ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』2023/07/22 21:31

ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリンは2007年に発表された本だが、2011年に岩波書店から刊行された翻訳本は今もなお古書でも値が下がらず、大変な支持を得ている。

NHK Eテレの「100分de名著」でも6月に取り上げられた(NHKの良心、最後の砦?)。

上下巻で5000円を優に超える金額の本だが、まずはAmazonのページから、無料の「試し読み」で最初のほうだけでも読んでみよう
民営化、規制緩和、社会支出の大幅削減という三点セットの押しつけは、一般市民からはひどく不評を買ったが、それでも当時はまだ、協定締結の際には交渉にあたる政府同士、およびその分野の専門家たちは形式上だけでも合意の手続きを踏むのが一応の道理だと考えられていた。
それが今や、同じイデオロギーに基づく政策をもっともひどい強制的手段で、つまり他国に軍事侵略したあとの占領体制下や、自然災害による激変の直後に強行するようになってしまったのだ。
どうやら9・11を機に、アメリカ政府は世界各地の国々がそれを望むのかどうかを顧みることなく、「衝撃と恐怖」の軍事力を行使してアメリカ流の「自由市場と民主主義」を推し進めてもかまわない、と自己判断するに至ったらしい。
(略)
ショック・ドクトリンというレンズを通すと、過去35年間の世界の動きもまるで違って見えてくる。この間に世界各地で起きた数々の忌まわしい人権侵害は、とかく非民主的政権による残虐行為だと片づけられてきたが、じつのところその裏には、自由市場の過激な「改革」を導入する環境を整えるために一般大衆を恐怖に陥れようとする巧妙な意図が隠されていた。
ショック・ドクトリン〈上〉――惨事便乗型資本主義の正体を暴く ナオミ・クライン 著、幾島幸子・村上由見子 訳、岩波書店 2011
 
本書の最初に「ショック・ドクトリン」の実例として取り上げられているチリの軍事クーデターは1973年9月11日に起きている。
Wikiでは「世界で初めて社会主義政権(アジェンデ大統領の人民連合政権)が、自由選挙によって民主的に選出されたにもかかわらず、武力で打倒して新自由主義的な経済政策を押し付けるべく、米国政府、米国多国籍企業、シカゴ学派経済学者がチリ軍部を裏で操った。」と説明されている。
ニクソン大統領はCIAに対し、どのような手段を使ってでもアジェンデの就任を阻止するよう命じた。当時のチリ軍部はアジェンデの大統領就任を静かに受け入れていたので、CIAは、議会での決選投票における票の買収と軍事クーデターという2本柱の作戦を立てた
チリ駐在米国大使はチリの現職大統領に次のように言って脅しをかけた。「アジェンデ政権下では、ナットもボルトも一つとしてチリに入るのを許さない。あらゆる手段を使ってチリとチリ人を最低の貧困状態に陥れてやる」。
CIAはアジェンデを鬼として描くプロパガンダを展開した。記者たちに金銭を渡してCIA製の記事を新聞や雑誌に掲載させた。ラジオ番組では迫真の演技も行われた。番組の途中で銃声に続いて女性の悲鳴、「息子がマルクス主義者にやられた」との叫び、など。
Wikiより

……これが50年前のこと。
すでにこの時期には、戦争や災害などの恐怖に乗じて海外資本がその国を経済的に乗っ取り、資源や労働力などを思うがままに収奪するという手法が確立していた。
それがうまくいくと分かってからは、戦争(内戦やクーデター)や災害を巧妙に仕掛けて、人為的に「恐怖とショック」を生み出すことも平然と行われるようになった。

これがどんどんエスカレートして現在に至っている。
この「ショック・ドクトリン」を理論や政治の面で牽引していったのはミルトン・フリードマンを崇拝する「シカゴ学派」と呼ばれる連中だが、今ではこの役割をWEFのヤング・グローバル・リーダーズあたりが取って代わった感がある。
日本からも100人以上が名を連ねている。
Maxさん作成より
企業家、政治家、芸能人など、ああ、あの人も、この人も……と、ゾロゾロ。
ここから主な政治家を拾ってみると、
小池百合子、猪口邦子、高市早苗、船田元、林芳正、野田聖子、小渕優子、中田宏、浅尾慶一郎、津村啓介、遠山清彦、大塚 拓、鈴木英敬、荻原健司、三日月大造、小泉進次郎、山内康一、越直美、小林史明、橋下徹
……といった面々。しっかり覚えておきましょう。

日本では幸か不幸か(どちらの要素もある)、軍事クーデターなどの急激な仕掛けはなかった代わりに、じわじわと「情報宗教」による洗脳や飼い慣らしが続き、スイッチ一つでいつでも国民全体を操ることができる土壌ができあがってしまった

歴史を学ぶことがいかに重要か、改めて痛感させられる。
これだけの歴史があるのに何も学ばず、あまりにも簡単に世論が操られ、最大の搾取標的にされている日本。
国民の8割は今なお瞞されているとは思わず、コロナ詐欺で健康寿命を失い、ロシア憎しプロパガンダ漬けのまま税金を海外の善良な市民殺戮作戦のために吸い取られている。

毎日働きづめで余裕がないのは分かる。でも、近現代史を学ぼう。少しずつでいい。
最低限の知識は持たないと、自分の命も大切な人の命も守れない。

78年前、この国はボロボロにされた状態に原爆を二発も落とされた。
多くの若者が国の無能・無責任によって死への片道切符を渡され、死んでいった。
その歴史が後世の国民になんの学びも与えていないのか。
いくらなんでもひどすぎないか。
「100分de名著」より↓






『神は成長する 霊肉二元論の向こう側』
肉体と魂といった単純化された霊肉二元論を超えて、「私」という意識は脳(肉体)と個性を持った神が結びついて生成されているという思考モデルを展開させた「(カミ)」論。
後半では2020年以降の「リセット世界」「人間を機械化した専制世界」という企みにどう向き合うかについても触れる。
読みやすいよう、本文フォントには大きな16級明朝を使用。
神は成長する
ISBN 978-4-910117-37-9  B6判・116ページ オンデマンド 1408円(税込) 送料330円

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(まえがき より)


(p.101 より)
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『神は成長する 霊肉二元論の向こう側』2023/07/20 14:11

『神は成長する 霊肉二元論の向こう側』
何度も書き直しをしていて時間がかかったが、なんとか本の形にまとめたので、刊行ということにした。
目次はこんな感じ↓





B6判、縦書き、116ページ構成。
今回初めての試みとして、本文基本フォントを16級明朝にした。
大人向けの一般書籍で本文が16級というのは相当大きい。普通は大きくても13級くらい。高齢者が読むであろうと想定して、思いきってみたのだ。
↑右が一般的な新書の本文。左が16級フォントの大きさ
かなり読みやすいと思う。

本文サンプル↓











↓後半部分の一部




こういう内容のものは「これで完成!」ということはありえない。あくまでも古稀を目前にした現時点で、自分の脳が精一杯動いた結果を記録しておく、というようなことかなあ。

なお、最近PayPalの動きがおかしいので、製本直送の代理決済を復活させた。各種クレジットカードやAmazon Payに対応している。


『神は成長する 霊肉二元論の向こう側』
肉体と魂といった単純化された霊肉二元論を超えて、「私」という意識は脳(肉体)と個性を持った神が結びついて生成されているという思考モデルを展開させた「(カミ)」論。
後半では2020年以降の「リセット世界」「人間を機械化した専制世界」という企みにどう向き合うかについても触れる。
ただでさえ紙の本は敬遠されがちなので、読みやすいよう、本文フォントには大きな16級明朝を使用。
神は成長する
ISBN 978-4-910117-37-9  B6判・116ページ オンデマンド 1408円(税込) 送料330円
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(p.101 より)
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『無言歌』とAI ~文芸とは何か?~2023/06/27 11:31

無言歌


『麗しき距離~鶴の飛翔~』に続いて、やはり聖光学院の同窓生(11期)・小松洋くんが中学時代に書いた詩にあたしが曲をつけた『無言歌』を一発録りしてみた。

何年か前、Martin、アントニオ・サンチェス、Parcerの3台を売り飛ばしたとき、Conde Hermanosも一緒に売るかどうかちょっと悩んだ末に手元に残した。もう弾くことはほとんどないだろうと思いつつ、これだけの銘器を簡単に手放すのが躊躇われた。
今回もそのコンデを弾いた。なんとかまだ弾けるかな。

で、この詩を、あたしは数え70歳の古稀(今度の正月)手前になってもまだ解釈できない。
『麗しき距離』のほうはなんとか意味が取れるが、『無言歌』は全然分からない。情景も思い浮かべられない。
小松くんはこの後、どんどん意味を求めず、言葉遊びだけのような詩を書くようになっていった。
いくつかの詩の中で「神父さんのシンプソンさん」というフレーズだけ妙に記憶に残っていて、これは小説『人類を養殖している生物がいる』の中で使わせてもらった。

大学に行ってもしばらくは詩集を作っていたりしたようで、何冊か送ってもらったが、言葉遊びに徹するような傾向はますます強くなっていた。人生なんてたかが遊びさ、と、腹をくくったのかもしれない。

『無言歌』は完全にそうなる前の、過渡期の作品と言えるかもしれない。
意味がありそうでいて、何度読んでも分からない。
何か意味があるのか?
アナグラムかな、しりとりかな、クロスワードかな、縦読みするとかの謎解きかな……などなど、いろいろ考えてみたのだが、やっぱり分からない。
でも、メロディをつけると不思議と妙な説得力がある。なんなんでしょね、これは。

InDeepの岡氏が、最近、問答型AIに意味不明の文章を投げかけて、どんなことを返してくるかという実験にハマっているようだ。このAIに『無言歌』を投げかけるとどうなるんだろう。

やってみたいけれど、自分が書いた詩ではないからやめておこう。

もしかすると小松くんは、文としては意味不明なのに、あたかも音としては文学的な香りを醸し出すという「言葉遊び」をしたかったのだろうか?
タモリのハナモゲラの文芸フレーバーバージョンみたいなもの?
50年後、世の中ではAIが幅を効かせていて、こんな風に意味がありそうでなさそうな詩を生成したりするぞ、という予言だった?
まぁ、それはないとしても、多感な少年期に、文芸とはなんぞや? という問いかけをしたかったという可能性はありそうだ。

彼のような才能がなかったあたしは、古稀を前にした今もなお、ジタバタとあがいている。
みっともないと笑わば笑え。
ある程度才能が足りない人間のほうが、創作に対する欲が長続きするのかもしれない。

ちなみに、あたしも20代前半くらいに、日本人が英語の歌詞の歌を歌うなんてかっこわるい。かといって、日本語は母音が必ずついてまわる言語なので音楽になりにくい。いっそ、ハナモゲラで歌を書いたらどうだ?
なんて思って、こんな曲を作ったりしていた↓。
↑一応この詞は、簡単な縦読みパズルにしてあるんだけどね。わっかるかな~。
しょーもない縦読みが出てきて、ガチョ~ンとなるよ。
AIがこんなしょーもない遊びを自らするようになったとき、文芸だけでなく、あらゆる芸術や文化活動は、単にAIが労働力としての人類に与える娯楽商品という以上の意味は持たなくなるのかもしれない。
人類は、自分たちが作ってきた最高の何かを、壊され、乗っ取られようとしているのかな。
わしゃあ、死ぬまでそんな企みには抵抗するぞよ。

↑2011年7月 上智大学ソフィアホールでのKAMUNAコンサート冒頭でも演奏していた


↑タヌパックで作った最初のCDアルバム『狸と五線譜』にも収録されている




人類を養殖している生物がいる

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土の地蔵 ~聖光学院時代の想い出 1~2023/06/27 11:27

小説『神の鑿』で使ったイラスト
爺のリハビリ一発録りシリーズは、リハビリというより、「昔作った歌を今も歌えるかどうかじたばた試しながら老いを実感しつつしみじみするしょーもないシリーズ」(長い)になっている。

小松くんが中学生のときに書いた「麗しき距離(ディスタンス)」という詩に、あたしが大学入学後に曲をつけた作品があって、Amキーのシンプルな曲なのだが、一部の人たちには人気があった。
単純な構成だけに、訴える力が強いのかもしれない。

最高音がGなので、若いときも通じてあたしが裏声なしで歌えるギリギリ。スローテンポでロングトーンも多いのでごまかしがきかない。リハビリにはもってこいの曲なのだが、やっぱりキツい。


この詩については(薄れかけているが)ちょっとした思い出がある。

中学2年のとき、同級生の工藤くん(現在は母校の校長・理事長)が「文芸同志会」というサークルを作りたいと言いだし、あたしにも声をかけてきた。
文芸よりも音楽に傾倒していたあたしは当初は断ったのだが、「よしみつがいなければ始まらない」とか言われて強引に引っ張り込まれた。
メンバーは数人。集まった作品は、工藤くんが実家(自動車の座席の土台などを作る金属加工工場)にあった湿式コピー機(青写真というやつ)で数部ずつ作った同人誌に載せたりしていた。
詩も俳句も短歌も興味がなかったあたしは、小説の真似事みたいなのを書いた。
連載、とか言いながら、未完のまま終わったりして、顧問(やはり工藤くんが強引に頼み込んだ)の井津先生からは「最初の数行を読んだときはすごい新人作家が出てきたと驚いたが、すぐにペラペラの流行ものみたいになってガッカリした」などと批評された。

この同人誌「新緑」(これも工藤くんが命名)の中で、断トツに輝いていたのが小松くんの詩で、みんながポカ~ンとするくらいのレベルだった。
というか、よく分からない「雰囲気」だけのものだったのかもしれない。いわゆる中二病みたいなやつ。

この『麗しき距離(ディスタンス)』にしても、わざわざ「距離」を「ディスタンス」と読ませたり、最後の「ゼロのアダージョ」(原文では「あだぁじぉ」となっていたような……)という言葉選びなんかが中二病っぽい。
みんな内心、かっこつけてるなあ、で、どういう意味よ、みたいなことは思っていたはずだが、批評するだけの自信も能力もなかった。

小松くんは辛口で、あたしを捕まえては他のメンバー(といっても二人くらいしかいなかった)の作品をけちょんけちょんに笑い飛ばしていた。あたしとしては、自分の小説もどきは文豪・小松くんの目にはどう写っているんだろうと気が気ではなかった。

文芸サークルは高校になっても続いたが、小松くんが、『新緑』はあまりにもダサいとクレームをつけて、誌名は「塔」に変わった。
その頃になると、小松くんの詩はどんどん言葉遊び的なものになっていって、中学時代の意味深なニュアンスが消えてしまった。
やがて大学受験が近づき、「塔」も自然消滅。

聖光学院卒業後、小松くんは現役で東大に進み、少林寺拳法部に入って作務衣(っぽい服?)に下駄履きで闊歩していた。あたしは時々麻雀に誘われたりしたが、麻雀はルールを知らないからと断り続けた。
麻雀抜きで誘われた飲み屋で、白菜鍋が美味いことを生まれて初めて知った。
「美味いだろ? 美味いんだよ。これが大人の味だよ」
みたいなことを、小松くんはあたしの隣で御猪口を片手に満足そうに言っていた。

大学卒業後、小松くんは電通に就職し、コピーライターとして活躍していたようだが、その頃からは疎遠になった。
一方、文芸同志会を立ち上げた工藤くんは明治大学で自分が部長のサークルを立ち上げ、一般人も募るスキーツアーを企画・主催するなど、観光会社もどきのことをしていたが、卒業後は母校・聖光学院に社会科(政治経済)の教諭として就職した。

あたしはレコードデビューでいろいろ失敗し、迷走の20代を過ごしていた。
その頃、作詞が面倒で、他人の詞に曲をつけたほうがいい作品が書けそうな気がして、小松くんが「新緑」時代に書いていた『麗しき距離』『無言歌』という詩を思い出してメロディをつけてみた。
1976年6月に上智でやったアンガジェ解散コンサートでも歌ったので、遅くとも1976年前半までにはできていたことになる。

後にCDに収録する際、小松くんに「地蔵は『土の地蔵』でいいんだよね? 石の地蔵、って書いたバージョンも見た気がするんだけど」と手紙で確認したら、
「書いたことも忘れていたくらいだから覚えてないけど、普通に考えれば地蔵は石でしょ」
 という素っ気ない返事が来た。
いや、「土の地蔵」だったように思うがなあ……と訝っていたら、その後すぐに、
「地蔵は土でした。土じゃなければだめです」
 という訂正の葉書が届いた。

だろ? 石の地蔵はあたりまえなんだよ。土の地蔵だから徐々に形を失っていく。そこに無常観が出る。

遠目には真っ白で美しい鶴(=麗しき距離)が、実は泥にまみれたドジョウを食って生きている(実体)。
その鶴が空高く飛んでいく姿(=麗しき距離)が、夕闇の藍(あい)色に紛れて、やがて闇に飲み込まれていく(幻想)。
美しい鶴の姿を包み込むのは、愛(あい)か、哀(あい)か……(願望と現実)。

そんな鶴の声(歌)が、雪降る夜半に染み通る。真っ白な雪に埋もれていく、誰かが手慰みで作った土の地蔵が、それを聴きながら、ああ、おのれの命(物質としての姿形)ももうすぐ消えていくんだなと、ほろ酔い気分で心の中で歌っている。

清濁、美醜を合わせ持つ命の営み。
形あるもの、いつかは消えゆく。消えていくから美しい……。

そういう詩なんじゃないの? だから「石の地蔵」じゃダメでしょ。作者が忘れてどうする。しっかりせえよ! と思ったものだ。

十代のときの感性を、人は大人になるにつれ忘れていく。
ユーミンが、アルバム『ひこうき雲』に収められた曲は、あの頃の自分にしか作れない作品で、今はもうあのときの感性は失ってしまったから書けない、というようなことを何かの番組で語っていた。
小松くんにしてもユーミンにしても、十代のときにキラキラと輝く才能と感性を発揮していた。
比べてこのあたしは、ただただ欲情をまき散らし、自己中心に振る舞い、「売れている曲のメロディに共通する傾向は?」なんて邪心にとらわれて曲を書いていた凡庸なバカだった。
50年経って、今はそうした失敗をしっかり俯瞰できているが、あの頃の瞬発力や、放っておいてもメロディが湧き出てくるような力は失ってしまった。

いろんなことを考えながら、まだまだ邪心だらけのまま歌っている爺である。
この距離感は、ちっとも麗しくないよなあ。
土の地蔵の心境になるのはほど遠い。

2016年2月28日 工藤くんに召集された7人には小松くんも入っていた。
KAMUNAの全盛期に、この講堂でコンサートをやりたかったなあ。


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間違いを訂正するということ2023/06/10 16:22

↑テレビ番組を見ていたかみさん曰く「日本語が崩壊している」。

助詞の乱れはどんどんひどくなっているが、さすがにこれは許容範囲を超えている、と感じるのはジジババだけなのだろうか?
テレビの字幕では、話者が「食べれる」などの「らぬき言葉」で話してもちゃんと「~られる」と直して表示していたが、それも最近ではゆるくなってきた↓。
↑字幕でもこのありさま


↑ATOKでは入力した途端にこうして指摘してくれる


日本語の崩壊を「変化」として許容していくかどうかは数の力に委ねられている。
例えば、「全然」は打ち消しを伴う副詞だとされていたが、今では肯定の意味でも「全然使われている」し、元々は肯定の意味で使われていたのを戦前になぜか「否定表現に限る」とされてしまったらしい。
注意を要する用法
主に明治時代の文学作品など明治時代から戦前までの近代語に見られ、否定表現を伴わず「すっかり、ことごとく、完全に、全面的に」。 日本に入ってきた当初の用法はこちらであり、字義的にもこちらが正しい。 国語辞典によってはこの用法を記載しなかったり、記載した上でかつて使われた用法とするものもある。(Wikiより

最近は「普通に」や「滅茶苦茶」も守備範囲の広い副詞として多用されている。
「普通にうまい」「全然うまい」「滅茶苦茶うまい」
……の順でうまくなるのかな?

言葉は時代とともに変化していくのだから、こうした現象を大袈裟に「日本語の崩壊だ」と嘆いたり憤ったりしても仕方がないだろう。
しかし、自分でものを考えず、調べず、間違いが分かっても訂正できず、間違っていた過去を肯定するために意固地になって間違いを押し通すというのは、自身の理性・人格の崩壊だけでなく日本の崩壊に直結する。

恥ずかしい思い違いを思い出す

自分のことでいえば、中学生のとき「書き下ろし」の意味を取り違えていて、国語の授業で恥をかいた。
その質問をあたしに振った教師(渡辺護先生)は、半ば責任を感じたかのように、自分が大学生になるまで新約聖書と旧約聖書を、現代語訳かどうかの違いだと思っていたという恥ずかしい思い違いエピソードをまじえてフォローしてくれた。優しい先生だったなあ。

5冊目の小説単行本『G線上の悪魔』を書いたとき、編集者から「役不足」という言葉の使い方が逆であることをやんわりと指摘されて恥じ入ったこともある。


人生、間違い、思い違い、恥の連続である。だって人間なんだもの。

ごく最近の恥ずかしい間違いはPCR検査のこととかかな。
当初はなんでもっと積極的に検査しないんだ、と憤っていた。上 昌広医師などの主張に影響された部分もあったかもしれない。テレ朝のモーニングショーでも煽っていた。
あの頃、テレビで「PCR検査は意味がない」と主張していたのは木村盛世氏くらいだっただろうか。彼女が主張する「偽陽性」の実体を理解するまでに1年くらいかかった。

まあ、あれはメディア総動員で国民を洗脳していたから、詐欺ビジネスのシステムとして利用されていると知るまでに時間がかかったのは無理もない……と、自分を慰めているのだけれど……。

↑こういうことなのだが、
結果、こういうことになる↓


日本の崩壊

今思うと、当初は医師や医学者らの多くがまんまと瞞されていたのだろう。
ダイヤモンドプリンセス号に乗り込んでいった岩田健太郎教授とか、様々なことが明らかになってきた2022年後半になってまで自分の医院に全自動PCR検査機を6台導入してPRしていた倉持仁院長あたりは、当初はかなり純粋な気持ちから行動していたのだろうが、時間と共にどんどん意固地になり、自分の間違いを訂正できず、どんどんミスリードを加速させる、やっかいな「インフルエンサー」になってしまった感がある。
自分の間違い(思い違い)に気づいた後、どうするか少し悩んだ末に権力や金力の側にすっぽりと身を落としたノーベル賞受賞者や医師会会長らの情けなさよ。同じような立場にいながら、命がけで声をあげ、行動している人たちの姿を、彼らはどんな気持ちで見ているのだろうか。
もっと悪質なのは、当初から平気で嘘をつき、補助金で私腹を肥やしたような連中や、この大規模詐欺によって国民が大変な被害を被ることを知りながら、保身のために情報戦争・生化学兵器戦争に加担した「専門家」、官僚、政治家らだ。
今まで同じ世界で力を合わせ行動してきた人たちにこうした極端な分裂が起きたことが、まさに今が「戦時中」であることを示している。

残念なことに、この国だけが未だに世界から取り残され、メディア(情報宗教)による洗脳が解けずにレミングの集団自殺のようなことを続けている。
悪質な政治家の中でも、最も危険な人物が次期首相候補のトップになっているという世論調査などを見るにつけ、これはもう原爆が落ちるくらいのショックが起きても変わらないのかもしれないと悲観せざるを得ない。

医療というものに対する信頼が、この3年で著しく落ちた。
医師ら、人々の健康や命に直接関わっている人たちに心からお願いしたい。
間違いに気づいたら、無茶な開き直りや嘘の上塗りのようなことをせず、せめてこれ以上被害を広げないために沈黙してくれ。



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