投票の前に思い出そう(選挙前シリーズその1)2012/11/25 12:36

あれが夜中だったら……
これは絶対に見ておきたい。

要点は、

1)ディーゼル発電機本体がたとえ水没しなくても、発電機を冷却しているウォーターポンプは海水を使っていたので海岸線に置くしかなくて、それがメチャメチャになったのだから、どっちみち非常用ディーゼル発電機は使えなかった。(その事態を避けるためには、ディーゼル発電機を高い場所に移してもダメで、冷却ポンプを水没しても動く水中ポンプに替えることが必要)

2)地震発生当時、原発には1000人の作業員がいたが、もし夜中だったら100人規模になっていた。まっ暗な中で外から支援も得られず、100人で危機を乗り切ることは不可能だっただろうから、事態は今よりはるかに深刻化していたはずだ。

3)複数の原子炉が同時に制御不能になり破壊されるという状況は世界で初めてのことで、チェルノブイリより放出された放射性物質が多いとか少ないとかいう議論ではなく、複数同時制御不能事故はレベル8という、より深刻な事故として定義するべきだ。その場合、当事国だけでなく、全世界の精鋭を集めたチームが即座に事故収拾対応にあたれるようにしておかなければいけない。

……本当に、あれが夜中だったらと思うと……。今頃こんなのんびりした生活を送っていられなかったかもしれない。

誰が何をしたかを見極める(選挙前シリーズその2)2012/11/25 18:17

選挙の前にこれだけは……その2

東京新聞は頑張っている ──そうか、あいつが……

東京新聞記事 ~脱原発 崩れたシナリオ 仙谷氏「運動じゃない、政治だ」~(2012年11月22日)より


記事を要約すると……

2012年8月22日夜7時、国家戦略担当相の古川元久(46)が、6人の男を東京・溜池の高級ホテル内の中華レストランに招集した。
 その6人とは、
●伊原智人(44)……経済産業省の元改革派官僚。原発を推進する経産省内で核燃サイクルに異を唱え、省を去った人物。
●下村健一(52)……元TBSのニュースキャスター。チェルノブイリ原発事故以降、一貫して反原発の立場。
●高橋洋(43)……富士通総研主任研究員。専門は電力・エネルギー政策。
●河野龍太郎(48)……エコノミスト。(今年4月、参議院が「河野ではデフレ脱却はできない」と、審議委員就任を拒否した)
●松村敏弘(47)……東京大教授(産業組織、公共経済学)。資源エネルギー庁審議会総合部会で、「2030年の原発比率 B案(0%)、C案(20%)、D案(25%)、E案(35%)のうち、「40年で廃炉」の原則を貫くならD案、E案はありえないと看破した。
●小田正規(44)……UFJ総合研究所新戦略部通商政策ユニット・主任研究員。政府国家戦略室所属。

記事によれば、全員、原発や核燃サイクルに異を唱えたり、少なくとも懐疑的な人物だという。
 古川は関西電力大飯原発(福井県)3、4号機の再稼働問題の際は、再稼働を進める側にいたが、//その後、全国の意見聴取会などを通じて原発ゼロへの国民世論の高まりを感じ、一週間前には福島第一原発と周辺の惨状を目の当たりにし、原発ゼロを目指すと決めた//のだそうだ。

古川がメンバーに配ったA4の紙には、

 ・原発ゼロ
 ・四十年廃炉の徹底
 ・原発の新増設禁止
 ・核燃料サイクルの中止
 ・高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃止
 ・原発を国の管理下に置く

……と箇条書きで書かれていたという。
古川は6人に向かって「これを盛り込んだ新しいエネルギー戦略の原案をみなさんで書いてほしい」と言った。

メンバー6人と古川、秘書官の8人はホテル内の会議室に移った。
午後9時15分に経済産業相の枝野幸男(48)、環境相の細野豪志(41)、仙谷由人(66)が合流。
そこで、配られた紙に目を通した仙谷は、
「これは野党の国民運動じゃない。政治をやっているんだ」
と、机を激しく叩いて一喝。一同は一瞬静まり返った。


細野も「これが漏れると大変なことになる。紙は回収すべき」と進言した。


その後もいろいろあり、9月上旬、ようやく新戦略の原案が形になったが、さまざまな横やりで姿を変えていった結果、

「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」 「原発の運転期間を40年に制限し、新増設を禁じる」

としながら、一方で、

「安全が確認された原発は重要電源として再稼働させる」
「使用済み核燃料を再生し、原発で再利用する核燃サイクル事業は維持」

というまったく矛盾した、ぐちゃぐちゃの内容になってしまった。

……という記事。

東京新聞は本当によく頑張っている。
こういう情報こそ、選挙の前に必要な情報なのだ。
組織の中でしかやれない仕事、立場というのがある以上、組織の中の権力者の能力や精神構造が大きな意味を持つ。
仕事ができない人物を議員として選出したくないのは当然だが、明らかにこの国を危険な方向に持っていこうとしている人物に権力を与えてはいけない。これがまず最優先の判断基準になることは明らかだ。

「第3極」キャンペーンに瞞されるな!(選挙前シリーズその3)2012/11/26 12:21

各政党の政策一覧(私設原子力情報室作成の表をもとにアレンジ)

■維新の会は「第3極」ではない!■

今度の衆院選挙をめぐる報道で、マスメディアは連日「第3極」という言葉を使っている。
この言葉の元々の意味は、「2つの大きな勢力に次ぐ3番目の勢力」という意味だ。政党でいえば、現在は民主、自民が二大政党だが、解散時の議席数で「第3極」、つまり3番目は「国民の生活が第一」(衆院議員47人。全議席数の約1割)であり、これは公明党(21人)の倍以上、日本維新の会(11人)の4倍以上にあたる(11月21日現在)。

しかし、マスメディアが「第3極」という言葉を使うときは、ほとんどが日本維新の会に注目してのことであり、実際、日本維新の会関連の報道量は飛び抜けて多い。

日本維新の会は大阪市長・橋下徹を代表にしていたが、石原慎太郎が立ち上げた「太陽の党」を迎え入れ、代表を石原慎太郎に譲り、橋下は「総大将がしっかりやってくれますから」と、代表代行という次席に一歩引いた。
石原慎太郎は海外メディアからはもっぱら「極右」の政治家として扱われており、実際、憲法は「改正」ではなく「破棄」して一から作り直せばいいとか、核武装しなければ国際的には認められないのだから、日本も核武装しなければならないといった論を堂々と展開してきた。
日本維新の会は、憲法を廃棄し、自衛隊を軍隊にして核武装するという主張をしている党首をいただく政党となったわけだ。

日本維新の会代表・石原慎太郎は、原子力について、

「人間だけが持つ英知の所産である原子力の活用を一度の事故で否定するのは、一見理念的なことに見えるが実はひ弱なセンチメントに駆られた野蛮な行為でしかありはしない」
「豊かな生活を支えるエネルギー量に関する確たる計量も代案もなしに、人知の所産を頭から否定してかかる姿勢は社会全体にとって危険なものでしかない」
(産経新聞掲載『原発に関するセンチメントの愚』より)


と語っており、この持論は今も変えていない。
その石原を党代表として迎えたことで、日本維新の会の政策から「原発ゼロをめざす」という条項は消えて、「ルールを厳格化する」というあたりまえすぎる文言に変わった。
ルールに合致しているとみなせば再稼働も新設も認めるということだろう。
橋下は当初から、原発の海外輸出はやっていくという、恐ろしく自己中心で無責任な政策を掲げていた。(ちなみに日本では国内で販売が禁止されたハードタイプの合成洗剤=環境負荷が高い=を、アジア諸国には輸出し続けて外貨獲得の足しにしてきたというような前例を持っており、こうした政策は今に始まったことではない。世界的にも、非戦・中立を国是としている国が武器輸出大国であるというような例はいくらでもある)。

■自公民は論外■

今度の選挙では、どこに入れていいのか分からないと嘆く人が多いが、政策を比べればおのずと「よりマシな候補者」「絶対に入れてはいけない政党」は見えてくる。
以下は、私設原子力情報室が作成した一覧表に少し手を加えて比較しやすくしたものだ。


↑クリックで拡大

上側に分類した政党に投票することは、原発を今後もだらだらと動かし続け、処理不可能な放射性廃物を日本列島に増やし続けていくという選択を意味する。
「脱原発」などという曖昧なスローガンではダメだ。
●核燃サイクル事業計画の即時中止・撤廃
という一点だけでもいい。これを明言できない政党に投票することは、今までの過ちをまた繰り返すということであり、「フクシマ」に何も学ばず、天につばを吐いてまた愚行を続けていくということなのだ。あるいは、石原や安倍のように、どうしても核武装したいがために原子炉の保有・自前再処理施設の保有を続けるという意味なのだ。

『裸のフクシマ』でも紹介したが、「地下式原子力発電所政策推進議員連盟」(地下原発議連)の面々をもう一度よく思い出してほしい。原発は地下に作れば安全だ、などと真顔で主張してきた狂人集団である。

 会長:平沼赳夫(日本維新の会 議員団代表 岡山3区)
 顧問:安倍晋三(自民党総裁 山口4区)、谷垣禎一(自民党前総裁 京都5区)、森喜朗(元首相、自民党 石川2区)、山本有二(自民党 高知3区)、鳩山由紀夫(民主党元代表=引退表明)、渡部恒三(民主党最高顧問=引退)、羽田孜(元首相、民主党最高顧問 長野3区)、石井一(民主党 参院比例区)、亀井静香(元国民新党代表、減税日本・反TPP・脱原発を実現する党幹事長 広島6区)
 事務局長:山本拓(自民党副幹事長 福井2区)

日本維新の会、自民党、民主党のトップが軒並み顔を揃えている。
こういう連中に日本の将来を託せるというのだろうか?

これは経済政策がどうのこうの以前の問題で、景気が回復するようになんとかしてくれなどという淡い期待を狂人たちに託すようなみっともない投票行動をとってはならない。

最後に、広瀬隆氏らが呼びかけている「選挙の戦い方」提案内容も併せて紹介しておきたい。⇒こちら

「いい人」たちが国を滅ぼす (選挙前シリーズその4)2012/11/27 14:20

今もこれだけの下請けが存在している

■「人夫出し」ビジネスの実態■


↑長野から原発作業員として1F(いちえふ)入りした40代男性のリポートがここにある。
記事としては週刊プレイボーイがしっかりまとめている⇒こちら

事故から1年8か月経ってもまだ「7次受け」などという人夫出し(にんぷだし)ビジネスが残っていて、被曝線量の管理などもデタラメが続いていることが如実に分かる。

動画の後半に登場する「6次受け」の担当者が説明するシーン。

「あれは半減されますから。線量は。ず~っと溜まっていくわけじゃなくて、8日経てば、その分、あびた分は半減になりますから。例えば今日1ミリになりました。次の日に1ミリで、そうすっと2じゃないですか。でも前の日にあびた分の1(ミリシーベルト)の8で割った分は下がりますから。全部蓄積じゃないですからね。全部蓄積だったら、俺なんか半年も入ってらんないですから。今日1あびたとしますよね。でも、8日間何もしなかったらゼロですから。いや、間違いないです(笑)」

二重三重に間違ったことを平気で作業員に教えているこの「担当者」の福島弁がものすごく懐かしかった。
この人が言っている「8日で半減」というのはヨウ素131のことだろうが、そもそも原発が停まって1年8か月も経っているのだから、1Fの構内にもヨウ素131はもう残っていない。
内部被曝と外部被曝の違いどころか、実際に人体があびてしまった被曝量と放射性物質の半減期にはなんの関係もないということも理解できていない。
この口調からして、彼は嘘を言っているつもりはなく、本当にそう思いこんでいるのだろう。

まさにこののほほんとした「いい人」口調の福島弁が行き交う村に7年住んでいた。
だから、この問題の根深さはよく分かっているつもりだ。

「原発やめろ」の前にまず地元の構造を解体する必要がある

週プレの記事の中で、リポートした林哲哉氏とインタビュアー役の桐島瞬氏のこんなやりとりが載っている。(そのまま転載)

  作業員を東電が直接雇えばいいんです。もしくは国策なんだから作業員を公務員化する。それが無理なら、せめて元請けがちゃんと雇用して面倒を見てあげる。横並びになれば、多少は報われると思います。

桐島 そうすれば給料のピンハネもされないし、労働条件は守られますね。原発自体はどう考えていますか。

  半減期まで何万年もかかるような核のゴミを処理できないのなら、原発を使うべきではない。それから、田舎で人のいない所に造って、そこにお金で縛りつけて、原発がなければ町が立ち行かなくなる状況に追い込むシステムが一番気に入らない。事故が起きたら作業員の犠牲は必ず必要になるということもはっきり実感しました。そんなシステムはやっぱり間違っていると思います。


……まさにその通りなのだ。
雇用形態を一元化すればいいだけのこと。
しかし、それをできなくさせているのは「地元」勢力であるということもぜひ知ってほしい。
地元の有力者が人夫出しビジネスを仕切っていて、地元議員、土建屋利権集団を通じてガッチリと一大勢力を築き上げている。それを無視して生きていくことはできないと、地元に暮らしている人たちはみんな考える。
実際できないのだ。
颱風で道が崩れた、橋が流された、年寄りしかいない家で助けを求めている。そうした状況で助けてくれるのも彼らなのだから。
こうしたコミュニティの中で、地元住民は毎日大根をあげたりもらったり、一緒に楽しく酒を飲み、選挙のときには雨が降ろうが槍が降ろうが「いちばんお世話になっている候補者」に一票を入れるために投票所へ出向く。
この構造的な問題を解決できない限り、30km圏が立ち直るのは無理なのだ。

地元の人たちではこれは解決できない。金を受け取る立場の人間が、自ら金づるを切ることはできない。政治家が選挙制度を改正できない、自分たちの利権を手放せないのと同じこと。
だから、この「原発立地の利権構造」「シャブ漬け構造」は外からの力で解体しないとなくならない。当然、彼らにとって上の力(電力会社と「国」)で解決するしかないのだが、それをまったくやっていないどころか、3.11以前よりも悪化させているのが今の政治。

電気を送ってもらっている都市の人間の多くは「原発なんかやめろ」と言う。でも、電気を送っている原発立地自治体はみな「なくなったら俺たちが困る」と言って、推進派の首長、議員を当選させ続ける。
これではいつまで経っても問題は解決しない。
利権構造を解体させ、税金投入をやめれば、純粋なビジネスモデルとしての原発をやろうなどという電力会社は世界のどこにも現れるわけがないのだ。
いい加減、「必要悪」論のようなインチキ論法に瞞されるのはやめなければいけない。原発必要悪論を唱える人と、この動画に出てくる6次受け担当者は、知的レベルがそう変わらないからデタラメを信じているのか? そうでないのならば、すべて分かった上で利権のために嘘をついている。その両方という人もいる(困ったことに政治家に多い)。

この問題に手をつけない限りは、原発のことだけではなく、日本という国がこのままどんどん衰退していくことは避けられない。持続可能な経済力というのはまともな知力でしかコントロールできないのだから。
今までのように、誰かが金を持ってきてくれる、落としてくれるという発想を「経済優先」などというスローガンとはき違えてはいけない。
次の選挙で一票を投じるとき、このことをしっかり頭に入れておきたい。

↑竹村 英明氏作成 投票所の壁に貼っておきたい!(クリックで拡大)