WHOとIAEAの関係は環境省と経産省の関係に似ている2013/03/01 12:33

これが原発大国フランスの「普通のテレビ」



//TV5MONDEはBBCワールドニュース、CNN、MTVに次ぐ世界で4番目の規模を誇るテレビチャンネル//(Wiki http://ja.wikipedia.org/wiki/TV5MONDE)

日本でこういう報道番組を見たら、視聴者はみんなびっくりしてしまうだろう。
そのくらい日本のメディアは為政者の支配下でコントロールされることが常態化してしまっているということ。これは本当に怖ろしい。

で、このトピックに関しては、要するに、

1)WHOは放射線被曝による健康被害に関しては調査・研究能力がないに等しいので、何を言ってもまともに相手にする必要はない(その意味では日本の環境省も同じかなあ。WHOとIAEAの関係って、日本の環境省と経産省、あるいは内閣府の関係に近い?)
2)それなのに日本のメディアはWHOというと無条件で権威あるものとして受け入れる傾向がある

……ということだろう。

ところで、昨日の各社の報道の仕方、

●毎日新聞 WHO:福島の住民、発がん増の可能性小さく…リスク推計
http://mainichi.jp/select/news/20130301k0000m040119000c.html

●ロイター WHO、福島原発事故の最大の被災地でがん発症リスク高いと分析
http://jp.reuters.com/article/jpnewEnv/idJPTYE91R06920130228

……と、同じ発表の内容を伝えるのに、見出しが正反対だ。

昨夜見たNHKのニュースは実に奇怪なものだった。

WHOが言った住民が癌になる危険性の増大は、
//確率が最も上がったのは、男女とも浪江町の1歳児の「その他のがん」で、0.73ポイント、1.11ポイントずつ上がった。ただ、元々の発症確率が約29~40%あり、影響は小さい。浪江町の1歳男女児の甲状腺がんでは、0.11ポイント、0.52ポイントそれぞれ増加。発症確率は0.32%と1.29%で、日本の平均に比べて約1.5~1.7倍となった。福島市や郡山市ではリスクの増加はほとんど見られなかった。//(毎日の記事)
……と、多くても0コンマ何%のリスク増大に過ぎないという内容に対して、NHKのニュースでは「条件を過剰に不利にしていて、危険だという結果を無理矢理導き出している」という論調。
飯舘村の菅野村長を引っぱり出してきて「特定の地名を上げて危険だと決めつけるのはいかがなものか」と憤懣をぶつけるコメントのみを露出。

おそらくWHOは「大したことないですよ」と言いたかったのに対して、日本では「言いがかりだ」「過大評価だ」と反発している。なんなんだろうこれは。

癌のリスクがどの程度上がるかなんてデータは、どんなに頑張ったところで正確な数字なんて出てくるはずがない。なぜなら、癌にしても心筋梗塞などの他の健康被害にしても、要因は複層的で、砂糖を何グラム追加するとどのくらい甘くなるというような簡単な話ではないから。
現代社会にはいろいろなリスクが存在していて、そこに今回、1Fから出た放射性物質を体内に取り込んで内部被曝してしまうかもしれないリスクというものが加わった。放射能「だけ」を抽出したリスク増大を数値で表すことは到底無理。ほとんど「運」の問題。(空間線量が比較的低い場所でも、ものすごく運悪くホットパーティクルを吸い込むことはありうるだろうし)

だけど、ほとんどの人たちは未だにそういう考え方ができずに、何μSv/hだの癌になる可能性が何%増大だの何ミリシーベルト以下なら大丈夫だのと数字が出るたびに大騒ぎして言い争う。
うんざりだ。
正確なデータはとことん出してもらわなければならない。しかし、どれだけ有効なのか分からない数字をめぐって狭い論点での議論を繰り返すだけでは、かえって為政者たちの責任逃れ工作を有利にしてしまうように思う。

現実問題として、放射性物質は広く飛び散り、今も毎日出ている。
「フクシマ」以前に比べてリスクは上がったに決まっている。
現実に多くの人が生活を破壊され、精神を病み、病気になったり死んだりしている。みんな前よりも不幸になった。
これは疑いようのない現実。0コンマ何パーセント増大するしないとかって話じゃない。
不幸の内容や危険に対する評価・判断は人によって、個々のケースによって違ってくる。よりよい判断を下せるようにデータを包み隠さず出した後は、個人の判断を尊重して応援する、ということしかできないだろう。

確率が0コンマ何パーセント上がったかもしれないという話は、例えば、宝くじに当たる可能性が2倍になりました、というような話に近い。しかし、ほとんどの当たらない人には関係がない。
しかも、放射性物質を体内に取り入れてしまうリスクというのは、そういう簡単な確率ですらなく、取り入れてしまう確率の先にさらに他の要因が複雑に絡み合っている。無理矢理数値で表したとしても、それをどう受け取るか……受け取る側のセンスや知識、判断力がかなり高いレベルで要求されている。

・今からでもリスクを下げるにはどうすればいいのか。やれるべきことに最善を尽くす。(合理性や効率を最重要視して)⇒税金を正しく使う
・隠蔽したりなかったことにする動きを許さない。
・こういう事態を引き起こした責任をとるべき人たちにちゃんと責任をとらせる。
・同じ過ちを繰り返さないように、社会構造から変えていく必要がある(ということを、少なくとも人々が正しく認識する)

そういうことがいちばん大切なのに、報道は日々、官僚の言い訳コメント技術みたいなものばかり習得している。地雷を踏まないことだけに終始しているコメンテーターなんて何の役にも立たない。
ほんとに気持ちが悪い。
中国や北朝鮮のことなんか言えないじゃないの。日本でも報道の独立性なんてとっくになくなっているじゃないの。

2年も経ってまだデタラメが続く「フクシマ」2013/03/20 14:15

新たな区域分け

「避難解除等区域復興再生計画」とは何なのか?

 3月19日、政府の原子力災害対策本部(本部長・安倍晋三首相)は「避難解除等区域復興再生計画」なるものを発表した。(全容は⇒こちら)
 道路や病院などの生活基盤、産業の復旧方針を示したもので、「住民や事業者が帰還を判断する材料としてもらう」(根本匠復興相)とのことだが、とりあえず1Fに近い住民や避難者たちの関心事は、これによって今までの「警戒区域」や「計画的避難区域」といった区域分けが変更されることにある。

 これについて、元東電社員の吉川彰浩さんはFacebookにこう書いている。

明日というか、もはや今日だけど
福島県双葉郡浪江町津島に行ってきます。
ここは現時点では宿泊はできませんが、立ち入りの制限はありません。
いつ行ってもいいし、いつ帰ってきてもいい。
検問所もないので、普通の格好で誰でも入れちゃう区域です。

なんで行ってくるかというと、4月より帰還困難区域とされる為、自由に出入り出来なくなるから・・・
ちょうどお彼岸ですし、お墓参りも兼ねて家の大掃除に行きます。
千葉に避難している嫁の両親も一緒です。

今までは、ちょくちょくと何時でもこれたので、帰れなくなった感は薄れていました。
しかし、4月からはバリケードが張られ、指定した日に防護服を着ないと入れません。
区域の扱いは双葉町や大熊町の高線量区域と同じになります。

もう帰れないかもしれない・・・・口には出さないけど両親も感じています。
それに今まで幾度となく出入りしていたのに・・・安全ではなかったということかと
またも裏切られた気持ちになっています。

納得がいかないのですよ。帰れるような雰囲気を出していて・・・・結局後4年は絶対解除しない。
それでもって今日も含め気軽に入れるようにしておいて、今後は入れないようにする。

私も両親も何回も行っています。一度もスクリーニングをしていません。
当然どれだけ被ばくしたかも分かりません。
そこの責任は何処にあるの?自己責任ってやつですか

簡単にまとめると

明日行く津島は双葉大熊の高線量区域と一緒ですが3月中は誰でも入れます。
スクリーニングはやりません。てかありません。
私の住んでいた1Fから数キロのアパートは低線量区域ですが決められた日にしか入ることはできません。スクリーニングも受けます。
これは同じ浪江町内の話です。

4月からは
津島地区は決められた日しか入れません。スクリーニングをやります。
私のアパートの地区は何時でも入れます。スクリーニングをやります。

ほぼ逆転の現象が起きます。


このやり方は誰でも「おかしい」と思いませんか?
震災から2年経った今のお話です。

被災者の受難は続きます。これは私の例ですが、津島地区の何千人の方が同じ思いをされています。

原発避難の問題はまだまだ現在進行中です。

上の話、福島の土地勘がないかたのために少し解説を加えると……、

津島というのは、ジャニーズの子たちが農作業や酪農を体験する番組『ダッシュ村』があったところ。
浪江町というのは東西に細長い地形で、東端は太平洋に面し、西端は1Fから30km圏外にまで伸びている。で、津島は西の外れあたりにあって30km圏外。2011年3月の時点では何の避難指示も出ていなかった。

僕は2011年5月25日、獏原人村のマサイさん、自然山通信のニシマキさん、きのこ里山の会の小塚さんらと一緒に、この津島を通って飯舘村←→川内村を往復した。途中、線量計が30μSv/hを超える数値を示す場所もあった。
りました。
(詳細は⇒表日記を参照してください

浪江町では、海岸沿いが汚染が低かったのだが、津波で大きな被害を受けた。請戸(うけど)地区などは壊滅状態。

で、絶対に忘れてはいけないことは、こうした海岸沿いで津波に呑み込まれた地区には、3.11直後、多数の人たちが動けなくなって孤立していたのに、1Fから10km圏だ20km圏だというだけで自衛隊さえ救援に入らず、見殺しにされたという事実。
ずっと後になってから収容された遺体の中には、溺死ではなく、衰弱死、餓死した遺体が複数あった。彼らは水に浸かったわけではなく、車の中や自宅の二階などに閉じ込められ、動けなくなり(骨折したり疲れ果てたり避難経路を断たれたりして)、そのまま救助を待っていたのに1週間経っても10日経っても誰も助けに来ないまま衰弱死、餓死したのだ。
実際には線量は全然大したことはなかったのに、政府が出した避難命令を、救助にさえ入ってはいけないと現場が解釈したためにこうした悲劇、というより惨劇が起きた。

また、浪江町では当初、30km圏外の津島を避難場所に指定して、多くの住民を、浪江町の中でも最も汚染された場所に移動・避難させた。津島は「浪江町で」というよりも、1Fから出た放射性物質が最も多く沈着した場所のひとつ。有名になった飯舘村の役場があるあたりなどよりはるかに線量は高い。
わざわざそんな場所に住民を誘導して、何日もそこで住民に大量被曝をさせてしまったのだ。
SPEEDIのデータをはじめ、すでに実際に線量を測っていてそこが危険地帯であることは文科省や福島県のモニタリングカーが3月12日の時点で把握していた。福島県は国よりも先にそのことをいちばんよく知っていたのに、周辺自治体に通達さえしなかった。この犯罪は未だにあやふやにされ、責任者が処分されたというニュースもない。

「区域分け」を巡る悲劇は他にも山ほどある。
南相馬市は当初、警戒区域、緊急時避難準備区域、無指定区域の3つに分断されたが、20kmの線引きをされたすぐ外側では普通にコンビニが営業していて人々が生活していたのに、20kmにかかった区域の人たちは強制的に家から追い出された。線量は大して高くなかった海岸沿いの地域の話。
しかも、20kmの外側の地域では、線量が低い海岸沿いの小学校から、わざわざ線量の高い北西方向(30km圏外)の小学校に毎日100万円かけてバスで通学させられるというとんでもないことも行われていた。もとの場所の学校にいたほうがはるかに被曝量が少なくて済んだのに、金をかけてわざわざ子供たちの被曝を増やしたのだ。(国会の参考人招致で児玉さんが叫んでいましたね。「こんなバカなことは一刻も早くやめてください!」と)

……このへんのことは『裸のフクシマ』にも書いたが、「津島」という地名を聞いたら、こうした事実をぜひ思い出していただきたい。

新しい区域分けの図を見れば分かるが、浪江町、双葉町、大熊町などは、事実上もう人が普通に暮らせる町にはならない。
浪江町は全面積の約8割が、5年以上帰れない「帰還困難区域」に指定された。
原発爆発から2年以上経ってこういう区分けを言い出す国。すでに住民の多くは、国のとぼけた指示やら無策のために、あびなくて済んだ初期被曝を受けて、これから先、一生不安なまま過ごさなければならない。
「再生計画」という名の元に、「区域ごとに目指すべき復興の姿」を提示しているそうだが、この地域最大の魅力であった自然環境は徹底的に汚され、さらには今後、除染や復興名目でわけの分からない公共事業が加速される。
//短期的(2年)には「避難指示が解除された区域を復興の前線拠点とし、解除が見込まれる区域の復旧につなぐ」、中期的(5年)には「避難解除区域を拡大し、地域全体の復興を加速」、長期的(10年)には「若い世代も帰還する意欲が持てるよう、原発事故により失われた雇用規模を回復する」としている。(産経新聞)//……そうである。

しかし、周辺自治体の人たちの関心は、もはやもっぱら賠償がどうなるか、だろう。
「帰還困難区域」に指定されると、国の賠償基準では事故から帰還まで6年以上かかると土地や建物などの不動産を全額賠償することになっているという。
これに対して、富岡町、浪江町は、全域一律全額賠償を求めて「事故から6年間は帰還しない」と表明していた。
30km圏内で汚染が薄かった地域(今回の再編で無指定になった地域。広野町、川内村、田村市などの一部)では、今後は賠償金支払期間をどこまで延長させられるか、賠償金が切れても、次は除染ビジネスやメガソーラー、風力発電などの公共事業や企業誘致でどれだけ地域に金を取り込めるのかという視点で動いていく。実際、すでにそうなっている。
一方で、ヨウ素131でかなりの初期被曝を受けたであろうことが分かってきたいわき市の住民や、30km圏内の一部地域よりはるかにひどい汚染を受けた福島市や郡山市など都市部の人たちへの賠償は打ち止め、逃げ切り作戦に徹している。都市部の人たちの精神的苦痛、生活へのダメージに対して、30km圏の人たち並みに賠償したら賠償金総額が一気に膨れあがってしまうからだ。
「復興」事業名目の金と違って、純粋な賠償金は企業が儲からない。金(もちろん出所は税金!)は極力公共事業的な使い方に集中させて、原子力ムラ同様の利権集団の「再編」「復興」を図る……。
「フクシマ」は福島の人心や自然をいったいどこまで殺し続けるのだろうか。