スポーツの力・魅力とは?2021/05/02 11:54

「報道ステーション」(テレビ朝日)より
『報道ステーション』で松岡修造が新谷仁美にインタビューしていた。

新谷仁美がどれだけの逸材で、魅力的な選手かは今さら説明するまでもないが、彼女を陸上界に復帰させた立役者である横田真人コーチがさらにすごい。
「自分しか信じられなかった」「自分以外はすべて敵だと思っていた」と言う新谷を見て、妻は「横田コーチは人に懐かない野良犬を拾ってしまったようなもので大変だったわね」と笑っていたが、まさに彼の「いきものがかり」としての才能と努力は大したものだ。(SNS上では「猛獣使い」と呼ばれているが、ここではソフトに「いきものがかり」にしておく)

横田は800mの選手として日本選手権4連覇、2011年の世界陸上(韓国・大邱)、2012年のロンドン五輪の日本代表にもなっているエリートランナーだ。オリンピックの陸上800mに日本人選手が出場するのは44年ぶりだった。
彼は現在、TWOLAPS Track Clubの代表として、コーチだけでなく、経営者としても活躍している。
TWOLAPSでは新谷の他に、楠 康成、卜部 蘭、館澤 亨次、田母神 一喜……といった選手たちが横田の指導を受けている。
しかし、彼らはTWOLAPSという企業の所属選手ではない。日本陸連公認レースなどに出るときの所属は別々なのだ。新谷と卜部は積水化学で、実際、実業団女子駅伝では積水化学チームの選手として走っている。楠と田母神はNPO法人阿見アスリートクラブの所属。つまり、TWOLAPSは所属・種目・男女の垣根を超えて「横田コーチと一緒に自分を高めていきたい」と決めた若者たちの集団なのだ。
私はそんな横田とTWOLAPSのファンになってしまったので、最近は陸上競技会でも、田中希実や三浦龍司の華々しい活躍に期待しながらも、彼らになかなか勝てない蘭ちゃんや楠を自然と応援してしまっている。

そのTWOLAPSが、すごいことをぶち上げた。
TWOLAPSは国内最高賞金の中距離サーキットを開催することにしました
中高生も市民ランナーもエリートランナーも参加できる陸上中距離レースの大会。800mや1500mといったオリンピック種目だけでなく、中距離の醍醐味である、駆け引き、ラストスパートがより際立つ種目として、最終ステージは1000mという聞き慣れないレースを予定。男女のシリーズチャンピオン(エリートの部)にそれぞれ賞金100万円を贈呈……素晴らしい企画だ。

こういうのを待っていたのよ!
こういう発想ができる人材、考えるだけでなく実行に移してしまう胆力や計算力、渉外能力のある人材。横田真人はまさにそうした能力を兼ね備えた人物だった。
これはもう、応援するしかないではないか。

もはや「東京五輪禍」

こうした取り組みこそ「スポーツの力」「スポーツが起こす感動」につながるものだと思うが、不幸なことに、東京五輪2020は巨大スポーツイベントが陥った負の面ばかり浮き彫りにしてきた。
それどころか、五輪のおかげで五輪以外の競技会が行えなくなるという災厄になりつつある。
日本が今までCOVID-19による死者が訪米諸国などに比べて少なかったのは、人種特有の要因(恐らくはHLA型など)、「ファクターX」と呼ばれる要因による幸運だろう。しかし、ここに来てインドやブラジルで多く見つかっている変異株が、日本人をはじめとする東アジアの人たちにとっても、かなり致命的な影響を与えるのではないかと懸念されている。
3月は空港検疫(抗原検査)で判明した陽性者157人のうち、インドでの行動歴がある入国者は8人だったが、4月は24日までに、242人中56人。特に先週の増加ペースは激しい。
「無症状の陽性者はウイルス量が少なく、抗原検査で陰性となる『偽陰性』が少なくない。入国者はほとんどが無症状なので、偽陰性の確率は高い方でしょう。水際対策の最後の要である空港検疫で抗原検査を採用するのは“自爆”を招くようなもの。抗原検査をすり抜けたインド由来の二重変異株感染者が入国し、既に感染を広めていてもおかしくありません」(中原英臣/医学博士・感染症学) (日刊ゲンダイ 2021/4/26

これに対して日本政府がインドやペルーなど6カ国・地域を新型コロナウイルスの変異株流行国・地域に指定して運用開始したのは5月1日から。あまりにも遅すぎる。すでに国内には相当数の感染者が存在しているだろう。
こんな調子の国が、世界中から人を集めるオリンピックを密集都市の東京で開催すればどんなことになるか……。
すでに、選手は2週間の待機を免除することで入国初日から練習できるようにするということも決めている。(外国人選手ら「2週間待機」免除へ 五輪めぐり政府方針 朝日新聞 2021/04/26
私は、いくらなんでも聖火リレーが開始される前に中止が発表になるだろうと思っていたが、まさかの強行だった。
しかもその異様さ、異常さは想像を超えたものだった。
東京五輪の聖火リレーは13日、新型コロナウイルスの感染拡大で公道での走行が中止された大阪府で、代替措置となるリレーが万博記念公園(大阪府吹田市)で始まった。公園内を閉めきって一般の観客を入れない異例の形式で行われ、太陽の塔や国立民族学博物館周辺など約3キロを15区間に分けた周回コースをランナーが走った。公道でのリレー中止は全国で初めて。

園内の出入り口4か所はすべて閉鎖され、太陽の塔や国立民族学博物館などの施設も臨時休館に。公園の出入り口には「関係者以外の入園はできません」と記した看板が設置された。
読売新聞 2021/04/13

公園を立ち入り禁止にして有名人が不自然な笑顔をカメラに向ける……この既視感はすぐに分かった。「桜を見る会」だ。
この異常さは、もはや「スポーツイベント」ですらない。

五輪を強行することで感染が広がり、ますますスポーツイベントの開催が危うくなる。どこが「アスリートファースト」だろうか。
「スポーツの発展のためにもオリンピックは1回やめたほうがいい」という主張を先月書いた(⇒こちら)。
  • IOCという興行の胴元と縁を切り、「オリンピック」という商標を使うことを一旦やめる。
  • 代わりに、スポーツ振興への「資金援助」の部分を担える、透明性の高い、公平公正なシステムを各競技団体の連携・連帯を通して新たに構築していくよう呼びかける。
  • そのために、現在の競技別世界選手権(世界陸上など)の運営組織、競技連盟に、「世界大会の価値を広げる」ことを提言し、援助する気運を高める。

これを日本が国を挙げてやれればいいのだが、ここまでの醜態を見ていれば、到底無理なことは分かる。

「発言」し始めたアスリートたち

そんな状況の中で、TWOLAPSという小さなグループが、本来のスポーツの力、スポーツの魅力を育てるために、できる限りのことをやると宣言し、動き出したのである。
これはとても困難なだけではなく、勇気がいる。
理想をぶち上げるだけでは実行できない。本当にスポーツを応援したいという企業や団体を味方につけて、金集めや組織編成をしていかなければならないが、慎重にやらないと政治家や利権関係者らから睨まれ、つぶされる可能性がある。
今私がこれを書いていることも、TWOLAPSにとっては迷惑なことになりかねないと危惧している。

しかし、一人一人が勇気をもって行動で示さなければ状況は悪化する一方だ。
「オリンピアン」という輝かしい称号を持つ超人的な競技者たちが、その後、およそスポーツとは似つかわしくないものに取り込まれ、惨めな姿を晒していく例を、我々はたくさん見てきた。それこそ、スポーツの持つ魅力を汚すものだろう。

新谷仁美は東京五輪2020について訊かれると、
「国民の理解が得られなければ、開催する意味はない」「アスリートだけがやりたい、国民のみなさんはやりたくないと言っていたら開催する意味が全くなくなってしまう」「命というものは正直、オリンピックよりも大事なものだと思う」だから「アスリートとしては賛成だけど、一国民としては反対という気持ちです」などとはっきりした言葉を発している。こういうところは、大坂なおみにも似ていて、とても好感が持てる。

新谷選手を見守る横田コーチも、「応援されることなく開催されるオリンピックはもはやオリンピックではない」と発言している。
華やかなスポーツだけでなく、日常にあるスポーツをもっと大事にしていくべきではないだろうか。「アスリートファースト」という言葉が都合よく使われ、「スポーツ」の名の下に国民の日常が奪われることを、アスリートは、スポーツは望んでいるのだろうか。それが置き去りにされてまで開催するべき理由がオリンピックにあるのであれば、それをきちんと説明して欲しい。コロナ禍でみんなが大変なこの時期にオリンピックを開催するべき理由を論理立てて説明して欲しい。僕らが求めているのは、失言ではなく論理的な説明だ。コロナに打ち勝った証にオリンピックがなぜ必要なのか。いまの日本に、いまの世界になぜオリンピックが必要なのか。(「スポーツをみんなのもとに返そう」 TWOLAPSのブログより

未来につながらないスポーツイベントなどいらない

TWOLAPSが中距離種目の競技会サーキットをやるというニュースに接したとき、私は近所の「ランニング少年」(中学2年生)のことをすぐに思い浮かべた。
2か月前に久々にすれ違ったとき「今は400mをやっています。栃木県の指定強化選手に選ばれました」と嬉しそうに言っていた。
しばらく見ないうちに顔中にニキビを作っていた彼の笑顔が思い浮かんだ。
彼は小柄で、兄たちもみんな身長は高くない。自分でもそのことを理解しているのか、将来は「学校の陸上部の監督になって生徒を指導したい」という目標を持っている。中学生で「将来は陸上を教えたい」という夢を持つというのもすごいと感心したのだが、彼のような子供たちがスポーツに対して純粋な憧れを持ち続けられるような社会であってほしい。
オリンピックがそうした夢をぶちこわすような存在になってしまうほど悲しいことはない。
今回の悲惨でみっともない「東京五輪禍」で歪みに歪んでしまった日本のスポーツ界、世界のスポーツ興行状況を底辺から修正していく力を、どんなに小さなことからでもいいから、積み上げていくことが求められている。
その力をTWOLAPSに見いだせたような気がして、本当に嬉しいのだ。
とりあえずは中距離レースのサーキットイベントという試みを応援したい。
とっても困難なことだろうが、負けるな。フレ~! フレ~!
だいぶ昔に作った応援歌。今回はTWOLAPSに向けて送りたい



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変異株蔓延は避けられない? 今、いちばん重要なことは何か2021/05/09 01:27

何をもたもたしているのだ! 画像は「報道1930」BS-TBSより

五輪代表選手に「本当に走っていいのか」と悩ませる罪

5月5日、「札幌チャレンジハーフマラソン」というのがあった。
東京五輪のマラソンレースをテストする意味を兼ねているという。
で、この大会、コロナの感染が拡大中の札幌市内で開かれたため、予定されていた10kmの市民マラソンは中止。沿道の応援は自粛を呼びかけるというレベルを超えて、急遽300人増強して770人に増やした「自粛呼びかけスタッフ」が「感染症予防のため観戦自粛をお願いします」というカードを首からぶら下げて沿道に立っていた。
その合間には「五輪開催反対」のプラカードを掲げた人もいたという。
そんな状況で走る選手のストレスも大変なものだっただろう。
五輪代表に決まっている服部勇馬選手は「この状況下で本当に走っていいのかと思うこともあったり、不安な状況で練習しているときもある」と打ち明けていたという。(服部勇馬「本当に走って良いのか」 コロナ禍の東京五輪強行開催に葛藤 デイリースポーツ

オリンピックと関係なくこの大会が開催されていれば、選手も、我々観戦を楽しむ側も、もっとずっと幸せな状態でいられたのではないか。
沿道での観戦で感染が広がるというが、観戦自粛のプラカードを首から下げて立っていた770人のスタッフのほうが、一か所に集まって指示を受けたり観客に声かけをしていたわけで、それのほうが感染リスクがありそうな気もするが……一体何をやっているんだか……。
なぜこうした「自粛警察」っぽい方向にばかり向かってしまうのだろう。

肝心な対策はやってない

そんなことよりはるかに重要なのは、海外からのウイルス(特に変異株)の侵入を防ぐことと、治療を受けられずに重症化してしまう感染者を減らすための緊急措置であることは明々白々だ。
全例入院治療がいいに決まっている。でもかなわないなら、医師にコロナ特例での免責を行い、対面なしで在宅酸素、ステロイド、抗菌薬、解熱薬、点滴をコンフォートセットにして処方できるようにしてほしい。まだ、私自身は実施例が少ないが、これ(コンフォートセット)で救える命もかなりある。滞在時間も30分以内にとどめられる。……この事態について全国民の理解が必要である。
(全員入院がかなわぬ現実と向き合う コロナ患者を看て回る訪問看護師の訴え 在宅酸素、ステロイド、抗菌薬、解熱薬、点滴のコンフォートセットを 日経メディカル 2021/04/30

3月は空港検疫(抗原検査)で判明した陽性者157人のうち、インドでの行動歴がある入国者は8人だったが、4月は24日までに、242人中56人。特に先週の増加ペースは激しい。(空港検疫コロナ陽性で「行動歴インド」入国者急増!二重変異株が抗原検査すり抜け日本で蔓延か 日刊ゲンダイDigital 2021/04/26
画像はBS TBS「報道1930」より


すでに蔓延してしまったイギリス型変異株は感染力も重症化率も高いし、若年層にも感染しやすいという。
それにも増して恐れるべきなのが「アジア人特有の免疫能力をかいくぐって感染し、ワクチンも効きにくいのではないか」と言われている、インドやブラジルから入ってくる変異株だが、政府はその怖さをまったく理解せず、ただただなんとか防止措置だのなんとか宣言だのを出す、出さない、延長する、しないなどと繰り返している。
そういうことじゃない。
「緊急」なのは、なんとか宣言を出すことではなく(それも緊急には出さないで毎度グダグダだが)、医療体制を変えて非常対応をすることと、外から危ない変異株を入れないように徹底的な水際検疫体制を敷くことだ。

まっ先にやらなければいけないのは医療現場への緊急対応。
上の訪問看護師の報告で分かるように、すでに関西は相当まずいことになっている。
自宅で苦しんでいる人が救急車を呼んでも受け入れ先が見つからない。1時間かけて駆けつけた訪問看護師は酸素ボンベや治療薬を持っていない。そのへんを今すぐ超法規的に対応させないと、助かる人が死んでしまうケースがどんどん増えていく。それをなんとかしようと思うのが先でしょ。
この状況のままインドの二重変異株とか、アジア人にとってかなりヤバそうなやつが一気に感染爆発したらどういうことになるのか?

ワクチンワクチンと煽り立てる前に

ついでにいえば、ワクチンは無条件に高齢者優先にするのではなく、まっ先に医療従事者、介護施設関係者に打つのが筋だろう。
高齢者施設にいる老人たちは建物の外に出て行かない。感染するとすればそこで働いている人たちからウイルスをもらうのだから、施設スタッフがワクチン接種してない段階で入所者に打つというほど馬鹿げた話はない。
注射を打つ医師や看護師らがまだワクチン接種していないというケースも多いというのだから、馬鹿げている。(高齢者接種の医師「毎日ヒヤヒヤ」 医療者への接種、わずか2割 毎日新聞 2021/05/08

その次に優先するべきは、人との接触が避けられないエッセンシャルワーカーと呼ばれる人たち。
飲食店に時短営業やら酒類提供禁止をいうなら、まずその人たちにワクチンを打つべきだろう。
県境を越えて移動するなと言っても、巣ごもり生活やあらゆる経済活動を支えている運送業は今まで以上に走り回らなければならない。そういう人たちを優先すべきだ。
地域でいえば、人口密集地を優先し、過疎地は後回しでよい。

もちろん、将来にわたって安全性が確認されていない以上、打つか打たないかは本人が決定すべきであり、打ちたくない人に強制的に打つとか、心理的圧力をかけるというのは許されない。実際、ワクチン接種後に急死した医療従事者は複数人いるわけで、これをどうとらえるかはあくまでも個人の考え方次第だ。情報をすべて開示した上で、決定権は各人が握る、ということにするのは言うまでもない。

私は高齢者なので、すでに4月のうちにワクチン接種予約案内の書類が届いている。しかし、私のような、田舎暮らしで、せいぜい週1回程度の買い物以外では外出はしない、一日中家にいて人と接しない人間は、最も感染リスクが低いのだから、いちばん後回しでよい。
結局、政府が「医療従事者は○月から、高齢者への接種はすでに始まっていて○月までに完了」……といったうわべだけのスケジュールをPRしたいがための目くらまし広報なのだ。
そのワクチン接種も、受け付け方法がアナログで、まったくはかどらないというし、こんなバカな状況でワクチンに期待するのも無理がある。
それなのにメディアは連日、自粛がどうの、ワクチンがどうの、なんとか宣言の解除がどうの……と、大切な問題から目を反らせるような報道ばかりしている。
「欲しがりません勝つまでは」の戦時中と同じじゃないか。
もう、バカすぎて、日常生活がまともな精神状態で営めないよ。




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