『阿武隈裏日記』を改題しました。
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「籠池劇場」の正しい見方2017/04/01 19:36

なぜこんなことが起きるのか?
今となっては、この騒動のスタートがどこだったのかよく分からなくなってしまった感がある。それほど3月は「籠池劇場」で腹一杯になってしまった。
発端は豊中市議会の木村真議員が、市内にあった国有地に何やら建物が建設されていて、フェンスに生徒募集のポスターが掲示されているのを目にしたことだった。
「瑞穂の國小学院」と書かれたそのポスターには、教育勅語が印刷されていた。以前に市が国に、公園にしたいから売ってくれといったときには断られたこの土地にとんでもない小学校が建設されている。なんだこれは……と、財務省近畿財務局に情報開示を求めたところ断られ、さらに食い下がると土地の売却価格などが真っ黒に塗りつぶされた、いわゆる「のり弁」が出てきただけ。
この市議が食い下がらなければ、今頃、あの赤い木造校舎は完成し、この4月には小学校が開校していた。

2月9日:朝日新聞が記事に。「学校法人に大阪の国有地売却 価格非公表、近隣の1割か」
財務省近畿財務局が学校法人に払い下げた大阪府豊中市内の国有地をめぐり、財務局が売却額などを非公表にしていることが分かった。朝日新聞が調査したところ、売却額は同じ規模の近隣国有地の10分の1だった。国有地の売却は透明性の観点から「原則公表」とされており、地元市議は8日、非公表とした財務局の決定の取り消しを求めて大阪地裁に提訴した。


それからのドタバタはいまさら解説するまでもないだろう。

ポイントポイントをざっと振り返ると……、

3月10日:渦中の人・籠池泰典氏が長男の佳茂氏を伴って記者会見。「絶縁状態」と言われていた長男が突然現れて雄弁にカットインする姿にみんなびっくり。

3月14日:日本外国特派員協会での記者会見を突如キャンセルした籠池氏が長男と一緒に、宿敵ともいえる『日本会議の研究』著者・菅野完氏の自宅を訪ねる。「自宅で会いましょう」の意味を籠池氏の自宅だと思っていた菅野氏は大阪にいて、急遽帰宅。マンション前に群がる報道陣を前に堂々と説教。日本中が「この男は何者?」と驚くと同時に、きちんと自分たちの足で取材できないメディアの能力低下に唖然。
長男の佳茂氏は実際この会見の日まで約5年間父親とは会っていなかったらしい。また、父親のもとに菅野氏を連れて行って単独インタビューさせたのも佳茂氏だった)
★この劇的状況変化の裏側は、菅野氏の取材にずっと同行していた赤澤竜也氏の手記でよく分かる。
大阪府の私学審議会は誰が見てもおかしな認可のプロセスを踏んでいる。その部分の闇が解明されぬまま、「籠池ファミリーという風変わりな人達の引き起こした学園事件」というフレーミングされた形での幕引きを図ろうとするのは許されない。


このへんから、この事件の核心部分が少しずつ見えてくる。

もともと、この事件の核心部分は土地の不明朗な払い下げとかではなく、「教育問題」だった。
菅野氏や赤澤氏もそれを追っていた
公有財産の不明朗な取引や教育機関の新設認可についての疑惑ということでは、森友学園などより加計学園のほうがはるかに規模が大きいのだが、そちらは今のところ放置されたままだ。
⇒これ や ⇒これ 
人口減少の地に赴き、自治体に土地と補助金の面倒をみてもらうことがビジネスモデルとなっている加計学園の場合、安倍氏との近さが自治体や官界の配慮と忖度を生んだのではないか。
(略)
千葉科学大学は、銚子市に約15ヘクタールを無償譲渡されたうえ、校舎建設費として93億円の補助を受けた。宮崎県延岡市では、九州保健福祉大学の新設と学部増設に際し、110億円弱の補助金を受けている。
また、兵庫県淡路島の南あわじ市では、吉備国際大学が県立高校の廃校後の校舎を居抜きで譲渡を受けた。リフォーム費と合わせた補助金額は約23億円にのぼる。
(略)
加計氏は、家族ぐるみのつきあいの友人であるとともに、日本会議の別働隊といわれる育鵬社の教科書発行の支援団体「教科書改善の会」の賛同者に名を連ねており、そういう意味では安倍首相の「右派人脈」であり「昭恵人脈」でもある。
「加計学園と安倍首相の深い関係を示す、一枚の写真を公開しよう」伊藤 博敏


稲田朋美や安倍昭恵の言動をきちんと読み解け

3月16日:参議院予算委員会の調査チームが建設地を調査。迎え入れた籠池理事長が「安倍総理からの寄付金を受けた」と発言して大騒ぎに。
その日の夕方、野党議員たちが籠池宅を訪問。面接している最中に、安倍昭恵氏から籠池夫人のケータイに「祈ります」というショートメールが届き、議員たちも唖然。
報じるテレビ各局はいずれも勉強不足で、間違った情報やテロップを垂れ流し。

森裕子議員の所属政党(自由党)さえ分かっていないというお粗末


この頃から安倍総理夫人安倍昭恵氏の異常な行動が話題に。
夫人が口利きするとすぐに予算がつくとか、
「理事長と私が首相官邸のところに行きました。あの人(安倍昭恵)すごいですね。その晩に首相に話してくれて、 首相からすぐに連絡が入ってですね、ぐるっと回って今年に予算がつきました。 8000万円くらい入りました。あのご夫婦のホットラインすごいですね」


遅ればせながら読んでみた『日本会議の研究』黒塗り版



★このへんから、もう完全にこれは単なる公有財産不法売却事件などではなく、カルト集団がこの国を動かしているという恐るべき実態を知るまたとない「チャンス」なのだと分かってくる。
例えば、⇒これなどはぜひ読んでみるべきだ。
(稲田朋美のスピーチ)「あのぉ、私はですね、ほんとにもうこのぉ、谷口雅春先生のぉ教えをですねえ、ずっと自分の生き方のぉ、根本に置いて参りました。えー、今日、私、あのぉ、古文書のような本を持ってきたんですけれども、この、「生命の実相」というこのボロボロになったぁ本ですね……」
「だいたい弁護士とか裁判所とか検察官とか特に、弁護士会ってとても左翼的な集団なんですね。なぜかというと憲法教、まぁ憲法が正しい、今の憲法が正しいと信じている憲法教という新興宗教(会場爆笑)がはびこっているんですねぇ


生長の家創始者・谷口雅春氏(故人)を神のように信奉する人たち。それを源流として、今では神道系だけでなく、一部の仏教系やキリスト教系の新宗教などまで取り込んでいる「日本会議」という集団。
この集団のことがなぜ今まで報道されなかったのかという菅野氏の分析は実に興味深い。
「ここ10年ほど、日本会議が主要な行動フィールドとしているのは、学校現場です。性教育反対しかり、親学しかり、江戸しぐさしかり、そして日の丸君が代しかり。しかし『子供の話』として、これをどこか軽く扱ってるところありませんか?」(「なぜメディアは日本会議を報道してこなかったのか」


言い換えれば、日本会議は一枚岩でもなんでもない、ということであり、誰の心の中にも大なり小なり潜んでいる可能性がある部分に焦点をあてたことで異様な成果をあげてしまっている、ということになる。

このへんで、森友問題の背景と本質はかなりはっきりしてきた。
しかし、テレビではもっぱら、「100万円寄附が問題なのではない。問題の本質に立ち戻れ」的な解説が流行り始める。
それこそ世論の誘導操作だ。
「忖度」がすっかり流行語になってしまったが、忖度では法律違反が問いにくいし、時間が経てばうやむやにされてしまう。
そもそもなんでトンデモ忖度が出てくるのか?という背景が本質だ。
そんたくん


自民党の二階幹事長は「我々が首相の発言を信頼するのは当たり前。首相とあんな人(籠池氏)を一緒にしないでください」と言ったが、首相も「あんな人」も、思考の背景にあるものが同じだから怖いのだ。
「ちょっと頭の怪しそうなカルトな人たち」がトップのポジションに集まっている今の日本では、真面目に法律を守るより、「忖度」(正しい言葉の使い方としてはむしろ「斟酌」だと思うが)しておいたほうが自分の身が安全だと役人たちが感じてしまうからこんなことになっているのではないか。
その「背景」ってなんなんだ……というのを考える材料を国民に与える、国民に考えさせるように、事実や映像をありのまま伝えるのが、テレビをはじめ、マスメディアの仕事だろう。
マスメディアは事件を正論でさばく必要はない。ありのままを映しだして、大衆に「なんでこんなことになるのか」という背景を見せる、想像させるのが仕事だ。同様に、法を遵守し、司法に仕事をさせるのが議員のつとめであり、与党の国対委員長が「総理に対する侮辱だ」と言って一民間人を証人喚問するなどという国は、もはや民主国家とはいえない。

国会では連日野党からの追及が続くが、今ひとつピリッとしない。
そんな中、民進党の福島伸享議員は少しだけ核心に近いことに触れた。
「役人というのは、すぐ責任を隣に転嫁しなきゃダメなんです。自分が、もし課長補佐が受けたら、すぐ課長に相談し、課長はすぐ局長に相談し、局長はすぐ次官に相談して、って行って、リスクヘッジをしていくんですよ。でもそうやっていくうちに、だんだんだんだんですね、大げさになっていっちゃう可能性もあるんです。
何がシロとかね、何がクロじゃないんです。ただ、明らかに国民の納得を得られがたい取引が行われていたというのは、これは事実なんです。(略)籠池さん1人を悪者にしたって、多分国民は納得しないんですよ。とかげの尻尾を切ってるだけだと。(略)でも、本質はそこじゃない。尻尾のほうではありません。いかに、どういう力が働いて、このような…確かに麻生大臣のおっしゃるように、手続きは合法かもしれません。合法かもしれないけれども、異例の、役人が大きな裁量をもって判断をしなければ、リスクを抱えて、裁量をもって判断しなきゃならないことが、どういう力学で行われたかということが解明されないと、この問題は火が消えることがないという風に思っております。
そして、それを明らかにするのは国会の役割でありますし、それを明らかにすることに積極的に協力するのは、私は安倍総理自らの責任であるという風に思っております。(略)総理ご自身が関わってたらお辞めになるほどの問題だと言って、まさに根幹に関わるからであります」


……でもこのへんが精一杯。
一方で、市民メディアは結構頑張る。
安倍晋三首相が2015年9月に大阪を訪問する直前に、自民党山口県第4選挙区支部から安倍首相側に対して100万円の資金移動があった(情報速報ドットコム)


一連の騒動を「教育問題」としてとらえていたのは横路孝弘議員。
稲田防衛大臣を出来の悪い生徒にていねいに物事を教えるような口調で再教育しようとした?⇒これはすばらしい。
教育勅語というのは治安維持法の基に、国民教育の思想的な基礎として神聖化されていったんです。教育勅語の写しはですね、御真影(天皇の写真)とともに奉安殿に保管されて、生徒には全部暗唱することが強く求められたんですね。
特に1938年に国家総動員法が制定されますと、その体制を正当化するために利用される形で軍国主義の教典として利用されてきたんですよ。


防衛大臣に歴史の基礎から教えなければならないという異常事態。

3月23日:籠池理事長が国会証人喚問。さらなる爆弾炸裂。
文字おこしは⇒こちらなどで読める。
★その数日前に、菅野氏の旧知の人物が菅野氏にインタビューをしていた動画↓

Confess Tokyo フェイスブックより)
この9分くらいから言っていることは、まさに僕がずっと感じていたこと。「本当に怖いもの」はなにか……。

カルト宗教に動かされている日本

この時期には、ありとあらゆる日本会議人脈の人たちが籠池とは無関係と言い始める。
実際、籠池氏は加計学園人脈などに比べれば取るに足らない下っ端で、金も持っていなかった。
ほんの少しのツテを頼りに、それこそ安倍首相が言うように「しつこく」食い下がる。そのエネルギーと行動力は並外れている。
籠池氏と政界との関係については、2014年6月から教育再生首長会議の会長を務める松浦正人・山口県防府市長が、政治団体・大阪維新の会の中川隆弘府議に紹介したと認めた。
 松浦氏によると、2014年10~12月ごろ、豊中市選出の中川氏や同市の会社経営者の知人数人に籠池氏を紹介。「私も応援しているから、応援してやってくれ」と電話で伝え、協力を依頼した。籠池氏とは面識がなかったが、月刊誌で松浦氏の名前を知った籠池氏から手紙が届き、小学校の開設計画を知ったという。
ZAKZAK by 夕刊フジ 2017/03/08


それでも物事が進んでしまうことが恐ろしい。


この頃には「この騒動をここまで大きくした張本人は安倍昭恵」という認識が広まっていたが、本当にそうだろうか?
安倍総理夫人と籠池夫人との間のショートメールのやりとりが自民党から公開された。籠池氏側(?)からも「アキエリークス」なる暴露サイトが新設されて、こちらは籠池夫人のケータイ画面をそのまま撮った画像がズラズラと公開された。
籠池夫人が感情や日本語をきちんと操れない人物であることはすでに周知され始めていたが、このメールのやりとりを読んでゾッとさせられたのはむしろ昭恵氏が送信した部分だ。
「全ては必然です」「今回のことは私たちにとっても学びの場です」
「琵琶湖の竹生島に行き、祈りました。籠池先生のお役割もわかったような気がします。お辛いでしょうが、頑張って下さい。ありがとうございます」
「今はじっと我慢の時です。私もまだまだ追い詰められるのかもしれませんが、お互い頑張りましょう」
「心の垢を落とす、本当にそうだなあと思います。この国のために命を懸ける夫を思う気持ちは一緒です」
「なんでこんなことになってしまったのか、神様は何を望んでいるのでしょう」
「祈ります」「私には祈ることしかできません」
「神様はどこに導こうとしているのか。とにかく祈っています。自分たちの保身ではありません。日本の将来のためです」


……何度も出てくる「祈る」や「神様」といった言葉。自分たち(自分だけでなく、籠池夫妻も含めて)には神様から与えられた役割があり、「すべては必然」であり、祈ることしかできない。この国のために、神様の導く通りに自分たちは動いていくしかない……そうした「信仰心」のようなものが彼女の思考や行動の根底にあることは間違いない。
勘違いしている人たちの「信仰心」でこの国が動かされている、という恐怖。
「籠池劇場」などといって面白がっている場合ではない。この国は「すでに」カルト信者たちが動かしているという現実。
普通に見れば「あちゃ~、いっちゃってるわ」と思えるカルトな人たちの下で、超優秀な官僚たちが一糸乱れず動いている。こんな恐怖があるだろうか。

3月25日:菅野氏が埼玉で講演した。今回の事件が発覚する前から受けていた仕事らしい。動画はこちら↓


時間がない人は、1時間過ぎたあたりからだけでも聴いてみるといい。

  • 森友問題を疑獄事件としてだけ追及してもしょうがない。あれは「教育問題」
  • 「差別をやめろ」と声を上げなければいけない。放置すると今回のような醜悪なことに帰結する。その具体例を今我々は見せられている。
  • 倒閣運動には興味がない。構造を変えないと、誰が権力を握っても全自動忖度機が暴走してしまうことは止められない。
  • 具体的には、内閣人事局と小選挙区制の廃止・解体をしないと同じことになる。
  • 半年時間をください。必ず籠池のおっさんを転向させます。でも、転向には時間がかかるんです。(会場大喝采)
  • 2006年の教育基本法改正で、籠池のおっさんは「これは時代の風が吹いてきた」と考えて、今なら先代ができなかったこと(小学校設立)を成し遂げられると思い、突っ走った。その信号を送ったのは安倍晋三であり、安倍は自分があのときやったことの当然の結果が森友学園だと認識している。
  • レイシストを首相にいただく国になってしまい、その権力への対抗手段がしょぼい金を巡る疑獄事件告発でしかないという、この「構造」こそが恐ろしい。

……この人はちゃんと問題の本質を理解している。
「構造」を変えないとダメだと主張する菅野氏。僕もよく「システムの問題」という言い方をするが、同じことだ。
例えば、原発問題も同じ。「原発反対!」と叫んでも、原発や自然エネルギー利権で儲けようとする勢力にとっては屁でもないから事態は変わらない。「総括原価方式をやめろ!」と声を上げるのが正しいやり方だ。

「官邸主導」であることは明らか

財務省の官僚たちは、官僚の中でも超エリートが集まっていて、いちばん威張っているといわれる。その財務省ができる前の大蔵省時代(1998年)に「ノーパンしゃぶしゃぶ事件」というのがあった。
総会屋が証券会社の株を大量購入して不正取引を要求。その資金の出所は第一勧業銀行(現みずほ銀行)。第一勧銀の社員は大蔵官僚をノーパンしゃぶしゃぶなどで接待して銀行への検査に手心を加えてもらっていた……という事件。
この事件は東京地検特捜部によって捜査され、大蔵官僚ら7名が逮捕、起訴された。
あれから20年。
ノーパンしゃぶしゃぶの現場を仕切っていた若手官僚たちが、今は財務省のトップエリートになり、森友事件では重要登場人物になっている。彼らは日本会議系の政治家たちの顔色を窺いながら動くことで「安倍一強時代」を生き抜こうとしている。
金や色で買収されるのではなく、権力者への上目遣いだけで動く。贈収賄なら告発できるが、目に見えない「斟酌」や保身原理での行動は法的に裁きにくい。実際、平気で逃げ切れると踏んで「書類は残っていない」「まったく知らない」などと開き直っている。ここまで国のシステムが劣化してしまったのだ。


ここまで籠池劇場を見てきても、大衆は劇のテーマが理解できていない。おもろいおっさんや頭のおかしいおばさんたちが繰り広げるドタバタ劇だと思っている。
このままでは逃げ切られてしまうだろう。
しっかり思い起こしてほしい。
籠池証言をそのまま読み解けば、100万円を渡したのは安倍昭恵ではなく安倍晋三なのだ。
「ひとりでさせてすみません」「どうぞお使いください」「安倍晋三からです」……なのだ。
昭恵氏は夫の使いであって、自分の金を寄附したわけではない。
「内閣総理大臣夫人付」という正式役職名を持つ谷査恵子氏の部屋は首相官邸にある。
「首相官邸には内閣総理大臣夫人付の部屋があります。机もあって2人の公務員は国家公務員・役人は常駐をしております。つまり、谷査恵子さんは財務省との交渉を官邸の中にいて官邸から電話をしたわけです。そうすればそれを受ける役所の人たちがいったいどう思うか、官邸から来た、まぁ当たり前ですが、官邸から電話をしているわけですから、その意味は大変大きいというふうに思います。」
福島みずほ(希望の会=自由・社民) 2017年3月24日 参議院予算委員会)


だから財務省に電話するときも首相官邸からのラインだし、籠池氏に送った資料なども「内閣総理大臣官邸」の名入り封筒で送っている
官邸に常駐している谷査恵子氏の実質上の上司は内閣総理大臣秘書官・今井尚哉(たかや)氏であり、谷査恵子氏と同じ経産省出身。
第1次安倍内閣のときから内閣総理大臣秘書官になり、アベノミクスの「新三本の矢」政策、原発再稼働など、安倍政権の政策を主導していると言われる人物。
今井氏と森友学園問題の接点は2015年9月4日の食事会で、森友学園に関する重要な話し合いがあったと言われているこの時期に首相と接触……(情報速報ドットコム)


この大阪での食事会の会場となった海鮮料理店「かき鐵」は、公明党の故・冬柴鉄三元国土交通相の次男・冬柴大(まさる)氏が経営し、大氏も食事会に同席。
冬柴大氏はりそな銀行高槻支店次長という経歴を持ち、退社後に「冬柴パートナーズ株式会社」を設立し、現在は同社代表取締役。冬柴パートナーズ株式会社は業務内容にコンサルティング、助成金申請援助を含み、人脈紹介や助成金の申請援助を得意としている会社だという。
同日(2015年9月4日)、国土交通省「平成27年度サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)の採択プロジェクトの決定について」で、森友学園の瑞穂の國記念小學院(=安倍晋三記念小学校)」の校舎及び体育館が選出され、6200万円の補助金交付が決定された。
「徹底検証不可欠アベ友事案2015年9月3-5日動静」植草一秀の『知られざる真実』


キーパーソンが冬柴元国交相の息子では、公明党の議員は国会でも大阪府議会でも質問する気にはなれないでしょう。これで「不可解なこと」の一つへの疑問は氷解します。問題の土地の評価を民間の不動産会社ではなく、国土交通省の出先機関、大阪航空局が行ったことも「冬柴人脈」を考慮に入れれば、納得がいきます。
「森友学園問題で公明党が沈黙する理由」長岡 昇



↑今は削除されているが、塚本幼稚園のWEBサイトに掲載されていたりそな銀行との提携宣言

森友学園塚本幼稚園のホームページにりそな銀行歌島橋支店の広告が掲載されている。森友学園のメインバンクはりそな銀行だと推定される。建設費用21億円を融資した銀行はりそな銀行か?
(2015年9月4日安倍総理は「りそな銀行」出身者の冬柴大議員の経営する「かき鉄」で会食を行っている わんわんらっぱー)

「ひとりでさせてすみません」の意味

ちなみにこの9月4日午前10時から正午までの間、近畿財務局9階会議室で、森友学園の小学校建設工事を請け負った設計会社所長、建設会社所長が近畿財務局の統括管理官、大阪航空局調査係と会合している。また、前日の9月3日には安倍首相は官邸で財務省の岡本薫明官房長、迫田英典理財局長と会っている。
翌、9月5日には安倍昭恵氏が塚本幼稚園で講演し、「ひとりでさせてすみません。どうぞお使いください。安倍晋三からです」と100万円を渡したと籠池泰典氏が証言している。
100万円に関する籠池証言の中で最も注目しなければいけないのは「ひとりでさせてすみません」という言葉だ。こんな台詞を籠池氏が創作するとは思えない。
籠池氏は「寄付金」と言っているが、おそらく出した側は寄付金だという認識はなく、「金もなく、地位もないのによく頑張っているから少し小遣いを渡しておくか」というくらいの気持ちだったのではないだろうか。だからこその「ひとりでさせてすみません」なのだ。加計学園に比べれば森友学園など雑魚も雑魚。100万円程度のはした金で騒がれるなど迷惑だ、という思いが今でもあるに違いない。
「籠池は雑魚だし籠池の妻は言動がいかれていてちょっと危ないから表だってベッタリとバックアップすることは難しいが、今のところ小学校教育の場ではあの夫婦以外には愛国教育を熱心に実践しようとしている人材がいない。熱心さは本物だから、お駄賃くらいは与えて、もう少し頑張らせておこうか」くらいの気持ちがあるのだろう。その空気はもちろん安倍昭恵氏も共有しているから、自然に「ひとりでさせてすみません」といった言葉が出るのだろう。
言うまでもないが、昭恵氏のフェイスブックでの反論は官邸側が書いたものだし(文字遣いや言葉の選び方が典型的な官僚文章。昭恵氏はあのような文章は書かないし書けない)、彼女は「渡していない」とは言っていない。「記憶がない」と逃げているだけだ。

……と、ここまで見えてきていても、おそらく100万円授受を証明することは難しいだろう。結果、現政権は支持率を大きく下げることはないだろうし、日本会議人脈の権力支配構造の中で動いた政治家や官僚たちが処罰されることもないのだろう。
松井一郎大阪府知事が追い詰められ、同族嫌悪の感情を剥き出しにして首相官邸と本気で内輪喧嘩を始めて暴露合戦になるといった状況にでもならない限りは、もうすぐ忘れられてしまうだろう。
しかし、今ここで政府の暴走を止めないと、本当に取り返しがつかないことになる。
このスキャンダルが出てきている間にも、共謀罪は閣議決定され、教育勅語を「憲法や教育基本法等に反しないような形で教材として用いることまでは否定されることではない」と閣議決定され、成績をつける「特別の教科」に格上げ(2019年4月から)される小学校の道徳では、教科書の中の「パン屋」が「国や郷土を愛する態度などを学ぶという観点で不適切」として和菓子屋に修正され、中学校で習う武道に「銃剣道」が追加され……と、着々と「愛国教育改革」が進められている。



教育現場の愛国主義化、全体主義国家への動きはどうにも止まらないし、多くの国民はそれを止めようともしていない。

繰り言を重ねても、未来を切り開くことはできません。どんな社会も、一人ひとりの人間が集まってできています。一人ひとりが、今いる場所でできることを積み重ねて、この社会を変えていくしかありません。森友学園問題は「今、あなたにできることは何か」と問いかけているとも言えます。
「森友疑惑は思想事件である、という卓見」長岡 昇

↑これはまったく同感だ。
「一人ひとりが、今いる場所でできることを積み重ねる」しかないと思うから、僕も吐き気と絶望感をこらえながらこんな長い文章を書いている。こんなことをしても非力だし、なんの得にもならないどころか、ますます仕事を失い、どん底状態にいる今の自分をさらに苦しめることになるかもしれないと分かった上でやっている。

3月20日:籠池泰典氏が理事長を辞任した後に引き継いだ娘の籠池町浪(ちなみ)氏名による「再出発への声明」ともいうべき文書が公開された。

籠池町浪 新理事長名で出された「声明」の一部


「2006年改正の教育基本法に基づく前理事長の教育理念と方針および指導法を批判的に総括し」と言いきっている点に特に注目したい。
日本会議が成功させた教育基本法の愛国主義化を真っ向から否定し、「今後は教育基本法が1947年に制定された際に示された『われらは個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性豊かな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない』との指針を常に念頭に置き……」と宣言している。
ただのお為ごかしでは書けない文章だと思う。

菅野氏が講演で語った「必ず転向させます」という約束が、いち早く実現しそうな期待を抱かせる文章だ。(彼が書いたのではないかという推測もできるだろうが)

これを読み、思わず、近い将来、こんな宣言(↓)が日本政府からも出ないだろうかと夢想してしまった。

再出発するにあたり、前総理時代の政治手法を批判的に総括し、なによりも生命と人権の尊重を基本におき、その上で、国民の健やかな幸福のために、過度の道徳・規範の押しつけにならない、特定の思想信条に拘束されない、そして国民に対して、健康、安全で幸福な生活のために必要な基本的な社会インフラと環境を守りつつ、憲法に明示された「平和のうちに生存する権利」をめざす政治をしなければならないとの指針を常に念頭に置きつつ、諸問題に対応してまいります。




タヌパックスタジオで生まれた音楽の1つ『アンガジェ』(↑Clickで再生)



ガラケー族生き残りへの道2017/01/31 14:57

家の中に残っているガラケーたち

FOMAガラケーが買えなくなる

昨年11月、docomoが「ガラケーは出荷終了です」と宣言した。
こうなると、FOMAの停波とかもいずれは避けられないのだろう。
今でもガラケーユーザーは相当数いるわけで、これから先、中古端末などに高値がつくことになるのかもしれない。
すでにAmazonでも新品は「残り1点」とか表示されているのがあるし、そもそも種類が少ない。値段は、今はまだ1万円台で買えるのもあるが、すでに3万円台以上になっているのもある。
端末が入手できなくなるのを恐れて今から予備機を買っておくという手もあるかもしれないが、それを使う前に停波になったりしたら目もあてられないし……。
そんなわけで、「スマホは嫌いだ」というガラケー族が生き延びていく道をいくつか探ってみた。
はたしてどこまで頑張れるのか、ガラケー族。
 
 
今ならまだ買える……?↑

なぜガラケーじゃなければ嫌なのか?


FOMA(iモード)ガラケーは入手困難


ガラケー族がスマホを拒否する理由はなんだろうか。

  • 1)基本料金が安くないと困る
  • 2)モバイルSuicaは絶対に必要
  • 3)端末形状として液晶画面剥き出しで重たいスマホを常時身につけていたくない
  • 4)スマホはバッテリーがすぐに減っていくので煩わしい
……とまあ、こんなところだろう。
このうち1)については、MVNO(Mobile Virtual Network Operator=仮想移動体通信事業者)なるものが群雄割拠し、格安スマホがどんどん出てきたから、みっちり調べればdocomoのガラケー契約(FOMA契約)と同等、あるいはそれ以下の料金でスマホを使うこともできるかもしれない。
2)も、最近ではiPhoneもApple Payというのが出てきて、モバイルSuicaが使える新モデルが出てきた。
となると、3)と4)あたりがいちばんの理由になるのだろうか。特に僕の場合は3)が大きい。生理的に嫌なのだ。

で、docomoもauも、ガラケー族がみんなスマホに移行することはありそうもないと気づいて、アンドロイドOSのガラケー風端末(「ガラホ」)を作っている。
docomoだとSH-01JとP-01Jというのが最新モデルで、どちらもOSはアンドロイドなのだが、外見も使い勝手も従来のガラケーそのもの。
高速通信のXiで通信できて(FOMAも拾うようだ)、音声も明瞭になったという。一般のアンドロイドスマホのようにアプリをダウンロードしてインストールすることはできず、メールやWEBブラウザ関連以外はLINEと地図アプリくらいしかインストールされていないが、ガラケー族にはそれで十分だろう。
Felicaには対応しているからモバイルSuicaは使える。
で、料金も「カケホーダイ」(月額2200円)か「カケホライト」(1回5分以内の通話は無制限定額で月額1200円)のどちらかを選び、それにケータイパック(通信データ量によって300円~上限4200円)を組み合わせればいいので、税込でも月額1944円から維持できる。
これなら現在うちで支払っている通信費(僕は約2000円、助手さんは2500円~3000円弱)と比べても、むしろ安いくらいだ。
この端末が、新規加入か乗換だと実質0円(総務省の指導もガラケーには緩いらしい)。機種変更でも約2万円。
となると、FOMA契約者の端末が壊れた場合、新たなFOMA端末が中古でもかなりの値段を出さないと買えなくなってしまった以上、これに契約変更するほうが現実的だと思える。

というわけで、自分用や助手さん用にFOMAガラケーの予備を買っておくのは見合わせた。
今の端末をできるだけ使い続けて、壊れたときに考えよう。

義母用にFOMAらくらくホン最後の1台を注文

FOMAがじり貧になるとはいえ、契約変更などの手続きが難しい認知症老人名義のガラケーなどは、なるべく今のまま使わせたい。
義母がガラケー(らくらくホン)の裏蓋を紛失してしまい、今は裏が剥き出しのままなんとか使っているらしい。そこで、とりあえずFOMA用のらくらくホンが1台だけ新品で某ショップに残っていたのをAmazonで注文した。
約2万円。
SPモードへの契約変更などは、本人をdocomoショップに連れて行かないと、委任状やらなにやらで面倒そうだし、今のSIMカードをそのまま挿せばいいだけの方法を選んだのだ。
ただ、親父のNTT回線解約ができなくて苦労させられた体験を踏まえると、義母のケータイも早めに子供名義で再契約しておいたほうがいいかもしれない。身体が動かなくなってからでは、解約させるのも面倒なことになりそうだから。

義母用に購入したFOMA仕様のらくらくホン。もうすぐ入手困難になるはず

FOMAの停波はいつか?

FOMA端末を大切に使っていたとしても、FOMAそのものが終わってしまったらどうにもならない。
docomoの例でいうと、FOMAになる前にはmovaという一世代前の通信規格の時代があり、2008年12月に新規利用申込が終了し、2012年3月31日に停波したという歴史がある。うちでも一時期、FOMAとmova両方を自動切り替えで受信できるケータイなんてのを使っていたことがある。
FOMAはまだ契約は可能だが、端末が入手できない以上、新規契約申込み終了は目前だろう。
2012年から契約者数は減少していて、今後は周波数帯再編もあり、FOMAが使っていた帯域の一部が段階的にXi用に転換されているそうだ。しかし、キャリア会社が思っていた以上にガラケーユーザーはしぶとく残っていて、端末もなかなか壊れないし、海外のケータイとの関係(ローミング)もあるから、完全停波できるのはまだまだずっと先、という話も聞く。

au回線で格安スマホを新たに購入してみる

そんな面倒なことをしているのなら、さっさと格安スマホに乗り換えればいいのに、という人は多いと思う。
僕はスマホを常時持つのは嫌だが、上京するときなどは乗換案内アプリは必須なので、iPod touch6とモバイルルーターを別に持っていく。
これは助手さんも同じスタイルなのだが、助手さんのiPod touchは6ではなく4のままなので、使えるアプリはどんどん減っていき、ネット接続も遅くて、しょっちゅう落ちるという。
格安スマホが出てきた今は、敢えてiPod touch+モバイルルーターである必要はない。助手さんと僕が別々に家を出ているときは1つしかないモバイルルーターを共有できないし、助手さん用には新たに格安スマホを持ったほうがいい。
調べると、MVNOではおかわりSIMのb-mobileはとっても速度テストの成績が悪い
ここでいい成績を出しているmineoのサイトを見ると、arrows M02という富士通製の1つ古いモデルを24000円で売っていて、データ通信だけなら月額700円から。
もっと安い端末もあるのだが、オサイフ機能がない。当面、モバイルSuicaはガラケーで使うとしても、将来、助手さんが完全にスマホに乗り換えることもありそうなので、端末にはやはりおサイフケータイ機能はほしいから、このモデルあたりが最低ラインだろうか。

arrows M02


で、ここで「ん? 待てよ」と気づいた。
mineoはdocomo回線にもau回線にも対応していて、どちらも選べる。
そこで、ここは敢えてau回線のほうを選ぶという手があるな、と気づいた。
3.11直後に痛感したのは、いざというときに通信手段は複数持っていたほうがいい、ということ。
FOMAがつながらなくなったとき、auやmova端末はつながったとか、いろいろな事例があったようだ。あのときは川内村にいて、翌3月12日に原発爆発をテレビで知ってすぐに避難したのだが、前日地震直後、ケータイが瞬時に不通になった中で、まだバックアップ電源で動いていたひかり電話回線から親父のauへはつながった。また、隣町に出たら、持っていたauから神宮寺(白河市)のdocomoへはつながって、一夜泊めてもらえたので助かった。いざというときにdocomoだけでなくau回線端末を持っているのは意味がある。
しかも、都内の速度テストでもauのほうが速いというのだから、ここはauを選んでおけば、我が家では、固定光回線(NTTのフレッツ光)、Xi回線(モバイルルーター用に契約しているb-mobile)、docomoのFOMA回線(従来のガラケー)、auのLTE……と、4種類の通信回線を使えることになる。大災害が起きたときなども、どれか1つはつながる、ということはあるかもしれない。
arrows M02はWi-Fiのルーター代わりにもなる(テザリング機能)ので、docomoやフレッツ光が不通になってauだけ生きているというような状況がもしうまれたときは、このスマホをルーター代わりにしてMacBOOKやiPadを使うことも可能だろう。

mineoの契約はいちばん安いauのデータのみの契約にするつもりだが、月額100円プラスで050電話もつけられるようだし、普段家にいるときはWi-Fi接続で使えばいいので通信料はかからない。外出時だけなら、月に500MBも使わないだろう(超過しても低速ならつながる)。

↑Amazonでこの「クーポン番号」を買ってから申し込むと、初期費用3240円がかからないので2200円くらい得になる

そんなわけで、助手さんだけもうすぐスマホデビューする。その後も、しばらくは通話はdocomoのFOMAガラケー(カケホーダイ)で、モバイルSuicaもガラケーでやるはずだけれど。

ちなみに、docomoのスマホユーザーがガラケー(ガラホ)契約に切り替えたい場合などは、auの新規契約をしたほうがdocomoに違約金を払ってでも安くつくケースが多いともいう。auではガラホの新規契約では端末代が実質無料になるからだとか。
なんだかなあ……。
通信関連のことはパソコン環境よりはるかに複雑で、変化の速度も凄まじく、裏技の裏技みたいなのが次々に出てきて、とてもついていけない。
こんなことを考えなければならないために、時間が奪われていくのが腹立たしい。





ブレーキとアクセルの踏み間違い事故は「踏み替える」から起きる2016/11/16 14:50

AT車ではこれが「基本」ポジション

「踏み直す」から起きる「踏み間違い」


動画で説明↑
連日、高齢者ドライバーによる事故報道が続いている。そのほとんどは「アクセルとブレーキの踏み間違い」。
テレビのワイドショー番組では「踏み間違い事故を起こすのが怖いのでAT車からマニュアル車に買い換えたという高齢者もいました」と紹介していて、「え? 何それ?! かえって危険では?」と思った。
で、思い当たった。教習所ではAT車全盛の今でも、MT車時代からの教え方をしているんじゃないか……と。
AT車というのは、放っておいても車は前に進む。ノッキングして止まったりもしないから、足は基本ブレーキペダル位置を「ホームポジション」にして、アクセルを踏むときは足を右に傾ける、とするのが合理的。
多分、プロドライバーの多くは誰から教わるでもなくAT車を運転するときはそうしているんじゃないだろうか。
このごく単純なことを明示するために、こんな動画を作ってみた↓



この「かかとは浮かすな!」は、自動車メーカーなどでは新入社員にまっ先に叩き込むという話も聞いた。
同じような理屈で、「ワンペダル」なるものも売られているのだが↓

アクセルは足を右に倒す方式の「ワンペダル」


これだと普通の車を運転したときに困る。運転の癖を変えるだけで対応したほうがずっといい。



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4Kテレビ商法は「老人詐欺商法」か2016/07/05 18:14

総務省のサイトに掲載された「お知らせ」

4K放送が地上波で始まることはない

総務省が6月30日付けで
現在市販されている4Kテレビ・4K対応テレビ※1を利用して、衛星基幹放送による超高精細度テレビジョン放送を視聴するためには、平成30年の実用放送開始にあわせて発売予定の機器が別途必要になります。

……という注意喚起を掲載したことで、ネット上では一騒動起きているようだ。
なにを今さら、と思う。
4Kテレビ放送についてまとめれば、
  • 4Kテレビ放送が地上波デジタルで実現する可能性はほぼない(少なくとも熟年世代が生きているうちにはありえない)
  • 現在「4Kテレビ」と銘打っている、4K放送対応チューナーを内蔵したテレビで4K放送を見る方法は、①スカパー!プレミアムサービスで見る ②ひかりTVなどインターネット経由で見る ③4K対応のケーブルテレビで専用セットトップボックスを使って見るの3つしかない
  • スカパー!プレミアム放送は「スカパー!4K総合(Ch.596)」「スカパー!4K映画(Ch.595)」の2つだが、これはBSアンテナでも受信できる110度CSではなく、専用アンテナが必要。しかも有料放送
  • 今年夏以降にBS-17(いままでデジタル地上波の難視聴地域対策に使っていた帯域)で試験放送が始まるが、「試験放送」なので内容はあまり期待できない

……と、これだけ知るだけでも「じゃあ、そんなもの買う必要はないじゃん」ってことはすぐ分かる。
BSとCSで4K実用放送が開始されるのは2018年の予定だが、これは従来の放送とは仕様が違うために、まだ製造もされていない専用外付けチューナーが必要で、しかもアンテナも従来のBS/CSアンテナでは受信できない可能性が高い。特にマンションなどで共用アンテナを使っている家庭では、個人では対応できない可能性がある。

……という、どうにもならない代物なのだが、すでに薄型テレビ販売において4分の1が4Kテレビになっているという(JEITA 一般社団法人 電子情報技術産業協会調べ 2016年5月度調査結果)。

老人詐欺商法が日本経済を救う?

高額な商品だけに、買えるのは熟年層以上だろう。デジタル家電に強い(多分)若い世代が4Kテレビを買っているとは思えない。となると、購入している人たちのどれだけが「4Kテレビの実態」を知って買っているのかは極めて疑問だ。これを買えば、今までのテレビよりきれいに映ると単純に思いこんで買っているいる人が相当数いるはずだ。
「オリンピックも始まるし、ここは思いきって買い換えようか」なんて人もいるのだろう(そういう人たちに限って、地上波しか見ていなかったりする)。

となると、もはやこれは「シニア世代詐欺商法」と呼べるのではないか? 
前回の「NTTが「コラボ契約」に切り替えた客の回線障害対応は門前払いする件」でも書いたが、養父は使えなくなった光回線の利用料(月額1万円弱)を何年にもわたって自動引き落としで払い続けていた。「ルーターの電源を抜いているから使用料はかかっていない」と思い込んでいたらしい。
デジタルライフの進歩、複雑さについていけない熟年世代は多い。そういう人たちからうまく金を巻き上げる商法だけでも、現在の日本国内の経済はずいぶん支えられているのだろう。
それでいいのか?
こんなことを続けていたら、日本はますます世界から取り残され、本当の技術革新や合理的な国家運営から外れた外道な道を進むことになるだろう。

4Kテレビは買ってはいけない

スポーツの生中継とかでない限り、テレビ番組をリアルタイム視聴するなんて考えられない。(そういうテレビの視聴方法をしていると馬鹿になる)
テレビを買う場合にいちばん重要なのは録画・再生機能だろう。
  • 外付けHDDで録画でき、HDDが複数台増設できる
  • 内蔵チューナーが最低でも地上波・BSともに複数基あり、W録画(同じ時間帯の2つの番組を同時録画)以上ができる

この2つの機能が最重要だ。
ところが、50V型の大型テレビなのに内蔵チューナーが1つしかなくてシングル録画しかできない(録画している間は他のチャンネルが見られない)、なんていうテレビが存在する。そんなものは役に立たない。
4Kなどというものに金をかけているために、最重要である録画機能がおろそかになっている機種も見うけられる。そんなものを買ってはいけない。
さらには、デジカメの無意味な高画素化と同じで、液晶パネルを高画素化することで、色再現能力などが犠牲になる可能性があることも忘れてはいけない。
現行のデジタル放送でさえ、多くの人は2.5メートル離れると720pと1080pの区別ができないといわれている。ましてや私のように老眼&近視の人間は、4Kの高精細映像を認識するにはとてつもなくでかい画面を間近に見るといった視聴方法しかないだろう。

例えば、NHKの連続テレビ小説や大河ドラマは、地上波では1440×1080iで、BSでは1920×1080iで放送されているので、地デジで見るよりもBSで見たほうが「きれい」なはずだが、その差を感じられる人、気づいている人がどれだけいるだろうか。
オフセット印刷も同じで、200DPI以上なら精細さの差は肉眼ではほとんど区別できない。オフセット印刷の標準DPI(解像度)は350DPIなので、これを400DPIや600DPIに上げても意味がない。
なんでもかんでも解像度を上げればいいというものではないのだ。最重要なのは見ているもの(作品や情報)の質なのであって、解像度ではない。

4Kテレビが出てきた唯一のメリットは、従来解像度のテレビの値段が下がっていることくらいだろう。ただし、これも、メーカーが4Kテレビに力を入れているため、2Kテレビで基本性能を重視したよいモデルはどんどん消えていっている。その意味では、「テレビを買い換えるなら今」なのかもしれない。もちろん、複数チューナー内蔵、録画用複数HDDを接続可能な高性能2Kテレビを買うのである。

よいお買い物

テレビ、洗浄便座、電動アシスト自転車などなど、「幸福になれる買い物」のヒント集。失敗しないための最低限の知識



ものを大切に長く使うと「罰せられる」国2016/05/14 22:37

都知事の公用車として有名になった黒塗りのトヨタアルファード(トヨタのサイトより)
舛添都知事の「公用車」として有名になった黒塗りのトヨタアルファード (トヨタのサイトより)

家とか自動車のような「長期にわたって使用される商品」を耐久消費財という。高価な物だし、貴重な資源とエネルギーを使って作るものだから、性能はもちろんのこと、長く使えるかどうかが重要になる。長く使うことで初期投入の資源やエネルギーの「元を取る」わけだ。
まだ使えるけれど、飽きたから買い換える、というようなものではない。そういう消費行動をする人は「ものを大切にしない」「資源を無駄遣いする」ということで軽蔑される(はずだ)。
しかし、日本という国は、いつの間にか「使い捨ててどんどん買い換えることこそがよい国民の行動である」「ものを大切に長く使う人は経済発展の足を引っ張るので企業や富裕層にとっては都合が悪い。よって罰を与える」という法律を作り、実施するというとんでもない国になってしまった。

先日、自動車税を支払った。
登録後約17年を経ている我が家の1台(スズキの1600cc乗用車。2003年に中古を37万円で購入した)は、「車齢13 年超のガソリン車」ということで重課税され、本来なら1600ccガソリン車は39500円のところ、45400円である。去年までも約10%の重課税で腹を立てていたが、今年はさらに5%上乗せされた。
「車齢 11 年超のディーゼル車、車齢 13 年超のガソリン車・LPG車の自動車税重課割合を概ね 10%重課から概ね 15%重課に引き上げる」という税制改悪を国土交通省が要望し、認められたからだ。
軽自動車や原動機付き自転車など、田舎では日常生活の足として欠かせない車も今年度から自動車税を上げられた。軽(660cc以下)の自家用車は従来7,200円の自動車税だったが、今年からは13年超の車は12,900円で、なんと約80%も引き上げられた。原付バイクは1000円から2000円に、100%増税だ。

一方で、「エコカー減税」はさらに拡充させた。
折りしも、舛添東京都知事が法外な出張費を使いまくり、正月に家族でホテル滞在した費用を公費で支払い、公用車で湯河原の別荘までほぼ毎週行き来していたことが報じられているが、舛添知事の公用車とはトヨタのアルファードという車だ(写真↑)
平成26年型というから、都知事就任後に購入させたのだろう。
アルファードのHYBRID Executive Loungeという上級グレードのお値段は約700万円(希望小売価格7,036,691円 税込)である。特別仕様の「ロイヤルラウンジSP」というカスタマイズを施すと約1500万円である。
運転手付きの「走る知事室」がどのグレードなのかは知らないが……。

旬な話題だったのでつい都知事の公用車に話を振ってみたが、問題は「公用車」の車種やお値段ではない。車両総重量が2.6トンあるこの巨大な車がハイブリッド仕様で「エコカー」であると認定されていて、税金を大幅免除されていることだ。
アルファードのHYBRID Executive Loungeはエコカー減税対象車であり、自動車重量税も自動車取得税も100%免除(合計約17万5000円)、自動車税も翌年は3万3500円減税になる。
「合計24万6800円も税金が免除されますよ」と、トヨタも胸を張って売り込んでいる。

トヨタといえば「いつかはクラウン」という名コピーがあった高級車クラウンも思い浮かぶが、この最上級グレード「マジェスタ“Fバージョン"」(車両総重量約2.1トン。約700万円)もエコカー減税対象車で、自動車重量税、自動車取得税、自動車税を合わせて約24万7200円の税が免除される

こういう車を1台製造するのに、一体どれだけの資源とエネルギーを使っていることか。その結果、移動させているのは公共交通機関を使わなくていい強者ひとりだったりする。これこそ「環境負荷の高い車」ではないのか?

いうまでもなく、この手の車をポンと買える人というのは相当な富裕層だろう。自分で運転せず、専用の運転手付きで乗っている人も多い。そういう車はエコカー減税だのグリーン税制だので何十万円も税が免除され、田舎での生活必需品として軽自動車やバイクに乗っている人たち(一般の納税者)には増税や重課税という「罰」を与えてむしり取る。
しかも「古い車は環境に負荷をかけるから」という大ウソをついて、車重が1トンもない軽自動車は増税し、2トンを超えるような高級車でも「エコカー」だと言い張って自動車重量税さえ免除する。そんな国が他にあるのだろうか?
どうしてもむしり取りたいのなら、正々堂々と「増税したいが、政権を支えてくれる富裕層ではなく、騙しやすくおとなしい大衆から取ったほうが楽だから」と言ったらどうだ。

毎年、この時期が来るたびに何度でも言おう。
こんな国でいいのか、と。

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新・マリアの父親

たくき よしみつ・著 第4回「小説すばる新人賞」受賞作『マリアの父親』の改訂版。
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再エネ比率の高い新電力と契約したい……という無知無理解2016/04/17 11:48

我が家もスマートメーターになったが……
我が家の電気メーターも新電力契約のためスマートメーターになった


どんな電気を使うかを選べると思うのは誤解

新電力への契約切り替え率はまだ1%に満たないらしい。
うちでは3月中にいちばん安くなりそうな(年間で1万円くらいは安くなりそうな)新電力事業者と契約を交わした。といってもネットで必要事項を書き込んで送信しただけで、紙の書類などは1枚たりともやりとりしていない。気持ちがいいほど簡単だった。
それにともない、東京電力の関係事業者が電気メーターの取り替え作業にやってきた。送電網は東電のものをそっくりそのまま使うわけで、メーターの交換も当然東電がやる。

さて、ここでヒステリックな反論を予想しつつも、重要なことを書いてしまおう。

東京新聞に、電力自由化「発電方法示して」声拡大 地方議会、政府内にもという記事が掲載された。
 東京都武蔵野市議会は3月28日、事業者に電源構成などの開示を義務付けるよう国に求める意見書を全会一致で可決し、安倍晋三首相や林幹雄経産相ら宛てに郵送で提出した。
 電源構成は原子力や再生可能エネルギー、火力など各電源からどんな比率で電力調達しているかを示す情報。意見書では「消費者は電気料金の抑制のみを望んでいるわけではなく、より安全で持続可能なエネルギーを望んでいる」と指摘する。
 電源構成が分かれば、消費者は「環境を汚染しない再生エネを選びたい」「原子力は嫌だ」「二酸化炭素(CO2)排出量の多い石炭は避けたい」など、自分の考えに合った多様な選択が可能になる。


……これは東京新聞の意見ではない。武蔵野市議会に意見書を提出したという市議会議員の意見だ。
これに類する意見はずいぶん前からネット上でもいっぱい読まされたが、最初にはっきり言おう。そんなことは妄想であり、単純な誤解、無理解だ。




上の円グラフは日本の電力がどのように発電・調達されているかの構成比だ。平成23年というのは福島第一原発が爆発した2011年。全国でまだ動いている原発があったから、原発は10%残っている。
それが2014年には原発はゼロ。その分、増えたのはLNG(液化天然ガス)と石炭。火力でも石油は減っている。水力が変わらないのは、全国の発電用ダムは増えていないし、既存の水力発電所はフル稼働しているということだろう。
水力を除く再エネ(太陽光、風力、地熱、バイオマスなど)は1.4%から3.2%に増えているが、これは政府が高額な買い取り価格を約束して、その分を電気料金に上乗せすることを合法化したからだ。それでも3.2%にすぎない。
その結果、全国あちこちでメガソーラーやら巨大風車がどんどん建ち、自然破壊や低周波による健康被害が増えたわけだが、日が照らなければ発電しない太陽光発電や、風がいつ吹くか分からないから発電予測すら立たない風力発電だけで電力を安定供給することなど不可能だし、かえって資源の無駄遣いになるということはさんざん書いてきた通りだ。風のない雨の日や夜間には、風力発電や太陽光発電の発電量はゼロである。こうしたものを増やせば増やすほど、同じ発電能力を持つ火力発電所を別に作らなければいけなくなる。
で、問題の「新電力業者の電源構成」を公開しろという話だが、例えば、自社が売る電力の6割が再生可能エネルギーであるということをPRしている事業者がある。
再エネの比率がそこまで高いということは、言い換えれば、その事業者が自社で発電している電気の総量はわずかであり、多くは提携先である大電力会社(例えば東京電力)に依存しているということを意味している。

公開すべきは「電源構成比」ではなく「自前の発電能力」

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自社での発電実績が乏しくても「再エネ比率」が高いとPRする事業者を選ぶとこうなる。ちなみに再エネ比率で謳っている数字は「設備容量」だから、実際にはその数分の1しか発電できない。


上の図(クリックで拡大)は、電源構成比で再エネ比率が5%の事業者Aと60%の事業者Bがいたとして、実際にはどういうことになっているのかということを説明するために作成した。
事業者Aは一般家庭に電気を売ることができるようになった今年4月以前からPPS(新電力事業者)として企業や自治体などに電力を供給している実績があり、自社の発電所も所有して実際に発電事業をしている業者だ。この事業者Aの売電実績を100とする(事業者Aの下のグラフ)。
事業者Aの売電実績は100だが、自社発電所の発電能力は82(上のグラフ)で、足りない分の18は提携事業者(大手電力会社など)から買っている。
事業者Aが所有している発電設備のうち再エネと呼ばれるもの(ほとんどは太陽光発電)の比率は5だが、この数字は発電実績ではなく設備容量なので、実際にはその15%程度しか電気は作れない(太陽光なら夜間や曇りの日は発電できないから、当然そうなる=「設備利用率」)。発電実績のグラフで、自社の発電能力のうち再エネの分(水色の部分)が減っているのはそういう意味だ。

一方、再エネ比率が60%ですよと謳っている事業者Bは、実際には自社での発電能力は10しかない。しかし、「自然エネルギーを大切にしている事業者から電気を買いたい」という人たちからの契約を増やして、売電実績は事業者Aの倍の200に達しているとする。
となると、足りない190以上の分はすべて提携他社から供給される電気なわけで、全売電量に占める再エネの比率は5%を切ることになる。

つまり、原発の電気を使うのは嫌だから、電気代が高くついても再生可能エネルギーを中心とした事業者と契約するという「意識の高い」人が増えれば増えるほど、その新電力事業者が提携している(原発を抱えている)大電力会社が発電している電気が契約者に回されることになる。

中には、契約した新電力事業者の「電源構成比」通りの電気が自分の家に届くと思い込んでいる人もいる。送電網が今までと同じ(東京電力管内なら東電の送電網)なのだから、そんなことありえないことくらい、ちょっと考えれば分かりそうなものだろうに。
送電網に入る電気はあらゆる発電所から送られてくる電気が混ざっている。どう配分するかは発電所と消費地の距離や天候の変化などによって決まる。どの事業者と契約しようが、契約者の家に届く電気の発電元は選べない
だから、公開するべきなのは、新電力事業者がどれだけの発電実績(能力)を持っているのかというデータだ。トータルの発電能力が小さいのに「うちは再生可能エネルギーで発電しています」などと売り込んでいる業者は、PR材料としてあちこちに(優遇措置で)メガソーラーや大型ウィンドタービンを建てて、実質はほとんど提携先の大電力会社の電気を転売しているだけということになる。
もっと穿った見方をすれば、そういう業者は最初から本気で発電する気はなく、提携先の大電力会社の経営を黒子のように裏で支える取引をしたいのではないか……。

公開するべきなのは、新電力事業者がどれだけの発電実績(能力)を持っているのかというデータだというのは、こういう意味である。

火力発電施設を持たない新電力会社は無責任だ

ここでさらに注意したいのは、自社の発電能力といっているものがどんなものなのかということだ。
実際に自社で所有している発電所のことなのか、それとも全国のソーラー発電事業者などから「1円高く」買い取った電気をも「自社の発電能力」といっているのか。そこをはっきりさせてほしい。

⇒ここに、「東京電力エリアで電力供給サービスを提供している新電力事業者(PPS)の一覧(25社)」という資料がある。
数字は自己申告のようだし、いつの時点でのデータなのかもいまひとつはっきりしないが、非常に興味深い。
例えば、最新月実績で990,300 MWhを誇る「株式会社エネット」は、「直近の1年間で約12,033GWhの供給実績」があるとされているが、同時に「年間自社発電量は0 MWh」とある。これが間違いでなければ、要するに多くの提携事業者から電力を買い取ってそれを再販している大手ということだろうか。

年間1,578,674 MWhで第4位のエネオスでんきは、年間自社発電量:786,135 MWhとなっているから、それなりの規模の発電所を自己所有しているということなのだろう。

何かと話題の多いソフトバンクでんきは、年間供給力:14,356 MWhで自社発電量は0 MWh。目下、自社傘下の企業が全国にメガソーラーをどんどん建設しているようだが、例の「国が決めた買い取り価格より1円高く買い取りますよという商法」でも有名になった。

ここで「買い取る」とか「再販」といった言葉を使ってみたが、実際には各ソーラー発電設備は従来通りの送電網(10電力会社)につながれていて、例えばそれまで東電に売電していたのをソフトバンクでんきのような「1円高く買い取ります」という新電力業者に売ることにしたとしても、設備関係になんら変化はない。コンピュータ上で数字をやりとりしている中での契約変更なのだ。
これは、「一般家庭がどの事業者と契約しようが、契約者の家に届く電気の発電元は選べない」というのと同じことだ。

昨年(2015年)、 日経BP社のエネルギー専門誌「日経エネルギーNext」が「第1回 新電力実態調査」というのを実施して、その結果を発表した。
回答企業122社のうち、「送受電実績がある」と回答したのが38社、「これまで送受電実績はない」と回答したのが84社。
このうち、「自社で発電所を持っている」と答えたのは送受電実績のある38社のうちの31社(81.6%)。実績なしの84社のほうは59社(70.2%)でそれほどの差はなかったが、実績なしの59社のほうはほとんどが太陽光発電で、火力発電所はほとんど持っていなかった。
自社発電所の中身は「実績あり」と「実績なし」では大きく異なる。「実績あり」の新電力の場合、55.3%が太陽光発電を持っている一方で、石炭火力(10.5%)や石油火力(10.5%)、ガス火力(23.7%)、バイオマス発電(15.8%)、廃棄物発電(10.5%)といった火力系の発電所を併せ持っているケースが多い。
これに対して、「実績なし」の新電力は67.9%が太陽光発電を持っているものの、火力系の発電所はほとんど持っていない。つまり、電力市場に新たに参入を検討している新電力の多くは、極端な太陽光依存の状態にある。
再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)の導入で、全国に太陽光発電所が急拡大した。つまり、新電力が急増している背景にFITがある。現在は太陽光で発電している電力を大手電力会社に買い取ってもらっているが、全面自由化を契機に自社での販売を検討する太陽光発電事業者が増えているのだ。
(2015年3月25日 日本経済新聞「本番前に淘汰開始、太陽光バブルが生んだ「新電力バブル」 」)


要するに、自分では1kwも発電をせず、株取引や為替レートのように、単に数字のやりとりだけで儲ける企業がいっぱい出てきたわけだ。

5月18日の第6回買取制度運用ワーキンググループにて、FIT電源の買取制度の一部変更が決定されました。

事の発端は、買い集めてきた太陽光発電の電気を卸電気市場に「転売」するだけで、数億円もの利益を出した企業が現れたことです。
これは、自社の火力発電の電気を市場に売るのとは訳が違います。

FIT(固定価格買取)の認定を受けた太陽光発電の電気の買い取りには、その買い取り量に応じて、新電力が負担調整機関から交付金を受け取ることができ、また、この交付金は「再生可能エネルギー発電促進賦課金」という税金を原資としています。

そのため、太陽光発電を卸電力市場に横流しするだけでは、再生可能エネルギーの普及には寄与していないため、交付金を給付する趣旨とは外れているということで、問題視されたのです。

スマートエネルギー研究会のブログ「プレミアム買取ビジネスが危うい!FIT買取制度の変更について!」より)


太陽光や風力は、日が照らない時間、風が吹かない時間は発電量ゼロである。その時間帯は火力発電からの供給を増やして調整しなければいけないから、太陽光や風力の電源構成比を上げれば上げるほど、火力発電の設備を余分に用意しなければいけないし、頻繁に火力側の出力調整をしなければならなくなる。変動幅が大きいと調整しきれずに停電する。
問題児の太陽光や風力には税金原資の再エネ賦課金をたっぷりつけて損をしないように甘やかし、実力のある火力発電には援助しない。つまり、太陽光や風力メインで参入しようという新電力会社は、税金にたかっておいしいところだけ持っていき、責任のある運用はしない。提携先の大電力会社の火力発電に頼りっぱなしという無責任経営をめざしていることになる。

健全で合理的な電気事業の再構築こそ原発廃絶への唯一の道

こういう基本的な構造を理解せず、勘違いしている人が多いのであれば、このまま新電力事業者の契約数が増えないのも、別にいいんじゃないかとさえ思う。
自前の発電所をあまり持たず、コンピュータで数字(金)をやりとりして従来の(提携業者の)発電所が作った電気を看板を変えて再販しているだけのような業者が増えていけば、健全な電力事業、電力インフラは望めない。どんどん歪んだ方向に流れていく危険性がある。

現在、日本の電気の約9割は火力発電で賄っている。そのうちの9割近くはLNGと石炭。これは、もし日本が原発を使わないという選択をした場合、当面はこういう電源構成でやっていくことになるだろうということを意味する。
2014年は原発ゼロだったが、それで困った、危機的状況になったわけではない。であれば、そのやり方をベースにして、あとはいかに効率を上げるか、環境負荷を減らしていくかという努力をすればいい。

ガス火力の効率は技術革新でどんどん上がっている。天然ガスの確認埋蔵量、可能採掘量も増えている。石炭の脱硫技術も日本は世界のトップレベルを誇っている。石油は貴重だからただ燃やしてしまうのは惜しいと思うだろうが、原油を精製すれば必ず一定の割合で出てくる重油は熱源に使う以外あまり使い道がない。
原発を輸出するなどというたわごとを言っているよりも、すでに実績のある火力発電系の技術革新にさらに磨きをかけて世界をリードしていこう、と、堂々と言えばいいではないか。
火力発電を悪者にして、二酸化炭素温暖化説などという全世界的経済詐欺手法のお先棒を担いできた背景には、原発ビジネスをなにがなんでも守るという意図があったことを忘れてはいけない。

原子力ムラの利権族は、反原発運動を原発維持や再生エネルギー詐欺という新たな利権構築に利用することに成功している。
これ以上騙されてはいけない。
本気で原発をやめさせるには、こうした間違いだらけのシステムをひとつひとつ正していくことが必須なのだ。
何度もいってきたように、総括原価方式と再エネ賦課金などの不公正な補助金をやめさせれば、原発は維持できず、なくなる。
あとは、現在の再エネ賦課金同様に、電気料金の領収書・計算書には「原発後始末負担金」として廃炉や事故賠償金の分を我々がどれだけ負担しているかを明示すればよい。そうすることで、ようやく日本国も日本人も、自分たちが犯した間違いを認識し、将来の世代への責任を果たしていく意識を少しでも持つようになるかもしれない。


神様Aはベジタリアンだった ──あなたの知らない創世記──

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少子化問題・人口減少社会の正しい?解釈とは2016/04/07 22:41

ダイヤモンドオンラインの、日本劣化は避けられるか? 「人口減少社会」の誤解と真のリスク ――松谷明彦・政策研究大学院大学名誉教授
同氏の 未曽有の人口減少がもたらす 経済、年金、財政、インフラの「Xデー」 がとても示唆に富んでいたので、自分のための備忘録として内容をまとめてみる。

最初の「人口減少社会」の誤解と真のリスクでは、まず、現在、日本の人口が減っていることに対する多くの国民の誤解についてまとめている。

  • これまでの人口減少の主因は「少子化」ではなく、「死亡者の急増」。日本が戦争に向かって突き進んでいた1920~40年頃の「産めよ、殖やせよ」政策で生まれてきた人たちが1980年代後半以降、死亡年齢に達し、年を追って大量に亡くなったことが主原因。
  • 戦争や疫病などの社会的事件によって若い世代が亡くなっているわけではないので、ある意味それほど深刻な人口減少ではない。
  • 地方の人口減少も、「東京に若者がどんどん出て行ってしまうため」というより、地方に大量にいる高齢者が次々と亡くなっているから。
  • 「少子化」が人口減少の「主因」ではない以上、今の人口減少現象は避けようがない。
  • 高齢化の「主因」も少子化ではない。「長寿化」が主因。出生率が低下しなくても、高齢化は進行する。これを止める手立てはない。

……こう指摘した上で、しかし、「団塊世代」が死に終わった後の死亡者数はピークを越えて横ばいになるので、それ以降の人口減少は出生数が減少し続けることで起きる、と説明している。

ちなみに長寿化の説明で、
1950年の平均寿命は61.3歳(男女平均)でしたが、2010年の平均寿命は83.01歳と、たった60年の間に20歳以上も寿命が延びています。
とあるけれど、1950年(戦後5年目)の平均寿命が61歳だったというのは、戦争でとてつもない数の人が死んでしまったからだから、一概に「異常な長寿化」とも言えないと思う。

また、松谷氏は次に、日本が中絶大国になったことが子供を産める女性人口の激減につながったといった主旨のことを書いているが、これもすべて鵜呑みにはできない。
現在の日本の中絶率は、医学界の推計によると52%にも上ると言われます。

という記述にしても、裏付けられる資料などは見つけられなかった。
ただ、この裏付け資料を探している中で、非常に興味深いデータを見つけた。
僕が生まれた1955年の出生数は173万0692人。中絶数は117万0143件。生まれてくる可能性のあった胎児は約290万人で、そのうち117万が中絶されているのだから、割合は約40%にもなる。闇の中絶はカウントされていないだろうから、実際には半数以上の胎児が中絶されたと考えられる。
僕が生まれた1955年当時は、母親の胎内に宿っても「親に生んでもらえる確率」は半分しかなかったのだ。
これが2009年だと、出生数が106万9000人に対して中絶数は22万6878件。約21%。闇中絶の数は1955年当時に比べれば激減しているだろうから、多く見積もっても22%くらいだろう。だから、50年あまりの間に中絶率は半分(以下?)に減ったことになる。それでも、出生数の2割以上の中絶が「正式に」カウントされているというのは驚きだが……。
中絶件数のデータは総務省統計局のものを見て確認したので、間違いはないと思う。

性の乱れが進んでいると言われるが、実際には戦後まもなくのほうがはるかに妊娠に対する考え方が緩かったというか、罪の意識が薄かったのではないか。
実際に、母親の話なんかを聞いていてもそう感じる。
かつては「足入れ婚」と言って、婚姻届を出さない前に夫の家に女性が入るような習慣が全国的にあった。嫁を即家庭内労働力として必要とした農家に多かったという話もあるが、「1年しても子供ができなかったら婚約解消」「嫁としてちゃんと仕事をこなせるかどうか試す」といった「お試し期間」を設ける意味合いも強かった。
その結果、婚姻届を出す前に妊娠したものの、夫(になるべき男性)が逃げてしまって母子家庭になったり、中絶したりといったケースも多かった。親戚にもそうした実例がある。

現代では「できちゃった婚」が増えていて(これはデータとして確か)、これも若い世代の性の乱れだのなんだのと言われるが、むしろ逆じゃないかという見方もできる。出生率が低下している中でできちゃった婚の赤ん坊が増えているだけ。しかも、中絶しないで、経済的に苦しくても結婚しようというのだから、むしろ親として人間としてはまともではないか、と。

話がだいぶ脱線してきたが、松谷氏のこのコラムの最後には注目すべき指摘がある。

  • 合計特殊出生率(1人の女性が一生の間に産む子どもの数)が2を割ると人口減少につながるが、日本では2013年時点で1.4台。しかしこれは「女性が子どもを生まなくなったせい」ではない。
  • 既婚女性(有配偶者女性)だけに限った出生率は足もとで2.0台で、1970年代から変わっていない。既婚女性は生涯に平均2人の子どもを産んでいて、むしろ微増傾向にある。
  • なのに女性全体の出生率が下がるのは、結婚をしない女性や「子どもを持たない」と決めた女性が増えているから。実際、2010年の国勢調査によれば、女性の生涯未婚率(49歳を越えて未婚の女性が対象)は10.61.%に上っている。
  • この傾向がどんどん進んで、仮に「2040年には3割の女性が未婚」という事態になれば、残り7割の既婚女性が生涯3人の子供を産まなければ女性全体の合計特殊出生率2台は実現できない。これはおそらく不可能。

……と説明した上で、
日本人はこれから、人口減少社会を前提に考えて生きて行かなくてはならない。人口が減っても、子どもが減っても、引続き安心して豊かに暮らせる社会をつくっていくほうに、目を向けるべきなのです。

……と結論づけている。

途中の解釈や説明に??という箇所がいくつかあるものの、「人口が減っても、子どもが減っても、安心して豊かに暮らせる社会を作らなければいけない」という結論はその通りだ。

で、その方法について、別稿で論じていて、そっちのほうが興味深かったのだが、長くなるのでそれはまた次の項で……。

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日本企業の劣化2016/04/07 22:34

ダイヤモンドオンラインの「日本企業は劣化したのではなく、もともといい加減だった」(山崎元のマルチスコープ)という記事がちょっと話題を集めている。
「立派だ」とされていた日本企業のあちこちで、急激な「劣化」が起こっているように思えてならない。
という話から始まり、
  1. 日本企業はもともとひどかったのだが、それが近年、見つかりやすくなっただけではないか
  2. 仕事に対する「やる気」自体があちこちの現場で低下していて、かつてなら「常識だろう」と思うレベルで実行されなくなってしまう事例が頻発しているのではないか

……という2つの仮説を展開している。

1つ目については、
「日本企業」が特に悪かったり、劣化したりしたわけではないのではないか。そもそも、「企業」というものは、世界的にいい加減なものなのだと考えることが妥当なのではないか。

と言っている。
まったく同感だ。
大企業だからしっかりしている、なんていうのは錯覚・幻想であって、規模の大小に関係なく、企業なんてものはしょせんいい加減なものなのだ。
ガバナンスが進んでいたはずのアメリカの企業にあっても、共に意図的な巨大粉飾事件と言うべき、エンロン事件もあればワールドコムの問題があった。また、ネットバブルの時代も、サブプライム問題から金融危機に至る時期も、多くの大手金融機関でガバナンスがまともに機能していたとは言い難い。金融業界の「プレーヤー」にとって、顧客もカモだったし、自分が勤める会社の株主(資本家!)もカモだった。合法的だが半分詐欺のようなビジネスが、彼らの高額報酬の裏に存在した。

その後、日本にもコーポレート・ガバナンスのアメリカ的強化を良しとする「風」が吹いた(企業統治で商売したい人々や、社外取締役の天下り先を作りたい官僚などが自分に都合良く感化されたのが実態だろうが)。委員会設置会社などという大袈裟な仕組みを持つ企業が登場したが、ガバナンス優等生とされた、東芝やソニーがどうなったかは、読者がご存じの通りだ。


2つ目については、こう指摘している。
仕事の意義を押し付けつつ、仕事の成果によって金銭的な報酬の差を少々つけると焚きつける、日本企業の多くが導入している「成果主義」は、「所詮仕事はカネのためなので、カネ相応に働けばいい」という気分につながって、現場に関わる社員たちのインセンティブを、かえって劣化させているのではないだろうか。

「お金をたっぷり支払う」ことを現場単位まで導入する資力は日本企業にはなさそうだ。さりとて、報酬が仕事のインセンティブとして大きな意味を持たないような世界で、「仕事」に対するプロフェッショナリズムに基づく緊張感を鍛え直すのも、難しそうだ。

次善の策としては、せめて経営トップ層が、報酬水準も含めて現場の社員ともっと近づくことだが、彼らは、当面、「ROE(自己資本利益率)」や「ガバナンス(企業統治)改革」を旗印に、お友達の社外取締役を味方につけて、自分たちの報酬水準を上げつつ企業を経営することに忙しい。


……う~ん、困ったね。

現場の実態はこうなのに、日本人の多くは未だに「技術大国日本」神話や「寄らば大樹の陰」という生き方原理を信じている。
じゃあ、どうすればいいのか……。
この記事(コラム)では有効な具体策までは提示していない。
少しでもマシな解決策を提示している記事を他の人のものに見つけたのだが、それはまた次にて……。

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新電力業者の選び方&再エネ賦課金制度の悪夢2016/03/24 11:22

いい機会だから、「電気ご使用量のお知らせ」をよく見てみよう
いよいよ4月から電力自由化で、10電力会社以外の業者からも電気を買うことができる。
3月末までに契約すると割引きやキャッシュバックがある業者も多いので、そろそろ決め時なのだが、なんだかスッキリしない。
テレビCMをしている業者も、雰囲気でワイワイやっているだけ。中にはWEBサイトを見ても、肝心の料金設定表が3月半ばになってもまだのせていなかったりするひどいところもあった。
実は、この料金比較がとても複雑で、多くの人はしっかり計算できずに、なんとなく選んでしまうのではないかと思う。

新電力業者の料金比較例(40A契約の場合)

業者基本料金(円)~120kWh~300kWh301kWh~300kWh500kWh600kWh
東電1123.219.4325.9129.9381181410417097
エネオス1123.220.7623.2625.7578011295015526
ミツウロコ129620.2422.826.3178281309015721
東燃たっぷり1123.219.5226.024.6281451306915531
東燃まとめて4001123.2(400kWhまで定額8874円。400kWh~ 28.82円)99971287915761
エネワン108019.5226.0026.4281021338616028

単位は円。~120kWhなどは1kwhあたりの料金。300kwhなどは合計額。再エネ賦課金や燃料費調整額はどの業者も同額なので除外している

上の表は東京電力管内で40A契約をしている場合の比較例。
これを見るとまず分かることは、電気使用量が(極端に)少ない家庭(単身赴任でほとんど夜寝に戻るだけで月に100kWhくらいしか使わないようなケース)では、従来の東電との契約を続けたほうが安いということだ。
つまり、新電力業者に乗り換えたほうがいいのは、ある程度(普通に?)電気を使っている場合に限る。
それも、月に300kWhくらい使う場合、500kWhくらいの場合、800kWhとか1000kWhとかガンガン使っている場合で違ってくる。
東電の一般的な契約(従量電灯B)では、120kWhまで、300kWhまで、それ以上、の3段階で1kWhあたりの料金が違う。普通に考えればいっぱい使ったほうが割り引かれるような気がするが、電気料金は逆に使えば使うほど単価が高くなるという料金制度になっている。
東電の従量電灯Bの場合、120kWhまでの料金は19.43円/kWhだが、300kWhを超えると29.93円と、ぐ~んと割高になる。
必要最低限の電気しか使っていない家庭には安く設定するということなのだろう。税金と同じ発想で、それはそれでいい。

で、新電力業者もそれに倣って3段階に分けていることが多いのだが、中にはさらに600kWh以上という区分を作って4段階にしたり、400kWhや500kWhまでは定額で、それを超えた分に加算するという契約を設定しているところもある(東燃ゼネラルの「まとめて400」「まとめて500」)。

それだけでもややこしいのだが、夏場と冬場では使用量が大きく違うという家庭もあるだろうし、平均値を出して計算してもなかなか「ここがいちばんいい」というのを見つけるのが難しい。
上の例でいえば、毎月400kWh前後で月によってばらつきがないという家庭なら、東燃の「まとめて400」がいちばん安い。
その契約で500kWh使ってしまった月があったとしても、やはりいちばん安い。しかし、300kwhしか使わなかったり、600kWh使ってしまった月があると、今度はエネオスでんきのほうが安い。
料金シミュレーションができるサイトがあるが、あるひと月の金額や1年の平均値だけでシミュレーションしても、確実にいちばん安くなる業者が分かるわけではない。毎月のバラツキがあるかないか、最低の月と最高の月の差がどれくらいあるかなども考慮に入れたほうがいい。

そんなことよりこれに腹を立てよう! 再エネ賦課金


いつのまにかこんなに膨れあがっている再エネ賦課金

新電力業者に切り替えて料金を下げられるのは、一般的な家庭ならせいぜい月に数百円がいいところだろう。その数百円も、年にすれば1万円を超えることだってあるから、庶民は真剣に業者選びをするわけだが、そんなことよりもっと注目してほしいのは、知らないうちに再エネ賦課金がとんでもない金額に膨れあがって我々の電気料金にのせられていることだ(上図)。
上のケースは相当安い(ほとんど電気を使っていない)請求書だと思うが、総額3584円のうち6%に相当する221円が加算されているのだ。
633kWh使ったら1000円を超える。
633kwhを超えると再エネ賦課金は1000円を超える!
↑40A契約で633kwhを超えるようなケースでは、再エネ賦課金も1000円を超えてしまう

これは太陽光、風力、地熱、水力、バイオマスの発電で作った電気を高い固定価格で買い取るためのものだ。国が定めている。
これらの発電方法は自由競争にしたら火力発電などに負けてしまうため、国がてこ入れして高く買い取ることを保証しますよ、その分は電気料金に上乗せしていいですよ、という法律だ。
「再生可能エネルギー」というが、どんな発電方式も石油がなければ不可能になる。
例えば、太陽光発電に使うパネルはシリコンが一般的な材料だが、薄く散らばるケイ素を集めて精製し、最終的に発電パネルを作るまでに大変なエネルギーを使っている。原材料を集めるのもそれを精製するのも、石油がなかったらできない。
エネルギー事業はエネルギーと資源を使ってエネルギーを作りだす事業だ。100のエネルギーを作りだすために120のエネルギーを使うようなことになったら馬鹿げているし採算が合わないからやらないわけだが、そこに高額の税金を投入して優遇措置をとれば、本来成立しない事業が逆に儲かってしまうこともある。
そういう狂った事態にならないよう、政府は汚染や危険性、環境への負荷や悪影響をしっかり監視した上で(これが非常に重要)基本的に自由競争にさせればよい。極端な優遇措置がなく、全部事業者負担で発電しなければならないとすれば、事業者は最も合理的で安全、安定した発電方法を選ぶ
しかし、そこに税金を投入したり、電気料金にどんどん余計なコストを上乗せしてよいという法律を作るから、原発のようなものがまかり通り、巨大な利権構造を作り上げてしまう。一度作られた利権構造は、それを失うまいとする勢力が必死で維持しようとするから、どんどんひどい方向に進み、元に戻れなくなる。核燃サイクルなどはその最たるものだ。

「高い電気」というのは、他の発電方法よりも余計にエネルギーを使うから、効率が悪くて無駄が多いから、高価な資源(レアメタルなど)を使うから高くなる。自由競争にしたら負けてしまうからと、無理矢理高く買い取って優遇すれば、エネルギーを無駄に使うことになる。
おかげで狭い日本のあちこちに巨大風車やメガソーラーができて、山は切り拓かれ、農地は減り、土壌が弱る。巨大風車の低周波で身体を壊して苦しむ人が増え、日光が届かない土地が増えて生物層も弱体化し、数十年後には処理困難な粗大ゴミがあふれることになる。
「原発に反対だから、高くてもクリーンな発電方法をしている業者から電気を買う」などと言っている能天気な人たちがいっぱいいるが、それは原発を無理矢理押し進めてきた間違った国策と同じことを応援しているのだと気づくべきだ。
ちなみに再エネ賦課金は現在1kwあたり1.58円である。これは段階制ではなく一律なので、電気を節約している家庭にほど比率は高くのしかかっている。

再エネ賦課金制度、特に風力と太陽光の優遇はとんでもない利権であり、国土・自然環境の破壊を意味する。原発でさんざん利権をむさぼってきた企業や、それを支えてきた官僚・政治家たちが、新たな利権の巣として再エネに群がっている図を見抜いてほしい。
再エネ賦課金制度や総括原価方式を廃止すれば、原発はなくなり、電力業者は真剣に日本にいちばん向いている合理的な発電方法を追求する
再エネと呼ばれている発電方法で日本に向いているのは地熱と小水力(流水型)だろうが、それも基本的には自由競争のもとでやっていくべきだ。
実際問題、流水型小水力などは買い取り価格が低く抑えられているので、なんの優遇にもなっていない。
技術開発や研究に援助することは必要だが、現段階で高くついている電気を優遇して高く買い取るのは、原発政策と同じで大きな間違いだ。

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みんなが気づいていない女子マラソン代表選考疑惑裏の裏2016/03/19 22:09

3月17日はリオ五輪マラソン代表発表の日で、いつもならトップニュースになっていたが、この日は事件・事故が重なり、あまり大きく取り上げられることがなかった。
発表前から結果が分かっていて、意外性がなかったこともある。
でも、翌日の昼間のワイドショーでは、かなり長い時間を割いてやっていた局もあって、それを見ていたら「有森さん、突っ込むところがちょっと違うんだよな~」と思ったので、すでに日記には載せたのだが、こちらにも再掲しておく。

陸連を困らせた「永山問題」とは

女子マラソンは大阪国際でぶっちぎり優勝した福士加代子選手が所属するワコールの永山忠幸監督が、「内定が出ないなら万が一選ばれなくなることもありえるから名古屋にも出る」と言いだして、それを陸連が「やめてくれ」と頼んで……という騒動が起きた。
世界陸上の「日本人トップで8位以内」は即内定だが、それ以外の選考レースはすべて終わってから判断する、という選考基準が発表されているのだから、永山監督の「なぜ内定を出せないのか」というのは言いがかりにすぎず、黙って名古屋が終わるまで待つべきだ……というのが、多くの人たちの「常識的な意見」だった。
選考基準の内容は永山監督も十分分かっているはずなのに、なぜ「内定が出ないなら駄目押しで名古屋にも出す」などといいだしたのか?
ひとつには、昨年の世界陸上女子マラソン代表選考をめぐる理不尽さがある。
世界陸上選考レースに指定されたレースの中で唯一の優勝者である田中智美選手が落とされ、最後の競り合いに負け、トップに4分30秒の大差をつけられて3位になった重友梨佐選手が選ばれた。重友選手の30km以降の5kmラップは、17分58秒、18分19秒、ラスト2.195kmは8分8秒かかっている。
それなのに、「20kmすぎまでハイペースのトップ集団についていたのは積極的なレース運びだった」などと無茶苦茶な理由で評価され、一方で、ペース配分を間違えずに、最後はアフリカ選手とのデッドヒートを力でねじ伏せて優勝した田中選手を落とした。これは誰が見てもおかしな選考だった。

世陸マラソン「メダル」から「8位以内」に基準引き下げは「後出しジャンケン」だ

さらに決定的に問題なのは、従来、五輪前年の世界陸上が代表選考の一つになる場合、「日本人最上位でメダル」が条件だったが、急に「8位入賞」にまで一気にハードルを下げたことだ。しかも、それは世陸の代表選手が決定した後に発表された。

世陸のマラソンで8位入賞で日本人最上位なら即五輪代表に内定という基準を陸連が発表したのは2015年7月2日。その世界陸上の代表が決まったのが2015年3月11日なので、世界陸上の代表が決まった後に従来の「メダル」から「8位以内」に基準を下げたわけだ。すでに世陸代表に選ばれた3人ずつの選手に異常な優遇をしたことになる。これでは「後出しジャンケン」である。許されることではないだろう。
その3人ずつとは、
前田彩里(ノーリツ)、伊藤舞(大塚製薬)、重友梨佐(天満屋)
今井正人(トヨタ自動車九州)、藤原正和(ホンダ)、前田和浩(九電工)
だ。
新星・前田彩里(彼女の選考には文句のつけようがなかった)のノーリツはともかくとして、他はみな駅伝の常連企業。特に男子は駅伝色が強い。
陸連内部でなんらかの人脈談合、政治力が働いて、甘すぎる「8位以内なら即内定」という基準に変えたのではないかと勘ぐってしまう。
そうではないというなら、男子については、もう長いこと世界のトップクラスとは大きく差がつけられているので「メダル」なんて可能性がないからせめて8位以内を……ということになって、それに引っ張られる形で女子も「メダル」から「8位以内」に引き下げたのかもしれない。
しかし、そうだとしたら、その時点で陸連は世界へ敗北宣言したも同然だ。

その結果、世界陸上女子マラソンはどうなったか?
去年の世陸女子マラソンはスローペースで始まった。これはスピードとスタミナに勝るアフリカ勢の「最後で一気にペースを上げて勝負」という作戦に他の選手がまんまとはまった形。案の定、30kmを過ぎてからアフリカ勢が一気にスパートしてからは、日本選手は誰もついていけなかった。この展開は今まで何度もあったのに、また同じことを繰り返したのだ。
優勝のディババ(エチオピア)と7位の伊藤舞とのタイム差は2分13秒もあった。この2分13秒差は、ディババが33kmあたりでペースを上げてから10km足らずでついたもので、終盤、日本選手はまったく勝負ができなかった。
ちなみに、2011年の世界陸上テグ大会では、赤羽有紀子選手が日本人最高の5位入賞で、このときの優勝者とのタイム差は1分15秒だった。しかも、最後は粘って追い上げての1分15秒差。しかし、このときは「内定」の基準が「メダル」だったため、赤羽選手はその後の選考レースにも出場して日本人1位になれず、代表から漏れた。
それなのに、今回はズルズル引き離されて2分13秒の差をつけられた7位で即内定なのだ。
伊藤選手は他の日本選手が脱落するのを確認して、前を追ってつぶれるよりは五輪代表内定の「8位以内」を確実に狙った走りをしたともとれる。
そういう「優勝争いには挑まず、日本人トップと全体8位以内だけを狙う走り」をさせたのも、陸連が「8位位内なら五輪代表内定」というユルユルの規定を作ったからだ。伊藤選手は戦略的にそれをしっかり守っただけで、彼女には何の非もない。

直前の世陸でもメダルをとっていた日本女子マラソン

ここで、世界陸上女子長距離での輝かしい歴史を振り返ってみたい。
以下は、世界陸上の女子マラソンにおける日本人選手の成績と1万メートルでの成績一覧だ。オリンピック前年の世陸は五輪代表選考をかねていたから、翌年のオリンピック女子マラソンでの日本人選手の成績(●の行)も併記した。

1991年・東京    山下佐知子(銀メダル)★⇒翌1992年バルセロナ五輪で4位、有森裕子(4位・1分15秒差)★⇒翌バルセロナ五輪で銀メダル
 ●1992年バルセロナ五輪 代表:山下佐知子(4位)、小鴨由水(29位)、有森裕子(銀)
1993年・シュツットガルド   浅利純子(金メダル)、安部友恵(銅メダル)
1995年・イエテボリ なし//鈴木博美が1万メートルで8位(鈴木は翌年1月の選考会レース大阪国際女子で優勝のドーレと23秒差の2位、2時間26分27秒だったが代表漏れ)
 ●1996年アトランタ五輪 代表:浅利純子(17位)、真木和(12位)、有森裕子(銅)
1997年・アテネ  鈴木博美(金メダル)//千葉真子は1万メートルで銅メダル
1999年・セビリア  市橋有里(銀メダル)★⇒翌2000年シドニー五輪で15位(日本代表選手中では最下位)、小幡佳代子(8位)//弘山晴美、高橋千恵美が1万メートルで4位、5位
 ●2000年シドニー五輪 代表:市橋有里(15位)、山口衛里(7位)、高橋尚子(金)
2001年・エドモントン 土佐礼子(銀メダル)渋井陽子(4位)
2003年・パリ  野口みずき(銀メダル)★⇒翌2004年アテネ五輪で金メダル、千葉真子(銅メダル)、坂本直子(4位)
 ●2004年アテネ五輪 代表:野口みずき(金)、土佐礼子(5位)、坂本直子(7位)
2005年・ヘルシンキ  原裕美子(6位・3分23秒差)、弘山晴美(8位)
2007年・大坂 土佐礼子(銅メダル)★⇒翌2008年北京五輪では25kmで棄権、嶋原清子(6位)
 ●2008年北京五輪 代表:中村友梨香(13位)、土佐礼子(途中棄権)、野口みずき(故障で出場辞退)
2009年・ベルリン  尾崎好美(銀メダル)、加納由理(7位)//中村友梨香が1万メートルで7位
2011年・テグ  赤羽有紀子(5位・1分15秒差)☆⇒五輪代表にはなれず
 ●2012年ロンドン五輪 代表:尾崎好美(19位)、重友梨佐(79位)、木崎良子(16位)
2013年・モスクワ  福士加代子(銅メダル)、木崎良子(4位)//新谷仁美が1万メートルで5位
2015年・北京  伊藤舞(7位・2分13秒差)★⇒?

……と、世界陸上女子マラソンのメダリストは10人(11回)もいるのだ。直近の2013年の大会でも福士選手がメダルをとっている。そうした実績がありながら、なぜ「メダル獲得」から「8位以内なら即五輪代表」などというとぼけた基準にしたのか? 恣意的な「何か」があるとしか思えないではないか。
ちなみに、世界陸上マラソンでメダルをとり、翌年の五輪代表に選ばれて入賞した選手は、山下佐知子(世陸で銀⇒翌年五輪で4位)と野口みずき(世陸で金⇒翌年の五輪でも金)の二人しかいない。

名古屋でのペースメーカー疑惑

今回の五輪代表選考は、名古屋の前に「永山問題」が起きたが、結果的には福士選手は名古屋には出ず、名古屋の結果も揉めるような要素がなく、田中智美選手が最後1秒差で競り勝ち、日本人1位の2位で当確となった。
最終選考レースとなった名古屋ウィメンズマラソンは史上稀に見るデッドヒートとなり日本中を興奮させた。そこで最後に1秒差で競り勝った田中智美選手が代表の座を確実にしたことで、今回、最終的にはすんなり決まった。陸連も世間もほっとしたことだろう。

しかし、今まで以上に揉めることになったかもしれない要因はたくさんある。
次のようなケースを想像してみるといい。

①名古屋のペースメーカーが大阪国際と同じペースを刻んでいれば
 ⇒田中と小原が福士のタイムを上回って、選考大混乱?

②名古屋で田中と小原が同着になっていたら
 ⇒写真でも判定できないくらいのゴールだったら、選考大混乱?
 
③昨年、陸連理事会が天満屋の重友をごり押しせず、順当に田中を代表に選んでいたら
 ⇒田中が日本人トップで入賞し、先に五輪代表内定。残り2枠をワコールの福士、天満屋の小原、大塚製薬の伊藤らで競り合い、選考レースが複数あることでまたまた大混乱。

①に関しては、「ペースメーカー疑惑」が持ち上がっている。
大阪国際のペースメーカーは5kmを16分40秒と指示されていた。これはそのまま走り続ければ2時間20分台だ。陸連が設定した2時間22分30秒を上回るには序盤からそのくらいのペースで行かなければ無理だろうから、順当な設定と言える。
ところが、名古屋のペースメーカーには、陸連が「5kmを16分55秒から17分」というペースを指示していた。大阪のときに比べて5kmあたりで15秒から20秒も遅い。これでは陸連が自ら設定した選考基準タイム2時間22分30秒を切れない

そもそも、同じ選考レースなのに違うペース設定をするのはフェアではない。レースの条件を恣意的に変えたのはなぜなのか?
まるで、福士の記録を上回る選手が二人出ると困るから、そうならないように遅く指示したかのようだ
実際、福士選手側が直前になって参加を取りやめたのも、この陸連の設定ペースが大阪のときよりずっと遅いということを知ったからだとも言われている。
しかも、実際のレースでは、20kmで下りる予定のペースメーカーが序盤に乱高下するペースを刻み、不必要に選手たちを疲労させた。

そうした「人為的悪条件」にも関わらず、名古屋で田中選手に1秒差で負けた小原怜選手の走りっぷりがとてもよかっただけに、「なんで2時間29分48秒の伊藤だけ先にさっさと内定を出したんだ」という批判が当然のように出てくる。
名古屋での小原選手のタイムは2時間23分20秒で、優勝のキルワ選手とは40秒差。30km以降のペース落ち込みも少なかった。40km以降ゴールまでの2.195kmのタイムは3位の小原選手のほうが優勝したキルワ選手より速いのだ。こういう戦いができる選手を選びたくなるのは当然だろう。

陸連は女性蔑視の男社会か

ここで、普通なら選ばれてもよかったのに選ばれなかった選手たちの所属企業チームを思い出してみよう。2000年以降でリストアップしてみると、

弘山晴美……資生堂。言わずとしれた「女性」中心の企業。
高橋尚子……アテネ五輪代表漏れのときは積水化学を辞めてスカイネットアジア航空の所属。練習は実質、佐倉アスリート倶楽部(小出監督)
田中智美……第一生命。女子陸上部しかなく、監督は女性の山下佐知子。

……と、いずれも「男上位社会」「陸連内部人脈」から軽視されやすい企業に所属していたように見える。
昨年、田中智美が唯一の優勝選手でありながら世陸代表から外れたときに抗議したのも、増田明美、高橋尚子ら女性で、男性の陸連理事で異議を唱えた者はいなかったそうだ。

これでは、陸連は「男社会」であり、「女性蔑視」の風潮が根強く残っていると批判されても仕方がない。また、いつまで経っても内部からは改革できない不透明な談合集団であると見られても仕方がない。
福士選手と監督が無茶を承知で「確定でないなら名古屋にも出る」と表明したのも、彼女の所属企業がワコールで、これまた資生堂同様に「男社会」「有名駅伝企業」ではなかったから、陸連への不信感からだろう。陸連内部で政治力が弱い(多分)ワコールとしては、どんな処遇をされるか分からないと恐れたのではないか?

とにかく、これ以上、理不尽な選考で選手を傷つけたり貶めたりするのはやめてほしい。
世陸でトップグループと勝負しなかった伊藤選手が、名古屋マラソンの小原選手の勇気ある戦いぶりと比較されて責められたりしているようだが、それはお門違いというものだ。伊藤選手は五輪代表になるために「戦略的に8位以内を取りに行った」だけなのだから。
また、不自然な選考で世陸代表になった重友選手は日本人最下位に沈んで「ほれみろ、やっぱりダメじゃないか」と責められた。彼女はもともと精神面が弱かったが、その弱さをせっかく克服しつつあったのに、無理矢理代表に押し出されて負けたことで、これからの選手生命を縮めかねないダメージを受けたかもしれない。彼女もまた被害者と言える。

これ以上「被害者」(理不尽な扱いを受けて本来の力を発揮できなくなる選手)を増やさないためにも、陸連は早急にして徹底的な体質改善、組織改革が必要だろう。
選考基準に「活躍が期待できる選手」などという主観にすぎないような馬鹿げた項目をうたうこと自体、スポーツへの冒?だ。期待されようがされまいが関係ない。ちゃんとしたルールの上で正々堂々と勝負する世界なのだから、「メダルが取れそう」などと第三者が「評価」することがおかしい。それが分からずに「我々はプロです」なんて言っている陸連幹部たちは、最もスポーツマンシップから遠い、「男らしくない男社会」をチマチマと形成している人たちだと感じる。

救いは名古屋ですごいレースを見せてくれた田中、小原両選手の精神力。
あれには日本中が感動した。熱くなれた。
本当に「感動をありがとう」と言いたい。

歴代「悲劇のマラソン選手」一覧

ここからは「オマケ」として趣味的に付け足してみる。

マラソンの五輪や世陸代表選出をめぐり、僕の記憶に残っている「悲劇の選手」一覧を作ってみた。
まずは女子。
  • 松野明美 ……1992年1月、バルセロナオリンピックの代表選考レースの1つ大阪国際女子マラソンで当時の日本最高記録を上回る2時間27分02秒の好記録で2位(初マラソン世界最高)に入るも代表漏れ。「実績」を買われて有森裕子が選ばれる。
  • 吉田直美 ……1995年11月、アトランタ五輪の代表選考レースである東京国際女子マラソンで38km付近、先頭集団にいたが、背後を走っていた浅利純子に踵を踏まれて、浅利、後藤郁代とともに転倒。吉田はシューズも脱げたために大きく遅れ、優勝の浅利に10秒遅れの3位。しかし、転倒した場所からゴールまでのタイムは最も速かった。浅利に靴を踏まれていなければ間違いなく優勝し、五輪代表になっていた。
  • 鈴木博美 ……1996年1月の大阪国際女子マラソンで、優勝したカトリン・ドーレについで2時間26分27秒の2位。この記録は他のアトランタ五輪代表選考レースと合わせても日本人最高タイムだったが、「実績」の有森裕子が選ばれて選外に。
  • 弘山晴美 ……2000年1月の大阪国際女子マラソンで優勝のリディア・シモンに2秒差の2位。しかし記録は2時間22分56秒で、当時の世界歴代9位、日本歴代3位の好記録。しかし、すでにその前の世界陸上で銀メダルを取っていた市橋有里が「内定」していたため、シドニー五輪代表残りは2席のみ。そこに山口衛里、高橋尚子が入り、代表漏れ。
  • 高橋尚子 ……2000年シドニー五輪マラソンで優勝して「実績」は断トツだったが、アテネ五輪代表に選出されなかった。
  • 田中智美 ……2005年北京世界陸上マラソン代表選考レースの1つである横浜国際女子マラソンにケニアやエチオピア選手を破って2時間26分57秒で優勝(選考会レースで唯一の日本人選手優勝)したが、別の選考レースである大阪国際女子マラソンで3位の重友の2時間26分39秒よりタイムが悪いという理由で代表選出されず大問題となった。

この中で、1995年の東京国際女子マラソンでの吉田直美選手のことを覚えている人はほとんどいないのではないだろうか。
あのレースをうちでは録画しながら見ていて、レース終了後に転倒シーンの前後を何度もスロー再生して確認した。吉田選手のすぐ後ろを走っていた浅利選手が吉田選手の踵を踏み、それが原因で吉田選手、浅利選手、後藤選手の3人がもつれるようにして転倒。踵を踏まれた吉田選手は靴が脱げ、それを拾って履き直さなければならなかったために大きく遅れた。
浅利、後藤の2選手はそのまますぐに起き上がり、転倒に巻き込まれなかった原選手を猛追。最後に、浅利選手が原選手をかわして優勝。浅利選手は「転倒しながらも逆転優勝した」「すごい根性だ」「最後まで諦めずに走った姿に感動した」などなど絶賛され、そのままオリンピック代表になった。
しかし、転倒の原因を作ったのは浅利選手で、いちばんの被害者になった吉田選手は靴を履き直してからゴールするまでのタイムが誰よりも速かった。つまり、浅利選手に踵を踏まれなければ、吉田選手が競り勝って優勝していた可能性が極めて高い。転倒したとしても、靴さえ脱げなかったら優勝していただろう。
それなのに誰からも注目されず、その後、ひっそりと表舞台から姿を消していった。

踵を踏まれて靴が脱げて優勝できなかったといえば、バルセロナオリンピックでの谷口浩美選手が有名だ。
優勝候補に挙げられていた谷口は20km過ぎの給水地点で後を走っていた選手に踵を踏まれて転倒。靴も脱げて履き直し、そこで30秒あまりの遅れを取った。
その後猛追し、8位でゴール。タイムは2時間14分42秒。優勝した黄永祚選手のタイムが2時間13分23秒だから、転倒して30秒の遅れを引いても1分近く遅いので「転倒しなければ優勝していた」とは言いきれないが、レース展開が大きく変わっていたことは間違いない。
このときのレース後の第一声「こけちゃいました」は、その笑顔と共に見ていた人たちの記憶に深く刻み込まれた。
谷口はその後、一度もマラソンで優勝できなかったが、「実績」を評価されて次の1996年アトランタオリンピックでも代表になった。アトランタの男子マラソンで日本人選手は惨敗で、谷口の19位が最高順位だった。
その谷口はバルセロナの前のソウル五輪の代表選考でも有力候補だったが、このときは福岡国際で事実上の一発選考をするという陸連の意向が、最有力候補の瀬古利彦選手の怪我によって不可能になり、このときの中山竹通選手の「這ってでも出てこい」発言(実際には「自分なら這ってでも出ますけどね」だった)などなど、日本中が注目する「事件」になった。
その福岡国際は冷たい雨がゴール地点ではみぞれに変わるという悪天候の中、「怒りの中山」が5kmを14分35秒、10kmを29分5秒、15kmを43分40秒、中間点を1時間1分55秒(2倍すれば2時間3分台!)という、驚異的なスピードで前半からぶっちぎって優勝。有力候補だった谷口はそのペースに惑わされたこととあまりの寒さで実力を発揮できず、最後は6位に沈んで代表候補から脱落した。
このときも、「暑さに強い谷口が順当に代表になっていればソウルでは優勝間違いなかった」などと言われたものだ。

このように、オリンピックのマラソン代表選考、そして本番の結果には、常にスリリングなドラマがついてまわる。
それも含めて、選手ではない我々は楽しんでいるのだが、やはり、スポーツのドラマは、感動的なドラマだけにしてほしい。アクシデントはドラマのうちとしても、談合やら密室やら女性蔑視やらのドロドロしたドラマはいらない。

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