コロナより「コロナ自粛強要」で社会が壊れる2020/08/26 22:00

暴露と感染の広がり方 高橋泰教授の説明図(https://toyokeizai.net/articles/-/365254?page=4 より)

↑「新型コロナウイルス感染の広がり方」(高橋泰教授による説明図 「東洋経済ONLINE」より)

「自然免疫で撃退説」のおさらい

前回、COVID-19に対する高橋泰教授らの「実態予測と提言」をまとめたものを紹介したが、こうした提言が複数の医師や研究者から出てきてひと月以上経つのに、未だにメディアは毎日「新規感染者数は○人でした」という伝え方を変えていない。
高橋教授の主張は、東洋経済ONLINEにいくつか出ているので読める。
●新型コロナ、日本で重症化率・死亡率が低いワケ 高橋泰教授が「感染7段階モデル」で見える化(2020/07/17)
●高橋泰教授が新型コロナをめぐる疑問に答える 暴露と感染の広がり方、PCR検査の問題を解説(2020/07/27)
●新型コロナ、「2週間後」予測はなぜハズレるのか 高橋泰教授「データに合う新型コロナ観を持て」(2020/08/07)

詳しくは原文を参照してほしいが、1つだけ重要な指摘をあげれば、
「PCR検査陽性者」イコール「新型コロナウイルス感染者」ではない、という点だ。
  • 新型コロナウイルスは暴露力(体内に入り込む力)は強い
  • しかし、伝染力と毒性は弱く、かかっても多くの場合は無症状か風邪の症状程度で終わる
  • ウイルスが身体に入り込んだ状態でPCR検査をすれば陽性反応が出る。
  • しかし、多くの場合(高橋教授らのチームは、日本では98%と推定)、自然免疫だけでウイルスを排除してしまうので、無症状かごく軽い風邪のような症状で終わってしまい、ほとんどの人はウイルスが身体に入り込んだことに気づかない
  • この「自然にウイルスを排除した人たち」は、体内に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する抗体を作るまでもなく終わっているので、その後、抗体検査をしても陰性となる。
  • 残り2%の人たちは自覚的な症状(風邪や肺炎のような症状)が出て、SARS-CoV-2に対する免疫を獲得する(その後、抗体検査をすれば陽性と出る)。
  • この2%の人のうち、ごく一部の人たちにサイトカインストーム(免疫暴走)が発生して重症化し、死者も出る。

……そういう分析内容だ。
つまり、「PCR陽性者」=「新型コロナ感染患者」ではないし、必ずしもスプレッダー(ウイルスをばらまき、感染者を増やす人)だともいえない。
PCRが陰性になった人は感染歴がない人ではないし、明日以降、スプレッダーになる可能性はある。

もちろんこれは現時点では1つの仮説なのだが、現状と照らし合わせてみると、非常に納得がいく仮説だと思える。
重要なのは、何人がウイルスに暴露しているか、暴露したか、ではなく、重症化する人を減らすこと、重症化する人をいち早く見つけて有効な治療をすること、なのだ。
で、問題はサイトカインストームが発生して重症化する確率だが、
20代では暴露した人10万人中5人、30~59歳では同1万人中3人、60~69歳では同1000人中1.5人、70歳以上では同1000人中3人程度、
……という推定値だという。

この確率が、アジア人はなぜか欧米人より二桁低い。その理由がいわゆる「ファクターX」などと呼ばれるようになったものだ。
BCG説や生活習慣要素など、様々な「ファクターX」候補が挙げられているが、HLA型などの遺伝的要素が最も大きいのであろうということは、多くの医師、研究者が感じているし、すでに多くの論文も出てきている。

「新規感染者数」という伝え方の問題

以上のことを踏まえれば、「新規感染者数」の増減で騒ぐことにはほとんど意味がない。
なぜなら、PCR検査で陽性が出た人の数というのは、その時点でたまたま体内にSARS-CoV-2が入り込んでいる状態で、それが検査したから判明した、ということであって、COVID-19(SARS-CoV-2に感染して病理症状が出た状態)の増減傾向を示すものではないからだ。
同様に、抗体検査で陰性を示す人が、過去にSARS-CoV-2に暴露していないことにもならない
「感染経路が不明な人の割合」というのはもっと意味がない。感染経路など分からなくてあたりまえなのだから。
家族の一人にPCR陽性者が出たので家族全員を検査したら全員陽性だったとする。その場合、「家庭内で感染」と分類されるのかもしれないが、その家族全員が別々の場所でウイルス暴露して、たまたまそういう人たちが集まっている家庭なのかもしれない。
暴露する力が非常に強いウイルスなのだから、どんなに注意をしてもウイルスが身体に入り込むことはある。それを「感染者」というレッテルを貼って「隔離しなければ」とか「不注意だ」とか「マスクもしないで……」などと騒ぎ立てる──しかもそれを一部メディアが率先してやっていることのほうがよほど恐ろしいし、社会に大変なダメージと悪影響を与えている。

厚労省などは「クラスター対策」を最重視してきたようだが、日本ですでに3割以上がウイルス暴露を経験しているとすれば、「一人の陽性者の周辺を調べれば一定数の陽性者は出る」のは自然なことだろうから、それが「クラスター」なのかどうかも分からない。
高橋教授はこのことを図で説明している(↑冒頭の図)。
↑高橋泰教授が説明に使った図。東洋経済ONLINEの記事より。Clickで拡大)
その説明を要約すると、
  • 図の水色の四角で囲んだ部分が、新型コロナに暴露した(ウイルスを体内に取り込んだ)人。
  • その中で色がついているのが暴露した後に感染(細胞内にウイルスが入り込んでしまった)人。
  • 青色の人は自然免疫が強く、ほぼ無症状か気がつかないほどの軽症。ウイルスの排出もほとんどなくスプレッダーにならない。
  • 黄色の人は「無自覚スプレッダー」。一時的にウイルスを排出するが、自分は自然免疫で治ってしまい、感染したことに気づかない。
  • ところが、発生確率は低いが、自然免疫では抑えられず獲得免疫が出動し、風邪のような症状もかなり出て、ウイルスも多めに排出して人にうつすオレンジの人が出てくる。
  • さらに、明らかな熱や咳などの症状が出たのが赤色の人で、PCR検査したら陽性になって入院することになる。
  • その赤色の人の周辺を検査したら陽性者が4名見つかった。そこで、この赤色の丸で囲まれた部分を、現状では「クラスターが発生した」と表現しているが、実はたまたま、見つかったにすぎない。
  • 現在は検査を増やしているので、陽性者の発見が増えている。3月下旬は検査数が少なかったが、実効再生産数はピークであり、この時にもっと検査していたら、今の数十倍から数百倍のPCR陽性者が見つかっていたのではないか。

つまり、
  • 3月下旬頃に検査数を増やしていたら、今よりずっと多い陽性者が出ていたはず。
  • 今は「クラスター」とみなしているグループも、多数存在している陽性者の一部をたまたま切り取っているだけ。

……だというのだ。

求められる対策とは

こうした説が、複数の医師、研究者から出されているのに、メディアはなぜかひと月以上経った今でも無視、あるいは意図的に排除しているように思える。なぜなのか?
厚労省をはじめ、対策に関わる人たちの多くは、すでにこの説の妥当性について肯定的な考えに傾いていると思われるが、箝口令を敷いたかのように口を閉ざしている。 政府上層部、多くの政治家は、この説の内容を理解することさえできておらず、問題にコミットすることを恐れている。さらにひどい連中は、コロナを利用して、いつも通りの利益誘導型政策を連発することになんら罪悪感も羞恥心も持っていない。

そんな状況で、私のような素人が、またまた「合理的な対策とは」などと主張するのも虚しすぎるのだが、やはり一人一人が声を上げることが求められていると思うのでまとめておきたい。

  • 政治や行政のリーダーは、国民に向かって、真摯に、新型コロナウイルスの最新分析情報を分かりやすく説明し、過剰反応や間違った認識を改めるように言葉を尽くすべき。
  • PCR検査については、医療従事者、高齢者施設従事者などの定期的な無料検査の速やかな実施と、クリニックレベルの個人病院からでも、医師が必要と判断した場合の保険診療、検査機関(民間含む)への検体提出を可能にする。そのための設備投資やシステムの合理化を進める。
  • 医療や介護の現場でのリスクを下げ、医療・介護従事者の負担を減らすためのシステム構築と資金の投入。合理的なマンパワーの配分。
  • アベノマスクやGoToキャンペーンなど、現場を混乱させ、マイナス要因を増やすだけのバカ政策、コロナと無関係な利益誘導政治を反省し、金とマンパワーを必要とされる現場に有効かつ速やかに投入できる施策へ転換。
  • メディアは政府の顔色を窺わず、視聴者や読者の「食いつき」を計算せず、危機を情緒的に煽らず、社会の木鐸としての自覚を持ち、正しい情報を分かりやすく伝える努力を。
  • 50代までの層には、正確なリスクを伝えると同時に、高齢者や病人など、高リスクの人たちへ自分たちが感染させて死なせる可能性を自覚させ、行動規範の形成を促す。
  • 教育現場やスポーツやイベントビジネスの現場などでは、過剰な自粛要請よりも、常識的な新マナーの共有で正常化を。

今のままでは、ウイルスによる病死などより、ウイルスが引き金となった思考停止による「社会崩壊」のほうがはるかに恐ろしい結果をもたらすだろう。

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