岩田医師と高山医師の絶妙な連係プレー?2020/02/21 22:39

世の中は「新型コロナウイルス」(以下「COVID-19」と表記)のことで連日大騒ぎになっている。
分からないことだらけだが、2月21日の現時点で見えてきたことをまとめてみる。

COVID-19について分かっていること

  • 感染力は強く、当初言われていた接触感染、飛沫感染の他にエアロゾル感染がかなりあるのではないかという情報やデータが出てきた
  • 感染しても気づかないくらい抵抗力のある人もいるが、その人たちも人に感染させる可能性はあるのでやっかい
  • 発症後の症状の最大特徴は「経験のないほどの倦怠感」で、起きて動く気力もなくなるほど。他に、なかなか下がらない熱、咳、ときには下痢など、風邪に似た症状
  • 若年層は感染しても症状が出なかったり、出ても回復が早く、ほとんど重症化しない
  • しかし、高齢者や持病のある人は風邪症状が続いた後、一気に重症化し、死に至ることもある
      ⇒(そのため、致死率は高齢者(65歳~)とそれ以下で分けて算出したほうがいいのではないか?)
  • 重症化の初期タイミングで抗HIV薬の投与により症状改善が望めるらしい
  • 日本での水際作戦は失敗し、2月下旬時点で、すでに日本国内での市中感染がどんどん拡大している
  • 終息予測はたっていない。SARSのときのように気温が高くなれば弱まるのかも不明。一旦感染した人が抗体を持ち、再感染しないのかもよく分からない

ダイヤモンドプリンセス号問題

次に、注目を集めているダイヤモンドプリンセス号の乗員乗客の状況と、それに対する日本政府の対応については、こうなるだろうか。

  • 船籍はイギリス、運営企業はアメリカ(ダイヤモンドクルーズ社)。2月3日に横浜港沖に停泊した時点で乗客は2666人、乗組員が1045人(合計3711人)が船の中にいた
  • 乗客の国籍は56カ国・地域に渡り、このうち日本人の乗客はおよそ半数の1281人(*)。乗組員の国籍構成は詳細不明だが、ほとんどは東南アジア、南アジアの人たちらしい
  • 1月20日  横浜から出航。香港やベトナム、台湾、沖縄をまわって2月4日午前に横浜に帰港するスケジュールだった
  • 2月1日  香港で下船し帰国した乗客(80)がCOVID-19に感染していたと香港政府が発表
  • 2月3日  夜、予定より早く横浜港に到着。着岸はせずに停泊し、日本政府の検疫下に置かれる。厚労省から派遣された検疫官が入船し、発熱などの症状がある人を確認
  • 2月4日  この日の夕食までそれまで通り船内のレストランで食事を提供。シアターやカジノ、カラオケも営業していた(*)
  • 2月5日  乗員乗客のうち10人にCOVID-19感染が確認される。乗客全員を自室待機にする隔離措置を開始
  • 以後、発熱などの症状がある人を中心に感染検査を進めるが、検査体制が1日数百人規模のために追いつかず、検査結果が発表されるたびに感染者数が増大していく。この日、後に死亡する女性Aさん(84・基礎疾患なし)が発熱
  • 2月6日  乗組員にマスク着用命令が出る(*)。Aさんが発熱を訴えて船内医務室で受診
  • 2月10日  後に死亡する男性Bさん(87)が発熱。翌11日に下船して入院。5日に発熱したAさんが船内で問診を受け、投薬・点滴・ウイルスの有無を調べるため検体を採取
  • 2月11日  Aさんが船内で再々受診。医師は入院が必要と判断
  • 2月12日  DMAT(災害派遣医療チーム)などの医師38名、看護師36名、薬剤師17名が診療にあたるも、感染者は毎日確認され、累計が増え続ける。感染者のうち4人(うち日本人3人)が重症化し、集中治療室にて人工呼吸器をつけての治療(*)
     5日に発熱したAさんがようやく下船し、病院に搬送される。入院後、前日採取された検体検査で陽性が確認される。さらには検疫官1人も感染が確認される
  • 2月14日  5日に発熱し、12日に下船~入院したAさんの容態が悪化。酸素マスクをつけるが症状改善せず
  • 2月15日までに計218人の感染者が確認される。感染が確認された者は順次下船させて日本国内の病院等に入院させるが、感染者と同室だった家族などはそのまま部屋に隔離を続ける。さらには乗員は感染検査もほとんど受けられず、狭い相部屋にて過酷な労働を強いられていることが問題視される
  • 海外からは日本政府の検疫方法に非難の声が上がる。特に日本人に次いで乗客が多かったアメリカでは、「感染拡大の第二の震源地を作った」(ABCニュース)「公衆衛生の危機対応で『こうしてはいけません』という教科書の見本のような対応」(ニューヨークタイムズ)などの批判も
  • 2月16日  アメリカ政府はアメリカ国籍の乗客(425人)を船外に待避させるためにチャーター機を派遣し、本国へ移送開始。イギリス、イタリア、カナダ、オーストラリアなどの国も同様の対処をすると発表
  • 2月18日  神戸大学医学研究科感染症内科教授・岩田健太郎医師が、厚労省技術参与・高山義浩医師の助言を受けてDMATの一員という名目でダイヤモンドプリンセスに乗船したものの、すぐに退出を命じられる
  • 2月19日  ウイルス検査を受けて陰性とされた乗客の下船が始まる。この日は乗客443人が下船。バスで横浜駅などのターミナル駅に移動し、解放。公共交通機関などで各々が帰宅の途につく。解放後すぐに横浜駅地下街の寿司屋で食事をする夫婦もいた。この日までに検査が終了したのは3011人。陽性が確認されたのは621人(うち、無症状が322人)。下船直前での検体採取は行っていない ⇒下船後の乗客が後に感染が分かっても、いつ感染したのか追跡調査ができなくなる恐れ
     岩田医師が前日の体験をもとにYouTubeに船内の状況を問題視する動画を公開。たちまち拡散する。夜、高山医師がFacebookで同動画について一部の事実誤認などを指摘し、状況説明を行う
     一方、岩田医師を船から退出させたことについて、橋本岳・厚労副大臣がTwitterで「お見掛けした際に私からご挨拶をし、ご用向きを伺ったものの明確なご返事がなく、よって丁寧に船舶からご退去をいただきました。多少表情は冷たかったかもしれません。専門家ともあろう方が、そのようなルートで検疫中の船舶に侵入されるというのは、正直驚きを禁じ得ません」などと書き込み、「ちなみに現地はこんな感じ。画像では字が読みにくいですが、左手が清潔ルート、右側が不潔ルートです」と、写真を掲載したことで、それを見た人たちから一斉に「やはりグチャグチャじゃないか」と嘲笑と共に大反響が起きる。橋本副大臣はすぐにツイートを全削除した
  • 2月20日  入院していたAさん、Bさんが死亡
     船内で事務業務にあたっていた厚生労働省の職員1人と、内閣官房職員1人の感染を確認
     岩田医師は高山医師からの意見を受けてYouTube動画を削除。同日、日本外国特派員協会でSkype経由の記者会見に応じ、動画の削除の理由(データが公開されるなど対応が改善されたことで、初期使命を終えた)や、動画の中で訴えたことに基本的に間違いはなく、今も同じ考えであることを説明
     加藤勝信厚労相は同日夜に記者会見を開き、「明らかに検疫期間に発症者が減少しており、隔離が有効に行われた」として検疫が有効に作用したとの認識を示す

日本政府と厚労省の対応

こうして見ていくと、厚労省が主張する「検疫・隔離は有効に行われた」という説明を素直に受け止めることはとてもできない。
すでに各方面から指摘されていることだが、
  • 検査体制が十分に整っているのに、民間検査機関での検体検査をなぜ行わなかったのか?
  • 船内に長期間閉じ込めることによって感染が広がり、重症患者が出てしまう危険性になぜもっと早く気づかなかったのか?
  • 対人接触回数が多い乗員の感染チェックがいちばん後になったのはなぜなのか?
……といった疑問がすぐに浮かぶ。
3000人を超える乗員・乗客を隔離して経過観察できる施設がなかったというが(中国武漢からチャーター便で帰国させた人たちの隔離場所であったホテル三日月では相部屋が生じたし、その後の政府関連施設では共同トイレの宿舎)、すでにほぼ完成している東京五輪選手村施設を使うことなどは誰も提案しない。
普通に考えればまっ先に思いつきそうなものだが、政治家もメディアも絶対に選手村のことは口にしない。それができたなら、世界中から「さすがはおもてなしの国だ。素晴らしい」と賞賛され、たとえオリンピックが開催できなくなっても、国のイメージは一気に上がっただろう。
選手村を使えない理由があるならそれを説明してもいいと思うのだが、東京五輪関連の話がリンクすることはトップレベルのタブーになっている感じだ。

高山医師と岩田医師の超絶連係プレー?

岩田医師が公開したYouTube動画については、一部では「スタンドプレー」「ただの目立ちたがり屋」「ヒーロー気取り」「現場にとって迷惑なだけ」といった批判が寄せられたが、それは違うだろう。少なくとも原発爆発の後に1F(いちえふ)に乗り込んだ某議員(なんと今回の専門家会議に政府側から参加しているらしい)のようなのと一緒にしては失礼だ。
岩田医師の動画に対して高山医師がFacebookに書いた文章と、それに対する外からの膨大なコメントが非情に興味深い。
まず、岩田医師、高山医師、両者の話を合わせると、実際にはこういうことだったようだ。

  • 岩田医師は当初からダイヤモンドプリンセス号への対応に疑問を持っていたが、乗客や関係者から「なんとかならないか」という悲痛な訴えを受け、現場に行くことを決意
  • 岩田医師は、現場で指揮にあたっていた高山医師とは旧知の間柄で、今までもこうした現場で共に仕事をしたこともある「仲間」と認識している。そのため高山医師に現場に入りたいと電話で相談する
  • 高山医師は厚労省の役人、自衛隊、DMATなどが複層的に入り乱れている現場で、すでに始まろうとしている乗客の下船手続きなどで手一杯だった。ただでさえこれ以上の混乱を押さえたいところにストレートな性格の岩田医師が乱入してくるとやっかいだと直感し、周囲を刺激せずに入ってもらうため「やり方を考えましょう」と応じる
  • 高山医師は厚労省のスタッフとして動いていたが、誰を入れていいという権限はないので、現場で一緒に動いていた「環境感染学会」に相談してみることを提案する。岩田医師はさっそく環境感染学会に「現場に入りたい」と申し入れるが、しばらく放置された後に断られる
  • そこで高山医師は、次に「DMAT(災害派遣医療チーム)のメンバーとして入ってはどうか」と進言する。その際、「DMATとして入る以上は、DMATの活動をしっかりやってください。感染管理のことについて、最初から指摘するのはやめてください。信頼関係ができたら、そうしたアドバイスができるようになるでしょう」と伝えた。岩田医師は「分かりました」と言ってDMATに合流した
  • 岩田医師はDMAT合流後、DMATのチーフドクターからは「あなたにはDMATの仕事(医療行為など)は期待していない。あなたは感染のプロなのだから、そっち方面の仕事をするべきだ」と言われる
  • それを一種の拒絶とはとらえなかった岩田医師は、すぐに周囲に感染対策アドバイスを始めるが、現場では翌日に迫っている下船のための準備に追われていて、(あなたが言うことはすべてごもっともで、自分たちもそう思いながらここまできたが)今さらそんなことを言われてもどうしようもないという空気になる
  • 結果、煙たがられるだけになってしまい、さらには橋本厚労省副大臣の怒りを買い(「なお昨日、私の預かり知らぬところで、ある医師が検疫中の船内に立ち入られるという事案がありました。事後に拝見したご本人の動画によると、ご本人の希望によりあちこち頼ったあげくに厚生労働省の者が適当な理由をつけて許したとの由ですが、現場責任者としての私は承知しておりませんでした」とツイートしている)、すぐに追い出される
  • 岩田医師は憤懣やるかたなく、すぐにYouTubeに動画をUPした
  • その動画はたちまち波紋を呼び、メディアも岩田医師を追いかけ、テレビ出演させるなどした
  • この状況を見て、高山医師は岩田医師と話し合い、とりあえずYouTubeの動画は削除してもらった
  • 岩田医師は、問題指摘の目的は果たせたし、橋本副大臣が無能ぶりを自ら証明するようなオマケまでつけてくれたことで、高山医師との連携を尊重し、お互いの役割分担、棲み分けを意識しながら、外国特派員協会での会見にも今までより慎重な言葉を選びながら応じた

……この流れを見ていくと、高山医師と岩田医師は、(ご本人たちにはそのような意図はなかったとしても)結果として絶妙な連係プレーをしたのではないかと思う。いっぱいいっぱいの極限状況にあった現場の業務を必要以上にかき乱さず、同時に問題点を広く世に知らしめることになったのだから。
Facebookのコメント(医療関係者が多い)などを見ても、高山医師は人望があることがよく分かる。また、岩田医師とは性格が正反対なようでいて、お互いの能力を信頼し、認め合っていることも察せられる。
このレベルの人たちが司令塔になって最初から問題にあたっていたら、事態はずいぶん違っただろうなと思う。

私も含めて、専門外の一般庶民ができることは、彼らのような優秀な人たちがしっかり活躍できる環境を作れるように、政治、行政、メディアを見張ることしかない。
別の問題でだが、あるコラムで、こんなことを言っている人がいた。
何かを隠蔽する際に「無能を理由にする」というやり方が、日本だけで許されている。場合によっては、後で「ご褒美」の昇進が待っていることすらある。


責任論ということでいえば、それを許している国民の責任がいちばん重いのではないか。


新型コロナウイルスは「バイオ経済テロ」か?2020/02/03 20:12

「陰謀論」というレッテル貼り

世の中のニュースは、大きなものほど真相はよく分からないところがある。
情報はいくらでも作れるし、加工するのはもっと簡単だ。権威のある機関(例えば政府機関とか大新聞社とか○○学会とか)が出している情報だから信頼できるかというと、まったくそんなことはないことを、(公文書改竄、破棄問題などを持ち出すまでもなく)すでに多くの人は理解している。
となると、真偽の分からない様々な情報を集めた上で、最後は自分の知識、経験、そして感覚(勘)などを総動員して、何が真相に近いのかを「推理」するしかない。
真剣に取り組んでも、自分がその事象に対して何かできるわけではないので、一種のゲームだと思って推理する。想像力や合理的判断力を働かせずに「公式発表」を鵜呑みにすることが「常識人」としての分別や品性ではない。
例えば、アポロ11号は本当に月に行ったのか? あれはでっち上げ映像ではないかという話が流れて、映画や本にもなった。この手の話は「陰謀論」とか「トンデモ」などと呼ばれて、ハナから論ずることさえ馬鹿げていると唾棄される傾向がある。
アポロが月に行ったのか、という件に関しては、僕自身は9割方「行った」のだと思っている。ただ、残り1割は「もしかしたら壮大な嘘かもね」と想像してみる「自由」を持ち続けている。陰謀論を打ち消す証拠をさらに検証する作業なども楽しみたい。
一方、ジョン・F・ケネディ大統領暗殺がオズワルドの単独犯行だったという「公式発表」については、9割方「それは違うだろう」と思っている。数々の物証が、オズワルド単独犯行説に無理があることを示している。
9.11で、ソロモンブラザーズビル(第7ビル)が崩壊したのは事前に綿密な計画のもとに爆薬が仕掛けられていたからだ、という説についても、9.9割方「それはそうだろう」と思う。あの映像を見て、ツインタワー倒壊の衝撃で崩れ落ちたなんていう説を信じろというのはまったく無理な話だ。同様に、9.11でペンタゴンに突っ込んだのは乗っ取られた旅客機ではなく、ミサイル状の飛翔体だったという説も、9割方「そうなんだろう」と思っている。
では、9.11計画を立案して実行したのは何者なのか? アルカイダとかビンラディンが単独でやったとは到底思えない。そこから、そもそもビンラディンは役者だったのではないか……と話が発展していく段階で、さらにいろんな陰謀論が出てくる。そこにちょっとした無理や飛躍が見られると、たちまち「アホか」と唾棄され、排除される。こうした論に「トンデモ」だとレッテル貼りをするために、大きな嘘を仕掛けた側がわざとアホな陰謀論者を野放しにしたり、アホ陰謀論者を創り出して露出させることもありえる。

新型コロナウイルスはバイオテロか?

さて、ここで今、世界中で騒いでいる新型コロナウイルスの話に移る。
このウイルスに関しては、当初から武漢のウイルス研究所から流出したという説があり、それはデマだから相手にするなみたいな話も出ている。
元国連紛争調停官の島田久仁彦氏(現・株式会社KS International Strategies代表取締役社長)は、今回のウイルスの起源について、大まかにだが
  • 1)中国人民解放軍の生物兵器研究開発施設で感染した人からの感染(事故によるヒトーヒト感染)
  • 2)中国以外の「何者か」によるバイオテロ(中国・武漢で人為的にばらまいた)
  • 3)公式?発表通り、野生動物由来のウイルスが突然変異して武漢の海鮮市場経由で広まった
……という3つの可能性を示唆している
マスメディアでは1)と2)の可能性については絶対に触れないようにしているようだが、個人的には1)2)3)の順番で可能性が高いのではないかと思っている。(時間が経つにつれ、1)より2)説のほうがありえるかな? とさえ思う)
2)の場合、主目的は中国を中心とした経済市場に打撃と混乱を与えるというものだったのではないか。言い換えれば新種の経済テロ。これは実際そうなっているわけで、ありえる話だと思う。

人への感染そのものが目的だとすれば、致死率の低いウイルスを使った実験的なもの、あるいは「本番」(?)に向けてのシミュレーションという意味合いが強いのではないか。この場合は経済戦争の道具という意味合い以上に怖ろしい。宗教的狂気をはらんでいるからだ。

バイオテロではなく、事故的なもの、あるいは自然発生的なものであったとしても、今、ウイルスが世界中にどのような速度、規模で広がっているかを必死にデータ収集、解析しているグループが必ずいる。このウイルスの感染率、感染速度で致死率を上げたものをばらまいたときに、世界はどのように変化していくかを予測する人たち。
死者の数(何人殺せるか)だけでなく、そのとき各国はどのように対応するか、人々はどのように動くか(動かされるか)、メディアをどのように使えばどのような効果が現れるか……。そうした実験場になっていることは間違いない。

で、そういう現実世界で、我々庶民はどのように対応すればいいか──これはもう、受動的な対応しかできない。ウイルスがなぜ出現したかについて真相を知ったところで何もできないわけで、現状を把握して、自分はそれに対してどう行動すればいいかを考えるしかない。
今回のことでいえば、新型コロナウイルスと呼ばれているものがどの程度の危険性を持っていて、自分の生活とどのように関係してくるかを極力正確に予測し、リスクを下げることしかできない。
この「リスク」には、感染するリスクだけでなく、過剰反応してストレスをためたり、他者を攻撃したりすることで社会が乱れるというリスクも含まれる。現時点ではそうしたリスクのほうが、自分が感染して死んだりするリスクよりはるかに高いことは間違いない。


「日本製」神話なんてとっくに崩壊している2019/08/31 16:34

朝日新聞に「中国製か日本製か、誰も分からない」告発者が語る手法 という記事が載った。
ブロニカという時計販売会社が売っている腕時計は100%中国で組み立てているが、それを日本に持ち込んでから裏蓋に made in Japan の刻印を押している……という内容。
しかし、そんなのとっくの昔からどんな業界でもやっていることで、何を今さら……と思う。
中国の鰻を日本に輸入して、ちょっとだけ生け簀に放してから加工し、「日本産」として出荷するとか、そういうのはみんながすでに知っていること。
家電製品や衣料品なども、今やメーカーの本部がどこにあるかとかは関係なくて、工場は中国や東南アジアにある。もっとも、それらは正しく made in China や made in Malaysia などと記されている。だから、この腕時計の場合、正しく made in China と刻印するべきではないかということだと思うが、腕時計に「日本製」を要求するセンスがすでにずれている。正確な時刻を知りたければ、スマホがいつでも教えてくれる。腕時計はもはや時刻を知る道具ではなく、アクセサリーのカテゴリーに入るだろう。センスのよいデザインであっても made in China ならアクセサリーとしての価値が下がるというのであれば、それはもう裸の王様の世界というか、特殊な趣味の世界ということで、放っておけばいいのではないか。ブロニカの腕時計が made in Japan か made in China かなんて、ほとんどの人にとってはどうでもいいことだ。
そもそも「日本製」の信用度、made in Japan のブランド力って、今でもあるのだろうか。

「日本製」にわざわざドイツのブランド名を被せる

この腕時計の事例とは逆に、日本製なのにわざわざ海外ブランドを冠して商品価値を高めようとする例もある。
カメラのレンズなどはその典型で、日本製であっても、わざわざドイツに本部がある企業にライセンス料を支払って「ライカ」や「カールツァイス」というブランドを冠している。作っているのはコシナ、シグマ、タムロンなどの日本メーカーなのに、わざわざさらに金を払ってドイツのブランドを冠したほうが高級品のイメージが作れるということなのだろう。

日本のカメラメーカー・ヤシカはカール・ツァイスとブランドライセンス契約を結び、ヤシカが製造する高級機にカール・ツァイスのレンズ、カメラ本体にはコンタックスのブランドを使った。
そのヤシカが後に京セラに吸収されたため、京セラも引き続きコンタックスというブランド名を使っていた。
京セラがデジタルカメラ事業から撤退する寸前に、Finecam SL300R、Finecam SL400Rという、ボディが2つに分かれて回転し、レンズ部分の深さとボディの薄さを両立させる「スイバル」タイプと呼ばれるコンパクトデジタルカメラを発売したことがあった。このSL300R/400Rには、ほぼ同じ設計・仕様でコンタックスブランドのCONTAX SL300RT/400RTという革シボをあしらったお洒落な製品があって、価格は京セラブランドのFinecamの2倍くらいした。
スイバルタイプのコンパクトカメラは好きだったので、欲しかった1台だ。性能的には限りなく同じだと分かっていても、「CONTAX」のロゴとお洒落なデザインは確かに魅力的だったのを覚えている。これがまさに「ブランド」の力だろう。

デジタルカメラといえば、コンパクトデジカメの生産においてサンヨーのシェアが圧倒的だった時期がある(そもそも「デジカメ」はサンヨーの登録商標)。しかし、サンヨーが生産シェア世界一を誇っていた時期、そのほとんどは他社へのOEM供給だった。「サンヨー」のカメラでは売れないが、オリンパスやニコンのブランドをつけると売れる。
そのサンヨーもその後は消えていき、今ではコンパクトデジカメというジャンルそのものが消えてしまいそうな状況にある。

「ブランドイメージ」の難しさ

ブランドイメージがどう定着していくのか……実力通りなのか、PR戦略の賜物なのかというのは、興味深いテーマだ。

腕時計でいえば、カシオは、元は「安い電卓を作るメーカー」というイメージだったが、知らないうちに国外で腕時計のG-SHOCKシリーズが大人気になり、その人気が逆輸入されるような形で日本国内でもブランド力を持つに到った。
でも、日本で作っているのは少なくて、タイや中国製が多い。

世界で初めてラジカセを発売したといわれるAIWAは、当初、国内では二流メーカーと見られていて、安売り店でよく見かけるブランドという認識だったが、海外、特に中東などでは大変な人気と信用があった。
2002年ソニーに吸収され、2008年にはブランドそのものが消えてしまったが、2017年にソニーの下請け工場などをしていた秋田県の十和田オーディオという会社がソニーからAIWAブランドを譲り受けて自社製品開発を始めた。
個人的には、AIWAよりも「十和田オーディオ」のほうが高級で、いい音を出しそうな気がしてしまうのだが……。
アメリカにチボリオーディオという高級ラジオを作るメーカーがあって、かなりのお値段で売られている。今、私の目の前にあるミニマムオーディオセットのスピーカーユニット(8cm)にも「Tivoli Audio」の印字がある。チボリオーディオの高級ラジオのために作ったスピーカーユニットで、中国工場から流れてきたのを1個2100円で入手したものだが、とても気に入っている。
そのとき一緒に買った無印の10cmユニットは1個690円だったから、その3倍もする。このユニットにAIWAと印字されていたら2100円も出して買わなかった。でも「TOWADA AUDIO」と印字されていたら買ってしまったかもしれない。
で、実際には同じものになんのブランド名も印字されていなければ1個500円とか600円で入手できたのだろう。だから、Tivoli Audioという印字があることは「高級ラジオのメーカーが生産を依頼している工場で作られたスピーカーだから、変なものではないはずだ」という安心料のためにプラス1500円を出したことになるのかもしれない。それはそれで仕方がない。

海外向けにラジカセのAIWAブランドを復活させたのはいいことだが、それとは別に、高級オーディオブランドとしての「十和田オーディオ」が誕生したらもっと嬉しい。
↑690円の無印中国製ユニットと2100円のチボリオーディオの8cmユニット。後方は中国製のタンノイ
↓AIWAのミニコンポについていたスピーカーから外したウーハー。これと無印10cmユニットを交換して、フルレンジシステムに作り替えたらすごくいい音になった


ま、そんなこんなだから、今はもう、製造国やブランドは関係ない。怪しい中国製が日本の老舗ブランドの製品より高性能・低価格だったりすることは普通にある。もちろん、怪しい中国製が、しっかりダメダメで、すぐに壊れたり、設計がおかしかったりすることも多いわけだが。

シャープも東芝も、もはや「日本企業」ではない?

話を「日本製」のブランド力ということに戻そう。

液晶テレビが出始めたとき、大型家電店の液晶テレビ売り場に見に行ったことがある。どのメーカーの画面がいちばんきれいだろうとじっくり見て回った結果、国内メーカーのテレビよりもひときわきれいな画面だったのがサムスンのテレビだった。店頭用に輝度を上げていたのではないかといわれそうだが、それなら他のメーカー製品もそうしていたはずだし、輝度による見ばえではなく、色味の自然さや精細さが明らかに勝っていた。日本の家電メーカーへの信頼が一気に揺らいだ瞬間だった。
日韓戦争などと騒いでいるが、今、サムスンに勝てる日本の家電企業はどのくらいあるだろう。
冷静に現実を見ないと、気がついたときは取り返しがつかなくなる。

液晶テレビでは、一時期シャープがブランド力を持っていた。
シャープが三重県亀山市に、巨額の補助金(三重県から90億円、亀山市から45億円)を得て工場を作ったのは2002年のことだった。「世界の亀山」ブランドとして吉永小百合を起用したテレビCMなどで大々的にPRした結果、「液晶はシャープ」というブランド刷り込みに成功した。今でもその「亀山ブランド」を信じている人は多いのではないだろうか。
しかし……
亀山第1工場は2009年初頭より操業を停止。生産施設をすべて中国企業に売却し、建屋のみが残った状態となった。莫大な補助金を投入した工場が、わずか6年で操業停止して設備を売却と言う事態に、シャープは県から補助金約6億4000万円の返還を求められた。(Wikiより

液晶テレビ「アクオス」の生産拠点として2004年に稼働して以降、一時代を築いた“世界の亀山”ことシャープの亀山工場(三重県・亀山市)。テレビ事業が大幅に縮小してからも、生産ラインを一部売却し、スマホやタブレット向け中小型パネルの生産に乗り出すなど、形を変えながら存続してきた。
だが昨今、シャープを買収した台湾・鴻海精密工業が進める“分業体制”により、亀山工場の稼働率が大きく下がっていることがわかった。
シャープ「世界の亀山」液晶工場が陥った窮状 外国人労働者3000人解雇の裏に「空洞化」 東洋経済ONLINE 2018/12/19

シャープが栃木工場(栃木県矢板市)でのテレビ生産を2018年末に打ち切ると発表したのを受け、県や矢板市は情報収集に追われた。栃木工場は日本の家電産業が競争力を失うのに合わせて、段階的に生産規模を縮小してきた。
シャープ、テレビ生産停止 「遅かれ早かれ」地元は冷静 栃木工場の栃木県矢板市 日本経済新聞 2018/08/03


シャープといえば、かつてはNECやゼネラル、サンヨーなどと並んで、国内家電メーカーとしては二流のイメージがあった。
お金があるなら、ナショナル(現パナソニック)、東芝、三菱、日立、ソニーなどを買いたいが、少しでも安く買いたいから、シャープ、NEC、ゼネラル、サンヨーあたりでも我慢しよう……みたいな感覚は、今60代以上の人たちなら説明不要で理解してもらえるだろう。
そこからPR戦略で抜け出したシャープはうまいことやったなあ……と思っていたが、個人的には「液晶のシャープ」は信じていなかった。売り場で実際に見て、サムスンのテレビがいちばんきれいに映っていた印象が強かったし、テレビでいちばん重要なのは録画機能だからだ。
早くからテレビに外付けHDDをつけて、テレビ本体の操作だけで録画ができるようにしたのは東芝REGZAだった。「W録画」をするためにチューナーを2基、3基積んだ機種も作っていた。その頃、他社のテレビはDVDレコーダーやブルーレイレコーダーを売りたいがために、テレビだけで録画できる機能を搭載するのには抵抗を示していたが、東芝はそのタブーを破って、ユーザー本位の設計をしたといえる。
しかし、その東芝も、テレビ事業を受け持っていた「東芝映像ソリューション」が、株式の95%を中国のハイセンスグループに譲渡した。東芝のテレビブランド「REGZA」は今もあるが、もはや日本メーカーではなく中国のメーカーといえるだろう。

東芝はPC事業部門である東芝クライアントソリューション(TCS)が2018年にシャープの傘下に入り、Dynabook株式会社として再出発したが、シャープはすでに鴻海の傘下なのだから、実質、東芝が育てた「ダイナブック」というブランドを鴻海が傘下に収めたことになる。

シャープや東芝の没落は日本の工業製品神話崩壊を強く印象づけた。
特に東芝は、家電製造やノートPCの技術や設計のセンスは非常に優れていたのに、経営陣が原発ビジネスに傾いて、バカみたいな失策と大胆な不正を続けて取り返しのつかない事態にまで到った。真面目に家電に取り組んでいた社員たちは、さぞ悔しい思いをしていることだろう。

技術力の高い台湾で開発・設計を行い、コスト競争力の高い中国で生産・組立を行う「チャイワン」と呼ばれる分業体制が構築され、国を跨いで競争構造が急速に変化した。かつて業界を席巻していた日本の電子産業、AVメーカー各社が2000年代に市場シェアを一気に落とし衰退を見せた背景として、垂直統合・自前主義に陥ってこうした世界的な製造・物流インフラの流れを捉え切れなかった、などと各所で論じられた。
Wikiの「EMS(製造業)」の項より)

……まさにそういうことだろう。
経営陣の頭が昭和の高度成長期のままだったことが敗因だ。
鴻海はアップル社との提携関係が強く、iPhoneの部品などを供給している。日本のメーカーはアップルになれず、鴻海の支配下に組み込まれてしまった。
「下請け」で生き残るとしたら、中国や東南アジア諸国の労働賃金と競争しなければいけなくなるわけで、地方の雇用問題はさらに悪化する。
国内企業がアップル社の位置にいてこそ、国の経済レベルも保て、国内のあらゆる経済活動(生産分野に限らない)に金が回る余裕が出る。
今から逆転を図るのはあまりにも難しいと思うが、一刻も早くそのことに気がつかなければ、これから先、とんでもないことになる。
それなのに、企業の経営者だけでなく、政治・行政においても「勘違いジジイ」が相変わらず物事を決め、国の運命をミスリードし続けている。

腕時計が made in China なのか made in Japan なのかなんていう問題はどうでもいい。
そんな「不正」問題よりも、もっと大きな不正問題──国全体の行方を誤らせる危険に直結する不正(公文書破棄・隠蔽・改竄や政治権力者による大胆な不正優遇)を、メディアはちゃんと報道してほしいものだ。


「トンビがタカを生む」への違和感2019/07/29 15:05

TBS 『水曜日のダウンタウン』より
『水曜日のダウンタウン』で「トンビがタカを生むにも限界ある説 学歴バージョン」というのをやったところ、そこに登場した女子東大生の言葉が素晴らしいとネット上で話題になっている

この番組、私も見ていたが、モヤモヤするものが残った。

なぜタカのほうが「優れている」のか?

そもそも「トンビがタカを生む」ということわざそのものに、以前からずっと違和感を抱いていた。このことわざは、トンビはタカに比べて明らかに「劣っている」「つまらない存在」であるという大前提の上に成り立っているのだが、「トンビがタカより劣る」というのが分からないのだ。
容姿も習性も同じ猛禽類(タカ目タカ科)なのでそんなに差があるわけでもない。つまり、生物学的に劣っているとは思えない。オオタカはハト、カモ、カラスなど他の鳥類を襲って食うことも多いが、トビは動物の死骸を漁ることも多いので、食性としてはトビのほうがエコかもしれない。
タカは昔から鷹狩りなどで人間に利用されることがあるが、トンビは自由奔放に生きている印象がある。飛び方もゆっくり旋回してピ~ヒョロロとのんびり鳴き、世の中を泰然と俯瞰しているようなイメージで、個人的にはタカよりもトンビの生き方のほうが共感できる。

左がトンビ、右がオオタカ。どちらもWiki Commonsより)

ちなみに、タカは英語でホーク(hawk)、トンビはカイト(kite)。
hawkには「他人を食い物にする人、強欲な人、詐欺師、(紛争などで)タカ派の人、強硬論者、主戦論者」という意味もある。
タカ(hawk)派の対語はハト(dove)派だが、doveという言葉には「純潔」「無邪気」「優しい」という意味があるらしい。
これが同じハトでもpigeon となると、「だまされやすい人」「のろま」「まぬけ」といったニュアンスも加わるようだ。
ドロドロした政治の世界では、「ハト」に徹していても、タカに瞞されたり追い落とされたりする。
上空からじっくり下界を俯瞰しながら、妥協策(死骸でも食う)や折衷案を模索する余裕を見せる「トンビ派」というのも必要かもしれない。

ハヤブサはインコの仲間!?

言葉の持つ意味はともかく、名前のイメージというか「音」も、トンビ(kite)よりタカ(hawk)のほうが「かっこいい」ということはあるのだろう。
「ハヤブサ」になるとさらにカッコいい。小惑星探査機とんび とか 陸軍一式戦闘機とんび とか 新幹線とんび とかいうのはあまりイメージできないかもしれない。難しいもんだねえ。
しかし、その「ハヤブサ」は、ワシやタカの仲間ではなく、スズメやインコの仲間だったということがDNA研究で分かったという。
日本鳥学会は、外見などからタカやコンドルに近いとしていた猛禽(もうきん)類のハヤブサを「インコ、スズメの仲間」と変更。特別天然記念物のトキも、コウノトリ目からペリカン目に変わった。DNAの研究が進み、大きさや性格が異なる鳥たちの意外な間柄が分かってきた。
日本経済新聞 2013/03/19

ふう~~んん。

東大卒が中卒より優れているのか?

閑話休題。
この番組の企画「トンビがタカを生むにも限界ある説」の出発点は、学歴で日本最高評価とされている東大に入れる子の親もまた高学歴であろう。まさか中卒はいないだろう……というようなものだ。
「学歴バージョン」と断っているので、この企画そのものはまあ、いいとしよう。しかし、番組に登場した女子大学生の言葉に「感動した」というネット上の反応の言葉が、あまりにも「東大=すごい」を当然のことのようにとらえているのが気になった。
この女子学生の父親は高校中退なので最終学歴は中卒。
「お父さんはなんか落語家になりたかったそうです。今は全然落語家ではなくて、カメラマンやってます。自分が中卒だからこそ、結構私の勉強面を心配してくれたっていうか、『自分みたいになるんじゃないか』みたいな思いが強すぎて、『塾行かなくていいの? 大丈夫?』みたいな……」(略)「今の私があるのも親の育て方のおかげだし、多分トンビ側がタカにするかトンビにするかってのは決めてると思います」(同番組に登場した女子学生の言葉)

これに対して番組では「この娘は学歴だけでなく人格もタカ」と結論づけている。

……まあ、いいんだけど、やっぱりモヤッとしたものが残るんだよなあ。

個人的には、この学生の父親にすごく興味がある。
どんな経緯で落語家になりたいと思ったのか。今はカメラマンだそうだが、どんな仕事内容なのか(結婚式場専属で毎日記念撮影している人なのか、野生動物の写真を撮るために世界中を飛び回っているのか……?)。娘に対してはどんな思いを抱いているのか……などなど。

ネット上ではこの学生に対して様々な賞賛の声が上がったが、そんな中でも、
低学歴な親を「中卒トンビ親」ってネタにしてたからちょっと心配になったけど、うちの中卒トンビ親はひっくり返って笑ってたわ。
ぼくの親父中卒、お袋高卒、、、親父はヤンキーでした(苦笑) ただトンビとは思わねえっす! 学歴でトンビかタカかは決まらねえです。
……といった書き込みがあったのが、ホッとさせられた。

あの人もこの人も東大卒

ここから先は、東大に入りたくても入れなかった人間の僻みバイアスがかなりかかっていると思うが、ブツクサジジイになりきって書いてしまおう。
私が高校生の頃の東大は「優秀な人材が集まっている大学」というイメージだった。でも、今はだいぶ違う。
東大卒業の人たちが日本の舵取りをしているといわれる。では、国政の場での東大卒はどんな活躍をしているのかを思い浮かべると……、

複数の女性記者に「胸触っていい?」「手縛っていい?」とセクハラを繰り返していた福田淳一氏(元財務政務次官)は東京大学法学部卒。
「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」「おっぱい! おっぱい! オレは女の胸をもみたいんだ」の元経産省官僚(原子力安全・保安院保安課企画法規係長)・衆院議員(現職)の丸山穂高氏も東京大学法学部卒。
「このハゲ~!」で有名になった元厚労省官僚・元衆院議員(自民党女性局次長・青年局次長・国会対策委員会委員等、内閣府大臣政務官・東京オリンピック・パラリンピック競技大会担当、文部科学大臣政務官、復興大臣政務官)の豊田真由子氏は東京大学法学部卒でハーバード大学大学院修了。
森友問題の国会答弁で嘘を突き通し、国税庁長官に出世した佐川宣寿氏は東京大学経済学部卒。
森友問題当時の財務省理財局長だった迫田英典氏(元国税庁長官)は東京大学法学部卒。
加計学園問題で、獣医学部の新設認可を早めるよう前川喜平氏(当時文科省次官)に圧力をかけたとされる和泉洋人首相補佐官は東京大学工学部卒で工学博士。(ちなみに「圧力を感じた」と和泉氏の名前を挙げた前川氏も東大法学部卒)

では、政権の最上層部にいる首相と、首相の周りをガッチリ固めている面々はというと、

  • 安倍晋三 内閣総理大臣  成蹊大学法学部卒
  • 麻生太郎 副総理/財務大臣/内閣府特命担当大臣(金融)デフレ脱却担当  学習院大学政経学部卒
  • 菅義偉 内閣官房長官  法政大学法学部卒
  • 世耕弘成 経産大臣/産業競争力・国際博覧会・ロシア経済分野協力・原子力経済被害担当内閣府特命担当大臣(原子力損害賠償・廃炉等支援機構)  早稲田大学政治経済学部卒・米国ボストン大学コミュニケーション学部大学院修了
  • 萩生田光一 自由民主党幹事長代行/前内閣官房副長官兼内閣人事局長  明治大学商学部卒

……と、東大卒ではない。
その下で実働部隊として動いている内閣官房副長官4人のうち3人は東大卒(1人は慶應大卒)。
内閣総理大臣補佐官5人のうち3人は東大卒(他の2人は大分大と成城大卒)だ。

東大卒が「タカ」だとすると、そのタカを操る者は鷹匠だが、鷹匠グループは意外と東大卒は少ないのだね。

鷹狩りのタカは、主人(ボス)に忠実に飼い慣らされ、ボスのために獲物を襲う。襲う獲物は自分よりずっと弱い生きものたちだ。
トンビはそうした主従関係、従属関係からは自由で、悠然と空を飛び、すでに死んだ生きものも嫌がらずに食べて環境の掃除をする。
どっちか選べと言われたら、もちろんトンビの生き方を選びたい。
タカに生まれたとしても、鷹狩りのタカにはなりたくない。

この入江にひとり棲む鳶ひとり舞う   金子兜太

自分では、トンビでもタカでもなく、鳴きすぎのキジかなあ……と思ってる


「反社会的勢力」「反社」という言葉の怖ろしさ2019/07/25 21:06

吉本興業問題の報道や議論を見ていて非常に気になったのは、誰も彼もが(番組司会者、学者、弁護士、タレント……すべて)「反社会的勢力」「ハンシャ(反社)」という言葉をあたりまえのように使っていることだ。これは極めて危険なことではないのか。
「反社会的」とはなんなのか? さらには「集団」「組織」といわずに「勢力」といっているのはなぜなのか?
気がつくと、時の権力者に異を唱える者や集団を「反社条例」なるもので引っ捕らえて投獄できるような時代になりはしないのか?

「反社会」とはどういう意味なのか?

この言葉は、従来、暴力団、ヤクザと呼ばれてきた組織が巧妙に企業体の体をなしてきたために、「暴力団」といえないような組織が犯罪を犯している現状を鑑みて作られた言葉らしい。
しかし、ヤクザや暴力団の定義が変わってきたというのなら、単純に「犯罪集団」「犯罪組織」でいいではないか。
「半グレ」という言葉にも違和感を感じる。表向きがまともそうな企業業態であっても、裏で違法行為をしているなら、それは「半分」でも「グレー」でもなく、犯罪集団そのものではないか。
今回、吉本の芸人が犯罪集団の宴会に(相手が犯罪集団とは知らずに)呼ばれて、ギャラを受け取っていたということに端を発した騒動にしても、その宴会をしていたのは紛れもなく「犯罪集団」である。隠れ蓑にしていた企業体の名前で主催していたとしても、化けの皮が剥がれた時点で「犯罪集団」といえばいいだけのことである。
日本は法治国家であるはずだ。何よりもまっ先に、法を犯しているのかいないのか、が問われるべきである。

anti-social forces ?

そもそも「反社会」とはどういう意味なのか?
「社会に反する」ということであれば、「社会」とはなんなのか?

「反社会的勢力」を英訳すると Anti-Social Forces なんだそうだ。
しかしこの言葉の用例を検索すると、出てくるのは金融庁の文書などがほとんどで、一般的な英文の中で使われている用例がほぼ見つけられなかった。
では、「犯罪集団」を英語ではなんというのかと調べると、crime syndicate、 criminal syndicate という言葉が出てくる。
これなら分かる。英語でははっきりと「crime(犯罪)」という言葉を使っている。
なぜこう呼ばないのか? 「犯罪集団」「犯罪組織」なら漢字4文字で済むのに、「反社会的勢力」は6文字も使った上で、意味がよく分からない。

anti-social は「socialではない」という意味だが、そもそもsocialはどういう意味の言葉なのか。
Man is a social animal.(人間は社会的動物である。)……という使い方がいちばん分かりやすい。
social problems such as poverty and crimes(犯罪や貧困のような社会的問題)
a social movement called the anti-nuclear movement (反核運動という社会運動)
 といった使い方を見ても分かるように、social自体がよいとか悪いということではない。
「群をなす」「社交的」というニュアンスも強い言葉だ。
He has recently got anti‐social.(彼は最近つきあいが悪くなった。)

そういう言葉(social や「社会」)を使って犯罪者集団のことを指し示さなければならないのはなぜなのか?

「反日」という言葉にも似ている

「反社」という言葉は「反日」という言葉にも通じる曖昧さがある。
「反日」とはなにか?
Wikipedia にはこうある。
反日とは、日本の一部または総体に対して反対・反発感情・価値観を持って行われている教育・デモ・活動・外交、それを行っている人物・組織・国家に対して使われる言葉。

↑こんな定義をされてしまったら、「日本の一部」が何を指すのかによって、どんなものも「反日」になってしまう。実際、そうなってしまっているわけだが。
「反社」という言葉があたりまえのように使われるようになると、これと同じことになる。
「反日」の「日」が日本の現政権(日本の一部)である、ととらえると、その「日」は日本という「国」であり、日本の「社会」である、というようなことになりかねない。
この怖ろしさをしっかり自覚しなければいけないだろう。特に弁護士や法律家、ジャーナリズムに身を置く人たちには、この言葉が安易に広まることに対する警戒心をしっかり持ってほしい。

最後にこんな例文を見つけたので掲載しておきたい。
Never losing its antisocial nature, many rakugo acts were suppressed and forbidden during war.
(落語は反社会性が抜けず、戦時中に多くの演目が禁演落語として弾圧された)
Wikipedia日英京都関連文書対訳コーパス



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