こんな「除染」はやってはいけない2011/12/04 11:34

「除染」によって住民の内部被曝危険性が増している

郡山市の市民が、「放射性物質の除染作業による被曝から守るため市民に除染作業をさせない事を求める署名」というのを始めた。⇒こちら

背景には、「除染」を巡って戦時中の隣組的な社会が形成され、子供を含めた多くの市民が「除染活動に参加させられることによる内部被曝の危険性増大」に直面しているという実態がある。
このブログこのブログにも記されているように、除染が大規模にかつ効率的に「儲からない」都市部では、「除染」は市民に丸投げされる傾向があり、それに参加しないと「自己中心的な人間だ」と、隣人たちから糾弾されるという図式ができあがってしまっているのだ。

//お父さんや家族の都合が悪ければ、お子さんを連れて除染に行くのだそうです。行かなければ、協力的でないと後ろ指をさされます。なのでお母さんが行くのだそうです。//

//地域のために皆がんばることなので、手伝わない人は非国民扱いで村八分だそうです。
若いお母さんなどは、乳幼児の我が子から目が離せないのですが、でも参加しなくてはならず、幼い子どもを連れて除染作業に参加するそうです。//


この「みんなと一緒に足並みを揃えない者は非国民」的な空気が形成されてしまうことがいちばんの問題。
福島県内では、3.11以降、あちこちでこうした事態が起きている。
被爆を避けて県外に移住すると「逃げ出すのか」と罵られたり、除染をする、いや、下手に引っかき回すとかえって被曝するからしない、という言い争いもあちこちで起こっている。

何度も書いているように、いちばん怖いのは内部被曝。
「除染」作業の現場というのは、土やアスファルト、コンクリートにこびりついている放射性物質を再び空中や水中に解き放つということをしているわけで、それを吸い込んだり呑み込んだりする危険が一気に増すのは自明のこと。
しかし、「除染」は今やこの国で最大の国策事業、莫大な税金が投入される公共事業になってきており、自治体(地方行政)はもちろんのこと、失業した労働者、建設会社、土建会社、清掃会社、森林組合、商工会……ありとあらゆるところから「雇用が回復できる魅力的な事業」として見られている。
除染作業従事者養成講座的なものに、土建会社や清掃会社、はてはリサイクル業者などが殺到しているが、その講座を仕切っているのが、今までさんざん原発建設を進めてきた原子力ムラの連中だったりするのだからやりきれない。

「除染」現場に駆りだされた母親たちは、重機を使えるわけでもなく、土の削り取りや運搬、草むしり、側溝掃除などを手作業でやらされる。付着して、ある程度安定していた放射性物質は再び拡散するから、それを吸い込んだり呑み込んだりする可能性が増え、除染の現場では普段より余計に被曝する。
水をぶちまけて流せば、水が流れていく場所が新たに汚染を増すだけのこと。
剥ぎ取って集められた土は、公園や空き地の隅に穴を掘ってひっそり埋められる。表土を剥ぎ取った場所の空間線量は下がるが、そこにあった放射性物質はどこかに移動しただけ。
もはや、どこにどれだけの汚染物質が埋められたのか、あるいは流されたのか、分からない状態。

これが都市部の「除染」の実態だ。

では、莫大な税金が投入され、除染実験が始まった農村や森林地帯はどうか。
人が入らない森林を伐採するなどということをしたら、水源が涸れ、かつ、余計な地下水汚染を引き起こしかねない。
ところが、そういうことを理解していないのは素人だけでなく「専門家」と呼ばれる人たちも同様で、「森林を伐採しないと、放射性物質が里に流れ出して汚染を広げる」などと言い、それを恐れた住民が、森林を全部伐採しろと叫んでいるような状況だ。
こうして除染という名の森林伐採が押し進められている。こちらのほうが、人の目につかない場所で大規模に行えるために、関係業者は大きく、効率的に儲けやすい。

川内村の我が家周辺は、今、大量の落ち葉で埋もれているが、線量は少しずつだが確実に減ってきている。もちろん除染などしていない。
雑木林や唐松林など、落葉樹の森林は、3月には葉っぱをつけていなかったので、今の落ち葉にはほとんど放射性物質が付着していないのだ。
一部の「専門家」は、樹木が土中の放射性物質を吸い上げて葉に蓄積させる云々と言っているが、どうやらその話もいい加減で、やはり降り積もった放射性物質のほとんどは、土の表面から5cmくらいの層に溜まっているのだろう。
そこに新しい落ち葉が落ちて、落ち葉の層を形成していくので、多少は放射線がシールされているのかも しれない。
もちろん、ガンマ線はそんなものもろともせず突き抜けるが、毎年これを繰り返していけば、土中の放射性物質は少しずつ地下に潜り込んでいくのだろう。だが、数メートル下には到達しないだろうから、放っておいても地下水脈は無事なはずだ。そこに深い穴を掘って汚染物質を埋めたりしない限りは……。

程度の薄い汚染地帯は、下手に引っかき回さず、何もしないほうがいい。
ベラルーシまで行って、チェルノブイリ事故後の汚染地帯がどうなっているかを実際に見てきた「視察団」の人たちも「森は除染できない。しない」と明確な答えを得てきたはずだ。

それでも無理矢理進めていけば、放射性物質入りの土埃や粉塵を吸い込んで、作業員は確実に内部被曝する。
大変な健康危機と税金と引き替えに森林伐採、表土削り取りが進むと、森が死滅し、農地は使いものにならなくなる。保水力を失った山は土砂崩れ、水害発生源となる。養分の多い表土を剥ぎ取られた農地は荒れ果てる。
もちろん、山の保水能力の低減で渇水も起きる。
放射能汚染に加えて、取り返しのつかない環境破壊の連鎖が、今、人間の手で進められようとしている。

こんなとんでもない国に、我々は住み続けなければならない。自分の命を自分で守りながら。
これは大変なことだ。
みんな、自分の命や暮らしを守ることで精一杯だが、とりあえずは、郡山市など、都市部で起きている「除染隣組」には声を上げないと。
このままでは、人間の余計な所業によって、汚染地帯に住まざるをえない住民の内部被曝の被害がどんどん増えていく。

汚染地帯に暮らす母親たちには、勇気を持って「私は除染作業には加わりません」と、拒否姿勢を貫いてほしい。あなただけでなく、子供たちを守るために。

白河や会津が怒るのは当然 バカの極致「文科省原子力損害賠償紛争審査会」2011/12/14 11:20

賠償金支払い対象の23市町村と汚染度合は一致していない

8万円/40万円の追加賠償金の根拠は何か?

福島第一原発爆発・汚染「事件」をめぐって国や県がやっていることはとことん滅茶苦茶で、『裸のフクシマ』に書いた通りだが、今もまだまだでたらめが続いている。
最近では、12月6日に文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会(能見善久会長)が求めた「警戒区域、計画的避難区域などを除く福島県の23市町村を対象に全住民に1人あたり8万円、妊婦と18歳以下の子どもに1人あたり40万円」という賠償金問題。
この賠償金は「自主避難への賠償」ということらしい。30km圏内や「緊急時避難準備区域」、「計画的避難区域」などは命令を下して避難させたのだから、それに対する補償をするが、それ以外の地域では逃げようが留まろうが知ったことではない、というのが今までの国や東電の賠償姿勢だった。
これではいけないので、自主的に避難した人たちにも賠償しましょう、ということらしい。
しかしこの賠償金は、決められた23市町村では、逃げた逃げないに関わらず全住民に一律で支払われる。であれば、支払われる根拠は、避難しなければならないほどの放射能汚染への恐怖心、不安、ストレス、現実の健康被害、そして、経済的打撃(農産物など一次産業への被害はもちろん、放射能汚染によって様々な職場、職業で従来通りの経済活動継続が不可能になったこと)などに対しての損害賠償と考えるのが適切だろう。
であれば、今回の23市町村の選定はまったく実情に合っていない。

該当する23市町村とは、
福島市、二本松市、本宮市、桑折町、国見町、大玉村、郡山市、須賀川市、鏡石町、天栄村、石川町、玉川村、平田村、浅川町、古殿町、三春町、小野町、相馬市、新地町の19市町村と、いわき市、田村市、伊達市、川俣町の4市町(すでに補償金が支払い開始されている緊急時避難準備区域など以外)の合計23市町村だ。
福島県の土地勘がないかたがたにはピンとこないだろうから、文科省が発表している土壌汚染マップに重ね合わせて表示してみる。以下のピンク色の線の内側が該当地域だ。


一目瞭然で分かるが、白河市などは、かなり汚染されているにも関わらず外されていて、汚染の度合いが低い石川町や玉川村、平田村、浅川町、古殿町、小野町などは入っている。
汚染の度合とはまったく合致していないのだ。
白河市がいちばん分かりやすいが、白河市で「自主避難」した市民は、12月1日の時点で126世帯286人。数が少ないから外したとでも言うのだろうか。白河市の鈴木市長は「市内でも放射線量が高い地域がある。子どもの健康被害を心配する親も多いのに、自主避難者が少ないから賠償金が出ないというのはおかしい」と主張している。当然だ。
会津は概ね汚染の度合が低かったが、南会津町の南部などは結構やられていて、石川町、玉川村、平田村、小野町あたりよりひどい。
そもそも、「福島」というレッテルを貼られて農産物などが売れなかったり、浜側からの被災者を受け入れて苦労していることは会津も同じなのだ。
猪苗代町も外されたが、原発立地でさんざん電源交付金などの恩恵を受けてきた人たちを豪華リゾート施設に受け入れ、住民がボランティアで炊き出しをした挙げ句に、一部の「避難者」から「毎日同じものを食わせるな」「飯がまずい」などと文句を言われた猪苗代町の人たちは、今、どう思っているだろうか。
今まで我慢してきた怒りが爆発しているはずだ。
お上や、現場を知らない学者たちがこういうバカな施策を次々に出してくるたびに、福島はずたずたにされる。
子供が3人いる5人家族を例にとれば、賠償金は136万円(40万円×3+8万円×2=136万円)になる。136万円がもらえるもらえないの差は大きい。
もとより、被害の度合は人によって大きく違い、補償の不公平は避けられないのだから、補償するなら福島県内全域というようなくくりでやるしかないのは分かりきったことなのに、この無神経さ、間抜けぶりはなんなのだろう。
無論、放射能汚染被害を被っているのは福島県の住民だけではない。
栃木県、宮城県、群馬県、茨城県などでは、石川町や平田村などよりずっと汚染がひどい地域がある↓。


宮城県丸森町の保科郷雄町長も、「空間放射線量が丸森より低い福島県内の自治体が該当しているのに、福島でないというだけで、我慢しなければならないのは納得できない」と声を上げている(河北新報記事)

あったりまえの話だ。
もう、話題にするのも嫌になる。