ディープフェイクという「兵器」 ― 2022/03/18 12:15
日本のメディアがアメリカ+西欧諸国側のプロパガンダ一色である状況を危惧する一部の人々が「今見るべきドキュメンタリー映画」として推しているのが『ウクライナ・オン・ファイヤー』という作品。
オリバー・ストーン監督がプロデュースしているというだけで「ロシア側のプロパガンダ映画にすぎない」と一蹴している人も多いが、判断はとにかく見てからじゃないとね。
うちでは助手さんにも見てもらえるように、居間のテレビでネットに接続してVimeoにUPされているものを見た。



他にもYouTubeやニコ動などでもUPしている人がいる。全部、不法配信なんだろうけれど、配給元からは削除要求などはないようだ。
ただ、YouTubeは見つけ次第排除しているっぽい。
↑Vimeoで
●YouTubeで⇒こちら
●Odyseeで⇒こちら
●ニコ動で⇒こちら
ちなみにこれに対抗する形でNetflixで「ウィンター・オン・ファイアー」という作品も配信されていて、Googleで「ウクライナ・オン・ファイヤー」を検索するとこれが上位に出たりするのだが、両方見ると、まさにプロパガンダ合戦だなあ、と分かる。
どちらも「本当かな?」と疑いながら見ることをお勧めする。もちろん、余計な先入観は持たずに、違和感を感じる部分の真偽をしっかり見極めるつもりで。
さらには、The Grayzoneというネットチャンネルが、モスクワを拠点にしている国際アナリストの Mark Sleboda氏にインタビューしている動画というのもある↓。
英語が分かる人はこれでもいいが、私のようにそうではない人がYouTubeのギクシャクした自動翻訳機能を使って視聴するのはかなり辛い(というか、ほとんど無理だろう)。これをそっくり和訳して文字起こししてくれているサイトが⇒ここにあるので、それを読んだほうがずっといい。
特に後半で詳細に解説されている、「西ウクライナのバンデラ主義者たち」とナチスやアメリカとの関係については、「ウクライナ・オン・ファイヤー」でも触れているけれど、もっと詳しく説明している。
インタビューの中で、マーク・スレボダ氏は何度も「私の言うことは信じなくてもいいです。私はモスクワの人間ですから。しかし、欧米の軍事アナリストたちが言っているのなら、信じてもいいのではないですか?」「私を信じなくてもいいです。私はモスクワの人間ですから。欧米のアナリストの言ったことを信じてください。彼らはこう言いました」「私を信じなくてもいいです。私はモスクワの人間ですから。ヨーロッパのラジオ、ラジオ・リバティの言っていることを信じてください。彼らはそれについてこうレポートしました」などと訴えているのが印象的だった。
オリバー・ストーン監督が『ウクライナ・オン・ファイヤー』の後に製作した『Revealing Ukraine 2019』というドキュメンタリーもYouTubeにUPされていて、これもぜひ見ておきたい(字幕オプションを「日本語」にして)。いつ削除されるか分からないのでお早めに。
こうした視点にも注意を払った上で今のウクライナ情勢を見ない限り、とんでもない勘違いをしたままになってしまうかもしれない。
彼の思いは本当のことだろうし、キエフの人たちが大変な不安を抱えていることは間違いない。早くこんな状況を終わらせてほしいと思う。
しかし、
ロシアの人たちや、ウクライナ東部の人たちが、今どうなっているのか、どう考えているのかが伝わってこない。
かと思うと、ボグダン氏と同様にキエフにいる男性が、こんな動画を配信していたりもする↓
彼は「ゼレンスキーが配った武器のおかげで、ウクライナ国内の不良やならず者が略奪や暴行を繰り返している。ゼレンスキー政権は最悪だ」と訴える。ボグダン氏のゼレンスキー評とは正反対だ。
もちろん、どの国にも政権や政治家に対して正反対の評価をする人たちがいるわけで、そのこと自体は不思議でも何でもないのだが、ロシア軍がどこまで悪質な行動をとっているのかがよく分からない。
フェイク報道といえば、我々世代は湾岸戦争のときの油まみれになった海鳥の画像を思い出す。
あの時代から、偽情報を流して人々の意識を自分たちの都合のよい方向に誘導するという戦法はあったわけだが、今や情報攪乱が戦争の重要な要素になっている。
日本でテレビ報道を見ている限り、伝わってくる動画や映像の多くは、ロシア軍が極悪非道な攻撃を仕掛けていて、ウクライナの人たちが必死に抵抗している、という図なのだが、これにもフェイク動画や画像が多数含まれているようだ。
しかし、これを見破るのは極めて難しい。
例えば、一度は隣国に避難したものの、母国を守るためにに妻子を置いてウクライナに戻る男性、という動画シーンが、全然関係のない映画の1シーンだった、などというフェイクは、その映画と照合することで偽情報だと分かるのだが、その逆に、爆撃で負傷した妊婦、という画像の女性が、この手のニュース映像によく使われている「モデル」だ、として、両方の画像を並べているものなどは、実際の画像の顔部分をそのモデルの顔と入れ替えれば、「フェイクだ、という告発画像のフェイク」ができあがってしまう。
その程度の画像加工なら素人にでも簡単にできるので、「フェイクのフェイク」、つまり「これはフェイクですよ、というフェイク画像や動画」を作ってのプロパガンダも可能なのだ。
ちょうどこの日記を書いているとき、NHK BSで放送されたディープ・フェイクをテーマにした海外ドキュメンタリー番組(オランダ制作)を見た。
トランプ前大統領はじめ、オバマ、金正恩、ザッカーバーグ、プーチンといった世界を動かす重要人物のフェイク動画が次々に映し出された。
今はスマホのアプリでいくらでも顔を整形できるし、合成動画なんてあたりまえの技術だから、当然こういうこともできる。
ウクライナ報道に関して各国のファクトチェックメディアが行った検証結果をまとめたサイトもある(⇒こちらhttps://ukrainefacts.org/)。
しかし、ファクトチェックメディアサイトそのものがロシア、西側諸国双方によって立ち上げられた情報攪乱戦術の一環だという指摘もあって、もうワケが分からない。
双方の陣営でひどいことが行われているのだろうが、どこまで信用できるのかを見極める術がない。
少なくとも「ウクライナ+西欧 vs ロシア」などという単純な図式ではない。以前から事実上東西に分裂しているウクライナがあって、その分断を利用して混乱を仕掛けたり、勢力図の書き換えを図る者がいる。背後にはさらに複雑な、国家という概念を超えて世界情勢を支配しようとする魑魅魍魎が蠢いている……そういうことなのだろう。
ひとつだけはっきりしていることは、こうした混沌、混乱、理不尽な暴力に巻き込まれて悲惨な目に合わされるのは一般市民である、ということだ。
歴史に学ぶことによって、同じような瞞され方をすることを避ける。それによって、自分が暴力装置に都合よく組み込まれる危険を減らす。
それ以上のことは、残念ながら私たちにはほとんどできない。
また、今は「ウクライナの人たちは大変だね」「ひどい!」「可哀想」「なんとかしてあげたい」と見ている我々にも、大変な危機が迫っていることは間違いない。
食糧危機。産業壊滅。極端なスタグフレーション。
そうした目の前の危機を、暴動や自暴自棄を抑えて乗り越えられるのか?
今はそのことを第一に考え、行動していくしかない。
オリバー・ストーン監督がプロデュースしているというだけで「ロシア側のプロパガンダ映画にすぎない」と一蹴している人も多いが、判断はとにかく見てからじゃないとね。
うちでは助手さんにも見てもらえるように、居間のテレビでネットに接続してVimeoにUPされているものを見た。

↑うちではAmazon FireTVでSilkブラウザを使ってVimeoにアクセスし、高画質大画面で見ることができたが、字幕を追うのが精一杯で、画像がどうのはほとんど関係なかった。

ヨーロッパの近現代史をしっかりまとめている部分だけでも見る価値はある。

ただ、YouTubeは見つけ次第排除しているっぽい。
ウクライナ・オン・ファイヤー 日本語字幕 on Vimeo.
↑Vimeoで
●YouTubeで⇒こちら
●Odyseeで⇒こちら
●ニコ動で⇒こちら

↑アヒルちゃんで「ウクライナ・オン・ファイヤー」を検索すると、↑こう出る
ちなみにこれに対抗する形でNetflixで「ウィンター・オン・ファイアー」という作品も配信されていて、Googleで「ウクライナ・オン・ファイヤー」を検索するとこれが上位に出たりするのだが、両方見ると、まさにプロパガンダ合戦だなあ、と分かる。
どちらも「本当かな?」と疑いながら見ることをお勧めする。もちろん、余計な先入観は持たずに、違和感を感じる部分の真偽をしっかり見極めるつもりで。
さらには、The Grayzoneというネットチャンネルが、モスクワを拠点にしている国際アナリストの Mark Sleboda氏にインタビューしている動画というのもある↓。

英語が分かる人はこれでもいいが、私のようにそうではない人がYouTubeのギクシャクした自動翻訳機能を使って視聴するのはかなり辛い(というか、ほとんど無理だろう)。これをそっくり和訳して文字起こししてくれているサイトが⇒ここにあるので、それを読んだほうがずっといい。
特に後半で詳細に解説されている、「西ウクライナのバンデラ主義者たち」とナチスやアメリカとの関係については、「ウクライナ・オン・ファイヤー」でも触れているけれど、もっと詳しく説明している。
インタビューの中で、マーク・スレボダ氏は何度も「私の言うことは信じなくてもいいです。私はモスクワの人間ですから。しかし、欧米の軍事アナリストたちが言っているのなら、信じてもいいのではないですか?」「私を信じなくてもいいです。私はモスクワの人間ですから。欧米のアナリストの言ったことを信じてください。彼らはこう言いました」「私を信じなくてもいいです。私はモスクワの人間ですから。ヨーロッパのラジオ、ラジオ・リバティの言っていることを信じてください。彼らはそれについてこうレポートしました」などと訴えているのが印象的だった。
オリバー・ストーン監督が『ウクライナ・オン・ファイヤー』の後に製作した『Revealing Ukraine 2019』というドキュメンタリーもYouTubeにUPされていて、これもぜひ見ておきたい(字幕オプションを「日本語」にして)。いつ削除されるか分からないのでお早めに。
こうした視点にも注意を払った上で今のウクライナ情勢を見ない限り、とんでもない勘違いをしたままになってしまうかもしれない。
現地からの配信動画も正反対
TBSの「ひるおび」では、キエフ在住のパルホメンコ・ボグダン氏という30代の男性が流暢な日本語で現地リポート、およびウクライナの窮状を切々と訴えていて話題になっている。彼の思いは本当のことだろうし、キエフの人たちが大変な不安を抱えていることは間違いない。早くこんな状況を終わらせてほしいと思う。
しかし、
「ロシアには日本のメディアの駐在員がたくさんいますが、ウクライナにはいません。このままではロシア側の情報ばかりが報道されてしまうという危機感を持ったので、自分がメディアに出て、ウクライナの現状を日本に伝えようと思いました」(デイリー新潮 2022/03/03)という言葉には少々違和感を覚える。キエフにいるボグダン氏がそれを知らないのは無理もないとしても、日本ではむしろ逆ではないか。
ロシアの人たちや、ウクライナ東部の人たちが、今どうなっているのか、どう考えているのかが伝わってこない。
かと思うと、ボグダン氏と同様にキエフにいる男性が、こんな動画を配信していたりもする↓
彼は「ゼレンスキーが配った武器のおかげで、ウクライナ国内の不良やならず者が略奪や暴行を繰り返している。ゼレンスキー政権は最悪だ」と訴える。ボグダン氏のゼレンスキー評とは正反対だ。
もちろん、どの国にも政権や政治家に対して正反対の評価をする人たちがいるわけで、そのこと自体は不思議でも何でもないのだが、ロシア軍がどこまで悪質な行動をとっているのかがよく分からない。
フェイク画像、動画がさらに情報戦を混乱させる
さらに困ったことに、これらの情報に含まれる動画や写真画像が意図的に作られた偽物である、という事例があまりにも多いようなのだ。フェイク報道といえば、我々世代は湾岸戦争のときの油まみれになった海鳥の画像を思い出す。
あの時代から、偽情報を流して人々の意識を自分たちの都合のよい方向に誘導するという戦法はあったわけだが、今や情報攪乱が戦争の重要な要素になっている。
日本でテレビ報道を見ている限り、伝わってくる動画や映像の多くは、ロシア軍が極悪非道な攻撃を仕掛けていて、ウクライナの人たちが必死に抵抗している、という図なのだが、これにもフェイク動画や画像が多数含まれているようだ。
しかし、これを見破るのは極めて難しい。
例えば、一度は隣国に避難したものの、母国を守るためにに妻子を置いてウクライナに戻る男性、という動画シーンが、全然関係のない映画の1シーンだった、などというフェイクは、その映画と照合することで偽情報だと分かるのだが、その逆に、爆撃で負傷した妊婦、という画像の女性が、この手のニュース映像によく使われている「モデル」だ、として、両方の画像を並べているものなどは、実際の画像の顔部分をそのモデルの顔と入れ替えれば、「フェイクだ、という告発画像のフェイク」ができあがってしまう。
その程度の画像加工なら素人にでも簡単にできるので、「フェイクのフェイク」、つまり「これはフェイクですよ、というフェイク画像や動画」を作ってのプロパガンダも可能なのだ。
ちょうどこの日記を書いているとき、NHK BSで放送されたディープ・フェイクをテーマにした海外ドキュメンタリー番組(オランダ制作)を見た。
トランプ前大統領はじめ、オバマ、金正恩、ザッカーバーグ、プーチンといった世界を動かす重要人物のフェイク動画が次々に映し出された。
今はスマホのアプリでいくらでも顔を整形できるし、合成動画なんてあたりまえの技術だから、当然こういうこともできる。
ウクライナ報道に関して各国のファクトチェックメディアが行った検証結果をまとめたサイトもある(⇒こちらhttps://ukrainefacts.org/)。

↑これらは全部偽情報ですよ、と、まとめてくれているサイト
双方の陣営でひどいことが行われているのだろうが、どこまで信用できるのかを見極める術がない。
少なくとも「ウクライナ+西欧 vs ロシア」などという単純な図式ではない。以前から事実上東西に分裂しているウクライナがあって、その分断を利用して混乱を仕掛けたり、勢力図の書き換えを図る者がいる。背後にはさらに複雑な、国家という概念を超えて世界情勢を支配しようとする魑魅魍魎が蠢いている……そういうことなのだろう。
ひとつだけはっきりしていることは、こうした混沌、混乱、理不尽な暴力に巻き込まれて悲惨な目に合わされるのは一般市民である、ということだ。
だからこそ歴史に学ばねば
現在進行形の情報が何も信用できないとなると、ある程度時間を経てほぼ検証済みとなった歴史、特に近現代史を振り返って、人間社会がどのように動いてきたかを学び直すことが重要なのだろう。歴史に学ぶことによって、同じような瞞され方をすることを避ける。それによって、自分が暴力装置に都合よく組み込まれる危険を減らす。
それ以上のことは、残念ながら私たちにはほとんどできない。
また、今は「ウクライナの人たちは大変だね」「ひどい!」「可哀想」「なんとかしてあげたい」と見ている我々にも、大変な危機が迫っていることは間違いない。
食糧危機。産業壊滅。極端なスタグフレーション。
そうした目の前の危機を、暴動や自暴自棄を抑えて乗り越えられるのか?
今はそのことを第一に考え、行動していくしかない。







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