コロナが教える「つぶされない生き方」2020/06/17 11:41

墓地にある石仏が、かつては墓そのものだったらしいと気づいたのは最近のことだ。その時代の人たちの死生観や生活ぶりはどうだったのか。今とは相当違うものだったのだろうとは思うが、具体的なイメージはなかなかわかない。

医学界でも言われ始めた「アジアの幸運」

COVID-19の感染率や重症化に関しては、やはりいくつかの要因があって、アジア諸国では死者が少ない。そのことは医学界でもようやく認知され始めてきたようだ。
この生死を分ける「要因」は何か、という研究が進めば、今のような、すぐ都市封鎖だのソーシャルディスタンスだのマスクだのっていう対策ではない、もっと根本的な「考え方」が形成されていくのだろうか。早くそうならないと、世界はどんどんまずい方向に進んでいきそうで、そのことのほうがウイルスそのものよりもはるかに怖い。

コロナという教師

ともあれ、ここにきて、コロナは、我々に多くのことを教えてくれている「教師」なのではないかという気がしてきている。
今まで見過ごされてきたことに目が向けられるようになって、そこから改めて学ぶことが増えた。
例えば、金は必要以上に持ってはいけないのだなあ、と思う。
負け惜しみではない。「前田ハウス」だの、「安倍首相のお友達」山口敬之氏、有名企業から偽名で月80万円だの、「兜町の風雲児」の最期だのという記事を読むにつけ、心からそう思える。
特に、人が稼いだ金(税金)を使える立場にいるというのは、本来なら大変な責任を背負い、ストレスを抱えるはずなのに、なあなあで(たが)が外れまくっている。開き直ればなんでも通ると思っている(実際そうなってしまっている)。
そうなったら、もうおしまい。壊れた乗り物を運転する薬漬けの廃人と同じなのだろうな……と。

人は必ず死ぬ。この世は夢の世界と同じで、一瞬で消えるバーチャルなもの。そのかりそめの時間の中でさえ、想像力を働かせず、煩悩まみれの生き方に閉じ込められるつまらなさ。永田町の人たちはともかく、霞が関の人たちは、「脳」の可能性という点では、平均よりずっと可能性を持っていた人たちだろうに。
ギャンブル依存症になっている芸人が、それを自虐的に「芸」に取り込もうとするような探究心さえも持てない人たち。可哀想だな、と思うけれど、そういう人たちが、他人の生死を握るような立場にいる、というのが困るし、恐ろしい。

「歴史を学ぶ」のではなく「歴史に学ぶ」

そんなこんなのコロナ疲れもあって、社会の理不尽さを嘆いたり憤ったりする体力もなくなってきた。

先人たちは、様々な失敗体験に基づいて、たとえば「三権分立は大事ですよ」とか「ルールにそって物事を決めましょう」ということを大切にしてきました。こうした知恵が憲法や法律に書き込まれています。
今を生きている人だけで物事を決めてしまうと、大変な悲劇を受けます。
(略)
たとえ「多数派が支持していること」でも「やってはいけないこと」があると考えるのが立憲主義であり、政治的リーダーの本質的な務めではないでしょうか。
安倍首相は「戦後民主主義のあだ花」か?  政治学者中島岳志が分析する「本質を忘れたリーダー」とは HUFFPOST 2020/06/10

「死者の声」に耳傾ける、という言い方をしなくても、要するに「歴史に学ぶ」ことが大切だという話だ。
ただ、その「歴史」は学校で教えてくれるわけじゃない。あれはすでに「編集済み」の読み物だからだ。

出発点は、疑問を持つこと。想像力を働かせること。そして、なるべく自分好みの期待値や裏読みを排除して、実際はどうだったのかと判断していく姿勢だろう。

社会全体がどう動いたのか、そうなっていった要因にはどんなものがあったのかは、ていねいに調べていけば見えてくる。
645年に起きたとされる「乙巳(いっし)の変」(私たちの世代はその年号は「大化の改新」と丸暗記したが、今はこう教えているらしい)が実際にはどんな背景をもち、どのようなものだったのかは、今となっては分からないし、それほど重要だとも思えない。
しかし、幕末から明治にかけての動き、日中戦争から太平洋戦争に至るまでの世相……そういうものはかなりはっきり見えてくるし、今の社会にも大きな影響や因果関係を持っている。これは為政者だけでなく、すべての人が知っておかなければならない事実だ。
しかし、学校の歴史の授業ではそこを教えてくれない。何年に何が起きたか、そのときの人物の名前は、事件の名称は……そんなことを暗記するだけで終わる受験勉強。
歴史を学ぶというよりも「歴史学ぶ」ことが大切なのだ。
しかし、受験生時代にはそんな余裕はまったくなかった。時間的余裕も、精神的な成熟度も足りなかった。
また、「この子は歴史に何を学んだのか」をはかる入学試験などというものはなかったし、今もない。

少し前、勝ち組・負け組という言葉が流行ったけれど、そんな単純なものではないなあ、というのが、人生終盤にきて分かってきた。
大切なのは社会の理不尽に「つぶされない」生き方だと。

私の周囲には「つぶされない生き方」を続ける達人がたくさんいる。その「技術」や「哲学」はそれぞれだけれど、その「それぞれである」という「個性」が守られることが大切なことだ。
個性がつぶされる社会では、最低限の幸福も守れない。
「つぶされない技術」を磨くためにも、つぶされないギリギリの社会を守るためにも、「歴史学ぶ」ことは大切だ。
 
「コロナ休校」がきっかけで始めた中学生向け英語塾。ようやく2冊にまとまった。
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COVID-19の重篤化に「マイクロバイオーム」関与説2020/05/16 21:00

COVID-19重症化に関する徳田均医師(呼吸器内科)の仮説が非常に興味深い。
人の身体(特に外界と接する領域)には100兆個にもおよぶ微生物が共生しており、ヒトの免疫システムと絶えざる応答を繰り返しつつヒトの健康と病気の成り立ちに重要な役割を担っている。この乱れ(dysbiosis)が免疫の乱れ(dysregulation)をひき起こすと難治性の炎症性疾患が生じる。潰瘍性大腸炎、クローン病だけでなく、肥満、多発性硬化症、糖尿病など実に様々な病気がこの乱れによるものであることが証明されつつある。
 私の仮説は、コロナウイルスと宿主の戦いの中にマイクロバイオームという媒介項を設定すれば、これら様々な謎が解けるのではないか? である。コロナウイルスが気道(あるいは腸)のマイクロバイオームを変改し、そのdysbiosis が第2相の免疫学的異常(暴発)を招来する、と考えてはどうか? である。
COVID-19重症化の謎とマイクロバイオーム関与の可能性 徳田均

マイクロバイオームというのは、簡単に言えば人の身体に巣くっている様々な微生物(細菌、菌類、ウイルス……)の「相」ということらしい。
この構成が地域、人種、年齢などによって異なり、様々な要因により変化するという。
例えば、ビフィズス菌の入った乳酸菌飲料を毎日飲み続ければ腸内にビフィズス菌が増えるというような単純な話ではなく、食生活ではほとんど変化しないらしい。

徳田医師は、さらに具体的な提言として、
  • 自分の経験している臨床例で、風邪の初期段階でトスフロキサシントシル酸塩(抗菌薬)を短期間投与することで改善している
  • しかし、風邪の多くはウイルスが原因であることを考えると「抗菌薬」が直接ウイルスに効いたとは考えられない
  • これは抗菌薬によって上気道のマイクロバイオームが改変され、その結果炎症が鎮まったと考えられる
  • これを踏まえると、COVID-19軽症例の悪化阻止のために、腸内細菌を整える微生物群(乳酸菌やビフィズス菌などが有名)と並んで、ハイリスク患者の発病最初期にごく短期間の抗菌薬投与を考えてもよいのではないか
……という趣旨のことを述べている。

COVID-19に喘息治療薬のシクレソニド(商品名「オルベスコ」)が効くという報告があったときは、多くの医師が「なんで?」と驚いたようだが、あれなども、気道のマイクロバイオームを改変したことで重篤化を抑えられたと解釈することができるのかもしれない。

既存の薬をどう活用するかを目下早急に問われているわけだが、感染初期と重篤化してからでは薬の選択がまったく違ってくることはすでに医師の間では共通認識になってきている。
重症化してから抗菌剤や抗ウイルス薬を投与しても効果がない。むしろ、サイトカインストームを押さえるために、インターロイキン6(IL-6)という免疫系の働きを抑える薬(アクテムラやケブザラなど)が効くという事例がいくつも報告されている。
5月15日の「報道ステーション」では、番組総合演出の伊藤賢治氏(47)が、病室で自撮りした映像と共に生々しい経過報告をしていて注目されたが、ここでも症状が悪化してからのアビガンは効かず、アクテムラが効いたことを伝えていた。

特効薬の開発ということが声高に言われているが、何年かかるか分からない、そもそもできるかどうかわからないことに期待するよりも、まずはこうした既存の薬を使い分けて対処する」具体的方法を共有することが最重要課題ではないかと思う。

このマイクロバイオームについてさらにいろいろ読んでいると、こんな記述も見つけた。
日本人の腸内細菌叢の特徴として,炭水化物の代謝能が高い,鞭毛を持つ菌が少ない,修復関連の遺伝子が少ない,古細菌の一種であるメタノブレウィバクテル・スミティー(Methanobrevibacter smithii)が少ないなどが挙げられます.炭水化物が代謝されると,短鎖脂肪酸,二酸化炭素,水素が生成され,このうち短鎖脂肪酸はヒトの栄養素となり,水素は抗酸化作用を発揮します.ヒトは細菌の鞭毛抗原に対して免疫反応を起こすことから,鞭毛を有する菌が少ないと,免疫による炎症反応が起こりにくくなります.修復関連の遺伝子が少ないことは,DNA損傷が少ないことを意味していると思われます.つまり,日本人の腸内細菌叢の機能的特徴として挙げられた点はいずれもヒトの生理状態に有利に働くもので,こうした特徴が日本人はBMIが低く,また長寿であることと関係しているのかもしれません.
ヒトマイクロバイオーム研究~ 細菌叢メタゲノムからヒトの健康と病気を読み解く~ 服部正平 早稲田大学理工学術院先進理工学研究科 教授)


なぜ日本ではCOVID-19による死者が極端に少ないのかという謎について、すでにいろいろな説が出てきているが、今なお謎のままだ。
HLA型が関係しているのではないかという説はすでに取り上げたのだが、マイクロバイオームの違いが関係しているという説も、大いにありえるな、と感じる。
ノリやワカメなどの海藻に含まれる多糖類を分解するポルフィラナーゼという酵素を、日本人の90%は有しているが、欧米人では3%しか有していない、という話なども、大いに興味が引かれる。

……と、以上は医学界の専門家が論ずるべきことで、私などの専門外素人がどうこう言うことではない。それは重々承知している。
だからここまでは長い「前振り」である。
言いたいことは、
なんにせよ、もし日本でのCOVID-19死者の少なさが、遺伝子的要素やマイクロバイオームの違いに関係しているとすれば、それは単に「運がよかった」ということにすぎないということだ。
感染の次の波がきたとき、同じ運が味方してくれるとは限らない。
悪い事態を予測した上で、合理的、効果的な対策を準備していなければならないのに、この国ではそれがまったくできていないどころか、この期に及んでも政治が私利私欲やトンチンカンなメンツを最重視して暴走している。それをまず止めないと、とんでもないことになってしまう。
感染症で死ぬよりずっと怖ろしい結果が待ち受けている。
ここ数か月での世の中の激変を見ていると、戦争に突入していったときもこんな風に「あっという間」だったのだろうか、と思わされる。
今は爆弾が降ってくる戦争が起きなくても、無能な政治、倫理のない政治によって社会が急速に壊滅しうる。
取り返しがつかない事態になる前に、「暴走」「無法状態」を止めよう! 無関心、見て見ぬ振りは許されない。

一庶民として、それだけは主張しておきたい。

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日本ではCOVID-19第一波は終わっている?2020/05/08 21:10

神戸市立医療センター中央市民病院(同市中央区)では、4月上旬までに外来患者千人に対してSARS-CoV-2の抗体検査をしていた。5月2日にその結果を発表したが、3.3%に抗体陽性反応があったという。
100人に3人程度がすでに4月上旬までにSARS-CoV-2に感染して抗体を持っていたということになる。その人たちは感染していることに気づかず、軽い症状、あるいは無症状のまま抗体だけができた、ということだ。
これを読んで、ああ、やっぱり! と思った。
神戸でこの数字であれば、おそらく東京や神奈川など首都圏ではもっと多いだろう。
実際、慶応義塾大学病院(東京都新宿区)は、4月23日までに新型コロナウイルス感染症以外の治療目的で来院した無症状の患者67人にPCR検査を行ったところ、4人(6%)が陽性者だったと公表している。

もしかして日本では感染の第一波は収束していて、今出てきているのは第二波なんじゃないかと想像していたのだが、こうしたデータを見る限り、あながち妄想ではないと思えてきた。
つまり、武漢から直で入ってきた第一波のウイルスは、なんらかの要因(多分DNA的な要素?)で(運よく)日本人にはそれほど被害を及ぼさず、抗体だけはついた。
今、死者がポツポツ出ているのは欧米から入ってきた、変異したウイルスによる第二波なのではないか?? ……と。

日本だけがなぜ感染者数も死者も少ないのかという謎がずっと論じられてきたが、「死者は少なかったが、感染者は少なくなかった」ということではないか。検査していないから感染確定例の数が極端に少ないというだけで、実際にはそこそこの数の感染者はいた。しかし、なんらかの要因で発病~重症化する確率が低かった。
日本人は欧米人に比べて清潔好きで、普段から手洗いの習慣があり、逆にハグやキスの習慣がないから感染が抑えられたという説が根強くあるが、「感染者が相当数いた」のであれば、そういう説明だけでは無理がある。「感染しても気づかないほど軽症、無症状である人の割合が、欧米人より高い」ということではないか。
「どちらかというと、これは非常にラッキーなデータ。感染拡大初期に行ったデータで既に3%に達していた。そこから1カ月がたってどう変化したのか大変興味がある。もしかしたらもう少し高いデータが出ている可能性があることは、大いに考えられる」
(神戸市立医療センター中央市民病院の木原康樹院長)
なんにせよ、まだまだ謎だらけ。今が第二波だとすれば、第二波がどの程度で収まるのか、第三波は?? などなど、分からないことだらけだ。

ざっくりと推理して、中都市で3~4%、大都市では5~6%、地方の田舎町でも1%くらいはすでに抗体を持っている人がいるとすると、これからの対策としては、
  • 若者同士の交流、感染はある程度仕方がないと考える
  • 若者が高齢者や入院患者などと接触することは徹底的に避ける
  • 病院や高齢者施設での感染防止を徹底させる
  • 発病した人への早期の対応
  • 保健所と医療現場を切り離す(保健所は本来の仕事に戻し、医療現場からの検査依頼などは民間に回す)
  • 唾液でのPCR検査を認める
  • その上で、必要な社会インフラを回しながら、社会構造全体の合理化を進める
……といったことではないか。

「医療崩壊」という言葉は曖昧すぎて違和感があるが、要するに、
  1. 医療現場での役割分担ができていない
  2. 医療資源(人も装備も設備も)が圧倒的に足りない
……ということが問題なのだ。
1はすぐにでも対応できるはずなのに、厚労省のメンツや指示みたいなものが効率化や最適化を阻止している。
それを制御できないどころか、問題の本質を理解できていない政府中枢はもっと大きな障害だ。

問題は「生き方」をどう変えるか

現状を見ていると、この国が今から目を見張るような見事な対応をしていくとは思えない。
各現場では本当に頑張っている人たちが多いのに、それを生かせない「システム」に縛られ、改革すべき上の人たちがあまりにも無能・無責任すぎる。これをすぐに変革していくことは困難だろう。
そんな中で、我々庶民はどうすればいいのか?
新型コロナは、人々の連帯も引き裂いていく。フランスの経済学者でEU結成の立て役者でもあるジャック・アタリ氏はこう主張する。
「ウイルスに怯えると『自分さえよければいい』と考えてしまいがちで、『他人のために生きる』という人間の在り方が失われていくのです」
その結果生じているのは「分断」された弱肉強食の世界だ。
たとえば、裕福な人と貧しい人の分断だ。新型コロナの感染拡大を防ぐには、外出を減らし接触を減らす必要がある。だがおカネがない人は、仕事に行かないと生活できず、自宅待機はできない。
M・ガブリエル氏ら世界的知性が答えた「コロナと人類の未来について」 週刊現代 2020/05/04

↑まさにそういうことだ。
しかも、運送、製造、医療、介護といった、止められない社会インフラを回している人たちほど自宅待機はできない。そんなことをしたら、誰も(金持ちも貧乏人も)が生きていけない。
そのことを忘れて、パチンコ屋が開いているだの、公園で凧揚げしているだの、川辺でBBQしているだのという視聴者の煽り目的の映像ばかり流しているテレビメディアは猛省せよ。問題の本質はそういうことではない。
死者を極力減らす、という目的なら、考えること、論じることは別にある。それができない社会である、ということが問題だ。

理論的には、感染が消えることがない限りは、封鎖や自粛をしてもしなくても、最終的に死者の総数はあまり変わらないということになる。
ワクチン開発はできるかどうか分からないし、時間がかかるだろう。できたとしても、遺伝的副作用や特異体質の人への危険性などが確認できないままの見切り発車になる。
できることは、重症化する人が集中して救急医療の現場がパンクしないようにすることと、高齢者や病人、そして医療関係者を感染させないようにすること。
その前提で、いかに医療現場への負担を減らすか(集中を避ける、余計な仕事を増やさない、役割分担を徹底する)、ストレスや過労による死や家庭崩壊、人間性崩壊、文化の停滞・後退を防ぐか、ということを考えていかないと、このままではもたない。


もはや腹をくくるしかない?

抗体検査も、唾液によるPCR検査も、検査キットが足りていれば別に専門的な技術は必要ない簡単な作業なのだから、やれないはずはない。実際、他の国ではやっているわけだし。
(PCR検査は専門職が時間を取られ、感染リスクと戦いながらやる大変な作業だ、という主張は、旧式の方法を元にしての主張のような気がする。唾液からの検体採取は認めないというルールがあったり、自動化した検査装置がありながら活用できていなかったりしているようだから、まずはそうした理不尽な縛りを解消することが先だ)
とにかくデータがないと戦略が取れない。
それができない以上は、もう腹をくくるしかない。ダメなときはダメなんだ。でも、確率的には、多分大丈夫なんだろう……という腹の据え方。
志村けんさんみたいに、すぐに国内最高レベルの医療機関が、ありとあらゆる最先端の方策を駆使しても、残念ながらダメなときはダメ。
一方、放っておかれても、苦しんでも、なんとか自力で回復する人もいる。(もちろん、苦しむ前に医療を受けられないとまずいのだが、実際問題受けられない人がいっぱいいて、すぐには状況が変化しないのなら、それを覚悟して向き合うしかない)
どこかで腹をくくった上で、人間として充実した生き方を見失わないようにしないと。このままでは人間社会全体が物理的な死の前に「精神的な死」に直面してしまう。

実際、こんなことをボソッと書いている私でも、寝ている間に見る夢の中にもコロナは入り込んできているし、朝、起きるときの鬱状態が日々悪化している。
次にこれをやろうかな、というアイデアはいろいろあるのだが、「どうせ……」という否定形の思考が支配的になって、動けない。
これを乗り切るには、自分を変えていかなければいけないのかもしれない。
利己的な発想を捨てて、利他的に動くことに意味を見出す……とか。
若いときにわがまま放題、自己中心で生きてきたツケが回ってきたのかもしれない。
謙虚に、そして否定形の思考ばかりに支配されないように意識して生きる。

……やれることは、そういうことかなあ……。


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厚労省がケアマネを「アベノマスク無料配達員」にする恐怖2020/04/15 15:27

某ケアマネ事務所に届いたアベノマスク
上が配られたアベノマスク。下が普通に売られている(かつて売られていた?)一般的なサージカルマスク。配られたものは小さすぎるし、布地の白が汚い

バカが配るマスク

先日の「バカにつけるマスク」は、書いていてあまりにも情けなくなり、もうこの手の話からは距離をおこうと心に決めていたのだが、その後もあまりにもひどい事態になっているので書く。

今朝、スポーツ紙が、介護施設に届いた布製マスク(以下「アベノマスク」←すでに普通名詞化した?)の記事を大きく取り上げた。
職員の男性は「小さくて、(顎まで隠そうとすると)鼻が出てしまう。今使っているマスクがなくなったら、自分で作ろうと思います」と話す。
アベノマスク届くも「小さく鼻出る」「意味ある?」 日刊スポーツ 2020/04/15

介護関連のサイトや各SNSでは、すでに介護現場から困惑や怒りの声が寄せられている。
予防効果の低さを耐久性という言葉ですり替え、黄ばみ黒ずみが著しい明かに売れ残りと思われる長期在庫マスクを箱で送りつけ、ケアマネさんを利用して「配布徹底」をさせようとまでしています。ただでさえ不評なマスクなのに、この変色したマスクを誰が受け取ってくれるでしょうか。

事業所に届いたマスクをケアマネが配るとか市が言ってます。そうすれば、2ヶ所以上サービスを利用してても、一人に1枚になるとか。でも、ケアマネの負担とリスクは考えられてません。ケアマネが配れば高齢者も安心できると言ってます。この緊急事態宣言が出てる世の中で、1件1件訪問しろって、何を考えてるのかわかりません。
昨日、届きました。紐が伸びないタイプ。ちょっと、これはね。自分が持っているマスクを使います。
特養老人ホームです。ガーゼマスク届きました。サージカルマスクの在庫は僅かで、それは看護優先。介護スタッフは届いたガーゼマスク着用と決定されました。
(略)個人的に、介護にガーゼマスクはない、と思ってます。自身も無症状感染者かもしれないと考えると、感染させたら…重篤化しやすい方ばかりの中、やはり怖くて使えません。
事務所から連絡が来てマスク取りに行きました。(略)各事務所から頂いたのですが、個体差あり、大きすぎたり、小さかったり、トンガリ過ぎてたりです。丁度よいのを参考に型紙をおこして自分で作ろうと思っています。
これは「和牛一族」の眼帯では?

一人がネットに届いたマスクの画像を上げると、他の地域、施設、介護事業所のスタッフらから「うちに届いたのとは違う。うちに届いたのは~~だった」といったコメントがつく。
それで、届いたアベノマスクにはいくつものタイプがあるということも分かってきた。
  • 布地に明らかな黄ばみ、黒ずみがあって、倉庫で長期在庫として眠っていたと思われる古いマスク
  • 最初に首相が自らしていた小さなガーゼマスク(通称「給食係マスク」)
  • 耳掛け部分がゴムではなく布地で、伸びないために顔に装着すらできないもの
  • 一部のドラッグストアなどで市販もされていた少し大きめのガーゼマスク(いちばんマシなタイプ?)

最初に配ったのは不良在庫一掃処分段階で、それがはけると、次はあちこちの下請け工場やアジアの低賃金労働現場に低料金で発注して作らせているんじゃないかと疑いたくなる。
そんなアベノマスクは1枚260円、送料などを含めて配布の総経費は466億円だと報じられている。
某雑誌のアンケートでは76%が「届いても使わない」と答えたとか。
いくらなんでも「あれはやめます」となるかと思っていたら、本当に送りつけ始めていた。それだけでも気が滅入るのだが、さらに怖ろしいことが起きていた。

ケアマネを無料のマスク配達員にしていた

冒頭の写真は、ある居宅ケアマネ事務所に厚労省から送られてきたアベノマスクである。
これを在宅介護サービス利用者の家に1枚ずつ配れ、と厚労省が言っているという。
いくらなんでも……と、にわかには信じられない話だったのでネットで裏を取ろうとしたら、すぐに出てきた。
事 務 連 絡 令和2年3月19日
各都道府県衛生主管部(局)
民生主管部(局) 御中
厚生労働省医政局経済課(マスク等物資対策班)
老 健 局 総 務 課 認 知 症 施 策 推 進 室
老健局 高齢者支援 課
老健局 振 興 課
老健局 老 人 保 健 課

(以下抜粋)

今般、高齢者施設・事業所における具体的な配布方法について下記のとおりお示ししますので、各都道府県におかれましては御了知いただくとともに、管内市町村や貴部局所管の関連団体、関連施設にご周知いただけるようよろしくお願いいたします。

2.利用者分の配布方法
○ 利用者分については、配布事務連絡の別紙に掲げる高齢者施設・事業所の利用者が配布対象になります。各施設・事業所の具体的な配布枚数は、介護報酬データにより得られた情報等に基づき設定しています。
○ 配布先については、
・施設・居住系サービス、高齢者向け住まい等については、各施設等に配布、
訪問系サービス及び通所系サービスについては、居宅介護支援事業所に配布しておりますので、当該事業所より各利用者に配布をお願いいたします
※ 小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、介護予防小規模多機能型居宅介護は各サービス事業所に配布しています。
※ 居宅療養管理指導については、当該サービスのみを利用する者分を、サービス事業所に配布していますので、該当する利用者へ配布をお願いいたします。
原本PDFは⇒こちら

伝達文書3

この通達が厚労省から出されたのが3月19日なので、すでに各地のケアマネ事務所にはアベノマスクが届き始めている。

新型コロナウイルスの流行を踏まえた介護現場への布製マスクの配布について、厚生労働省は19日、具体的な方法をアナウンスする通知の続報を出した。 訪問系サービスと通所系サービスの利用者の分を、すべて居宅介護支援事業所に送ると説明。「各利用者への配布をお願いします」と協力を求めた。居宅のケアマネジャーらには相応の負担がかかることになる。
《 介護保険最新情報Vol.789 》介護現場へのマスク配布、在宅利用者の分はケアマネ事業所に発送 厚労省



送られてきたマスク


知人のケアマネさんは、同封されていた「洗濯方法」を説明した部分を、ケアマネ事務所で利用者の人数分コピーして、そのコピーと1枚ずつにバラしたアベノマスクをビニール袋に小分けして、泣きながら利用者の家、一軒一軒回って配ったそうだ。
「当地でも連日感染者が出ている状況なので、玄関先での訪問にしているのに。しかも、今月は早めにモニタリング訪問(居宅ケアマネは最低月1回の利用者宅の訪問観察が義務づけられている)を終えようと、すでにご利用者様の半分以上回ってしまった後なのに。各戸に2枚の分とは別なので、なぜうちは1枚なの?と訊いてくる人もいるし……」

こんなことが現実に起きていると知って、COVID-19そのものよりも深く底知れぬ恐怖を感じた。
お国が愛国婦人会に命じて各戸に竹槍を配らせるようなものではないか。

介護現場で働く人たちは、ただでさえ大変な苦労をしている。数々の理不尽に耐え、現場現場で最大限の創意工夫、自助努力をしながら命と接している。
私は父や義母の介護を通じて、そうした人たちの素晴らしい資質、人間性を知っている。本当に頭が下がるばかりだ。
そうしたケアマネや介護施設スタッフにとって、厚労省は大本営のようなものである。命令が下れば逆らうのは難しい。その上下関係の構図の中で、トップがいちばん愚かで、現場に混乱と理不尽な困難を押しつけてくる。この構図がどんどん戦前、戦中の社会に似てきているのが怖ろしい。
太平洋戦争では、実際に敵の弾に当たって死んだ兵士よりも、馬鹿な命令を受けて、餓死、病死した兵士のほうが多かった。一般市民はメディアの嘘情報を信じたまま空襲や原爆の犠牲になった。

ウイルスそのものよりも怖いものが、今、急速に蔓延しつつある。国民がそのことに気づき、一刻も早くその原因を取り除いていく努力をしないと、本当に手遅れになる。


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バカにつけるマスク2020/04/04 16:18

エイプリルフールではなかった……
COVID-19への対策がひどいというネタで大喜利状態になっている。
⇒これとか

国会議員の歳費を和牛商品券にすればいい、というのは、確かに「バカにつける薬」としては画期的処方かもしれない。
「もう年金がどんぐりになっても驚かない」はいちばんウケたが、笑っていられないのよね、ほんとは。

……とそんな中、トドメともいえる冗談が我が国の首相から飛び出した。

いやもう、ほんとにここまでくると世界への恥さらしどころの騒ぎではない。悪夢か幻影か……。

ミルクボーイ内海「ありがとうございます~。和牛券はいただけませんでしたが、今、布マスク2枚をいただきました~。こんなん、なんぼあってもいいですからね~」
千鳥ノブ「布マスク2枚!!? もう、やめぃ!!」
出川哲朗「おまえは、・か!!」

……とまあ、本来なら芸人たちにつっこんでほしいが、そういう気概を持った芸人も今はいない。
代わりにネットがマンモス大喜利大会になっている

そもそも1枚260円、総費用466億円も出すような代物じゃない。

↑これで事足りるし。
いやもう、ほんと、笑っている場合じゃない。この「バカにつけるマスク」問題の怖ろしさは、馬鹿さ加減そのものよりも、なぜこんなことになったのか、という点だ。

首相が一人でこれを思いつき、自分でつけてまでわざわざ発表したとは到底考えられない。当然、それを進言し、実行させた誰かが官邸内にいる
案の定、翌日には朝日新聞がこう報じた。
実はこの構想は1カ月以上前から首相官邸内で浮上していた。「全国民に布マスクを配れば、不安はパッと消えますから」。首相にそう発案したのは、経済官庁出身の官邸官僚だった。(布マスクで「不安パッと消えます」 官僚案に乗って炎上 朝日新聞 4月2日

ああ、またあの男か……と、誰もが思った。モリカケ桜・ニューオータニシンジケート……と来て、今度はアベノマスクか……と。

それにしても、なぜ「布」マスクなのか?
「サージカルマスクは医療現場や高齢者施設などに優先的に配る必要があるため、一般市民にはあまり効果のない(医療現場などでは使えない)布マスクを配って買い占めを鈍らせるため」という超好意的な解釈も出ていたが、そんなわけないだろうが。
そもそもこんなマスク、今どき作っているところがあるのか? と思って調べたら、これらしい。
興和株式会社(本社:愛知県名古屋市、社長:三輪芳弘)は、国からの要請のもと、広く海外に展開している繊維事業の経験を活かし、国内と海外の生産協力工場を活用した「ガーゼマスク」の取り扱いを推進してまいります。3月には1500万枚規模、4月には5000万枚規模の生産を目指し、日本国内に供給してまいります。
PRESS RELEASE 2020年3月5日 興和株式会社 より)

で、この興和の社長は3月26日に総理大臣官邸4階大会議室で行われた「第6回新型コロナウイルス感染症の実体経済への影響に関する集中ヒアリング」にゲストとして招かれている。
政府は26日夜、追加経済対策の策定で6回目のヒアリングを開催。出席した安倍晋三首相は冒頭、景気回復に向けて「強大な経済・財政政策を講じていかなければならない」と述べた。
マスクを増産している医薬品メーカー興和(名古屋市)の三輪芳弘社長は終了後、マスク不足について「5月か6月くらいまでには何とか(生産が)追い付いてくる」との見通しを示した。
時事ドットコム 2020年3月26日

三輪社長の名前を目にするのは、2年前の一般薬連内紛騒動以来か。
その後どうなったのだろうと思ったら、⇒こうなっていた

で、閑話休題。「アベノマスク」の配布方法は、日本郵便が地域ごと、すべての郵便受けに投入していくらしい。
その日本郵便の経営をおさらいしておくと……、

  • 2015年11月 日本郵政グループ3社の株式が東京証券取引所に上場される。それまで100%の株を持っていた政府は日本郵政株の11.0%を市場に放出。同時に、日本郵政は同時上場した子会社のゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式を売り出して、その売却代金約7300億円で政府保有の日本郵政株(8.51%)を自社株買いした。これにより国庫には1兆4000億円が入り、政府保有の日本郵政株は80.49%まで下がった。
  • 2017年9月、政府が保有している株式を放出。国内分が最大7億9207万株、海外分が最大1億9801万株で合計9億9009万株。発行済み株式数の22.0%に相当。売出人は財務大臣で、放出されたのは政府保有分。結果、政府の保有率は保有率は80.49%→57%まで下がった。
……というわけで、日本郵政グループの株は、政府によって都合よく「市場からの資金吸収システム」として機能してきた面があるようだ。しかし、売り出すたびに外資にじわじわと食われてもいるのだろう。そこにてこ入れするにはとても都合がいいタイミングというわけだろうか。

こういう施策が、自民党幹部議員ですら寝耳に水状態でいきなり発表される。つまり、首相官邸という密室で少人数の人間が密談して決めたことが、なんの審査、審議も経ずにいきなりメディアを通じて発表され、実行されてしまうのだ。これぞ危険極まりない「密」ではないか。
↑アベノマスクの「怖さ」はまさにここにある。
モリカケや桜問題を解決できないままズルズルと来たことが、こういう怖ろしい事態につながっているということを、市民はこの際、しっかりと認識すべきだ。

『サピエンス全史』の著者 ユヴァル・ノア・ハラリ氏からのCOVID-19に関するメッセージを、今一度しっかり心に刻もう。
指示順守と協力を達成するには信頼が必要だ。人々の科学への信頼、行政への信頼、そしてメディアへの信頼が必要だ。この数年、無責任な政治家たちが意図的に科学や様々な行政、メディアへの信頼を損ねてきた。今、まさにこの無責任な政治家たちが、市民が正しい行動を取れるとは思えないから国を守るには必要だとして独裁主義的な道へ堂々と進もうとするかもしれない。

何についても責任を取ることも、過ちを認めることも決してない一方で、手柄はすべて自分のものにして、問題が起きれば誰か他人のせいにする指導者に従う人はいないだろう。


そんな指導者に従っているつもりはない、と言うかもしれないが、法治国家をここまで破壊した政権をずっと放置してきたことは、歴史的事実としてずっと残る。

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続・なぜ日本ではCOVID-19での死者が少ないのか?2020/03/28 11:26

志村けんが……の衝撃

朝(といっても11時近い)起きて階下に降りていったら、妻の第一声が「志村けんが……」だった。
え!? まだそれほどの歳でもないのに? と一瞬驚いたが、COVID-19感染が確認されて入院とのこと。それはもっとビックリだ。
ネットで調べると本当だった。
「一時は重体だったが今は快方に向かっている」という記事だったが、その後の情報ではECMO(extracorporeal membrane oxygenation「体外式膜型人工肺」)につなぐために転院したというではないか。ECMOは最後の最後の手段だから、本当なら、少しも「快方に向かっている」とは思えない。
さらにその後の報道から、経過をまとめると、
  • 3月16日 フジテレビ系「志村でナイト」の収録で台場の同局に入ったが、体調不良を訴え、控室に入って30分で退出し、帰宅
  • 3月17日 引き続き倦怠感があったため、自宅療養
  • 3月19日 発熱、呼吸困難
  • 3月20日 自宅を訪問した医師の判断で都内の病院に搬送。重度の肺炎と診断され、そのまま入院
  • 3月23日 COVID-19ウイルス検査の陽性反応が判明。夜に一時病状が悪化し危険な状態に
  • 3月24日 保健所による調査が行われ、発症日と濃厚接触者の特定が完了
  • 3月25日 ECMOにつなぐため、港区内から新宿区内の病院に転院
……ということだ。
気になるのは、いつどこでウイルスを取り込んでしまったのかということ。
「天才!志村どうぶつ園」では3月5日、NHKの新朝ドラ「エール」では3月6日、「あいつ今何してる?」では3月10日にスタジオでの収録に出ていたという。
COVID-19の潜伏期間は1~14日(多くは5~6日)というが、感染した場所が仕事場であれ飲み屋であれ、そこに一人でいたということはあまり考えられない。発症していない感染者がすでに複数いることは間違いないのだろう。

他にも、サッカー協会会長(JOC副会長)、プロ野球選手(現時点で3名)……この人たちはみな軽症か無症状だ。プロ野球選手は、「最近料理や飲み物の匂いが感じられない」ということで耳鼻科を訪れたらPCR検査ができたというが、彼らは「有名人」だから検査できたのではないか。普通はそんな訴えだけでCOVID-19の検査まではしないだろう。
この感じだとすでに無症状や軽症の感染者は大変な数存在しているのではないか。

ニューヨークのデータは参考になりそう

1月15日~3月24日(70日間)の日本国内でのPCR検査数(累積)(感染者数ではない)を都道府県別に並べると、
  1. 東京:2013人
  2. 愛知:1895人
  3. 北海道:1794人
  4. 兵庫:1607人
  5. 和歌山:1316人
  6. 京都:930人
  7. 埼玉:898人
  8. 新潟:812人
  9. 大分:743人
  10. 福岡:703人
  11. 広島:656人
……という順番だそうだ。とにかく検査数が少ない。
1日あたりは都道府県別に1桁か2桁しか検査してない。いちばん多い東京都(人口約1400万人)の3月26日の検査総数は101件で、そのうち40人に陽性反応が出た。調べれば4割が感染者という結果(⇒こちらを参照)。
一方、同じ26日にアメリカニューヨーク州(人口約2000万人)では死者が前日から100人増え、385人になった。州内の感染者は前日から6448人増えている。検査数は当然1桁多いだろうから、1日で数万人単位で検査しているはずだ。
しかし、日本では検査しないために普通の肺炎で処理されている死者がかなりいるとしても、COVID-19による死者が異様に少ないのは確かなようだ。
そうなると、ますます日本における死者数の少なさには、何か特異な事情、要因があるのではないかと思ってしまう。

27日現在、世界の感染者数、死者数のデータを見ると、アメリカ国内の感染確認例が8万5996 人となっていて、ついに中国を抜いてしまった。
このうち3万9140人はニューヨーク州だ。
アメリカは州によって人種構成比が相当違うけれど、ニューヨークは「人種の坩堝」と呼ばれているくらいの国際都市だし、サンプル数も多いので、ここでの致死率は世界の平均的な数値に近いかもしれない。
3万9140人が感染して395人が死亡。致死率1%。
これは信用していい数字かもしれない。
ちなみに韓国は9332人感染して139人死亡。致死率1.5%。
ドイツは281/47278で0.6%。
スイスは197/11951で1.6%。
……で、これらの国は致死率が低い。

イギリスは580/11816で4.9%。
フランスは1698/29581で5.7%。
オランダは434/7469で5.8%。 ……で、かなり高い。

悲惨なことになっているのは、
イタリアの10.2%、スペインの8.4%。
イタリアはもはや感染者が確認できないまま死者がどんどん増えている状況らしいので、実際はもっとひどいのだろう。
医療崩壊したからだ、高齢者が多いからだ、と分析されているが、劇症化した人が次々に運び込まれる状況を見ると、やはり「他の地域とは何かが違う」と感じさせられる。

イタリアという国は、北と南ではまるで別の国であるかのように「人」も風俗も豊かさも違うらしい。
北イタリアのほうが生活水準が高く、人間性も神経質で心配性な人が多いという。対して南イタリアは開放的で陽気な人が多いが、街は汚く、盗難も多くて危険地帯。賃金も安くて、非正規雇用のnero(黒い労働)と呼ばれる日雇い労働者が多く、税金も払わない……。
となると、当然、COVID-19に感染して死ぬ確率は南のほうが高いと思うのだが、実際には逆で、感染者も死者も北部に集中している。なぜなのだろう?

アメリカに本社を置くバイオテクノロジー企業「23andMe」の研究では、南イタリア人の多くが、10%程度の遺伝子をMENA(中東/北アフリカ)から受け継いでいるのだそうだ。
もしかするとこうした遺伝子の違いが感染率や致死率の違いになっているのではないだろうか?
ドイツの致死率がイギリス、フランス、オランダなどより明らかに低いことも、遺伝子的な要因によるところが大きいのではないか?

……と、想像してしまうのだ。
何度も言うようだが、だからどうだ、ということではない。単純に、そういう要因がありそうだな、という話だ。
分からないことが多い現状で、断定的なことは何も言えないはずだ。例えば「日本ではPCR検査をしないから医療崩壊が起こっていないのだ。検査数を増やしてはならない」と力説する人がいっぱいいるが、1日万単位で検査しているニューヨーク州での致死率が1%と低いことを考えれば、おかしな説だと思わざるをえない。それよりも「何かの要因で日本は今のところたまたま大災厄から逃れられているだけではないか?」と疑ったほうがいいのではないだろうか。

もう一つの可能性「ウイルス変異説」

HLA型の違い(遺伝子的な要因)の他にも、地域によって広がっているウイルスの型が違うという説もある。
武漢で当初猛威をふるったウイルスはその後だんだん弱毒化していったが、ヨーロッパに広がったウイルスは変異を続けて、ある局面で強毒化したのではないか、というような説。
ウイルスが少しずつ変異していることは確かなようで、複数の研究がそう報告している。
ウイルスがほんの少し変異しただけで、感染しやすい人、感染すると重症化しやすい人が大きく変わるかもしれない。また、一度獲得した免疫があまり効かなくなり、再感染すると一気に重症化しやすい……というようなことも起こりえるかもしれない。
もしそうであるなら、中国で感染が収まったというが、今後は外から入ってきた変異後のウイルスで二度目の感染爆発ということだってありえるだろう。
もちろん、今まで「たまたま」「運よく」なんとなく危機をすり抜けてきた日本も、この先どうなるかまったく分からない。なにしろ未だに正体が摑みきれない、分からないことだらけの難敵なのだから、予測が立てられない。
一つ確実にいえるのは、COVID-19の感染そのものによる死者よりも、COVID-19の流行やパニック現象によって活動制限された社会で、疲弊して死ぬ人が増えるだろうということだ。
介護施設での集団感染の危険性がいわれているが、在宅の認知症高齢者が感染するとさらに悲惨だ。いや、感染しなくても、今まで保てていた生活が続けられず、死期が早まることは十分に考えられる。⇒これは韓国での例だが、日本でも同じことが起きるだろう。

1週間後、2週間後には、日本が、世界が、とんでもないことになっているかもしれない。
心の準備はしておかなければ……。


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COVID-19 なぜ日本では死者が少ないのか2020/03/21 17:29

厚労省 2020/03/20 発表

世界中が「コロナ疲れ」で危機的状況になっている。
COVID-19は、自分でできる範囲の感染防止対策をした後は「慣れる」しかない……ということで、しばらく傍観していたが、ここにきて、ヨーロッパ、特にイタリアでの死者数急増と、それに比べて日本で報告されている死者数の少なさ(韓国もだが)がどうにも腑に落ちない。
HLA型の違いで、感染しても発症しない(無症状)あるいはごく軽症で済む人の割合が違うのではないかという思いはますます強まった。

各国の公称感染者確認数に対する死亡率を比べると、
特にイタリアでの死者数が突出して多いのは気になる。
3月21日現在の最新データで、死者数の地域別上位20地域・国(1位はイタリアの4032人、20位はスウェーデンの16人)の「死者/感染者」の割合を出してみると……、
  • イタリア:8.6%
  • 中国湖北省:4.6%
  • イラン:7.3%
  • スペイン:5.1%
  • フランス:3.6%
  • イギリス:4.4%
  • オランダ:3.5%
  • 韓国:1.2%
  • ワシントン州(米国):5.4%
  • ドイツ:0.3%
  • スイス:1.0%
  • ニューヨーク州(米国):0.5%
  • ベルギー:1.6%
  • 日本:3.4%
  • インドネシア:8.7%
  • カリフォルニア州:1.2%
  • 中国河南省:1.7%
  • フィリピン:9.6%
  • イラク:8.2%
  • スウェーデン:1.0%
……となっていて、イタリア、イラン、スペインの多さが目を引く。
詳細なデータは入手できないものの、当局者、看護師、親族らによれば、新型コロナウイルスが確認されて以来、感染拡大が最も深刻なイタリア北部の高齢者介護施設では死者数が急増している。だが、その状況は新型コロナウイルス関連の統計には反映されていない。 「亡くなった場所が自宅や高齢者介護施設で、ウィルス感染の検査を受けていないために、感染による死亡と見なされていない例がかなりの数に上っている」とベルガモ市長のジョルジオ・ゴリ氏は言う。
ベルガモでは今年3月の最初の2週間で164人の死者が発生し、そのうち31人が新型コロナウィルスによるものとされている。これに対して、昨年同時期の死者数は56人だ。
イタリアでコロナ「隠れ死者」増加、高齢者施設の実態 2020/03/21 ロイター

……とのことなので、イタリアの致死率は実際には8.6%どころではない可能性が極めて高い。

ちなみにインドネシア、フィリピン、イラクも致死率が高いが、感染者確認数が少ない(それぞれ369人、230人、208人)のであまり参考にならない。
ワシントン州は感染者数1524人中83人死亡で5.4%と高い数値だが、これは高齢者施設での集団感染により一気に死者が出たことが大きな要因となっているらしい。しかし、州によって人種の構成比がかなり違うということも何らかの関係があるのかもしれない。
例えばニューヨーク州のアフリカ系人種の人口比は16%(50州中13位)だが、ワシントン州は3.6%と少ない(50州中36位)。人種の構成比が違えば、HLA型の分布も違うはずだ。

逆に、確認感染者数が多い順に10位(1位:67800人、10位:3983人)までの死者率を見ていくと……、
  • 中国湖北省:4.6%
  • イタリア:8.6%
  • スペイン:5.1%
  • ドイツ:0.3%
  • イラン:7.3%
  • フランス:3.6%
  • 韓国:1.2%
  • ニューヨーク州(米国):0.5%
  • スイス:1.0%
  • イギリス:4.4%
    ……となり、ドイツ、ニューヨーク州、スイス、韓国などの少なさが目立つ。

    日本での本当の感染者数は?

    では、日本はどうなのかということで、検査数が少ないためにどこまで信頼できるか分からないが、厚労省のサイトで日本国内の感染状況統計を眺めてみる。

    検査総数:18851人
    内・陽性者:950人(5%)
    内・有症状者:841人

    95%は陰性と判断されたわけだが、陽性となった人の「濃厚接触者」と考えられる人たちは、症状がなくても検査しているはずだから、大まかな傾向が分かりそうである。

    で、まず、
    検査総数に対する陽性者:5%をどう考えるか?
    無症状の人も含むサンプルで5%の陽性者が出るというのは多いのか少ないのか? ……微妙なところか?
    無症状者の検査はクラスターの濃厚接触者を中心にしていることから、日本国内全体の感染率はこの半分の2.5%だと仮定すると、1億3000万人の2.5%は325万人である。現在、300万人以上が感染していると考えてもおかしくないということか。

    次に、
    陽性者のうち無症状者:11.3%をどう考えるか?
    ウイルスが入り込んでもまったく気づかないでいる人が1割以上いるということだ。
    ちなみに、ダイヤモンドプリンセス号乗客・乗員だけのデータでは、
    検査数:3711人、陽性者:712人(19%)、うち無症状者:333人(47%)
    で、実に陽性者のほぼ半数は無症状のままだった(下船させて隔離入院後に症状が出た者は「無症状者」から除いているので、陽性が確定した時点で無症状だった者はさらに多い)。
    そうした「不顕性感染者」(無症状のまま感染している人たち)は普通に生活しているので、無自覚のまま他の人に感染を広げている。

    さらに、感染して症状が出た後のことはどうなのかと見ると……、

    陽性者のうち入院が必要とされた者:77%
    陽性者のうち死亡した者:3.9%
    入院が必要とされた者のうち死亡した者:5.1%

    ……こう見ていくと、感染してもまったく平気で気づきもしない人と、重症化してあっという間に死んでしまう人がいる、ということが分かる。

    その「分岐点」は何なのか? ──それがどうにも気になってしまうのだ。

    死ぬか、何でもないか、を分ける要素

    重症化するかしないかを分ける要素として、すでに知られている(ほぼ確定している)のは、
    • 高齢者は重症化しやすい
    • 糖尿病などの持病がある人は重症化しやすい
    • 医療体制が追いつかないと治療が受けられず死んでしまう確率が上がる

    といったものだ。
    イタリアで死者が急増しているのは、まず、高齢化率(人口に対する65歳以上の割合)が23%台で、日本(28.4%)に次ぐ世界第2位の高齢化国家だから、という。
    しかし、高齢化だけなら、日本(28%)はイタリア(23%)を上回って世界第1位である。スペインは19%、イランに至っては6.2%(世界で100位以下)にすぎない。

    次に、イタリアは財政縮小政策の対象として医療サービスが選ばれていたために、医師や病院などの医療インフラが脆弱で死者が増えた、といわれている。
    それは間違いないだろうが、それだけであれほどの差になるのだろうか?
    人口1000人あたりの医療病床数 (Clickで拡大) OECD Dataより

    ↑これは各国の人口1000人あたりの医療ベッド数を比較したものだが、日本は確かに1000人あたり13床で非常に多い。韓国も12.3床で多い。ドイツは8。フランスは6、スイスは4.5……。
    イタリアは3.2床だが、アメリカは2.8、カナダは2.5、スウェーデンは2.2床で、イタリアより少ない。

    イタリアの映像を見ると、病室に収容できずにまとめて寝かされている人たちはほぼ全員が重症者のようだ。軽症者も収容したから病院がパンクしたということではない。感染する人、重症化する人が純粋に激増していると思われる。

    日本は医療体制が整っているので、イタリアのような医療崩壊がまだ起こっていないからだという説もあるが、本当かな? と思う。
    高熱が何日も続いていてもPCR検査を受けられず、結果、自宅にこもって自力でなんとか踏ん張り、元々の自然治癒力で回復する人がかなりいるのではないか?
    PCR検査の結果が陽性で、入院が必要とされた者(614人)のうち死亡した者:5.1%という数字を見ても、そもそもCOVID-19が原因で入院している人の数が極めて少ない

    では、日本では感染防止対策がうまくいっているから感染者が少ないのか? ……そうは思えない。世界有数の人口密集都市である東京や大阪で、今までの対策で感染が効果的に防げたとはとても思えない。

    イタリアでは若い人たちが両親や祖父母と一緒に田舎で暮らし、ミラノのような都市で働くために通勤しているという生活スタイルが多いので、無症状の若年層感染者が同居している高齢家族にうつしているのではないか、と分析する人もいる
    しかし、それなら日本でも田舎はそうした生活スタイルが多いが、田舎のほうが高齢者が感染して死んでいるという印象は今のところない。

    日本ではこれからドカンと感染者が増えてイタリアや武漢のようになると脅す人もいる。しかし、ウイルスが入ってきた時期がイタリア、イラン、スペインより遅いということはない。1月の時点で大量の中国人旅行者が日本に押し寄せていた。

    ……となると、やはりHLA型などとの相関関係を疑いたくなる。

    ABO式血液型との相関性は疑わしい?

    中国の複数の研究者が、武漢の病院で看たCOVID-19の感染者1775人(うち206人はすでに死亡)のABO式血液型の分布を調査したところ、A型の感染リスクが有意に高く、O型が低いというリポートを論文精査用機関(正式発表の前に一般公開して他の専門家らの意見を募る目的)のmedRxivに提出した。
    これに対して、
    「ポイントはウイルスが肺細胞にあるACE2にくっつくのを阻害する『抗A型抗体』。この抗体は血液型A型の人の体にはありません。実はSARSが流行したときの研究で、この抗A型抗体を持たないA型の人のACE2がウイルスを取り込みやすいことが分かっていました。新型コロナでも同じ現象が起き、A型の感染者が多いのだと思われます。O型の人は抗A型抗体があるのでACE2がウイルスを取り込みにくいのでしょう」(左門新・医学博士 日刊ゲンダイ 2020/03/19

    という解説もある。
    ACE2受容体とウイルス感染の仕組みについてはすでにCOVID-19以前からいろいろ研究され、報告もある。
    しかし、ABO式血液型だけで説明するのは無理があるというか、雑すぎる。
    日本はA型人口が非常に多い国だ(約4割がA型で、A:O:B:ABの割合が概ね4:3:2:1であることはよく知られている)。A型が劇症化しやすいのなら、日本ではもっと死者が増えそうなものだ。
    関係がない、とはいえないが、もっと他の要因が複数絡み合っていると考えるほうが無理はないと思う。

    HLA型(いわゆる白血球型)が様々な病気に関係していることはすでに広く知られている。特に免疫に関する因子は大きな意味を持つ。
    HLA型の概要 一覧 (BMLより引用)

    例えば(すでに3月9日の日記にも書いたが)、シルクロード病の異名を持つベーチェット病。
    ベーチェット病患者では、ヒトの免疫応答の重要な役割を担っている“主要組織適合抗原、HLA(human leukocyte antigen:ヒト白血球抗原)”の特定タイプ、HLA-B51 抗原の陽性率が 50~70%と健常者に比べとても高いことが分かっています。
    難病情報センター「ベーチェット病」より
    ということだが、ベーチェット病の発症地域とCOVID-19が感染拡大している地域は結構重なる気がする。

    上がベーチェット病発症地域、下がCOVID-19感染拡大マップ。似ている?


    抗HIV薬Ziagen(abacavir)による自己免疫反応を主とする重篤な副作用の原因としてヒト白血球抗原HLA-B5701がある、ということも知られている
    HLA-B5701の国別保有率 The Journal of AIDS Research 2017 より)

    これを見ると、ヨーロッパは概ね高く、アメリカも高い。東アジアでは中国に比べて日本は極端に低く、韓国、台湾も低い(サンプル数にバラツキがあるのでどの程度有意性があるかは疑問だが)。

    このように、HLA型の構成分布は国・地域・人種によってかなりの差が出る。
    イタリアやイランが他の国に比べて突出してCOVID-19による死者が多いこと、日本や韓国での死者数が少ないことを知るにつけ、やはり国、地域によって「かかりやすい人」「かかっても重症化しない人」「かかると重症化しやすい人」の構成比率が違うのではないかという気がしてしまう。

    そのうちにこのテーマでの研究結果も出てくるだろうが、一歩間違えると新たな人種差別や国家間対立を生んでしまいかねない。
    そんなことを想像し、心配しているうちにも、COVID-19パニックはエスカレートして、世界中の人々が疲弊していく。

    ……やはり、最後は「慣れる」しかないのだろう。「正しく慣れる」とでもいうか……。

    現代社会は脆弱だ。昔とは違う種類の危険、脆さが増えた。
    COVID-19に限らず、病人を看護・治療する医療インフラをしっかり保つことは重要だし、合理的かつ倫理的な判断を下して社会を崩壊から守る人や組織も必要だ。今の日本はそうした「まともな社会作り」から逸脱しすぎている。たまたま、あるいはぎりぎりなんとかなっているという幸運が続いているだけ、という気がする。
    COVID-19は最後の警告かもしれない。
    完全な崩壊が来る前に、税金の使い方や人の育て方、公平公正な政治・行政を再構築することを真剣に考える必要がある。

    (2020/03/23 一部校正)

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  • 危機管理能力~加計学園、大坪問題2020/03/15 17:18

    危機管理分野であまりにも能天気でありつづける日本は、世界中から奇異な目で見られている。
    台湾出身、米国在住の化学者で毒物研究の世界的権威、杜祖健(英語名はアンソニー・トゥー)氏(89)のインタビュー記事が非常に興味深かった。
    杜氏は、今後は現状の感染拡大防止措置の強化、徹底などをはかり、治療薬の開発を急ぐとともに、日本の政権中枢に対しては国家レベルでの対外情報収集力の強化や、有事の際の隔離病院船の整備など、教訓を将来に生かすことの重要性を訴えている。

    「2003年、中国広東省から感染拡大したSARSに苦慮した台湾では、早期にBSL-4施設を整備し、SARSウイルスをはじめ炭疽菌などを培養、研究してきた」と証言。実際、李登輝政権時代には中国の蘭州発とみられる口蹄疫で養豚業が打撃を受けたこともあり、続投が決まった蔡英文政権でもヒトや家畜なども含め、中国発の未知の病原に強い警戒心が根底にあった。
    また、「一般には知られていないが、台湾の研究所でもSARSウイルス漏出騒ぎが発生し、大事に至る前に収束させたことがある」とし、台湾がこの失敗からも危機管理能力を伸長させてきた点を指摘。
    「日本は手遅れ」生物兵器の世界的権威が断じる理由 日本は急げ、「対外情報収集力向上」と「隔離船病院の導入」 JBpress 2020/03/15)


    89歳でも頭がしっかりしている人はすごいなと驚くと同時に、BSL-4施設といえば、日本では国立感染研と理化学研究所筑波研究所にしかなくて、理研の筑波研究所は住民の反対に遭ってレベル3までの実験しか行わないことになっていることを思い出す。
    そして、BSL-3といえば、加計学園の岡山理科大獣医学部問題でも、当初の設計のデタラメさが話題になった。
    (国立研究所の動物実験施設管理専門家の指摘) 「ウイルスに汚染される、使用済みケージ、SPF清浄動物、感染動物死体部屋の空気が、同じ狭い廊下を通過する構造となっている。これでレベル3のウイルスを取り扱ったら簡単にバイオハザードがおきる」
    【加計問題】「危険なウイルスの漏出100%起きる-専門家が指摘」、内部文書公開の市民団体が警告 志葉玲 2017/08/24)


    その後どうなったのかと、岡山理科大獣医学部の公式WEBサイトを覗いてみると……、
    動物から人へ
    これまでの獣医学は主に動物を対象にした学問でしたが、動物でもヒトでも感染症コントロール、新しい医薬品開発、予防・治療は共通するという考えで、動物とヒトの健康を科学する教育を行います。
    「岡山理科大学の獣医学部の特徴」 大学公式WEBサイトより)

     2014年のアフリカにおけるエボラウイルスの大流行は、高病原性の新興感染症ウイルスの脅威を世界に改めて意識させました。1994年にオーストラリアで発生したヘンドラウイルス、1998年からアジアで報告されているニパウイルス、2001年のSARSコロナウイルス(CoV)、2012年から報告されているMERS CoVなど次々と新たなウイルスが出現しています。(略)
    このような新興感染症ウイルスに対する対策・研究を国立感染症研究所において、いわば最前線で体験してきたスタッフメンバーによって微生物学講座は、起ち上げられます。
     我々は、バイオセーフティーレベル(BSL)3の実験室を活用して、また日本の、または海外のBSL4施設とも共同研究を実施しながら、最前線での戦いを継続していきます。こうした活動を通じて、この領域で専門家として活躍できる人材の育成を目指します。
    微生物講座「One World, One Health」に貢献する! 岡山理科大獣医学部公式WEBサイトより)

    で、この岡山理科大獣医学部の微生物講座を率いるために国立感染研究所獣医科学部長を辞めて2019年4月に微生物講座教授として就任したのが森川茂氏で、岡山理大教授就任時には同じ国立感染研のウイルス第一部主任研究官と研究員の2名を引き連れていった……という話も最近読んだばかり。
    その森川教授は、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)の「感染症研究課 平成31年(令和元年)度 感染症実用化研究事業(新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業)」に 「動物由来感染症の制御に資する検査・診断・予防法に関する研究」で応募している。
    そのAMEDで理事長や委員が「官邸主導の御旗を振りかざして予算や人事を握って一部の人間が行政をゆがめている」「大坪氏が次長になられてから、我々のオートノミー(自立性)は完全に消失している」と告発した、いわゆる「大坪問題」の主役が、大坪寛子厚生労働省官房審議官と、その後ろ盾といわれる和泉洋人首相補佐官

    ……こう見ていくと、日本が諸外国に比べてあまりにも危機管理能力がない、「対外情報収集力」がなさすぎる、という国家の存亡に関わる大問題もまた、一周回って「大坪問題」や加計学園にたどり着くような気がするのだが……。
    いやはや、知れば知るほど、ほんとに「怖い」ね。

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    英独米は覚悟を決めたようだ2020/03/14 21:31

    ここにきて、COVID-19に対するイギリスの対応が他の国とはかなり異質なようで注目している。
    政府首席科学顧問のパトリック・バランス氏は13日のインタビューで、国内人口の6割が感染するかもしれないと警告。
    (略)
    バランス氏は当局者がウイルス感染を「完全に抑え込むのではなく」、ピークの水準を抑え、平たん化しようとしていると述べ、英国のアプローチを擁護。国民の60%が感染すれば、ある程度の「集団免疫」形成に役立つだろうと語った。
    Bloomberg 2020/03/14

    英政府の首席科学顧問パトリック・バランス氏は12日、英国内の新型コロナウイルス感染総数が現時点で最大1万人に達している公算が大きいとの認識を示した。
    バランス氏は、国内では現時点で確認された患者は約590人、集中治療室で治療を受けているのは20人超とした上で、「これを基に実際の総数を算出すれば5000─1万人が感染している公算が大きい」と述べた。
    また、英国は新型コロナの流行が深刻なイタリアの状況から約4週間遅れの状況にあるとの認識を示した。
    ロイター 2020/03/12
    免疫を持つ人が一定割合まで増え、感染を防ぐようになることを「集団免疫を獲得する」と言います。数理モデルをつくる英インペリアル・カレッジ・ロンドンのニール・ファーガソン教授のこれまでの発言を聞く限り、イギリスの集団免疫レベルの基本シナリオは60%とみられます。
    来シーズンにはワクチンが開発されている可能性があるため、感染して自分で免疫を獲得した人とワクチン接種を受けた人の割合をコントロールしながら60%に持っていく戦略と筆者はみています。
    しかし、それを国民向けの記者会見で公言するとは思ってもみませんでした。
    今封じ込めすぎて感染のピークがNHS(国民医療サービス)の繁忙期である冬にやって来ると大変なので一番暇な夏に来るようにコントロールする目標まではっきり示しました。最悪シナリオの罹患率はドイツの70%を上回る80%に設定して実行計画を立てていると言います。
    ヴァランス顧問によると、スポーツイベントなど大規模な集会より感染リスクが高いのは密閉空間での密接な会合だそうです。今、一斉休校をしない理由についてヴァランス顧問はユーモアを交えてこう説明しました。
    「休校の効果はあるものの最小限です。効果を上げるのは13~16週間以上の休校が必要になります。しかし子供に友達と会ってもダメ、おしゃべりしてもダメと言っても実行できる可能性はゼロであることぐらい最先端の数学者でなくても分かるでしょう」
    ジョンソン首相は「一斉休校は効果より害の方が大きい」と説明しました。もちろん状況が変わって特別なアドバイスがあれば休校するという選択肢は残しているそうです。

    イギリスの基本戦略は次の通りです。

    (1)ハッピーバースデーを2回歌いながら石鹸と温水で手を洗う
    (2)熱や咳の症状がある人は1週間、自宅で自己隔離→ピークを20~25%削減
    (3)家族全員を自宅で隔離→ピークを25%削減(未実施)
    (4)新型コロナウイルスに脆弱なお年寄りをケア→死亡率を20~30%削減

    集団免疫を獲得するまで先は長いので今からあまり頑張りすぎないようにというアドバイスもありました。
    木村正人のロンドンでつぶやいたろう 2020/03/13

    ちなみにこのパトリック・バランス(Patrick Vallance)博士とは、グラクソ・スミスクライン(GlaxoSmithKline)社の研究開発部門のプレジデントやユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の元医学部長という経歴の持ち主で、2018年春に英政府首席科学顧問に就任したそうだ。
    イギリスはもはや、
    • COVID-19の封じ込めはできない
    • 致死率は高いとはいえないので、国民の6割が感染して「集団免疫」を持つことで事態の収拾を待つ
    • 感染のピークをなだらかにさせる作戦をとるが、ピークが(インフルなどでただでさえ病院が多忙になる)冬にずれ込むよりは夏に来たほうがマシ
    ……という、開き直りに近い作戦に変更しつつあり、首相もそれを認めているということのようだ。

    イギリスだけではない。
    ドイツのメルケル首相は12日までに、新型コロナウイルスの問題に触れ、最終的にはドイツ国民の6~7割が感染する可能性があるとの同国当局の見方を明らかにした。ベルリンでの新型肺炎に関する記者会見で述べた。シュパーン保健相も同席した。
    首相はこの中で公衆衛生制度に過重な負荷をかけないことが重要と指摘。感染の拡散に歯止めがかからないイタリアを念頭に、全ての欧州諸国に感染が広がっているともした。
    その上で、各国は研究に注力し、支援すべきと強調し、ドイツは分散的な方策で今回の危機に対処するとも言明した。新型コロナウイルスについて「我々は多くのことを知らない状況の中にいる。我々は深刻に受けとめている」とも述べた。 (CNN 2020/03/12


    ニューヨークタイムズ紙によれば、米国疾病予防管理センター(CDC)、および伝染病研究を行う複数の大学が2月に研究会を開催し、米国における新型コロナウイルスの感染拡大ケースを議論した。
    (略)
    研究チームの予測によれば、感染開始後、数か月から1年の間に米国では1億6千万人から2億1400万人が感染する可能性がある。そのうち、240万人から2100万人が入院を必要とする。米国全土の医療ベッドはおよそ92万5千台しかないことから医療崩壊が発生し、1割程度の重症患者しか治療を受けられない事態となる。一方、治療が行われない場合、新型コロナウイルスによる肺炎で20万人から170万人が死亡する可能性がある。
    SPUTONIK 2020/03/14

    1億6千万人から2億1400万人というのは米国総人口の約5割~7割弱くらいだから、イギリスもドイツもアメリカも、国民の半数~7割くらいは感染してしまうという事態を想定して動き始めたということだ。

    スペイン風邪と比較

    COVID-19は当初SARSやMERSと比較されていたが、それよりも100年前のスペイン風邪と比較したほうがいいのではないかという気がしてきた。
    スペイン風邪は日本国内では致死率が1%程度だったが、感染力が強く、当時の世界人口の約3割に当たる5億人が感染した。
    世界での死者数は2000万人~4500万人といわれている。英独米の最悪シミュレーションも、このスペイン風邪をモデルにしているようだ。
    スペイン風邪に対しては、結局有効な対策ができないまま、感染して治癒した人(生き延びた99%の人)が集団免疫を持つことで、その後の大量死が収まった。COVID-19もそういう風になっていくのではないかと、専門家たちは冷静に判断しているということなのだろう。

    つまり、我々ができることは、
    • 手洗いや手が触れる器具などの消毒を徹底し、人混みにはできるだけ出ないようにして感染の可能性を下げる
    • 感染しても重症化しないように体力をつける
    • 感染したと分かったら他人にうつさないように家にこもり、家族との接触も避ける
    • 特に高齢者にうつさないように万全の注意を払う
    ……といったことしかない。
    あ、イギリスの政策とまったく同じか……。
    覚悟を決めて、冷静に動きましょう。

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    気になる不顕性感染者の実数2020/03/14 21:23

    これを書いている現在(2020/03/14 16.28)、世界でCOVID-19に感染して死んだ人は5429人だという。
    中国湖北省を除くと、イタリアが1266人で断トツに多い。以下、イラン:514人、スペイン:133人、フランス:79人、韓国:72人、米国ワシントン州:37人……と続いている。
    死者/確認感染者数を比べると、中国以外では、
    • イタリア:1266人/17660人 (0.072
    • イラン:514人/11364人 (0.045
    • スペイン:133人/5232人 (0.025)
    • フランス:79人/3667人 (0.022)
    • 韓国:72人/8086人 (0.009
    • 米国:47人/2174人 (0.022)
    • 日本:21人/725人 (0.029)
    ……で、イタリアとイランの死亡率の高さが目立つ。特にイタリアは致死率が高い。
    武漢のように医療体制が崩壊したからだというが、それだけではないのでは? という気もする。遺伝子的に重篤化しやすい人が多いのではないだろうか。
    韓国が一桁低いのも目を引くが、これは検査数を徹底的に増やしているからという理由の他に、検査している対象に例の新興宗教信者が多く、その大半が40歳未満の女性だから、ということのようだ。
    日本は検査数が異常に少ないのでこの数字は鵜呑みにできない。検査されないまま、ただの肺炎とされて死んでいる高齢者が相当数いるはずだ。今のままだと早急に手当てすれば回復する可能性のある患者をどんどん重篤化させてしまうだろう。
    さらには、クラスター感染と呼ばれているケース(スポーツジムや屋形船など)を追跡調査した結果を見ていると、日本では若年層を中心に不顕性感染者の数が諸外国より多いのではないかという気もする。もしかすると韓国よりも多いのではないだろうか。
    上昌広医師は、日本と韓国で死者数が少ないのを「ウイルスの特性」に要因があるのではないかとツイートしているが、この「特性」というのはやはりHLA型との関係を示唆しているのだろうか。ただ、データがない現状でHLA型との関連に言及することで、ただでさえ多い雑音が増えるのを回避しようとして明言を避けているのだろう。

    そこで改めて日本国内でのPCR検査結果(3月13日時点。クルーズ船、チャーター便帰国者除く)を見てみると、
    • 検査総数:11231
    • 陽性者:659
    • ↑そのうちの無症状者:68
    となっている。
    陽性者のうち1割以上が無症状というのが不気味だ。
    ちなみにダイヤモンドプリンセス号だけのデータを見ると、
    • 検査数:3711人(内、日本国籍は1341人で36%)
    • 陽性者:697人(19%)
    • ↑内・無症状者:328人(47%)
    で、なんとおよそ半数は「無症状者」なのだ。
    この「無症状者」というのは、「(隔離)入院後に有症状となった者は無症状病原体保有者数から除いている」とのことなので、ウイルスが体内に入ってもまったく発病しなかった人という意味になる。
    感染しても1割以上の人は自分が感染したことが分からないどころか、なんの症状も出ないから普段通りに行動しているわけだ。
    微熱程度の軽い症状のままで動いている人を含めればもっとずっと多いだろうから、今の日本では、自分が感染していることを認識しないまま普段通りに行動している感染者が数多くいると考えられる。
    メディアでは指摘するのが半ばタブー視されているようだが、普通に考えれば「感染しても無症状または症状が軽い若年層が、意識せずに高齢者層にウイルスを感染させ、高齢者が発病する」という図式ができあがりつつあるのではないか。
    この可能性を提起することで無用な差別発言やパニックが広がるのか、それとも各人が今まで以上に注意を払って高齢者の感染リスクを下げる努力を冷静にかつ紳士的にしていけるのか……後者であることを祈りたい。

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