久々に感動した買い物 ― 2017/08/17 11:25
2800円のミニアンプを買ってみた
こんな感じ
Amazonでコードレスのミニアンプが2800円で出ていた。おや、これはもしかするとEWIをつなげば、アンプのない場所でも身体一つで演奏できるのでは? と思ってポチしてみた。
これ↑。AROMAというブランドで、2796円
翌日届いた。
小さいだけでなく軽い。こんなんでちゃんと音が出るのだろうかと思うほど軽い
SDカードで伴奏とミックスしたり、単純にスマホなどの外部スピーカーとしても使え、マイクもつなげられて、録音までできてしまうのだが、そういう機能はとりあえず試してない。腰につけてEWIを短いケーブルでつないで音が出せればOK。
やってみたらなんとかなりそうなので、そのままEWIを持って親父がいるデイホームに向かった。
小さいので、EWIのソフトケースに入ってしまった
デイホームでは、入所しているおばあさんから「俺は河原の枯れすすき」をやってとリクエストされ、なんとかやってみせた。表情はほとんど無表情だったけれど、施設長は「目がきらきらしていたから、脳にいい刺激になったはず」と言っていた。
こんな風に、ちょっとした宴会や飲み会の余興にはもってこいだ。最近は旅行にも行かなくなったけど、野外で空や海に向かって吹いたりもできるわね。
これ↑ お勧め!。マイクをつなげば拡声器としても使えるし、スマホをつないで普通に外部スピーカーとしても使える。2796円は安い!
タヌパックスタジオで生まれた音楽の1つ『アンガジェ』(↑Clickで再生)
日光杉並木街道が「ソーラー街道」に ― 2017/05/22 22:06
2017年4月 初めてじっくり見ることができたノウサギ
前回の「ナガミヒナゲシ騒動考」で、「人間が作ったソーラーパネルが里山エリアの山の斜面や草原を根こそぎ消滅させ、草花だけでなく動物も地域絶滅させていることのほうが外来種がどうのこうのよりはるかに大問題なのだが、それはまた次のトピックで……」と書いて終わったが、ここに続きを書く。
いちばん怖いのは人間だが、さらにやっかいなのは……
先月の13日、日光に引っ越してきて6年目にして初めてノウサギを見た。越後時代にも阿武隈時代にもノウサギというのはほとんど見た記憶がない。一瞬、横切るのを見たとか、その程度ならあったようにも思うが、まじまじと観察できるほど近くで見た記憶はない。
それが、日光で、しかもすぐそばを車が通っているような原っぱで悠々と飛び回っているのを長い時間見ていられたのだから感激した。
その原っぱにはこのところいつ行ってもキジの夫婦がいて、そのときもキジを撮っていた。そうしたら目の前を何か違うものが横切っていったのだ。
もう一度見たいと思って、その後も何度か出かけたが、キジの夫婦は毎回いたが、ノウサギは現れなかった。
で、翌月の5月20日、主に別の目的で出かけたついでに横を通ったのだが、なんと、原っぱ全体が完全に消滅していた。
4月13日にノウサギを見たとき。矢印のところにノウサギ
5月20日、すっかり草むらが消え、重機が作業中
間違いなくメガソーラー建設だろう。すでに周辺の草むらがことごとくつぶされてソーラーパネルだらけになっているので、ここも狙われているのではないかと危惧していた矢先だ。
ここは草むらだけでなく、そこそこの水たまりを含む湿地もあった。そこにはオタマジャクシ(おそらく時期的に見てアカガエル)が泳ぎ、ヤゴなどもたくさんいた。通年、水が完全には抜けず、湿地を保っている場所というのはこのへんにはもうほとんど残っていない。ツチガエルなどがオタマジャクシのまま越冬するためにも必要だし、鳥や野生生物にとっても貴重な水場になっていたはずだ。
それがつぶされてしまったのは本当に痛い。
オタマジャクシやヤゴがいた水たまりも埋められていた
日光に引っ越してきた直後、町内の集まりで「自然環境を……」と口にした途端、「人間は自然を壊して生きているんだからしょうがない」と反論する人がいた。めんどくさいやつが引っ越して来やがった……と警戒の目を向けられたようだ。
俺たちは環境を壊して金を稼ぎ、よりマシな生活を営んできた。これからもそれは続くんだから、きれいごとを言うな……というわけだ。
しかし、こうした犠牲に見合うだけのメリットが人間にあるのか? 太陽光発電バブルはすでにはじけている。中小の業者はあちこちで倒産しているし、大手は最初から「建て逃げ」作戦だから、あと10年もすればあちこちで事業者不在ソーラーパネルが増えるだろう。
20年もすれば、ゴミとなって放置されたソーラー設備の撤去で、各自治体は苦労するに違いない。
すでに我々は高額な「再エネ賦課金」を電気料金に上乗せさせられている。金がかかる発電方式というのは、それだけエネルギーを使っているということだ。太陽光発電パネルを製造する過程で、すでに膨大な電気や資源を使っているからこそ高くつくのだ。それを回収できるだけの発電ができない、見込めないからこそ電気料金や税金を投入して無理をしている。
原資が税金や公共料金だから、そこに生じる利権にたかれば確実に儲かる。人の金で非合理な商売をして儲ける……この構図は原発を推進してきた国策と同じだ。問題が起きても誰も責任をとらないし、負の遺産を押しつけられ、つけを払わされるのは若い世代。これのどこが「クリーン」なのか。
発電にかかっただけ電気料金に上乗せしていいですよという「総括原価方式」をやめれば、必然的に、最も合理的で省エネの発電方法をとらざるをえなくなるから、原発も大型ウィンドタービンも無茶なソーラー発電もなくなり、日本の環境破壊は緩まる。
でも、総括原価方式をやめれば、利権も薄まるから絶対になくならないだろう。
日光杉並木は国の特別天然記念物に指定されているわけだが、その両側はすでにソーラーパネルだらけになっており、杉並木を通っていても杉の間から異質な光景が見える。
ナガミヒナゲシが危険生物だの駆除しろだのなんだのと言っている場合ではない。植物も動物も巻き込んだ大規模環境破壊が猛スピードで進んでいるのだ。すでに大変なダメージを受けているが、今からでもなんとか歯止めをかけないと、気がついたときには取り返しのつかないことになる。いや、すでになっている。
ノウサギとの再会を願って、「兎が原」とでも名づけようかと思っていた草原はもうない。
「兎が原」の横は通学路だが、これから先、子供たちはノウサギやキジではなく、ソーラーパネルに埋め尽くされた土地を横目に見ながら通学することになる。その子たちは「再生可能エネルギー」は増やすべき重要なもので絶対的な「善」だと刷り込まれているから、これは「自然にとっていいもの」だと信じて成長するかもしれない。……やるせない……。
道路(通学路)側から見た光景。もうすぐここに黒いパネルが敷き詰められるはずだ
このままでは日光杉並木は「ソーラー街道」になる
このへんを散歩するたびに、オセロゲームのコマようにソーラーパネルが増えていく。「え? ついこないだ通ったときにはなかったのに……」と呆気にとられるのだが、だんだん麻痺してくるのが怖い日光杉並木は、日本で唯一、国の特別史跡および特別天然記念物の二重指定を受けているのだが、そのすぐ脇をソーラーパネルで埋めていくことになんの制約もかからないのか?
今日も重機が稼働中。ここはもうすぐパネルで覆われるだろう
消滅した「ウサギが原」のすぐ横。住宅や農地に隣接してすでに設置されたパネル
例幣使街道。杉の間から見えているのは牧場なのだが……
なにやらパネルを載せるフレームがすでに組み上がっているようだ。ここも牛からソーラーに転換か……
杉並木を挟んで反対側の草地。ここなどもすでに「予約済み」なのかもしれない
その先、日光山内に近づくにつれ、杉並木の間から見えるパネル群は増える
これだけ増えると植生や生態系も影響を受けないわけにはいかない。ただでさえ毎年倒れる杉が増えているのに、大丈夫なのか……
手前が例幣使街道の杉並木。そこに隣接して作られたメガソーラー。道を渡って見ると……↓
こういう規模のものがあっという間に作られている
国も県も市も、何を考えているのか?
ここを通って日光山内や奥日光をめざすハイカーやライダーたちは多いが、こうした風景に迎えられてどんな気分になるだろうか
ソーラーパネルを敷き詰められた側と街道を挟んで反対側。見えているのが杉並木(この向こう側が例幣使街道)。こちら側にもこうした草原があちこちあるが、この調子だとどんどんパネルが敷き詰められ、日光杉並木街道はソーラーパネルに挟まれた「ソーラー街道」になってしまいそうだ
ここも狙われそうだなあ。すでに「予約済み」なのかもしれない……
悩みながらもこんな動画を作ってみた(↑Clickで再生)
↑これを作りながら「プロテストソング」という言葉を思い出した。ずいぶん前に消えた言葉のような気がする。まさか人生の終わりにさしかかってこういうものを作るとは思わなかったプロテストというよりも、ただただ悲しい、虚しい。
この地でノウサギに再会することは、もう一生ないかもしれない。
森水学園第三分校を開設
↑BGMに使った『Uguisu 2017』の全曲はこちらでどうぞ(↑Clickで再生)
タヌパックスタジオで生まれた音楽の1つ『アンガジェ』(↑Clickで再生)
「ナガミヒナゲシ騒動」考 ― 2017/05/22 21:28
我が家の周りではむしろ減っているような気がするが……
最近、よく聞く「ナガミヒナゲシ」という名前。「異常繁殖して周囲の草花を枯らす悪魔のような花なので駆除してください」というような話として出てくる。鮮やかなオレンジ色の花はよく見る。でも、うちの周囲ではたまに見る程度で、少なくともハルジオンやフランスギクのように群生しているのは見たことがない。
暴力的に増えるというのだが、むしろ、今年はめっきり見なくなった気がする。
それでなんとなく気になってググり始めたところ、興味深いページを見つけた。
東京農工大学大学院農学府教授(国際生物生産資源学教育研究分野・国際環境農学専攻)という肩書きを持ち、アレロパシーの専門家である藤井義晴教授とのやりとりを紹介している。
教授、「個人で作られているサイトに大学から情報をだしてもよいものかどうかわかりませんが、とりあえず個人的な情報として……」と、いろいろ書いてくださったそうで、親切だなあ……藤井教授。ちなみに僕と同い年らしい。
かなり詳しく⇒こちらに情報がまとめてあるので、興味のある方はそちらを読んでいただくとして、目にとまった部分をちょっとだけ引用させてもらうと……。
交差点でよく見かけるのはなぜ?
実ができるのがちょうど梅雨どきで、その雨で車のタイヤにくっついて道路沿いに広がっていると推定しています。
このような特性が都市の道路沿いに広がっている原因と思われます。
ナガミヒナゲシのアレロパシーについて(ぐにらぼ 「ナガミヒナゲシは本当に駆除したほうがいいの!?危険外来種って何なのだ!」 より)
アレロパシーは私の専門分野で、その活性を自分達が開発した「プラントボックス法」や、「サンドイッチ法」という方法で検定しましたところ、相対的には強い活性がありました。
ただ、この話が一人あるきして、周辺の植物をアレロパシーでばたばた枯らすように思われているようですが、それほど強い現象ではなく、生育を少し阻害する程度と考えています。
たしかに、ナガミヒナゲシや、他のアレロパシーが強い植物で、周囲に他の植物が少ない現象が見られますが、それは、ほとんどが光の競合によるもので、アレロパシーの寄与はその一部と考えています。
ただ、このような光の競合が強い被覆植物で、アレロパシー活性が強いものは、他の植物の生育を抑制する可能性があると考えています。
ナガミヒナゲシが在来種に及ぼす影響については、今後研究しないとわかりませんが、個人的にはそれほど影響がないのではないかと考えています。
ちなみに「光の競合」というのは、「日光が当たる箇所を植物同士で遮光してしまい、光合成がうまくできなくなってしまう現象」だそうだ。
アレロパシーは単純に「悪」と決めつけられない
さらに興味深かったのは、アレロパシー(他感作用)とは、「ある植物が他の植物の生長を抑える物質(アレロケミカル)を放出したり、あるいは動物や微生物を防いだり、あるいは引き寄せたりする効果の総称」ということで(Wikiより)、単純に悪いとかいいとかいえない、ということ。
ぐにらぼのページでも紹介されていた「日光種苗株式会社」のサイトによれば、クローバーなどのアレロパシー作用を活用して、雑草除去作業の軽減や、緑肥として利用することで化学肥料や除草剤の使用を減らすという無農薬農業の発想もある、とのこと。
なるほど、簡単にいいとか悪いとか悪魔だとか、決めつけられないのだなあ。
半ば都市伝説化している?
で、改めて我が家の周囲をナガミヒナゲシを探して歩いてみたのだが、なぜか見つからない。今までちょこちょこ目にしていたものはなんだったのか?似て非なるものだった可能性もある?
改めて隣の草むらを丹念に探してみたが、一昨日あたり見たと思ったのに、今日は全然見つからなかった
こんなのとか……ニガナ……
こんなのとか……オッタチカタバミ?
こんなのとか……サギゴケ
ほぼ一日中陽があたらず、コンクリートで固められているカーポートのわずかな割れ目からタンポポが頑張って生えている。ここでもナガミヒナゲシの姿はない
やはり、我が家の周辺を見ている限りは、ナガミヒナゲシの脅威というのは感じられない。
「この話が一人あるきして、周辺の植物をアレロパシーでばたばた枯らすように思われているようですが(略)個人的にはそれほど影響がないのではないかと考えています」……という藤井教授の話は頷ける。
群生しているのはナガミヒナゲシではなくハルジオンやフランスギクで、それも他の草花と混在している。
滅茶苦茶生存が厳しそうな陽当たりの悪いコンクリートの隙間から生えてくるのもナガミヒナゲシではなく、タンポポやスミレだったりする。
大魔王ナガミヒナゲシがやってきて、他の草花をバタバタと死に追いやる……なんて図は、少なくとも我が家の周囲には展開していない。
改めてフランスギクやハルジオンの群生ぶりのほうがすごいと分かる
耕作地の縁に生えると危ないともいうが、ハルジオンばかりでナガミヒナゲシは見つからない。存在しないということではない。何度か見かけてはいるので、入り込んでは来ているのだが、その後、勢力を広げた気配はないということだ
ここではシロツメクサが優勢。これもアレロパシー植物だが、緑肥効果を狙って意図的に育てられることもある。ここは道端だから違うけどね
ここはシロツメクサとハルジオンが競合している
他にもこんなのも見つかるが、ナガミヒナゲシは……ない
ん? あった!
でもたった一本だけ。ハルジオンに囲まれていて、ハルジオンのほうがはるかに強いことが分かる
う~~む。
ナガミヒナゲシが目立つ場所というのは概ね都会で、ナガミヒナゲシが出現する前にすでにほかの野草が消えてしまっている場所なのではなかろうか。だからナガミヒナゲシばかりが目につくのではないか……?
なんだか、考えれば考えるほど、一種の都市伝説みたいなものに多くの人が乗せられているんじゃないかとも思えてくる。学識者や自治体までが「危険だ」と主張するわけだから、いわゆる(嫌いな言葉だが)ちょっと「意識高い系」の人たちが連鎖反応的に「美しさに瞞されないで! 抜いて!」と叫ぶ……。少しでも異論を挟めないような雰囲気が形成されていく。
CO2温暖化説やピロリ菌の恐怖……みたいなものかもしれないなあ……と。
そもそもこの「騒動」はなぜ起きたのか?
で、さらに調べていくと、想像以上に「騒動」というか「事件」になっていたようで、改めて興味がわいてしまった。この「ナガミヒナゲシ事件」の経緯をまとめてみると……:
- 2009年 国立研究開発法人農業環境技術研究所というところが、「平成21年度 研究成果情報」という刊行物の中で「ナガミヒナゲシはアレロパシー活性が強く、雑草化リスクが大きいので、広がらないようにする必要があります」というトピックを発表。
- 2011年3月 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)というところが出している「農環研ニュース」90号に、前出の藤井義春教授が「春に気をつける外来植物:ながみひなげし」と題するトピックスを発表。ナガミヒナゲシの全国への分布状況やアレロパシーの研究成果を発表。この文章、ナガミヒナゲシについてやすたけまりさんが詠んだ歌なども紹介されていて、かなり面白い。「六月の信号待ちのトラックの濡れたタイヤにはりつく未来」
- 2016年5月 作家・寮美千子氏がフェイスブック上で「ナガミヒナゲシ退治2016」というタイトルでナガミヒナゲシのアレロパシーなどについて書き、さらには「危険外来植物のナガミヒナゲシ。駆除の理解を促すチラシを作りました。ダウンロードして、ご自由にご利用ください」としてチラシPDFを配布。これがネット上を駆け回ることに。
- 2017年5月 慶應義塾大准教授・有川智己氏(理学博士、経済学部)が、「このチラシは「デマ」と言って良い.「危険外来生物」という用語やカテゴリーがあるかのような書き方だし,「特定外来種よりも「危険」な植物なんだ!」というような「誤解」を巻き起こしている」と注意喚起。
この騒動に対して、ツイッターやフェイスブック上では活発にコメントが寄せられていた。
ナガミヒナゲシの外来種駆除キャンペーンに違和感がある。
その場所に、ナガミヒナゲシに駆逐されそうな日本在来種があるなら仕方がないが、そもそも外来種だらけの町なかの草むらなら、何を守ろうとしているのか分からない。
凶暴な植物とレッテルを貼り、全国的に指名手配する方法はヘイトに似る。
だから外来種でも抜くな、駆除するな、と言いたいのではない。
けれど、
これは凶暴な、日本に生えていてはいけない植物だ!
と指名手配的に叫ばれると、
そもそも連れてきたのは誰で、在来種を駆逐したのは誰?
と思ってしまう。
いちばん凶暴な生きものは人間だなあ、と悲しくなる。
そしてさ
たとえ外来種でも
わたしたちが気づくころには
もう五十年も日本にいるんだよ
そこには
日本の虫たちも含めた
小さな宇宙が出来上がっている
こともある
特定外来種の花に
希少昆虫を見つけることだってある
自然って
一筋縄ではゆかない
(澤口 たまみさん)
そもそも在来種は絶対的に守られるべきなのかとか、他の植物の成長を阻害するアレロパシーもナガミヒナゲシにかぎった話ではないとか、ナガミヒナゲシが繁殖しやすい環境を人間が作っている点とか、そういうことを一切抜きにしてナガミヒナゲシを邪悪な存在であるかのごとく喧伝するって、どうなの?
(黒川 巌さん)
くどいようだが拡散されてる「ナガミヒナゲシは危険外来植物」というのは個人による造語であり実際は要注意外来種にも指定されていない。確かに近年場所によっては繁殖は目立つが、外来種が繁殖している場所であって在来種とは競合していない。在来種と外来種の区別さえつかない人は騒いでいるが
(もも さん)
どれも頷ける。
これらのコメントに共感するのは、ここ数日で僕自身が自分の目で、自分が住んでいる場所、道路の脇、農地のすぐそば、コンクリートの隙間、農地の中……など、あらゆる環境を観察してみたからだ。
ナガミヒナゲシなんかよりハルジオンのほうがよほど強烈じゃないかと学んだし、むしろ今年のほうが去年までより数が少なくなった気がするからだ。
「一時的にわっと繁殖しても、放っておけば落ち着く。騒ぐほどのものじゃない」「ナガミヒナゲシが目立つ場所はそもそもすでに在来種などは消えていた厳しい環境」といった説のほうがはるかに納得できる。
そんなことよりもっとやっかいなのは……
中にはこんな意見もあった。内容に誤りがあり、行きすぎているのは問題だが、一般市民が外来種に問題意識を持つのはとてもいいこと。根本的な大間違いではないし、駆除そのものが悪影響をもたらすわけでもないので、学者が市民に「デマ」と断罪するのは言い過ぎではないかと。もっと優しい言い方で啓発して欲しいと思った。
(丸山宗利ω? さん)
これも考えさせられるコメントだった。
内容には問題があっても、それがきっかけで問題意識を持つ人が増えるのはいいことだ、という論にはときどきでくわすのだが、実際には、自分がそれを知らなかったことに気づいて、きちんと情報を追って、自分の頭で考え、判断できる人はとても少ない。圧倒的に多くの人たちは、鵜呑みにしてしまい、死ぬまで情報修正できない。これは高等教育を受けている人、社会的地位の高い人でもそうした落とし穴にはまってしまう危険性を妊んでいる。というか、そういう人ほど、自分に自信があるから気づきにくい。
これは自戒を込めて言っている。
僕自身、先入観を持っていい加減に書いてしまうことがかなりあるし、なんとなく疑問に思っていたことに対してそれらしい答えが提示されると飛びついてしまうことがある。そうであってほしい結論に整合する情報だけ選択し、不都合な情報は排除してしまうという傾向は、多かれ少なかれ誰もが持っているのではなかろうか。
だからこそ気をつけなければいけないし、一度広まってしまった間違い情報を訂正するのは容易ではない。
こうした危険性の最たるものは「自然エネルギー」礼賛だろうか。
これは本当にやっかいだ。
人間が作ったソーラーパネルが里山エリアの山の斜面や草原を根こそぎ消滅させ、草花だけでなく動物も地域絶滅させていることのほうが外来種がどうのこうのよりはるかに大問題なのだが、それはまた次のトピックで……。
メガソーラーとミサイル ― 2017/04/26 21:02
広大な雑木林の斜面に16万7000枚のソーラーパネル
県立前日光自然公園である横根高原の南東斜面にプロ野球公式グラウンド90面分(約107ヘクタール)のメガソーラーを建設するという計画があることをつい先日知った。「横根高原メガソーラー建設 差し止め求め署名提出 鹿沼市に市民団体」という東京新聞の記事。
前日光(まえにっこう)県立自然公園内の横根高原に大規模な太陽光発電所(メガソーラー)を建設する計画を巡り、開発予定地が広がる鹿沼市の市民団体「横根高原の自然を守る会」の小野彰史代表らが16日、市役所を訪れ、佐藤信市長と横尾武男市議会議長に対し、建設に反対する市民らの署名8796筆を添え、建設差し止めに向けた対応を求める要望書を手渡した。
市と同会によると、事業者は東京都新宿区の外資系企業「カナディアン・ソーラー・プロジェクト」が設立した「CS栃木鹿沼合同会社」。カナディアン社は昨年11月、地元向けに説明会を開き、横根山頂から九合目付近の107ヘクタールを開発し、太陽光パネルを設置すると説明。建設予定地は鹿沼市が7割程度、残りが日光市にまたがる。
(東京新聞 2017/02/17)
これに先立ち、今年1月25日には鹿沼、足利、栃木、佐野の4市長が栃木県に「再生可能エネルギー発電施設導入に関する規制の見直しを求める要望書」というものを出している。これになぜか日光市は参加していない。何を考えているのか!>日光市
要望書は4市長の連名で、(1)県立自然公園条例における規制の見直し (2)県統一ガイドラインの策定 ──の2項目。この日は佐藤信(さとうしん)鹿沼市長、岡部正英(おかべまさひで)佐野市長はじめ、4市の関係者が県庁を訪れた。
佐藤市長は「県立公園内へのメガソーラー設置を非常に危惧している。規制見直しを国に働き掛けてほしい」と説明。福田知事は「国が間もなくガイドラインを策定する。市町と連携しながら課題に対処したい」と答えた。
(「メガソーラー規制、栃木県に要望 県内4市長」下野新聞 2017/01/26)
どういう場所なのか、実際に見に行ってみた。
見渡す限り雑木林の山。主木はミズナラで、隣接する国有林は水源涵養保安林に指定されている。
あまりに広大で把握できない。今見えている部分は全部伐採されるだろう
この部分をかつてヤマハが所有していたのが問題のはじまり。ヤマハがもてあまして転売したことで今回の計画が出てきた。
これから新緑の季節
計画地を見て思ったのは、これはもう、反対運動をするまでもなく計画は頓挫するのではないか……ということ。あまりにも馬鹿すぎる。
普通に考えれば、こんな計画が合理性を持つわけがない。冬には雪も積もるし、ろくに発電もしないのではないか。標高1000mを超える場所だから、資材運搬や伐採した木の運び出しなども困難。どれだけ金をかけるつもりなのか。
送電線も新たに引くわけだし、計画として無理がありすぎる。
土砂崩れや下流側での井戸の水涸れ、河川の汚濁、川魚の死滅などが起きる可能性は高いから、損害賠償を求めて訴訟も起きるだろう。そういうものすべてに対応できるだけの力が企業側にあるとは到底思えない。建て逃げ同然の結果になって、最後は自治体が税金を投入して後始末をすることになる。自治体もそんな余裕はないから、膨大な処理困難ゴミを山の斜面に放置したままになる可能性が高い。
あまりにも馬鹿すぎる。助手席で妻も呆れ果てた顔で言った。「いくらなんでもこれはないでしょう。立ち消えになるんじゃない?」……と。
↑
しかし、このような奈良県の現実を見ると、今の日本、どんなに馬鹿なことでもやらかす「想定外の馬鹿」がいるのだと知らされる。
横根高原はこの何百倍の規模のウルトラ馬鹿なのだが……。↓
昨日も、近所で反対の署名集めをしていたら、ある人がこう言った。
「それって脅しみたいなもので、嫌なら自治体が買い取れということなんじゃないですか?」
そこまで考えてやっているとは思えないが、こういう馬鹿なことを引き起こす原因を作った再エネ振興政策の罪は大きい。企業の目的は発電ではなく金儲け。税金や電気料金に含まれている再エネ賦課金がなければハナから成立しない話。
いずれにしても企業が税金をむしり取るための詐欺と恐喝の合わせ技みたいなものだ。
自分の目に触れないところでどれだけひどいことがあろうと関係ない……という心理
ここを見に出かける直前に、「日米首脳が電話協議」という速報ニュースを見ていたので、こんなことをしている間にもミサイルが飛んできたりして……などと思った。そういえば、松本サリン事件のときは神奈川の大山で狛犬の写真を撮っていて、売店のおばちゃんから「長野のほうで毒ガス事件が起きたみたいですよ」と聞いたのだった。
建設予定地を見終わって、山を下りながら考えた。
アメリカ政府は自国(本土)に被害が及ばないなら、他国でどれだけ人が死のうがあまり気にしない。中東やアフガンでしてきたことを見ればそれは明らかだ。
北朝鮮がほんとにアメリカ本土にまで届く核ミサイルを手にしてしまいそうだと分かった今、その前に叩けるなら、日本や韓国に多少(?)の被害が出てもいいと思っているだろう。
たとえがまずいかもしれないが、僕だって、本音を言えば横根高原に東京ドーム25個分のメガソーラーができるより、わが家の隣に数十坪のミニソーラーができるほうがはるかに死活問題だと考える。人間のエゴってそういうものだ。
アメリカの人たちが「あのアホが飛ばした核ミサイルがこっちに届く可能性があるなら、その前に、日本を舞台にしたミサイル合戦を起こして、徹底的に叩いてほしい」と、口には出さなくても思っているとしても、それは自然なことだ。
日本に関心を持つ世界じゅうのひとたちが、「なぜ日本人は、せっかく平和を享受して、この先の未来も戦争を避けうる幸運なポジションを占めているのに、わざわざ戦争に巻き込まれる国にしたいのか?」と疑問を述べるようになってから、もう何年も経っている。
怪訝な顔の世界の国ぐにを精力的に安倍首相が駆けずり回って、オカネをばらまきまでして説得して、憲法がすでに国民の合意によって改憲されたという真実とは異なる虚像をつくりだしてまで、全力でめざしたゴールに、やっとたどりついた。(ガメ・オベールの日本語練習帳 「新時代に入った日本」)
……まさにそうなんだろう。あらゆる面で、今までの時代とは違う時代に突入した日本。
↑クリックすると反対署名用紙などがダウンロードできるページにジャンプできます。ぜひご協力ください
日本で「犬」に狂犬病予防注射をするということ ― 2016/05/02 11:41
ご近所の老犬(13歳くらいらしい)のお散歩係に就任して数か月。
いつも僕の顔を見るたびに狂喜乱舞して、リードをつける間もなくグイグイ引っ張って暴走するのに、数日前から突然元気がなくなり、日増しにひどくなっていた。
ついには腰も立たず、立ちあがろうともしない。
「どしたの? お散歩行かなくていいの?」と、しゃがみ込んで3分くらい話しかけてみたが、動かない。
諦めてそのまま帰った。
翌日、買い主さんに「様子がおかしい」と話したところ、「そういえば先週、狂犬病の予防注射打ったんですよ」と言われた。
それが原因なのだろうか……と、ネットでいろいろ検索してみたら、ほぼ間違いなくそれが原因らしいと分かった。
今までも、なぜ何十年も発生していない日本で狂犬病の予防接種が義務化されているのか疑問に思ってはいたが、子供の頃しか犬を飼っていないので、あまり深く考えたことがなかった。
「たぬ」にはフィラリアの薬だけはきちんきちんと飲ませていたけれどね。
こうしてまとめてみると、まず第一に「狂犬病」という名称がまずいだろうということが分かる。そういう名称にしているのは日本だけだ。
東南アジアなどでは犬を放し飼いにしているのがあたりまえで、しかも特定の飼い主がいない(なんとなく地域の人たちが餌をあげている)ような状況が多いので、ワクチン投与がなかなか進まない。だからアジアでは犬に噛まれて感染するケースが多い。
南米ではコウモリがいちばん多いし、アメリカではアライグマなどの野生動物がいちばん多い。
犬猫をペットとして飼っている環境が日本と近いと思われるアメリカでは、犬よりネコのほうが感染例は1桁多い。
アメリカの例では、こんな記事を見つけた。
以上のことから分かるのは、日本に再び狂犬病ウイルスが持ち込まれる可能性があるとすれば、海外から持ち込まれた動物を介して以外はまず考えられないということだ。
日本にいる犬が感染するとしたら、海外から感染した動物が持ち込まれ、その動物に咬まれたり引っ掻かれたりした場合だ。室内飼いされている犬、つながれている犬にそんな可能性があるだろうか?
それよりも、海外から持ち込まれる動物の徹底的な検疫体制を作ることが先ではないか。
「人間を噛む可能性がある動物は犬がいちばん多い」というが、そもそも、まずは飼っている犬が感染している動物(人間を含む)に接触しなければ感染することはありえない。
ワクチン注射は、すでにウイルスが存在している場所で、感染動物を根絶させるためには最も効果的な方法だ。これは間違いない。しかし、一旦根絶した後は、感染していない動物、しかも犬だけを選んでワクチン注射を続ける意味が見つけられない。
感染の可能性が高いのはむしろ海外渡航した人間である。ワクチンを打つ必要性があるとすれば、人間のほうだ。
海外で感染した人間が帰国後に犬に噛みつくことはまずないだろうから、日本の犬に注射しても意味がない。
また、検疫体制の不備を突いて海外から感染動物(可能性が高い例としてはフェレットなど)がペットなどとして持ち込まれてしまった場合も、最初に感染するのはその動物と接する機会がない犬ではなく、そのペットの飼い主である人間だろう。
ロシア船にのせられた犬が港で放されて云々という話もあるが、それとて、もしその犬が感染していたら、最初に噛まれるのは犬ではなく人間だろう。港に日本で飼われている犬が放されていることはまずないが、人間はいっぱいいるのだから。
ましてや、都会の犬のように室内飼いされている犬、放されていない犬がアライグマやフェレットに噛まれて感染する可能性は限りなくゼロだ。
一方で、狂犬病のワクチン注射をすることで老犬や幼犬が体調を崩し、下手をすればそのまま死んでしまうというケースはいくらでもある。
誤解しないでほしいのは、ここで言いたいのは、まずは海外から入ってくる動物の検疫を徹底せよ、ということだ。それをしないで、限りなく安全な国内の犬にせっせと毎年注射しているのはおかしいでしょ、と。
そもそも、野生動物をペットとして輸入・販売することを全面禁止にすれば、どれだけ狂犬病再侵入の危険を減らせることか。なぜできないのか。
オーストラリアでは狂犬病のワクチン注射は「禁止」されているという。犬への負担もさることながら、ワクチン注射で下手に抗体を作ってしまうと、ウイルスが国内に入り込んだときにすぐに発見できなくなる可能性があるから、ウイルスがワクチンへの適応性を持って変異してしまうこともあるかもしれないから、ということらしい。
すぐに発見できればすぐに処置できるので、感染が広がる前にブロックできる……と。
なるほど、そのほうがはるかに合理的な考え方だ。
酪農大国オーストラリアでは、ウイルスの侵入を防ぐことは国の産業を守る上で最上位重要項目だ。真剣に考えてそうしているのだ。
日本では、一旦決めてしまったことを変更するのは怖い、面倒だ、責任を取りたくない……という精神が、行政のあちこちで不合理を生じさせている。それによって被害を被るのはいつも弱者だ。
要するに、意味のないことは明白だけれど、「犬のことだ(注射で死ぬとしても犬のほうで、人間は死なない)し、費用は飼い主の全額負担だからいいや」「やめたら製薬会社や獣医師界から猛烈な突き上げが来るから放っておこう」ということなのだろう。
ご近所の犬はその後少しずつ回復し、昨日あたりはほぼ以前と同じように元気に歩けるようになった。一安心。でも、来年はどうなのか……。
犬を連れて散歩していると、いろんな人に声をかけられる。すると、「ああ、うちでもそうです。狂犬病の予防注射をした数日後に急にご飯を食べなくなって、何日かぐったりしていました」とか「前に飼っていた犬は狂犬病の予防注射をした翌週に突然ぐったりして死んでしまったので、今の犬にはこわごわさせている」といった話を聞く。
なんという理不尽な、そしてひどい話だろうか。
ちなみに、獣医さんによっては「病弱なので狂犬病予防接種は避けたほうがよい」というような証明書を出してくれるらしい。
製本の仕方を選んでご注文↓(内容は同じです。中綴じ版はホチキス留め製本です)
いつも僕の顔を見るたびに狂喜乱舞して、リードをつける間もなくグイグイ引っ張って暴走するのに、数日前から突然元気がなくなり、日増しにひどくなっていた。
ついには腰も立たず、立ちあがろうともしない。
「どしたの? お散歩行かなくていいの?」と、しゃがみ込んで3分くらい話しかけてみたが、動かない。
諦めてそのまま帰った。
翌日、買い主さんに「様子がおかしい」と話したところ、「そういえば先週、狂犬病の予防注射打ったんですよ」と言われた。
それが原因なのだろうか……と、ネットでいろいろ検索してみたら、ほぼ間違いなくそれが原因らしいと分かった。
今までも、なぜ何十年も発生していない日本で狂犬病の予防接種が義務化されているのか疑問に思ってはいたが、子供の頃しか犬を飼っていないので、あまり深く考えたことがなかった。
「たぬ」にはフィラリアの薬だけはきちんきちんと飲ませていたけれどね。
「狂犬病」とは何か?
- 狂犬病は人間も含めてほぼすべてのほ乳類に感染する。英語ではRabies または hydrophobia(恐水症)で、「犬」という単語は出てこない
- ラブドウイルス科リッサウイルス属のウイルスを病原体とするウイルス性の人獣共通感染症の1つで、遺伝子型で7種に分けられるうちの1種。他の6種は主にコウモリが感染源
- 感染した動物が噛みついたり引っ掻いたりして唾液などの体液が体内に入ることが主な感染原因。
- ヒトからヒトへの感染例はないが、感染した人間が他人に噛みついたりすれば、理論上は感染する可能性はある
- 潜伏期は数日から数年と幅が広い。一旦発症すると致死率はほぼ100%で、治療法はない
- 全世界では毎年5万人くらいが死んでいる(うち約3万人はインド)。主な流行地はアジア、南米、アフリカ。北米ではアライグマなどの野生動物による感染が多い
- 日本では1956年以降は感染報告はゼロで、根絶されている。他にもイギリス、ノルウェー、スウェーデン、オーストラリア、ニュージーランド、ハワイ……などなど、島国を中心に、根絶されたとされる地域は多い
- 日本で狂犬病ウイルスが根絶された後の日本人の死者は、1970年にネパールを旅行中に犬に噛まれて帰国後に発症、死亡が1名。2006年に京都と神奈川在住の60代の男性2名(フィリピンに2年間滞在)がフィリピンで犬に噛まれた後、日本に帰国後に発症して死亡の合計3名
- アメリカでは人への感染は年間数名程度。スカンク、コウモリ、アライグマ、キツネなどの野生動物で毎年6,000~8,000件。ネコが200~300件。イヌが20~30件の感染報告がある
こうしてまとめてみると、まず第一に「狂犬病」という名称がまずいだろうということが分かる。そういう名称にしているのは日本だけだ。
東南アジアなどでは犬を放し飼いにしているのがあたりまえで、しかも特定の飼い主がいない(なんとなく地域の人たちが餌をあげている)ような状況が多いので、ワクチン投与がなかなか進まない。だからアジアでは犬に噛まれて感染するケースが多い。
南米ではコウモリがいちばん多いし、アメリカではアライグマなどの野生動物がいちばん多い。
犬猫をペットとして飼っている環境が日本と近いと思われるアメリカでは、犬よりネコのほうが感染例は1桁多い。
アメリカの例では、こんな記事を見つけた。
米国ではアライグマ、狐、スカンク、コウモリが狂犬病ウイルスの宿主となっていて、動物での狂犬病の87%を占めるといわれています。コウモリによる狂犬病は急には拡がらないので、流行の原因とはみなされていません。最近、問題になっているのはアライグマの狂犬病です。
アライグマの狂犬病は以前は米国南東部フロリダ州に限局していました。しかし1989年10月にニュージャーシイ州でアライグマの狂犬病がみつかり、1990年だけで37例がみつかっています。地図を見るとフロリダからノースカロライナを飛び越して狂犬病が拡がったことがよく分かります。
この理由としては、ハンターが狩猟用のアライグマの数を確保するためにフロリダから3500頭のアライグマを1977年にバージニアに放したためと考えられています。人為的な流行の拡大です。
(公益社団法人日本獣医学会 連続講座第17回「野生動物の狂犬病」 より)
以上のことから分かるのは、日本に再び狂犬病ウイルスが持ち込まれる可能性があるとすれば、海外から持ち込まれた動物を介して以外はまず考えられないということだ。
日本にいる犬が感染するとしたら、海外から感染した動物が持ち込まれ、その動物に咬まれたり引っ掻かれたりした場合だ。室内飼いされている犬、つながれている犬にそんな可能性があるだろうか?
それよりも、海外から持ち込まれる動物の徹底的な検疫体制を作ることが先ではないか。
「人間を噛む可能性がある動物は犬がいちばん多い」というが、そもそも、まずは飼っている犬が感染している動物(人間を含む)に接触しなければ感染することはありえない。
ワクチン注射は、すでにウイルスが存在している場所で、感染動物を根絶させるためには最も効果的な方法だ。これは間違いない。しかし、一旦根絶した後は、感染していない動物、しかも犬だけを選んでワクチン注射を続ける意味が見つけられない。
感染の可能性が高いのはむしろ海外渡航した人間である。ワクチンを打つ必要性があるとすれば、人間のほうだ。
海外で感染した人間が帰国後に犬に噛みつくことはまずないだろうから、日本の犬に注射しても意味がない。
また、検疫体制の不備を突いて海外から感染動物(可能性が高い例としてはフェレットなど)がペットなどとして持ち込まれてしまった場合も、最初に感染するのはその動物と接する機会がない犬ではなく、そのペットの飼い主である人間だろう。
ロシア船にのせられた犬が港で放されて云々という話もあるが、それとて、もしその犬が感染していたら、最初に噛まれるのは犬ではなく人間だろう。港に日本で飼われている犬が放されていることはまずないが、人間はいっぱいいるのだから。
ましてや、都会の犬のように室内飼いされている犬、放されていない犬がアライグマやフェレットに噛まれて感染する可能性は限りなくゼロだ。
一方で、狂犬病のワクチン注射をすることで老犬や幼犬が体調を崩し、下手をすればそのまま死んでしまうというケースはいくらでもある。
誤解しないでほしいのは、ここで言いたいのは、まずは海外から入ってくる動物の検疫を徹底せよ、ということだ。それをしないで、限りなく安全な国内の犬にせっせと毎年注射しているのはおかしいでしょ、と。
そもそも、野生動物をペットとして輸入・販売することを全面禁止にすれば、どれだけ狂犬病再侵入の危険を減らせることか。なぜできないのか。
オーストラリアでは狂犬病のワクチン注射は「禁止」されているという。犬への負担もさることながら、ワクチン注射で下手に抗体を作ってしまうと、ウイルスが国内に入り込んだときにすぐに発見できなくなる可能性があるから、ウイルスがワクチンへの適応性を持って変異してしまうこともあるかもしれないから、ということらしい。
すぐに発見できればすぐに処置できるので、感染が広がる前にブロックできる……と。
なるほど、そのほうがはるかに合理的な考え方だ。
酪農大国オーストラリアでは、ウイルスの侵入を防ぐことは国の産業を守る上で最上位重要項目だ。真剣に考えてそうしているのだ。
日本では、一旦決めてしまったことを変更するのは怖い、面倒だ、責任を取りたくない……という精神が、行政のあちこちで不合理を生じさせている。それによって被害を被るのはいつも弱者だ。
要するに、意味のないことは明白だけれど、「犬のことだ(注射で死ぬとしても犬のほうで、人間は死なない)し、費用は飼い主の全額負担だからいいや」「やめたら製薬会社や獣医師界から猛烈な突き上げが来るから放っておこう」ということなのだろう。
ご近所の犬はその後少しずつ回復し、昨日あたりはほぼ以前と同じように元気に歩けるようになった。一安心。でも、来年はどうなのか……。
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