GoToキャンペーンの「実態」を見よ! ― 2020/07/16 15:07
日本政府は、当初から非難囂々だった「GoToキャンペーン」なるものを、当初の予定より前倒しして、2020年7月22日からスタートさせると言っている。
もはや正気の沙汰ではない。
メディアもSNSも「コロナ感染拡大を招く」という論調だが、それ以前に、このキャンペーンの実態を把握していないのではないか。
もう、ほんとにこういうのにつき合うのは嫌なのだが、観光庁の最新のFAQ集から重要ポイントを簡単にまとめてみたので、ぜひ確認してほしい。
とにかく分かりにくい。何度読み直してもよく分からない。しかも「詳細は調整中であり、近日中に改めてお知らせする」なんて答えが随所に出てくる。多分、業界内でも正確に把握している人は少ないだろうし、「詳細は調整中」のまま強行するらしい。
●要するに、基本、旅行業者を通さない個人旅行は蚊帳の外。全然関係ない。
●三密を避けてなるべく人と接触しないで旅行をするというなら、個人や夫婦などで車を使ったささやかな旅行などをイメージするが、そういうものはまったく対象外。逆に、旅行会社を通した団体旅行(修学旅行や社員旅行など)は丸ごと適用される。
●旅行代理店・業者を通じない個人旅行では、泊まった旅館が登録業者になっていなければならないが、旅館側も「そんな話は聞いていないので何も分からない」と言っている。
●旅館が登録業者になるための手続き申請方法も、個人が後から宿泊代の35%をペイバックしてもらうための申請方法も、未だに「調整中」。準備も何もできていないのに22日からスタートするというありえないお話。
●割引適用の宿泊数に制限はないので、例えば旅行業者を通じて夫婦で一泊4万円以上する旅行を10泊分するならば、旅行会社に支払う金額のうち最大で28万円割引きされる。……庶民とは無縁の話。
↑何度読み返してみても、すでに登録済みの旅行業者(あらかじめ選別していた?)を通じての旅行以外ではまったく無理。旅館等がキャンペーン割引き適用の予約を直接取ることも事実上不可能。
結局、13年超の中古車には自動車税を割増し課税するが、「エコカー」認定された高級車を新車で買えば減税するという悪法と同じ、富裕層相手の税金ばらまき。しかも、その予算の多くは「事務手数料」にあてられている⇒アベノマスクと同じ、ピンハネ商法。
こんなものを強行したらどうなるか?
地域経済を混乱させ、地域間ヘイトを無用に増大させ、小規模事業者や個人経営者には今以上に客が回らないようにさせるという、恐ろしいキャンペーン。
そのために使われる金は税金。まさに「GoTo(強盗)」である。
★これを何度か書き直しているうちに、今度は「東京発、東京への旅行は除外する」とか言いだしたらしい……ほんっとに恥ずかしい。
もはや正気の沙汰ではない。
メディアもSNSも「コロナ感染拡大を招く」という論調だが、それ以前に、このキャンペーンの実態を把握していないのではないか。
もう、ほんとにこういうのにつき合うのは嫌なのだが、観光庁の最新のFAQ集から重要ポイントを簡単にまとめてみたので、ぜひ確認してほしい。
とにかく分かりにくい。何度読み直してもよく分からない。しかも「詳細は調整中であり、近日中に改めてお知らせする」なんて答えが随所に出てくる。多分、業界内でも正確に把握している人は少ないだろうし、「詳細は調整中」のまま強行するらしい。
- 基本的に、このキャンペーンに登録した旅行業者のツアーが対象。
- それ以外の個人旅行は、旅費などが対象外であるのはもちろん、宿泊代金も、宿泊先の旅館やホテルなどがキャンペーン登録業者であることが必要。
- 宿泊業者などが旅行業者を通じずに宿泊させた客などにキャンペーン割引きをするためには、「宿泊施設の予約システムを通じて宿泊記録が外部に確実に蓄積・保管される仕組みが構築されているなど、適正な執行管理のための体制が確保されていること」を条件とした事前登録が必要。
- 個人での旅行では、事後に宿泊代の領収書原本、申請書、宿泊証明書(旅館側が発行)、個人情報同意書などを提出する必要がある。
- その申請先の事務局はまだ立ちあがっておらず、現時点でもまだ「調整中」。いつから申請できるかも「調整中」。
- 割引適用率は50%で、一泊最大2万円まで。
- その50%のうち3割(全体の15%)は9月以降に発行予定の「地域共通クーポン」であてられるので、現時点での旅行では関係がない。よって、現時点での割引きは最大で35%。一泊4万円以上のツアーの場合、その50%の2万円の70%である1万4000円割引きが最高額となる。
- 旅行会社の判断で、割引率をきっちり35%にしなくてもよい。
- 日帰り旅行では最大1万円というが、旅行会社が組んだツアー旅行だけで、個人で旅行をしたらまったく無関係。
●要するに、基本、旅行業者を通さない個人旅行は蚊帳の外。全然関係ない。
●三密を避けてなるべく人と接触しないで旅行をするというなら、個人や夫婦などで車を使ったささやかな旅行などをイメージするが、そういうものはまったく対象外。逆に、旅行会社を通した団体旅行(修学旅行や社員旅行など)は丸ごと適用される。
●旅行代理店・業者を通じない個人旅行では、泊まった旅館が登録業者になっていなければならないが、旅館側も「そんな話は聞いていないので何も分からない」と言っている。
●旅館が登録業者になるための手続き申請方法も、個人が後から宿泊代の35%をペイバックしてもらうための申請方法も、未だに「調整中」。準備も何もできていないのに22日からスタートするというありえないお話。
●割引適用の宿泊数に制限はないので、例えば旅行業者を通じて夫婦で一泊4万円以上する旅行を10泊分するならば、旅行会社に支払う金額のうち最大で28万円割引きされる。……庶民とは無縁の話。
Q:本事業による割引旅行・宿泊商品を取り扱う事業者となることを希望しているが、国(事務局)への参加事業者登録はいつから始まるのか。また、具体的にどのような内容を申請することになるのか。
A:参加旅行業者・宿泊事業者の登録は、7月半ば頃から開始することを予定している。詳細は、観光庁HPなどを通じてお知らせする。例えば、事業者の名称・所在地・連絡先、給付金の振込口座等の情報を事務局に申請いただくこと等を想定しているが、いずれにせよ近日中に改めてお知らせする。
Q:参加事業者の登録前に商品を割引で販売することは可能か。既存の予約分については予約の時点で登録ができていないが、還付の申請はできるのか。
A:不可。予約の時点で登録ができていない場合であっても還付の申請はできる。ただし、要件を満たさない等の理由により事業者の登録が認められない場合は割引や還付の対象とはならない。
(観光庁 Go To トラベル事業 よくあるご質問(FAQ)7/13(月)時点版 より)
↑何度読み返してみても、すでに登録済みの旅行業者(あらかじめ選別していた?)を通じての旅行以外ではまったく無理。旅館等がキャンペーン割引き適用の予約を直接取ることも事実上不可能。
結局、13年超の中古車には自動車税を割増し課税するが、「エコカー」認定された高級車を新車で買えば減税するという悪法と同じ、富裕層相手の税金ばらまき。しかも、その予算の多くは「事務手数料」にあてられている⇒アベノマスクと同じ、ピンハネ商法。
こんなものを強行したらどうなるか?
地域経済を混乱させ、地域間ヘイトを無用に増大させ、小規模事業者や個人経営者には今以上に客が回らないようにさせるという、恐ろしいキャンペーン。
そのために使われる金は税金。まさに「GoTo(強盗)」である。
★これを何度か書き直しているうちに、今度は「東京発、東京への旅行は除外する」とか言いだしたらしい……ほんっとに恥ずかしい。


厚労省が介護現場を混乱させている ― 2020/06/21 14:43
まずは、以下の文章をすんなり理解できるかどうか、読んでみてほしい。
これは6月1日付で「各都道府県 指定都市 中核市 介護保険担当主管部(局) 御中」という通達先のもとに厚労省から出された「事務連絡」である。
私も含めて一般人?には、なんのことだかさっぱり分からないだろうから、ザックリと意訳すると、
この「利用者が同意すれば」という部分はどうするのかといえば、
「保険者の判断により柔軟に取り扱われたい」???
当然のことながら、目下、介護現場は大混乱である。特にケアマネ(介護支援専門員)は大迷惑だ。
以前にも、アベノマスクの配達員代わりにされているケアマネの悲劇については紹介した(厚労省がケアマネを「アベノマスク無料配達員」にする恐怖 4/15投稿)が、ただでさえ大変な仕事がコロナでぐちゃぐちゃになっているところに、さらにとんでもない仕事を押しつけられているのだ。
この処置も含めて、厚労省のコロナ対応「まとめ」ページには膨大な内容が詰め込まれていて、次から次へと通達が出ていることが分かる。
厚労省は机上の論理で考え、通達しているだけだが、それでもこの仕事量は半端じゃない。毎晩徹夜している職員もいることだろう。
しかし、そんな風に厚労省が仕事に励めば励むほど、介護や医療の現場は混乱し、余計な仕事を背負い込まされ、介護・医療従事者は疲弊し、精神もやられ、事業の質が落ちていく。最終的には介護や医療の事業そのものが破綻しかねない。
「霞が関の優秀な官僚が日本を支えている」という神話は完全崩壊している。それこそが、今の日本がいかに危機的状況であるかを知らしめている。
コロナのおかげで、今まで表に出てきづらかったことが次々に可視化されてきた。これをきっかけに、この国をいい方向に向かわせることはできるのか? 舵取りをするべき人たちの能天気ぶり、悪代官ぶりを見るにつけ、絶望のどん底に落ちていく。
新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の取扱いについては、「新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて」(令和2年2月17日付厚生労働省老健局総務課認知症施策推進室ほか連名事務連絡。以下、「第1報」という。)等でお示ししているところです。
本日、通所系サービス事業所(通所介護、通所リハビリテーション、地域密着型通所介護、認知症対応型通所及び介護予防認知症対応型通所介護。以下、同じ。)と短期入所系サービス事業所(短期入所生活介護、短期入所療養介護。以下、同じ。)については、介護支援専門員と連携の上、利用者からの事前の同意が得られた場合には、新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応を適切に評価する観点から、別紙に従い、介護報酬を算定することを可能としたことから、管内市町村、サービス事業所等に周知を図るようお願いいたします。また今回の取扱いについてわかりやすくお伝えする観点から参考資料を作成いたしましたのであわせてご確認ください。
(「係る」や「取扱い」という送り仮名は原文ママ)
これは6月1日付で「各都道府県 指定都市 中核市 介護保険担当主管部(局) 御中」という通達先のもとに厚労省から出された「事務連絡」である。
私も含めて一般人?には、なんのことだかさっぱり分からないだろうから、ザックリと意訳すると、
- コロナで苦労しているだろうから、利用者が同意すれば、介護報酬額を2段階UPして請求できるようにしたよ
- そのUPの仕方については資料をつけたから参照してね
- このことを自治体の行政関係者、介護サービス事業者たちにしっかり知らせなさいね
- 介護報酬点数の計算をしているケアマネ(介護支援専門員)はしっかり調整してくださいね
この「利用者が同意すれば」という部分はどうするのかといえば、
必ずしも書面(署名捺印)による同意確認を得る必要はなく、保険者の判断により柔軟に取り扱われたいが、説明者の氏名、説明内容、説明し同意を得た日時、同意した者の氏名について記録を残しておくこと。……なのだそうだ。
また、当該取扱いを適用する場合には、居宅サービス計画(標準様式第6表、第7表等)に係るサービス内容やサービスコード等の記載の見直しが必要となるが、これらについては、サービス提供後に行っても差し支えない。
(厚労省サイトのQ&A ⑬の3 より)
「保険者の判断により柔軟に取り扱われたい」???
当然のことながら、目下、介護現場は大混乱である。特にケアマネ(介護支援専門員)は大迷惑だ。
以前にも、アベノマスクの配達員代わりにされているケアマネの悲劇については紹介した(厚労省がケアマネを「アベノマスク無料配達員」にする恐怖 4/15投稿)が、ただでさえ大変な仕事がコロナでぐちゃぐちゃになっているところに、さらにとんでもない仕事を押しつけられているのだ。
厚労省の官僚が徹夜すればするほど現場は疲弊・混乱する
単に「仕事が大変になる」という話ではない。理不尽なことを間違ったやり方で押しつけてくる霞が関の思考回路崩壊が大問題なのだ。- 要介護認定を受けている利用者の多くは、介護保険の利用限度額いっぱいを使っており、超過分は自己負担している。その状態で「2段階UP」による介護報酬ポイント分は、当然、利用者が負担することになる。
- それでも、介護事業者はコロナのせいで利用者が減ったり事業所の一時閉鎖などがあってただでさえ大変な状況の中、こんな馬鹿な措置であっても、少しでも収入の足しになるなら……と思う。しかし、その事務作業はケアマネが行う。
- 利用者の同意を得ることが前提となっているが、その「同意を得る」のは誰がどのようにやるのか? これまた当然、ケアマネが苦労させられることになる。
- 「介護支援専門員(ケアマネ)と連携の上、利用者からの事前の同意が得られた場合」というのは、ケアマネが利用者に伝えずに「同意しない」と拒否するケースを許容しているのか? それとも、ケアマネは利用者にこの内容を伝えた上で同意を取るように動けと命じているのか?
- ケアマネを通さず、事業者側が利用者に直で同意書を手渡しているケースがすでに多数出ていて、ケアマネ事務所には利用者からの問い合わせが殺到している。
- 利用者は認知症であることが多いし、ただでさえ難解なこの悪文の内容を利用者や利用者家族に説明するだけでも大変な苦労を強いられる。利用者の負担額が増える可能性があるわけだが、そこまで説明しても、利用者は「同意をしないと不利益になるんじゃないか」と、余計な不安を抱え込む。
- 板挟みになっているケアマネの報酬は増えるわけではない。
この処置も含めて、厚労省のコロナ対応「まとめ」ページには膨大な内容が詰め込まれていて、次から次へと通達が出ていることが分かる。
厚労省は机上の論理で考え、通達しているだけだが、それでもこの仕事量は半端じゃない。毎晩徹夜している職員もいることだろう。
しかし、そんな風に厚労省が仕事に励めば励むほど、介護や医療の現場は混乱し、余計な仕事を背負い込まされ、介護・医療従事者は疲弊し、精神もやられ、事業の質が落ちていく。最終的には介護や医療の事業そのものが破綻しかねない。
「霞が関の優秀な官僚が日本を支えている」という神話は完全崩壊している。それこそが、今の日本がいかに危機的状況であるかを知らしめている。
コロナのおかげで、今まで表に出てきづらかったことが次々に可視化されてきた。これをきっかけに、この国をいい方向に向かわせることはできるのか? 舵取りをするべき人たちの能天気ぶり、悪代官ぶりを見るにつけ、絶望のどん底に落ちていく。


非常事態というより異常事態 ― 2020/05/16 20:49
テレビ朝日『羽鳥慎一モーニングショー』より
医療や介護の現場が壊れ始めている。
5月9日時点で、COVID-19の感染が確認された医療機関や介護事業所、障害福祉施設などの従事者の累計は1100人を超えている。内訳は判明分で医師150人以上、看護師450人以上。介護職員等や職員の内訳が未判明な分も合わせると従事者の感染は計1180人以上に上る(日経ヘルスケア調べ)。
一方、院内感染・施設内感染と思われる患者・利用者等は1370人以上。従業者と患者・利用者等の合計は2550人以上となる。厚生労働省の調べによると、5月9日時点でのCOVID-19感染者は1万5649例。医療・介護・障害福祉の従事者の陽性者(1180人)が占める割合は約7.5%となる。また院内感染・施設内感染と思われる患者・利用者等(1370人)の占める割合は約8.8%。従業者と患者・利用者等の合計(2550人)は全体の約16.3%である。国内のCOVID-19の全感染者の6分の1ほどが医療・介護・障害福祉セクターで生じているとみられる。
(医療・介護・障害福祉で相次ぐ大規模クラスター COVID-19の全感染者の16%強、6分の1ほどが医療・介護・障害福祉関連か 日経メディカル 2020/05/11)
このままでは、次の波が来たときに一気に死者が増えるかもしれない。
問題は、医療現場のことを医療現場に任せようとしない厚労省の姿勢ではないか。
国立感染症研究所は4月27日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のゲノム分子疫学調査の結果を公表した。わが国では、初期に生じた中国経由の第1波の封じ込めに成功した一方、3月中旬以降に欧米経由の第2波が発生し、現在の感染拡大につながったことが示唆された。
(感染研がゲノム分子疫学調査の結果を公表 第1波は終息するも欧米からの帰国者経由の第2波が拡大 日経メディカル 2020/05/12)
患者のSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)ゲノム配列を解析し、ウイルスの変異パターンや感染経路を探る試みはすでに世界中で行われ、論文も次々に発表されているので、日本の感染研が発表した↑この内容は新しいものではないし、すでに共通認識となりかけていたことの後追いのような印象を受ける。
しかしまあ、感染研というのは本来こうした疫学的研究をして、ウイルスの正体や性格を明かしていくことが使命だろうから、こうした調査・研究をしていてくれればいいのだ。
検査結果を絞り込んで独占しようとして、医療現場を混乱させていることが問題だ。医療現場での実務は患者の治療・救済であり、感染研が医療現場をコントロールするのは完全なお門違いだ。
データが少なければ、疫学調査の信頼性も下がる。医療現場での検査は民間検査機関と直結させ、その結果を随時、衛生研~感染研という方向で送ればいいだけのことで、その方法は当然オンラインで効率化させなければならない。未だに電話で相談とかFAXで送信とかやっている国が他にあるのだろうか?
正気を保つのが大変
昨日、1人10万円の定額給付金申請書なるものが郵送されてきた。当初は高市総務相(←ああ!)が「なるべくマイナンバーカードを使ってオンライン申請を」と発言していたが、実際にはオンライン申請のほうが郵送での申請よりはるかに手間がかかり、時間も取られているのだという。サーバーがまともに動かないとか、マイナンバーカードのパスワードを忘れて誤入力を続けたためにカードをロックされてしまう人が続出し、それを解除してもらうために役所の窓口に並んで延々待たされ、役所が集団感染リスクにさらされているとかなんとか……。
そもそもマイナンバーカードが住基台帳と紐づけされていないので、オンライン申請でのマイナンバーカードの役割は本人確認書類としてしか機能せず、オンライン申請を受けた役所の職員がいちいち内容をキーボードから手入力したり、内容を住基台帳と照らし合わせているのだという。
特別定額給付金のオンライン申請は、マイナポータルにアクセスしてマイナンバーカードをカードリーダーでパソコンに接続し、世帯主の氏名▽生年月日▽住所▽給付を希望する世帯員の氏名――などを記入し、振込口座を証明する書類を添付。カードの署名用電子証明書の暗証番号を入力して完了となる。……嘘だろ??!!
(略)
11日までのオンライン申請が9000件を超えた東京都品川区では、オンライン申請された情報を職員がダウンロードし、住民基本台帳と照合して、申請者の氏名や生年月日などに誤りがないかを目で確認しているという。二重振り込みを防ぐため、給付を求める世帯員の住民票コードを手で入力し、振込口座情報は添付書類の画像と照合する。銀行名が旧名だったり文字間のスペースがなかったりすることも多く、一つ一つ修正しているという。確認作業には2人1組で計8~10人をあてているが、処理できるのは週1000件程度だという。臨機応変の判断が求められるため、誰もができる作業ではなく、人数を増やすのは難しい。
一方、21日から申請書を発送する予定の郵送申請では、紙の申請書に書かれた口座情報を手入力する必要はあるが、作業自体は単純なため、1日あたり約60人の職員を投入して週2万1000件を処理できる見込みだという。
(郵送より遅い? 10万円給付「オンライン申請」の本末転倒 毎日新聞 2020年5月14日)
なんのためのカードなの? そういう手間をなくすために何千億円もかけて始めたシステムだったんじゃないの?
IT後進国ぶりもここまでくるとジョークにもならない。日本はITインフラも遅れているが、何よりもITの意味が分かっていない人間(しかも、命令系統の上にいる人たち)が多すぎる。
もう、いちいち語るのもストレスだからやめたいのだが、あまりにもあまりだ。
かと思えば、
新型コロナウイルスの感染拡大防止策として政府が妊婦向けに配る布マスクで不良品が見つかった問題で、厚生労働省は14日、参院厚労委で、自治体から返品された布マスクの検品費用として約8億円かかると明らかにした。
厚労省によると、妊婦向けの布マスクを巡っては、4月30日時点で自治体に配布していた約47万枚のうち約4万7千枚について、異物混入や汚れなどがあったとして返品されていた。現在、国が委託した専門業者が約550人態勢で検品しており、不良品が確認されれば取り除くという。
(妊婦向け布マスク、検品に8億円 不良品問題で厚労省 2020/05/14 共同通信)
……もはや発狂しそうだ。
アフターコロナを見据える
これから夏になると、COVID-19で死ぬ人より熱中症や他の病気を悪化させて(病院に行けなくて)死ぬ人や、仕事や家庭を失って自殺する人のほうが多くなるのではないか。それで冬になるとまたじわじわと感染者が見つかって、あちこちで死者も出てきて……。
そういうのが続いていくうちにみんなうんざりしてきて、「癌や交通事故で死ぬ人がいる」のと同じような感覚でCOVID-19を受け入れるしかなくなる……そんな気がする。
そうなっても、一旦身体に染みついた「三密空間は怖い」「人との接触を減らせば感染リスクは下がる」という習慣や考え方はある程度残るし、その頃には世の中のビジネスモデルがガラッと変わっているから、よくも悪くも今まで通りの生活はできなくなる。
物の値段、特に大衆消費財の類は価格が上がる。結果、貧乏人はますます生活が苦しくなる。
職人は高級品を金持ちに売るという形でしか生き残れなくなる。
生活格差が加速する。社会保障は崩壊する。誰もが普通に病院に行って診療を受けたり手術を受けたりすることはできなくなるし、介護施設はよほどの金持ちしか利用できなくなる。
ネット文化がますます多様化して、バーチャルな趣味・娯楽が増える。多分、その質は落ちていき、下卑たもので溢れる。
伝統芸能とかクラシックの演奏会とかというものは、金持ちにしか楽しめなくなり、中世のような社会に戻る。貧乏人はネット世界に閉じこもる。
そんな中で大規模災害や、今回以上の強烈な感染症が現れたりして、世界は崩壊へ向かう……。
SF映画みたいな世界が、実際にやってくるかもしれない。
多分、それを見る前に私のような高齢者世代は死ぬのだろうが、最後まで正気を保つことができるだろうか。無法地帯と化したような現政権や、世界から笑われるような社会システムを見ているだけで、自信がどんどんなくなる。


厚労省がケアマネを「アベノマスク無料配達員」にする恐怖 ― 2020/04/15 15:27

上が配られたアベノマスク。下が普通に売られている(かつて売られていた?)一般的なサージカルマスク。配られたものは小さすぎるし、布地の白が汚い
バカが配るマスク
先日の「バカにつけるマスク」は、書いていてあまりにも情けなくなり、もうこの手の話からは距離をおこうと心に決めていたのだが、その後もあまりにもひどい事態になっているので書く。今朝、スポーツ紙が、介護施設に届いた布製マスク(以下「アベノマスク」←すでに普通名詞化した?)の記事を大きく取り上げた。
職員の男性は「小さくて、(顎まで隠そうとすると)鼻が出てしまう。今使っているマスクがなくなったら、自分で作ろうと思います」と話す。
(アベノマスク届くも「小さく鼻出る」「意味ある?」 日刊スポーツ 2020/04/15)
介護関連のサイトや各SNSでは、すでに介護現場から困惑や怒りの声が寄せられている。
予防効果の低さを耐久性という言葉ですり替え、黄ばみ黒ずみが著しい明かに売れ残りと思われる長期在庫マスクを箱で送りつけ、ケアマネさんを利用して「配布徹底」をさせようとまでしています。ただでさえ不評なマスクなのに、この変色したマスクを誰が受け取ってくれるでしょうか。
事業所に届いたマスクをケアマネが配るとか市が言ってます。そうすれば、2ヶ所以上サービスを利用してても、一人に1枚になるとか。でも、ケアマネの負担とリスクは考えられてません。ケアマネが配れば高齢者も安心できると言ってます。この緊急事態宣言が出てる世の中で、1件1件訪問しろって、何を考えてるのかわかりません。
昨日、届きました。紐が伸びないタイプ。ちょっと、これはね。自分が持っているマスクを使います。
特養老人ホームです。ガーゼマスク届きました。サージカルマスクの在庫は僅かで、それは看護優先。介護スタッフは届いたガーゼマスク着用と決定されました。
(略)個人的に、介護にガーゼマスクはない、と思ってます。自身も無症状感染者かもしれないと考えると、感染させたら…重篤化しやすい方ばかりの中、やはり怖くて使えません。
事務所から連絡が来てマスク取りに行きました。(略)各事務所から頂いたのですが、個体差あり、大きすぎたり、小さかったり、トンガリ過ぎてたりです。丁度よいのを参考に型紙をおこして自分で作ろうと思っています。
これは「和牛一族」の眼帯では?
一人がネットに届いたマスクの画像を上げると、他の地域、施設、介護事業所のスタッフらから「うちに届いたのとは違う。うちに届いたのは~~だった」といったコメントがつく。
それで、届いたアベノマスクにはいくつものタイプがあるということも分かってきた。
- 布地に明らかな黄ばみ、黒ずみがあって、倉庫で長期在庫として眠っていたと思われる古いマスク
- 最初に首相が自らしていた小さなガーゼマスク(通称「給食係マスク」)
- 耳掛け部分がゴムではなく布地で、伸びないために顔に装着すらできないもの
- 一部のドラッグストアなどで市販もされていた少し大きめのガーゼマスク(いちばんマシなタイプ?)
最初に配ったのは不良在庫一掃処分段階で、それがはけると、次はあちこちの下請け工場やアジアの低賃金労働現場に低料金で発注して作らせているんじゃないかと疑いたくなる。
そんなアベノマスクは1枚260円、送料などを含めて配布の総経費は466億円だと報じられている。
某雑誌のアンケートでは76%が「届いても使わない」と答えたとか。
いくらなんでも「あれはやめます」となるかと思っていたら、本当に送りつけ始めていた。それだけでも気が滅入るのだが、さらに怖ろしいことが起きていた。
ケアマネを無料のマスク配達員にしていた
冒頭の写真は、ある居宅ケアマネ事務所に厚労省から送られてきたアベノマスクである。これを在宅介護サービス利用者の家に1枚ずつ配れ、と厚労省が言っているという。
いくらなんでも……と、にわかには信じられない話だったのでネットで裏を取ろうとしたら、すぐに出てきた。
事 務 連 絡 令和2年3月19日
各都道府県衛生主管部(局)
民生主管部(局) 御中
厚生労働省医政局経済課(マスク等物資対策班)
老 健 局 総 務 課 認 知 症 施 策 推 進 室
老健局 高齢者支援 課
老健局 振 興 課
老健局 老 人 保 健 課
(以下抜粋)
今般、高齢者施設・事業所における具体的な配布方法について下記のとおりお示ししますので、各都道府県におかれましては御了知いただくとともに、管内市町村や貴部局所管の関連団体、関連施設にご周知いただけるようよろしくお願いいたします。
2.利用者分の配布方法
○ 利用者分については、配布事務連絡の別紙に掲げる高齢者施設・事業所の利用者が配布対象になります。各施設・事業所の具体的な配布枚数は、介護報酬データにより得られた情報等に基づき設定しています。
○ 配布先については、
・施設・居住系サービス、高齢者向け住まい等については、各施設等に配布、
・訪問系サービス及び通所系サービスについては、居宅介護支援事業所に配布しておりますので、当該事業所より各利用者に配布をお願いいたします。
※ 小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、介護予防小規模多機能型居宅介護は各サービス事業所に配布しています。
※ 居宅療養管理指導については、当該サービスのみを利用する者分を、サービス事業所に配布していますので、該当する利用者へ配布をお願いいたします。
(原本PDFは⇒こちら)
この通達が厚労省から出されたのが3月19日なので、すでに各地のケアマネ事務所にはアベノマスクが届き始めている。
新型コロナウイルスの流行を踏まえた介護現場への布製マスクの配布について、厚生労働省は19日、具体的な方法をアナウンスする通知の続報を出した。 訪問系サービスと通所系サービスの利用者の分を、すべて居宅介護支援事業所に送ると説明。「各利用者への配布をお願いします」と協力を求めた。居宅のケアマネジャーらには相応の負担がかかることになる。
(《 介護保険最新情報Vol.789 》介護現場へのマスク配布、在宅利用者の分はケアマネ事業所に発送 厚労省)
「当地でも連日感染者が出ている状況なので、玄関先での訪問にしているのに。しかも、今月は早めにモニタリング訪問(居宅ケアマネは最低月1回の利用者宅の訪問観察が義務づけられている)を終えようと、すでにご利用者様の半分以上回ってしまった後なのに。各戸に2枚の分とは別なので、なぜうちは1枚なの?と訊いてくる人もいるし……」
こんなことが現実に起きていると知って、COVID-19そのものよりも深く底知れぬ恐怖を感じた。
お国が愛国婦人会に命じて各戸に竹槍を配らせるようなものではないか。
介護現場で働く人たちは、ただでさえ大変な苦労をしている。数々の理不尽に耐え、現場現場で最大限の創意工夫、自助努力をしながら命と接している。
私は父や義母の介護を通じて、そうした人たちの素晴らしい資質、人間性を知っている。本当に頭が下がるばかりだ。
そうしたケアマネや介護施設スタッフにとって、厚労省は大本営のようなものである。命令が下れば逆らうのは難しい。その上下関係の構図の中で、トップがいちばん愚かで、現場に混乱と理不尽な困難を押しつけてくる。この構図がどんどん戦前、戦中の社会に似てきているのが怖ろしい。
太平洋戦争では、実際に敵の弾に当たって死んだ兵士よりも、馬鹿な命令を受けて、餓死、病死した兵士のほうが多かった。一般市民はメディアの嘘情報を信じたまま空襲や原爆の犠牲になった。
ウイルスそのものよりも怖いものが、今、急速に蔓延しつつある。国民がそのことに気づき、一刻も早くその原因を取り除いていく努力をしないと、本当に手遅れになる。


COVID-19対策は自治体主導に切り替えよ ― 2020/03/10 18:00
国に頼れないと分かった以上、自治体や民間レベルで万全の構えを!
さて、もはや日本政府や厚労省にはまったく期待できないことが明白になったので、今はもう政府を責めても何も前に進まない。海外から入ってくるデータをもとに、できる限りの予測をして、悪い方向に進むことを前提にした備えを自治体レベルで早急に進めることが求められる。
新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、素早く設置できる「医療用陰圧テント」のニーズが高まっている。膜構造物メーカーの太陽工業(大阪市)は2020年3月6日、同社が販売してきた医療用陰圧テントについて生産体制を強化すると発表した。
(「新型コロナで需要急増、太陽工業が医療用陰圧テントの生産体制強化へ」 日経クロステック/日経アーキテクチュア 2020/03/10)
↑まさにこういうことだ!
- 各病院はそれぞれの規模に合わせて「発熱外来」の独立設置を確保するように全力で動き始める(駐車場スペースなどを使って別の動線と他の患者との分離を確立した診察棟をテントやプレハブユニットでもいいから作っておく)
- 医療・介護現場のスタッフが倒れないよう、自治体は共稼ぎ子持ち家庭を全力でバックアップする(国の「要請」を鵜呑みにせず、地域の実情に合わせた臨機応変な対応を毅然とする)
- 企業は従業員の就労環境改善を劇的に進める
- マスクやアルコール消毒液は医療機関・介護施設へ優先して渡るようにする(一般家庭ではそれらを買い占めず、手洗いの徹底でよい)
- だれが感染したらしい、ではなく、だれが弱っているらしいという視点で、病人を早く手当てできるよう周囲が協力する(感染者差別の風潮をやめないと、病人が病状を隠して無理をしたり病院に行かずに引きこもったりして、感染拡大や衰弱死増大につながる)
……そういうレベルで各現場が対応しないと大変なことになる。
メディアは経済が経済がと騒ぐが、経済=株価や為替レートではない。人々の活力が失われ、動けなくなることが最悪の事態へと導く。人が動かなくなると、福祉に支えられている高齢者や、不安定な仕事でぎりぎりの生活をしている貧者などの弱者から順番に倒れていく。被害をどれだけ小さくしていけるかという戦いなのだ。


深刻すぎる「和泉・大坪問題」 ― 2020/02/29 01:44
岡田晴恵教授の「告発」
今日(2月28日)の「羽鳥慎一モーニングショー」で、白鴎大学の岡田晴恵教授(元・厚生労働省国立感染症研究所ウイルス第三部研究員)が悲壮な表情で重大発言をした。この発言の前に、いつも適確な指摘をする玉川徹氏が、PCR検査が保険適用になればすべての医療機関から民間の検査施設に直接検体を送れるような、ちょっと勘違いな解説を延々としていたので、まずそこを指摘しておきたい。
PCR検査が保険適用になるだけでは事態は全然解決しない。保険適用になっても、検査の依頼が保健所を通してという馬鹿げたシステムのままだったら、入り口が閉じられていることは変わらず、検査数は増えないまま、今は国が負担している検査費用の一部を患者が自分で負担するだけのことになってしまう。
司会の羽鳥氏もそのことを分かっていて、指摘しようとするのだが、玉川氏の熱弁が終わらず、その問題が視聴者に伝わらないままだった。
その間、岡田教授はずっと悲壮な表情をしていた。これから言おうとすることを、本当に言っても大丈夫かどうか、ずっと悩んでいたのだろう。
岡田教授は玉川氏の熱弁が一区切りしたのを見計らい、どこか怯えたような口調でこう切りだした。
私は、あの、プライベートなことはあまり言いたくないんですけど……中枢にある政治家の方からも「こういう説明を受けたんだけど、解釈、これでほんとにいい?」という電話がかかってくるんですけど……まあ、複数の先生方、正直言いまして、クリニックから直接かってことについては、ちょっと待ってくれって言われているんです。だからそれ(PCR検査を他の検査のようにクリニックから直接民間検査会社に出せるかどうかということ)はまだ分からない。↑これは、玉川氏がその問題にまだ気がついていないことを指摘した「前置き」部分。
注意したいのはこの「先生方」というのは中枢にある政治家(自民党厚労族議員?)の「せんせい」という意味。それも一人ではなく複数だという。
以下のことは、この「先生方」から直接聞いた話として吐露された。
要約するとこうなる。
- 私は今まで、検査させないのは東京五輪などの巨額な経済事情絡みで、「汚染国」のイメージをつけたくない。そのためには感染者「数」を増やしたくないからなのかと思っていた。
- しかし、思いきって(自分に意見を求めてきた政治家に)そうぶつけてみると、「ハハハ」と笑いながら「そんな、数をごまかすほど肝が据わった官僚は今どきいません」と。(そうではなく)これは「テリトリー争い」なんだ、と。
- 要するにこの(PCR検査の)データはすごく貴重で、感染研がそのデータを独占したいと言っている感染研のOBがいる……と。そこらへんがネックだった、と。
- 各地の衛生研から集まってくるデータは全部感染研で掌握する(しかし、民間に出してしまうと独占できなくなる……という意味)
- それを聞いて私が思ったのは、そういうことはやめていただきたい、と。
- 初動が遅れたのは感染検査データが取れなかったから。研究がどうの論文がどうのではなく、人命を救うという感染研の元々の使命に立ち戻ってほしい。
↑岡田教授の、ある意味命がけのこの「告発」を聞いて、スタジオ内はしばし静まりかえった。
要するに、国立感染研究所と政府を結ぶルートに、検査データを民間機関に出したくない、独占したいと強くごり押しする人物(複数)がいるから、ここまでひどいことになったのだ、というわけだ。
しかもこの期に及んで、その勢力はCOVID-19のPCR検査をするためには保健所~自治体の保健衛生部を通させようとしている、と。
保健所や自治体を通さなければ検査に出せないのだとすれば、入り口は固く締まったままなので、民間検査会社を入れようが保険適用にしようが検査数は増えないし、検査のタイミングはどんどん遅れてしまう。
そんな馬鹿なことがありえるのか? と、常人なら誰もが思うわけだが、実際、それと同じことを上昌広医師も前々から言っている。
私は、政府機能を強化することで、感染症対策が上手くいくようになるというのは、何の根拠もない仮説に過ぎないと考えている。むしろ、現状を把握してない政治家・官僚、さらに有識者の権限が強化されることで、被害は増大すると予想している。
厚労省はクリニックでも診断できる簡易キットの開発にご執心で、感染研に予算措置した。確かに簡易検査はあれば便利だが、開発されるまで待つなど、悠長なことは言っていられない。
(「遺伝子検査行う体制作り急げ」2020/02/25)
私は厚労省と国立感染症研究所の内輪の都合が優先されていると考えている。
今回の新型コロナウイルスの流行では、検査だけでなく、治療薬やワクチンの開発も国立感染症研究所が担当するそうだ。巨額の税金が研究開発費として投じられるだろう。
長期的な視野に立つ基礎研究ならともかく、早急な臨床応用が求められる創薬や検査の開発は、メガファーマや検査会社の仕事だ。「研究所」では彼らと競争できない。なぜ、安倍政権は、民間に競争させず、国立の研究機関に独占的に業務を委託したか、「国民の命より、官僚の都合を優先した」と言われても仕方ないのではないか。
私は、新型コロナウイルス対策の迷走の責任は厚生労働省にあると考えている。多くの官僚は真面目に業務に励んでいる。ただ、その方向性が間違っており、利権も絡む。
(「なぜ厚労省は大がかりなウイルス検査をこれほどまでに拒むのか」文春オンライン 2020/02/14)
ここまで見てきても、やはり我々一般人には理解を超えた非常識、不条理に思える。そんなことがあっていいのか、と。
しかし、これを裏付けるような話は以前からいろいろ漏れてきている。
27日の衆院予算委員会で、立憲民主党の川内博史議員の質問で驚きの事実が発覚。25日に厚労省の研究機関「国立感染症研究所」から北海道庁に派遣された3人の専門家が「検査をさせないようにしている疑念がある」と指摘したのだ。
道の対策本部に派遣された3人は、政府が策定した基本方針に記載のある〈入院を要する肺炎患者の治療に必要な確定診断のためのPCR検査〉の実施を必要以上に強調。暗に、「軽症の患者は検査するな」との意向をにおわせ、道職員や保健所職員の間で「検査し過ぎてはいけないのか……」という空気が生まれているという。川内議員は道議会議員から聴取した内容だと明かした。
(「新型コロナ感染者急増の北海道で厚労省“検査妨害”発覚 政権に忖度か」日刊ゲンダイDigital 2020/02/28)
想像を絶するほど深刻だった「大坪問題」
国立感染研と厚労省、厚労省と政府……ここにどんな利権問題が生じるのか、という疑問が当然浮かんでくるが、これもいろいろな記事が出てくる。大坪氏が昨年7月に異例のスピード出世で厚労省審議官に抜擢されたのは和泉氏が強引に大坪氏を推した結果だといわれているが、不倫デートを楽しんだ京都大学iPS細胞研究所への出張では、和泉氏と大坪氏の2人がノーベル賞受賞者の山中伸弥所長に対して、来年から山中所長の取り組むプロジェクトに「国費は出さない」と言い放ち、大坪氏が「iPS細胞への補助金なんて、私の一存でどうにでもなる」と恫喝していたことがわかっている。この予算カットは、文科省が反対していたものを和泉氏が後ろ盾となるかたちで大坪氏が強硬に主張したものだ。↑
「健康・医療戦略室」は室長が和泉首相補佐官、厚労省の大坪氏が次長を兼任する、まさに不倫関係の舞台となってきた部署だが、もともとは、安倍政権が成長戦略のひとつとして医療関連産業の育成を掲げ、2013年に内閣官房に設置したもの。ただし、厚労省、文科省、経産省が支援する医学研究予算を集約させて効率的に配分するためには専門性と効率性が必要だとし、「健康・医療戦略の司令塔」として独立行政法人日本医療研究開発機構(AMED)を発足させた。 今年1月9日、そのAMEDで理事長や専門委員、さらに大坪氏らも参加するかたちで、第10回AMED審議会が開かれたのだが、ここで委員や理事長から飛び出したのが、大坪氏の独断専行への批判だった。
(「“安倍側近の不倫コンビ”和泉補佐官・大坪審議官の新疑惑を政府機関理事長が告発! 感染症研究などの予算80億円を自分の担当事業に投入」 Litera 2020/02/13)
この記事では、2020/01/09に独立行政法人日本医療研究開発機構(AMED)の審議会で噴出したAMEDの委員や理事長の「告発」が、議事録から抜き出す形で紹介されている。
まとめるとこんな感じだ。
瀧澤美奈子・専門委員(科学ジャーナリスト):「(「週刊文春」が報道したiPSのストック事業にストップをかけた件に言及し)こんな手続が許されているなら、今日のこのような会議も全く無意味ではないかと思います」
「官邸主導の御旗を振りかざして予算や人事を握って一部の人間が行政をゆがめているのではないかという疑いが国民の間で今、広がっております。その説明責任をしっかり果たしていただかないと、この会議自体も全く無駄なものになると思います」
末松誠理事長:「昨年の7月以降、実質的にはそれより前から始まっていたかもしれませんけれども、大坪氏が次長になられてから、我々のオートノミー(自立性)は完全に消失しております」
「事はiPS細胞ストック事業の問題だけではございません。健康・医療戦略室のイニシアチブのおかげでAMED発足してから最初の3年間あるいは3年半は非常に順調な運営ができたというふうに自分自身でも思いがございますけれども、各省の予算のマネジメントに関する相談等は全部健康・医療戦略室を通してやるようにということと、担当大臣とか政治家の方々とコンタクトをとるなということを大坪次長から言われております。その証拠も残っております」
ここで末松理事長は、それまで使われることのなかった「トップダウン型経費」に昨年末初めて88億4000万円が配分された問題を取り上げようとして、AMED審議会会長の田辺国昭氏に遮られてしまった。
この「トップダウン型経費」のほとんどにあたる約80億円が厚労省の「全ゲノム解析実行計画」に使われることが、大坪氏の独断で決まったことへの抗議だったという。
「全ゲノム解析実行計画」というのは、厚労省ががんと難病の患者を対象に、すべての遺伝情報(ゲノム)を網羅的に調べ、創薬などに活かそうというもの。医療産業に国際競争力をつけるという意味では重要だが、感染症対応のような緊急性や画期的な成果の発見があるわけではなく、「トップダウン型経費」の趣旨とはまったく違う。
にもかかわらず、こんな不可解な予算のつぎ込み方がされたのは、ほかでもない、この「全ゲノム解析実行計画」の厚労省での取りまとめ役が大坪氏だったからだ。つまり、大坪氏は自分の省庁での担当のプロジェクトに金を優先的につぎ込むため、本来の使途を歪めるかたちで予算を充当しようとしていた。末松理事長はそのことを告発しようとしたのである。
(同記事より)
他にもある。
問題とされているのは、和泉首相補佐官が国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の理事、執行役および経営企画部長を自らの執務室に呼びつけた上、自分の言うことと、内閣官房健康・医療戦略室の大坪次長の言うことを聞いてうまくやらなければ、人事を動かす、具体的には、「所管府省からの出向ポストを他の府省に振り替えるぞ」といった類いの「恫喝(どうかつ)」をしたというもの。で、この和泉首相補佐官と大坪審議官の関係はすでに有名になったが、大坪審議官はあろうことか今回大問題となったダイヤモンドプリンセス号対応問題では現場で勝手な行動を繰り返して現場のDMATメンバーらから総スカンを食っていたことも分かっている。
(和泉首相補佐官が問題なのは「不倫」よりも国家公務員幹部人事への専横ぶりだ DIAMOND Online 2020/02/25)
(乗船した)医師は、大坪氏が船内で起こした2つの問題行動についてこう証言する。大坪氏の経歴を見ると、
「作業場であるサボイ・ダイニングは左右に分けられており、右側は食事可能エリア。一方、左側の作業エリアでは、感染対策で飲食ができないルールになっていました。しかし大坪さんは、作業エリアにもスイーツやコーヒーを持ち込み、『美味しい』と言いながら堂々と飲み食いしていたのです。あるときその様子を見咎められ、全体ミーティングで『作業エリアで喫食しないように』と改めて注意喚起がありました」
「基本的に船内では常にマスクをしていなければなりません。外しても良いのは、着席して食事を摂るときくらいです。しかし大坪さんは、マスクをしていない姿がしょっちゅう目撃されています。そのため、こちらも全体ミーティングで看護師から『マスクをしていない人がいる。着用を徹底するように』と注意がありました」
(マスクをしていない姿が……大坪寛子審議官が「ダイヤモンド・プリンセス号」で問題行動 文春オンライン 2020/02/26)
……となっている(Wikiより)。
- 1992年 - 東京慈恵会医科大学医学部卒業
- 2007年 - 国立感染症研究所血液・安全性研究部研究員
- 2008年 - 厚生労働省入省
- 2008年 - 厚生労働省医薬食品局血液対策課配属
- 2009年 - 厚生労働省健康局結核感染症課配属
- 2010年 - 厚生労働省医薬食品局血液対策課配属
- 2011年 - 環境省総合環境政策局企画課特殊疾病対策室配属
- 2011年 - 環境省総合環境政策局企画課石綿健康被害対策室配属
- 2012年 - 環境省総合環境政策局企画課特殊疾病対策室室長
- 2013年 - 厚生労働省医政局総務課医療安全推進室室長
- 2015年 - 内閣官房健康・医療戦略室参事官
- 2019年 - 厚生労働省大臣官房審議官(危機管理、科学技術・イノベーション、国際調整、がん対策、国立高度専門医療研究センター担当)
「大坪氏は『大臣や政治家と勝手にコンタクトを取るな』とか『すべて健康・医療戦略室を通すように』などともAMEDに通告したそうで、さすがに自民党内でも『やり過ぎだ』と問題になった。和泉補佐官と大坪氏、どちらの意向なのかはハッキリしませんが、その独断専行ぶりは、関係者の間で“大坪問題”と呼ばれています」(自民党厚労族議員)
野党は和泉補佐官の国会出席を要求し続けているが、与党は官邸に忖度して却下。
(研究者は“大坪問題”と…新型肺炎にも影落とす独断専行ぶり 日刊ゲンダイDigital 2020/02/13)
和泉補佐官の名前がスキャンダラスな形で表に出てきたのは今回が初めてではない。3年前のことを忘れてはいけない。
和泉補佐官が最初に前川氏に対し「文科省の対応を早くしてほしい」と求めたほぼ同じタイミングの昨年9月6~7日、加計学園の加計孝太郎理事長が松野博一文科相、山本幸三行革担当相と会っている。文科省の現場は陰に陽に「加計学園獣医学部新設」の圧力を感じていたに違いない。
和泉補佐官は9月15日に安倍首相と面会している。これは国家戦略特区WGで「獣医学部の新設」に関するヒアリングが行われ、冒頭、事務局の藤原豊審議官が〈総理からも(略)提案課題について検討を深めようというお話もいただいております〉との発言が飛び出した日の前日だ。
9月26日には内閣府審議官と文科省担当課長の打ち合わせが行われ、内閣府の参加者が〈「できない」という選択肢はなく〉〈官邸の最高レベルが言っている〉と発言したメモが残っている。翌27日には官邸で前川氏と松野文科相が安倍首相と面会しているのだが、おそらく前川氏はあらためて「難しい」と説明したのだろう。そこで、和泉補佐官は再び前川氏を呼び出したという流れだ。
(略)
和泉補佐官は国家戦略特区諮問会議が開かれる2日前の11月7日にも安倍首相と面会。これは、「文科省と話はついた」との報告に出向いたとみられる。つまり、前川氏に対する2度目の“恫喝”で加計学園の獣医学部設置は決まったとみていい。
(安倍首相の“影武者” 和泉補佐官が加計学園をねじ込んだ日 日刊ゲンダイDigital 2017/06/01)
結論(もちろん推論だが)は書かない。
しかしまあ、これだけ並べていけば、多くの人は「……そういうことなのか……」と想像はつくだろう。
普通の国だったら、モリカケのときにとっくに吹っ飛んでいたはずの政権、権力機構が、その後も公文書改竄や廃棄という国家を根底から崩壊させるような犯罪、子供でも分かるような嘘を続けてきた。
それを許してきた国民……。
今日読んだこのコラムの結びは、まさに! と思わされた。
少なくとも現状の日本では「民主主義」が機能しているのだから、政治家を罵倒しても、その政治家を選んだのは自分たちであって、意味がない。
もし権力の有効なコントロールを私たちが実現できなければ、「専制と民主のどちらが優れた仕組みなのか」という議論に対して、有力な判断材料を提供することになるだろう。「社会の信頼感や人々の善意という前提の上に、まがりなりにも繁栄してきた『日本という仕組み』」が、果たして生き永らえることができるのか、今回、その答えが出てしまうことになるかもしれない。
そうだとするならば、われわれ日本人としては、国家の強権なしでも個人や民間の自律性によって悲惨な事態の発生を抑え込み、世界に見せてやるという気概を持つべきだ。これは民主国家日本国の興廃を賭した闘いになる。
(「スジ」の日本、「量」の中国 田中 信彦 日経ビジネス 2020/02/28)
↑この人はなんとかきれいに結んでいるが、原発爆発のときから何も変わっていないどころか、どんどん劣化していることを見れば、今さら無理だろうと思う。
結局のところ、モリカケのときにいい加減に放置して「法治国家崩壊」を止められなかったことが致命傷になっている。国家の秩序と倫理観を破壊するやっかいな因子を根絶し、増殖を止められなかったために、社会秩序の崩壊パンデミックが起こり、ここまで国が壊れてしまったといえるのだろう。


PCR「検査をさせない」厚労省の大罪 ― 2020/02/25 19:31
なぜ日本ではPCR検査を「させない」のか?
なぜそれをメディアはもっと追及できないのか?
厚労省のサイトでPCR検査の総数データを確認して、あまりのことに驚いた。
「新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年2月21日版)」を見ると、
なんと、21日発表の時点で、国内でのPCR検査総数はわずか693件なのだ。
累計693件の内訳を日にちごとに見ると、 2/17=487人、2/18=523人、2/19=532人、2/20=603人、2/21=693人……となっていて、1日あたり9人~90人しか検査していない。

なぜそれをメディアはもっと追及できないのか?
厚労省のサイトでPCR検査の総数データを確認して、あまりのことに驚いた。
「新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年2月21日版)」を見ると、
国内事例(2.チャーター便帰国者を除く)……とある。
・患者69例、無症状病原体保有者10例
・2月20日18時時点までに疑似症サーベイランスおよび積極的疫学調査に基づき、計693件の検査を実施。そのうち69例が陽性。559例が陰性、65例が結果待ち。
・上記患者のうち入院中52名、退院16名、死亡1名。
・無症状病原体保有者10名は入院中または入院予定。
なんと、21日発表の時点で、国内でのPCR検査総数はわずか693件なのだ。
累計693件の内訳を日にちごとに見ると、 2/17=487人、2/18=523人、2/19=532人、2/20=603人、2/21=693人……となっていて、1日あたり9人~90人しか検査していない。

↑図は24日、25日放送の「羽鳥慎一モーニングショー(テレ朝)」の放送画面より。以下すべて同)
加藤厚労大臣が「2月18日からは1日3000件規模に検査体制を拡大する」と言ったが、実際にはこの数字は厚労省が委託可能な検査機関のPCR検査能力総数であり、COVID-19を検査する能力ではなかったというのだ。

↑1日3000件台という数字もあまりに呆れた数字だが、それがCOVID-19の検査能力ではなかった↓というトンデモ

しかも、さらに怖ろしいのは、翌22日からは、この「検査総数○○のうち感染者数は……」という方式のリポートがなくて、
本日(2月22 日)、熊本市、熊本県、和歌山県、千葉県、北海道、石川県、東京都、名古屋市、栃木県及び相模原市より、今般の新型コロナウイルスに関連した感染症について27 名の陽性者(患者22 名、無症状病原体保有者2名及び陽性確定3名(症状の有無等調査中))が、以下の通り報告されましたので、ご報告いたします。という報告になり、検査総数が記されていない。
今回の公表で、国内感染者は132 名(患者113 名、無症状病原体保有者16 名、陽性確定3名)となります。
本件について、濃厚接触者の把握を含めた積極的疫学調査を確実に行ってまいります。
(略)
※なお、自治体の公表資料の内容が当省の公表基準に合致しない場合には、当省の公表基準に合わせて公表することとしている。
これが単に、データ集計が間に合わないということならまだしも、意図的に検査総数(累計)を隠し始めたのであれば怖ろしいことだ。
特に「自治体の公表資料の内容が当省の公表基準に合致しない場合には、当省の公表基準に合わせて公表する」とは具体的にどういうことなのか?
……とここまで書いて、録画してあった「羽鳥モーニングショー」を後から見たら、さらにとんでもないことが分かった。
番組が厚労省に「なぜこんなに検査数が少ないのか?」と問い合わせたところ、厚労省は、

そんなことがありえるのかと、いくつかの自治体に問い合わせると、みな「即座に報告している」と回答した。
一例として、和歌山県の場合は、県内でのPCR検査可能能力は40件/日だが、連日その数を超える検査をしていて、足りない分は大阪府などに依頼しているという。


↑三重県のPCR検査能力は24件/日で、実際に検査している数は1桁
和歌山県の40件/日、三重県の24件/日というのも、PCR検査の検査可能総数であって、他に結核とかHIVとかも検査しなければならない中での数字だろうから、実際にCOVID-19を検査できる数はもっと少ない。
要するに、COVID-19にかかっているかもしれず、どんどん重症化している患者がいるのに、病院に来られても医師は検査もできず、診断が下せず、まともな治療ができないということだ。
25日の「羽鳥モーニングショー」では、大谷義夫医師が、
「私の医者人生30年間、今回ほど怖いことはない。検査できない。検査できなければ診断ができない。診断できなかったら治療もできない。何にも始まらない。実際、(保健所や民間検査会社に)頼んでも検査していただけない状態。それが非常に怖ろしい」と、振り絞るような声で訴えていた。
それを如実に物語る例として番組で紹介されたのが、都内の9歳の児童(4人兄弟の長男で母親は30代)のケース。
2月16日に発熱。厚労省のガイダンスに従い、38度以上の高熱が続いても4日は受診せずに自宅で我慢させ、4日経過した19日の時点で「帰国者・接触者相談センター」に電話。近所の小児科を受診せよと言われて小児科医を受診するが、薬は出たが翌日も熱が下がらず、21日に大学病院へ。しかし、その大学病院でも「うちでは検査できない」と医師に断られる。しかたなく自ら保健所に電話して検査してほしいと訴えるが、保健所は「検査基準を満たしていないのでできない」と断る。結果、自宅で発熱したまま9日が経過。24日夜の時点で番組が確認した時点でもまだ熱は下がっていないという。

町医者~大学病院~保健所と、すべてに「検査はできない」と断られ、自宅で熱を出したまま9日目に突入した都内の9歳児のケース
さらにもう1例、都内の妊娠7か月の20代女性の例。16日から咳が出て、22日から38度の高熱が出て産婦人科医に相談。産婦人科医から「COVID-19の疑いがあるので検査したい」と保健所に連絡するが、保健所からは「感染者との濃厚接触の事実が確認できないのですぐには検査できない」と断られる。

これらの事例を知って、改めて前日の同番組の放送でサラッと触れられていた問題がずっと引っかかっていたので、考えてみた。
「指定感染症」にしたことでかえって診療が進まない?
新型コロナウイルス感染症は「指定感染症」になったが、指定感染症は原則、確定診断されると「感染症指定医療機関」のみで診療することになる。しかし、国内に「感染症指定医療機関」は多くない。

そのすべてをCOVID-19関連で埋めるわけにはいかないので、すでに「原則」を超えた対応(「緊急およびやむを得ない場合」に相当すると判断)をしている。

その結果、神奈川県内では指定医療機関以外の34医療機関が対応し、

すでに「重症者を含む183人がその34医療機関に入院している」というのだ。

それでも間に合わないので、県では毎日他の医療機関にも「受け入れられないか」と問い合わせしているという。

指定医療機関から溢れた患者が183人もいて、重症者が含まれているというのだが、この人たちは全員がPCR検査で陽性が出た人たちなのだろう。ダイヤモンドプリンセス号が着岸した横浜を抱える神奈川県だから、おそらくその関連だけでこういうパンク状態なのだろうとは思うのだが、当然、すでにこんなに溢れているのだから、これから市中感染の人たちが続々と出てくるとまったく対応できない。
感染していようがいまいが、軽症者は病院で受け入れたくない。受け入れられない。
となると、感染が確認された人が大勢自宅で様子見ということになり、庶民が動揺する。
そういう事態を恐れて、とにかく「感染確認」の数を減らしたい。そのためには検査しないに限る……そういう論理が政府や厚労省内で共有されているのではないか?

「市中感染は稀なケースである。検査可能な数が不足している認識はなく、専門家会議でも議論になっていない」
そんなふざけた嘘が通用するわけはないだろうに。
2月8日に国立感染症研究所 戸山庁舎で行われた「新型コロナウイルス感染症への対応に関する拡大対策会議」の議事録には、こんなやりとりが記録されている。
- 愛知医科大学客員教授・森島恒雄:PCR で対応できる、検査数の実際の量はどのくらいか
⇒ 計算上 3726 検体/ 日となっているが、現実可能な数字ではない。今後症例が増えていけば、検査機関が増えていく可能性、必要性がある。
- 国内蔓延期となれば、指定医療機関の指定が外れていくのか
⇒指定医療機関ではより重症な患者を診療することになる
- かわぐち心臓呼吸器病院院長・竹田晋浩(しんひろ):重症な患者が発生した場合に、現在感染症病棟や結核患者病棟があるような指定病院では、患者の治療が困難な場合があると思われるが、どのように患者の移動をするのか、また誰がそのコーディネートを行うのか
⇒現状では感染症指定医療機関で診療することになるが、今後重症度の高い患者が出た場合には、より高次医療機関へ搬送する必要がある。その場合には各病院や、都道府県知事がリーダーシップをとる必要があり、また政令の整備が必要である。
(議事録より)
8日の時点で、厚労省の中でもこうした議論は当然出ていたわけだが、それから2週間以上経っても具体的な対策がなされていないのだ。
他にも、感染者数を小さくしておきたい理由の一つに東京五輪開催への影響懸念があるのだろうということも察しがつく。だとしたら、日本国民は東京五輪によって危機にさらされているともいえる。
ちなみに「感染者数が急増した」とテレビが一斉に報じている韓国では、2月24日9.00の時点での検査総数は28615件、25日6.00時点では36716件と発表されているので、1日で8101人を検査したことになる。
中国では2月13日に感染者数の発表数字が突然跳ね上がったが、これは「PCR検査の結果で確定診断していたのを、肺のコンピューター断層撮影装置(CT)による画像検査の結果、肺炎の症状が認められれば、新型肺炎と診断されることになった」からである。
武漢市では医療体制がまったく追い付かず、治療どころか検査を受けるまでに相当な時間を要して悪循環を招いていた。つまり、中国は検査体制が追いつかず、感染者の実数が分からないので、PCR検査をせずとも肺炎症状がある患者は感染していると判断するようにしたのだ。
2月に入り2つの重症者向け病院が超突貫工事でオープン、公共施設が次々に軽症者向け病院に変わり、1日1万人の検査が可能な「火眼ラボ」も稼働を開始した。
各地から2万人の医療スタッフが武漢入りし、医療体制が拡充したタイミングでの、今回の判定基準の変更と感染者・死者数の増加は、「グレーだった人が黒に変わり、治療を受けられるようになる」というポジティブなメッセージにも受け取られたのである。
(「2秒で感染、24日潜伏、節目は2月20日…中国の専門家が指摘する新型コロナウイルスの本当に重要な数字とは」浦上早苗 BUSINESS INSIDER)
一方、日本の厚労省は21日以降は検査数の発表をしていないようだ。
こうした日本政府のやり方を、世界は見てしまった。
中国はこうしている、韓国はこうしている、で、日本は……と、世界が知ってしまった。
このことによる日本という国の信用失墜は計り知れない。

