い
  • しかし、伝染力と毒性は弱く、かかっても多くの場合は無症状か風邪の症状程度で終わる
  • ウイルスが身体に入り込んだ状態でPCR検査をすれば陽性反応が出る。
  • しかし、多くの場合(高橋教授らのチームは、日本では98%と推定)、自然免疫だけでウイルスを排除してしまうので、無症状かごく軽い風邪のような症状で終わってしまい、ほとんどの人はウイルスが身体に入り込んだことに気づかない
  • この「自然にウイルスを排除した人たち」は、体内に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する抗体を作るまでもなく終わっているので、その後、抗体検査をしても陰性となる。
  • 残り2%の人たちは自覚的な症状(風邪や肺炎のような症状)が出て、SARS-CoV-2に対する免疫を獲得する(その後、抗体検査をすれば陽性と出る)。
  • この2%の人のうち、ごく一部の人たちにサイトカインストーム(免疫暴走)が発生して重症化し、死者も出る。

……そういう分析内容だ。
つまり、「PCR陽性者」=「新型コロナ感染患者」ではないし、必ずしもスプレッダー(ウイルスをばらまき、感染者を増やす人)だともいえない。
PCRが陰性になった人は感染歴がない人ではないし、明日以降、スプレッダーになる可能性はある。

もちろんこれは現時点では1つの仮説なのだが、現状と照らし合わせてみると、非常に納得がいく仮説だと思える。
重要なのは、何人がウイルスに暴露しているか、暴露したか、ではなく、重症化する人を減らすこと、重症化する人をいち早く見つけて有効な治療をすること、なのだ。
で、問題はサイトカインストームが発生して重症化する確率だが、
20代では暴露した人10万人中5人、30~59歳では同1万人中3人、60~69歳では同1000人中1.5人、70歳以上では同1000人中3人程度、
……という推定値だという。

この確率が、アジア人はなぜか欧米人より二桁低い。その理由がいわゆる「ファクターX」などと呼ばれるようになったものだ。
BCG説や生活習慣要素など、様々な「ファクターX」候補が挙げられているが、HLA型などの遺伝的要素が最も大きいのであろうということは、多くの医師、研究者が感じているし、すでに多くの論文も出てきている。

「新規感染者数」という伝え方の問題

以上のことを踏まえれば、「新規感染者数」の増減で騒ぐことにはほとんど意味がない。
なぜなら、PCR検査で陽性が出た人の数というのは、その時点でたまたま体内にSARS-CoV-2が入り込んでいる状態で、それが検査したから判明した、ということであって、COVID-19(SARS-CoV-2に感染して病理症状が出た状態)の増減傾向を示すものではないからだ。
同様に、抗体検査で陰性を示す人が、過去にSARS-CoV-2に暴露していないことにもならない
「感染経路が不明な人の割合」というのはもっと意味がない。感染経路など分からなくてあたりまえなのだから。
家族の一人にPCR陽性者が出たので家族全員を検査したら全員陽性だったとする。その場合、「家庭内で感染」と分類されるのかもしれないが、その家族全員が別々の場所でウイルス暴露して、たまたまそういう人たちが集まっている家庭なのかもしれない。
暴露する力が非常に強いウイルスなのだから、どんなに注意をしてもウイルスが身体に入り込むことはある。それを「感染者」というレッテルを貼って「隔離しなければ」とか「不注意だ」とか「マスクもしないで……」などと騒ぎ立てる──しかもそれを一部メディアが率先してやっていることのほうがよほど恐ろしいし、社会に大変なダメージと悪影響を与えている。

厚労省などは「クラスター対策」を最重視してきたようだが、日本ですでに3割以上がウイルス暴露を経験しているとすれば、「一人の陽性者の周辺を調べれば一定数の陽性者は出る」のは自然なことだろうから、それが「クラスター」なのかどうかも分からない。
高橋教授はこのことを図で説明している(↑冒頭の図)。
↑高橋泰教授が説明に使った図。東洋経済ONLINEの記事より。Clickで拡大)
その説明を要約すると、
  • 図の水色の四角で囲んだ部分が、新型コロナに暴露した(ウイルスを体内に取り込んだ)人。
  • その中で色がついているのが暴露した後に感染(細胞内にウイルスが入り込んでしまった)人。
  • 青色の人は自然免疫が強く、ほぼ無症状か気がつかないほどの軽症。ウイルスの排出もほとんどなくスプレッダーにならない。
  • 黄色の人は「無自覚スプレッダー」。一時的にウイルスを排出するが、自分は自然免疫で治ってしまい、感染したことに気づかない。
  • ところが、発生確率は低いが、自然免疫では抑えられず獲得免疫が出動し、風邪のような症状もかなり出て、ウイルスも多めに排出して人にうつすオレンジの人が出てくる。
  • さらに、明らかな熱や咳などの症状が出たのが赤色の人で、PCR検査したら陽性になって入院することになる。
  • その赤色の人の周辺を検査したら陽性者が4名見つかった。そこで、この赤色の丸で囲まれた部分を、現状では「クラスターが発生した」と表現しているが、実はたまたま、見つかったにすぎない。
  • 現在は検査を増やしているので、陽性者の発見が増えている。3月下旬は検査数が少なかったが、実効再生産数はピークであり、この時にもっと検査していたら、今の数十倍から数百倍のPCR陽性者が見つかっていたのではないか。

つまり、
  • 3月下旬頃に検査数を増やしていたら、今よりずっと多い陽性者が出ていたはず。
  • 今は「クラスター」とみなしているグループも、多数存在している陽性者の一部をたまたま切り取っているだけ。

……だというのだ。

求められる対策とは

こうした説が、複数の医師、研究者から出されているのに、メディアはなぜかひと月以上経った今でも無視、あるいは意図的に排除しているように思える。なぜなのか?
厚労省をはじめ、対策に関わる人たちの多くは、すでにこの説の妥当性について肯定的な考えに傾いていると思われるが、箝口令を敷いたかのように口を閉ざしている。 政府上層部、多くの政治家は、この説の内容を理解することさえできておらず、問題にコミットすることを恐れている。さらにひどい連中は、コロナを利用して、いつも通りの利益誘導型政策を連発することになんら罪悪感も羞恥心も持っていない。

そんな状況で、私のような素人が、またまた「合理的な対策とは」などと主張するのも虚しすぎるのだが、やはり一人一人が声を上げることが求められていると思うのでまとめておきたい。

  • 政治や行政のリーダーは、国民に向かって、真摯に、新型コロナウイルスの最新分析情報を分かりやすく説明し、過剰反応や間違った認識を改めるように言葉を尽くすべき。
  • PCR検査については、医療従事者、高齢者施設従事者などの定期的な無料検査の速やかな実施と、クリニックレベルの個人病院からでも、医師が必要と判断した場合の保険診療、検査機関(民間含む)への検体提出を可能にする。そのための設備投資やシステムの合理化を進める。
  • 医療や介護の現場でのリスクを下げ、医療・介護従事者の負担を減らすためのシステム構築と資金の投入。合理的なマンパワーの配分。
  • アベノマスクやGoToキャンペーンなど、現場を混乱させ、マイナス要因を増やすだけのバカ政策、コロナと無関係な利益誘導政治を反省し、金とマンパワーを必要とされる現場に有効かつ速やかに投入できる施策へ転換。
  • メディアは政府の顔色を窺わず、視聴者や読者の「食いつき」を計算せず、危機を情緒的に煽らず、社会の木鐸としての自覚を持ち、正しい情報を分かりやすく伝える努力を。
  • 50代までの層には、正確なリスクを伝えると同時に、高齢者や病人など、高リスクの人たちへ自分たちが感染させて死なせる可能性を自覚させ、行動規範の形成を促す。
  • 教育現場やスポーツやイベントビジネスの現場などでは、過剰な自粛要請よりも、常識的な新マナーの共有で正常化を。

今のままでは、ウイルスによる病死などより、ウイルスが引き金となった思考停止による「社会崩壊」のほうがはるかに恐ろしい結果をもたらすだろう。

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COVID-19の状況は「二周目」に入っている2020/08/06 14:24

COVID-19を巡る情報や対策は、そろそろ一周して、新しい周回に入ってきたように思う。

そう感じていたところ、かなり腑に落ちる意見論文を読めた。
⇒こちら 「新型コロナの実態予測と今後に向けた提言」(高橋泰、武藤真祐、加藤雅之 社会保険旬報 2020.6.21)

PDFだし、長くて読む気が起きないという人のために、ものすごくザックリとまとめると……

●新型コロナはインフルエンザウイルスに比べて毒性が弱く、体内に入っても感染しない(自然免疫の段階で身体が打ち勝つ)ケースが多い。

●日本ではすでに30~45%の人が体内にSARS-CoV-2を取り込んだことがあると思われる。その後、感染はしなかった(細胞内にまで入り込まれなかった)ので抗体検査もマイナスに出る。

●東アジアの人たちは、何らかの要因で、この「ウイルスを取り込んでも感染しない」あるいは「自然免疫だけで打ち勝ったので無症状や軽い風邪症状くらいで済んで、その後、抗体も作られていない」割合が欧米人よりずっと多い。

●COVID-19で重症化する理由には、主に2つの説がある。

 1)今回のウイルスパンデミック以前にあったS型コロナウイルスの感染による抗体が、「抗体依存性免疫増強(ADE)」効果を引き起こし、ある時点で容態急変を起こす。
 2)SARS-CoV-2そのものの毒性によるものではなく、SARS-CoV-2に感染したプレボテラ細菌がサイトカインストームを引き起こす。

●そういうウイルスであるという前提でのシミュレーションを行うと、現状(欧米のような強力な対策をしなかった日本で極端に死者が少ないこと)が説明できる。

●もしインフルエンザ並みに強力なウイルス(暴露すると100%抗体が陽性反応を起こす)であれば、現時点で日本人のほとんど(1億人以上)はSARS-CoV-2を体内に入れていないということになってしまう。そうであれば、これからウイルス暴露が広がれば、今後500万人以上が重篤化し、300万人以上が死ぬ計算になってしまう。

●現状を見る限り、そうであるとは思えない。

●よって、一律に何かを禁止したりするのではなく、年代によってリスクが著しく違うことを考慮した対策が必要である。

●つまり、0~29歳は、学校の授業やスポーツなどは元に戻す。クラスター発生が確認されたら、インフルエンザ同様に学級閉鎖などの対応をする。

●30~59歳もリスクは低いので、普通に社会活動をして、感染が分かった場合は監察下での自宅療養。クラスター発生時は職場閉鎖などの対応。

●60~69歳は、現役世代であれば自宅勤務、リモートワークなどで、人との接触を減らすことを推奨。

●70歳以上の世代、特に80歳以上の高齢者の場合、新型コロナに暴露した場合の死亡リスクは、若年者の数百倍から数千倍になり、感染リスクが急速に高まる。よって新型コロナが流行しているときは、これまで行われてきた隔離的な環境を推奨する。 また普段から、コロナ感染予防を徹底しながら外出などを行うなどが求められる。

ここから先は、特に今後、政治・行政が取り組まなければならない重要な提言なので、ほぼ原文のまま拾うと……、
●患者動向を的確にモニタリングし、 また遺伝子解析を早急に行い、現在の新型コロナと同様のウイルス株の再来か、毒性や繁殖力が以前より強くなった「発症力」が高いウイルス株が現れたのか、あるいはより「重症化しやすい」ウイルス株なのかを早急に見極め、それぞれに応じた対策を行えるような体制を早急に整備する。

●現在と同程度のウイルスであると分かっている間は、軽度の患者の対処基準を現状より軽くする。例えば、肺炎が認められる、あるいは呼吸困難が見られる場合は病院へ。肺炎や呼吸困難が認められないが発熱や倦怠感などの症状が強い場合は宿泊所等への隔離。PCR陽性で無症状 ・ 軽症は自宅待機とするなど、季節性インフルエンザと同じ診療方針で行なえるように新型コロナの対処の基準を改定する。

●日本の現場で使用されている新型コロナ治療薬の薬効を評価できるデータを集める仕組みを早期に立ち上げることを提言する。 また、日本人が重症化しにくい原因の解明は、他国の研究からは期待できず、BCG説や腸内細菌影響説が正しい場合、欧米人の薬効データは日本では参考にならないので、国内で使われている薬の効果を示すデータを多施設から吸い上げ、薬効を評価できるビッグデータを収集する仕組みを至急作る。 また、種々の検査データを含めて国内研究を推進する。

……ということである。

ザックリまとめたので、細部のニュアンスや意図は多少変わっているかもしれない。正確にはぜひ原文を読んでほしい。

これを読んだ上での個人的、補完的感想としては、

PCR検査論争はそろそろやめにして、それよりも次にやるべきこと(上の提言の後半部分)に早急に着手すべき。
PCR検査というのは、初期段階で徹底してやっておくべきだった。それがあれば今よりずっとまともなデータが得られて、次の手を打つ対策を練る方法にも根拠が増えたからだ。
しかし、今はもう次の周回に入っている。
今から「無症状者にも徹底的に検査を」というような主張はすでに「周回遅れ」の感が否めない。その費用とマンパワーを、通常医療体制の維持と、重症患者早期発見・治療対策にあてるべきだろう。
COVID-19以外の病気や怪我に対する医療レベルが落ちていくことは絶対に避けなければならない。このままでは、今度の冬にインフルエンザで死ぬ人がCOVID-19で死ぬ人よりずっと多いことになるのではないか。
今までなら大事に至らずにすぐに治療や手術を受けられた人たちが、状態を悪化させ、死んでしまうケースも急増するだろう。それこそ本末転倒である。

さらには、メディアがワクチン待望を煽るのもやめてほしい。季節性インフルエンザと違い、新型コロナでの重症化はサイトカインストームが関係している。ある種の免疫が重症化を引き起こす可能性がある限り、このウイルスに安全・効果的なワクチンができるとは思えない。また、ワクチンや治療薬をめぐる製薬会社と各国政府の契約などは、過去に不透明かつ正当性に疑いのあるケースがいくつもあったことにも注意したい。
ワクチンよりも、個々の症状、病態変化をしっかり観察した上で、これならこれが効くはずだ……という、経験とデータに基づいて既存の医薬品や治療法を活用する道を探るほうがずっと効果的、合理的だろう。

で、最後はいつも通りの「叫び」になるが……、いくら正論や有効であろう提案を明示しても、理解力のない政治家や、保身と前例主義、上からの命令に従うだけの官僚などは動かないのだから、国民が「国の体制を変える覚悟」が必要だ。上が腐っている限り、現場でどれだけ優秀な人が頑張っても、効果が現れにくい。
まずは我々一人一人が、しっかり覚悟を決めて、できることをしていくしかない。

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厚労省が介護現場を混乱させている2020/06/21 14:43

厚労省からの通達
まずは、以下の文章をすんなり理解できるかどうか、読んでみてほしい。
 新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の取扱いについては、「新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて」(令和2年2月17日付厚生労働省老健局総務課認知症施策推進室ほか連名事務連絡。以下、「第1報」という。)等でお示ししているところです。
 本日、通所系サービス事業所(通所介護、通所リハビリテーション、地域密着型通所介護、認知症対応型通所及び介護予防認知症対応型通所介護。以下、同じ。)と短期入所系サービス事業所(短期入所生活介護、短期入所療養介護。以下、同じ。)については、介護支援専門員と連携の上、利用者からの事前の同意が得られた場合には、新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応を適切に評価する観点から、別紙に従い、介護報酬を算定することを可能としたことから、管内市町村、サービス事業所等に周知を図るようお願いいたします。また今回の取扱いについてわかりやすくお伝えする観点から参考資料を作成いたしましたのであわせてご確認ください。
(「係る」や「取扱い」という送り仮名は原文ママ)

これは6月1日付で「各都道府県 指定都市 中核市 介護保険担当主管部(局) 御中」という通達先のもとに厚労省から出された「事務連絡」である。
私も含めて一般人?には、なんのことだかさっぱり分からないだろうから、ザックリと意訳すると、
  • コロナで苦労しているだろうから、利用者が同意すれば、介護報酬額を2段階UPして請求できるようにしたよ
  • そのUPの仕方については資料をつけたから参照してね
  • このことを自治体の行政関係者、介護サービス事業者たちにしっかり知らせなさいね
  • 介護報酬点数の計算をしているケアマネ(介護支援専門員)はしっかり調整してくださいね
……というような話なのだ。

この「利用者が同意すれば」という部分はどうするのかといえば、
必ずしも書面(署名捺印)による同意確認を得る必要はなく、保険者の判断により柔軟に取り扱われたいが、説明者の氏名、説明内容、説明し同意を得た日時、同意した者の氏名について記録を残しておくこと。
また、当該取扱いを適用する場合には、居宅サービス計画(標準様式第6表、第7表等)に係るサービス内容やサービスコード等の記載の見直しが必要となるが、これらについては、サービス提供後に行っても差し支えない。
厚労省サイトのQ&A ⑬の3 より)
……なのだそうだ。

「保険者の判断により柔軟に取り扱われたい」???

当然のことながら、目下、介護現場は大混乱である。特にケアマネ(介護支援専門員)は大迷惑だ。
以前にも、アベノマスクの配達員代わりにされているケアマネの悲劇については紹介した(厚労省がケアマネを「アベノマスク無料配達員」にする恐怖 4/15投稿)が、ただでさえ大変な仕事がコロナでぐちゃぐちゃになっているところに、さらにとんでもない仕事を押しつけられているのだ。

厚労省の官僚が徹夜すればするほど現場は疲弊・混乱する

単に「仕事が大変になる」という話ではない。理不尽なことを間違ったやり方で押しつけてくる霞が関の思考回路崩壊が大問題なのだ。

  • 要介護認定を受けている利用者の多くは、介護保険の利用限度額いっぱいを使っており、超過分は自己負担している。その状態で「2段階UP」による介護報酬ポイント分は、当然、利用者が負担することになる。
  • それでも、介護事業者はコロナのせいで利用者が減ったり事業所の一時閉鎖などがあってただでさえ大変な状況の中、こんな馬鹿な措置であっても、少しでも収入の足しになるなら……と思う。しかし、その事務作業はケアマネが行う
  • 利用者の同意を得ることが前提となっているが、その「同意を得る」のは誰がどのようにやるのか? これまた当然、ケアマネが苦労させられることになる。
  • 「介護支援専門員(ケアマネ)と連携の上、利用者からの事前の同意が得られた場合」というのは、ケアマネが利用者に伝えずに「同意しない」と拒否するケースを許容しているのか? それとも、ケアマネは利用者にこの内容を伝えた上で同意を取るように動けと命じているのか?
  • ケアマネを通さず、事業者側が利用者に直で同意書を手渡しているケースがすでに多数出ていて、ケアマネ事務所には利用者からの問い合わせが殺到している。
  • 利用者は認知症であることが多いし、ただでさえ難解なこの悪文の内容を利用者や利用者家族に説明するだけでも大変な苦労を強いられる。利用者の負担額が増える可能性があるわけだが、そこまで説明しても、利用者は「同意をしないと不利益になるんじゃないか」と、余計な不安を抱え込む。
  • 板挟みになっているケアマネの報酬は増えるわけではない
……一体誰が得をするのか?

この処置も含めて、厚労省のコロナ対応「まとめ」ページには膨大な内容が詰め込まれていて、次から次へと通達が出ていることが分かる。
厚労省は机上の論理で考え、通達しているだけだが、それでもこの仕事量は半端じゃない。毎晩徹夜している職員もいることだろう。
しかし、そんな風に厚労省が仕事に励めば励むほど、介護や医療の現場は混乱し、余計な仕事を背負い込まされ、介護・医療従事者は疲弊し、精神もやられ、事業の質が落ちていく。最終的には介護や医療の事業そのものが破綻しかねない
「霞が関の優秀な官僚が日本を支えている」という神話は完全崩壊している。それこそが、今の日本がいかに危機的状況であるかを知らしめている。

コロナのおかげで、今まで表に出てきづらかったことが次々に可視化されてきた。これをきっかけに、この国をいい方向に向かわせることはできるのか? 舵取りをするべき人たちの能天気ぶり、悪代官ぶりを見るにつけ、絶望のどん底に落ちていく。

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コロナが教える「つぶされない生き方」2020/06/17 11:41

墓地にある石仏が、かつては墓そのものだったらしいと気づいたのは最近のことだ。その時代の人たちの死生観や生活ぶりはどうだったのか。今とは相当違うものだったのだろうとは思うが、具体的なイメージはなかなかわかない。

医学界でも言われ始めた「アジアの幸運」

COVID-19の感染率や重症化に関しては、やはりいくつかの要因があって、アジア諸国では死者が少ない。そのことは医学界でもようやく認知され始めてきたようだ。
この生死を分ける「要因」は何か、という研究が進めば、今のような、すぐ都市封鎖だのソーシャルディスタンスだのマスクだのっていう対策ではない、もっと根本的な「考え方」が形成されていくのだろうか。早くそうならないと、世界はどんどんまずい方向に進んでいきそうで、そのことのほうがウイルスそのものよりもはるかに怖い。

コロナという教師

ともあれ、ここにきて、コロナは、我々に多くのことを教えてくれている「教師」なのではないかという気がしてきている。
今まで見過ごされてきたことに目が向けられるようになって、そこから改めて学ぶことが増えた。
例えば、金は必要以上に持ってはいけないのだなあ、と思う。
負け惜しみではない。「前田ハウス」だの、「安倍首相のお友達」山口敬之氏、有名企業から偽名で月80万円だの、「兜町の風雲児」の最期だのという記事を読むにつけ、心からそう思える。
特に、人が稼いだ金(税金)を使える立場にいるというのは、本来なら大変な責任を背負い、ストレスを抱えるはずなのに、なあなあで(たが)が外れまくっている。開き直ればなんでも通ると思っている(実際そうなってしまっている)。
そうなったら、もうおしまい。壊れた乗り物を運転する薬漬けの廃人と同じなのだろうな……と。

人は必ず死ぬ。この世は夢の世界と同じで、一瞬で消えるバーチャルなもの。そのかりそめの時間の中でさえ、想像力を働かせず、煩悩まみれの生き方に閉じ込められるつまらなさ。永田町の人たちはともかく、霞が関の人たちは、「脳」の可能性という点では、平均よりずっと可能性を持っていた人たちだろうに。
ギャンブル依存症になっている芸人が、それを自虐的に「芸」に取り込もうとするような探究心さえも持てない人たち。可哀想だな、と思うけれど、そういう人たちが、他人の生死を握るような立場にいる、というのが困るし、恐ろしい。

「歴史を学ぶ」のではなく「歴史に学ぶ」

そんなこんなのコロナ疲れもあって、社会の理不尽さを嘆いたり憤ったりする体力もなくなってきた。

先人たちは、様々な失敗体験に基づいて、たとえば「三権分立は大事ですよ」とか「ルールにそって物事を決めましょう」ということを大切にしてきました。こうした知恵が憲法や法律に書き込まれています。
今を生きている人だけで物事を決めてしまうと、大変な悲劇を受けます。
(略)
たとえ「多数派が支持していること」でも「やってはいけないこと」があると考えるのが立憲主義であり、政治的リーダーの本質的な務めではないでしょうか。
安倍首相は「戦後民主主義のあだ花」か?  政治学者中島岳志が分析する「本質を忘れたリーダー」とは HUFFPOST 2020/06/10

「死者の声」に耳傾ける、という言い方をしなくても、要するに「歴史に学ぶ」ことが大切だという話だ。
ただ、その「歴史」は学校で教えてくれるわけじゃない。あれはすでに「編集済み」の読み物だからだ。

出発点は、疑問を持つこと。想像力を働かせること。そして、なるべく自分好みの期待値や裏読みを排除して、実際はどうだったのかと判断していく姿勢だろう。

社会全体がどう動いたのか、そうなっていった要因にはどんなものがあったのかは、ていねいに調べていけば見えてくる。
645年に起きたとされる「乙巳(いっし)の変」(私たちの世代はその年号は「大化の改新」と丸暗記したが、今はこう教えているらしい)が実際にはどんな背景をもち、どのようなものだったのかは、今となっては分からないし、それほど重要だとも思えない。
しかし、幕末から明治にかけての動き、日中戦争から太平洋戦争に至るまでの世相……そういうものはかなりはっきり見えてくるし、今の社会にも大きな影響や因果関係を持っている。これは為政者だけでなく、すべての人が知っておかなければならない事実だ。
しかし、学校の歴史の授業ではそこを教えてくれない。何年に何が起きたか、そのときの人物の名前は、事件の名称は……そんなことを暗記するだけで終わる受験勉強。
歴史を学ぶというよりも「歴史学ぶ」ことが大切なのだ。
しかし、受験生時代にはそんな余裕はまったくなかった。時間的余裕も、精神的な成熟度も足りなかった。
また、「この子は歴史に何を学んだのか」をはかる入学試験などというものはなかったし、今もない。

少し前、勝ち組・負け組という言葉が流行ったけれど、そんな単純なものではないなあ、というのが、人生終盤にきて分かってきた。
大切なのは社会の理不尽に「つぶされない」生き方だと。

私の周囲には「つぶされない生き方」を続ける達人がたくさんいる。その「技術」や「哲学」はそれぞれだけれど、その「それぞれである」という「個性」が守られることが大切なことだ。
個性がつぶされる社会では、最低限の幸福も守れない。
「つぶされない技術」を磨くためにも、つぶされないギリギリの社会を守るためにも、「歴史学ぶ」ことは大切だ。
 
「コロナ休校」がきっかけで始めた中学生向け英語塾。ようやく2冊にまとまった。
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欧州諸国はアジア諸国の100倍~1000倍COVID-19による死者が出ているという現実2020/05/28 14:02

https://www.worldometers.info/coronavirus/ の統計より
まずは以下のランキングを見てほしい。

ベルギー(808人)、スペイン(580)、イギリス(552)、イタリア(547)、フランス(438)、スウェーデン(418)、オランダ(343)、アイルランド(331)、米国(309)、スイス(222)、エクアドル(186)、カナダ(179)、ポルトガル(133)、ブラジル(121)、ペルー(121)、ドイツ(102)、デンマーク(98)、イラン(90)、パナマ(73)、オーストリア(72)、モルドバ(68)、メキシコ(67)、ルーマニア(64)、北マケドニア(57)、フィンランド(56)、トルコ(53)、ハンガリー(52)、スロベニア(52)、エストニア(50)、ボスニアヘルツェゴビナ、チリ、ドミニカ、ノルウェー、クウェート、アルメニア、イスラエル(31)、チェコ(30)、ロシア(27)、ポーランド(27)、セルビア(27)、UAE(26)、クロアチア(25)、ボリビア、リトアニア、ベラルーシ、ホンジュラス、ブルガリア、ギリシャ、コロンビア、ウクライナ、アルジェリア、キプロス、サウジアラビア(12)、ラトビア、アルゼンチン(11)、アルバニア、カタール(10)、南アフリカ(9)、バーレーン、ギニア、エジプト、フィリピン(8)、オマーン、モーリシャス、日本(7)、カメルーン、キューバ、パキスタン(6)、アフガニスタン、ガボン、エルサルバドル(6)、ウルグアイ、シエラレオネ、トリニダードトバゴ、インドネシア、韓国(5)、モロッコ、アゼルバイジャン、タジキスタン、スロバキア、ニカラグア、リベリア、シンガポール(4)マレーシア(4)、オーストラリア(4)、イラク、スーダン、グアテマラ、ソマリア、ニュージーランド(4)、ギニアビサウ、レバノン、チュニジア、チャド、インド(3)、中国(3)、バングラデシュ(3)、ハイチ、マリ、ニジェール、ブルキナファソ、ジョージア、コンゴ、ジャマイカ、モーリタニア、カザフスタン(2)、ギニア、セネガル、キルギスタン、コスタリカ、パラグアイ、トーゴ、エスワティニ、イエメン、ナイジェリア、ガーナ(1)、コートジボアール、ケニア、南スーダン、ジョーダン(0.9)、タイ(0.8)、コンゴ民主共和国、パレスチナ、リビア、スリランカ、香港(0.5)、ウズベキスタン、ベネズエラ、ザンビア、タンザニア、ボツワナ、ザンビア、台湾(0.3)、ジンバブエ、中央アフリカ、ベニン、シリア、マラウイ、ネパール、ミャンマー(0.1)、アンゴラ、ブルンジ、マダガスカル、エチオピア、モザンビーク、ルワンダ(0)、ベトナム(0)、モンゴル、カンボジア……

……これは何かというと、人口100万人あたりのCOVID-19による死者数、国別ランキングだ。
ワールドメーターズ(https://www.worldometers.info/coronavirus/)というサイトから拾ってきた(2020年5月28日時点)。
ランキング1位はサンマリノの1238人だが、母数が少ないと正確な割合が出ないおそれがあるので、人口が100万人以下の国・地域は外して並べてみた。

人口100万人以上の国では、1位はベルギー(100万人あたり808人)で、以下、スペイン(580)、イギリス(552)、イタリア(547)、フランス(438)、スウェーデン(418)、オランダ(343)、アイルランド(331)……と、ヨーロッパの国々がズラッと並ぶ。
一方でアジア諸国はフィリピンが(人口100万人以下の国・地域も入れたランキングで)ようやく91位(8)に顔を出すくらいで、ほぼ同レベルで日本が95位(7)、以下、パキスタン(6)、韓国(5)、シンガポール(4)、マレーシア(4)、インド(3)、中国(3)、バングラデシュ(3)……と続く。
その下となると、タイ(0.8)が158位、香港(0.5)が162位、台湾(0.3)が170位……。

つまり、ベルギーはタイの1000倍の割合でCOVID-19の死者が出ているし、スペイン(580)、イギリス(552)、イタリア(547)、フランス(438)、スウェーデン(418)では、中国(3)、韓国(5)の100倍、香港や台湾の1000倍くらいの割合で死んでいることになる。
ヨーロッパは人口100万人あたりのCOVID-19による死者が15人以下の国というのはない。アジア・オセアニアではフィリピンの8人、日本の7人が上位1位・2位で、100万人あたり10人以上死んでいる国はない。

日本は欧米諸国に比べればはるかに死者の割合が少ないが、アジアの中で見れば中国、韓国よりも死者の割合は多く、香港や台湾に比べると10倍以上の割合で死んでいることになる。

アジアだけでなくオセアニアも少なくて、ニュージーランド、オーストラリアは116位あたりに並んでいて、共に100万人あたりの死者数は4人しか出ていない。
アフリカや南米は統計が信用できない(実数はもっとずっと多そうだ)から鵜呑みにはできないのだが、それでも欧米諸国に比べると少ないように思える。

ここまで極端に違うと、もはや医療体制の差だとか、マスクだの手洗いだのを真面目にやったからだとかといった説明では無理だろう。
ヨーロッパ諸国がアジア、オセアニア諸国よりずっと不衛生で、不真面目で、医療体制も劣っているとは到底思えない。
「成功モデル」とされているドイツでさえ、100万人あたりの死者は100人を超えていて、中国、韓国、日本より一桁多く、台湾、タイ、香港より2桁多いのだ。
もはや、DNA的な要因などを考えない限り説明がつきそうもない。

そうであれば、幸運なグループに入っている日本では、今からでも検査を増やして、不顕性感染者を集団の中に入り込ませない作戦を徹底するべきだ。それができれば、外出自粛、営業自粛、イベント中止などの防空壕避難的社会生活を合理的に解除でき、社会生活が戻る。

ただ、こうした地域や人種による感染率、重症化率の極端な違いが分かってくると、新たな種類の国家間の軋轢が生まれるのではと予想される。
EU連合の将来に大きな不安を抱かせるし、中国と米国の対立も深まるだろう。
オリンピックのマークになっている五輪の輪のようなグループごとの分裂が進み、5つの輪がバラバラに、独立性を高めて再稼働していくかもしれない。
日本としては、そのへんまで見通した上で、まともな政府と合理的な社会構造を一刻も早く構築し直さないと、アジアの中でも非常に惨めな国に一気に落ちていくのではないか。
オートメーション機械のように次から次へと嘘をつき、法を破り続ける国政組織や、まともなIT事務作業もできないような官僚支配組織を緊急手術することが必要だ。


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COVID-19の重篤化に「マイクロバイオーム」関与説2020/05/16 21:00

COVID-19重症化に関する徳田均医師(呼吸器内科)の仮説が非常に興味深い。
人の身体(特に外界と接する領域)には100兆個にもおよぶ微生物が共生しており、ヒトの免疫システムと絶えざる応答を繰り返しつつヒトの健康と病気の成り立ちに重要な役割を担っている。この乱れ(dysbiosis)が免疫の乱れ(dysregulation)をひき起こすと難治性の炎症性疾患が生じる。潰瘍性大腸炎、クローン病だけでなく、肥満、多発性硬化症、糖尿病など実に様々な病気がこの乱れによるものであることが証明されつつある。
 私の仮説は、コロナウイルスと宿主の戦いの中にマイクロバイオームという媒介項を設定すれば、これら様々な謎が解けるのではないか? である。コロナウイルスが気道(あるいは腸)のマイクロバイオームを変改し、そのdysbiosis が第2相の免疫学的異常(暴発)を招来する、と考えてはどうか? である。
COVID-19重症化の謎とマイクロバイオーム関与の可能性 徳田均

マイクロバイオームというのは、簡単に言えば人の身体に巣くっている様々な微生物(細菌、菌類、ウイルス……)の「相」ということらしい。
この構成が地域、人種、年齢などによって異なり、様々な要因により変化するという。
例えば、ビフィズス菌の入った乳酸菌飲料を毎日飲み続ければ腸内にビフィズス菌が増えるというような単純な話ではなく、食生活ではほとんど変化しないらしい。

徳田医師は、さらに具体的な提言として、
  • 自分の経験している臨床例で、風邪の初期段階でトスフロキサシントシル酸塩(抗菌薬)を短期間投与することで改善している
  • しかし、風邪の多くはウイルスが原因であることを考えると「抗菌薬」が直接ウイルスに効いたとは考えられない
  • これは抗菌薬によって上気道のマイクロバイオームが改変され、その結果炎症が鎮まったと考えられる
  • これを踏まえると、COVID-19軽症例の悪化阻止のために、腸内細菌を整える微生物群(乳酸菌やビフィズス菌などが有名)と並んで、ハイリスク患者の発病最初期にごく短期間の抗菌薬投与を考えてもよいのではないか
……という趣旨のことを述べている。

COVID-19に喘息治療薬のシクレソニド(商品名「オルベスコ」)が効くという報告があったときは、多くの医師が「なんで?」と驚いたようだが、あれなども、気道のマイクロバイオームを改変したことで重篤化を抑えられたと解釈することができるのかもしれない。

既存の薬をどう活用するかを目下早急に問われているわけだが、感染初期と重篤化してからでは薬の選択がまったく違ってくることはすでに医師の間では共通認識になってきている。
重症化してから抗菌剤や抗ウイルス薬を投与しても効果がない。むしろ、サイトカインストームを押さえるために、インターロイキン6(IL-6)という免疫系の働きを抑える薬(アクテムラやケブザラなど)が効くという事例がいくつも報告されている。
5月15日の「報道ステーション」では、番組総合演出の伊藤賢治氏(47)が、病室で自撮りした映像と共に生々しい経過報告をしていて注目されたが、ここでも症状が悪化してからのアビガンは効かず、アクテムラが効いたことを伝えていた。

特効薬の開発ということが声高に言われているが、何年かかるか分からない、そもそもできるかどうかわからないことに期待するよりも、まずはこうした既存の薬を使い分けて対処する」具体的方法を共有することが最重要課題ではないかと思う。

このマイクロバイオームについてさらにいろいろ読んでいると、こんな記述も見つけた。
日本人の腸内細菌叢の特徴として,炭水化物の代謝能が高い,鞭毛を持つ菌が少ない,修復関連の遺伝子が少ない,古細菌の一種であるメタノブレウィバクテル・スミティー(Methanobrevibacter smithii)が少ないなどが挙げられます.炭水化物が代謝されると,短鎖脂肪酸,二酸化炭素,水素が生成され,このうち短鎖脂肪酸はヒトの栄養素となり,水素は抗酸化作用を発揮します.ヒトは細菌の鞭毛抗原に対して免疫反応を起こすことから,鞭毛を有する菌が少ないと,免疫による炎症反応が起こりにくくなります.修復関連の遺伝子が少ないことは,DNA損傷が少ないことを意味していると思われます.つまり,日本人の腸内細菌叢の機能的特徴として挙げられた点はいずれもヒトの生理状態に有利に働くもので,こうした特徴が日本人はBMIが低く,また長寿であることと関係しているのかもしれません.
ヒトマイクロバイオーム研究~ 細菌叢メタゲノムからヒトの健康と病気を読み解く~ 服部正平 早稲田大学理工学術院先進理工学研究科 教授)


なぜ日本ではCOVID-19による死者が極端に少ないのかという謎について、すでにいろいろな説が出てきているが、今なお謎のままだ。
HLA型が関係しているのではないかという説はすでに取り上げたのだが、マイクロバイオームの違いが関係しているという説も、大いにありえるな、と感じる。
ノリやワカメなどの海藻に含まれる多糖類を分解するポルフィラナーゼという酵素を、日本人の90%は有しているが、欧米人では3%しか有していない、という話なども、大いに興味が引かれる。

……と、以上は医学界の専門家が論ずるべきことで、私などの専門外素人がどうこう言うことではない。それは重々承知している。
だからここまでは長い「前振り」である。
言いたいことは、
なんにせよ、もし日本でのCOVID-19死者の少なさが、遺伝子的要素やマイクロバイオームの違いに関係しているとすれば、それは単に「運がよかった」ということにすぎないということだ。
感染の次の波がきたとき、同じ運が味方してくれるとは限らない。
悪い事態を予測した上で、合理的、効果的な対策を準備していなければならないのに、この国ではそれがまったくできていないどころか、この期に及んでも政治が私利私欲やトンチンカンなメンツを最重視して暴走している。それをまず止めないと、とんでもないことになってしまう。
感染症で死ぬよりずっと怖ろしい結果が待ち受けている。
ここ数か月での世の中の激変を見ていると、戦争に突入していったときもこんな風に「あっという間」だったのだろうか、と思わされる。
今は爆弾が降ってくる戦争が起きなくても、無能な政治、倫理のない政治によって社会が急速に壊滅しうる。
取り返しがつかない事態になる前に、「暴走」「無法状態」を止めよう! 無関心、見て見ぬ振りは許されない。

一庶民として、それだけは主張しておきたい。

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非常事態というより異常事態2020/05/16 20:49

画面画像はテレビ朝日『羽鳥慎一モーニングショー』より
テレビ朝日『羽鳥慎一モーニングショー』より


医療や介護の現場が壊れ始めている。
5月9日時点で、COVID-19の感染が確認された医療機関や介護事業所、障害福祉施設などの従事者の累計は1100人を超えている。内訳は判明分で医師150人以上、看護師450人以上。介護職員等や職員の内訳が未判明な分も合わせると従事者の感染は計1180人以上に上る(日経ヘルスケア調べ)。
 一方、院内感染・施設内感染と思われる患者・利用者等は1370人以上。従業者と患者・利用者等の合計は2550人以上となる。厚生労働省の調べによると、5月9日時点でのCOVID-19感染者は1万5649例。医療・介護・障害福祉の従事者の陽性者(1180人)が占める割合は約7.5%となる。また院内感染・施設内感染と思われる患者・利用者等(1370人)の占める割合は約8.8%。従業者と患者・利用者等の合計(2550人)は全体の約16.3%である。国内のCOVID-19の全感染者の6分の1ほどが医療・介護・障害福祉セクターで生じているとみられる。
医療・介護・障害福祉で相次ぐ大規模クラスター COVID-19の全感染者の16%強、6分の1ほどが医療・介護・障害福祉関連か 日経メディカル 2020/05/11)

このままでは、次の波が来たときに一気に死者が増えるかもしれない。
問題は、医療現場のことを医療現場に任せようとしない厚労省の姿勢ではないか。

国立感染症研究所は4月27日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のゲノム分子疫学調査の結果を公表した。わが国では、初期に生じた中国経由の第1波の封じ込めに成功した一方、3月中旬以降に欧米経由の第2波が発生し、現在の感染拡大につながったことが示唆された。
(感染研がゲノム分子疫学調査の結果を公表 第1波は終息するも欧米からの帰国者経由の第2波が拡大 日経メディカル 2020/05/12)

患者のSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)ゲノム配列を解析し、ウイルスの変異パターンや感染経路を探る試みはすでに世界中で行われ、論文も次々に発表されているので、日本の感染研が発表した↑この内容は新しいものではないし、すでに共通認識となりかけていたことの後追いのような印象を受ける。
しかしまあ、感染研というのは本来こうした疫学的研究をして、ウイルスの正体や性格を明かしていくことが使命だろうから、こうした調査・研究をしていてくれればいいのだ。
検査結果を絞り込んで独占しようとして、医療現場を混乱させていることが問題だ。医療現場での実務は患者の治療・救済であり、感染研が医療現場をコントロールするのは完全なお門違いだ。
データが少なければ、疫学調査の信頼性も下がる。医療現場での検査は民間検査機関と直結させ、その結果を随時、衛生研~感染研という方向で送ればいいだけのことで、その方法は当然オンラインで効率化させなければならない。未だに電話で相談とかFAXで送信とかやっている国が他にあるのだろうか?

正気を保つのが大変

昨日、1人10万円の定額給付金申請書なるものが郵送されてきた。当初は高市総務相(←ああ!)が「なるべくマイナンバーカードを使ってオンライン申請を」と発言していたが、実際にはオンライン申請のほうが郵送での申請よりはるかに手間がかかり、時間も取られているのだという。
サーバーがまともに動かないとか、マイナンバーカードのパスワードを忘れて誤入力を続けたためにカードをロックされてしまう人が続出し、それを解除してもらうために役所の窓口に並んで延々待たされ、役所が集団感染リスクにさらされているとかなんとか……。
そもそもマイナンバーカードが住基台帳と紐づけされていないので、オンライン申請でのマイナンバーカードの役割は本人確認書類としてしか機能せず、オンライン申請を受けた役所の職員がいちいち内容をキーボードから手入力したり、内容を住基台帳と照らし合わせているのだという。
特別定額給付金のオンライン申請は、マイナポータルにアクセスしてマイナンバーカードをカードリーダーでパソコンに接続し、世帯主の氏名▽生年月日▽住所▽給付を希望する世帯員の氏名――などを記入し、振込口座を証明する書類を添付。カードの署名用電子証明書の暗証番号を入力して完了となる。
(略)
11日までのオンライン申請が9000件を超えた東京都品川区では、オンライン申請された情報を職員がダウンロードし、住民基本台帳と照合して、申請者の氏名や生年月日などに誤りがないかを目で確認しているという。二重振り込みを防ぐため、給付を求める世帯員の住民票コードを手で入力し、振込口座情報は添付書類の画像と照合する。銀行名が旧名だったり文字間のスペースがなかったりすることも多く、一つ一つ修正しているという。確認作業には2人1組で計8~10人をあてているが、処理できるのは週1000件程度だという。臨機応変の判断が求められるため、誰もができる作業ではなく、人数を増やすのは難しい。
 一方、21日から申請書を発送する予定の郵送申請では、紙の申請書に書かれた口座情報を手入力する必要はあるが、作業自体は単純なため、1日あたり約60人の職員を投入して週2万1000件を処理できる見込みだという。
郵送より遅い? 10万円給付「オンライン申請」の本末転倒 毎日新聞 2020年5月14日
……嘘だろ??!!
なんのためのカードなの? そういう手間をなくすために何千億円もかけて始めたシステムだったんじゃないの?
IT後進国ぶりもここまでくるとジョークにもならない。日本はITインフラも遅れているが、何よりもITの意味が分かっていない人間(しかも、命令系統の上にいる人たち)が多すぎる。
もう、いちいち語るのもストレスだからやめたいのだが、あまりにもあまりだ。

かと思えば、
新型コロナウイルスの感染拡大防止策として政府が妊婦向けに配る布マスクで不良品が見つかった問題で、厚生労働省は14日、参院厚労委で、自治体から返品された布マスクの検品費用として約8億円かかると明らかにした。
 厚労省によると、妊婦向けの布マスクを巡っては、4月30日時点で自治体に配布していた約47万枚のうち約4万7千枚について、異物混入や汚れなどがあったとして返品されていた。現在、国が委託した専門業者が約550人態勢で検品しており、不良品が確認されれば取り除くという。
妊婦向け布マスク、検品に8億円 不良品問題で厚労省 2020/05/14 共同通信

……もはや発狂しそうだ。

アフターコロナを見据える

これから夏になると、COVID-19で死ぬ人より熱中症や他の病気を悪化させて(病院に行けなくて)死ぬ人や、仕事や家庭を失って自殺する人のほうが多くなるのではないか。
それで冬になるとまたじわじわと感染者が見つかって、あちこちで死者も出てきて……。
そういうのが続いていくうちにみんなうんざりしてきて、「癌や交通事故で死ぬ人がいる」のと同じような感覚でCOVID-19を受け入れるしかなくなる……そんな気がする。
そうなっても、一旦身体に染みついた「三密空間は怖い」「人との接触を減らせば感染リスクは下がる」という習慣や考え方はある程度残るし、その頃には世の中のビジネスモデルがガラッと変わっているから、よくも悪くも今まで通りの生活はできなくなる。
物の値段、特に大衆消費財の類は価格が上がる。結果、貧乏人はますます生活が苦しくなる。
職人は高級品を金持ちに売るという形でしか生き残れなくなる。
生活格差が加速する。社会保障は崩壊する。誰もが普通に病院に行って診療を受けたり手術を受けたりすることはできなくなるし、介護施設はよほどの金持ちしか利用できなくなる。
ネット文化がますます多様化して、バーチャルな趣味・娯楽が増える。多分、その質は落ちていき、下卑たもので溢れる。
伝統芸能とかクラシックの演奏会とかというものは、金持ちにしか楽しめなくなり、中世のような社会に戻る。貧乏人はネット世界に閉じこもる。
そんな中で大規模災害や、今回以上の強烈な感染症が現れたりして、世界は崩壊へ向かう……。
SF映画みたいな世界が、実際にやってくるかもしれない。
多分、それを見る前に私のような高齢者世代は死ぬのだろうが、最後まで正気を保つことができるだろうか。無法地帯と化したような現政権や、世界から笑われるような社会システムを見ているだけで、自信がどんどんなくなる。


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日本ではCOVID-19第一波は終わっている?2020/05/08 21:10

神戸市立医療センター中央市民病院(同市中央区)では、4月上旬までに外来患者千人に対してSARS-CoV-2の抗体検査をしていた。5月2日にその結果を発表したが、3.3%に抗体陽性反応があったという。
100人に3人程度がすでに4月上旬までにSARS-CoV-2に感染して抗体を持っていたということになる。その人たちは感染していることに気づかず、軽い症状、あるいは無症状のまま抗体だけができた、ということだ。
これを読んで、ああ、やっぱり! と思った。
神戸でこの数字であれば、おそらく東京や神奈川など首都圏ではもっと多いだろう。
実際、慶応義塾大学病院(東京都新宿区)は、4月23日までに新型コロナウイルス感染症以外の治療目的で来院した無症状の患者67人にPCR検査を行ったところ、4人(6%)が陽性者だったと公表している。

もしかして日本では感染の第一波は収束していて、今出てきているのは第二波なんじゃないかと想像していたのだが、こうしたデータを見る限り、あながち妄想ではないと思えてきた。
つまり、武漢から直で入ってきた第一波のウイルスは、なんらかの要因(多分DNA的な要素?)で(運よく)日本人にはそれほど被害を及ぼさず、抗体だけはついた。
今、死者がポツポツ出ているのは欧米から入ってきた、変異したウイルスによる第二波なのではないか?? ……と。

日本だけがなぜ感染者数も死者も少ないのかという謎がずっと論じられてきたが、「死者は少なかったが、感染者は少なくなかった」ということではないか。検査していないから感染確定例の数が極端に少ないというだけで、実際にはそこそこの数の感染者はいた。しかし、なんらかの要因で発病~重症化する確率が低かった。
日本人は欧米人に比べて清潔好きで、普段から手洗いの習慣があり、逆にハグやキスの習慣がないから感染が抑えられたという説が根強くあるが、「感染者が相当数いた」のであれば、そういう説明だけでは無理がある。「感染しても気づかないほど軽症、無症状である人の割合が、欧米人より高い」ということではないか。
「どちらかというと、これは非常にラッキーなデータ。感染拡大初期に行ったデータで既に3%に達していた。そこから1カ月がたってどう変化したのか大変興味がある。もしかしたらもう少し高いデータが出ている可能性があることは、大いに考えられる」
(神戸市立医療センター中央市民病院の木原康樹院長)
なんにせよ、まだまだ謎だらけ。今が第二波だとすれば、第二波がどの程度で収まるのか、第三波は?? などなど、分からないことだらけだ。

ざっくりと推理して、中都市で3~4%、大都市では5~6%、地方の田舎町でも1%くらいはすでに抗体を持っている人がいるとすると、これからの対策としては、
  • 若者同士の交流、感染はある程度仕方がないと考える
  • 若者が高齢者や入院患者などと接触することは徹底的に避ける
  • 病院や高齢者施設での感染防止を徹底させる
  • 発病した人への早期の対応
  • 保健所と医療現場を切り離す(保健所は本来の仕事に戻し、医療現場からの検査依頼などは民間に回す)
  • 唾液でのPCR検査を認める
  • その上で、必要な社会インフラを回しながら、社会構造全体の合理化を進める
……といったことではないか。

「医療崩壊」という言葉は曖昧すぎて違和感があるが、要するに、
  1. 医療現場での役割分担ができていない
  2. 医療資源(人も装備も設備も)が圧倒的に足りない
……ということが問題なのだ。
1はすぐにでも対応できるはずなのに、厚労省のメンツや指示みたいなものが効率化や最適化を阻止している。
それを制御できないどころか、問題の本質を理解できていない政府中枢はもっと大きな障害だ。

問題は「生き方」をどう変えるか

現状を見ていると、この国が今から目を見張るような見事な対応をしていくとは思えない。
各現場では本当に頑張っている人たちが多いのに、それを生かせない「システム」に縛られ、改革すべき上の人たちがあまりにも無能・無責任すぎる。これをすぐに変革していくことは困難だろう。
そんな中で、我々庶民はどうすればいいのか?
新型コロナは、人々の連帯も引き裂いていく。フランスの経済学者でEU結成の立て役者でもあるジャック・アタリ氏はこう主張する。
「ウイルスに怯えると『自分さえよければいい』と考えてしまいがちで、『他人のために生きる』という人間の在り方が失われていくのです」
その結果生じているのは「分断」された弱肉強食の世界だ。
たとえば、裕福な人と貧しい人の分断だ。新型コロナの感染拡大を防ぐには、外出を減らし接触を減らす必要がある。だがおカネがない人は、仕事に行かないと生活できず、自宅待機はできない。
M・ガブリエル氏ら世界的知性が答えた「コロナと人類の未来について」 週刊現代 2020/05/04

↑まさにそういうことだ。
しかも、運送、製造、医療、介護といった、止められない社会インフラを回している人たちほど自宅待機はできない。そんなことをしたら、誰も(金持ちも貧乏人も)が生きていけない。
そのことを忘れて、パチンコ屋が開いているだの、公園で凧揚げしているだの、川辺でBBQしているだのという視聴者の煽り目的の映像ばかり流しているテレビメディアは猛省せよ。問題の本質はそういうことではない。
死者を極力減らす、という目的なら、考えること、論じることは別にある。それができない社会である、ということが問題だ。

理論的には、感染が消えることがない限りは、封鎖や自粛をしてもしなくても、最終的に死者の総数はあまり変わらないということになる。
ワクチン開発はできるかどうか分からないし、時間がかかるだろう。できたとしても、遺伝的副作用や特異体質の人への危険性などが確認できないままの見切り発車になる。
できることは、重症化する人が集中して救急医療の現場がパンクしないようにすることと、高齢者や病人、そして医療関係者を感染させないようにすること。
その前提で、いかに医療現場への負担を減らすか(集中を避ける、余計な仕事を増やさない、役割分担を徹底する)、ストレスや過労による死や家庭崩壊、人間性崩壊、文化の停滞・後退を防ぐか、ということを考えていかないと、このままではもたない。


もはや腹をくくるしかない?

抗体検査も、唾液によるPCR検査も、検査キットが足りていれば別に専門的な技術は必要ない簡単な作業なのだから、やれないはずはない。実際、他の国ではやっているわけだし。
(PCR検査は専門職が時間を取られ、感染リスクと戦いながらやる大変な作業だ、という主張は、旧式の方法を元にしての主張のような気がする。唾液からの検体採取は認めないというルールがあったり、自動化した検査装置がありながら活用できていなかったりしているようだから、まずはそうした理不尽な縛りを解消することが先だ)
とにかくデータがないと戦略が取れない。
それができない以上は、もう腹をくくるしかない。ダメなときはダメなんだ。でも、確率的には、多分大丈夫なんだろう……という腹の据え方。
志村けんさんみたいに、すぐに国内最高レベルの医療機関が、ありとあらゆる最先端の方策を駆使しても、残念ながらダメなときはダメ。
一方、放っておかれても、苦しんでも、なんとか自力で回復する人もいる。(もちろん、苦しむ前に医療を受けられないとまずいのだが、実際問題受けられない人がいっぱいいて、すぐには状況が変化しないのなら、それを覚悟して向き合うしかない)
どこかで腹をくくった上で、人間として充実した生き方を見失わないようにしないと。このままでは人間社会全体が物理的な死の前に「精神的な死」に直面してしまう。

実際、こんなことをボソッと書いている私でも、寝ている間に見る夢の中にもコロナは入り込んできているし、朝、起きるときの鬱状態が日々悪化している。
次にこれをやろうかな、というアイデアはいろいろあるのだが、「どうせ……」という否定形の思考が支配的になって、動けない。
これを乗り切るには、自分を変えていかなければいけないのかもしれない。
利己的な発想を捨てて、利他的に動くことに意味を見出す……とか。
若いときにわがまま放題、自己中心で生きてきたツケが回ってきたのかもしれない。
謙虚に、そして否定形の思考ばかりに支配されないように意識して生きる。

……やれることは、そういうことかなあ……。


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