長尾和宏医師のテレビ出演シーンを見て2021/09/18 15:31

読売テレビ番組より
長尾和宏医師が読売テレビの『そこまで言って委員会NP』に出演した部分をTVerで見た
YTV My Do でも公開されている。9月20日夕方まで無料配信中。⇒こちら

この番組には私も一度ゲストとして呼ばれたことがあるので、あのスタジオの雰囲気はちょっと懐かしい。

もっと聴きたいのにあまりにもあっけなく終わってしまい、残念な気持ちが残るけれど、地上波番組で発信するってのはこういうことなのよね。突っ込んだことを言ってもカットされるし。
でも、今回は長尾氏を好意的に応援したい門田隆将、厚労省や政府を代弁して長尾つぶしにかかる丸田佳奈、裏をある程度知っていながら言葉を濁して逃げる舛添要一(この人は40年前の『朝生』の原発論争のときからズルく生きるという態度は変わらない)……という構図がはっきり分かる編集で、ある意味、ちゃんと見る力のある視聴者には言外の事情も匂わせられたから、いいんじゃないかな。

このテレビ出演について、長尾氏はブログやメルマガで何度か振り返っているけれど、今日配信されてきたメルマガの最後はこう結んでいた。
早期診断、即治療すれば重症化を防げるのがコロナ。もう正体は割れています。
(有料メルマガからだが、1行だけだから、引用を許してほしい)

本は予約時点で完売、現在増刷中とのこと。ギリギリで予約が間に合い、私のところには昨日届いた。


思っていたより分厚くてビックリ(四六判で400ページ)。この人、一体いつ寝ているんだろう。私も文章を書くスピードは速いほうだと思うけど、それを超えている気がする。

2020年1月31日から2021年8月4日までのWEB日記がまとめられている。

驚くのは、ごく初期からCOVID-19に対して極めて冷徹な観察と適確な意見を述べていたこと。
2020年2月19日の日記では、
感染ルート探しも、接触者捜しも、感染者の入院先探しも、今後は、感染症のピークを小さくすることにどれだけ貢献するのか未知だ。それよりも今、優先することは「重症化」しそうな人の早期発見であろう。つまり「コロナ肺炎」を見逃さないことに尽きる。コロナ肺炎のスクリーニング(選別)に協力する医療機関に手を挙げさせて、国内約10万件ある医療機関を明確に二分して公表してほしい。(同書・20ページ)

……とある。
この部分をWEB上の日記の同日分と比較してみた。WEB上の日記原文?では、こうある。
感染ルート探しも、接触者探しも、感染者の入院先探しも、
今後は、感染症のピークを小さくすることには、利さない。
今、重要なことは「重傷者」(ママ)の早期発見である。
つまり「肺炎」を見逃さない、ことに尽きる。
そのスクリーニングに協力する医療機関を手挙げさせて
国内約10万件ある医療機関を明確に2分し公表するべき。

書籍化するにあたって細部を調整していることが分かる。しかし、主張部分は変えていない。2020年2月19日の時点で、彼はとにかく「重症化しそうな人の早期発見と、その人たちへの医療機関による早期治療が最も重要だ」という主張を続けていたのだ。
現場の医師の目がどれだけ正しかったかがはっきり分かる。

この本の「死なせへん」というタイトルとは裏腹に、長尾氏は「人は必ず死ぬ」ということを大前提として、様々な我欲や願望、煩悩、妄想を排除して思考していることがよく分かる。
彼のもとでコロナが直接の原因で死んだ患者は一人もいないのに対して、癌、老衰、誤嚥性肺炎などで死ぬ人を毎日のように見ている。夜中に携帯に連絡が入って、在宅看取りに出向くことも日常的にある。
そうした医療者としての生活を実践し、それが医師の生き方だという職業観を持っている人が綴ってきた日記。
コロナがどうのこうのという話を超えて、生き方、死に方を深く考えさせられる。
コロナは必要なものと不必要なものをあぶり出した。必要なものは、お酒、エンタメ、娯楽。人は「楽しむ」ために生きている、ともいえる。必要な「楽しみ」を奪うのは、日本もそろそろ終わりにしたい。(同書371ページ 2021年7月11日の記述より)


エビデンスが~、自粛が~、ランセットやネイチャーには~、と言って「評論」している「専門家」たちより、毎日ニコ動で貴重な情報を発信し、合間に本音を吐露し、最後はカラオケで歌謡曲を歌っているこの人の生き様を、私は圧倒的に支持したい。


           




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アベノマスクとスガルワクチン2021/09/02 20:04

SARS-CoV-2に感染した後、病院での診療を受けられないまま自宅で病状急変して死ぬ人の報道が続いている。
ワクチン接種後に急死する若い人のケースも伝えられている。
こういう事態が来るのではないかと、以前、書いたような気がするが、脳の劣化が激しくて、少し前のことは忘れてしまう。
で、改めて過去の日記を確認してみた。

……ああ、こんなことを書いていたのだな、と、確認できたところで、半年後の今の情勢を、分かる範囲で簡単にまとめておこう。

(これに関しては周囲から「消される(殺される)かもしれないから、もうこれ以上書くな」「危ないからやめて」と言われていて、確かに自分でも、どんどん身の危険を感じるようにはなっているので、医師が書いている文章、一次データ、メディアの記事などへのリンクを中心にしておく)

ワクチンと感染力に対する誤解

半年前に書いたことを読み返してみて、現在の認識とそれほどズレているわけではないが、感染力と重症化という点では、自分の中で、若干考え方が修整されてきたかもしれない。
  1. PCR検査で陽性になった人は「感染者」というよりは「陽性者」と呼んだほうがいい。陽性者の実数は発表されているよりはるかに多い。
  2. ウイルスが人間の細胞内にとりつくと「感染」した状態になり、程度の差こそあれ症状が現れるが、人にうつす「感染力」はそうなる直前の時期、即ちウイルスが鼻腔や咽頭に大量に付着している段階が一番強い。
  3. 従って、感染を広げている主力は、発症して寝込んでいるような人ではなく、無症状やごく軽症で動き回っている人たちなので、自分がウイルスをばらまいているという自覚はない。
  4. ワクチンを接種すると人にウイルスをうつさないわけではない。ウイルスをもらっても重症化しにくくなるということであり、自己防衛にはなるが、無自覚な加害者になる可能性は減らない。
  5. 従って、ワクチンを打ったからマスクをしなくてよいとか、安心して里帰りできると考えるのは間違い。メディアはそのことをしっかり伝えるべき。
  6. デルタ株の感染力は凄まじい。ワクチン接種人口が増えても、「無症状陽性者」の数は減らないのではないか。
……ということを強く再認識した。

自宅「療養」になっていない

自宅で治療を受けられないまま死ぬ人が出てきてからは、メディアは「自宅療養」が諸悪の根源で、全員入院させろ、野戦病院を作れ、といった論調になっている。
しかし、まずこの「自宅療養」という言葉が間違いだ。実際は検査も治療もしていないのだから「自宅放置」、いや「自宅幽閉」「自宅監禁」である。
まあ、行政やメディアが「自宅放置」という言葉を使うわけがないだろうから、せめて「自宅隔離」というべきだろう。
問題は自宅に隔離することそのものではなく、治療・観察ができないことが問題なのだ。

冷静かつ合理的に問題を整理していこう。
はっきりしているのは、
  • 陽性者をゼロにすることは不可能なので、
  • 感染者を初期段階でいち早く見つけて、投薬などで重症化を防ぐ態勢作りを急がなければいけない
……ということだ。
そのためには、とにかく、保健所が中に入る体制をやめることが先決だ。
保健所は医者の集団ではない。なぜ保健所に命の選別(トリアージ)をさせるのか。
市民の健康と命を守る最も身近な存在は町の開業医だ。しかし、日本では「かかりつけ医」のシステムがしっかり構築できていないから、いざというときに対応できない。
かかりつけ医の対応を強化するためには、
  • 初診からの遠隔診療を解禁
  • 遠隔での緊急投薬処方も解禁
  • 合わせて、薬局の薬宅配システムを充実させる
  • そのためには、まずCOVID-19を感染症2類相当から外す
……ことが必要だ。
また、訪問診療システムの拡充も重要で、これは5月にも書いたことだが、訪問看護師の訴えにあるように、
医師にコロナ特例での免責を行い、対面なしでも在宅酸素、ステロイド、抗菌薬、解熱薬、点滴を処方できるようにする
これは半年経った今も実現していない。

かかりつけ医(開業医)の意識改革も必要だ。
コロナには関わり合いたくないという態度でクリニックの門戸を閉ざすような医師も少なからずいる。
すでにウイルスに感染して寝込んでいるような患者はウイルスを外部に排出する量は少なくなっているというデータがあるのだから、毒ガスマスクに防護服のような重装備で接する必要はない。むしろ無症状の陽性者のほうが「危険」なのだ。発熱外来をすり抜けてくる患者や院内スタッフのほうが危険因子を多く持っている可能性がある。
冷静にそう考えれば、病院内での対応も変えていけるはずだ(そのためには国がまず2類から外すことが先だが)。
入院設備がないからうちでは扱えません、ではなく、開業医が一人でも多くの患者を初期段階で診療することが必須なのだ。
医療のマンパワーが足りないのだから、今のままで入院人数を一気に増やすことは無理だ。下手にそれをやれば、コロナ以外の患者の治療を圧迫してしまう。自宅隔離がやむを得ないほどウイルス陽性者が増えてしまったのなら、自宅隔離状態でも訪問や遠隔診療でしっかり診療・治療できる開業医や訪問看護師の救急システムを作る必要がある、ということは自明の理ではないか。

以上のことを真剣に考え、未治療のまま死ぬ人を減らす具体的な施策を緊急に整え、実行していかないと、自宅死の事例はなくならない。

「武器」が使えない現場の医師たち

治療薬に関しては、この半年で大きく認識が変わった……というよりも、怖ろしい現実を確信するに至った。

これに関しては目下日本でもかなりきつい情報統制が敷かれていて、よほどしつこく追いかけないと事実が見えてこない。
かなり前から、SNSなどではある種のキーワードを含むコメントや投稿が自動削除やアップロード拒否になっている。
既存薬の名称がひっそりと禁止ワードにされているなど、異常事態である。

それでも、大手のメディアに辛うじて出てくる記事として、2つのインタビュー記事を紹介したい。ご自身で読んで、内容の真偽を推理・判断していただきたい。


前述の読売新聞の取材記事で、東京都医師会・尾崎治夫会長はこう述べている。
「政府はイベルメクチンを供給できる体制も構築せずにいるわけで、推進体制にはなっていない。日本版EUAを早く整備して、現場の医師が使用できる体制になれば、田村厚労大臣が国会で答弁したように、現実的に自宅待機、療養の患者さんにも投与できるわけですが、いまの体制では事実上何もできません。よく『国民の安全のため』と言いますが、このような有事の際にも慎重姿勢を崩さないのでは、国民の安全を犠牲にしているとしか理解のしようがありません」
「今こそイベルメクチンを使え」東京都医師会の尾崎治夫会長が語ったその効能 読売新聞 2021/08/19

長尾和宏医師も、この問題については忌憚ない意見を発している。
僕は、自分自身がやってきたことをテレビで喋っただけだが、政府も医師会もすぐに呼応して頂いたので出た甲斐があった。
しかし、失ったものも大きかった。
全く意識していなかったが、思わぬハレーションがあった。
  1. 政府の無策を明らかにしてしまった。(まさに不都合な真実)
  2. イベルメクチンという巨大な地雷を踏んだ
  3. その結果、ワクチンメーカーと製薬メーカーを怒らせた
  4. 感染症専門家と分科会を怒らせた
  5. 2類利権で稼いでいる病院(一部だが)も敵に回した
  6. コロナを診ていない開業医も敵に回した
つまり、市民以外のすべての団体を敵に回してしまったようだ。
この8月、国と医師会を少し動かしたかな Dr.和 の町医者日記 2021/08/30

長尾医師は認知症の対応や在宅看取りなどに力を入れてきた人で、著書も何冊か読んで、信頼できる人だと思っていた。
彼にとってコロナは専門外で、本来ならコミットする分野ではないのに、否応なく巻き込まれている。避けて通れない問題なので、正直に取り組んでいる。その結果、どんどん理不尽な状況に追い込まれて、替え歌を歌って精神を保つしかないようなことになっている。
そういう人間味を隠さずに見せるところ↓も、信用できる人だなと感じる。
●貧しい人から病気が治った? 長尾和宏の創作・お薬寓話。 長尾和宏コロナチャンネル
他の真面目な医師たちが、どんどん精神的に追い詰められて、余裕を失い、精神が荒れてきているように見える中で、ニコ動でカラオケ歌っているこの人の存在は救いだ。どうか倒れないで、消されないでいてくださいね。ご自愛を!!


ともあれ、今は緊急時だから、治療薬を幅広く緊急認定して、ないものは海外製ジェネリックでもいいから早急に確保することだ。
現場の医師がどれだけ頑張っていても、薬という武器がなければ戦えない。
アベノマスクもひどかったが、今の「スガルワクチン」だけという無策では、事態が好転することはない。

「権力依存症」という怖ろしい病気

この日記でも折に触れ書いてきたように、養父と義母の終末期介護が何年か続いて、その間、私はいろいろなタイプの医師と接してきた。
いわゆる「専門医」は、自分の専門のことに特化して診断し、極力私情を挟まない。患者個人の個性や、現在の生活環境、人間関係、生き甲斐……といったものをいちいち考えていたら仕事ができないと割り切っている。外科手術などでは、そういう医師も必要だ。
一方、訪問診療医は、患者個人の生活、人生を観察し、一緒になって悩むから、とても面倒な仕事になる。
専門分野を作って閉じこもることはできない。総合的に診療しないといけないから、常に勉強する必要がある。そうした苦労の割には儲からない。
同じ「医師」でも、違う世界に生きているように見える。

さらには、診察・治療の現場に立たず、もっぱら研究者としての経歴を積み重ねていく医師もいる。
目下、緊急性の高い改革をことごとく阻止している厚労省の医系技官や「専門家」と呼ばれる学者たちには、このタイプが多い。
そうした「専門家」の中には、何かというと「エビデンスが……」などとしたり顔で語り、現場の悲鳴に近い訴えを平気で無視する人たちもいる。医学という「学問」は現場で実際に行われる「医療行為」よりも崇高で、自分たちは町医者などより上に位置していると勘違いしているのではないかと思えるような人も少なからずいる。

その上には、問題の中身を理解さえしていない政治屋がいて、裏にはメガファーマなどの巨大利権構造世界がある。
メディアはその強大な力にコントロールされながら、庶民の思考を操り、興味の矛先を変えさせたり、同調圧力を仕掛けてくる。

アルコール依存症やギャンブル依存症、やめられないDV気質などと同様に、権力の座を手に入れることに快感を覚え、そのためにはなんでもするという「権力依存症」という病に冒された人たちがいる。
そういう人たちが組織の上に巣くっていると、現場で動く人たちがどれだけ頑張っても効果が出ない。
それだけでなく、社会全体に虚無感が広がって、発揮すべき才能やエネルギーが消されたり、危険な方向に暴走したりする。
そんな社会では、誰もが幸せに一生を過ごせない。

このどうしようもない「構造」を変えるために、最低限の行動をする人たちが増えていかないと、この国は本当に取り返しのつかないところまで落ちていく。

もうすぐ次の選挙がある。
そこでも変わる兆しが見られないようなら……、ほんとにもう「貝になる」しかないかなあ。
           




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ああ、デルタ株2021/08/24 22:10

worldometers.info 2021/08/11 より
気がつくと、日本は新規感染者数で世界のトップ10入りを果たしているようだ↑
極端に検査数が少ないのに新規感染者が多いというのだから、実際の感染者数は一桁多いだろう。
で、現在、その90%以上がデルタ株だという。

今はデルタ株と呼ばれている変異株(当初は「インド株」と呼ばれていた)が日本に入ってきてしまったのではないか、と一部のメディアが書き始めたのはいつだっただろうと振り返ると、今年の4月終わりくらいだった。

3月は空港検疫(抗原検査)で判明した陽性者157人のうち、インドでの行動歴がある入国者は8人だったが、4月は24日までに、242人中56人。特に先週の増加ペースは激しい。危ぶまれるのは、判明した陽性者以外に検査で「陰性」となっても実は感染している人が相当数入国している可能性があること。空港検疫では入国者の待機時間短縮のため、15~30分で結果が出る「抗原検査」を採用しているからだ。(空港検疫コロナ陽性で「行動歴インド」入国者急増!二重変異株が抗原検査すり抜け日本で蔓延か 日刊ゲンダイDigital 2021/04/26

日本に入国する際の空港や港湾の検疫で、4~5月に確認した新型コロナウイルスの感染者のうち、感染拡大が深刻なインドと隣国のネパール、パキスタンから入国した人が過半数を占めた。(略)3カ国から入国し、検疫で感染を確認した人は4月に176人、5月8日までに81人の計257人。内訳はインド110人、ネパール78人、パキスタン69人だった。検疫で感染が確認された人のうち、4月は57%、5月は80%を占める。(4~5月入国のコロナ陽性者、インド周辺3国が過半数 朝日新聞Digital 2021/05/10
日記にも書いたなあ。⇒これ

要するにこの時点でデルタ株の侵入を防げなかったことが今の惨状を招いている。
苗床を用意してしまった後に、五輪関係者という田植え部隊を招き入れたのだから、なにをかいわんや、だ。
厳格な入国管理や即座のロックダウンなどを実施してきたオーストラリアニュージーランドでさえ、デルタ株の侵入は完全には防げなかったのだから、ましてやザル状態の日本では到底無理だった。
それにしても、もう少しマシな体制は取れただろうに、と悔やまれる。

こうなってしまった以上、もはや緊急事態「宣言」とかを繰り返していても意味がない。
「人と交わるな」という社会が続けば、(学校だけでなく、広い意味での)教育現場や、文化・芸術活動の現場は壊滅的なダメージを受け、今まで作り上げてきた「人間として生きていく価値」が大きく失われてしまう。特に若い世代にとって、それは単純な死よりも怖ろしい結果を招くだろう。

デルタ株に関しては、最近、こんな研究発表があった。
「ウイルスの感染力を高め、日本人に高頻度な細胞性免疫応答から免れるSARS-CoV-2変異の発見」(東京大学、熊本大学、東海大学、宮崎大学、日本医療研究開発機構 6人の研究者による共同研究)

簡単にまとめると、
  • 当初「ファクターX」と呼ばれていた「感染しにくい要因」の1つはやはりHLA型の違いで、日本人の約6割が持っている「HLA-A24」が新型コロナウイルスが細胞表面にくっつくのを阻害していた。
  • しかし、今日本で急速に感染を広げているデルタ株は、この「HLA-A24」を介した免疫から逃れる性質を持つ。
  • 結果、今までは爆発的な感染拡大から免れてきた東アジア諸国も、デルタ株ではそうした幸運は期待できない。
……ということだ。

現状を見る限り、これだけの感染者がいるのに死者は急激に増えていないので、あとはもう、治療体制をしっかり組んでいくしかない。その部分の劇的な改善・改革が必要だが、妨げているのは厚労省と無能な政府。この国の根本的な弱点に巣くう問題だから、すぐには対応できない。
となれば、個人でできる範囲で防衛していくしかない。
では、何を根拠にして防衛策を練ればいいのか?

このウイルスについては、当初から医療現場でさえ正反対の意見がぶつかり合ってきて、今もそれは変わらない。
初期の頃はPCR検査を増やす増やさない論争、今はイベルメクチンを巡る論争などがその代表例だ。
どの情報、主張を信じればいいのか?
その判断ができなければ、同調圧力には最終的に負けてしまうだろうし、「個人の防衛策」も間違った方向にいきかねない。

私の判断基準の一つは、意見や主張の裏に利害関係や保身本能が存在していないか、ということ。
もっと踏み込んで言えば、学術会議的な「業界」に身を置き、役所や製薬会社との結びつきの上で、誰かの論文を根拠にして、したり顔で「エビデンスが……」などと発言している人の主張より、現場で毎日患者を診ている医師たちの生の言葉や感覚を信じたい。
その医師たちの意見も真っ向から対立しているわけだが、最後は「顔」かな。
頭のよさと真剣さを感じられる顔。しかし「真剣」といっても、ファナティックに偏向しているような「熱意」は除外。
問題が長引いてきた今、対立する医師たちも、両極端に寄っていきがちだと感じる。
メディアはその両方を視聴者や読者の食いつき狙いで取り上げ、露出させる。
SNSではその対立がさらに過激化していく。やっかいだから、極力関わりたくない、言葉を発したくない、という自己防衛本能が働いてしまう。

2年半以上経過した今、錯綜する情報や政府の無策、扇情的な報道に疲れ果てながらも、私が、多分こうなんだろうなと思うのは……、
  • 1)感染者は発表されている数よりはるかに多い
  • 2)デルタ株の感染力は凄まじいが、致死率は従来株とさほど変わらないのではないか(死者/感染者数の分母が怪しいので、ちゃんとした分母を入れればかなり低くなるのでは?)
  • 3)要するに「タチが悪く、怖いインフルエンザ」的なものが、これからずっと自分を取り巻いている社会に生きていかなければならない

最重要なのは、被害を最小限に抑えるシステム作りだ。具体的には、軽症のうちに素早く手当てできる体制を早急に、しっかり構築していくこと。ワクチン騒動はこれからずっと続くだろうから、治療薬の開発をしつつ、当面は限られた医療資源の中で、重症化率、死亡率を減らすために既知の薬の適用方針も明確にしていく。その過程では情報を完全公開し、企業や政府の邪念やメンツが入り込まないようにする。
それができない国では、今後も一定数の人は重症化し、死んでいくだろう。
残念ながら、日本では当面できそうにないので、自己防衛しながら生活環境を破綻させないようにするしかない。

まあ、半年後にはまたずいぶん様相が変わっているのだろう。

自分自身はいつ死んでもいいかな、とは思っているが、苦しいのは嫌だ。「地上で溺れているような苦しさが長く続く」なんて言われると、ゾッとする。
まあ、自分の最後がどうなるかは、いくら冷静に考えようとしても、分からないもんなあ……。
           




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小林賢太郎はむしろ日本の危機を救った2021/07/24 17:45

これぞ小林賢太郎ワールド
1か月前くらいからは、さすがに誰もが「今から中止はもうないんだろうな」と思っていただろうが、本当に東京五輪が強行開催されてしまった。
しかも、開会式の音楽作曲担当者が辞任したり、息つく間もなく次から次へと問題噴出。トドメは、開会式前日に、開会式の演出総監督的立場にいた小林賢太郎が電撃解任されるというトンデモな事件まで起きた。

昨夜、開会式を見た。
以下、長い文になりそうなので、最初にひとつ結論的なことをいえば、

開会式に関しては、バッハと橋本聖子の中身の薄っぺらな長演説とIOCがねじ込んできたPR動画さえなければ、ほぼ満点といえる出来のものだった。
まさかこれほどのものを小林賢太郎の指揮の下に用意していたとは、想像できなかった。

以下、私がそうした気持ちになるまでのことを、なるべくていねいにまとめておきたい。(文中敬称略)

「言葉選び」を間違えた、はまさにその通り

まずは開会式前日に起きた、総合演出担当・小林賢太郎の電撃解任劇について触れないわけにはいかない。

ラーメンズのファンである私は、小林賢太郎の才能や作風については一通り知っている。人格や人生哲学まではよく知らないが、それでも「反ユダヤ主義者」とか「ナチのホロコーストを揶揄したコント」という報道はにわかに信じられなかった。
件のコントは20年以上前のもので、まだDVDもなく、VHSビデオテープで売られていたものの中に収録されていたという。
ネット上に出回っていたのですぐに確認した。
当時NHKの子供向け番組として有名だった『できるかな』の登場人物、ノッポさんとゴン太くんに分したラーメンズの二人が、番組のネタを考える企画会議風の会話をしている、という構成。

文字おこしすれば、こうだ。
片桐仁(ゴン太くん風):来週、何やるか決めちゃおうね。そういうことはちゃんとやんなきゃダメだから。何やる、何やる?

小林賢太郎(ノッポさん風):ああ、じゃあ、トダさんがさ……ほらプロデューサーの。「作って楽しいものもいいけど、遊んで学べるものもつくれ」って言っただろ?

片桐:ああ、ああ(頷く)。

小林:そこで考えたんだけど、野球やろうと思うんだ。今までだったらね、新聞紙を丸めたバット。ところが今回は、ここに「バット」っていう字を書くんだ。今までだったら、ただ丸めた紙の球。ここに「球」っていう字を書くの。そしてスタンドを埋め尽くす観衆。これは人の形に切った紙とかでいいと思うんだけど、ここに「人」って字を書くんだ。つまり文字で構成された野球場を作るっていうのはどうだろう?

片桐:ああ、いいんじゃない?

小林:ねえ!

片桐:じゃあ、ちょっとやってみようか。ちょうどこういう人の形に切った紙いっぱいあるから……

小林:あ、本当? ああ~! あの「ユダヤ人大量惨殺ごっこ」やろうって言ったときのな。

片桐:そーうそうそうそうそう! トダさん怒ってたなあ。

小林:「放送できるか!!」ってな。

コントはこの後も続いて、二人は実際に紙で作った小道具を使った「野球」を始める。つまり、このコントのテーマはホロコーストとは何の関係もない。
文字や言葉で世界を構築する、というような実験に、子供の心を持った二人が挑んでいくという構成の中で、何か笑いが生まれないかという実験的なコントだった。
コントの出来そのものは、他の小林作品に比べてよくないし、それこそ小林がアドリブ的に口にしてしまった「ユダヤ人大量惨殺ごっこ」というフレーズが致命的だったこともあるだろうが、ラーメンズの公式な(?)作品集には収録されていない。
小林がこの台詞を挟み込んだのは、子供というのは時としてとんでもなく無知で残酷なことを言う、ということから笑いが生まれるのではないか、という計算からだ。だからこのフレーズに対するオチでも、プロデューサーが「放送できるか!」と怒鳴ったということにしている。

もちろん「子供の無邪気さと残酷さは紙一重で、笑えないこともあるよね」というこのネタにこのフレーズを使ったことは大きな間違いで、他にもっといい「言葉選び」ができたはずだ。
元NHKプロデューサーは、自身のフェイスブックの中で「1995年に起きたマルコポーロの廃刊事件からヒントを得たのかもしれない」と書いていたが、小林がそこまで計算してこのフレーズを口にしたとも思えない。おそらく反射神経的な、瞬間的な判断ミスだったのだと思う。

確信は持てないのだが、私は過去にこれを見ているような気もする。
はっきりした記憶ではないのだが、そのときも「え? なんでそんな台詞をここで入れる?」と驚き、観客から笑い声が上がることにも違和感を感じたように思う。小林賢太郎ともあろう才人が、そんな大きなミスをするのか、残念だな、と。
全然違う! と突っ込まれることを承知で喩えてみれば、ボルトが2011年の世界陸上100m決勝で派手にフライングしたときの残念さにも似ている。おいおい、ここでそれはないだろ! という残念さと後味の悪さが。

……と、長々と説明してきたが、今回の「事件」に関しては、あまりにも事実を知らないまま得意げに論評している人たちが多いので、敢えて、こうして検証してみた。

怖ろしい時代になった

このミスがどれだけ致命的で、情けないものだったのかを誰よりも知っているのは小林自身だろう。
しかし、今回の「事件」の本質はそこじゃない。20代のエネルギーに満ちた時期に犯した一度のミスで、人生を丸ごとつぶされる公開処刑のようなものを見せられた我々の恐怖のほうだ。

五輪組織委の橋本聖子会長が小林賢太郎の解任を発表したのは7月22日昼前だが、そこに至るまでの経緯があまりにも急、かつ不透明だ。
様々な情報を整理してみると、
  • 21日夜:ネット上で芸能ニュースサイトなどがラーメンズの件のコントを取り上げ「五輪開会式演出・小林賢太郎にホロコーストいじりの過去」という論調で配信
  • 22日1時過ぎ:ツイッター上で、あるユーザーが「東京五輪競技大会開会式及び閉会式制作・演出チームのメンバーに選出された【小林賢太郎氏】の【ユダヤ人】に関する過去の発言について……中山防衛副大臣@iloveyatchanに相談させて頂きました。すぐにご対応くださるとのことです」と投稿
  • 22日2時17分:中山泰秀防衛副大臣がこれに対して「ご連絡頂きありがとうございました。早速サイモンウィーゼンタールセンターと連絡を取り合い、お話をしました。センターを代表されるクーパー師から、以下のコメントがありましたので、ご報告します」と返信
  • 22日3時10分 中山防衛副大臣がサイモン・ウィーゼンタール・センターの抗議文を掲載
  • 22日未明 サイモン・ウィーゼンタール・センター(以下SWC)が「SWCは東京五輪開会式ディレクターによる反ユダヤ主義の台詞に抗議する」と題した抗議文を掲示
  • 22日昼前 五輪組織委橋本聖子会長が会見を開き、小林解任を発表。その際「関係者からの指摘を受けて、早朝に確認した。すぐに協議するように指示したが、それまでは申し訳ないがまったく情報が取れていなかった」と述べる
  • 22日午後 菅総理が記者団からの取材に対して「言語道断。まったく受け入れることはできない」などと答える

(以下、ニュースソースの一部)

橋本会長は会見の際、記者から「それは中山氏の指摘か」と問われ、「違います」と否定したそうだし、中山副大臣は、自分がSWCに伝えたときはSWC側はすでにこの問題を知っていて、抗議文を作成していた、と言っている。
どちらの言葉にも嘘はないとしても、防衛副大臣が政府や組織委に確認もとらず、一民間人からのツイッターを受け、独断で米国の一民間団体に「通報」したことは間違いないのだ。
これこそ「言語道断」であり、国の信用・イメージを失わせる行為だろう。
この国は一体どうなっているのか。
さらに言えば、今回のことで「国際的な認識がない」としたり顔で論評している人たちにも、裏返しの薄っぺらさを感じる。
それは、言葉にできないほどひどい形で殺された人たちの気持ちを「自分がそうだったら」という想像力を持って、共感して発言しているのか、と言いたくなるのだ。
単に「ユダヤ人虐殺問題は国際的にはこうこうで……」という「知識」を持っている自分は教養人で、おまえとは違うんだ、みたいな上から目線、優越感で発言しているんじゃないかと感じることがある。
人の心は、単純には分析できない。どんな人も、心の奥には、自分でも制御できない悪魔的なもの、愚かなもの、未熟なものがある。
問題はそれをどう扱うか。制御するための教養や技術を持っているか、ということ。
20代の自分を振り返ってみれば、とてもそこまでの教養や技術を持ち合わせていなかったし、いっぱい地雷を踏んできた。無名の人間だったから、地雷の爆発も小さくてすんだというだけのことだ。

小林賢太郎が演出チーフになるまでの経緯

そもそも小林賢太郎は、いつどういう経緯で五輪開会式の総合ディレクターという役割を担うことになったのだろう。
発端は2019年12月のことだった。
2020年に開催される『東京パラリンピック』の開会式の演出をケラリーノ・サンドロヴィッチ、閉会式を小林賢太郎が手掛けることと、式の出演者を一般公募することが発表された。
出演者の募集は12月10日からスタート。式の「主役」となるリーディングキャスト、演出内容にあわせてパフォーマンスするオリジナルキャスト、集団群舞のパートでパフォーマンスするマスキャストをオーディションで選出する。審査員には佐々木宏、栗栖良依、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、小林賢太郎、中井元らが名を連ねる。
東京パラリンピック開会式の演出はKERA、閉会式は小林賢太郎 出演者募る ぴあニュース 2019/12/09

このときはオリンピックではなく、パラリンピックの閉会式担当で起用されたということが分かるが、すでに、その後「オリン『ピッグ』問題」で辞任することになる佐々木宏の名前がある。
佐々木が小林の才能を買って、自分が率いるチームに引き入れようとしたことが分かる。

そこで、さらに前まで遡って確認していくと、次のような流れが見えてきた。

  • 2018年7月 東京五輪開閉会式演出の総合統括に狂言師の野村萬斎の就任が決定
  • ⇒野村の下、演出チームとして映画監督の山崎貴、映画プロデューサーの川村元気らが参加
  • ⇒これに森喜朗が注文をつけ、2016年リオ五輪閉会式で安倍マリオを仕掛けた佐々木宏や椎名林檎ら、リオのメンバーをねじこむ
  • ⇒その後、実質チームリーダーが山崎貴→野村萬斎→MIKIKOとコロコロ代わる。野村萬斎を降ろしたのは森が主導
  • ⇒2019年6月 MIKIKOが実質上の総合演出責任者になる
  • ⇒2019年12月 東京パラリンピックの開会式の演出をケラリーノ・サンドロヴィッチ、閉会式を小林賢太郎が手掛けることが発表される。二人を誘い入れたのは佐々木宏
  • ⇒2020年 東京五輪がコロナで1年延期が決まる
  • ⇒2020年4月 組織委がMIKIKOによる開会式演出案をIOCに提示。IOCは大満足であると伝える
  • ⇒2020年5月11日 MIKIKOが電通の代表取締役から責任者の交代を通告される。後任は佐々木宏
  • ⇒2020年12月 当初の演出チーム解散を発表。組織委は「コロナ禍に伴う式典の簡素化を短期間で進めるため権限を一本化する」として佐々木体制を認める
  • ⇒佐々木はMIKIKOを排除し、IOCが絶賛したMIKIKO案を自分の手柄のようにパクリ、音楽担当に小山田を呼ぶ
  • ⇒2021年3月 佐々木が「オリンピッグ」発言で辞任。その直後、開会式演出の実質的責任者だったMIKIKOが、自身に連絡がないまま、新たな責任者が任命されていたとして辞任
  • ⇒残った小林賢太郎が演出リーダーに押し上げられる?

……という流れだったらしい。



つまり、小林が総合演出の立場に押し出されたのは今年の春以降で、わずか3か月ほどで、ゴタゴタ続きの現場を立て直し、グチャグチャになっていたであろう開会式演出をまとめ上げなければならなかったわけだ。
しかも、この時期にはすでに「五輪はできないだろう」という見方が強く、世論も五輪中止・再延期が7割を超え、再延期が事実上不可能なことを踏まえれば、中止の可能性が非常に高かった。
短期間で演出案をまとめ上げても、MIKIKO案がすっ飛んでしまったように、闇に葬られる可能性があったのだ。

そんな状況でまともな演出などできるはずはない、と、私を含め、多くの人が思っていただろう。
無観客が決まったのもギリギリだったし、これはもう、世界からのリモート映像をつなぎ合わせて「ゆく年くる年」みたいな構成にするとか、アニメのキャラを総動員したチャラいものになるのがオチだろう……と。

こんな感じかな? と思っていた(画像はワシントンポスト紙のWEBサイトより)


想像をはるかに超えていた開会式演出

7月14日、五輪開会式、閉会式の制作・演出チームが発表された。
スタッフのトップに「Show Director 小林賢太郎」の名があった。

私は小林が開会式演出を引き受けたことを知って、複雑な思い……いや、正直にいえば、ちょっとガッカリした。
小林は、ラーメンズが実質活動を終了した後も、NHKのBSで毎年、オリジナル作品を発表する特番を持たせてもらったり、いろいろな公演の演出や脚本を手がけたりしていた。しかし、私としては「なんだか偉くなってしまい、つまらなくなってしまったな」という感想を持っていた。
ラーメンズの相方・片桐仁も、テレビ番組にちょこちょこ出ていたが、やはり小林と組んでいたときのような爆発的な魅力は失せていた。彼らの名前や姿を見るたびに、ラーメンズはもう復活しないのか……という思いだけが残る。
で、挙げ句の果てには、佐々木宏の後始末を引き受けたのか……と、残念な気持ちになったのだった。

しかし、開会式が始まった途端「え?!」と目を凝らした。

オープニングシーンからして、これはもう小林賢太郎ワールド全開ではないか。しかも、とても思想性があり、これはどういう意味が込められているのだろう、と、何度も見直したくなる。

オープニングで、一人黙々とランニングマシーンでトレーニングする女子アスリートを演じたのは、現役の看護師・津端ありさ。ボクシング女子ミドル級で五輪出場を目指していたが、コロナ禍で世界最終予選が1年延期された末に中止になり、チャンスを失ったという。
諦めてうなだれる彼女の回りで乱舞する赤い衣装のダンサーたちと、赤いリボンでの表現──赤い筋がアスリートの体内を流れる血潮にも、人々を襲うコロナウイルスにも見える。心の葛藤と身体の葛藤をこんな風に表現できるのかと唸ってしまった。

後半で登場したパントマイムの が~まるちょば(HIRO―PON)とGABEZ(ガベジ)が演じた「動くピクトグラム」も、これこそまさに小林賢太郎のアイデアに違いないと分かる演出。コバケンがいなければあのシーンは生まれなかっただろう。

これぞ小林賢太郎の世界! と思わせた「動くピクトグラム」


よくもまあ、あれだけの短時間、ゴタゴタ、バカな介入の嵐という多重苦を乗り越えてここまでやれたものだと、感動するしかなかった。

小林賢太郎がいなかったら

ここで「もし、小林賢太郎がいなかったらこの開会式はどうなっていたのだろう」と想像してみた。
ある程度、形はできても、心に訴えるものがない、空疎なものになっていたのではないか。
世界中から「ああ、やっぱりね」「アニメキャラにダンス? ハイハイ。今の日本がオリンピックやると、こういう感じなんだろね。分かる分かる」的な評価をされていたのではないか。
開会式の前に散々傷つけられた日本人の誇りや自信が、開会式の中身でさらに決定づけられてしまったのではないか。
また、防衛副大臣らの愚かな破壊工作のおかげで、ショー部分は全部カット、入場行進とスピーチと聖火点灯だけ、となっていたら、いくつも開いた傷口に塩を塗り込まれるような結果になっていたのではないか。
選手たちも白けに白け、自棄を起こしてつまらぬ問題を起こす輩が出てきたりしたかもしれない。

しかし、蓋を開けてみたら、そういう開会式ではなかった。
IOCの図々しいPRビデオと、橋本、バッハ両会長の薄っぺらな上に長いだけの演説がなければ、ほぼ満点をつけてもいいような演出内容だった。

国民の7割以上が疑義を感じているオリンピック。開会式まで3か月もないというタイミングで演出を指揮するように言われた小林はどんな気持ちでこれを引き受けたのだろう。
どんなに頑張っても、大会は中止になって、仕事は闇から闇へと葬り去られるかもしれない(実際、MIKIKO案がそういう運命をたどったことを小林は見ているはずだ)。
やれたとしても、かつてのファンから「ラーメンズも権力側に囲われたか。がっかりだぜ」と背を向けられるかもしれない。

中止にならなかった以上、関係者ができることは、残された時間と金と一人一人の努力で傷を最小限にすることしかない。
こんな現場は嫌だと言って逃げることはできる。そして多くの人たちと一緒になって、五輪ヤクザや政治家たちによって汚しに汚されたこのイベントを冷ややかに見ていることもできる。
しかし、別の解があるのではないか?
どんな理由であれ、これだけ問題を抱えた五輪の開会式は世界中から注目される。そんなステージはこれからさき二度と訪れないかもしれない。
であれば、自分が持っている力を全力でぶつけてみるのも、表現者としての「解」ではないか。
この葛藤は参加する選手たちも同じだろう。
小林はそう思って、この困難極まりない仕事に取り組んだのかもしれない。

その結果、日本のボロボロになった誇りと精神状況が、かなり救われた。ギリギリのところで「防衛」できた。
私はそう思う。
実際、この私は、開会式を見て、様々なことを改めて学ばされた。

何よりも、必死に仕事をした若者を平気で見殺しにする国家権力者……という図式を生々しく学ばせてもらえた。
「人生の一時期不適切な冗談をネタにしていたけれど、その後それを改め、人を傷つけないお笑いの道を歩み、事が起こってこのコメントを出す人を、言語道断と言って叩ける人はどれほど立派なのかと思います。またこの人を多少なりとも擁護しない日本政府は何なのかと思います」
(米山元知事 小林賢太郎氏解任に怒り「この人を多少なりとも擁護しない日本政府は何なのか」 スポニチアネックス 2021/07/22
……という、米山元新潟知事の言葉は、もっともである。

文化とか芸術とかとほど遠い「別の地平」にいる権力者が「言語道断」などと言っているが、あんたは彼に「救命された」ってこと、死ぬまで分からないんだろう。

長くなったので、このへんでキーボードから離れよう。

最後に一言だけ。
ラーメンズのファンとしては、あの黄金コンビが復活して、「無観客開会式ごっこしようぜ」みたいなコントをしてくれることを夢想している。

「ここに新聞紙を人形に切ったやつがあるから、これを来賓席に並べてさ」
「会長にはお菓子のおもてなしを忘れないようにしないとな」
「甘露飴ならあるよ」
「おお、それはいいな。あと、コカコーラは全種類用意な」
……

(文中敬称略)



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熱海の土石流は「犯罪事件」である2021/07/12 20:20

NHK「クローズアップ現代」より
NHK 「クローズアップ現代・カメラが捉えた脅威 緊急報告・熱海土石流」より(映像は今回の現場ではなく、過去に起きた京都の事例からのもの)
デタラメな太陽光発電所、風力発電所の建設がどれだけこの国を壊しているか、日本のメディアは、実態を絶対に伝えようとしない。
「再生可能エネルギー」という言葉が聖なる言葉になってしまっていて、不都合なニュースを最小限に伝えるときも「地球温暖化対策のために再生可能エネルギーの普及は不可欠ですが……」みたいな枕詞をつける。
不可欠でもなんでもないし、今のようなことを続けていたら、資源小国の日本は取り返しのつかないことになる。いつまでこんなバカなことをやり続けるつもりなのか。

熱海市で起きた「土石流」事件では、数十人の死者・行方不明者が出た。
原因は明らかで、
  • 沢の上流の谷に残土や産廃を投棄して埋めてしまったこと
  • 山の尾根筋を削って太陽光発電パネルを敷き詰めたこと
の2つだ。
しかし、メディアは「盛り土」という言葉を繰り返すばかりで、問題の本質を意識的に避けている感がある。
「原因はまだ特定できませんが……」というフレーズを繰り返す。

テレビには連日、「専門家」と呼ばれる人たちが入れ替わり立ち替わり登場するのだが、言うことが全部違う。
崩れた場所に見えている黒い土を指して「これが火山灰起因の本来の固い地層」という人がいるかと思えば、「火山灰土がこんなに黒いはずはないので、何か脂分を含んだ残土や産廃起因ではないか」という人もいる。どちらも「地質学者」なのだそうだ。

すぐ隣のソーラー発電施設は、当初、わざとテレビの画面に映らないようにしていたフシがある。
ようやく原因の一つである可能性に触れた学者が現れたが、案の定、その後、この説をフォローする報道はマスメディアからはほとんど出てこなかった。
別の学者はそのソーラー発電所脇に亀裂のような凹みがあるのを指して、「隣の盛り土が崩れたので引っ張られるようにして亀裂が生じている」と解説していた。
……いや、これはおそらく崩落の前からあったものだろう。今回のことでえぐれが広がっているとしても、だ。
田舎に暮らしている人ならみんな知っている。山に道を造れば、大雨が降ったときに流れる水で土がえぐれ、溝が掘られるのだ。そこを水が流れていって、どんどんえぐっていく。
だから、川内村に住んでいたときは、自分で私道の脇に雨水の通路を掘っておかなければならなかった。何もしないと道の真ん中を雨水が流れて溝が掘られてしまうため、車が通れなくなるのだ。
それを、ずっと前からその道の奥に棲んでいる人に言われて、道の横にシャベルで側溝を掘り、それが埋まらないように、ときどき掘り起こしていた。
こういう水の逃げ道がないと、道や斜面が大規模に崩落する。
都会の「専門家」って、そういう基本的な生活感もないままに理論だけで勝手に推理するような人が多いのだなぁと、改めて思った。
南伊豆の風車被害を見に行ったときも、現地の住民に教えてもらった。風車を建てるために山に道を造ったため、そこが雨水の道になってしまって土砂が上から流れてきて被害が生じた、と。
それで、慌てて「沈砂池」を道路の横に造ったけれど、たちまちそこも埋まってあふれてしまった、と。

山にウィンドファームやメガソーラーを作るな!

これは全国の風力発電・太陽光発電建設現場で起きている典型的な公害なのだが、メディアはほとんど報道しない。
私が2011年まで住んでいた川内村に隣接する滝根小白井ウィンドファームでも、建設中から降雨後の泥水流出がひどく、下流の夏井川では岩魚や山女が産卵できなくなり、夏井川漁協が事業者に補償を求めた。

↑風力発電施設工事のとき、大量の泥水が海や住宅地に流れ込んだため、対策として作られた「沈砂池」。しかし、大雨の後はこれもたちまちあふれてしまい、さらにもう一つ作る羽目に。写真は2010年1月、南伊豆にて


土木学会特別上級技術者の塩坂邦夫氏は、今回の熱海土砂詐害事件について、周辺の宅地開発・メガソーラー建設で、山の尾根が伐採され、土も削られたことで保水力が失われ、雨水の流れ道も変わってしまったことも一因、と指摘した。
それに対して、難波喬司・静岡県副知事(元・国土交通省大臣官房技術総括審議官)は、「そんなに広い地域の水が集まっていれば大洪水になっているはずだ」として塩坂氏の見解を否定した、という(盛り土崩落、宅地開発影響か 2021/07/09 時事通信社)

↑TBS『ゴゴスマ』で、自らのチームがドローンで撮影した映像を元に、今回の崩落原因を推理する塩坂氏。
ソーラーパネル設置のために削られた尾根は崩落現場より上にあり、ソーラーの建設道路が雨樋のように雨水を流すことになった可能性が指摘された。


崩落現場のすぐ隣りの尾根を削って建設された太陽光発電所。


塩坂氏はその後、7月9日には静岡県庁で記者会見し、「周辺の宅地開発で尾根が削られて水の流れが変わり、従来の範囲よりも広い地域から大量の雨水が盛り土一帯に流れ込んだ」と結論づけた。

現地調査に基づき「人災だ」と見解を公表した地質学者の塩坂邦雄さん(76)は9日、県庁での記者会見で、造成で尾根が削られたことによって雨水の流れ込む範囲(集水域)が変化、盛り土側に雨水が流入した結果、土石流を誘発したと分析した。
(略)
 塩坂氏は、盛り土付近の造成で尾根が削られたことにより、逢初川の集水域よりさらに北部にある、鳴沢川の集水域約20万平方メートルに降った雨も、盛り土側に流れ込んだと分析している。造成地側から盛り土側に水が流れた跡も確認したという。
(略)
河川の流域の一部分を別の河川が奪う地理的現象で、造成によって水の流れが変化し、逢初川よりも北部の鳴沢川に流れ込むはずの雨水が、谷を埋めた盛り土に流入。雨水が逢初川側に流れ込んだと主張した。
2021/07/09 熱海土石流 造成が誘発した人為的な「河川争奪」地質学者が指摘 毎日新聞

熱海の土砂災害を引き起こした背景は「モリカケサクラ」と同じ構図

山の頂上や尾根を伐採すると保水力や地下水脈が変わってしまい、土砂災害の原因となる、というのは、広く知られたことである。
それなのになぜ、国や熱海市は尾根筋の伐採・掘削や谷への残土・産廃の投棄を放置してきたのか。

マスコミが触れようとしないので、ネットで検索するしかない。
すると、すぐに答えが出てきた木下黄太氏のブログ記事三品純氏の記事にしっかり書かれていた。

まず、谷に残土や産廃を投棄して埋めた張本人は小田原市では悪名高い不動産業者。
その社長は自民党系の同和団体である「自由同和会神奈川県本部」会長。
ネット上には、2014年、自民党本部で行われた自由同和会中央本部第29回全国大会で議長を務めるこの社長の写真もあって、背景には安倍晋三首相(当時)が「日本を、取り戻す」というスローガンと共に大写しされたポスターが何枚も並んで写っている。

あの辺りの山を無理矢理切り崩して、まず先に道を作っていったんです。
道を作る時に、図面が先にあるわけではなくて、こういう感じがいいんじゃないかみたいな感じで現場で緩く決めていって、それで道ができていくような流れです。その後で測量部の人がやってきて、測量して図面を書くという流れでした。計画がきちんとあるわけではなくて、むしろやったことを、後付で図面を作ってるという話です。まあ適当なんですよ、本当に。
とにかく道路を作れば、その先でまた森を崩して平地を作るみたいな状態です。
だからものすごく土砂が出るんですよ。
そうした現地での開発で出た土砂が捨てられた土砂の大半であったと思います。
木下黄太のブログ 2021/07/09 元社員への取材内容から抜粋)

↑こうしたことは、日本全国の山でごく普通に行われている。私も川内村時代には、そうした現場をたくさん見てきた。
とにかく、山を伐採し、削って平らにすれば、雨水は行き場を失い、土砂と一緒に流れていく。あたりまえのことなのだ。

テレビや新聞が意識的に避けているとしか思えない、これらの記事を読んでいくにつけ、気持ちが悪くなり、ただでさえ体調不良の昨今、見ないでおきたいという思いも強くなる。
しかし、どうもこのままうやむやにされてしまう可能性も出てきたので、議事録や登記簿などからはっきり分かっていること、信用できそうな記事から、ものすごくざっくりとこれまでの経緯をまとめると、↓こうなる。
  • 2006年9月  小田原市の不動産会社S社が伊豆山赤井谷一体を買取りで取得
  • 2007年頃~ 同社は麓側から徐々に工事道路を建設し、尾根筋を伐採、造成し始める
  •       並行して、谷に造成工事で出た土やビル解体などで出た産廃を投棄して埋め始める
  • 2007年7月  台風4号による降雨で、同社が所有し、宅地開発をしていた伊豆山七尾にある熱海市の水道施設調圧槽が同社所有の山林地からの土砂、流木により一部埋没。市は同社に対して土砂、流木の排除対応処理を文書で依頼するも、同社は応じず放置。市議会で問題になる。市議会の建設公営委員会での質疑応答にて、市の担当者は「(相手が)同和系列の会社でございまして、ちょっと普通の民間会社と違いますので……」という答弁。
  • 2009年6月  市議会で再度、同社の危険な開発行為問題について質疑応答あり。この時期、同社は宅地開発を諦めていた様子。熱海市内のホテル解体工事で出た産廃なども谷に埋めていたことを、同社の元社員が証言
  • 2009年11月 同社社長が小田原駅前に所有していたビルの一室を、違法風俗店と知りながら本来の家賃を上乗せして貸していたとして、組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等収受)容疑で神奈川県警に逮捕される。
  • 2011年2月22日 熱海市が同社所有の赤井谷の土地を差し押さえ。
  • 2011年2月25日 不動産、建設関連を複数所有するZ社の社長が買取り。面積は周辺一帯で合計約40万坪。
  • 2013年8月~10月 Z社傘下の複数の会社がZ社が買い取った伊豆山周辺の土地での太陽光発電所建設を申請し認可される。


このZ社の社長は、1989年、1985~87年までの3年間の所得20億4,000万円を8億3,000万円余と過少申告。所得税5億1,200万円を脱税したとして逮捕されている。さらには2004年にも、2003年12月期までの5年半で約4億円の所得隠しを指摘されていたことで摘発され、追徴課税されている。他にも関連会社がアスベストの不法投棄事件とか、もういろいろと……。

ほんとに気分が悪くなってきたので、もうやめたい。
どれもネット上を検索すれば簡単に読めるデータや記事なので、知りたい人はどうぞ探してみてほしい。
現代日本が抱えるさまざまな問題が、これでもかというほど、分かりやすく浮かび上がってくる。



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