総務省とテレビ局の共犯による「地上波地獄」から抜け出せない日本の悲劇2021/04/19 20:13

東芝テレビのリモコン
↑これは我が家のテレビのリモコンである。
テレビのリモコンに最初からNetflixやhulu、YouTube、AbemaTV(現在はAbema)、U-NEXT、dTVといったインターネットテレビ放送のボタンがついている。
テレビがネットに接続されていれば、YouTubeとAbemaは無料で見られる。他のチャンネルも契約すればもちろん見られる。
接続はWi-Fiで行えるので、家庭内Wi-Fiがある家ならLANケーブルを接続する必要もない。
ネット経由だから、電波を受信するのと違って荒天で映像が乱れるようなこともない。
テレビの電源がOFFになっていても、リモコンのNetflixのボタンを押せば、テレビの電源が入り、Netflixに接続して、前回見ていた途中からサクッと再生を始める。いちいち番組を探し出す必要もない。

……もう、テレビはこれでいいではないか、いや、こうあるべきだろう、と思う。
視聴者が自由に選ぶ。よいと思うものには金を出す。くだらないものを押しつけられる義理はない。
無料で視聴できるものに広告がついてくるのは仕方がない。
しかし、録画できる放送にいくら広告をつけても、見る側は録画して広告をスキップしながら見る。我が家ではマラソンや駅伝の生中継でさえ、録画して、30分か1時間遅れくらいで「追っかけ再生」して、広告をスキップしながら見ている。これでは広告主にとっても意味がないのではないか。もっと安い費用でターゲティング広告ができるネット広告のほうがはるかに有効だろう。
その点でも、録画できる地上波放送は廃れていく運命にあるはずなのだが、日本ではいっこうにそうならないのが不思議だ。

地上波テレビは地方局だけでいい


テレビ放送がアナログからデジタルに切り替わったとき、私は「テレビ放送を地上波でやる必要はない。衛星放送やケーブルテレビ網でやれば、全国どこでも同じ番組を同時に見られる。受像器やアンテナを総入れ替えする大変革を強行するのに、地上波での放送に固執するのは、電波利権を死守しようという総務省とテレビ局の悪行に他ならず、国民は大変な損害を被る」という主張をした。詳しくは⇒こちら
テレビ放送のデジタル化は、テレビ文化の地域格差を解消する大きなチャンスだったのに、総務省はテレビ局と結託し、敢えてそれをせず、電波利権構造を死守した
衛星放送をメインにすれば、全国に新たな送信アンテナを建てる必要はない。つまり、送信側の費用はほぼゼロである。
受信側としても、アナログ停波となれば、どっちみちテレビそのものを買い換えなければいけないし、今までの地上波(VHS)アンテナもゴミになる。弱いUHF電波を受信するために屋根の上に高いマストを立てて不細工なアンテナをつけるよりも、家の外壁やベランダの柵にBSアンテナを取り付けるほうが、たいていの場合、作業が楽だし、費用も安い。
今売られているテレビ受像器にBS、CSを受信できない製品はまずない。地上波が届かない場所でもBS、CSなら受信できるというケースはたくさんある。実際、建物や山が邪魔して地上波の電波(UHF波)は届かないので、BS、CSだけ受信しているという人は多い。
現在、衛星放送(BS)にはすべての民放キー局がチャンネルを持っていて無料放送している。110度CSも合わせれば、チャンネルはありあまっている。衛星放送をメインに使えば全国どこでも衛星放送で同じ番組を見られるが、わざとそうしていない
そのBSでは、各放送局が金をかけて制作している人気番組はわざと放送せず、通販番組やら大昔の再放送しかやっていない。
こんな馬鹿げた話があるだろうか?

地上波(UHF帯)は遠くまで届かないし、遮蔽物に弱い。地上波は地方局が使って、その地域独自の情報をメインに放送すればいい。地上波はもともとそうした使い方が向いているのだ。

国はテレビの視聴環境地域格差を恣意的に温存した

テレビ放送をアナログからデジタルに切り替えるという大変革のとき、国と放送会社は結託して、国民に、まるで地上波でなければテレビを見られないかのような呪縛をかけ、巨額の税金を投入し、全国の地上波放送局の利権を守った
結果、放送文化の地域格差は解消されなかった、というより恣意的に「格差が温存された」というべきだろう。
現在も、青森・秋田・富山・鳥取&島根・山口・高知・大分・沖縄は民放局が3局、山梨・福井・宮崎は2局、徳島・佐賀には1局しか民放テレビ局が存在していない。
民放の地上波テレビ放送は、いわゆる4大ネット(日本テレビ系列、テレビ朝日系列、東京放送系列、フジテレビ系列)+1(テレビ東京系列)と、独立系地方局(テレビ神奈川やとちぎテレビなど十数局)で成り立っている。
例えば世界陸上は東京放送(TBS)系列の独占生中継だが、TBS系列局がない秋田県と福井県では見られない。
山梨県は日テレ系の山梨放送とTBS系のテレビ山梨の2つしか民放局がないので、多くの家庭ではケーブルテレビに加盟してフジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京の番組を周回遅れで見ている。
TBS系列以外の系列は「クロスネット」と呼ばれる方式で、相乗り放送を認めている。例えばテレビ宮崎(宮崎県)は、TBS系列以外のフジ、テレ朝、日テレ系列の番組をまぜこぜにして放送している「クロスネット」どころか「トリプルネット」と呼ばれる放送局だが、当然、同時間帯に放送できる番組は1つなので、人気番組は日時をずらして放送するしかない。テレビ宮崎ではフジ系列の月曜夜9時台のドラマ(いわゆる「月9」)は5日遅れの土曜日の夕方に放送して、月曜夜9時にはテレ朝系の「月曜ワイド劇場」を放送している。

契約者が700人しかいないチャンネル

ちなみに、総務省幹部が東北新社の「菅首相の長男」を交えた会食をしていた問題が露見した後、芋づる式に表沙汰になってしまった外資規制法違反で、東北新社の衛星チャンネルであるザ・シネマ4Kが放送事業者として認定取消になり、サービス終了となった。
そこでさらに明るみになったのは、このザ・シネマ4Kの契約者数が全国で約700人しかいなかったことだ。
700人のために日本の放送衛星の貴重な帯域(4K放送が送信できる広い帯域!)が1つ埋められていたというのだ。

ザ・シネマ4Kが割り当てられていたのは「BS・左旋」と呼ばれる新しい放送衛星によるもので、従来のアンテナ、ケーブル、ブースター、コネクターなどの設備を対応した製品に交換する必要がある。そこまでして4K(ハイビジョン画質の4倍)、8K(ハイビジョン画質の16倍)の映像を見たい人がどれだけいるだろうか。
4K対応テレビを持っている人は、NHKの朝ドラや大河ドラマを従来のBSと4Kチャンネルの両方で見比べてみるといい。ほとんど差を感じないはずだ。8K映像に至っては畳1畳分とか、壁いっぱいくらいの面積に映し出さない限り、解像度の差が分からないはずだ。
BS左旋で契約者数700人のザ・シネマ4Kが免許取り消しになって消えた後、残るチャンネルはNHK BS8K、WOWOW 4K、ショップチャンネル4K、4K QVCの4つだが、通販専門チャンネルが2つも入っている。4Kで通販放送を見る必要がどこにあるのか? そもそもこうしたチャンネルが運営可能であることに疑問がわく。

『テレビが言えない地デジの正体』でも取り上げたが、競馬専門チャンネルといえる「グリーンチャンネル」は農林水産省とJRAが深く関係しているが、2019年度での放送サービス契約数は24万2887件(前年より-6,326 件)で、インターネット配信契約数が81,806 件(同、+14,003 件)だという。
こんなものはネット配信だけでよいではないか。そもそも地方競馬全国協会(NAR)はライブ映像配信サイトを開設し、全国各地の地方競馬の競馬場から、パドック、返し馬、レース映像のすべてを無料で同時配信している。スマホ時代の今、なぜJRAだけBSの有料チャンネルでしか見られないようにしているのか?
(2017年6月に柿沢未途衆院議員が「一般財団法人グリーンチャンネルの競馬中継放送に関する質問主意書」として質問しているが、政府の回答は「政府としてお答えする立場にない」というものだった。同時に質問した「グリーンチャンネルの理事長および役員に農水省、JRAのOBは何人いるか」という質問には、「8人のうち農水省OBが1人、JRAのOBが5人」という回答だった)。
日本における電波行政がいかにデタラメで不透明なものであるかという問題を、日本のマスメディアはほとんど報じていない。同じ利権構造の中にいるからだろう。
放送電波は公共インフラではないのか? 視聴者はもっと怒らなければいけない。

Netflixの前に日本の娯楽業界は為す術なしか?


最近、WOWOWで『The Sinner』の第3シーズンを全話一挙放送していたので、録画して数日かけて一気に見た。
恥を忍んでいえば、アメリカでここまでのレベルのドラマを制作しているとは思わなかった。こうした人間の複雑な深層心理まで掘り下げ、なおかつリアルな描写をするサスペンスドラマは、欧州ものばかりだと思っていたのだ。
アメリカのテレビドラマでは、今までCSのスーパードラマチャンネルで『メンタリスト』や『ブラックリスト』などを全話録画して見ていたが、あのレベルというか、ああいうテイストがアメリカのドラマで、『ブリッジ』や『キリング』のようなドラマはイギリスや北欧でしか作られていないと思っていた。
しかし、それは知らないだけだった。
『The Sinner』のシーズン1と2を見たいと思って捜したところ、Netflixで見られることが分かった。というよりも、シーズン2以降は、Netflixが主体となって制作しているらしい。
Netflixの契約者は2020年末時点で2億370万人だそうだ。日本でも2020年8月末時点での有料会員数が前年比200万人増の500万人を突破したという。
この500万人というのはまだまだ少ないと感じる。
Netflixでしか見られない作品は多数あり、しかも『The Sinner』のような一級品も多い。
作品の質の高さもさることながら、技術の先進性や安定度にも感嘆させられる。
わざと本番障害を起こしてすぐ復旧させることを繰り返して実際の障害発生に備える、という「カオスエンジニアリング」を実践したり、低いビットレートでも高画質で見られる技術を追求したりと、純粋な技術面でのレベルの高さはいうまでもなく、ソフト的な技術追求のレベルも極めて高い。
Netflixが持つ視聴嗜好のプロファイルデータは3億人分に上り、常にどんな作品が好まれるかを分析し、作品の制作指針を立てているという。万人にうけるものはえてして俗悪なものになりがちなので一概に誉められたことではないが、未だに前世紀の遺物である「視聴率」に頼っている日本のテレビ業界が太刀打ちできるはずもない。
Netflixの昨年度の年間収益250億ドル(前年比24%増)。営業利益は76%増の46億ドルだそうだ。
利益率約18%というのはネット事業としては少ないほうだという。2019年度は年間収益201億5,600万ドルに対して利益は26億ドルで、利益率は12.9%とさらに低かった。
これは、同社が利益の大半を作品制作費に投入しているからだという。
オリジナル作品制作費は2018年度が120億ドル(1兆3,200億円)、2019年度は153億ドル(1兆6,830億円)で、これは日本の民放キー局1社あたりの番組制作費(多くて年間1000億円程度)の10倍以上だ。日本国内5社の制作費を合計しても5000億円には届かないから、その3倍以上。
これだけ金のかかったオリジナル作品を、定額の契約料(画質と同時視聴人数によって、月額税込990円~1980円)だけで見放題になるのだから、日本でも契約者数がWOWOWやスカパー!を抜いたのは当然だろう。
ちなみにWOWOWの2020年度末の契約者総数は約279万件スカパー!の契約者数は約310万件である。
WOWOWは1984年「日本衛星放送」として、スカパー!は1985年に日本通信衛星(JCSAT)として出発して、どちらも35年以上の歴史がある。それが日本進出して6年に満たない(2015年9月から日本でのサービス開始)Netflixに大敗している。
契約者数の推移を見ると、WOWOWは2018年12月時点で290万人を超えていたのが2020年12月には278万人と、2年で12万人ほど減らし、スカパー!は2018年に325万人だったのが2020年には310万人と、2年で15万人減らしている。
ステイホームだの巣ごもりだのといわれて「おうち時間」が増えたはずの2020年度に契約者が離れていったというのはどういうことか。おうち時間が増えてじっくりテレビを見るようになった契約者が「なんだ、NetflixがあればWOWOWやスカパー!はいらないし高すぎるじゃん」と気づいたからだろう。
我が家ではWOWOWもスカパー!(110度CSの基本契約パック)も契約していたが、Netflix加入後、即、スカパー!は解約した。
スーパードラマチャンネルで見ていたドラマはほぼすべてNetflixでいつでも見られるし、ニュース番組もネットで24時間生配信している。残るはMusic Airでやっているアメリカのスタジオセッションや日本の無名ジャズバンド、アーティストたちの演奏録画あたりだが、それも滅多に「当たり」に巡り会うことはないので……。
スカパー!はもう「オワコン」だろう。スカパー!は2012年度には383万人の契約者がいたが、それから8年で72万人が契約解除している。
慣れというものは怖ろしいもので、今まで月額4389円を垂れ流していたのだなあ。
WOWOWはまだ解約まではしていない。WOWOWでしか見られないものの代表がテニスの4大大会生中継だが、これだけのために月額2530円はちょっと……と考えてしまう。
ついでにいえば、NHKは現在受信契約料金が月額2170円(クレジット・口座引き落とし払い)だが、地上波だけだと1225円である。せめてこれの逆バージョン、つまりBSだけの契約コースというのを設定してほしいものだ。地上波NHK、特に地上波のNHK総合は月額1000円以上の金を払ってまで見なければならないようなコンテンツがないからだ。

まあ、それは個々人の価値観や経済事情に関わることなので、ここでは深入りしないでおこう。
ただ、ひとつ言えるのは、
ドラマや映画、コンサートの映像など、リアルタイムで見る必要のないものを「放送」で視聴する時代は終わった ……ということだろう。
時間に縛られる上に、だらだらと広告を見せられる。それだけでも地上波放送は弱点だらけであり、番組の提供形態としてはネットのオンデマンド配信に勝てない。
Netflixは他のネット配信サービスに比べて、ユーザーインターフェースが優れていることにも感心させられる。サクッと間髪を入れずつながるし、途中で止めても、次に見るときはなんの前触れもなくそこから続きを視聴できる。
テレビのリモコンでほぼすべての操作がサクサクできる。
モバイル端末には作品を丸ごとダウンロードすることもできる。
これだけできて、月額1490円(税込/スタンダードコース)。
このスタンダードコースというのは1080pの解像度で再生でき、同時に2画面で再生できる。アカウントを共有すれば、離れた場所に住んでいる家族などが、同じ時間、違う場所で、別々に視聴できる。家の居間で妻と子供がNetflixのドラマを視聴中、出張先のホテルで夫が別の番組を見る、などということが同一アカウントで可能なのだ。このシステムは、受像器1台ごとに契約しなければならないWOWOWなどとは大違いだ。
ダウンロードもできるNetflixは、電車内で、通信料金ゼロでドラマや映画を観ることもできる。
番組の質と数だけでなく、システムの上からも、WOWOWやスカパー!がNetflixに勝てる可能性はない。

このままでは日本全体が完全に「オワコン」になる

アメリカは今混乱のただ中で、ひどい面ばかりが目につく。しかし、GAFAにしろNetflixにしろ、腐ってもアメリカだなあ、とつくづく思う。
アメリカも日本も格差社会であり、その格差がどんどん広がっているが、アメリカはあらゆる面で「できる人たち」が活躍できる仕組みが生きている。
日本の格差社会は、金持ちがルールを逸脱してどんどん資産を増やし、庶民の生活が圧迫され、その結果、教育や文化が廃れていくという格差であって、本当に救いがない。
もう手遅れかもしれないが、完全に社会が崩壊する前に、なんとか教育をはじめとする社会制度を根本から改革していき、個人の才能や努力がしっかり花開き、他者の幸福に寄与するような社会に変えていかないといけない。
Netflixの社員の半数はエンジニアだという。技術者といってもいろいろで、システム開発だけでなく、ソフトウェアの解析や、より高いレベルの作品を生み出すための環境作り、発想やデザインを提供するという「技術者」も含まれる。日本の企業のように、上司からハンコもらうために書類の山と格闘したり、実りのない会議のために満員電車で出社したりする社員はいないのだろう。そういう部分をまずは変えていかないと、どうにもならない。

私たちジジババ世代はもう人生の残り時間がないので、なんとか今をやり過ごしながらうまく死んでいくことを考え、なけなしの金で工夫しながら生活を続けている。
でも、若い人たちは、このままの日本では本当に悲惨な将来しか待っていない。
ネトフリあればテレビなんかいらね~、と喜んでいるだけではダメなのだ。若い人たちが、ただ与えられ、消費させられるだけのゾーンに組み込まれてしまったら、社会は進化しないし、文化は廃退する。どんな分野でもいいから、自分たちが主役になる人生を勝ち取ってほしいのだ。



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菅正剛氏スキャンダルで浮かび上がった「電波利権」とは何か2021/02/27 22:20

テレビが言えない地デジの正体(2009年刊)
 菅首相の長男・菅正剛氏が総務省幹部らを接待していたというスキャンダルで、メディアは連日騒いでいる。
 しかし、そもそもなぜそういうことが起きるのかという「電波利権」の構造について解説してはくれない。テレビ局や新聞社にとって、いちばん公にしたくないことだからだ。
 電波利権とはどういうものなのか?
 2009年に上梓した『テレビがいえない地デジの正体』という本(ベスト新書)を読み返してみた。
 元原稿がファイルとして残っていないのだが、下書き段階のものがあった。出版されたときの文章はかなり変わっているし、データ(数字)も十数年前のものになっているので、ポイントをおさらいしながらまとめてみる。

田中角栄と電波利権の始まり

 地上波(UHFやVHF電波)放送は、電波が一定範囲しか届かない、あるいは、隣接する放送局は混信を避けるために十分に間隔をあけた帯域の電波を使うと決められている「不便さ」が、むしろ特別な権益を生み出す。特定地域の視聴者を簡単に「囲い込む」手段になるからだ。
 これにより、地方局は地元企業のテレビ広告を一手に独占できるだけでなく、ローカルニュース送信によって、情報を意のままにコントロールすることもできる。
 テレビ創生期、各地の有力者たちは、こぞってテレビ局を開設したがった。一度、放送免許を得てしまえば、半永久的に、莫大な権益を持つことになるからだ。
 地方テレビ局の誕生には、田中角栄が大きく関係している。
 田中は1957年、39歳の若さで岸内閣の郵政大臣に就任した。
 このとき、日本のテレビ局は、NHKが11局。民放は日本テレビ、ラジオ東京(TBS)、北海道放送、中部日本放送、大阪テレビの5局しかなかった。他にフジテレビとNET(現テレビ朝日)に予備免許が下りていたが、放送はまだ始まっていなかった。
 こんな状況で郵政大臣に就任した田中は、各県ごとに利権を一本化し、一気に34の地方局に放送免許を出した
 一旦開局すれば、テレビというメディアは巨大な利権を生む。かくして、政界と放送局は当初から密接な関係を保ってきた。錦の御旗のように使われる「報道の自由」というスローガンだが、テレビ放送においては、スタート時点からすでに危ういものだったのだ。なにせ、お上から免許が下りないと放送事業は始められないのだから。
 今では考えられないが、地方局のニュースでは、地元出身の政治家が「お国入り」するたびに映像付きで紹介した。これほど強力な選挙運動はない。
 一時期、田中は選挙区のある新潟放送で、「国政報告」の形を取った30分のテレビ番組を2つも持っていた。これに類したことは、田中だけでなく、全国で普通に行われていた。

4大ネットワークはこうしてできた

 現在の4大ネットワーク(JNN、NNN、FNN、ANN)の編成にも政治が大きく関与している。
 1972年、首相になった田中角栄は、全国のテレビ局を大胆に再編成することに乗り出した。これは、無視できない巨大メディアに成長したテレビを傘下におさめたいという大手新聞社の戦略に応えるものだった。
 1973年12月、朝日、読売、毎日の3大新聞社が首脳会談を行い、テレビ局ネットワークと新聞資本を再編成・統一することで合意した。これにより、東京放送(TBS)の新聞資本は毎日新聞社のみに。それまで東京放送(TBS)の準キー局だった大阪の朝日放送は朝日新聞社系列下に。その代わり、毎日放送(MBS)がTBS系列(JNN)に。毎日放送とネットワーク提携していたNET(日本教育テレビ。現テレビ朝日)は朝日放送のネット(ANN)に……といった大幅な再編成が成立した。
 現テレビ朝日の前身であるNETは、設立した1957年時点では、日本経済新聞社、東映、旺文社などが中心株主で、免許交付の条件は「教育番組を50%以上、教養番組を30%以上放送する」というものだったが、1973年には「総合局」の免許が交付され、朝日新聞社が大幅に株式を買い増しして、事実上「朝日系列」に組み入れることに成功した。
 新聞社とテレビ局が完全に系列化することは、ニュース配信時などには情報をすばやく共有でき、取材も連携が取れるといったメリットもあるが、複数の視点による報道、報道が政治権力から独立するという観点からはデメリット、危険性もはらんでいる。
 テレビの不正を新聞社が暴く、あるいはその逆のことができにくい
 放送免許という首根っこを押さえられている放送局が追及しづらい政府のスキャンダルを、新聞社が先陣を切って報道するということもしづらくなる。
 地デジ化を巡る報道などはその端的な例だった。テレビ局の利権に直接関わる問題だけに、新聞も大きく扱わないし、扱ったとしても、問題の核心には迫らず、表面的な報道に終始する。
 新聞社とテレビ局の完全系列化は、報道の基本精神を脅かす危険なものだったと言えるだろう。

携帯電話料金がテレビ局を支えている

 放送局や携帯電話会社にとって、特定の電波帯域を使える権利は大変な資産であり、莫大な利権が発生する。
 では、一旦電波帯を割り当てられた放送局にとって、電波は「ただ」なのだろうか?
 日本では、1993年5月までは実質「ただ」だった。
 1993年5月からは、「電波利用料」というものが導入され、すべての「無線局」は、電波を利用するための利用料金を支払わなければならなくなった。
 この「無線局」というのは、放送局も入れば、携帯電話の利用者(携帯電話端末)も該当する。携帯電話の電波利用料は1台あたり年間140円(当初は540円。その後420円になり、2008年10月より250円、現在は140円)。携帯電話会社が利用料金に組み入れて徴収し、まとめて支払っている。
(2017年度に携帯電話事業者が支払った電波利用料の総額はNTTドコモが167億円、KDDIが114億円、ソフトバンクが150億円だった)。
   一方、テレビ局が使っている電波帯域は非常に広いが、2005年度以前には、年額わずか2万3800円だった。これに対して、携帯電話は当初一律1台540円で、個人で使う携帯電話機1台とテレビ局の電波使用料が44倍しか違わない。つまり、テレビ局の電波使用料が携帯電話機利用者44人分でしかないという、とんでもない料金制度になっていた。
 2005年度からは、使用する電波の帯域幅や地域の人口密度、出力などを考慮した算出法になったが、それでも全国のテレビ・ラジオ局が支払っている電波利用料は携帯電話事業者が支払っている電波利用料に比べれば極端に安い。
 2015年の電波使用料内訳を見ると、携帯電話キャリアのNTTドコモ 201億円、KDDI 131億円、ソフトバンク 165億円に対して、公共放送のNHKが約21億円、日本テレビ系列は約5億円、TBS系・フジテレビ系、テレビ朝日系、テレビ東京系は約4億円で、テレビ局が支払った電波利用料は利益に対して1%未満という微々たるものだった(Wikiより)。

電波利用料がどう使われているのかも不透明

 電波利用料は、「総合無線局監理システムや電波監視システムの整備・運用、周波数逼迫対策のための技術試験事務、携帯電話の過疎地での基地局維持・設置」などに使われることになっているが、2001年度からは地デジ化のために巨額が使われた。テレビ局のことを、なぜ携帯電話利用者が負担しなければいけないのかという疑問の声があったが、結局は押し切られた。
 ついでに言えば、電波利用料の一部は、総務省の出先機関で、美術館のチケット代や野球のボール代など、職員のレクリエーション費にも使われていた。2008年5月、民主党の調査で分かったものだが、民主党の指摘を受けて調査した総務省の発表によれば、計11ある地方総合通信局のうち6つの通信局で、チケット代、ボール代、ボーリングのプレー代などが支出されていたという。民主党の調査では、他にもラジコン購入費や職員のレクリエーションに使った貸し切りバス費用などもあるという。
 これに対して、増田寛也総務相(当時)は、「法律上書いてある」ことで、法的には問題がないとの考えを強調した。

英国BBCを蹴ってグリーンチャンネルを入れた総務省

 BSの電波帯再編における利権争奪戦にまつわる話をさらにまとめると、2009年、BSのアナログハイビジョン放送(NHKが2チャンネル、WOWOWが1チャンネル持っていた)を廃止して、空いた帯域にデジタル放送を入れるという再編時、フルハイビジョンなら6チャンネル分、標準画質なら24チャンネル分が空くことになった。それに加えて新規にBS19という「空き地」へ、18企業・団体から合計22チャンネル分の応募があったが、総務省は英国BBCや米国ディズニー社を落として、スターチャンネル、アニマックス、グリーンチャンネル、Jスポーツなどを「合格」とした
 グリーンチャンネルは「財団法人競馬・農林水産情報衛星通信機構」というところが運営しているが、これは農水省、総務省共同管轄委託放送事業者。日本中央競馬会の関連法人でもある。
 グリーンチャンネルはすでにスカパー!で放送をしていたが、このBS格上げによって、一気に価値の高い「BS委託放送事業者」になった。
 その一方で、英国BBCが「家族層向けのドキュメンタリーやドラマなど娯楽番組の有料チャンネル放送をしたい」という申請は蹴ったのだ。
 これによってどれだけの日本国民が良質の番組を見る機会を失ったことか! ああ、BBC!! 『モンティパイソン』や『グレートブリテン』見たかったよ!! BBC制作のドキュメンタリーが東京五輪問題をどう扱ったのか見たかったよ!!

 今回話題になった菅正剛氏関連のスキャンダルでは、東北新社傘下の「囲碁将棋チャンネル」のBS入りに疑惑の目が向けられたが、こうした不透明な決定は今に始まったことではないのだ。

地上波はローカル放送にして全国ネット番組はBSやネット経由で流せ

 放送事業者選定の不公正感もひどいが、電波帯域の無駄使いも目に余る。
 現在、BSでは広帯域を使う4K放送が始まっているが、内容をしっかり見てほしい。通販番組やら大昔のドラマの再放送(当然画質は粗い)を平気で流している。
 そもそも4K放送など必要なのか? NHKの朝ドラなどはハイビジョン画質と4K放送を同時に流しているので、BSの4Kチャンネル対応チューナーを内蔵したテレビがあるなら見比べてみてほしい。画質の差など分からないし、目を凝らして多少の差が分かったとしても、それがなんだ、という話だ。大切なのは番組内容の質だろうが。
 今回、菅正剛氏が関わる接待スキャンダルで注目された「囲碁将棋チャンネル」は、かつての標準画質のままの番組を流しているので、最後に余ったスロットに割り当てられたのはある意味当然なのだが、それだってもっと違う活用法がある。
  BSのハイビジョン画質1チャンネル分の帯域は、昔の標準画質なら3チャンネル分送信できるのだから、4対3画面時代の再放送をしているのはもったいない。かつての標準画質番組を再放送する専用の狭い帯域のチャンネルとして設けてくれたほうが「囲碁将棋チャンネル」よりは多くの視聴者が喜ぶだろう。囲碁将棋番組はネットでのオンデマンド配信に向いている内容であり、BSでリアルタイム放送する意味はない。

 長くなってきたのでそろそろまとめたい。

 この拙著で私が主張したかったのは、
  • テレビ放送をデジタル放送に移行するのはいいとして、なぜ「地上波」でやる必要があるのか。BSやケーブルテレビ、インターネット回線を使えば全国どこでも同じ数のテレビ局が見られるのに、わざわざ「地上波」にして地域格差をつけるのは利権保守以外の目的は考えられない。
  • 電波は公共財なのだから、裏で変な取り引きをせず、入札や電波利用料をすべて公開して、視聴者の利益を守れ
 ……ということだ。
 10年以上経っても、何にも変わっていない。

 7万円の接待で何を食ったかなんてどうでもいい。総務省とメディアのズブズブ関係によって、我々はもっと大きな損失を被っているのだ。

オマケ:顛末記

 この本は、校了して、印刷所で印刷が始まる直前の部数決定会議で、出版社の社長が突然「なんでこんなくだらない本を出すことになったんだ?」と激怒し、いまさら出版停止にはできないならと、部数を極端に減らした。2000だったか3000だったか忘れたが、とにかく当時の新書の刷り部数としてはありえないような数。書店にまともに並ぶのも難しい数で、まるで「売れては困る」というような異様な決定だった。
 さらには、担当編集者は出版直後に編集部を外されて異動になり、その後、退職してしまった。
 私のせいで熱心な若手編集者の人生まで狂わせてしまい、その後は本を出版することがすごく怖くなったものだ。
 担当編集者は、「何か圧力があったとは思いません。単純にこんなものは売れない、という言われかたでした」と説明していた。
 そうかもしれない。内容を知った政府筋から社長に圧力がかかった、などということはないだろう。単純に「なんでこんな売れそうもない本を出すんだ」ということだったのだと思う。

 10年以上経っても、人々が「与えられたもの」だけを受け入れ、消費していくという社会風潮は変わっていないわけで、電波利権の闇をどうにかしよう、などという本よりも、ゲームの攻略本や有名人のゴシップとか、金儲けの本とか、健康法の本とか、韓国・中国憎しみたいな本が売れる。
 ただでさえ本が売れなくなった時代に、物書きはどう生き延びるか……。そういうことも、今はもう深刻に悩んではいない。
 「一人に向かって」。一人が見えなければ「自分に向かって」、やれることをやる、という心境かなあ。



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地震で出てきた週刊プレイボーイと原発爆発後の10年2021/02/14 21:30

2012年3月19日号の週刊プレイボーイ
昨夜遅く(23時過ぎ)、大きな地震があった。
久しぶりに長く、かなり揺れたので、3.11のときの感覚が甦った。
幸い、棚からものが落ちたりギターケースが倒れたりしただけで、大した被害もなく収まったと思っていたが、一夜明けたら、仕事部屋の本棚が大きく歪んで、崩壊寸前になっているのが分かった。
壁に打ち込んでいたビスがすっぽ抜けて、大きな隙間ができている(↑)。

その隙間から週刊プレイボーイが出てきた。

なんでこんなものが? と引っぱり出してみた。何か楽しい写真でものっているのかとパラパラとめくっていくと、自分の写真と目が合ってビックリした。

すっかり記憶から消えている。改めて発売日を確認すると2012年3月のものだ。ということは、日光に引っ越してきてすぐの頃だなあ。

扉の写真は記者に撮られているが、いつどこでインタビューされたのか記憶にない。
改めて記事を読んでみた。3ページしかないので、ものすごく小さな字で組んであり、読みづらい。
 作家のたくき よしみつが7年近く住んだ福島県川内村を離れたのは昨年の3月12日、福島第一原発1号機の爆発映像がテレビに映し出された直後のことだった。
 自宅は原発から25km地点。心臓がバクバクした。放射能被曝の危険が迫っていた。
「逃げるぞ!」
 妻にそう告げると、身の回り品をザックに詰め、車で神奈川県川崎市の仕事場にたどり着いた。
……記事はそんな風に始まっている。

その後の展開について短くまとめると……、
  • 3月26日に線量計を手にして荷物を取りに一度村に戻ったが、実際、村の中の線量は村民が避難した郡山市内より低かった。
  • 地震による被害はほとんどなく、プロパンガスも井戸水も電気も使える。友人たちも村に戻り始めていたので、一緒に村を立て直すことに協力できないかという思いで、4月末に村に戻った。
  • 「失望はしていませんでした。いや、むしろ川内を魅力ある村へと再生させるチャンスかもしれないとさえ思っていたんです」
  • それまでの村は、多くの人が隣町にある福島第一原発、第二原発に関係する仕事をしていて、原発依存度が高かった。そのため、村本来の魅力である豊かな自然を生かして新しい産業やビジネスを興そうという動きが起きなかった。
  • 一方で、大規模風力発電施設、ゴルフリゾート、産業廃棄物処理場などの誘致話には熱心で、その都度、村では賛成派・反対派に分断されていがみ合い、自然環境がじわじわと壊されてきた。
  • そうした空気から脱却して、今度こそ本当の自立した村を作り上げるチャンスではないかと、主に移住者たちと話し合った。
  • しかし、そんな意気込みはすぐに消えた。東電からの補償金・賠償金バブルのようなことが起きて、多くの村民が、「村に戻ったら金がもらえなくなる。それなら今のまま、金をもらい続けて郡山と村を行き来する二重生活を続けたほうが楽だ」と考えるようになってしまったからだ。
  • 補償金の後は、除染ビジネスバブルのようなことも起きた。そっとしておけばまだしも、わざわざ内部被曝の危険を冒すような除染はすべきではない。
  • このままではどうにもならないと判断して、あちこち移転先を捜した末に、日光へ引っ越した。

……といった内容。


この記事や、講談社から出した『裸のフクシマ』という本のおかげで、多くの人たちから非難され、攻撃されたのを思い出す。

現在、川内村は、双葉郡の中ではいち早く立て直しに成功した村として知られる。よくここまで持ち直したな、と思う。隣接する町村に比べて汚染度合が低かったこともあるが、村長の手腕によるところが大きい。
清濁合わせて飲み込んで、難しいバランスをとりながら、着地点を探る。それが政治家の腕であり、求められる資質、精神性なんだと思う。
今、国のトップにいる政治家たちは、あまりにも欲ボケ、権力ボケ、金ボケしすぎている。

記事の最後にはこうある。
原発マネーでシャブ漬けのままでは、いくら帰村宣言をしても川内村の復興はおぼつかない。「原発ぶら下がり症」を克服するには、まず、この原因を作った東電や保安院、原子力委員会、原子力安全委員会、原子力機構などの原発村を解体して人間をすべて入れ替えることが必要です。

これを読んで、今の東京五輪組織委員会の騒動にも同じような構図があると改めて感じた。
「五輪マネー」にトンチンカンな期待をする人たちが、税金を好き放題使って社会を壊していく。その結果、オリンピックは本来の意義、素晴らしさを失い、統制不能の巨大怪物になってしまった。
東京五輪2020は、中止にするにしても、無理矢理無観客開催を強行するにしても、運営する組織のトップは大変な非難に晒され、あらゆる種類の困難に直面する。それを受け止めた上で、なんとか後始末を進め、その後の社会にさらなる悪影響を及ぼさないよう必死に努力しなければならない。それができるような、賢く、タフで、豪腕なリーダーがいるだろうか?
原発爆発後の10年を振り返れば、今からいい方向に軌道修正していける可能性は限りなく低いだろうと、絶望的な気持ちにならざるを得ない。

原発が爆発して、世界中に放射性物質をばらまいた直後の日本で、五輪開催に手をあげ、「復興五輪」だのというお題目をぶち上げた人たち。その傲慢さと無恥を、天はこれ以上許してくれるのだろうか。

今回の地震は、3.11や原発爆発を経験しながら、そこから何も学ばないどころか、開き直って今まで以上の傲慢・強欲な社会を作ってしまったこの国への、天からの最後の警告なのではないかと感じた。
昨日の地震のおかげでこのプレイボーイ誌が出てきたのも、そういうことだったのかもしれない。

『阿武隈梁山泊外伝』

『裸のフクシマ』(講談社刊)の続編ともいうべき実録。阿武隈は3.11前から破壊が進んでいた。
夢や生き甲斐を求めて阿武隈の地へ棲みついた人たちがどのように原発爆発までを過ごし、その後、どのように生きることを決断していったか。
なかなか書けなかった赤裸々な実話、エピソードを時系列で綴った記録。
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Kindle版もあります⇒こちら

3.11後を生きるきみたちへ

↑東京女学館はじめ、複数の私立学校で入試の国語長文読解に採用されました。これは私の「遺言」です。Amazonで購入で購入は⇒こちら



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GoToキャンペーンの「実態」を見よ!2020/07/16 15:07

申請の方法すらまだ「調整中」と言いながら強引に発車
日本政府は、当初から非難囂々だった「GoToキャンペーン」なるものを、当初の予定より前倒しして、2020年7月22日からスタートさせると言っている。
もはや正気の沙汰ではない。
メディアもSNSも「コロナ感染拡大を招く」という論調だが、それ以前に、このキャンペーンの実態を把握していないのではないか。
もう、ほんとにこういうのにつき合うのは嫌なのだが、観光庁の最新のFAQ集から重要ポイントを簡単にまとめてみたので、ぜひ確認してほしい。
とにかく分かりにくい。何度読み直してもよく分からない。しかも「詳細は調整中であり、近日中に改めてお知らせする」なんて答えが随所に出てくる。多分、業界内でも正確に把握している人は少ないだろうし、「詳細は調整中」のまま強行するらしい。

  1. 基本的に、このキャンペーンに登録した旅行業者のツアーが対象
  2. それ以外の個人旅行は、旅費などが対象外であるのはもちろん、宿泊代金も、宿泊先の旅館やホテルなどがキャンペーン登録業者であることが必要
  3. 宿泊業者などが旅行業者を通じずに宿泊させた客などにキャンペーン割引きをするためには、「宿泊施設の予約システムを通じて宿泊記録が外部に確実に蓄積・保管される仕組みが構築されているなど、適正な執行管理のための体制が確保されていること」を条件とした事前登録が必要。
  4. 個人での旅行では、事後に宿泊代の領収書原本、申請書、宿泊証明書(旅館側が発行)、個人情報同意書などを提出する必要がある。
  5. その申請先の事務局はまだ立ちあがっておらず、現時点でもまだ「調整中」いつから申請できるかも「調整中」
  6. 割引適用率は50%で、一泊最大2万円まで。
  7. その50%のうち3割(全体の15%)は9月以降に発行予定の「地域共通クーポン」であてられるので、現時点での旅行では関係がない。よって、現時点での割引きは最大で35%。一泊4万円以上のツアーの場合、その50%の2万円の70%である1万4000円割引きが最高額となる。
  8. 旅行会社の判断で、割引率をきっちり35%にしなくてもよい。
  9. 日帰り旅行では最大1万円というが、旅行会社が組んだツアー旅行だけで、個人で旅行をしたらまったく無関係

●要するに、基本、旅行業者を通さない個人旅行は蚊帳の外。全然関係ない
●三密を避けてなるべく人と接触しないで旅行をするというなら、個人や夫婦などで車を使ったささやかな旅行などをイメージするが、そういうものはまったく対象外。逆に、旅行会社を通した団体旅行(修学旅行や社員旅行など)は丸ごと適用される。
●旅行代理店・業者を通じない個人旅行では、泊まった旅館が登録業者になっていなければならないが、旅館側も「そんな話は聞いていないので何も分からない」と言っている。
●旅館が登録業者になるための手続き申請方法も、個人が後から宿泊代の35%をペイバックしてもらうための申請方法も、未だに「調整中」。準備も何もできていないのに22日からスタートするというありえないお話。
●割引適用の宿泊数に制限はないので、例えば旅行業者を通じて夫婦で一泊4万円以上する旅行を10泊分するならば、旅行会社に支払う金額のうち最大で28万円割引きされる。……庶民とは無縁の話。

Q:本事業による割引旅行・宿泊商品を取り扱う事業者となることを希望しているが、国(事務局)への参加事業者登録はいつから始まるのか。また、具体的にどのような内容を申請することになるのか。

A:参加旅行業者・宿泊事業者の登録は、7月半ば頃から開始することを予定している。詳細は、観光庁HPなどを通じてお知らせする。例えば、事業者の名称・所在地・連絡先、給付金の振込口座等の情報を事務局に申請いただくこと等を想定しているが、いずれにせよ近日中に改めてお知らせする

Q:参加事業者の登録前に商品を割引で販売することは可能か。既存の予約分については予約の時点で登録ができていないが、還付の申請はできるのか。

A:不可。予約の時点で登録ができていない場合であっても還付の申請はできる。ただし、要件を満たさない等の理由により事業者の登録が認められない場合は割引や還付の対象とはならない
観光庁 Go To トラベル事業 よくあるご質問(FAQ)7/13(月)時点版 より)

↑何度読み返してみても、すでに登録済みの旅行業者(あらかじめ選別していた?)を通じての旅行以外ではまったく無理。旅館等がキャンペーン割引き適用の予約を直接取ることも事実上不可能。

結局、13年超の中古車には自動車税を割増し課税するが、「エコカー」認定された高級車を新車で買えば減税するという悪法と同じ、富裕層相手の税金ばらまき。しかも、その予算の多くは「事務手数料」にあてられている⇒アベノマスクと同じ、ピンハネ商法。

こんなものを強行したらどうなるか?
地域経済を混乱させ、地域間ヘイトを無用に増大させ、小規模事業者や個人経営者には今以上に客が回らないようにさせるという、恐ろしいキャンペーン。
そのために使われる金は税金。まさに「GoTo(強盗)」である。

★これを何度か書き直しているうちに、今度は「東京発、東京への旅行は除外する」とか言いだしたらしい……ほんっとに恥ずかしい。

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厚労省が介護現場を混乱させている2020/06/21 14:43

厚労省からの通達
まずは、以下の文章をすんなり理解できるかどうか、読んでみてほしい。
 新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の取扱いについては、「新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて」(令和2年2月17日付厚生労働省老健局総務課認知症施策推進室ほか連名事務連絡。以下、「第1報」という。)等でお示ししているところです。
 本日、通所系サービス事業所(通所介護、通所リハビリテーション、地域密着型通所介護、認知症対応型通所及び介護予防認知症対応型通所介護。以下、同じ。)と短期入所系サービス事業所(短期入所生活介護、短期入所療養介護。以下、同じ。)については、介護支援専門員と連携の上、利用者からの事前の同意が得られた場合には、新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応を適切に評価する観点から、別紙に従い、介護報酬を算定することを可能としたことから、管内市町村、サービス事業所等に周知を図るようお願いいたします。また今回の取扱いについてわかりやすくお伝えする観点から参考資料を作成いたしましたのであわせてご確認ください。
(「係る」や「取扱い」という送り仮名は原文ママ)

これは6月1日付で「各都道府県 指定都市 中核市 介護保険担当主管部(局) 御中」という通達先のもとに厚労省から出された「事務連絡」である。
私も含めて一般人?には、なんのことだかさっぱり分からないだろうから、ザックリと意訳すると、
  • コロナで苦労しているだろうから、利用者が同意すれば、介護報酬額を2段階UPして請求できるようにしたよ
  • そのUPの仕方については資料をつけたから参照してね
  • このことを自治体の行政関係者、介護サービス事業者たちにしっかり知らせなさいね
  • 介護報酬点数の計算をしているケアマネ(介護支援専門員)はしっかり調整してくださいね
……というような話なのだ。

この「利用者が同意すれば」という部分はどうするのかといえば、
必ずしも書面(署名捺印)による同意確認を得る必要はなく、保険者の判断により柔軟に取り扱われたいが、説明者の氏名、説明内容、説明し同意を得た日時、同意した者の氏名について記録を残しておくこと。
また、当該取扱いを適用する場合には、居宅サービス計画(標準様式第6表、第7表等)に係るサービス内容やサービスコード等の記載の見直しが必要となるが、これらについては、サービス提供後に行っても差し支えない。
厚労省サイトのQ&A ⑬の3 より)
……なのだそうだ。

「保険者の判断により柔軟に取り扱われたい」???

当然のことながら、目下、介護現場は大混乱である。特にケアマネ(介護支援専門員)は大迷惑だ。
以前にも、アベノマスクの配達員代わりにされているケアマネの悲劇については紹介した(厚労省がケアマネを「アベノマスク無料配達員」にする恐怖 4/15投稿)が、ただでさえ大変な仕事がコロナでぐちゃぐちゃになっているところに、さらにとんでもない仕事を押しつけられているのだ。

厚労省の官僚が徹夜すればするほど現場は疲弊・混乱する

単に「仕事が大変になる」という話ではない。理不尽なことを間違ったやり方で押しつけてくる霞が関の思考回路崩壊が大問題なのだ。

  • 要介護認定を受けている利用者の多くは、介護保険の利用限度額いっぱいを使っており、超過分は自己負担している。その状態で「2段階UP」による介護報酬ポイント分は、当然、利用者が負担することになる。
  • それでも、介護事業者はコロナのせいで利用者が減ったり事業所の一時閉鎖などがあってただでさえ大変な状況の中、こんな馬鹿な措置であっても、少しでも収入の足しになるなら……と思う。しかし、その事務作業はケアマネが行う
  • 利用者の同意を得ることが前提となっているが、その「同意を得る」のは誰がどのようにやるのか? これまた当然、ケアマネが苦労させられることになる。
  • 「介護支援専門員(ケアマネ)と連携の上、利用者からの事前の同意が得られた場合」というのは、ケアマネが利用者に伝えずに「同意しない」と拒否するケースを許容しているのか? それとも、ケアマネは利用者にこの内容を伝えた上で同意を取るように動けと命じているのか?
  • ケアマネを通さず、事業者側が利用者に直で同意書を手渡しているケースがすでに多数出ていて、ケアマネ事務所には利用者からの問い合わせが殺到している。
  • 利用者は認知症であることが多いし、ただでさえ難解なこの悪文の内容を利用者や利用者家族に説明するだけでも大変な苦労を強いられる。利用者の負担額が増える可能性があるわけだが、そこまで説明しても、利用者は「同意をしないと不利益になるんじゃないか」と、余計な不安を抱え込む。
  • 板挟みになっているケアマネの報酬は増えるわけではない
……一体誰が得をするのか?

この処置も含めて、厚労省のコロナ対応「まとめ」ページには膨大な内容が詰め込まれていて、次から次へと通達が出ていることが分かる。
厚労省は机上の論理で考え、通達しているだけだが、それでもこの仕事量は半端じゃない。毎晩徹夜している職員もいることだろう。
しかし、そんな風に厚労省が仕事に励めば励むほど、介護や医療の現場は混乱し、余計な仕事を背負い込まされ、介護・医療従事者は疲弊し、精神もやられ、事業の質が落ちていく。最終的には介護や医療の事業そのものが破綻しかねない
「霞が関の優秀な官僚が日本を支えている」という神話は完全崩壊している。それこそが、今の日本がいかに危機的状況であるかを知らしめている。

コロナのおかげで、今まで表に出てきづらかったことが次々に可視化されてきた。これをきっかけに、この国をいい方向に向かわせることはできるのか? 舵取りをするべき人たちの能天気ぶり、悪代官ぶりを見るにつけ、絶望のどん底に落ちていく。

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