変異株蔓延は避けられない? 今、いちばん重要なことは何か2021/05/09 01:27

何をもたもたしているのだ! 画像は「報道1930」BS-TBSより

五輪代表選手に「本当に走っていいのか」と悩ませる罪

5月5日、「札幌チャレンジハーフマラソン」というのがあった。
東京五輪のマラソンレースをテストする意味を兼ねているという。
で、この大会、コロナの感染が拡大中の札幌市内で開かれたため、予定されていた10kmの市民マラソンは中止。沿道の応援は自粛を呼びかけるというレベルを超えて、急遽300人増強して770人に増やした「自粛呼びかけスタッフ」が「感染症予防のため観戦自粛をお願いします」というカードを首からぶら下げて沿道に立っていた。
その合間には「五輪開催反対」のプラカードを掲げた人もいたという。
そんな状況で走る選手のストレスも大変なものだっただろう。
五輪代表に決まっている服部勇馬選手は「この状況下で本当に走っていいのかと思うこともあったり、不安な状況で練習しているときもある」と打ち明けていたという。(服部勇馬「本当に走って良いのか」 コロナ禍の東京五輪強行開催に葛藤 デイリースポーツ

オリンピックと関係なくこの大会が開催されていれば、選手も、我々観戦を楽しむ側も、もっとずっと幸せな状態でいられたのではないか。
沿道での観戦で感染が広がるというが、観戦自粛のプラカードを首から下げて立っていた770人のスタッフのほうが、一か所に集まって指示を受けたり観客に声かけをしていたわけで、それのほうが感染リスクがありそうな気もするが……一体何をやっているんだか……。
なぜこうした「自粛警察」っぽい方向にばかり向かってしまうのだろう。

肝心な対策はやってない

そんなことよりはるかに重要なのは、海外からのウイルス(特に変異株)の侵入を防ぐことと、治療を受けられずに重症化してしまう感染者を減らすための緊急措置であることは明々白々だ。
全例入院治療がいいに決まっている。でもかなわないなら、医師にコロナ特例での免責を行い、対面なしで在宅酸素、ステロイド、抗菌薬、解熱薬、点滴をコンフォートセットにして処方できるようにしてほしい。まだ、私自身は実施例が少ないが、これ(コンフォートセット)で救える命もかなりある。滞在時間も30分以内にとどめられる。……この事態について全国民の理解が必要である。
(全員入院がかなわぬ現実と向き合う コロナ患者を看て回る訪問看護師の訴え 在宅酸素、ステロイド、抗菌薬、解熱薬、点滴のコンフォートセットを 日経メディカル 2021/04/30

3月は空港検疫(抗原検査)で判明した陽性者157人のうち、インドでの行動歴がある入国者は8人だったが、4月は24日までに、242人中56人。特に先週の増加ペースは激しい。(空港検疫コロナ陽性で「行動歴インド」入国者急増!二重変異株が抗原検査すり抜け日本で蔓延か 日刊ゲンダイDigital 2021/04/26
画像はBS TBS「報道1930」より


すでに蔓延してしまったイギリス型変異株は感染力も重症化率も高いし、若年層にも感染しやすいという。
それにも増して恐れるべきなのが「アジア人特有の免疫能力をかいくぐって感染し、ワクチンも効きにくいのではないか」と言われている、インドやブラジルから入ってくる変異株だが、政府はその怖さをまったく理解せず、ただただなんとか防止措置だのなんとか宣言だのを出す、出さない、延長する、しないなどと繰り返している。
そういうことじゃない。
「緊急」なのは、なんとか宣言を出すことではなく(それも緊急には出さないで毎度グダグダだが)、医療体制を変えて非常対応をすることと、外から危ない変異株を入れないように徹底的な水際検疫体制を敷くことだ。

まっ先にやらなければいけないのは医療現場への緊急対応。
上の訪問看護師の報告で分かるように、すでに関西は相当まずいことになっている。
自宅で苦しんでいる人が救急車を呼んでも受け入れ先が見つからない。1時間かけて駆けつけた訪問看護師は酸素ボンベや治療薬を持っていない。そのへんを今すぐ超法規的に対応させないと、助かる人が死んでしまうケースがどんどん増えていく。それをなんとかしようと思うのが先でしょ。
この状況のままインドの二重変異株とか、アジア人にとってかなりヤバそうなやつが一気に感染爆発したらどういうことになるのか?

ワクチンワクチンと煽り立てる前に

ついでにいえば、ワクチンは無条件に高齢者優先にするのではなく、まっ先に医療従事者、介護施設関係者に打つのが筋だろう。
高齢者施設にいる老人たちは建物の外に出て行かない。感染するとすればそこで働いている人たちからウイルスをもらうのだから、施設スタッフがワクチン接種してない段階で入所者に打つというほど馬鹿げた話はない。
注射を打つ医師や看護師らがまだワクチン接種していないというケースも多いというのだから、馬鹿げている。(高齢者接種の医師「毎日ヒヤヒヤ」 医療者への接種、わずか2割 毎日新聞 2021/05/08

その次に優先するべきは、人との接触が避けられないエッセンシャルワーカーと呼ばれる人たち。
飲食店に時短営業やら酒類提供禁止をいうなら、まずその人たちにワクチンを打つべきだろう。
県境を越えて移動するなと言っても、巣ごもり生活やあらゆる経済活動を支えている運送業は今まで以上に走り回らなければならない。そういう人たちを優先すべきだ。
地域でいえば、人口密集地を優先し、過疎地は後回しでよい。

もちろん、将来にわたって安全性が確認されていない以上、打つか打たないかは本人が決定すべきであり、打ちたくない人に強制的に打つとか、心理的圧力をかけるというのは許されない。実際、ワクチン接種後に急死した医療従事者は複数人いるわけで、これをどうとらえるかはあくまでも個人の考え方次第だ。情報をすべて開示した上で、決定権は各人が握る、ということにするのは言うまでもない。

私は高齢者なので、すでに4月のうちにワクチン接種予約案内の書類が届いている。しかし、私のような、田舎暮らしで、せいぜい週1回程度の買い物以外では外出はしない、一日中家にいて人と接しない人間は、最も感染リスクが低いのだから、いちばん後回しでよい。
結局、政府が「医療従事者は○月から、高齢者への接種はすでに始まっていて○月までに完了」……といったうわべだけのスケジュールをPRしたいがための目くらまし広報なのだ。
そのワクチン接種も、受け付け方法がアナログで、まったくはかどらないというし、こんなバカな状況でワクチンに期待するのも無理がある。
それなのにメディアは連日、自粛がどうの、ワクチンがどうの、なんとか宣言の解除がどうの……と、大切な問題から目を反らせるような報道ばかりしている。
「欲しがりません勝つまでは」の戦時中と同じじゃないか。
もう、バカすぎて、日常生活がまともな精神状態で営めないよ。




Twitter   LINE

オーストラリアでCOVID-19死者が少ない理由は?2021/03/02 22:17

先日の全豪テニスで、海外からやってきた選手やスタッフへの防疫体制の徹底ぶりに驚いた。
飛行機はすべてチャーター機を用意し、空港到着後の検査で一人でも陽性反応者が出ると、その者と同じ飛行機に乗っていた全員を2週間ホテルに完全隔離する。それも、一切部屋から出さないという徹底ぶり。
それ以外の選手も、コートでの練習2時間を含む1日5時間までの外出のみが許され、実質24時間監視されていた。
期間中は毎日検査を行い総数は約3万件に達した。
こうした2週間の隔離終了後に、一部の選手が隔離期間を過ごしたホテルの従業員にコロナ陽性者が出た。そのため、わずかでも接触可能性がある者は陰性が完全証明されるまで外出禁止となり、予定されていた前哨戦は全試合中止になってしまった。
それだけ徹底した管理をしても、市民からは大会開催反対の声が強く上がっていたという。
ようやく2月8日に大会が始まったが、その後、開催市であるメルボルンにある入国者の隔離用ホテルの滞在者やスタッフなどから、イギリス型変異ウイルスが確認されるや否や、州全体で12日夜から5日間、外出制限を導入した。12日夜は、メイン会場のロッド・レーバー・アリーナでは男子3回戦、フリッツ(米)対ジョコビッチ(セルビア)が行われていたが、午後11時30分になると試合を一時中断して会場を無観客にした。この処置に、フリッツ選手は「馬鹿げている!」と怒りまくっていた。

こうしたニュースを見て、オーストラリアってそこまでやるのかと驚いたわけだが、オーストラリアのコロナ感染状況については以前から不思議に思っていた。
人種構成はイギリスやアメリカなどとそれほど変わらないのに、なぜ死者が少ないのだろう、ということだ。

worldometers.infoの最新データ(2021/03/02時点)を見ると、オーストラリアの状況はこうだ。

■オーストラリア
人口:約2570万人
検査総数:約1441万人
死者総数:909人
感染者数累計:28,986人
100万人あたり死者数:35
100万人あたり検査数:562,609
100万人あたり感染者数:1,128人

これを日本と比べてみる。
■日本
人口:約1億2622万人(豪の4.91倍)
検査総数:約825万人(豪の0.57倍)
死者総数:7,887人(豪の8.68倍)
感染者数累計:432,773人(豪の14.9倍)
100万人あたり死者数:62人(豪の1.77倍
100万人あたり検査数:65,916(豪の0.12倍
100万人あたり感染者数:3,435人(豪の3倍

人口100万人あたりの死者数は35人は、日本の62人よりも少ないのだ。
ちなみにイギリスは同・1805人、アメリカは1587人で、オーストラリアの35人と比べて2桁も違う

COVID-19で重症化する割合は、DNA的な要素など「ファクターX」が関係しているのではないかということはだいぶ前から言われている。
では、オーストラリアの人たちは「ファクターX的」に米英の人たちよりコロナで重症化しにくいのか?
それを見るために、「死者数/感染者数」を出してみると、

死者数/感染者数
オーストラリア:0.03136
イギリス:0.02940
日本:0.01822
アメリカ:0.01799

……となり、どの国も桁が違うというほどは違わない。むしろオーストラリアでは「感染して死ぬ人」の割合はイギリス、日本、アメリカより多いのだ。

人口密度が違うとはいえ、徹底した防疫体制、検査数の多さが、感染者数を抑え込み、結果として死者数も抑え込んでいると考えるしかないだろう。

日本はオーストラリアと比べてどうなのか? あるいはお隣の韓国と比べるとどうなのか?
比較してみた。
オーストラリア
100万人あたり死者数:35
感染者数累計/検査数:0.0020
死者数/検査総数:6.3
死者数/感染者数:0.031

日本
100万人あたり死者数:62
感染者数累計/検査数:0.0524
死者数/検査総数:9.6
死者数/感染者数:0.018

韓国
100万人あたり死者数:31
感染者数累計/検査数:0.0135
死者数/検査総数:2.4
死者数/感染者数:0.018

やはり、オーストラリア人は「感染したら重症化して死ぬ確率がアジア人より高い」が、徹底した検査と防疫体制で感染そのものを抑え込んでいるので死者数が少ない、ということが見えてくる。
また、日本と韓国では同じ東アジア系なので、コロナによる「死にやすさ」は変わらない(「死者数/感染者数」がほぼ同じ)が、検査体制や感染対策の違いで人口あたりの死者数に倍の開きが出ている、と考えられる。

それにしても、である。
全豪テニスのあの徹底的な防疫体制、隔離方針と同じレベルのものを日本がオリンピックでできるとは到底思えない。
できないのが分かりきっているので、「2週間隔離は求めない代わりにスマホアプリで管理」などと素っ頓狂なことを言い出す始末。
世界は今の日本をどう見ているだろうか。



Twitter   LINE

ベルギーからワクチン第一便というニュースへの雑感2021/02/12 21:06

ワクチン第一便がベルギーから届いたと、テレビで生中継までする騒ぎになっている。
ベルギーのピュールスという小さな村に米国ファイザー社の工場があり、そこが欧州でのワクチン製造の拠点となっているそうだ。

ベルギーは人口1162万人の小さな国だが、コロナ死者は2万1000人を超えていて、人口に対する死者数は英国、米国、イタリアなどより多い。実質、世界一コロナ被害を受けている国。そこの小さな村で作られたワクチンが、人口あたり死者数がベルギーの1/30以下の日本に送られてくるんだなあと思うと、複雑な思いがある。(人口100万人あたりのコロナ死者数が1855人、日本は同・53人)。

その日本の100万人あたり53人の死者という割合は、同じアジアで見ると、韓国の29人、香港の25人、中国の3人、タイの1人、台湾の0.4人などに比べてはるかに多い。

ちなみに、今、全豪テニスが行われているオーストラリアは、感染者総数28,887人に対して死者909人(3.2%)。日本は感染者数41万人に対して死者6,678人(1.6%)。人種的な要素としてオーストラリアのほうが死亡率が高いと思える中で、感染者数を抑えているのは、防疫体制がしっかりしているからだろう。
オーストラリアの人口100万人あたりの検査数は526,641人、日本は58,994で、一桁違う。
(以上のデータはすべてworldometers.infoより)
こういうデータを見ても、日本がしっかり対策をしていれば、死者数を今の半分くらいにできていた可能性は高いと思う。



Twitter   LINE

今冬のインフル死者数、コロナ死者数の意味を考える2021/01/22 15:08

国立感染症研究所発表のデータより

今冬は、驚異的にインフルエンザ感染者が少ないという(国立感染症研究所発表のデータより)。
厚労省によれば、1月4日~10日における全国の定点医療機関からのインフルエンザ発生報告数は73人。去年の同時期は90,811人だったので、1000分の1以下ということになる。
これはほぼ間違いなく、今年はCOVID-19のせいで人々の交流が減り、手洗いやマスク着用を徹底しているからだろう。
SARS-CoV-2の感染力(人の体内に入り込む「能力」)は従来型インフルエンザウイルスよりはるかに強い、ということだ。
つまり、いつもの年のようにノホホンと過ごしていたら、コロナ患者の数はとんでもない数になっていた可能性がある。

今冬のインフル死者数、コロナ死者数の意味を考える

さらに考えてみよう。
この1月4日~1月10日の1週間は、SARS-CoV-2のPCR検査陽性者数が爆発的に増えた時期だった。全国累計で42,882人にのぼる(厚労省サイトのデータより計算)。
この間、陽性者で死亡した人の数は389人にのぼる。
この数字は例年のインフルエンザ発生数と死亡数に比較してどうなのだろうか。

厚生労働省が毎年発表している人口動態統計によると、2018年のインフルエンザによる死亡者数は3,325人だが、これはインフルエンザが直接的に死の原因となった人の数だ。
WHOは「インフルエンザにかかったことによって自分が罹患している慢性疾患が悪化して死亡する」ことも含めた死を「超過死亡概念」として提唱しているが、この超過死亡概念も含めると、日本におけるインフルエンザによる死亡者数は、毎年およそ1万人前後ではないかと厚労省は推計している。

1月20日時点で、COVID-19による日本国内での死者数累計(昨年の新型コロナ症例が初めて見使った時点からの累計)は4742人である。
これは、新型コロナウイルス感染によって、それまで抱えていた持病などが悪化したり、老衰の度合が進んで亡くなった人も含まれている(WHOが提唱している「超過死亡者数的な統計」)と考えられる。
とすると、今年はコロナ対策のおかげでインフルエンザによる死者は激減しているはずだから、従来型季節性インフルと新型コロナによる死者数を合わせても、去年よりも「ウイルス感染が直接、間接の原因」の死者数が少ない可能性もありそうな気がする。

誤解してほしくないのだが、私は「COVID-19は怖くない」などと言っているわけではない。逆だ。
これだけウイルス対策をしても、インフルは劇的に減らせてもSARS-CoV-2はしっかり人にうつっていく。
ということは、この冬、人々が今までのような生活スタイルであったら、感染者数も重症化~死者数も、1000倍とは言わないまでも、軽く100倍以上にはなっていたのではないか。
低く見積もっても累計死者数は5万人、多ければ5万~10万人くらいになっていてもおかしくない。つまり、何の対策もしない冬を迎えていたら、従来のインフルエンザによる死者数約1万人より一桁多い数のコロナ死者がそこに加算されていたかもしれない

新型コロナがやっかいなのは、無症状者がウイルスを拡散させるという、従来型インフルエンザウイルスにはない特徴を持っていることだ。
従来のインフルは、感染すると高熱が出て寝込んでしまうため、感染者が市中や職場に出てウイルスをばらまくことは少ない。周囲の人も、あ、この人はインフルにかかっている。うつされないように注意しよう、と意識できる。新型はそれが難しい。
さらには、無症状で済んでしまう人がいっぱいいる一方で、それまで元気だった人がサイトカインストームで急激に病状が悪化して、何も手を施せないまま死んでしまうという事例が一定数出ることも恐ろしい。これは心理的にかなりの恐怖としてまとわりつく。
年齢層によって重症化率が大きく違うというのも、世代間の分断を加速させる要因になるのでいやらしい。

社会構造や生活習慣の変化は避けられない

以上のことは、何も専門的な知識や高度な統計技術を持たなくても容易に理解できる。
この「分かっていること」を踏まえて今後のことを予想してみると、
  • COVID-19は簡単には収束・終息しない(それを見越して計画を立てることが必須)
  • ワクチンに関してはあまりにも未知の部分が多いので、今後の展開が予測できない(過剰な期待や希望的展望は危険)
  • 無症状感染者がウイルスを広げているが、無症状の人を片っ端から検査するのは非現実的だし、合理性も欠く
  • かといって感染防止対策をしなければあっという間に蔓延し、重症者や死者も増える(気は緩められない)
  • すでに医療現場の負荷は限界に達しており、コロナ以外の救急患者や要手術患者への医療が十分にできなくなっている(医療制度の見直しや医療現場の改革が必須。そのためには巨視的視野、合理的思考力、剛胆な実行力を持つリーダーが必要))
  • コロナが直接の死因にならずとも、経済破綻やストレスによる自殺などのコロナ関連死が急増する(正しい情報の共有が重要)
  • 人と人の接触が減ることで、娯楽を含めた文化全体のあり方が変わる(消えていくものを守ろうというだけでなく、新しい価値観や幸福感を捜す発想の転換が必要)
  • 世代間の断絶が進み、年長者が若者に経験を伝授していくことが難しくなる(教育や人との触れ合いの形を考えつつ、世代間ギャップを埋める努力を)
  • 都市の文化が荒廃し、人々の生活は郊外や地方に徐々に移っていく(都市型文化偏重をやめて、既存の住宅や設備の活用を)
  • 経済格差、教育格差が進む(オンライン講座などを活用した教育と人材育成)
  • 少子化はさらに進み、平均寿命も徐々にマイナス方向に転じる(経済規模全体はマイナス成長でも、個人の幸福は膨らむ社会作り)
……ざっと思いつくことだけでもこれだけある。
こういう社会変化はもはや避けられない
それを理解した上で、ではどうやって生き延びていくか、犠牲を減らして、幸福感を維持できるのかという具体的な方法を探り、新しい価値観を構築していかないといけない。
緊急事態宣言を出す出さないだの、飲食店の時短営業要請だのといったことだけ声高に議論していても、今後の道筋は見えてこない。このウイルスが人間社会に与えた影響の大きさや内容をもっと巨視的にとらえて、社会をどう作り直していくか、を考えないといけない。
しかし、今のところ、政治にそうした力がないのは明白だし、メディアにも道を示す力は期待できない。
自力で考え、工夫しながら、自分の周りの小さな地域社会を大切に、優しく、柔軟に育てていくことから始めるしかないのかな、と思う。


Twitter   LINE

北関東のダサい地域こそ移住の狙い目2021/01/14 16:10

地方移住のススメ(2)

地方へ移住すれば住居費が軽減できて、ゆとりのある生活ができる?
そうであったとしても、具体的にどのへんの「地方」がいいのか──それが問題ですね。
好き嫌いや様々な事情があって一概にはいえないでしょうから、ここではザックリと基本的な「考え方」をまとめてみます。

どうしても年に数回は行かなければならない場所からの距離

 私が最初に購入した田舎暮らし物件は、新潟県の中越地方、川口町(当時は北魚沼郡。現在は長岡市に併合)にある280万円の古民家でした。
 今から30年ほど前、36歳のときで、当時はまだブロードバンドもなく、東京から完全に離れて生活するのは無理だったので、別荘として購入しました。
 夏の間はほとんどそこにいたのですが、このときに分かったのは、他に生活拠点がある「二地域居住」や、仕事などでどうしても頻繁に移動しなければならない場合の移動距離の上限はせいぜい200kmだということです。
 越後の家は、民家が20軒ほどしかない山奥の限界集落の外れにありましたが、関越自動車道越後川口ICから車で10分ほどの場所で、車で移動する分には便利な場所でした。
 土地は500坪弱くらいだったでしょうか。裏手は土手状の斜面で、その下に川が流れているという地形でしたが、売り主さんは「このへんは地盤がしっかりしていて、新潟地震のときも、新潟市内は滅茶苦茶になったが、このへんでは被害はゼロだった」と言っていました。
 それが、2004年の中越地震で完全に潰れました。なんと、震度7の震源の真上でしたから、ひとたまりもありません。人生、何が起きるか分からないものです。

 この家を購入した最大の決め手は価格でした。280万円ならローンを組むなどしなくても支払えましたから、田舎暮らしの「お試し」としては、失敗してもそれほど後悔しないだろう、せいぜい楽しんでやろう、というような気持ちでした。まだ30代でしたから、気力も体力もあったのですね。
 それでも「移動距離は200kmが限度」というのは実感しました。それ以上になると、頻繁に行き来するのは難しくなり、購入しても放置する羽目になります。
 いざというときのために、自動車(自家用車)以外の交通手段が無理なく使えるかどうかも大切です。
280万円で購入した越後の家(2000年4月撮影)

豪雪地帯や寒い地方はお勧めしない

 越後の家は、約12年かけて、自分で壁を杉板張りにしたり、浴槽を交換したり、和室を洋室に改造したりといったリフォームを繰り返し、ようやくこれ以上はやることがない、となったときに2004年の中越地震でつぶれてしまいました。
自分の手で家の中の壁をほぼすべて杉板張りに替えたりもした。(1998年5月撮影)
 購入自体は280万円でしたが、屋根を全部葺き替えたりもしたので、12年の間になんだかんだで1000万円近く投入したと思います。
 新潟県内の不動産価格、特に山間部の物件は相当安いのですが、これは豪雪地帯だからです。冬は一晩で1m積もるなどということも普通で、屋根に積もった雪をそのままにしておくと家が潰れます。
 越後の家を維持している12年間は、冬は行けないので、冬季の雪下ろし依頼だけで毎年10万円かかっていました。(ちなみにこの地方の人たちは「雪下ろし」ではなく「雪掘り」と言います。家全体が雪の下に埋まるので、屋根の雪も「下ろす」というよりは「掘り下げる」わけです)
 地震でつぶれるまでは、終の棲家に、と思っていましたが、今にして思えば、老後にあの環境で暮らすのは到底無理でした。
 今ははっきり言えます。豪雪地帯はやめましょう。寒すぎる地域もやめましょう。歳を取ると共に、自然を満喫するとか悠々自適どころではなくなります。下手すると落雪事故や寒さによる心臓発作で死にます。
 夏場に現地を見て「なんて美しい自然環境だ」と感激し、衝動買いするようなことのないようにしてください。
ゴールデンウィークでもこれ
中越地震後の写真。4月になってもまだこれだけ雪が残り、潰れた家はこの雪の下。左に少し見えているのは、中越地震の直前にようやく建てた耐雪仕様のかまぼこ形車庫の屋根部分。皮肉なことに、この車庫だけは完全無傷で残った。(2005年4月5日)

 雪はそれほどでなくても、冬に極度に気温が下がる地域も、歳をとるにつれ辛くなります。
 夏場だけ利用する別荘代わりならいいのでは、と思う人もいるかもしれませんが、寒冷地で冬場に人がいない状態で締めきっていると、凍結により、水回りなどが傷みます。次に行ったときに破れた水道管から水が噴き出して室内が水浸しになっていたり、井戸の汲み上げポンプが壊れて水が出なくなっていたりという事態が続くと、その家を維持するのが嫌になり、結局は放棄してしまうということになりかねません。

 では、暖かい地方がいいのかというと、そう簡単な話ではなく、南は台風被害が多いという問題があります。
「地域ブランド」に惑わされるな
 大まかな地域選びをする上で確実にいえることは、地域の「ブランド」「人気度」にはなんの意味もないということです。
 ブランド総合研究所が毎年行っている「地域ブランド調査」による「都道府県魅力度ランキング」などは愚の骨頂で、アホなメディアが面白がって取り上げていますが、あれはそもそも「住みやすさ」のランキングではありません。
第15回「地域ブランド調査2020」(ブランド総合研究所)より
 ブランド総合研究所によれば、この調査は「全国約3万人の消費者からの回答を集める調査」であり、「各都道府県と市区町村の魅力度やイメージ、観光・居住・産品購入の意欲など」を調査した結果だそうです。
 本来は地域や地名が持つ「ブランド力」の調査であり、住みやすさとは直接の関係はありません。それにしても、2020年度最下位となった栃木県は確かにブランド発信力が弱いかもしれませんが、それでも47都道府県の中で最下位というのは理解不能です。
 上位の北海道、京都、沖縄というのは、旅行に行くなら考えてみたいくらいの地域であって、決して「そこで暮らしたい」と思える地域とはいえないでしょう。
 例えば東京に住んでいる人が移住先として考えた場合、北海道⇒「寒い、遠い、見渡す限り何もない、冬は雪で真っ白」、京都⇒「人が本音を言わずに面倒くさそう。因習がものすごそう。観光客でごった返しそう。ただの湯豆腐が何千円とか食べ物屋でぼったくられそう」、沖縄⇒「台風被害必至、米軍基地で騒音がひどい、生活のリズムが違いすぎて戸惑いそう」……というマイナスイメージのほうが先行しそうな気がします。

 いわゆる地域名ブランドというのも、住むのには何の関係もありません。
 例えば、高級別荘地として有名だった軽井沢は今でも「ブランド力」が強いかもしれませんが、あそこに通年住むとしたら、寒さや交通の不便さという面で、日本中にある「ただの田舎町」と何ら変わりがありません。
 その軽井沢を有する長野県も、信州ブランドとしていいイメージを抱かれがち(上記の「都道府県魅力度ランキング」でも長野県は全国8位)ですが、長野と比べて茨城(同・42位)や群馬(同・40位)や栃木(同・47位)は住みにくいのかといえば、まったくそんなことはないわけです。
 ちなみに「北軽井沢」は群馬県ですね。群馬県吾妻郡長野原町の大字(おおあざ)で、人口は約1500人。私が6年ちょっと住んでいた福島県の川内村(人口約3000人)の半分くらいの山村です。
「不人気」地域こそが狙い目だ
 私は2011年に1F(いちえふ=東京電力福島第一原発)が爆発して大量の放射性物質を世界中にばらまいた後、移住先を捜して関東周辺のかなり広いエリアで物件探しをしましたが、長野県、福島県、山梨県、埼玉県などの不動産価格が理不尽に高いのではないかと思ったものです。
 最終的に、今の日光市に総費用1000万円以下で(私たちにとっては想定外に立派な)家を見つけて移り住むことができたわけですが、その価格では福島県(県南エリア)、長野県、山梨県(大月周辺)や秩父エリアの山村など、東京からの交通の便が極端に悪い場所にさえ、住みたいと思える物件を見つけることはできませんでした。
 なぜ日光市の不動産価格はこんなに安いのか? 今でも不思議でなりません。
 我が家は日光宇都宮道路のICから車で約10分。鉄道はJR日光線(駅まで2.8km)と東武日光線(駅まで3.2km)の2箇所が使えて、東京に出るのも苦労しません。住んでみて、その交通の便のよさに驚いたほどです。
 これも「ブランド力」のマジックなのでしょう。どんなに不便で住みにくい場所でも、長野や福島というだけで妙な人気があるのです(原発爆発前まで、福島は移住先としてはかなり人気のある県でした)。

 言い換えれば「ブランド力の弱い地域こそ狙い目である」ということです。

 私は今でも「お住まいはどちらですか」と訊かれたら、「栃木県です」とは答えず、「日光です」と答えます。日光は世界的なブランドだと思っているからです。横浜市民が「神奈川です」ではなく「横浜です」と答えるのと同じ感覚ですね。
 私が住んでいる場所は日光市でも南端に近いところで、かつては「今市市」でした。「イマイチ」という音からしてブランド力は弱そう(笑)ですが、面白いことに、地元の人たちにとっては「今市」は「街」であり、「日光」は「田舎」なのです。今市市が日光市になったときも、抵抗する人たちが結構いたと聞きます。
 車のナンバーは「宇都宮」ナンバーですが、私は当初、これに相当抵抗がありました。「日光」ならカッコいいのに……と思うわけです。ところが、地元の人たちにそれを言うと「とんでもない! 宇都宮だからいいんだ。日光ナンバーなんかになったら、田舎者だと思われてしまう」と言います。

 私が住んでいる地区は、宇都宮市と鹿沼市に隣接していますが、宇都宮市に入った途端、風景は変わらないのに地価がグンと上がります。ほんとに理解不能なほどの違いなのです。つまり、栃木県人にとっては「日光」よりも「宇都宮」のほうがブランド力が高いので、「宇都宮市」というだけで地価が上がるのです。

 栃木県人になった私が栃木県が最下位にランクされているのでムキになっていると思われると心外なのですが、正直なところ、北関東でダサいと思われている地域は移住先として最大の狙い目ではないかと思っています。


Twitter   LINE

タヌパック書店
小説、狛犬本、ドキュメンタリー……「タヌパックブックス」は⇒こちらから


「タヌパックブックス」はAmazonで購入でも買えます
森水学園第三分校 コロナで巣ごもりの今こそ、大人も子供も「森水学園」で楽しもう

『介護施設は「人」で選べ』

親を安心して預けられる施設とは? ご案内ページは⇒こちら

   

『3.11後を生きるきみたちへ 福島からのメッセージ』

『3.11後を生きるきみたちへ 福島からのメッセージ』

(2012/04/20発売 岩波ジュニア新書)…… 3.11後1年を経て、経験したこと、新たに分かったこと、そして至った結論
今すぐご注文できます 
アマゾンコムで注文で買う

立ち読み版は⇒こちら
裸のフクシマ 『裸のフクシマ 原発30km圏内で暮らす』(たくき よしみつ・著) (2011/10/15発売 講談社 単行本)…… ニュースでは語られないフクシマの真実を、原発25kmの自宅からの目で収集・発信。
今すぐご注文できます 
アマゾンコムで注文で買う

立ち読み版は⇒こちら

Kindle Unlimited なら無料で読めます↓