投票前から事実上当選している候補者が70人 ― 2017/10/11 18:27
投票前から事実上当選している候補者が70人
昨日、衆院選が公示された。名づけるなら、「証拠隠滅解散」からの「逃げ恥選挙」というところだろうか。
総理大臣が「完全人払い」をしてブロックアウトした農地の前で公示後第一声を上げるなど、まるで落語のようなことになっているが、こんなひどいことになっても、選挙後はしっかり自公で300議席、希望と維新を合わせた「改憲勢力」が軽く8割を超えそうだという予測もある。
愚痴っていても身体に悪いだけなので、ここは少し視点を変えて、「選挙で政治家は選べるのか?」というテーマを扱ってみたい。
現在、日本の衆議院選挙は「小選挙区比例代表並立制」と呼ばれる形態で、小選挙区289と全国を11ブロックに分けた比例区176の合計465議席を選挙によって決める。
比例区は政党名で投票され、政党が獲得した票数の割合で分配された議席数によって、政党があらかじめ提出した候補者名簿の上位から順番に当選していく仕組み。
政党はその届け出名簿に掲載する候補者に順位をつけなければならないが、小選挙区にも立候補している候補者の場合、同一順位で掲載し、小選挙区での惜敗率(当選者の得票の何割に迫ったか)の高い順に当選させるということができる。
多くの政党では候補者への公平を期すため、小選挙区との重複立候補者には同一順位をつけるが、公明党や共産党はすべての候補者に順位をつけている。
また、自民党などの他党でも、小選挙区には立候補させず、単独1位や2位で比例区のみに立候補させたり、重複立候補者にも順位をつけて特定候補を確実に当選させようとするブロックもある。
例えば、比例区九州ブロックの自民党は、
- 園田 博之(75 前 10 元・官房副長官)単独1位
- 宮路 拓馬(37 前 1 元・総務省職員)単独2位
- 今村 雅弘(70 前 7 元・復興相)単独3位
今村候補は、復興相として記者会見の際に記者に暴言を吐いて名をはせた人物だが、「あんなとんでもない人間を議員にさせておくわけにはいかない」と思っても、選挙で落選させるわけにはいかないわけだ。
候補者名簿が出揃ったので、今回の選挙で「すでに当選している候補者」たちのリストを作成してみた。
( )内は左から年齢、前職・元職・新人の別、当選回数、主な経歴……である。
2017衆院選 投票前から当選が決まっている候補者一覧 ★比例区で単独1位、2位、3位で名簿掲載されている候補者のうち、2014衆院選の比例区結果からすでに「当選している状態」の候補者
■北海道(定員8)
自由民主党:
- 渡辺 孝一(59 前 2 党総務副部会長)単独1位
- 鈴木 貴子(31 前 2 元NHK職員)単独2位
前回当選者は3名。鈴木宗男の娘はすでに事実上当選。
公明:
佐藤 英道(57 前 2 元農水政務官)単独1位 前回当選者1名
共産:
畠山 和也(46 前 1 党中央委員)単独1位 前回当選者1名
■東北(定員13)
自民:
江渡 聡徳(62 前 6 元防衛相)単独1位 前回当選者5名
公明:
- 井上 義久(70 前 8 党幹事長)単独1位
- 真山 祐一(36 前 1 党青年副委員長)単独2位
前回当選者2名
希望の党:
寺田 学(41 前 4 元首相補佐官)単独1位この人は、2010年6月、史上最年少で内閣総理大臣補佐官に就任し、菅内閣・菅第1次改造内閣・菅第2次改造内閣・野田第1次改造内閣・野田第2次改造内閣・野田第3次改造内閣で務めた(Wikiより)。つまり旧民主党、民進党の内実や民主党政権時代の官邸内情報を知る人物。そういう人物が希望の党に重用された点に注目すべきだろう。
立憲民主:
- 岡本 章子(53 新 元・仙台市議)単独1位・宮城1区重複
- 山崎 誠(54 元 1 元・横浜市議)単独2位
- 阿久津 幸彦(61 元 3 元・内閣府政務官)単独3位
前回民主党として4名当選。岡本候補は東北ブロックの立憲民主党唯一の候補なので、単独1位は不自然ではない。
共産:
高橋 千鶴子(58 前 5 党中央委員)単独1位 前回1名当選
■北関東(定員19)
維新:
青柳 仁士(38 新 元・国連職員)単独1位・埼玉4区重複 前回3名。青柳候補は、前回、前々回は比例復活も果たせずに落選。今回、豊田真由子候補と同じ選挙区ということで、選挙区はマスコミに注目されているが、なぜこの人だけが他の4人の重複立候補者を差し置いて単独1位になっているのか不思議。
公明:
- 石井 啓一(59 前 8 国土交通相)単独1位
- 岡本 三成(52 前 2 外務政務官)単独2位
- 輿水 恵一(55 前 2 党遊説局長)単独3位
前回3名
共産:
塩川 鉄也(55 前 6 党中央委員)単独1位 前回2名なので、梅村 早江子(53 前 1 党准中央委員)単独2位・埼玉15区重複も極めて有力。
■東京(定員17)
公明:
- 高木 陽介(57 前 7 党幹事長代理)単独1位
- 高木 美智代(65 前 5 厚生労働副大臣)単独2位
前回2名
共産:
- 笠井 亮(65 前 4 党政策委員長)単独1位
- 宮本 徹(45 前 1 党中央委員)単独2位・東京20区重複
前回3名
維新:
木村 剛司(46 元 1 元・墨田区議)単独1位 前回3名(今回も3名立てているが、前回ほど維新に票が集まるとも思えないので……)
■南関東(定員22)
自民:
宮川 典子(38 前 2 文部科学政務官)単独1位 前回8名
公明:
- 富田 茂之(64 前 7 党幹事長代理)単独1位
- 古屋 範子(61 前 5 党副代表)単独2位
- 角田 秀穂(56 前 1 党千葉県副代表)単独3位
前回3名
共産:
- 志位 和夫(63 前 8 党委員長)単独1位
- 畑野 君枝(60 前 1 党中央委員) 単独2位・神奈川10区重複
前回3名なので単独3位の斉藤 和子( 43 前 1 党准中央委員、千葉13区重複)も有力。
■東海(定数21)
公明:
- 大口 善徳(62 前 7 党国対委員長)単独1位
- 伊藤 渉(47 前 3 党愛知県代表)単独2位
- 中川 康洋(49 前 1 党三重県代表)単独3位
前回3名
共産:
- 本村 伸子(45 前 1 党准中央委員)単独1位
- 島津 幸広(61 前 1 党准中央委員)単独2位
前回2名
維新:
杉本 和巳(57 元 2 党県代表代行)単独1位・愛知10区重複 前回3名なので、単独2位の喜多 義典(50 新 党事務局長代理)も有力か
■北陸信越(定数11)
自民:
山本 拓(65 前 7 元・農水副大臣)単独1位 前回5名
公明:
太田 昌孝(56 新 党長野県代表)単独1位 前回1名
共産:
藤野 保史(47 前 1 党中央委員)単独1位 前回1名
立憲民主
- 西村 智奈美(50 前 4 元・厚労副大臣)単独1位・新潟1区重複
- 松平 浩一(43 新 弁護士)単独2位
前回民主党として3名
■近畿(定数28)
公明:
- 竹内 譲(59 前 4 元・厚労副大臣)単独1位
- 浮島 智子(54 前 2 (元)環境政務官)単独2位
- 浜村 進(42 前 2 党青年副委員長)単独3位
- 鰐淵 洋子(45 新 元・参院議員)単独4位
前回4名
自民:
奥野 信亮(73 前 4 総務副大臣)単独1位 前回9名
維新:
森 夏枝(36 新 党府女性局長)単独1位・京都3区重複 前回8名。なぜこの人だけが重複なのに単独1位になっているのか? 京都3区に超大物が出ているわけでもないのに……
希望:
- 樽床 伸二(58 元 5 元・総務相)単独1位
- 井上 一徳(55 新 元・防衛省職員)単独2位・京都5区重複
共産:
- 穀田 恵二(70 前 8 党国対委員長)単独1位・京都1区重複
- 宮本 岳志(57 前 3 党中央委員)単独2位
- 清水 忠史(49 前 1 党准中央委員)単独3位・大阪4区重複
- 堀内 照文(44 前 1 党准中央委員)単独4位・兵庫8区重複
前回4名。穀田氏は原発の全電源喪失危機を国会で早くから指摘していた理系のインテリで国会には是非とも必要な人材だが、確実に比例区で当選できるのだから、京都1区に立つ必要があるのだろうか。
前回京都1区の当選者は伊吹文明(自民)で、穀田氏は2位。惜敗率は72.4%。3位の維新候補者と合わせた票数は伊吹候補を軽く上回っていた。であれば、伊吹候補を倒すためには、出ない、もしくは立憲民主から1人立てて共産は応援に回るという手もあったのではないか。そのほうが反自民票を上乗せできたかもしれない。
前回京都1区の当選者は伊吹文明(自民)で、穀田氏は2位。惜敗率は72.4%。3位の維新候補者と合わせた票数は伊吹候補を軽く上回っていた。であれば、伊吹候補を倒すためには、出ない、もしくは立憲民主から1人立てて共産は応援に回るという手もあったのではないか。そのほうが反自民票を上乗せできたかもしれない。
■中国(定数11)
公明:
- 斉藤 鉄夫(65 前 8 党幹事長代行)単独1位
- 桝屋 敬悟(66 前 7 元・厚労副大臣)単独2位
前回2名
維新:
灰岡 香奈(34 新 元・和木町議)単独1位・広島2区重複 前回1名。ここも不思議。
共産:
大平 喜信(39 前 1 党准中央委員)単独1位 前回1名
■四国(定数6)
自民:
- 福井 照(63 前 6 元・文科副大臣)単独1位
- 福山 守(64 前 2 元・環境政務官)単独2位
前回3名
公明:
石田 祝稔(66 前 7 党政務調査会長)単独1位 前回1名
立憲民主
武内 則男(59 新 元・参院議員)単独1位(1人しか立っていない) 前回民主党として1名。前回は自民党が547,185票で3名、民主党は326,803票で1名だったが、もう少しで2名までいけた。今回、比例区に1人だけでいいのか? 弱気すぎないか?
■九州(定数20)
自民:
- 園田 博之(75 前 10 元・官房副長官)単独1位
- 宮路 拓馬(37 前 1 元・総務省職員)単独2位
- 今村 雅弘(70 前 7 元・復興相)単独3位
前回8名。九州の自民党は強い。記者会見室で逆ギレしたあの人も、選挙をする前から当選している。
希望:
中山 成彬(74 元 7 元・文部科学相)単独1位 極右のシンボル的人物は希望の党という看板も得て、選挙をする前から当選。
公明:
- 江田 康幸(61 前 6 元・環境副大臣)単独1位
- 遠山 清彦(48 前 3 党国際局長)単独2位
- 浜地 雅一(47 前 2 党福岡県代表)単独3位
前回4名なので、4位の吉田 宣弘(49 前 1 党国対副委員長)も有力
共産:
- 赤嶺 政賢(69 前 6 党幹部会委員)単独1位・沖縄1区重複
- 田村 貴昭(56 前 1 元・北九州市議)単独2位・福岡10区重複
前回2名
公明党と日本共産党は組織が強固で、組織内の序列もはっきりしているので、昔から比例区ではきっちり順位をつけて「絶対に当選させる議員」というものがいた。今に始まったことではない。
注目したいのは、自民、立民、希望、維新など、基本的には重複立候補者を全員1位にして公平を期している党で、単独1位、2位になっているケースだ。
抜き出してみると、
自民:
これは典型的に「優遇」されている例。
希望:
希望の党は「抱え込みたい人材」を優先している印象を受ける。
維新:
維新がこれらの人たちを優遇する理由はよく分からない。上にとって覚えのよい人たちということだろうか。
分かりやすいのは立憲民主党で、東北ブロックの単独1位岡村候補、北陸信越ブロックの西村候補の2人は、どちらもそれぞれのブロックに入る小選挙区で唯一の立憲民主党公認候補だから、この2人を単独1位にするのは自然なことであり、不公平感はない。
いずれにしても、投票前から事実上当選している状態の候補者が70名前後いるという事実を、有権者は知っておく必要があるだろう。
注目したいのは、自民、立民、希望、維新など、基本的には重複立候補者を全員1位にして公平を期している党で、単独1位、2位になっているケースだ。
抜き出してみると、
自民:
- 渡辺 孝一(59 前 2 党総務副部会長)
- 鈴木 貴子(31 前 2 元NHK職員=鈴木宗男の長女)
- 山本 拓(65 前 7 元・農水副大臣)
- 奥野 信亮(73 前 4 総務副大臣)
- 福井 照(63 前 6 元・文科副大臣)
- 福山 守(64 前 2 元・環境政務官)
- 園田 博之(75 前 10 元・官房副長官)
- 宮路 拓馬(37 前 1 元・総務省職員)
- 今村 雅弘(70 前 7 元・復興相=記者に「出ていけ」と逆ギレした人)
これは典型的に「優遇」されている例。
希望:
- 中山 成彬(74 元 7 元・文部科学相)
- 寺田 学(41 前 4 元・首相補佐官)
- 樽床 伸二(58 元 5 元・総務相)
- 井上 一徳(55 新 元・防衛省職員)
希望の党は「抱え込みたい人材」を優先している印象を受ける。
維新:
- 青柳 仁士(38 新 元・国連職員)
- 木村 剛司(46 元 1 元・墨田区議)
- 杉本 和巳(57 元 2 党県代表代行)
- 森 夏枝(36 新 党府女性局長)
- 灰岡 香奈(34 新 元・和木町議)
維新がこれらの人たちを優遇する理由はよく分からない。上にとって覚えのよい人たちということだろうか。
分かりやすいのは立憲民主党で、東北ブロックの単独1位岡村候補、北陸信越ブロックの西村候補の2人は、どちらもそれぞれのブロックに入る小選挙区で唯一の立憲民主党公認候補だから、この2人を単独1位にするのは自然なことであり、不公平感はない。
いずれにしても、投票前から事実上当選している状態の候補者が70名前後いるという事実を、有権者は知っておく必要があるだろう。
矢部宏治著『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』を読んだ ― 2017/10/15 12:36
矢部宏治著『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』を読んだ。
筆者の頭のよさと勇気に脱帽である。
あとがき部分が特に印象に残ったので、一部を抜粋・要約してみる。
↑この「軍国主義者たち」あるいは「天皇」を「安倍一強」に替えれば、そのまま今の日本の状況を表しているのでは?
「政治権力の濫用が安倍たちに日本政府を支配させ、国政を私物化することを可能にしてきた。
……で、矢部氏の憲法に対するスタンスは、枝野幸男氏にとても近いのではないか、とも感じた次第。
とにかく今の状況を「すこしでもまともな方向に」向かわせるよう、国民も努力しなければいけない。
衆院選2017。こんどこそ「最後のチャンス」だろう。
筆者の頭のよさと勇気に脱帽である。
あとがき部分が特に印象に残ったので、一部を抜粋・要約してみる。
野田首相の自爆解散によって民主党が壊滅し、安倍政権が誕生してから、日本はふたたび戦前のような全体主義国家にもどろうとしているかのように見える。
(略)
GHQが日本国憲法の草案を書く3か月前(1945年11月)、当時42歳だったマイロ・ラウエル陸軍中佐は憲法改正のための準備作業として、大日本帝国憲法(明治憲法)を分析するよう命じられる。
1か月後、彼は「日本の憲法についての準備的研究と提案」というレポートを司令部に提出した。その結果は次の通り。
「過去の日本における政治権力の運用を分析した結果、数多くの権力の濫用があったことがわかった。そうした濫用が軍国主義者たちに日本政府を支配させ、国政を私物化することを可能にしてきた。
日本に民主主義的な傾向がしっかりと根づくためには、次のような悪弊を是正することが必要である。
」
- 国民に、きちんとした人権が認められていない
- 天皇に直結し、国民の意思を反映する責任のない憲法外の機関がある
- 裁判所が裁判官ではなく検察官によって支配されている。両者はともに天皇の意志の代理人である
- 政府のあらゆる部門に対して、憲法によるコントロールが欠けている
- 政府が国民の意思を政治に反映させる責任を負っていない
- 行政部門が立法行為をおこなっている
↑この「軍国主義者たち」あるいは「天皇」を「安倍一強」に替えれば、そのまま今の日本の状況を表しているのでは?
「政治権力の濫用が安倍たちに日本政府を支配させ、国政を私物化することを可能にしてきた。
- 安倍に直結し、国民の意思を反映する責任のない憲法外の機関がある(官邸による官僚支配)
- 政府のあらゆる部門に対して、憲法によるコントロールが欠けている(憲法解釈変更による集団的自衛権容認)
- 行政部門が立法行為をおこなっている(「私は立法府の長です」)
……で、矢部氏の憲法に対するスタンスは、枝野幸男氏にとても近いのではないか、とも感じた次第。
とにかく今の状況を「すこしでもまともな方向に」向かわせるよう、国民も努力しなければいけない。
衆院選2017。こんどこそ「最後のチャンス」だろう。
矢部宏治の憲法観 ― 2017/10/15 15:35
■矢部宏治の憲法観(オレンジ本よりまとめ)
『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』(オレンジ本)のP.184-186部分を要約
枝野幸男らが主張する「改憲に反対するわけではない。しかし、安倍政権のもとでの改憲には絶対反対」というのも、結局はこういうことなのだろう。
「日本国憲法の真実」を極限まで簡略化すると、
- 占領軍が密室で書いて、受け入れを強要した。
- その内容の多く(とくに人権条項)は、日本人にはとても書けない良いものだった。
- 占領軍が敗戦国の憲法草案を書いて、それを日本人自身が書いたことにしたことで、憲法という国家の根幹に大きな闇が生まれてしまった。
- もしあのとき日本人の手で憲法を作ったら、その内容が現在の日本国憲法に比べてすぐれたものになる可能性はゼロだっただろう。
- しかし、独立時に一度、GHQ憲法草案の良い点をできるだけ生かしながら、自分たちの手で作っておけば、少なくとも現在のように、立憲主義を否定する、まるで18世紀に戻ったような改正案を掲げた与党が選挙で圧勝するという、信じられないような状況は避けられたはず。
- 近代憲法とは、いくら内容が良くても、権力者から与えられるものではない。(政府が作成してもいけない)
- 憲法についての日本の悲劇は、「悪く変える」つまり「人権を後退させよう」という勢力と、「指一本触れてはいけない」という勢力しかいないこと。「良く変える」という当然の勢力がいない。もちろんそれは、変えるとかならず悪くなってしまうという現実があったから。
- 密約のせいで、戦争ができるようになった「日本軍」を、自分たちの指揮の下で使いたいというのは米軍の過去60年の欲求。それを食い止めるために「指一本触れてはいけない」という護憲神話がこれまで戦術論として有効だったことは事実。しかし、そうして問題を先送りできる時期は過ぎた。
- 2014年7月、安倍政権は歴代自民党政権が自粛してきた「集団的自衛権の行使容認」という解釈改憲を強行した。このままでは、おそらく日本が海外で、アメリカの侵略的な戦争に加担することを止められないだろう。
結論:
問題は、私たち日本人は1946年も、そして2012年(自民党改憲案)も、国際標準のまともな憲法を自分たちで書く力がなかったということ。個人でいくら正しいことを言っている人がいても意味がない。そうした意見をくみあげ、国家レベルでまともな憲法を書く能力が、今も昔も日本にはない。その問題を、これから解決していく必要がある。(p.190の結び)
枝野幸男らが主張する「改憲に反対するわけではない。しかし、安倍政権のもとでの改憲には絶対反対」というのも、結局はこういうことなのだろう。
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