異常気象よりも異常なことが起きている2018/07/17 21:06

7月8日未明、ワールドカップサッカー中継の画面

なぜメディアは気を緩めていたのか

西日本豪雨被害の凄まじさが、当初、首都圏をはじめ、東日本の人びとにはなかなか伝わらなかった。その一因は、テレビの報道があまりにもおざなりだったからだ。
深刻な被害情報が入ってきた7日から8日にかけて、NHKはサッカーワールドカップの中継画面にL字枠で「○人死亡○人安否不明」のテロップを出しっぱなし。その後も特番にはならず、『日曜討論 貿易摩擦・外国人材受け入れ』なんてやっていた。それ「今じゃないでしょ」。
民放も平然と長時間音楽特番を続けていたり、グルメ番組だのアニメだのを流していた。
テレビの報道が(被災地の地方局を含め)緊張感がなく、内容も薄かったのは、政府が本気で動かなかったから、ということも大きいだろう。
緊急災害対策本部が設置されていない段階で災害情報特番を組むことはないというのがテレビ業界の常識なのだろうか。
気象庁が異例の緊急記者会見を開いて警告を発した7月5日から政府が緊急災害対策本部を設置した7月8日までの4日間を時系列で振り返ってみよう。

7月5日
  • 北海道南西部を中心に早朝から大雨被害が続々発生。八雲町の道央自動車道で50mに渡って土砂崩れ。奥尻町でも土砂崩れが派生し80戸停電。岩内町で355世帯660人に避難勧告。
  • 西日本各地で大雨。9.30頃、兵庫県猪名川町で男性作業員3人が排水管に流され1人死亡。神戸市で約10万人に避難勧告。大阪府茨木市、神戸市などでも避難指示。午後の時点で、避難指示・勧告が出されたのは計3府県15市町の約20万人。
  • 神戸市灘区の神戸大で3階建て校舎の裏斜面で土砂崩れ。大学は避難勧告を受け、休校に。
  •  14.00 気象庁が緊急記者会見を開き、「8日にかけて東日本から西日本の広い範囲で記録的な大雨となる恐れがある。早めの避難を心がけてほしい」と発表
  •  15.30 内閣府が各省庁課長らを集て災害警戒会議を開く
  •  20.00 大阪、兵庫など3府県約20万人に避難勧告が出る
  •  そんな中、議員会館内で自民党議員約50人が「赤坂自民亭」なる酒宴を開き、20.30頃、安倍首相も参加。
  •  22.00頃 西村康稔官房副長官が酒宴の様子を写した写真をツイッターに投稿し、「和気あいあいの中、若手議員も気さくな写真を取り放題!まさに自由民主党」などとツイート。片山さつき議員も同様にツイッターに「今日は27回目の赤坂自民亭」「安倍総理初のご参加で大変な盛り上がり」などと写真入りで投稿
安倍首相の地元・山口の獺祭、大規模火災で被災しながら復活した新潟県糸魚川市の名酒・加賀の井、広島の酒・賀茂鶴などが振る舞われたが獺祭を飲めば「安倍支持」、賀茂鶴なら「岸田支持」など9月に迫った自民党総裁選を題材にしたジョークが飛び交った。ちなみに出席議員の大半は結局、獺祭と賀茂鶴の両方を飲む羽目になったという。
乾杯のあいさつは竹下亘総務会長が務め、「自民亭の女将」でもある上川陽子法相の発声で「万歳」をした。
「大炎上「赤坂自民亭」は何が問題だったか」 プレジデントオンライン
7月6日
  •  未明 京都府亀岡市の大路次川で車が水没しているのが発見され、下流で女性が遺体で見つかる。
  •  広島県安芸高田市で、川に流されて行方不明となっていた男性が死亡
  •  北九州市門司区で住宅が土砂崩れに巻き込まれ2人行方不明
  •  7.00頃 オウム死刑囚7人の死刑執行が始まる。テレビでは「今、また死刑が執行されました」とリアルタイムでトップ報道し、死刑囚の顔写真に「執行」とマークを打っていくなどの扇情的な演出。豪雨情報は二の次にされる
  •  10.00 気象庁が数十年に1度の災害を意味する「大雨特別警報」の可能性を示唆
  •  17.10 長崎、福岡、佐賀の3県に大雨特別警報
  •  19.40 広島、岡山、鳥取に大雨特別警報
  •  22.50 京都、兵庫に大雨特別警報。1日で8府県に大雨特別警報が発表される異常事態に。この時点で、死者・行方不明者は少なくとも100人を超えると報道される
  •  23.35 岡山県総社市下原の金属加工会社「朝日アルミ産業」の工場が爆発し、延焼や爆風で広範囲の建物に被害。少なくとも住民ら十数人がけが。浸水で原料が反応した可能性
7月7日
  •  10.01~10.16 政府が首相官邸で関係閣僚会議を15分間開く。安倍首相「人命第一の方針の下、救助部隊を遅滞なく投入し、被災者の救命・救助に全力を尽くしてもらいたい」
  •  11.35 首相が官邸を出て、11.49東京・富ケ谷の私邸着。その後終日来客なく、私邸で過ごす
  •  12.50 岐阜県に大雨特別警報
7月8日
  •  早朝5.00時点で、広島県で約82万世帯、約184万人に避難指示・避難勧告。岡山、岐阜など18府県で約92万世帯、約201万人に避難指示の継続(消防庁)
  •  5.50 高知、愛媛に大雨特別警報。最終的に、11府県で大雨特別警報が発表された
  •  岡山県倉敷市真備町(約8900世帯)で、付近を流れる高梁川支流の決壊で約4500棟が冠水。真備町の面積の27%にあたる約1200ヘクタールが浸水。倉敷市真備支所や公民館、学校も水没。朝の時点で建物の屋上などに1000人以上が取り残されているとの情報。自衛隊や消防などがヘリコプターやボートなどで救出活動
  •  8.00 非常災害対策本部(本部長・小此木八郎防災担当相)を設置。安倍首相は9.02から20分間、同会議に出席
  •  9.48~10.42 安倍首相、ポンペオ米国務長官の表敬を受ける
  •  正午時点で少なくとも死者68人・不明52人(読売新聞)と報道
  •  13.00~13.23 安倍首相、韓国の康京和外相の表敬を受ける
  •  14.16 官邸を出て私邸へ帰宅。以後、来客なく私邸内で過ごす

5日夜の「赤坂自民亭」での浮かれた写真が出席者自らの手でツイッターに投稿されたことで後に大炎上したわけだが、あれだけならまだ「あの時点ではこれだけ深刻な被害は予想できなかった」という言い訳もあったかもしれない。しかし6日の時点ですでに死者・行方不明者が100人を超えていると報道されているのに、非常災害対策本部を設置するのが翌々日というのはどういうことだろうか。
被害が深刻化する中でオウム死刑囚の死刑執行を行い、それが「電波ジャック」のようになってテレビの災害情報報道が追いやられたのも解せない。
7月3日、7人の死刑執行にはんこを押して命令を下した上川法務大臣が、死刑執行前夜に酒盛りに参加して万歳の音頭を取っていたという神経も信じられない。

とにかく税金の使い方をなんとかしてくれ

「国」とはなんだろう。「国を守る」とはどういうことだろう。
政府は13日の閣議で、西日本を中心とする豪雨被害の緊急支援のため、予備費20億848万円の拠出を決定した。麻生太郎財務相は閣議後の記者会見で「被災者の生活に不可欠な水、食料、クーラー、仮設トイレといった物資を緊急調達する」と使途を説明した。
時事ドットコム 2018/07/13

……ため息……。
20億円とはどのくらいの金額なのか?
自衛隊の10式戦車は1台10億円。この戦車2台分が20億円。
安倍政権下での内閣官房機密費、用途不明(領収書なし)は56億円
もんじゅ維持費(廃炉が決まっても、冷やし続けなければ爆発)が年間200億円。今までにもんじゅに投じた額は約1兆2千億円。
楢葉町の沖合約20キロの海上に「東北復興の礎に」と建てた出力2000kwと5000kw、7000kwの3基の風車と変電所の建設費が585億円
経産省によると、この3基の風車の設備利用率は、2000kw風車が34%、5000kw風車(運用開始の2017年2月以降)が12%、7000kw風車が2%。もちろん目安に達していない。(洋上風力、発電不調 福島沖・浮体式、商用化に暗雲 朝日新聞デジタル 2018/07/11)
これはテスト段階で、商用利用には至っていない。つまり、585億円かけて、まだ何にも役に立っていない。このまま計画凍結となれば、巨額の金を使って海に巨大なゴミを置いただけということになる。
たとえ、30%程度の設備利用率が達成できたとしても、投資額を発電「実績」で回収できるとは思えない。維持費もかかるし、修繕するのも洋上なら簡単ではない。
すべてが順調にいったとして、5000kw級の巨大風車が風次第で発電したりしなかったりを繰り返すのだ。発電能力が大きければ大きいほど、発電しないとき(風が吹かない or 暴風で止めるとき)の調整は火力発電所が担わなければならないわけで、火力発電の燃費が悪くなる。
そしてこの不安定な博打発電のために、すべての国民は再エネ賦課金を電気料金に上乗せさせられている。

……とまあ、こんなことやあんなことに使われた金額と比べての20億円という金額を噛みしめてみたい。
さらにいえば、「被災者の生活に不可欠な水、食料、クーラー、仮設トイレといった物資を緊急調達する」というが、そんなものは常に準備できていなければならない。
⇒これをぜひ読んでおきたい。
  • イタリアの避難所に被災後真っ先に届く1つめはトイレ。それも日本でよく見る昔の公衆電話ボックスのような狭いものではなく、車椅子対応のものもある広いユニット。
  • 2つめは巨大なキッチンカー。1台で1時間に1000食提供できる能力を持つキッチンカーで温かな食事を提供。
  • 3つめはベッド。最初は簡易ベッドが、1週間後くらいにはマットレスのある普通のベッドが届く。
  • これらの物資はコンテナに収納されて常に待機しているので、災害が発生したらすぐに運べる。コンテナなので屋外にそのまま置けるから、体育館などの施設が物資で埋まって混乱することもない。
イタリアの避難所に被災後真っ先に届く3つのものとは DIAMOND online リスク対策.com

普通に考えればあたりまえのことなのに、何度も大災害に見舞われながら日本はなぜこうした「あたりまえの対策」「合理的な行動」ができないのか。
日銀が買い支え続けて維持している株価も、もうすぐ出口を失い、破綻する。そうなると、もうどうにもならない「弱り目に祟り目」状態になる。そうなってから現政権が崩壊しても、その後始末は誰にもできない。
経済破綻、国土荒廃、人心混乱の中、日本は世界に向かって「助けてください」と泣きつく弱小国になり果てるだろう。 「赤坂自民亭」を非難するだけでなく、いつまで経っても学ばない、まともな税金の使い方をしない政治に一刻も早くNOを突きつけない限り、この国は思っているよりずっと早く崩壊する。

西日本豪雨被害は人災か2018/07/25 15:05

「合法的集金稼業」に前のめりになっている弁護士事務所が増えた。テレビをつければその手のCMがわんさか流れてくる。
集金ターゲットが高利貸し業者ならまだいいのだが、IT弱者ともいえる高齢者を狙う手法もエスカレートしているようだ。
以前、「老人よ、弁護士とNTTとNHKから身を守れ」と題する日記を掲載した。これに関して、同様の被害を受けたので裁判を起こしているというかたからメールが来た。
僕が日記に書いたのは自分の例ではなく、親父の契約についてだから、契約締結時のいきさつやその後のことはよく分からない。しかし、メールのかたはご自分の契約のことで、したはずのないオプション契約を勝手に締結され、十数年間もクレジットカードから引き落とされていたという。このかたは海外に在住しており、明細が示されていない一括引き落としだったために気づくのが遅れたそうだ。
海外生活に入る前に結んだ契約時の書類も出てきて、相手方(プロバイダ)の説明がウソだらけであることも証明できているという。
「海外のマスコミも視野に入れ、なんとかこの事実を高齢者の方にも知ってもらい、自分が課金されているものの詳細をチェックするように働きかけたい」という。しかし、相手は巨大企業。個人で裁判を続けていくのは大変だろう。
日本の裁判所は、ワンセグケータイを持っているだけでNHKとの受信契約を結ばなければならないというトンデモ判決を出す。そういう国なのだ。
テレビを視聴できるワンセグ機能付き携帯電話の所持者に、NHKと受信契約を結ぶ義務があるかが争われた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(深見敏正裁判長)は26日、1審・さいたま地裁判決(2016年8月)を取り消し、「契約義務がある」としてNHK側の逆転勝訴を言い渡した。同高裁では別の裁判長らも22日に契約義務を認める判決を2件出しており、控訴審ではいずれもNHKの勝訴となった。
「ワンセグ携帯 NHK逆転勝訴 義務認定3件目 東京高裁」 毎日新聞 2018/03/26)

「別の裁判長らも22日に契約義務を認める判決を2件出しており」というのは、水戸地裁と千葉地裁で起こされた同様の裁判を22日に東京高裁が控訴棄却したことをさしている。
控訴していたのは50代と60代の男性で、どちらもテレビを所持していないのに、ワンセグ受信可能なケータイ端末を所持していたというだけでNHKとの契約を結ばされたというもの。
どちらの裁判でも、
  • ワンセグ機能付きの携帯電話を所持する=放送法が定める「受信設備の設置」にあたる
  • ワンセグ携帯ユーザーにNHKを受信する意思がなくても、受信契約の締結義務がある
とした。
家にテレビを持っていない中高年が、ケータイの小さな画面でわざわざワンセグテレビを見るとは到底思えない。
これがまかり通るなら、速度超過運転をする意思がなくても時速200km出せる自動車を所持しているだけで違法だとか、そういう話にもなるのではないか。

NHKを視聴しなくても契約義務が生じるという滅茶苦茶な論理の根拠となっている放送法第64条を改めて見てみよう。
【放送法第64条(受信契約及び受信料)】
第1項  協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。第126条第1項において同じ。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。

ここには「設置」とある。
2016年8月26日のさいたま地裁判決では「ワンセグ機能付き携帯電話の所持は放送法上の受信機の設置にあたらない」として、原告勝訴となった。あたりまえの判決だろう。
しかし、上記、今年(2018年)3月26日の東京高裁では、このさいたま地裁判決を取り消し、放送法64条第1項の「設置」は備え置くだけでなく、携行も含む、という拡大解釈までしてNHKの逆転勝訴とした。ケータイを所持していることが「NHKを受信できる装置を設置した」ことになるというこの「解釈」を、はたしてどれだけの人が受け入れられるだろうか。
デジタル放送になって、テレビ受像器はB-CASカードなしでは受信できなくなった。放送法を現状に合わせて改定し、NHKもWOWOW同様、スクランブルをかけて放送すればいいだけのことだ。「公共放送」というのであれば、災害時の緊急放送などだけノンスクランブルで放送すればよい。現状ではNHK総合は、災害時にもL字枠に「死者○人」などと出すだけで、ドラマやスポーツ中継を流している。民放となんら変わらないのだから。

最近、こんな事例を知った。
東北のある町から大都市の大学に進学し、初めて都会のひとり暮らしを始めたばかりの女性の部屋に「NHKの契約はお済みですか?」と男が訪ねてきた。
女性はテレビを部屋に持っていなかったし、これからも持つつもりはなかったが、そう答えると、「携帯電話は持っているんじゃないですか?」と問い詰められ、ワンセグ受信が可能なケータイだったため、契約書、しかも銀行口座から自動引き落としする契約書にその場で署名捺印させられたという。
この話を聞いて、高齢者だけでなく、田舎から都会に出てきた若い女性なども集中的に狙われるのかと、暗澹たる気持ちになった。
社会正義とか公平公正などという言葉が通用しない日本の法律、法の運用。それを利用して非生産的なビジネスにしがみつく大企業やら弁護士事務所やら……本当に情けない国になってしまった。


↑これは私の「遺言」です

ワンセグケータイ裁判のデタラメ2018/07/28 22:53

「合法的集金稼業」に前のめりになっている弁護士事務所が増えた。テレビをつければその手のCMがわんさか流れてくる。
集金ターゲットが高利貸し業者ならまだいいのだが、IT弱者ともいえる高齢者を狙う手法もエスカレートしているようだ。
以前、「老人よ、弁護士とNTTとNHKから身を守れ」と題する日記を掲載した。これに関して、同様の被害を受けたので裁判を起こしているというかたからメールが来た。
僕が日記に書いたのは自分の例ではなく、親父の契約についてだから、契約締結時のいきさつやその後のことはよく分からない。しかし、メールのかたはご自分の契約のことで、したはずのないオプション契約を勝手に締結され、十数年間もクレジットカードから引き落とされていたという。このかたは海外に在住しており、明細が示されていない一括引き落としだったために気づくのが遅れたそうだ。
海外生活に入る前に結んだ契約時の書類も出てきて、相手方(プロバイダ)の説明がウソだらけであることも証明できているという。
「海外のマスコミも視野に入れ、なんとかこの事実を高齢者の方にも知ってもらい、自分が課金されているものの詳細をチェックするように働きかけたい」という。しかし、相手は巨大企業。個人で裁判を続けていくのは大変だろう。
日本の裁判所は、ワンセグケータイを持っているだけでNHKとの受信契約を結ばなければならないというトンデモ判決を出す。そういう国なのだ。
テレビを視聴できるワンセグ機能付き携帯電話の所持者に、NHKと受信契約を結ぶ義務があるかが争われた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(深見敏正裁判長)は26日、1審・さいたま地裁判決(2016年8月)を取り消し、「契約義務がある」としてNHK側の逆転勝訴を言い渡した。同高裁では別の裁判長らも22日に契約義務を認める判決を2件出しており、控訴審ではいずれもNHKの勝訴となった。
「ワンセグ携帯 NHK逆転勝訴 義務認定3件目 東京高裁」 毎日新聞 2018/03/26)

「別の裁判長らも22日に契約義務を認める判決を2件出しており」というのは、水戸地裁と千葉地裁で起こされた同様の裁判を22日に東京高裁が控訴棄却したことをさしている。
控訴していたのは50代と60代の男性で、どちらもテレビを所持していないのに、ワンセグ受信可能なケータイ端末を所持していたというだけでNHKとの契約を結ばされたというもの。
どちらの裁判でも、
  • ワンセグ機能付きの携帯電話を所持する=放送法が定める「受信設備の設置」にあたる
  • ワンセグ携帯ユーザーにNHKを受信する意思がなくても、受信契約の締結義務がある
とした。
家にテレビを持っていない中高年が、ケータイの小さな画面でわざわざワンセグテレビを見るとは到底思えない。
これがまかり通るなら、速度超過運転をする意思がなくても時速200km出せる自動車を所持しているだけで違法だとか、そういう話にもなるのではないか。

NHKを視聴しなくても契約義務が生じるという滅茶苦茶な論理の根拠となっている放送法第64条を改めて見てみよう。
【放送法第64条(受信契約及び受信料)】
第1項  協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。第126条第1項において同じ。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。

ここには「設置」とある。
2016年8月26日のさいたま地裁判決では「ワンセグ機能付き携帯電話の所持は放送法上の受信機の設置にあたらない」として、原告勝訴となった。あたりまえの判決だろう。
しかし、上記、今年(2018年)3月26日の東京高裁では、このさいたま地裁判決を取り消し、放送法64条第1項の「設置」は備え置くだけでなく、携行も含む、という拡大解釈までしてNHKの逆転勝訴とした。ケータイを所持していることが「NHKを受信できる装置を設置した」ことになるというこの「解釈」を、はたしてどれだけの人が受け入れられるだろうか。
デジタル放送になって、テレビ受像器はB-CASカードなしでは受信できなくなった。放送法を現状に合わせて改定し、NHKもWOWOW同様、スクランブルをかけて放送すればいいだけのことだ。「公共放送」というのであれば、災害時の緊急放送などだけノンスクランブルで放送すればよい。現状ではNHK総合は、災害時にもL字枠に「死者○人」などと出すだけで、ドラマやスポーツ中継を流している。民放となんら変わらないのだから。

最近、こんな事例を知った。
東北のある町から大都市の大学に進学し、初めて都会のひとり暮らしを始めたばかりの女性の部屋に「NHKの契約はお済みですか?」と男が訪ねてきた。
女性はテレビを部屋に持っていなかったし、これからも持つつもりはなかったが、そう答えると、「携帯電話は持っているんじゃないですか?」と問い詰められ、ワンセグ受信が可能なケータイだったため、契約書、しかも銀行口座から自動引き落としする契約書にその場で署名捺印させられたという。
この話を聞いて、高齢者だけでなく、田舎から都会に出てきた若い女性なども集中的に狙われるのかと、暗澹たる気持ちになった。
社会正義とか公平公正などという言葉が通用しない日本の法律、法の運用。それを利用して非生産的なビジネスにしがみつく大企業やら弁護士事務所やら……本当に情けない国になってしまった。


↑これは私の「遺言」です