いまだにウクライナ紛争の実相を見抜けない人たち ― 2025/03/05 14:37
せっかく停戦目前となっていたウクライナ紛争の行方が、これでまた混沌としてしまったわけだが、どういうわけか、この会談に対して、多くの日本人、欧州人が「トランプが悪い」「ゼレンスキーが可哀想」といった馬鹿げた反応をしている。信じがたいことだが、西側メディアのプロパガンダはそれほどまでに強力な洗脳を達成しているのだ。
この会談の全編がNHKのサイトに日本語訳されている。⇒こちら
まずはこれをちゃんと読んでみよう。
トランプは終始、「とにかくこの戦争を一刻も早く終わらせたい。自分はそのための取り引きに本気で取り組んでいる」と言っている。
それに対してゼレンスキーは、大嘘を散りばめながら、ロシアとプーチンへの罵詈雑言を繰り返し、「停戦だけでは駄目だ」「米欧と一緒にロシアの侵略を止めなければならない」「そのための支援がさらに必要だ」と主張して譲らない。
一部をNHKの翻訳から抜き出してみる。
トランプ:
「プーチン氏に肩入れしてはいない。誰にも肩入れしていない。アメリカに肩入れしているのだ。世界のためになるように、世界に肩入れしている。
このこと(戦争)を終わらせたい。
(視聴者や記者に向かって)彼(ゼレンスキー)がプーチン氏に抱く憎悪がわかるだろう。私がこうした憎悪を抱えて取り引きをするのは大変なことだ。彼の憎悪はとてつもない。理解はするが、相手方も彼のことが気に入らない。つまりこれは誰かに肩入れするという問題ではない。世界に肩入れし、このことを片づけたい。ヨーロッパにも肩入れしている。これを終わらせられないかと思う。」
「あなた(ゼレンスキー)は何百万という人々の命を賭けの対象にしている。第3次世界大戦が起きるかどうかを賭けたギャンブルをしている。そしてあなたがしていることは、あなたたちを多すぎるほど支援してきたこの国に対してとても失礼だ。」
ウクライナは兵力が不足している。いいことかもしれない。あなたは『停戦はいらない、停戦はしたくない。まだやりたい。あんなものがほしい』と言う。もし今すぐ停戦できるなら、銃弾を止め、兵士が殺されるのを止められるよう、受け入れるべきだ。
これに対して、
ゼレンスキー:
私はわれわれ(ウクライナ)で止めることを望んでいる。本当に私たちは止めたい。安全の保証について言えば、ヨーロッパが有事に備えるとき、アメリカの支援を必要とする。アメリカがいなければ、ヨーロッパからの強力な有事の備えは決して得られない。なぜなら彼らは、主要かつ最強の同盟国であるアメリカとのつながりを分断したくないからだ。これは極めて重要だ。……などと、とにかくプーチンが悪い、プーチンを止めるためにアメリカの協力がほしいという一点張り。
われわれは非常に多くのことを話したい。防空体制について、われわれはこれらのシステムで大きな弱点を抱えていて、(軍事援助を)とても必要としている。そうでないと、プーチンは決して止まらないだろう。そして、さらに先へ進むだろう。
その態度にバンス副大統領がキレて、トランプもどんどん突き放すようになっていき、喧嘩別れのようになった……という、メディアにとっては格好のハプニングドラマになった。
ゼレンスキーはこの会談で、
「彼(プーチン)はウクライナの東部とクリミアという大きな部分を2014年に占領した。それから何年も。バイデン前大統領だけでなく、当時のオバマ大統領、トランプ大統領(1期目)、バイデン大統領、そしてトランプ大統領(2期目)。ありがたいことにトランプ大統領が彼(プーチン)を止めてくれるだろう。しかし2014年に止める者はなかった。彼はただ占領してわがものとした。人々を殺した。」
「しかし、2014年から2022年まで状況は変わらなかった。人々は停戦ラインで亡くなり、誰も彼を止めなかった。ご存じのとおり彼とは大いに対話し、首脳会談も行い、署名もした。新しい大統領として2019年に彼(プーチン)とマクロン氏(フランス大統領)、メルケル氏(ドイツ前首相)と停戦合意に署名した。皆が、彼はもうしないだろうと言った。ガスの契約にも署名した。
しかしその後、彼は停戦を破り、ウクライナ国民を殺害し、捕虜交換に応じなかった。われわれは捕虜交換に署名したのに、彼は実行しなかった。」
……と言っているが、これは今もずっと続いている西側メディアによる「ロシアが一方的に悪い」というプロパガンダを繰り返しているに過ぎない。
ウクライナ紛争の発端は2014年のマイダンクーデターに遡る。
当時、何か不自然さを感じて、ウクライナ東部、いわゆるドンバス地方のロシア語話者ウクライナ人の視点から状況を見てみたいと思い、いろいろ探して学んだことは、2022年の日記に詳しくまとめてある。
時間が経って(老年性の惚けも進んで)いろいろ忘れているので、それらを読み返してみた。
- 2022年4月20日 21世紀の情報戦争を紐解く動画鑑賞会⇒こちら
- 6月9日 ウクライナ政府自身がフェイク報道を認めた⇒こちら
- 7月21日 日本はすでに戦争を始めている⇒こちら
- 9月23日 もう一つの情報戦争 米露最終戦の行方⇒こちら
その後3年間で事態はどんどん悪化したが、そもそもなぜこんなことになってしまったのかという理解は、当時の日記に書いた内容と基本的には変わっていない。
超簡単にまとめると……、
- ソ連崩壊後に独立国となったウクライナでは、ロシアが支援するヤヌコビッチや東部ドンバス地域のロシア系住民(総人口の2割)と、米国が支援するティモシェンコや西部地域のウクライナ系住民(総人口の7割)との政治闘争が続いていた。
- 米国政権のタカ派やネオコンは、ウクライナに親露政権ができるたびに反政府運動を支援し、政権転覆のやり方を指導してきた。その結果、2014年に、選挙を経て大統領となっていたヤヌコビッチを追放し、反露政権を立てるクーデターに成功した。これを裏で主導したのはビクトリア・ヌーランド米国国務次官補(当時。その後、国務次官)らで、CIAも暗躍した。
- これを機に、米国のタカ派指導者たちは、ロシアを潰すため、ウクライナを不安定化させ、戦場とすることでロシアを挑発し続けるという戦略を激化させた。
- そのためにウクライナの民族主義者、極右ネオナチたちを煽動し、ロシア語を公用語から外し、東部地域からロシア語を話すロシア系住民を排除する民族浄化策をやらせた。ネオナチで構成されるアゾフ大隊が中心となり、東部地域のロシア語話者住民への攻撃で、多くのウクライナ人が殺された。
- 命を脅かされた東部やクリミア半島の住民はロシアに助けを求め、ドイツ・フランスが仲介に入ってミンスク議定書が結ばれたが、まったく機能しなかった。
- その後も、ドンバス地域へのウクライナ軍の砲撃、虐殺などが続いたが、トランプ政権下時代は、プーチンはギリギリのところで大きくは動かずに耐えた。
- しかし、バイデン政権になってからはウクライナ軍のドンバス地域への攻撃が激化し、プーチンはついに武力介入に踏み切った。
こうした解析は視点を逆にした主張に転換すれば、まったく逆の内容になりうる。
それは当時の日記にもしつこく書いてある。
もちろん、戦闘状態の地域では、戦闘員のどちらかが完全に正義でどちらかが悪だ、ということはありえない。残虐行為などはどちらの側にもありえるだろう。その割合や精神的背景の違いは大いにあるだろうが。
住民も、東部地域にも親ウクライナ現政権の人たちは少数でもいるだろうし、住民を演じている役者もいるかもしれない。
そうした情報戦、認知戦は双方が仕掛けていることで、偽情報はどちらの側からも出ているだろう。
基本的には分からないことだらけである、ということを承知の上でも、常識的に考えれば「これは嘘だろ」と判断できる偽情報やプロパガンダがたくさんある。新コロ詐欺と同じで、あまりにもトンデモな嘘はかえって見破りにくいということもある。
日本ではそんなのばかりが大手メディアで流れていて、現地にしっかり食い込んだ取材に立脚した色づけされていない取材や報道が少なすぎる(ほぼ皆無)。このままではほとんどの日本人は瞞されっぱなしなわけで、大変危険な状況なのだ。
(2022年9月23日の日記 もう一つの情報戦争 米露最終戦の行方 より)
根拠も証拠もなく、扇情的な言葉を使ってロシア軍による性的暴行を公式発表し、喧伝したという理由でウクライナの人権監察官を解任されたリュドミラ・デニソワが垂れ流したフェイクニュースを、西側大手メディアはことごとく裏どりもせずにそのまま報道し、嘘だったと判明した後もろくな訂正報道やお詫びもしていない。
信じ込んだ読者・視聴者の多くは、3年経った今でも「ロシア軍の蛮行、虐殺行為」という嘘報道をインプットされたままだ。
むしろ、おぞましい犯罪行為を重ねていたのはアゾフ大隊に代表されるウクライナのネオナチ集団のほうだが、そうした報道は一切流れない。
これが「プロパガンダ」という戦争の正体だ。
「この戦争を一刻も早く終わらせる」という主張のどこが傲慢で恥知らずなのか
3年経っても、多くの日本人、あるいは欧州人は「プーチンは悪魔」「トランプは傲慢で恥知らずな専制君主」という「大前提」のもとでいろいろ言っている。状況を分析するのが面倒なら、せめて冷静になって、単純に考えてほしい。
「あなた(ゼレンスキー)は『停戦はいらない、停戦はしたくない。まだやりたい。あんなものがほしい』と言う。もし今すぐ停戦できるなら、銃弾を止め、兵士が殺されるのを止められるよう、受け入れるべきだ」(トランプ)
トランプ嫌い、プーチン嫌いは勝手だが、ウソだらけ、陰謀だらけの政治の世界では、まずは「よりマシな結果を得ること」が最重要だ。裏にどんな駆け引きがあろうとも、まずは戦闘をやめさせる。これ以上こじらせると、本当に核戦争に発展しかねない。
この主張の前には、どんな理屈も議論も意味がないと思えないか?
それさえも判断したくないというなら、この問題に関しては完全な傍観者となり、沈黙を守ればいい。
今も消されず視聴できる2つのドキュメンタリー映画
ちなみに、妻も当初は「どんな理屈をつけても攻め込んできたロシアが悪い」と怒っていたが、一緒にこの2つのドキュメンタリー映画を見た後は、自分でもいろいろ調べたようで、すぐにプロパガンダの怖さに気づいてくれた。今も削除を免れているようなので、ご覧になっていないかたはぜひ↓
『ウクライナ・オン・ファイヤー』
『ドンバス2016』
我が家では「家庭内分断」は避けられたが、日本国内の状況はまったく変わっていないどころか、ますます危険な状況になっている。
NATOのメンバーでもない日本がこれ以上この戦争に巻き込まれることは、日本に取り返しのつかない危険を呼び込むことになる。

『用務員・杜用治さんのノート』


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