『阿武隈裏日記』を改題しました。
たくきの日記はこちらからお入りください

認知症老人の財産を狙い撃ちする弁護士2016/09/26 12:18

認知症老人からこうした全権委任状を取り付ければ……

老人の金を狙う弁護士たち


K弁護士が親父にサインさせた契約書。紛争などないところに事件を勝手に起こして、軽く100万円にはなろうかという着手金やら報酬金やら日当を支払え、という内容


NTTもNHKも、介護施設に入った認知症老人を追いかけてまで金を取ることはできないだろう。
それよりもやっかいなのは、認知症老人を狙って金を取ろうとする弁護士の存在だ。

お袋が亡くなったのは8年前。親父には「お袋が残しているはずの預金などはどうなっているのか」と何度も訊いたが、「知らない」の一点張りだった。
それが今回、ようやく一部が見つかった。

今回、親父が自分名義の預金をすっかり使い果たしていたことが判明し、住んでいる賃貸マンションの家賃も払えなくなり(実際には質素な生活をすれば年金の範囲内で家賃は払い続けられるはずだが、金が入ればすぐに買い物をしてしまう買い物依存症が治らないので不可能)、もともとの家に戻るか、家を売って金を作るかという話になった。
家には50代の今まで、まともに仕事をしたことがない妹がひとりで住んでいて、ゴミ屋敷になっている。
親父と妹はずっとまともに会話をしていないで、親子関係が崩壊している。「ここに一緒に住むなんてありえない」と言って家を出て、横浜のマンションを借りてひとり暮らしを始めた親父が、今さら戻るなんてことは到底無理だろうし、家を売って金にするといっても、ウルトラ級のゴミ屋敷を空にするだけでも何百万円もかかるだろうし、そこには妹が住んでいるのだから無理な話だ。
僕はどちらも無理だろうと思ったので、「そんなことを考えるより、年金だけで今の生活を続ける努力をしろ」と諭したが、買い物依存症は止まらず、年金が入るとすぐに使ってしまい、家賃を支払えなくなる。
家を売るにしても家に戻って娘と一緒に暮らすにしても、まずは二人で話し合わなければダメだろ、と言って、妹にもその旨、手紙を書いたが(僕と妹も、子供の頃からずっと会話がない)、それを読んだ妹がパニクって弁護士に相談したらしい。

その弁護士は、依頼者である妹にも、預金を使い果たしてあとは月々の年金しかない親父にもまとまった金はないが、死んだお袋の預金が残っていると知り、その金額を妹に調べさせて、そこからごっそり手数料を取ろうと考えついた。
そこでまずは認知症だと分かっている親父に近づき、オールマイティの委任状にハンコを押させた。

このことを僕は一切知らされていなかった。
親父が電話で「あのKという弁護士に依頼したのはよしみつか」と、妙なことを言ったので、初めてそういう危険人物に狙われていることを知り、「絶対に近づくな。近づけさせるな。連絡があっても無視して応じるな」と何度も言いきかせ、親父も「分かった」と繰り返していたが、しっかり騙されて契約書やら委任状やらに署名捺印させられていたことが今回の部屋の掃除で分かった。書類のコピーが出てきたからだ。
親父を問い詰めると、「事務所に呼ばれたから行っただけだ」「でも、そんな大金を払うような契約書なんか知らないし、署名なんかしていない」と言い張る。

その契約書はひどいもので、そもそも存在していない「遺産相続示談交渉事件」などと銘打っている。
着手金約30万、報奨金約60万、他に日当が1日3万2400円などとなっている。日当などはいくらでも「何日仕事をした」といえばつけられるわけで、軽く100万円はこのK弁護士に支払うような内容だ。
そもそもお袋の法定相続人のひとりである僕は、この件についてまったく知らされていないのだから、相続を巡る「事件」など存在していない。3人が話し合って協議書を作って銀行に持っていけばいいだけの話で、K弁護士が介入してくる余地など最初からないのに、妹がこういう弁護士に話を持ち込んだからつけ込まれた。
妹はお袋の口座のキャッシュカードを持っていたようで、すでに数百万円は使ってしまっていた。もちろんこれは犯罪だが、僕も親父もそれについて追及するつもりはないし、今からでも妹には法定相続分よりはるかに多い金額を渡そうと思っているので、「示談」も何も、事件そのものが存在していないのだ。
K弁護士は妹には支払い能力がない、親父には年金しかない、残る1人の僕は騙せないと知り、まずは認知症の親父から全権委任状を取り付けて、報酬を確保しようとしたのだろう。
この状況がようやく把握できたので、すぐさま神奈川弁護士会にK弁護士の行っていることは倫理的に許されるものではないと苦情を申し立てて受理された。
問題点は主に3点。
  1. そもそも相続を巡ってトラブルなど起きていない
  2. 認知症と分かっている独居老人に近づき、高額な報酬を約束させる内容の書類に署名・捺印させている
  3. 法定相続人のひとりである長男の僕にはこの間まったくなんの連絡もない

ちなみに妹はK弁護士の言いなりのようで、電話にも出ない。何度電話しても出ないのに業を煮やした親父が、不自由な足で家にまで行っても、居留守を使って出てこなかったという。

こういう事態を目の当たりにするのがいちばん嫌だった。

K弁護士としては、親父を騙せたとしても、僕からの委任状など到底望むべくもなく手詰まりになっているはずだ。そこで親父の年金を狙ったようで、年金の振込先口座を変更させていた。

これには本当に驚愕した。そこまでやるか……と。

認知症でまったく金の管理も物事の判断もできない親父がこれ以上高額な金を動かせないようにするために、年金の振込先口座から高額の送金はできないようにしてあったのだが、それなら……と、新たに年金の受け取り口座を100円で作らせて、そこに年金を振り込ませ、そこから着手金などを送金させる、あるいは引きだして渡すように画策したようなのだ。

危うく最後の砦である年金まで狙われるところだったが、気がついたのですぐにブロックした。

故人の口座はすべて凍結されている。これを解除して金を引き出すには法定相続人全員の同意書、印鑑証明書、戸籍謄本などが必要であり、K弁護士がいくら親父を騙してオールマイティな委任状にサインさせても、相続人のひとりである僕が同意しなければ凍結口座から金を引き出せない。
もし引き出そうとするなら、僕のサインとハンコを偽造するしかない。そこまでやるなら立派な犯罪なので、K弁護士は完全に罪に問われることになる。次は苦情申し立てではなく、K弁護士の懲戒請求手続きになるだろう。

……ということで、お袋の凍結口座はこのままずっと凍結のままにすることにした。

K弁護士が完全に手を引かない限り、お袋の凍結預金は「呪われた金」として凍結のままだ。
僕や親父が死んだ後、妹がまだ生きていれば、そのときは弁護士に100万円払ってお袋の預金をようやく下ろそうがなにしようが知ったことではない。


こういう話は「他人事」として読む限りは面白いかもしれないが、老人社会が進み、企業のモラル、職業モラルが著しく低下している今の日本では、ゴロゴロ転がっている話だ。
認知症が進んでいなくても、弁護士という肩書きを目にしただけで言うがままになってしまう老人たちは多いだろう。

ここまで赤裸々に書いたのは、多くの人たちが今抱えている、あるいはこれから抱え込む問題であり、リアルな情報として提供することに多少なりとも意味があると考えたからだ。
僕ももう長くは生きていられないし、残りの時間は有意義に過ごしたい。
肉体も相当疲れているが、精神をまともに保ち、創造的なことをやりつづけるためのコントロール術が必要だ。
そのテーマで本を書き、これを題材にして小説を書いて発表していこうと思っている。


K弁護士が認知症の親父を騙してサインさせた「全権委任状」



よいお買い物

テレビ、洗浄便座、電動アシスト自転車などなど、「幸福になれる買い物」のヒント集。失敗しないための最低限の知識

老人たちよ、弁護士とNTTとNHKから身を守れ!2016/09/25 22:19

NTTは弁護士事務所とこんな「コラボ」をするようになった
↑NTTファイナンスに何度電話を入れても「ただ今混み合っており……」と録音が流れるだけで解約ができないだけでなく、挙げ句の果ては、自動引き落としを停めると弁護士事務所を通してこうした脅し文句の手紙を送りつけてくる。


NTTと弁護士事務所の「コラボ」

NTTが電力会社と同じように「公共事業」をしているという矜持をなくし、嫌がらせのようなことを平気でやるようになったことへの怒りと嘆きについては、7月1日の当ブログでも書いた。
プロバイダとの「コラボ契約」をしている客から回線故障の連絡を受けても受理せず、「契約先であるプロバイダへ言ってくれ」と突き放し、復旧を遅らせるという嫌がらせをする件。
そこでさらに、
認知症が進んだ老人世帯などでは、使わなく(使えなく)なった回線契約を何年も放置して、月々1万円近い契約料金を払い続けているケースがある。父の場合もそうであると気づいたので、センターに解約申し込みをするために電話をかけ続けたが、何時間待っても「ただ今混み合っております……」のアナウンスのままつながらない。それを何日も続けたが結局つながらないため、仕方なく、父の自動引き落とし口座を空っぽにして引き落とせないようにするという手段をとるしかなかった。
契約関連の業務を別会社にした後に「ただ今大変混み合っております」状態が増えた。受付人員を大幅に減らしたのだろう。これも、NTTの間違ったアウトソーシング、合理化(?)の弊害だ。

……ということも書いた。
これにはさらに後日談があり、親父の部屋を片づけていて、都内の弁護士事務所からの「通告状」という封書が何通も出てきた。
上のような内容だ。

親父はもう何年も前からパソコンは使える状態にはなく、ルーターの設定ができずにひかり電話も使えなくなっていた。それでルーターの電源を引っこ抜き、これで料金はかからないはずだと思い込んでいたようだ。
それに気づいて、僕自身、親父の代理として何度もNTTファイナンスには解約のための電話をかけたが、毎回「ただ今電話が混み合っております」の録音が流れてつながらない。
埒があかないので、これ以上の損害を出さないように自動引き落としできないように口座を空にして、年金の振込先も変更させたのだが、その結果がこうだ。


ちなみに親父はこの弁護士事務所からの「通告書」にビビって金を払ったらしい。NTTがマンションまでやってきて、ルーターを回収していったときは「清々した」とも言っていた。
しかし、なぜかその後も弁護士事務所からの「通告書」は続いた。
よく見ると、回線使用料は解約になっていたが、付帯サービスが全部そのまま残っていて、その付帯サービスの料金が未払いだということらしい↓。
なぜ回線解約後もこうした「付帯サービス」がついてまわるのか?
「ストレージサービスや電話でのサポートサービスなどなどの付帯サービスは回線がなくなった後も「有効」だということらしい

内訳には「OCNマイポケット」「OCNプレミアムサポート」「050あんしんナンバー(OCN)」「OCNペイオン」「安心セレクトパック」などなど、聞いたことのないような項目が並んでいる。
面倒だが、ひとつひとつどういうものか調べてみた。
  • OCNマイポケット……64GBのファイルストレージサービス(月額324円)
  • OCNプレミアムサポート……「あなたのパソコンを専門スタッフが定期点検で快適な状態にし、突然のトラブルも電話と遠隔操作(リモートサポート)でサポート」(月額648円)
  • 050あんしんナンバー for OCN……ケータイや固定電話の番号の代わりをするダミー番号付与(月額486円)
  • OCNペイオン……「セキュリティソフト(月額版)、ゲーム、占い、動画や有料ニュースなどの有料デジタルコンテンツのご利用料金をOCN料金と一緒にお支払いいただける 「かんたん」「あんしん」な課金サービス」

ネットで仕事をしているうちでさえ回線関連の支払いは毎月5000円台なのに、なぜ独居老人の親父がNTTファイナンスに毎月1万円弱の支払いをしているのか不思議だったのだが、要するに「ありとあらゆる付帯サービス」をつけていたのだ。もちろん親父にはこれらの付帯サービスがどういうものかまったく理解できていないし使ってもいない。何年も前からルーターの電源を抜いて回線そのものを使っていないのだから当然だ。
しかし、こういうものが、なぜ大元の回線ルーターをNTTが回収した後にまでついてまわるのか?
以前、「プロバイダはどこと契約しているのか」と訊いたときも、プロバイダの意味が分からず話が通じなかった。
その後、「思い出した。NTTがやっているところなら安心だから、そこにしたんだと思う」などとも言っていた。
「NTTなら安心」という老人の信頼をNTTはちゃんと受け止めているだろうか?
NTTグループが提供する「安心」とか「プレミアム」などと名のつく付帯サービスが、回線のルーター回収後にまでついてまわり、弁護士事務所から「やむなく法的手段を検討せざるを……」などと脅される原因になるのだから、これほど悲しいことはない。

他にも、意味のない保険類が複数口あって、そのうちひとつの火災保険は毎月2万円近く自動引き落としされていた。これは保険会社の代理店(個人事業者)に電話をして事情を話し、解約したが、そのときは「解約届けを出していただくと解約手続きで費用が発生しますが、引き落とし不能で支払いができなくなれば自動的に契約失効となって、その場合は費用はかかりません。どちらにしますか?」などと言われて、当然「では自動失効にします」と答えて、そのように処理した。
NTTはそうはいかず、支払い不能になってから半年もの間ずっと未払い金として積算し、ルーターを引き上げて回線契約が消えた後まで系列プロバイダの「付帯サービス」はまだ残っているとして未払い金として積算し続け、その回収を自社ではなく弁護士事務所にやらせているわけだ。
NTTにしてみれば、休眠回線を放置させることで契約料が入り、未払いになっても長期間自動失効にはせず未払い金として積算させ、後は弁護士事務所に回収依頼させることで人件費も浮く。
弁護士事務所にしてみれば、こうした封書を送りつけるだけで何件か回収できればそこから手数料をもらえるおいしいビジネス。

ITを使いこなせなくなった老人からこうして金を取るビジネスが立派なマーケットを築いているのだ。

同様にNHKの受信料督促状も何通も出てきた。
親父はもう長いこと「テレビは見ていない。くだらない番組ばかりだ」と言っていた。親父の部屋にテレビはあったが、どういうわけかB-CASカード挿入口が壊れていてまともに受信できない状態だった。
NHKが、テレビのない世帯からも、「ワンセグ受信機能付きのケータイを持っていれば受信料を取る」と主張して、実際にまったくテレビというものを見ていないのにNHKの受信料を支払い続けている人たちがいることを報道番組(もちろん民放)でやっていたが、日本はいつのまにかこんな情けない国になってしまっていたのだ。





ネットの基本も分からないままいきなりトンチンカンなPDFを送りつける弁護士2016/07/31 14:41

3つめは法曹界の劣化の話。
先日、東京の弁護士事務所から「侵害情報の通知書兼送信防止措置」という不思議なタイトルのメールが送られてきた。
ウイルスかspamかと思ったが、念のため添付PDFを見てみると、女性用トイレの盗撮写真をのせているサイトの管理者がうちだと決めつけて「法的処置をとる」などという文面だった。
あまりのトンチンカンぶりに唖然とした。
もちろんそんなサイトとは無関係だし、過去においてもまったく関与したことがない。
なにを根拠にこちらをそのサイトの「管理者」とみなしたのか、なんの説明もない。
ドメインレジストラは世界最大級の一次レジストラで、DNS(ネームサーバー)もその一次レジストラが所有・提供しているものを使っていた。この一次レジストラはうちでも使っていてドメインの再販をしているが、そのレジストラを卸元としてドメインを再販しているパートナー業者は世界中に数千は存在する(もしかすると万の単位かもしれない)。そのうちのどこかが管理しているドメインなのだろう。あるいは所有者が直接一次レジストラから購入して管理している可能性も高い。
使われているドメインのWhois情報はプライバシー保護代理会社のもので、真の所有者は閲覧できないが、これも世界中にこの手の会社があり、普通にやっていること。その会社は一次レジストラの提携先で、利用者は世界中にいる。
サイトに使われているドメインのIPを調べたらサーバーはスウェーデンの企業が提供しているようだ。
どこを見てもうちとはなんの関係もない。
想像するに、レジストラやWhois情報保護代理会社、DNS情報などを検索して、たまたまうちの名前(屋号)が出てきたので、うちがこのサイトの管理者だと勝手に思い込んだのだろう。
これは例えば、トヨタの○○という車を使った犯罪者がいて、その被害者から相談を受けた弁護士が、ネットで「トヨタ○○」と検索したらたまたまトヨタ車を代理販売している地方の小さな個人営業の自動車修理屋を見つけて「犯人を突き出さなければ告訴する」と息巻いているような話。
要するにこの弁護士(女性名で二人連名)は、インターネットの基礎知識(ドメインとは何か、レジストラとはどういうものか、DNSとは何か、Whois情報保護代理会社とはどういうもので何をしているのか……)を知らず、IPアドレスの割り出し方法すら知らず(そんなものはホスト名の名前検索をすればすぐに出てくる。素人でも1秒でできる)、簡単な下調べもしないままにまったくトンチンカンな迷惑メールを送りつけてきたわけだ。
これが、「こういう被害者からの相談を受けているのだが、このドメインはもしかしておたくが管理していませんか?」と訊いてくるならまだ許せる。
ああ、この人はネットの基本を知らないでネット犯罪被害者の担当になった新米弁護士なのかな。アホらしいけれどリサーチ方法の基本を少し教えてあげようかな、くらいにとらえていたかもしれない。
それがいきなり「質問」ではなく、「貴社にて適切な措置をお取りいただけない場合には貴社に対する法的措置も検討せざるを得ません」などという文面のPDFを送りつけてくるのである。
この人たちは本当に弁護士なのか? 頭は大丈夫なのか? と愕然とさせられた。
しかもである、このPDF文書には、依頼者の名前がフルネームで記されている。
「当職らは○○氏から委嘱を受けた代理人として……」と始まり、その○○氏(女性)がトイレで盗撮をされたかのような写真が云々、と、内容についても書いてある。これはもはや、不必要に個人のプライバシーを赤の他人にばらまいてしまっていることにほかならない。
こんなメールが来なければ、こちらはその○○さんがそういう被害にあっていることなど知るよしもないし、名前を見ることもないのだから。
これが本当に弁護士の仕事なのか?
このトンチンカンなメールをよこした弁護士には「もっと勉強してください。こういうトンチンカンなものを送りつけられ、こちらは大変迷惑です」と返信したが、未だに謝罪の言葉ひとつよこさない。不愉快極まりない。
まったく人違いの家に土足で踏み込んできてわけの分からない言いがかりをつけた後、間違いだと分かっても謝罪もせずに無言で立ち去る……これはもう「当て逃げ」犯罪と同じではないか。

建設業界や電力業界、政界、財界……だけでなく、法曹界の劣化もここまできているのかと、愕然としてしまった。

よいお買い物

テレビ、洗浄便座、電動アシスト自転車などなど、「幸福になれる買い物」のヒント集。失敗しないための最低限の知識



詐欺的320億円施設「海水揚水発電所」お払い箱事件をなぜ追及しない2016/07/31 14:37

2つめの「唖然」はこの記事 「国頭村の揚水発電所廃止 電源開発、世界初の海水利用施設 沖電への売電交渉不調」
世界初の海水を利用した揚水発電所として、電源開発(本社・東京、Jパワー)が沖縄県国頭村安波で運転してきた「沖縄やんばる海水揚水発電所」が、19日付で発電所として廃止されたことが25日分かった。同発電所は国が建設費320億円を投じて1999年に完成。離島など海洋地域に適した再生可能エネルギーシステムとして実用化を目指してきたが、沖縄電力との売電交渉が不調に終わるなど商業ベースに乗せることが見通せず、電源開発は施設の継続を断念した。

 発電所を管理する電源開発石川石炭火力発電所(うるま市)は「試験レベルの役割を終え、営業運転として活用できないかを沖縄電力とも話してきたがまとまらなかった」と説明。2014年に国から払い下げを受けた敷地や施設の跡利用については未定とした。(琉球新報 2016年7月26日)


琉球新報の記事で、全国的にはほとんど報じられていないのではないかと思うが、こんなふざけたものが建設されていたこと自体が驚きだ。

Wikiを見ると、
「火力発電所の夜間余剰電力を使用して揚水が行われていた」とある。
この火力発電所とは同じ電源開発の石川石炭火力発電所(うるま市)のことらしい。
で、信じがたいのは「火力発電所の夜間余剰電力」という言葉がサラッと使われていることだ。
火力発電や貯水型水力発電というのはそもそも出力調整可能な発電方式であって、電力消費が減る夜間は出力を落とすなり止めるなりすればいいだけのこと。本来「余剰電力」など出るはずがない。
揚水発電所というのは、出力調整や頻繁な運転のON/OFFができない原子力発電所の付帯設備として考案されたものだ。
原発は一度動かしたら24時間定格出力で動かしっぱなし。下手にON/OFFを繰り返すのは危険。夜間に発電しすぎてしまう(余剰電力)場合は捨てる(発電機をつながない=「解列」という)のはもったいないので、その電力で真水を高い場所に汲み上げて貯めておき、電力消費が増えた時間帯にその水を落として水力発電にする、というもの。
沖縄やんばる海水揚水発電所はそれを石炭火力でやろうとしていたわけだ。
つまりこれは極端に効率の悪い火力発電であって、「再生可能エネルギーシステム」でもなんでもない。
火力発電の電力を使うならそのまま送電すればいいだけのこと。わざわざその電気を使って水力発電に変換することでどれだけ燃料を無駄に使うことになるかは小学生でも理解できる。
また、原発付設の揚水発電所が真水を使うのは、海水を使えば塩分で施設が腐食したりすることが分かっているからだ。
それなのに、わざわざ火力発電の電気を使って海水を使った揚水発電施設を作るなど、頭がおかしいとしかいいようがない。
「世界初」って、あたりまえだろうが。こんなものを作る国が他にどこにあるか。

要するにこれは国からの予算を使いたいためのバカ施設。発電が目的ではなく、予算を使いたいがための詐欺であり、ネズミ講と同じで犯罪である。
犯罪者が処罰されることもなく、ただ「ダメになったからやめます」で終わらせていいはずがない。
こういう国家ぐるみの犯罪を追及できないどころか、報じることもしないメディアの劣化ぶりもひどい。
それともメディアは、「もんじゅや核燃サイクル施設計画に比べればおままごとのようなもので、どうということもない」とでも思っているのか?
いや、おそらくそこまでも理解していないのだろう。その無知ぶりが本当に怖ろしい。


よいお買い物

テレビ、洗浄便座、電動アシスト自転車などなど、「幸福になれる買い物」のヒント集。失敗しないための最低限の知識



NTTが「コラボ契約」に切り替えた客の回線障害対応は門前払いする件2016/07/01 10:58

NTT東日本(西日本も同様だろう)の光回線契約をしている家には、やたらと「契約を一つにまとめると料金がぐっとお得になります」というセールス電話がかかってくる。
うちでは電話セールスラッシュが始まる前にプロバイダ(asahi-net)側でその契約(プロバイダとの「コラボ契約」とNTTではいっている)に切り替えていたが、昨日夕方から突然ネットもひかり電話も不通になり、NTTの故障係に電話したところ「コラボ契約に切り替えたお客様への対応はできない。契約先であるプロバイダのほうに連絡を」と門前払いを食った。
故障状況はひかり電話もネット回線もNGな状態であり、ルーター故障か回線そのものの障害のいずれかだが、どちらもNTTのレンタル機器(ひかり電話ルーター)であり、回線(フレッツ光)だから、最終的にはNTTが対応しなければ解決しない。それなのに「窓口はプロバイダ」の一点張りで、障害状況を確認もしてくれないのだ。
NTTが貸し出しているひかり電話ルーターの故障である可能性もあるので、「ひかり電話機器担当」のサポートにも電話したが、まったく同じで対応してくれない。「コラボ契約にしたお客様は、貸し出しルーターもプロバイダに譲り渡したことになっている」という説明。電源が入らなくなったとか機器を落として動かなくなったといった明らかな機器故障でも同じで、受け付けられないという。

しかし、asahi-netは問い合わせ受付が10.00~17.00の日中7時間(!)のみで、それ以外の時間帯に障害が発生したときは最大17時間は何もできない。
実際、障害が発生したのはちょうど受付が終わった直後の夕刻だったから、翌朝10時まではなにもできない。
固定電話もWi-Fiももちろん使えないので、仕事ができない。ネットビジネスもしているので、重大な責任問題にも発展しかねない。

(その後の経過)
翌朝、朝10時ちょうど(障害発生後16時間経過)にasahi-netに電話すると、「この番号は現在使われておりません」ときた。コラボ契約に切り替えたときに送られてきた開通通知書類に記載されている番号である。
仕方なく、ネット環境にいる人にケータイで現在の電話番号をネットで調べてもらい電話するも「技術担当窓口の番号にお掛け直しください」
その番号にかけ直すも、10分以上待たされる。ケータイからなので料金がハンパない。
ようやく出た担当者に状況を説明すると「それはおそらくNTTの回線の障害なので、NTTに連絡します」
そのまま切るのも癪なので、asahi-netの窓口担当者に「せめて回線トラブルや機器故障が明らかでNTT側でしか対応できないような場合の受付窓口を別にしてくれ」と要望を伝える。
電話を切った数分後、ルーターを見るとランプが全部点灯しており、回線は何事もなく復活していた。
それから小一時間してようやくNTTからケータイに連絡が入り、「申しわけございません。こちらの回線関連の設備故障でした」とのこと。

回線や貸出機器(ひかり電話ルーター)の故障はプロバイダでは何も対応できないわけで、最終的にはNTTが動くことになる。それなのに(機器の操作説明などではなく)回線障害報告の受付に迂回路を作っているのはコラボ契約に切り替えた客への「嫌がらせ」としか受け取れない。
NTTはいつから回線事業者としての矜持を捨ててしまったのだろうか。
そもそも、その「嫌がらせ的迂回路」を作ることで誰が得をするのか? NTTも二度手間三度手間を経て最後にやることは同じなわけで、むしろ人件費のロスであり、信用低下という大きな痛手を被るだけではないか。

もうひとつNTTには言いたいことがある。
認知症が進んだ老人世帯などでは、使わなく(使えなく)なった回線契約を何年も放置して、月々1万円近い契約料金を払い続けているケースがある。父の場合もそうであると気づいたので、センターに解約申し込みをするために電話をかけ続けたが、何時間待っても「ただ今混み合っております……」のアナウンスのままつながらない。それを何日も続けたが結局つながらないため、仕方なく、父の自動引き落とし口座を空っぽにして引き落とせないようにするという手段をとるしかなかった。
契約関連の業務を別会社にした後に「ただ今大変混み合っております」状態が増えた。受付人員を大幅に減らしたのだろう。これも、NTTの間違ったアウトソーシング、合理化(?)の弊害だ。

さらには、今回のことですぐに連想したのは「新電力は大丈夫なのか?」ということだ。
電力自由化で、電力会社の送電網を使いながら契約先は新電力企業に切り替えるということが今年4月から始まり、うちもすぐに切り替えた。月々の料金が1000円以上安くなったのはよかった。
しかし、NTTと同じように東京電力(うちの場合)も「お客様は新電力会社様とご契約なので、障害対応窓口もそちらになります」というようなことになるのだろうか。それは怖すぎる。
地域的な停電などは黙っていても復旧するが、家の前の電柱からの引き込み線で障害が起きたような契約者個別規模の事故対応だと即応しないということは考えられる。

日本が世界に誇る優秀な生活インフラも、こうしてどんどん劣化していくのだろうか。

奇跡の「フクシマ」──「今」がある幸運はこうして生まれた

7つの「幸運」が重なったからこそ日本は救われた! 電子書籍『数字と確率で実感する「フクシマ」』のオンデマンド改訂版。
A5判・40ページ オンデマンド 中綴じ版 580円(税別) 平綴じ版 690円(税別)
(内容は同じで製本のみの違いです) 
 ご案内ページは⇒こちら
製本の仕方を選んでご注文↓(内容は同じです。中綴じ版はホチキス留め製本です)
製本形態

新・マリアの父親

たくき よしみつ・著 第4回「小説すばる新人賞」受賞作『マリアの父親』の改訂版。
新・マリアの父親
A5判・124ページ オンデマンド 980円(税別) 
ご案内ページは⇒こちら



都知事不要論──タレントに無給でやらせて政治は副知事がやれ2016/06/21 15:44

  • 2002年6月に道路関係四公団民営化推進委員会委員に就任し、多くの委員が脱落する中で、道路公団民営化に奔走。
  • 旧道路公団は債務超過だから民営化できないという既得権者の抵抗を信じず民営化を進め、毎年、道路公団に導入されていた国費3000億円をなくす。
  • 2007年4月、地方分権改革推進委員会委員に就任し、国の出先機関を整理合理化。
  • 2007年6月。副知事就任後は、参議院議員宿舎建設差し止め、北海道夕張市への職員派遣、周産期医療体制整備、少子高齢化対策、東京都水道局の海外展開、地下鉄一元化、首都直下地震対策、尖閣諸島購入の寄付金募集、東日本大震災への対応(消防庁ヘリ出動、ツイッター情報提供)、天然ガス発電所建設、東電への株主提案。
  • 特定のプロジェクトを設定し、そのために組織を横断的に活用する手法で都職員のノウハウをうまく使った。

……以上、猪瀬直樹氏の「政治家」としての実績(と言われている事例)。元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一氏の評価より)
この評価に対しては異論もあるだろうが、とにかく猪瀬直樹氏は副知事時代、「仕事をしていた感」がとてもあった。
これに対して、高慢で嫌われる人間性は似ていると思うが、舛添要一氏は都知事就任後に何をしたのか。全然印象に残っている「仕事」がない。
辞任が決まって彼の都知事としての評価をするなら「異様ともいえる巨額の海外出張費をはじめとする都の放漫経営ぶりを知らしめた」ことだろうか。

ところで、猪瀬氏にしても、石原都政の副知事時代にこそ仕事をしていた感があったが、都知事に就任してからはなんだかパッとしない。
どうも、都知事になると、セレモニー出席のような名誉行事が増えてお殿様気分になり、惚けてしまうのではないか。
都庁内部でも「知事には偉そうにふんぞり返ってもらっていて、仕事をしない人のほうがやりやすい」なんていう空気が充満する。だから馬鹿げた海外出張費も通る。このままでは知事だけでなく、都の職員、特に上層部の精神が軒並み腐敗していく一方だ。

東京都には副知事というのが4人まで就任できる。舛添辞任と同時に、今まで3人だった副知事に「オリンピック担当副知事」を増やして4人枠目一杯体制で行くことになったらしい。
副知事の給料は約122万円なので、4人だと約488万円だ。ちなみに都知事の給与は約134万円だそうだ。
であれば、実質の都政は全部副知事がトップで指揮することにして、都知事というのは警察の一日署長さんみたいなものにしたらどうか。
副知事は都職員以外のオンブズマンで構成する第三者委員会が認定する「責任感と実行力のある仕事人」を選出。
都知事は無給の名誉職で、タレントとか文化功労者みたいな人が3か月交代でやるとかにすればいい。
海外出張でのセレモニー出席、イベントでの挨拶、賞の授与式で表彰状を渡すなどなど、政治家としての資質に関係のない仕事はもちろんのこと、各施設の視察もその「名誉都知事」が無給でやる。
視察といっても、たかだか1時間かそこいらでよそ行き顔で出迎える施設を覗いたところで問題の本質は見えてこない。本当に必要な視察は、副知事以下、担当部署の責任者たちがしっかりやればいい。
名誉都知事はテレビに絵作りとして露出するから、無給であっても、タレントなどでやりたい人はいっぱいいるだろう。

東京都は他の自治体とは違って、自治体というよりは「日本国の中核システム」のようなものだ。だからこそ「知名度がないと当選できない」なんていう知事はいらないんじゃないかね。

奇跡の「フクシマ」──「今」がある幸運はこうして生まれた

7つの「幸運」が重なったからこそ日本は救われた! 電子書籍『数字と確率で実感する「フクシマ」』のオンデマンド改訂版。
A5判・40ページ オンデマンド 中綴じ版 580円(税別) 平綴じ版 690円(税別)
(内容は同じで製本のみの違いです) 
 ご案内ページは⇒こちら
製本の仕方を選んでご注文↓(内容は同じです。中綴じ版はホチキス留め製本です)
製本形態

新・マリアの父親

たくき よしみつ・著 第4回「小説すばる新人賞」受賞作『マリアの父親』の改訂版。
新・マリアの父親
A5判・124ページ オンデマンド 980円(税別) 
ご案内ページは⇒こちら



ものを大切に長く使うと「罰せられる」国2016/05/14 22:37

都知事の公用車として有名になった黒塗りのトヨタアルファード(トヨタのサイトより)
舛添都知事の「公用車」として有名になった黒塗りのトヨタアルファード (トヨタのサイトより)

家とか自動車のような「長期にわたって使用される商品」を耐久消費財という。高価な物だし、貴重な資源とエネルギーを使って作るものだから、性能はもちろんのこと、長く使えるかどうかが重要になる。長く使うことで初期投入の資源やエネルギーの「元を取る」わけだ。
まだ使えるけれど、飽きたから買い換える、というようなものではない。そういう消費行動をする人は「ものを大切にしない」「資源を無駄遣いする」ということで軽蔑される(はずだ)。
しかし、日本という国は、いつの間にか「使い捨ててどんどん買い換えることこそがよい国民の行動である」「ものを大切に長く使う人は経済発展の足を引っ張るので企業や富裕層にとっては都合が悪い。よって罰を与える」という法律を作り、実施するというとんでもない国になってしまった。

先日、自動車税を支払った。
登録後約17年を経ている我が家の1台(スズキの1600cc乗用車。2003年に中古を37万円で購入した)は、「車齢13 年超のガソリン車」ということで重課税され、本来なら1600ccガソリン車は39500円のところ、45400円である。去年までも約10%の重課税で腹を立てていたが、今年はさらに5%上乗せされた。
「車齢 11 年超のディーゼル車、車齢 13 年超のガソリン車・LPG車の自動車税重課割合を概ね 10%重課から概ね 15%重課に引き上げる」という税制改悪を国土交通省が要望し、認められたからだ。
軽自動車や原動機付き自転車など、田舎では日常生活の足として欠かせない車も今年度から自動車税を上げられた。軽(660cc以下)の自家用車は従来7,200円の自動車税だったが、今年からは13年超の車は12,900円で、なんと約80%も引き上げられた。原付バイクは1000円から2000円に、100%増税だ。

一方で、「エコカー減税」はさらに拡充させた。
折りしも、舛添東京都知事が法外な出張費を使いまくり、正月に家族でホテル滞在した費用を公費で支払い、公用車で湯河原の別荘までほぼ毎週行き来していたことが報じられているが、舛添知事の公用車とはトヨタのアルファードという車だ(写真↑)
平成26年型というから、都知事就任後に購入させたのだろう。
アルファードのHYBRID Executive Loungeという上級グレードのお値段は約700万円(希望小売価格7,036,691円 税込)である。特別仕様の「ロイヤルラウンジSP」というカスタマイズを施すと約1500万円である。
運転手付きの「走る知事室」がどのグレードなのかは知らないが……。

旬な話題だったのでつい都知事の公用車に話を振ってみたが、問題は「公用車」の車種やお値段ではない。車両総重量が2.6トンあるこの巨大な車がハイブリッド仕様で「エコカー」であると認定されていて、税金を大幅免除されていることだ。
アルファードのHYBRID Executive Loungeはエコカー減税対象車であり、自動車重量税も自動車取得税も100%免除(合計約17万5000円)、自動車税も翌年は3万3500円減税になる。
「合計24万6800円も税金が免除されますよ」と、トヨタも胸を張って売り込んでいる。

トヨタといえば「いつかはクラウン」という名コピーがあった高級車クラウンも思い浮かぶが、この最上級グレード「マジェスタ“Fバージョン"」(車両総重量約2.1トン。約700万円)もエコカー減税対象車で、自動車重量税、自動車取得税、自動車税を合わせて約24万7200円の税が免除される

こういう車を1台製造するのに、一体どれだけの資源とエネルギーを使っていることか。その結果、移動させているのは公共交通機関を使わなくていい強者ひとりだったりする。これこそ「環境負荷の高い車」ではないのか?

いうまでもなく、この手の車をポンと買える人というのは相当な富裕層だろう。自分で運転せず、専用の運転手付きで乗っている人も多い。そういう車はエコカー減税だのグリーン税制だので何十万円も税が免除され、田舎での生活必需品として軽自動車やバイクに乗っている人たち(一般の納税者)には増税や重課税という「罰」を与えてむしり取る。
しかも「古い車は環境に負荷をかけるから」という大ウソをついて、車重が1トンもない軽自動車は増税し、2トンを超えるような高級車でも「エコカー」だと言い張って自動車重量税さえ免除する。そんな国が他にあるのだろうか?
どうしてもむしり取りたいのなら、正々堂々と「増税したいが、政権を支えてくれる富裕層ではなく、騙しやすくおとなしい大衆から取ったほうが楽だから」と言ったらどうだ。

毎年、この時期が来るたびに何度でも言おう。
こんな国でいいのか、と。

奇跡の「フクシマ」──「今」がある幸運はこうして生まれた

7つの「幸運」が重なったからこそ日本は救われた! 電子書籍『数字と確率で実感する「フクシマ」』のオンデマンド改訂版。
A5判・40ページ オンデマンド 中綴じ版 580円(税別) 平綴じ版 690円(税別)
(内容は同じで製本のみの違いです) 
 ご案内ページは⇒こちら
製本の仕方を選んでご注文↓(内容は同じです。中綴じ版はホチキス留め製本です)
製本形態

新・マリアの父親

たくき よしみつ・著 第4回「小説すばる新人賞」受賞作『マリアの父親』の改訂版。
新・マリアの父親
A5判・124ページ オンデマンド 980円(税別) 
ご案内ページは⇒こちら



新電力業者の選び方&再エネ賦課金制度の悪夢2016/03/24 11:22

いい機会だから、「電気ご使用量のお知らせ」をよく見てみよう
いよいよ4月から電力自由化で、10電力会社以外の業者からも電気を買うことができる。
3月末までに契約すると割引きやキャッシュバックがある業者も多いので、そろそろ決め時なのだが、なんだかスッキリしない。
テレビCMをしている業者も、雰囲気でワイワイやっているだけ。中にはWEBサイトを見ても、肝心の料金設定表が3月半ばになってもまだのせていなかったりするひどいところもあった。
実は、この料金比較がとても複雑で、多くの人はしっかり計算できずに、なんとなく選んでしまうのではないかと思う。

新電力業者の料金比較例(40A契約の場合)

業者基本料金(円)~120kWh~300kWh301kWh~300kWh500kWh600kWh
東電1123.219.4325.9129.9381181410417097
エネオス1123.220.7623.2625.7578011295015526
ミツウロコ129620.2422.826.3178281309015721
東燃たっぷり1123.219.5226.024.6281451306915531
東燃まとめて4001123.2(400kWhまで定額8874円。400kWh~ 28.82円)99971287915761
エネワン108019.5226.0026.4281021338616028

単位は円。~120kWhなどは1kwhあたりの料金。300kwhなどは合計額。再エネ賦課金や燃料費調整額はどの業者も同額なので除外している

上の表は東京電力管内で40A契約をしている場合の比較例。
これを見るとまず分かることは、電気使用量が(極端に)少ない家庭(単身赴任でほとんど夜寝に戻るだけで月に100kWhくらいしか使わないようなケース)では、従来の東電との契約を続けたほうが安いということだ。
つまり、新電力業者に乗り換えたほうがいいのは、ある程度(普通に?)電気を使っている場合に限る。
それも、月に300kWhくらい使う場合、500kWhくらいの場合、800kWhとか1000kWhとかガンガン使っている場合で違ってくる。
東電の一般的な契約(従量電灯B)では、120kWhまで、300kWhまで、それ以上、の3段階で1kWhあたりの料金が違う。普通に考えればいっぱい使ったほうが割り引かれるような気がするが、電気料金は逆に使えば使うほど単価が高くなるという料金制度になっている。
東電の従量電灯Bの場合、120kWhまでの料金は19.43円/kWhだが、300kWhを超えると29.93円と、ぐ~んと割高になる。
必要最低限の電気しか使っていない家庭には安く設定するということなのだろう。税金と同じ発想で、それはそれでいい。

で、新電力業者もそれに倣って3段階に分けていることが多いのだが、中にはさらに600kWh以上という区分を作って4段階にしたり、400kWhや500kWhまでは定額で、それを超えた分に加算するという契約を設定しているところもある(東燃ゼネラルの「まとめて400」「まとめて500」)。

それだけでもややこしいのだが、夏場と冬場では使用量が大きく違うという家庭もあるだろうし、平均値を出して計算してもなかなか「ここがいちばんいい」というのを見つけるのが難しい。
上の例でいえば、毎月400kWh前後で月によってばらつきがないという家庭なら、東燃の「まとめて400」がいちばん安い。
その契約で500kWh使ってしまった月があったとしても、やはりいちばん安い。しかし、300kwhしか使わなかったり、600kWh使ってしまった月があると、今度はエネオスでんきのほうが安い。
料金シミュレーションができるサイトがあるが、あるひと月の金額や1年の平均値だけでシミュレーションしても、確実にいちばん安くなる業者が分かるわけではない。毎月のバラツキがあるかないか、最低の月と最高の月の差がどれくらいあるかなども考慮に入れたほうがいい。

そんなことよりこれに腹を立てよう! 再エネ賦課金


いつのまにかこんなに膨れあがっている再エネ賦課金

新電力業者に切り替えて料金を下げられるのは、一般的な家庭ならせいぜい月に数百円がいいところだろう。その数百円も、年にすれば1万円を超えることだってあるから、庶民は真剣に業者選びをするわけだが、そんなことよりもっと注目してほしいのは、知らないうちに再エネ賦課金がとんでもない金額に膨れあがって我々の電気料金にのせられていることだ(上図)。
上のケースは相当安い(ほとんど電気を使っていない)請求書だと思うが、総額3584円のうち6%に相当する221円が加算されているのだ。
633kWh使ったら1000円を超える。
633kwhを超えると再エネ賦課金は1000円を超える!
↑40A契約で633kwhを超えるようなケースでは、再エネ賦課金も1000円を超えてしまう

これは太陽光、風力、地熱、水力、バイオマスの発電で作った電気を高い固定価格で買い取るためのものだ。国が定めている。
これらの発電方法は自由競争にしたら火力発電などに負けてしまうため、国がてこ入れして高く買い取ることを保証しますよ、その分は電気料金に上乗せしていいですよ、という法律だ。
「再生可能エネルギー」というが、どんな発電方式も石油がなければ不可能になる。
例えば、太陽光発電に使うパネルはシリコンが一般的な材料だが、薄く散らばるケイ素を集めて精製し、最終的に発電パネルを作るまでに大変なエネルギーを使っている。原材料を集めるのもそれを精製するのも、石油がなかったらできない。
エネルギー事業はエネルギーと資源を使ってエネルギーを作りだす事業だ。100のエネルギーを作りだすために120のエネルギーを使うようなことになったら馬鹿げているし採算が合わないからやらないわけだが、そこに高額の税金を投入して優遇措置をとれば、本来成立しない事業が逆に儲かってしまうこともある。
そういう狂った事態にならないよう、政府は汚染や危険性、環境への負荷や悪影響をしっかり監視した上で(これが非常に重要)基本的に自由競争にさせればよい。極端な優遇措置がなく、全部事業者負担で発電しなければならないとすれば、事業者は最も合理的で安全、安定した発電方法を選ぶ
しかし、そこに税金を投入したり、電気料金にどんどん余計なコストを上乗せしてよいという法律を作るから、原発のようなものがまかり通り、巨大な利権構造を作り上げてしまう。一度作られた利権構造は、それを失うまいとする勢力が必死で維持しようとするから、どんどんひどい方向に進み、元に戻れなくなる。核燃サイクルなどはその最たるものだ。

「高い電気」というのは、他の発電方法よりも余計にエネルギーを使うから、効率が悪くて無駄が多いから、高価な資源(レアメタルなど)を使うから高くなる。自由競争にしたら負けてしまうからと、無理矢理高く買い取って優遇すれば、エネルギーを無駄に使うことになる。
おかげで狭い日本のあちこちに巨大風車やメガソーラーができて、山は切り拓かれ、農地は減り、土壌が弱る。巨大風車の低周波で身体を壊して苦しむ人が増え、日光が届かない土地が増えて生物層も弱体化し、数十年後には処理困難な粗大ゴミがあふれることになる。
「原発に反対だから、高くてもクリーンな発電方法をしている業者から電気を買う」などと言っている能天気な人たちがいっぱいいるが、それは原発を無理矢理押し進めてきた間違った国策と同じことを応援しているのだと気づくべきだ。
ちなみに再エネ賦課金は現在1kwあたり1.58円である。これは段階制ではなく一律なので、電気を節約している家庭にほど比率は高くのしかかっている。

再エネ賦課金制度、特に風力と太陽光の優遇はとんでもない利権であり、国土・自然環境の破壊を意味する。原発でさんざん利権をむさぼってきた企業や、それを支えてきた官僚・政治家たちが、新たな利権の巣として再エネに群がっている図を見抜いてほしい。
再エネ賦課金制度や総括原価方式を廃止すれば、原発はなくなり、電力業者は真剣に日本にいちばん向いている合理的な発電方法を追求する
再エネと呼ばれている発電方法で日本に向いているのは地熱と小水力(流水型)だろうが、それも基本的には自由競争のもとでやっていくべきだ。
実際問題、流水型小水力などは買い取り価格が低く抑えられているので、なんの優遇にもなっていない。
技術開発や研究に援助することは必要だが、現段階で高くついている電気を優遇して高く買い取るのは、原発政策と同じで大きな間違いだ。

奇跡の「フクシマ」──「今」がある幸運はこうして生まれた

7つの「幸運」が重なったからこそ日本は救われた! 電子書籍『数字と確率で実感する「フクシマ」』のオンデマンド改訂版。
A5判・40ページ オンデマンド 中綴じ版 580円(税別) 平綴じ版 690円(税別)
(内容は同じで製本のみの違いです) 
 ご案内ページは⇒こちら
製本の仕方を選んでご注文↓(内容は同じです。中綴じ版はホチキス留め製本です)
製本形態

新・マリアの父親

たくき よしみつ・著 第4回「小説すばる新人賞」受賞作『マリアの父親』の改訂版。
新・マリアの父親
A5判・124ページ オンデマンド 980円(税別) 
ご案内ページは⇒こちら



みんなが気づいていない女子マラソン代表選考疑惑裏の裏2016/03/19 22:09

3月17日はリオ五輪マラソン代表発表の日で、いつもならトップニュースになっていたが、この日は事件・事故が重なり、あまり大きく取り上げられることがなかった。
発表前から結果が分かっていて、意外性がなかったこともある。
でも、翌日の昼間のワイドショーでは、かなり長い時間を割いてやっていた局もあって、それを見ていたら「有森さん、突っ込むところがちょっと違うんだよな~」と思ったので、すでに日記には載せたのだが、こちらにも再掲しておく。

陸連を困らせた「永山問題」とは

女子マラソンは大阪国際でぶっちぎり優勝した福士加代子選手が所属するワコールの永山忠幸監督が、「内定が出ないなら万が一選ばれなくなることもありえるから名古屋にも出る」と言いだして、それを陸連が「やめてくれ」と頼んで……という騒動が起きた。
世界陸上の「日本人トップで8位以内」は即内定だが、それ以外の選考レースはすべて終わってから判断する、という選考基準が発表されているのだから、永山監督の「なぜ内定を出せないのか」というのは言いがかりにすぎず、黙って名古屋が終わるまで待つべきだ……というのが、多くの人たちの「常識的な意見」だった。
選考基準の内容は永山監督も十分分かっているはずなのに、なぜ「内定が出ないなら駄目押しで名古屋にも出す」などといいだしたのか?
ひとつには、昨年の世界陸上女子マラソン代表選考をめぐる理不尽さがある。
世界陸上選考レースに指定されたレースの中で唯一の優勝者である田中智美選手が落とされ、最後の競り合いに負け、トップに4分30秒の大差をつけられて3位になった重友梨佐選手が選ばれた。重友選手の30km以降の5kmラップは、17分58秒、18分19秒、ラスト2.195kmは8分8秒かかっている。
それなのに、「20kmすぎまでハイペースのトップ集団についていたのは積極的なレース運びだった」などと無茶苦茶な理由で評価され、一方で、ペース配分を間違えずに、最後はアフリカ選手とのデッドヒートを力でねじ伏せて優勝した田中選手を落とした。これは誰が見てもおかしな選考だった。

世陸マラソン「メダル」から「8位以内」に基準引き下げは「後出しジャンケン」だ

さらに決定的に問題なのは、従来、五輪前年の世界陸上が代表選考の一つになる場合、「日本人最上位でメダル」が条件だったが、急に「8位入賞」にまで一気にハードルを下げたことだ。しかも、それは世陸の代表選手が決定した後に発表された。

世陸のマラソンで8位入賞で日本人最上位なら即五輪代表に内定という基準を陸連が発表したのは2015年7月2日。その世界陸上の代表が決まったのが2015年3月11日なので、世界陸上の代表が決まった後に従来の「メダル」から「8位以内」に基準を下げたわけだ。すでに世陸代表に選ばれた3人ずつの選手に異常な優遇をしたことになる。これでは「後出しジャンケン」である。許されることではないだろう。
その3人ずつとは、
前田彩里(ノーリツ)、伊藤舞(大塚製薬)、重友梨佐(天満屋)
今井正人(トヨタ自動車九州)、藤原正和(ホンダ)、前田和浩(九電工)
だ。
新星・前田彩里(彼女の選考には文句のつけようがなかった)のノーリツはともかくとして、他はみな駅伝の常連企業。特に男子は駅伝色が強い。
陸連内部でなんらかの人脈談合、政治力が働いて、甘すぎる「8位以内なら即内定」という基準に変えたのではないかと勘ぐってしまう。
そうではないというなら、男子については、もう長いこと世界のトップクラスとは大きく差がつけられているので「メダル」なんて可能性がないからせめて8位以内を……ということになって、それに引っ張られる形で女子も「メダル」から「8位以内」に引き下げたのかもしれない。
しかし、そうだとしたら、その時点で陸連は世界へ敗北宣言したも同然だ。

その結果、世界陸上女子マラソンはどうなったか?
去年の世陸女子マラソンはスローペースで始まった。これはスピードとスタミナに勝るアフリカ勢の「最後で一気にペースを上げて勝負」という作戦に他の選手がまんまとはまった形。案の定、30kmを過ぎてからアフリカ勢が一気にスパートしてからは、日本選手は誰もついていけなかった。この展開は今まで何度もあったのに、また同じことを繰り返したのだ。
優勝のディババ(エチオピア)と7位の伊藤舞とのタイム差は2分13秒もあった。この2分13秒差は、ディババが33kmあたりでペースを上げてから10km足らずでついたもので、終盤、日本選手はまったく勝負ができなかった。
ちなみに、2011年の世界陸上テグ大会では、赤羽有紀子選手が日本人最高の5位入賞で、このときの優勝者とのタイム差は1分15秒だった。しかも、最後は粘って追い上げての1分15秒差。しかし、このときは「内定」の基準が「メダル」だったため、赤羽選手はその後の選考レースにも出場して日本人1位になれず、代表から漏れた。
それなのに、今回はズルズル引き離されて2分13秒の差をつけられた7位で即内定なのだ。
伊藤選手は他の日本選手が脱落するのを確認して、前を追ってつぶれるよりは五輪代表内定の「8位以内」を確実に狙った走りをしたともとれる。
そういう「優勝争いには挑まず、日本人トップと全体8位以内だけを狙う走り」をさせたのも、陸連が「8位位内なら五輪代表内定」というユルユルの規定を作ったからだ。伊藤選手は戦略的にそれをしっかり守っただけで、彼女には何の非もない。

直前の世陸でもメダルをとっていた日本女子マラソン

ここで、世界陸上女子長距離での輝かしい歴史を振り返ってみたい。
以下は、世界陸上の女子マラソンにおける日本人選手の成績と1万メートルでの成績一覧だ。オリンピック前年の世陸は五輪代表選考をかねていたから、翌年のオリンピック女子マラソンでの日本人選手の成績(●の行)も併記した。

1991年・東京    山下佐知子(銀メダル)★⇒翌1992年バルセロナ五輪で4位、有森裕子(4位・1分15秒差)★⇒翌バルセロナ五輪で銀メダル
 ●1992年バルセロナ五輪 代表:山下佐知子(4位)、小鴨由水(29位)、有森裕子(銀)
1993年・シュツットガルド   浅利純子(金メダル)、安部友恵(銅メダル)
1995年・イエテボリ なし//鈴木博美が1万メートルで8位(鈴木は翌年1月の選考会レース大阪国際女子で優勝のドーレと23秒差の2位、2時間26分27秒だったが代表漏れ)
 ●1996年アトランタ五輪 代表:浅利純子(17位)、真木和(12位)、有森裕子(銅)
1997年・アテネ  鈴木博美(金メダル)//千葉真子は1万メートルで銅メダル
1999年・セビリア  市橋有里(銀メダル)★⇒翌2000年シドニー五輪で15位(日本代表選手中では最下位)、小幡佳代子(8位)//弘山晴美、高橋千恵美が1万メートルで4位、5位
 ●2000年シドニー五輪 代表:市橋有里(15位)、山口衛里(7位)、高橋尚子(金)
2001年・エドモントン 土佐礼子(銀メダル)渋井陽子(4位)
2003年・パリ  野口みずき(銀メダル)★⇒翌2004年アテネ五輪で金メダル、千葉真子(銅メダル)、坂本直子(4位)
 ●2004年アテネ五輪 代表:野口みずき(金)、土佐礼子(5位)、坂本直子(7位)
2005年・ヘルシンキ  原裕美子(6位・3分23秒差)、弘山晴美(8位)
2007年・大坂 土佐礼子(銅メダル)★⇒翌2008年北京五輪では25kmで棄権、嶋原清子(6位)
 ●2008年北京五輪 代表:中村友梨香(13位)、土佐礼子(途中棄権)、野口みずき(故障で出場辞退)
2009年・ベルリン  尾崎好美(銀メダル)、加納由理(7位)//中村友梨香が1万メートルで7位
2011年・テグ  赤羽有紀子(5位・1分15秒差)☆⇒五輪代表にはなれず
 ●2012年ロンドン五輪 代表:尾崎好美(19位)、重友梨佐(79位)、木崎良子(16位)
2013年・モスクワ  福士加代子(銅メダル)、木崎良子(4位)//新谷仁美が1万メートルで5位
2015年・北京  伊藤舞(7位・2分13秒差)★⇒?

……と、世界陸上女子マラソンのメダリストは10人(11回)もいるのだ。直近の2013年の大会でも福士選手がメダルをとっている。そうした実績がありながら、なぜ「メダル獲得」から「8位以内なら即五輪代表」などというとぼけた基準にしたのか? 恣意的な「何か」があるとしか思えないではないか。
ちなみに、世界陸上マラソンでメダルをとり、翌年の五輪代表に選ばれて入賞した選手は、山下佐知子(世陸で銀⇒翌年五輪で4位)と野口みずき(世陸で金⇒翌年の五輪でも金)の二人しかいない。

名古屋でのペースメーカー疑惑

今回の五輪代表選考は、名古屋の前に「永山問題」が起きたが、結果的には福士選手は名古屋には出ず、名古屋の結果も揉めるような要素がなく、田中智美選手が最後1秒差で競り勝ち、日本人1位の2位で当確となった。
最終選考レースとなった名古屋ウィメンズマラソンは史上稀に見るデッドヒートとなり日本中を興奮させた。そこで最後に1秒差で競り勝った田中智美選手が代表の座を確実にしたことで、今回、最終的にはすんなり決まった。陸連も世間もほっとしたことだろう。

しかし、今まで以上に揉めることになったかもしれない要因はたくさんある。
次のようなケースを想像してみるといい。

①名古屋のペースメーカーが大阪国際と同じペースを刻んでいれば
 ⇒田中と小原が福士のタイムを上回って、選考大混乱?

②名古屋で田中と小原が同着になっていたら
 ⇒写真でも判定できないくらいのゴールだったら、選考大混乱?
 
③昨年、陸連理事会が天満屋の重友をごり押しせず、順当に田中を代表に選んでいたら
 ⇒田中が日本人トップで入賞し、先に五輪代表内定。残り2枠をワコールの福士、天満屋の小原、大塚製薬の伊藤らで競り合い、選考レースが複数あることでまたまた大混乱。

①に関しては、「ペースメーカー疑惑」が持ち上がっている。
大阪国際のペースメーカーは5kmを16分40秒と指示されていた。これはそのまま走り続ければ2時間20分台だ。陸連が設定した2時間22分30秒を上回るには序盤からそのくらいのペースで行かなければ無理だろうから、順当な設定と言える。
ところが、名古屋のペースメーカーには、陸連が「5kmを16分55秒から17分」というペースを指示していた。大阪のときに比べて5kmあたりで15秒から20秒も遅い。これでは陸連が自ら設定した選考基準タイム2時間22分30秒を切れない

そもそも、同じ選考レースなのに違うペース設定をするのはフェアではない。レースの条件を恣意的に変えたのはなぜなのか?
まるで、福士の記録を上回る選手が二人出ると困るから、そうならないように遅く指示したかのようだ
実際、福士選手側が直前になって参加を取りやめたのも、この陸連の設定ペースが大阪のときよりずっと遅いということを知ったからだとも言われている。
しかも、実際のレースでは、20kmで下りる予定のペースメーカーが序盤に乱高下するペースを刻み、不必要に選手たちを疲労させた。

そうした「人為的悪条件」にも関わらず、名古屋で田中選手に1秒差で負けた小原怜選手の走りっぷりがとてもよかっただけに、「なんで2時間29分48秒の伊藤だけ先にさっさと内定を出したんだ」という批判が当然のように出てくる。
名古屋での小原選手のタイムは2時間23分20秒で、優勝のキルワ選手とは40秒差。30km以降のペース落ち込みも少なかった。40km以降ゴールまでの2.195kmのタイムは3位の小原選手のほうが優勝したキルワ選手より速いのだ。こういう戦いができる選手を選びたくなるのは当然だろう。

陸連は女性蔑視の男社会か

ここで、普通なら選ばれてもよかったのに選ばれなかった選手たちの所属企業チームを思い出してみよう。2000年以降でリストアップしてみると、

弘山晴美……資生堂。言わずとしれた「女性」中心の企業。
高橋尚子……アテネ五輪代表漏れのときは積水化学を辞めてスカイネットアジア航空の所属。練習は実質、佐倉アスリート倶楽部(小出監督)
田中智美……第一生命。女子陸上部しかなく、監督は女性の山下佐知子。

……と、いずれも「男上位社会」「陸連内部人脈」から軽視されやすい企業に所属していたように見える。
昨年、田中智美が唯一の優勝選手でありながら世陸代表から外れたときに抗議したのも、増田明美、高橋尚子ら女性で、男性の陸連理事で異議を唱えた者はいなかったそうだ。

これでは、陸連は「男社会」であり、「女性蔑視」の風潮が根強く残っていると批判されても仕方がない。また、いつまで経っても内部からは改革できない不透明な談合集団であると見られても仕方がない。
福士選手と監督が無茶を承知で「確定でないなら名古屋にも出る」と表明したのも、彼女の所属企業がワコールで、これまた資生堂同様に「男社会」「有名駅伝企業」ではなかったから、陸連への不信感からだろう。陸連内部で政治力が弱い(多分)ワコールとしては、どんな処遇をされるか分からないと恐れたのではないか?

とにかく、これ以上、理不尽な選考で選手を傷つけたり貶めたりするのはやめてほしい。
世陸でトップグループと勝負しなかった伊藤選手が、名古屋マラソンの小原選手の勇気ある戦いぶりと比較されて責められたりしているようだが、それはお門違いというものだ。伊藤選手は五輪代表になるために「戦略的に8位以内を取りに行った」だけなのだから。
また、不自然な選考で世陸代表になった重友選手は日本人最下位に沈んで「ほれみろ、やっぱりダメじゃないか」と責められた。彼女はもともと精神面が弱かったが、その弱さをせっかく克服しつつあったのに、無理矢理代表に押し出されて負けたことで、これからの選手生命を縮めかねないダメージを受けたかもしれない。彼女もまた被害者と言える。

これ以上「被害者」(理不尽な扱いを受けて本来の力を発揮できなくなる選手)を増やさないためにも、陸連は早急にして徹底的な体質改善、組織改革が必要だろう。
選考基準に「活躍が期待できる選手」などという主観にすぎないような馬鹿げた項目をうたうこと自体、スポーツへの冒?だ。期待されようがされまいが関係ない。ちゃんとしたルールの上で正々堂々と勝負する世界なのだから、「メダルが取れそう」などと第三者が「評価」することがおかしい。それが分からずに「我々はプロです」なんて言っている陸連幹部たちは、最もスポーツマンシップから遠い、「男らしくない男社会」をチマチマと形成している人たちだと感じる。

救いは名古屋ですごいレースを見せてくれた田中、小原両選手の精神力。
あれには日本中が感動した。熱くなれた。
本当に「感動をありがとう」と言いたい。

歴代「悲劇のマラソン選手」一覧

ここからは「オマケ」として趣味的に付け足してみる。

マラソンの五輪や世陸代表選出をめぐり、僕の記憶に残っている「悲劇の選手」一覧を作ってみた。
まずは女子。
  • 松野明美 ……1992年1月、バルセロナオリンピックの代表選考レースの1つ大阪国際女子マラソンで当時の日本最高記録を上回る2時間27分02秒の好記録で2位(初マラソン世界最高)に入るも代表漏れ。「実績」を買われて有森裕子が選ばれる。
  • 吉田直美 ……1995年11月、アトランタ五輪の代表選考レースである東京国際女子マラソンで38km付近、先頭集団にいたが、背後を走っていた浅利純子に踵を踏まれて、浅利、後藤郁代とともに転倒。吉田はシューズも脱げたために大きく遅れ、優勝の浅利に10秒遅れの3位。しかし、転倒した場所からゴールまでのタイムは最も速かった。浅利に靴を踏まれていなければ間違いなく優勝し、五輪代表になっていた。
  • 鈴木博美 ……1996年1月の大阪国際女子マラソンで、優勝したカトリン・ドーレについで2時間26分27秒の2位。この記録は他のアトランタ五輪代表選考レースと合わせても日本人最高タイムだったが、「実績」の有森裕子が選ばれて選外に。
  • 弘山晴美 ……2000年1月の大阪国際女子マラソンで優勝のリディア・シモンに2秒差の2位。しかし記録は2時間22分56秒で、当時の世界歴代9位、日本歴代3位の好記録。しかし、すでにその前の世界陸上で銀メダルを取っていた市橋有里が「内定」していたため、シドニー五輪代表残りは2席のみ。そこに山口衛里、高橋尚子が入り、代表漏れ。
  • 高橋尚子 ……2000年シドニー五輪マラソンで優勝して「実績」は断トツだったが、アテネ五輪代表に選出されなかった。
  • 田中智美 ……2005年北京世界陸上マラソン代表選考レースの1つである横浜国際女子マラソンにケニアやエチオピア選手を破って2時間26分57秒で優勝(選考会レースで唯一の日本人選手優勝)したが、別の選考レースである大阪国際女子マラソンで3位の重友の2時間26分39秒よりタイムが悪いという理由で代表選出されず大問題となった。

この中で、1995年の東京国際女子マラソンでの吉田直美選手のことを覚えている人はほとんどいないのではないだろうか。
あのレースをうちでは録画しながら見ていて、レース終了後に転倒シーンの前後を何度もスロー再生して確認した。吉田選手のすぐ後ろを走っていた浅利選手が吉田選手の踵を踏み、それが原因で吉田選手、浅利選手、後藤選手の3人がもつれるようにして転倒。踵を踏まれた吉田選手は靴が脱げ、それを拾って履き直さなければならなかったために大きく遅れた。
浅利、後藤の2選手はそのまますぐに起き上がり、転倒に巻き込まれなかった原選手を猛追。最後に、浅利選手が原選手をかわして優勝。浅利選手は「転倒しながらも逆転優勝した」「すごい根性だ」「最後まで諦めずに走った姿に感動した」などなど絶賛され、そのままオリンピック代表になった。
しかし、転倒の原因を作ったのは浅利選手で、いちばんの被害者になった吉田選手は靴を履き直してからゴールするまでのタイムが誰よりも速かった。つまり、浅利選手に踵を踏まれなければ、吉田選手が競り勝って優勝していた可能性が極めて高い。転倒したとしても、靴さえ脱げなかったら優勝していただろう。
それなのに誰からも注目されず、その後、ひっそりと表舞台から姿を消していった。

踵を踏まれて靴が脱げて優勝できなかったといえば、バルセロナオリンピックでの谷口浩美選手が有名だ。
優勝候補に挙げられていた谷口は20km過ぎの給水地点で後を走っていた選手に踵を踏まれて転倒。靴も脱げて履き直し、そこで30秒あまりの遅れを取った。
その後猛追し、8位でゴール。タイムは2時間14分42秒。優勝した黄永祚選手のタイムが2時間13分23秒だから、転倒して30秒の遅れを引いても1分近く遅いので「転倒しなければ優勝していた」とは言いきれないが、レース展開が大きく変わっていたことは間違いない。
このときのレース後の第一声「こけちゃいました」は、その笑顔と共に見ていた人たちの記憶に深く刻み込まれた。
谷口はその後、一度もマラソンで優勝できなかったが、「実績」を評価されて次の1996年アトランタオリンピックでも代表になった。アトランタの男子マラソンで日本人選手は惨敗で、谷口の19位が最高順位だった。
その谷口はバルセロナの前のソウル五輪の代表選考でも有力候補だったが、このときは福岡国際で事実上の一発選考をするという陸連の意向が、最有力候補の瀬古利彦選手の怪我によって不可能になり、このときの中山竹通選手の「這ってでも出てこい」発言(実際には「自分なら這ってでも出ますけどね」だった)などなど、日本中が注目する「事件」になった。
その福岡国際は冷たい雨がゴール地点ではみぞれに変わるという悪天候の中、「怒りの中山」が5kmを14分35秒、10kmを29分5秒、15kmを43分40秒、中間点を1時間1分55秒(2倍すれば2時間3分台!)という、驚異的なスピードで前半からぶっちぎって優勝。有力候補だった谷口はそのペースに惑わされたこととあまりの寒さで実力を発揮できず、最後は6位に沈んで代表候補から脱落した。
このときも、「暑さに強い谷口が順当に代表になっていればソウルでは優勝間違いなかった」などと言われたものだ。

このように、オリンピックのマラソン代表選考、そして本番の結果には、常にスリリングなドラマがついてまわる。
それも含めて、選手ではない我々は楽しんでいるのだが、やはり、スポーツのドラマは、感動的なドラマだけにしてほしい。アクシデントはドラマのうちとしても、談合やら密室やら女性蔑視やらのドロドロしたドラマはいらない。

奇跡の「フクシマ」──「今」がある幸運はこうして生まれた

7つの「幸運」が重なったからこそ日本は救われた! 電子書籍『数字と確率で実感する「フクシマ」』のオンデマンド改訂版。
A5判・40ページ オンデマンド 中綴じ版 580円(税別) 平綴じ版 690円(税別)
(内容は同じで製本のみの違いです) 
 ご案内ページは⇒こちら
製本の仕方を選んでご注文↓(内容は同じです。中綴じ版はホチキス留め製本です)
製本形態

新・マリアの父親

たくき よしみつ・著 第4回「小説すばる新人賞」受賞作『マリアの父親』の改訂版。
新・マリアの父親
A5判・124ページ オンデマンド 980円(税別) 
ご案内ページは⇒こちら



「集団的自衛権」の正体2015/10/09 18:30

国境なき医師団のメッセージ

アフガニスタンの国境なき医師団運営病院を米軍が空爆

2015年10月3日、アフガニスタン北部のクンドゥズで「国境なき医師団(MSF)」が運営する病院が米軍によって空爆され、患者やスタッフ22人が死亡、数十人が負傷した
大変なニュースだが、なぜか日本のマスメディアでは大きく報道されていない。
オバマ大統領は7日、同医師団のジョアンヌ・リュー会長に電話し、謝罪したという。
米軍がタリバン掃討のためにアフガン政府を支援して空爆を続けていた中で起きた「誤爆」だというが、本当にそうなのか?

MSFの外傷センターには、10月3日の午前2時8分から3時15分まで、15分間隔で爆撃が繰り返された。外傷センターの主要病棟、集中治療室、救急救命室、理学療法室の各施設が極めて正確に爆撃され、その周囲の施設はほぼ被弾しなかった。

MSFは、GPSを用いた外傷センターの位置情報を連合国軍、アフガニスタン政府軍、地域の行政当局に機会があるたびに知らせていた。これは、アフガニスタンに限らず、紛争地で活動する場合には必ず行っていることだ。しかも、外傷センターについては、直近では9月29日に情報を伝達したばかりだった。それにもかかわらず、爆撃されたのだ。
MSF外傷センターへの爆撃、「連合国軍は完全なる情報公開を!」MSF

アメリカは「誤爆」と言うが、病院施設を15分間隔で正確に爆撃する誤爆などありえるのか?
「ま、いっか」という感覚でやったのではないのか。その判断や生命軽視が「誤」だったと謝っているということなのか?

冷静に考えてみてほしい。アメリカは病院を爆撃したのは「ミス」でしたと言っているが、他国(アフガン)の政府に勝手に肩入れして、反政府勢力を一掃するために、他国の土地に爆弾をドカドカ落とすこと自体は間違っていない、「正当な行為」「正義の戦い」だという感覚を持っているのだ。そう考えるだけでなく、実行しているのだ。そもそもこれは正常なことなのか?

どのならず者集団に加わるか

MSFの医療施設に米軍が空爆をした2日後の10月5日、脳科学者の茂木健一郎氏が、「SEALDs奥田愛基氏へに送られた『誹謗中傷ツイート』にある見逃せない『論点』」と題する文章を発表した。

SEALDsの中心メンバー奥田愛基さんと父親の奥田知志さんに対して殺害予告が来て、それを警察に届けた。
これを揶揄するかのように、ネット上で「個別的自衛権で十分なんじゃね?」といった類の書き込みがあった。そのことに対して、茂木氏は「そうではない」と、極めて論理的かつ明解に指摘している。
非常に重要なことなので、例によって一部抜き出してみる。

そもそも、国家はどうして必要なのか? ホッブズ「リヴァイアサン」の社会契約論によれば、自然状態では「万人の万人に対する闘争」(bellum omnium contra omnes)になってしまうため、個人の権利を一部制約しても、国家というシステムを作るのである。
(略)
(しかし)現実の国際社会は、地球という「超国家」の下に各国家が「個人」として存在するような状態にはなく、むしろホッブズの言う「万人の万人に対する闘争」に近い状態にある。
核兵器を含むさまざまな兵器を持った国家同士が対峙する地球は、個人が権利を譲り渡して国家をつくった「リヴァイアサン」の状態よりは、むしろ、ならず者たちが実力で向き合う無法状態の方に近い。そんな中での「集団的自衛権」は、結局、どのならず者の集団に加わるか、ということに近い。

アメリカは、かつて「世界の警察官」を自認し、今でもその残滓があるが、アメリカが「紛争解決」のためにやってきたことを冷静に見れば、そこにはほとんど無制限の国家という「リヴァイアサン」の暴力があるだけだ。ベトナムでも、イラクでも、アメリカは平和の名のもとに破壊を繰り返してきた

戦争は、結局、国家という「リヴァイアサン」の好き勝手な行為、に近く、大量の兵器が消費され、それを製造して販売する人たち=「死の商人」が儲かる。タリバンやアルカイダ、ISISを生み出す遠因にもなる。結局、国家による「警察行為」は、平和を生み出すどころか暴力の連鎖をもたらすだけだ。


まさに僕が常々感じていたことをズバリと言ってくれている。
安倍政権が言う「集団的自衛権」とは、警察が市民の安全を守るというような話ではなく、武力抗争を繰り返している暴力団の中で、いちばん強そうな組の下っ端につこう、という話だ。
日本は「いちばん強そうな組」としてアメリカを絶対的親分として見ている。
日本の歴代政府は、アメリカという組の親分に対して恭順を示しつつも、自分の組(日本という国)の自主・自立をいかに守るかという駆け引きを続けてきた。ところが、今の安倍政権は、そうした駆け引きをする能力がなく、ヤクザに憧れる不良番長のように、ただただ「組に入れてください」「入れてくれたらなんでもします」「チャカやドスも持たせてください」「鉄砲玉用意しますんで、好きなように使ってください」と言っているに近い。

戦勝国は、残念ながら、国家のリヴァイアサン性を反省する必然性に乏しい。原爆を投下しながら、未だに国家としては反省の言葉を述べていないアメリカはその象徴だ。集団的自衛権は、結局、警察よりは、反省のない怪物の中に加わることに等しい。
(略)
結局、「集団的自衛権」の美名の下に行われる活動の実態は、国家の中の警察行為とは、かけ離れた、むき出しの暴力であることが現実に多かったし、これからもおそらくそうだろう。私は、日本がそのような、ならず者連合に加わることが、国家としての利益に資するとは考えない。だから反対する。

さらには、
このような時代に、日本が「普通の国家」、すなわち、国家主権の発動としての戦争行為を無反省にやる戦勝国連合に加わることは、人類全体の損失である。

……と、「損得」を超えて一歩踏み込んだ思想を表明している。

僕自身は、人類全体が合理的な考えの下で最大値の幸福を実現していけるまでに成長・成熟することは極めて困難だと思っていて、その点についてはほぼ絶望している。
しかし、今の日本の政権は、人間性悪説の上に立って見ても、あまりにレベルが低すぎる。
悪代官が悪知恵を駆使して下々の者からなけなしの稼ぎを巻き上げるような世の中は今までもあったし、これからも続くだろうが、悪代官たちが悪ガキの暴走をコントロールできない世の中にまでレベルが下がると、壊滅的な危機へと一気に落ちていく。

日本が絶対忠誠を示す「最強のならず者集団」は、最先端兵器で病院を正確に爆撃して、「誤爆、誤爆、ごめんね」と言ってのける集団だ。
その集団にくっついて暴力をふるいたいと思う人物に国の運営を任せることが、国民の平和、安全に寄与することになるのか。
「集団的自衛権」とか「積極的平和主義」「国際社会の一員としての貢献」といった言葉の先にあるのは何なのか。
アメリカがそうした言葉の下で行ってきたことは、歴史にはっきりと刻まれている。ベトナムであり、イラクであり、アフガンだ。
日本国民の大多数がそんなことさえも分からなくなってしまっているとしたら、本当にもう末期的状況と言うしかない。
親分は言わばラスボスで、簡単には表に出てこない。鉄砲玉として消費されるのは子分のほうだ。アメリカがラスボスだとすれば、日本はスライム。安く消費されるんだよ。
今だって、日本はアメリカの国債を馬鹿みたいにいっぱい買わされ、いいカモにされている。この状態に集団的自衛権が加われば、日本はこれから先、金をむしり取られるだけでなく、人命も消費させられる。

もうひとつ忘れてはいけないことは、ならず者集団のボスは常に「どっちが儲かるか」「どっちが得か」で動くということ。日本の武士道のように、義理だのけじめだの道理だのでは動かない。
日本が他国から攻められるような事態になったとき、武器商人はビジネスとして、自国の軍隊を派遣するよりも、日本に武器を売ろうとする。
「自分の国は自分で守らなきゃダメでしょ。そのためにはいい武器が必要でしょ。いい武器ありまっせぇ」って言ってね。
そのほうがリスクを少なく、儲けることができるのだから、当然だ。
彼らは「商売」としての戦争をやっている。日本より中国のほうが大切だと判断すれば中国を選ぶし、日本を助けるより見捨てたほうが損失が少ないと思えば迷うことなく見捨てる。
見捨てられないようにしたいなら、「チャカ持ってついていきやすぜ」という忠誠心ではなく、自力で技術や文化、経済を磨いて競争力をつけ、世界から一目置かれる、本当の意味での「強い国」になることだ。戦後、日本はその努力をしてきたのではないのか。武力紛争に加わらない国、武器を売らない国が高い技術を持っている。あそことは仲よくしておこう……そう見られてきたのではないのか。
それこそが最も強力で有効な「国防」策ではないのか。

さらに憲法のことを言うなら、日本国憲法がアメリカの手を借りて作られたものであるということこそが最高の「安全保障」だと、なぜ分からないのか。
今ではならず者国家の先頭を走るアメリカが、あのときは厭戦気分が最高潮に達していて、たまたま「理想」的な憲法の創案に手を貸して日本に与えた。今のアメリカにはあのときの理想主義はもうない。なりふり構わず、やりたい放題のならず者国家になっている。
そのアメリカに対して「親分にいただいた尊い憲法があるので、うちらは親分の鉄砲玉として人殺しの現場には行けません」って言えるのだから、これこそ最高の「安全保障」ではないか。
こんなに幸運なキラーアイテムを自ら捨てるなんて、ゲーマーとしてもヘタレすぎだ。






タヌパック書店
たくき よしみつのオリジナル出版物販売 「タヌパック書店」は⇒こちらから




↑ご協力お願いいたします

『So Far Away たくき よしみつSONGBOOK1』

原発が爆発する前の2010年、阿武隈山中のスタジオにこもって制作した自選ベスト曲アルバム
「メロディの価値」を信じての選曲。20代のときの幻のデビュー曲から阿武隈時代に書いた曲まで、全13曲
iPhone、iPadのかたはiTunesストアから、アマゾンmoraでも試聴可能


iTunesで!    アマゾンで!    moraで!

『デジタル・ワビサビのすすめ 「大人の文化」を取り戻せ』
デジタル・ワビサビのすすめ   大人の文化を取り戻せ   (講談社現代新書 760円+税)
人間関係、音楽、写真、アート……デジタルで失った文化を、デジタルを使いつくし、楽しみつくすことで、取り戻す!  スティーブ・ジョブズの魂、ジャック・ドーシーの哲学  ──共通するのは、日本発の「ワビサビ」の精神だった。 リタイア世代の「地域デビュー」にも大いなるヒントに
アマゾンで購入は⇒こちら

詳細案内は⇒こちら

数字と確率で実感する「フクシマ」

 今「この程度」で済んでいるのは、宝くじに当たるより難しい確率の幸運だったのではないか? 分かりやすい「7つの『もしも……』」を簡潔にまとめた電子ブックレット
数字と確率で実感する「フクシマ」
Kindle版 アマゾンコムで注文今すぐ読めます
 

新・マリアの父親 Kindle版

新・マリアの父親(Kindle版)

(2013/01 Kindle版)…… 20年前にすでに「フクシマ」を予言していたと注目が集まっている「小説すばる新人賞」受賞作が電子ブックで改訂版復活。原本は古書価格がアマゾンでも2万円を超えて売られていることもある「幻の書」。
新・マリアの父親(横書きバージョン)
アマゾンコムで注文今すぐ読めます
 
『3.11後を生きるきみたちへ 福島からのメッセージ』

『3.11後を生きるきみたちへ 福島からのメッセージ』

(2012/04/20発売 岩波ジュニア新書)…… 3.11後1年を経て、経験したこと、新たに分かったこと、そして至った結論
今すぐご注文できます 
アマゾンコムで注文で買う

立ち読み版は⇒こちら
裸のフクシマ

『裸のフクシマ 原発30km圏内で暮らす』(たくき よしみつ・著)

(2011/10/15発売 講談社 単行本)…… ニュースでは語られないフクシマの真実を、原発25kmの自宅からの目で収集・発信。
今すぐご注文できます 
アマゾンコムで注文で買う

立ち読み版は⇒こちら