明治神宮の杜から考える菅総理の「教養」問題2020/10/13 14:40

明治神宮内陣に置かれていた獅子・狛犬(「明治神宮御写真帖」より)
フェイスブックの「狛犬さがし隊」での書き込みがきっかけで「明治神宮の内陣にある狛犬」について調べてみた。
その内容は⇒こちらの日記に詳しく書いたが、ごく短くまとめると、
  • 大正9(1920)年に創建されたとき、内陣には彫刻家・米原雲海に依頼して彫らせた木彫狛犬が置かれた。
  • その狛犬は国の重文指定されている大宝(だいほう)神社(滋賀県)の木彫狛犬のコピーであり、同様のものは日光東照宮陽明門にもある。これは全国の護国神社などでよく見られる「岡崎古代型」狛犬の手本にもなった人気のある狛犬である。
  • その写真は明治神宮創建時に発行された「明治神宮御写真帖」(帝国軍人教育会編纂)に掲載されていて、写真キャプションには「内陣御装飾の獅子狛犬」とある。
  • 同書付属の解説には「神社用の装飾は、国民崇敬の中心率とならねばならぬから、故実に準拠することは、我が国体の上から見ても争われぬ事項に属する。」とある。
  • つまり、大宝神社の木彫狛犬は「国民崇敬の中心率となるべき故実」であると認定されていたらしい。
  • 明治神宮は昭和20(1945)年4月のアメリカ軍による空襲で1300発以上の焼夷弾を落とされてほとんどの建造物が焼け落ちている。おそらく当初の「内陣の狛犬」もそのとき消失しているはずで、現在も内陣に狛犬が置かれているとすれば、戦後の昭和30年代以降に作られたものであろう。
……といったことだ。

閑話休題。

で、これを調べている際、1300発以上の焼夷弾を受けて建造物がほぼすべて消失したにも関わらず、神宮の杜は燃えずに残り、今も立派な「ほぼ天然林」の様相を呈している理由について、改めて考えさせられた。

「杉林にしろ」と命じた大隈重信首相

Googleで「明治神宮 空襲 大隈重信」などで検索するといくつもの記事、資料が出てくる。
まずは明治神宮のサイトにこういう記述がある。
造営にあたり、本多静六、本郷高徳、上原敬二ら林学の専門家たちは、何を植えたら「永遠の杜」になるかを考え、将来的に椎・樫・楠などの照葉樹を主な構成木となるように植えることを決定したのです。
理由は大正時代、すでに東京では公害が進んでいて、都内の大木・老木が次々と枯れていったのでした。そこで百年先を見越して明治神宮には照葉樹でなければ育たないと結論づけたのでした。
ところが内閣総理大臣であった大隈重信首相は「神宮の森を薮にするのか、薮はよろしくない、杉林にするべきだ」として伊勢の神宮や日光東照宮の杉並木のような雄大で荘厳なものを望んでいました。
林苑関係者は断固として大隈重信の意見に反対し、谷間の水気が多いところでこそ杉は育つが、この代々木の地では不向き、杉が都会に適さないことを林学の見地から説明してようやく納得させたそうです。
明治神宮WEBサイト「杜・みどころ」より)


ナショナルジオグラフィックの特集記事「鎮守の杜に響く永遠の祈り 日本人が作った自然の森──明治神宮」にも、こんな記述がある。

1915(大正4)年4月、日比谷公園の設計などで知られる林学博士の本多静六、やはり日比谷公園の設計に携わった造園家の本郷高徳、日本の造園学の祖とされる上原敬二といったそうそうたる顔ぶれを集め、実行機関である「明治神宮造営局」が発足。森の造成計画が本格的に始まった。
(略)
古代の神社には社殿のような建物はなく、動物や植物を神霊としたり、森そのものを神社と考えていた。
 「神社の森は永遠に続くものでなければならない。それには自然林に近い状態をつくり上げることだ」――これが基本計画の骨子となった。
 計画の中心を担った本多、本郷、上原の3人が主木として選んだのは、カシ、シイ、クスノキなどの常緑広葉樹だった。もともとこの地方に存在していたのが常緑広葉樹であり、各種の広葉樹木の混合林を再現することができれば、人手を加えなくても天然更新する「永遠の森」をつくることができると考えたからだ。
 ところが、この構想に当時の内閣総理大臣・大隈重信が異を唱えた。
(略)
「明治神宮の森も、伊勢神宮や日光東照宮のような荘厳な杉林にすべきである。明治天皇を祀る社を雑木の(やぶ)にするつもりか――」

これに対して本多博士らは、「東京の杉と日光の杉について樹幹解析を行い、日光に比べていかに東京の杉の生育が悪いかを科学的に説明することで、ようやく大隈首相を納得させた」という。

このときに大隈首相の主張に従って杉を植えていたら、東京大空襲にも耐えられなかったし、今、あれだけ立派な森にはなっていなかった。

大隈重信といえば、かつて朝日新聞AICでの連載拙コラム『デジタルストレス王』や、拙著『日本のルールは間違いだらけ』(講談社現代新書)にも書いたが、日本の鉄道の多くが世界標準の1435mmよりずっと狭い1067mmという「狭軌(きょうき)」規格のままここまできてしまったことにも少なからず責任がある。
明治政府で鉄道導入を進めていたのは大隈重信らだったが、知識も経験もないため、技術も資材も全部イギリスに頼っていた。
イギリスで標準軌が定められたのは1846年(弘化3年=江戸時代!)だから、明治になって鉄道を導入する日本でも当然この標準軌を導入すればよかったのだが、「元来が貧乏な国であるから軌幅は狭い方が宜からう」と、当時、イギリスの植民地で多く採用されていた1067mmという規格が採用されてしまった。
デジタルストレス王 2005年5月「福知山線事故は明治政府の責任?より)

もし、本多静六らが必死で大隈重信を説得して杉林計画を断念させなかったら、今のような明治神宮の杜はなかったのだ。

さて、現在の日本に、政府のトップの意向に敢然と異を唱え、正しい施策に導こうと奮闘する学者や官僚がどれだけいるだろうか
知らないうちにアベノマスクだのGOTOキャンペーンだのといったとんでもない愚策が首相官邸や一部の利権政治家の意向だけで決まってしまい、官僚も、それがどれだけ馬鹿げた、マイナス要因だらけの施策であるか分かりながら、ひたすら追従する。それどころか、政権中枢に都合の悪い証拠や文書を隠蔽・改竄することもいとわない。
今の政治や行政の劣悪ぶりは、昭和どころか、明治、大正時代以下なのではないか。
その状況をしっかり伝えないどころか、一緒になってオバカ広報に堕してしまっているメディアの責任はさらに重い。

日本学術会議の会員任命に際して6人を外した菅義偉総理大臣に対して、静岡県の川勝平太知事が「菅義偉首相の教養レベルが図らずも露見した」「本当に残念。文部科学相はこういうことに一家言を持ってないと大臣の資格はない」「(菅氏は)学問をされた人ではなく、単位を取るために大学を出られたんではないかと思う」などと述べたことに批判が集まったなどというニュースを読んだが、川勝知事が言うように、これらの発言を「訂正する必要はない」。
100年後の世界に思いをはせない知性は、本当の教養とはいえない。


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ワクチン開発より既存薬の活用を2020/10/05 15:04

身体に悪いので、このところ政治関連やCOVID-19関連のことは書かないようにしていたのだが、久々に現在の世界におけるCOVID-19死者数状況を確認してみた。

ファクターXはやはりあるだろう

新型コロナで一体何人が死んだのか?
全世界の人口100万人あたり133人死亡している。これは累積の死者数。つまり、このウイルスが確認されてから現在までに、1万人に1人ちょっとがCOVID-19で死んだということになる。

やはり国・地域による偏在ぶりが目立ち、欧米に比べて東アジア諸国は極端に死亡率が低い。
世界平均より死亡率の高い国をざっと拾ってみた(worldometers.info による)。
統計に表れる死者数は、PCR検査数の多寡にも関係すると思われるので、念のため、人口100万人あたりの検査数も併記した(100以下は四捨五入)。

100万人あたり死者数100万人あたり検査数
ペルー98711万9000
ベルギー866 29万
ブラジル686 8万4000
スペイン686 27万2000
チリ 674 17万9000
米国 646 33万3400
英国 623 36万8500
メキシコ610 1万5500
イタリア595 19万3400
スウェーデン583 16万4200
フランス493 17万1100
オランダ376 14万2900
カナダ 250 20万

やはり、死亡率が高い国は欧米に集中している。
日本は100万人あたり13人が死んでいる。
100万人あたり13人という数字は、アメリカの約50分の1である。

日本のように、100万人あたりの死亡者数が2桁以下の主な国を見ていくと、
100万人あたり死者数100万人あたり検査数
インド 74 5万7100
フィンランド 62 19万5000
フィリピン 53 3万4900
ノルウェー 51 19万8000
インドネシア 41 1万2700
オーストラリア 35 30万3900
セネガル 19 1万0700
香港 14 44万1000
日本 13 1万7000
ケニア 13 1万0300
エチオピア 10 1万1200
韓国 8 4万5800
シンガポール 5 49万2200
ニュージーランド5 19万6000
中国 3 11万1200
タイ 0.8 1万0700
スリランカ 0.6 1万3500
ベトナム 0.4 1万0300
台湾 0.3 4000
モンゴル 0 2万2200
カンボジア 0 8500
ラオス 0 7400

……となっていて、やはり東アジアは極端に低い。
モンゴルは世界の平均より結核患者の数が多いそうだが、COVID-19で死んだ人は今のところ見つかっていないらしい。検査していないのではないかといわれそうだが、100万人あたり2万2000の検査数は日本の同・1万7000よりも多い。

オセアニアやアフリカも概ね低い。
アフリカ諸国のデータはどこまで信用できるのか分からない、と、多くの人は感じているだろう。検査数が少なければ、隠れコロナ死も多いはずだ……と。
でも、セネガル、ケニア、エチオピアの検査数は100万人あたり1万を超えているので、日本とあまり変わらないように見える。見落としがいっぱいある(隠れコロナ死が多い)としても、欧米に比べると少ないのは確かなのではないか。

つまり、COVID-19で死ぬ確率は、やはり遺伝子的な要因が大きく関係していると思わざるをえない

岩田健太郎教授は、日本でも高齢者の死亡率はイタリアとそれほど変わらないのだから、いわゆる「ファクターX」は存在しないのではないか、という主張をしていた
確かに、イタリアで一時期死亡者が続出したのは、高齢者施設などで集団感染が広まったことが大きく関係しているようだ。
それは確かだろうが、それだけでこんな差が出るとはどうしても思えない。

高齢者対応と既存の薬の活用が重要

ただ、ここでひとつ疑問に思うのは、高齢者施設で肺炎などで亡くなった入居者をPCR検査してみたらSARS-CoV-2が陽性だったという場合、死因は「新型コロナ感染症」とされてしまうのではないか、ということだ。
もともと身体のあちこちの機能が弱っていた終末期にある高齢者が亡くなった場合、直接の死因はコロナといえるのだろうか。
コロナが最後の駄目押し的要素になったとしても、もともと弱っていた内臓の機能や呼吸器系の障害がいちばんの要因であり、本来なら死亡診断書に「老衰」と書かれてもおかしくないような人でも、検査をしたらコロナ陽性だったから「死因は新型コロナウイルス感染症」とされている場合もあるのではないか。

いずれにしても、高齢者や病人が感染した場合は致死率が一気に上がるのは分かっているのだから、高齢者施設や病院での感染予防対策を徹底させることが第一だろう。
高齢者施設でアルコール消毒液などが足りないといっていたときに、全世帯にアベノマスクを配るだのというバカ施策をしていた官邸グループは恐ろしい。

さらには、若い人でも重篤化しやすい(サイトカインストームを起こしやすい)遺伝形質を持った人が、数は少ないとはいえ、確実に存在しているのだから、そういう重篤化しそうなケースをいち早く見抜いて、手遅れにならないうちに対応することが必要だ。
その有効策はワクチン開発ではない。既存の薬が有効だと分かってきたのだから、その治験を増やして、即応できるようなシステム作りを急がなければならない。
東京都救命救急センターでもある日赤医療センターでは、重篤化したCOVID-19患者が運び込まれる例が多いが、レムデシビル、デキサメタゾン、トシリズマブの3剤併用療法(RDT療法)を導入したところ、致死率が下がったと報告している。
トシリズマブは未承認なので、現在は臨床研究倫理委員会の承認および患者の同意を得て投与しているという。

メディアは、「早くワクチンが開発されるといいですね」などという言葉を決まり文句のように使っているが、分かっていないことが多い中で、副作用の危険性や有効度合が分からないワクチン開発よりも、既存薬による有効治療を確立するほうがはるかに重要だろう。

ワクチン開発競争には、製薬会社の利益や国家間の戦略が絡んだ不透明で怪しげな情報、金のやりとりも感じられる。そうしたものに巨額の税金が流れるよりも、地に足のついた実践的、効率的、合理的、公正公平な医療戦略に徹してほしい。
それをしっかりやった上で、大学の対面授業などはすぐに再開するべきだし、GoToだのなんだのに税金を使うよりも、「普通の生活」を再構築した上で、高齢者や、重篤化しそうな患者への医療対応に金とマンパワーと知恵をつぎ込むべきだ。
思うに、これは日本だけではないが、政府は現場の医療者より、感染症専門研究者の意見を重視しすぎたのではないか。
分からないこともまだたくさんあるが、分かってきたこともいろいろあるのだから、分かってきたことを判断材料として、冷徹な施策を進めてほしい。

ちなみに、今年、日本でCOVID-19陽性で死んだ人は1,597人(10月5日時点)だそうだが、今年に入ってからの自殺者は8月までで1万3109人である。
8月だけで1854人で、昨年8月に比べて251人増えたという。
特に若い女性が増えており、30代以下の女性の8月の自殺者数は前年に比べ74%増えている
コロナのせいで、この先も、自殺者増加の傾向は続くだろう。
誤解を恐れずにいえば、
日本では、COVID-19で死ぬ高齢者よりも、自殺する若者の数のほうがはるかに多いのである。
これから生きていく人たちに幸福を与えられる社会をどう作っていくかを、政治家や官僚には、真剣に考えてほしい。

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25年間で4000回以上のWEB日記を書いていた2020/10/02 21:39

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煩悩は続くよどこまでも

思うところあって、2002年からAIC(朝日新聞のWEBコラムサイト Asahi Internet Caster)火曜日に連載していたコラム『デジタルストレス(キング)』から拾ったものを中心にして、エッセイ集を5冊まとめた。
すでにAmazonでも販売している

森トンカツ

エッセイ集を作ったことで、過去のWEB日記も見直してみた。
いちばん古いのは1996年で、まだデジカメもなかった時代。インターネット黎明期で、確かアナログ電話回線でピーガーって音を出すモデムで2400bpsとかでつないでいた。それが4800bpsになり、9600bpsになり……。
使っていたパソコンはIBMのPS-V Visionというやつ。メインメモリが8MBで内蔵HDDが170MBだった(GBじゃないよ)。
プロバイダはインターリンクというしょぼい回線のところから始まって、biglobeに移って、その後はAsahi-Net。1996年だと、biglobeに移ったあたりかな。
当然、写真画像なんて入れられなくて、入れるとしても画像ファイルは30KB以下なんてのが常識だった。30KBのちっちゃな粗いJPEGファイルでも、開くのに時間がかかって、プログレッシブJPEGなんて形式もあって……。

この頃は精神的にはものすごく追い込まれていて、日記に書いている内容もやたらと暗い。

それからなんとなく続いて、気がつくと25年も経っている。

以前のWEBページは、文字コードはShift-JISで、フェイスブックにリンクを張ると拾ったテキストが文字化けする。
ヘッダ情報のタイトルにトピックを入れてなかったので、目次を作るのに内容を拾えなくて苦労する。
それを今回、できうる限り直した。
文字コードをShift-JISからutf-8に変換し、ヘッダにはタイトル情報を全部入れていき、スマホで開いてもなんとか読めるように
<meta name="viewport"  content="width=device-width,initial-scale=1.0" />
というおまじないも入れた。

結果、日記の目次ページが4000行を軽く超えるというすごいことになった。つまり、25年間で軽く4000ページ以上のWEB日記を書いてきたことになる。

さらに困ったのは、何年か前にサーバーを移転したとき、画像ファイルの縦横情報が消えてしまったらしくて、多くの縦位置写真が横に表示されてしまったことだ。
ただ、寝てしまうだけならまだしも、縦横比も入れ替わるのでひどいことになる。それを一つ一つ見つけ出してIrfanViewに読み込み、写真を90度回転させて保存し直してサーバーにアップロードし直す……という、気が遠くなる作業をやった。

リンク切れや、今となっては意味のないリンクはなるべく消したが、まだまだいっぱい変なリンクやらミスが残っているはず。

でもまあ、だいぶよくなっただろう。

それにしても4000ページ以上の日記か……。何やってるんだか。
こういうのも煩悩のなせるわざだなあ。
それを自分の死後にも残したいと思って本にする。どこまでも深き煩悩よ。

  1. この世における自分の人生を嘆く⇒煩悩
  2. この世における自分の人生は諦めるが、自分の死後のこの世に思いをはせる⇒煩悩
  3. この世のことはすべて幻想だと割り切り、別の次元の世界に思いをはせる⇒煩悩

そろそろ第3段階の煩悩へと移行していきたい。

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新型コロナとエイズ2020/08/27 14:54

エイズを題材にした小説
「感染」を巡って、恐怖や疑念が世の中に渦巻き、メディアが騒ぎ、不当な差別・偏見が広がる……かつてこれに似たことがあった。
今から30年近く前、1990年代初めの、エイズをめぐる報道や社会の風潮がそれだ。
30年も前のことだから、若い人は知らないだろうし、30代くらいの人も記憶にはないだろう。
私は強烈に覚えている。
というのも、「エイズをテーマにした映画を作るから原作を書いてみないか」と持ちかけられ、実際に書き上げたからだ。
主人公が若い男女で、エイズの絡んだ話であればなんでもいい。映画はその「原作」とは関係なく脚本家を立てて進めるので、「原作」ということにさえしてくれればOKである……という、ひどい依頼内容だった。
出版社の担当編集者の知人が持ち込んできた話だった。
日本を代表する映画会社の社長が代替わりして、その若社長が社長就任と同時に「エイズ映画を作る」とぶち上げたという。映画はもう制作着手しているが、売り出すために「原作」となる文芸作があったほうがいいから、何かないか……という。
「どうする? 話の筋はなんでもいい、って、ひどいよね。でも、あなたを売り出すきっかけにはなるかもしれない」
「受けたほうがいいでしょうか?」
「そうね。話題になれば、本を買って読んでみようという人も出るし、読めば、作品のクオリティは映画とは別にちゃんと評価されるでしょうから」
編集者にそう言われ、私も同意し、書き上げた。
当時、精神的に不安定な時期で、自分の人生、命というものを見つめ直す作業として取りかかった。
書き上げた小説は純文学路線で評価が高かったが、映画の「原作」にはならなかった。当時、テレビに多く露出していた女性「ノンフィクション作家」のルポ本を「原作」とすることにした、とのことだった。
そのルポはアメリカでのエイズ患者との交流を書いたノンフィクションだから、完全なフィクションの恋愛ドラマである映画とはなんの関係もない。それでも「原作」と銘打てるのかと呆れ、驚いたが、内心、自分の作品が「原作」として使われないことになってホッとしたものだ。

話が少しずれたが、今のコロナ騒ぎを見ていると、あのときの空気感に似ているなと思うのだ。

もちろん、HIVと新型コロナウイルスでは、感染の仕方も違うし、エイズは日本の社会をひっくり返すほどの現象は生まなかった。
しかし、連日のようにメディアが騒ぎ立て、人々がエイズという得体の知れない感染症に対して恐怖を植えつけられ、多くの人がエイズ感染者に対して偏見と差別の眼を向け、排除するような行動をとったという点で、今の社会と共通するものがある。

そこで、改めてエイズ騒動がその後どうなったのか、確認しつつ、今の新型コロナウイルスの状況と比較してみた。

HIV保有者数
  • 世界:3800万人(2020年現在の推定。UNAIDSによる)
  • 日本:2万836人(2018年末。エイズ動向調査委員会)

SARS-CoV-2陽性反応者数
……このデータを見ると、現時点で、全世界では、SARS-CoV-2陽性反応者(PCR検査陽性者)の数よりHIV保有者のほうが1.6倍くらい多いらしい。
では、それぞれのウイルスが原因で死んだ人の数はどうか。

HIV関連疾患による死者数
  • 世界:2019年1年で69万人(50万~97万人)が死亡。HIV感染が始まってからの累計では3270万人(2480万~4220万人)が死亡。(UNAIDSによる)
  • 日本:現在は治療薬が普及して年間死者が2桁を超えることはない(2018年は18名。APIネット調べ)。HIV感染者の平均余命も健康人とほぼ変わらない。

COVID-19による死者数
  • 世界:累計で約82万人(8月26日時点 ジョンズ・ホプキンス大学による)
  • 日本:累計で1218人(8月26日時点 同上)
エイズ感染者と関連死の数は、現在ではアフリカが圧倒的に多い。これは貧困層に治療薬が行き渡っていないことも大きな要因だろう。
しかし、当初は欧米での死者も多かった。

日本における死亡者は,1995年に男子52名,女子4名であり,以後,男子50名前後,女子数名の状況は変化せず,2006年には男子55名,女子5名となっている.
アメリカの状況は日本とは大きく異なる.1987年の男子12,088名,女子1,380名からはじまり,急速に死亡者が増加し,1995年には男子35,950名,女子7,165名とピークを示した.その後急激に減少し,2005年には,男子9,189名,女子3,354名となっている.
1995年以降の死亡者の急激な減少は,HAART療法の効果によるものと推定される.
一方,ポルトガル,ウクライナ,ロシアなどでは,この死亡者の急激な減少はみられず,特に南アフリカでは死亡者が1990年以降急激に増加し,減少傾向はまったく見られない.HAART療法等により,未だHIV/AIDSによる死亡者の減少が見られない諸国において,死亡者が減少することを期待したい.
東京都健康安全研究センター年報,60巻,283-289  2009年

↑この報告は2009年のものでかなり古い。
その後は少しずつ死者数が減っているが、
2017年末現在、HIVとともに生きている人は世界で3,690万人となっています。また、2017年に新たにHIVに 感染した人は180万人、エイズ関連疾患によって亡くなった人は94万人となっています(国連エイズ合同計画(UNAIDS)より)。
日本では、近年1,500人前後が新たにHIVに感染・エイズを発症していると報告されています。また、HIVに感染していたことを知らずに、エイズを発症して初めて気づいたというケースが、新規HIV感染者・エイズ患者数の約3割を占めています。
日本政府広報オンライン

……だそうで、現在は年間69万人(推定)だが、2000年代前半には世界で年間約200万人が、数年前までは年間100万人前後の人がエイズ関連で死んでいたのだ。

しかし、日本で暮らしていると、エイズで年間100万人死んでいるという話を聞くことはほぼない。エイズのことなど長い間忘れていたという人がほとんどではないだろうか。

日本国内では男子数十名、女子数名のレベルの死者だった1990年代、同じ時期、アメリカでは男子数万、女子数千名レベルでエイズで死んでいたというのも、今のCOVID-19による死亡状況に通じるものがある。2桁どころか3桁多い。

新型コロナもエイズ同様に忘れられていく?

新型コロナウイルスが、 前回の「まとめ」にあるようなものであるとすれば、今後、時間はかかるだろうが、エイズ騒動と同じように推移していくのだろうか。
つまり、

  • 世界は新型コロナウイルスと共存していく。人々はこのウイルスが存在していることを徐々に忘れて、普通に生活するようになる。
  • 日本では発病者や重症化する人の数が少ないので、メディアも徐々にこの話題に飽きて、もっと刺激的な話題へとシフトしていく。
  • しかし、世界レベルでは医療が十分受けられない国、人種、貧困層などで、毎年相当数の人がCOVID-19で死んでいく。
  • 死者は貧困層や途上国に集中するようになる。
  • ワクチンや治療薬開発、販売を巡って、製薬会社などと国家レベルでの取り引きが行われるが、詳細は一般人には知らされない。


……歴史が教えてくれるところでは、こうなっていく気がする。
また、医療現場や介護現場は疲弊し続け、今までのレベルでは医療・介護サービスを受けることが困難になり、COVID-19以外での死者も増えるが、そうしたデータや現場の事情は徐々に報道されなくなるだろう。

ちなみに、UNAIDSでは、新型コロナウイルスパンデミックによって、HIV治療薬の高騰や中低所得国への供給不足が懸念されるとしている。
これはHIVに限らず、他のあらゆる疾病や怪我の患者にもいえることだ。

冷静にデータを読み取り、医療や介護の金とマンパワー資源を合理的に配分し、福祉レベルを下げないことを目指す政治に切り替えることが急務である。

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コロナより「コロナ自粛強要」で社会が壊れる2020/08/26 22:00

暴露と感染の広がり方 高橋泰教授の説明図(https://toyokeizai.net/articles/-/365254?page=4 より)

↑「新型コロナウイルス感染の広がり方」(高橋泰教授による説明図 「東洋経済ONLINE」より)

「自然免疫で撃退説」のおさらい

前回、COVID-19に対する高橋泰教授らの「実態予測と提言」をまとめたものを紹介したが、こうした提言が複数の医師や研究者から出てきてひと月以上経つのに、未だにメディアは毎日「新規感染者数は○人でした」という伝え方を変えていない。
高橋教授の主張は、東洋経済ONLINEにいくつか出ているので読める。
●新型コロナ、日本で重症化率・死亡率が低いワケ 高橋泰教授が「感染7段階モデル」で見える化(2020/07/17)
●高橋泰教授が新型コロナをめぐる疑問に答える 暴露と感染の広がり方、PCR検査の問題を解説(2020/07/27)
●新型コロナ、「2週間後」予測はなぜハズレるのか 高橋泰教授「データに合う新型コロナ観を持て」(2020/08/07)

詳しくは原文を参照してほしいが、1つだけ重要な指摘をあげれば、
「PCR検査陽性者」イコール「新型コロナウイルス感染者」ではない、という点だ。
  • 新型コロナウイルスは暴露力(体内に入り込む力)は強い
  • しかし、伝染力と毒性は弱く、かかっても多くの場合は無症状か風邪の症状程度で終わる
  • ウイルスが身体に入り込んだ状態でPCR検査をすれば陽性反応が出る。
  • しかし、多くの場合(高橋教授らのチームは、日本では98%と推定)、自然免疫だけでウイルスを排除してしまうので、無症状かごく軽い風邪のような症状で終わってしまい、ほとんどの人はウイルスが身体に入り込んだことに気づかない
  • この「自然にウイルスを排除した人たち」は、体内に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する抗体を作るまでもなく終わっているので、その後、抗体検査をしても陰性となる。
  • 残り2%の人たちは自覚的な症状(風邪や肺炎のような症状)が出て、SARS-CoV-2に対する免疫を獲得する(その後、抗体検査をすれば陽性と出る)。
  • この2%の人のうち、ごく一部の人たちにサイトカインストーム(免疫暴走)が発生して重症化し、死者も出る。

……そういう分析内容だ。
つまり、「PCR陽性者」=「新型コロナ感染患者」ではないし、必ずしもスプレッダー(ウイルスをばらまき、感染者を増やす人)だともいえない。
PCRが陰性になった人は感染歴がない人ではないし、明日以降、スプレッダーになる可能性はある。

もちろんこれは現時点では1つの仮説なのだが、現状と照らし合わせてみると、非常に納得がいく仮説だと思える。
重要なのは、何人がウイルスに暴露しているか、暴露したか、ではなく、重症化する人を減らすこと、重症化する人をいち早く見つけて有効な治療をすること、なのだ。
で、問題はサイトカインストームが発生して重症化する確率だが、
20代では暴露した人10万人中5人、30~59歳では同1万人中3人、60~69歳では同1000人中1.5人、70歳以上では同1000人中3人程度、
……という推定値だという。

この確率が、アジア人はなぜか欧米人より二桁低い。その理由がいわゆる「ファクターX」などと呼ばれるようになったものだ。
BCG説や生活習慣要素など、様々な「ファクターX」候補が挙げられているが、HLA型などの遺伝的要素が最も大きいのであろうということは、多くの医師、研究者が感じているし、すでに多くの論文も出てきている。

「新規感染者数」という伝え方の問題

以上のことを踏まえれば、「新規感染者数」の増減で騒ぐことにはほとんど意味がない。
なぜなら、PCR検査で陽性が出た人の数というのは、その時点でたまたま体内にSARS-CoV-2が入り込んでいる状態で、それが検査したから判明した、ということであって、COVID-19(SARS-CoV-2に感染して病理症状が出た状態)の増減傾向を示すものではないからだ。
同様に、抗体検査で陰性を示す人が、過去にSARS-CoV-2に暴露していないことにもならない
「感染経路が不明な人の割合」というのはもっと意味がない。感染経路など分からなくてあたりまえなのだから。
家族の一人にPCR陽性者が出たので家族全員を検査したら全員陽性だったとする。その場合、「家庭内で感染」と分類されるのかもしれないが、その家族全員が別々の場所でウイルス暴露して、たまたまそういう人たちが集まっている家庭なのかもしれない。
暴露する力が非常に強いウイルスなのだから、どんなに注意をしてもウイルスが身体に入り込むことはある。それを「感染者」というレッテルを貼って「隔離しなければ」とか「不注意だ」とか「マスクもしないで……」などと騒ぎ立てる──しかもそれを一部メディアが率先してやっていることのほうがよほど恐ろしいし、社会に大変なダメージと悪影響を与えている。

厚労省などは「クラスター対策」を最重視してきたようだが、日本ですでに3割以上がウイルス暴露を経験しているとすれば、「一人の陽性者の周辺を調べれば一定数の陽性者は出る」のは自然なことだろうから、それが「クラスター」なのかどうかも分からない。
高橋教授はこのことを図で説明している(↑冒頭の図)。
↑高橋泰教授が説明に使った図。東洋経済ONLINEの記事より。Clickで拡大)
その説明を要約すると、
  • 図の水色の四角で囲んだ部分が、新型コロナに暴露した(ウイルスを体内に取り込んだ)人。
  • その中で色がついているのが暴露した後に感染(細胞内にウイルスが入り込んでしまった)人。
  • 青色の人は自然免疫が強く、ほぼ無症状か気がつかないほどの軽症。ウイルスの排出もほとんどなくスプレッダーにならない。
  • 黄色の人は「無自覚スプレッダー」。一時的にウイルスを排出するが、自分は自然免疫で治ってしまい、感染したことに気づかない。
  • ところが、発生確率は低いが、自然免疫では抑えられず獲得免疫が出動し、風邪のような症状もかなり出て、ウイルスも多めに排出して人にうつすオレンジの人が出てくる。
  • さらに、明らかな熱や咳などの症状が出たのが赤色の人で、PCR検査したら陽性になって入院することになる。
  • その赤色の人の周辺を検査したら陽性者が4名見つかった。そこで、この赤色の丸で囲まれた部分を、現状では「クラスターが発生した」と表現しているが、実はたまたま、見つかったにすぎない。
  • 現在は検査を増やしているので、陽性者の発見が増えている。3月下旬は検査数が少なかったが、実効再生産数はピークであり、この時にもっと検査していたら、今の数十倍から数百倍のPCR陽性者が見つかっていたのではないか。

つまり、
  • 3月下旬頃に検査数を増やしていたら、今よりずっと多い陽性者が出ていたはず。
  • 今は「クラスター」とみなしているグループも、多数存在している陽性者の一部をたまたま切り取っているだけ。

……だというのだ。

求められる対策とは

こうした説が、複数の医師、研究者から出されているのに、メディアはなぜかひと月以上経った今でも無視、あるいは意図的に排除しているように思える。なぜなのか?
厚労省をはじめ、対策に関わる人たちの多くは、すでにこの説の妥当性について肯定的な考えに傾いていると思われるが、箝口令を敷いたかのように口を閉ざしている。 政府上層部、多くの政治家は、この説の内容を理解することさえできておらず、問題にコミットすることを恐れている。さらにひどい連中は、コロナを利用して、いつも通りの利益誘導型政策を連発することになんら罪悪感も羞恥心も持っていない。

そんな状況で、私のような素人が、またまた「合理的な対策とは」などと主張するのも虚しすぎるのだが、やはり一人一人が声を上げることが求められていると思うのでまとめておきたい。

  • 政治や行政のリーダーは、国民に向かって、真摯に、新型コロナウイルスの最新分析情報を分かりやすく説明し、過剰反応や間違った認識を改めるように言葉を尽くすべき。
  • PCR検査については、医療従事者、高齢者施設従事者などの定期的な無料検査の速やかな実施と、クリニックレベルの個人病院からでも、医師が必要と判断した場合の保険診療、検査機関(民間含む)への検体提出を可能にする。そのための設備投資やシステムの合理化を進める。
  • 医療や介護の現場でのリスクを下げ、医療・介護従事者の負担を減らすためのシステム構築と資金の投入。合理的なマンパワーの配分。
  • アベノマスクやGoToキャンペーンなど、現場を混乱させ、マイナス要因を増やすだけのバカ政策、コロナと無関係な利益誘導政治を反省し、金とマンパワーを必要とされる現場に有効かつ速やかに投入できる施策へ転換。
  • メディアは政府の顔色を窺わず、視聴者や読者の「食いつき」を計算せず、危機を情緒的に煽らず、社会の木鐸としての自覚を持ち、正しい情報を分かりやすく伝える努力を。
  • 50代までの層には、正確なリスクを伝えると同時に、高齢者や病人など、高リスクの人たちへ自分たちが感染させて死なせる可能性を自覚させ、行動規範の形成を促す。
  • 教育現場やスポーツやイベントビジネスの現場などでは、過剰な自粛要請よりも、常識的な新マナーの共有で正常化を。

今のままでは、ウイルスによる病死などより、ウイルスが引き金となった思考停止による「社会崩壊」のほうがはるかに恐ろしい結果をもたらすだろう。

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COVID-19の状況は「二周目」に入っている2020/08/06 14:24

COVID-19を巡る情報や対策は、そろそろ一周して、新しい周回に入ってきたように思う。

そう感じていたところ、かなり腑に落ちる意見論文を読めた。
⇒こちら 「新型コロナの実態予測と今後に向けた提言」(高橋泰、武藤真祐、加藤雅之 社会保険旬報 2020.6.21)

PDFだし、長くて読む気が起きないという人のために、ものすごくザックリとまとめると……

●新型コロナはインフルエンザウイルスに比べて毒性が弱く、体内に入っても感染しない(自然免疫の段階で身体が打ち勝つ)ケースが多い。

●日本ではすでに30~45%の人が体内にSARS-CoV-2を取り込んだことがあると思われる。その後、感染はしなかった(細胞内にまで入り込まれなかった)ので抗体検査もマイナスに出る。

●東アジアの人たちは、何らかの要因で、この「ウイルスを取り込んでも感染しない」あるいは「自然免疫だけで打ち勝ったので無症状や軽い風邪症状くらいで済んで、その後、抗体も作られていない」割合が欧米人よりずっと多い。

●COVID-19で重症化する理由には、主に2つの説がある。

 1)今回のウイルスパンデミック以前にあったS型コロナウイルスの感染による抗体が、「抗体依存性免疫増強(ADE)」効果を引き起こし、ある時点で容態急変を起こす。
 2)SARS-CoV-2そのものの毒性によるものではなく、SARS-CoV-2に感染したプレボテラ細菌がサイトカインストームを引き起こす。

●そういうウイルスであるという前提でのシミュレーションを行うと、現状(欧米のような強力な対策をしなかった日本で極端に死者が少ないこと)が説明できる。

●もしインフルエンザ並みに強力なウイルス(暴露すると100%抗体が陽性反応を起こす)であれば、現時点で日本人のほとんど(1億人以上)はSARS-CoV-2を体内に入れていないということになってしまう。そうであれば、これからウイルス暴露が広がれば、今後500万人以上が重篤化し、300万人以上が死ぬ計算になってしまう。

●現状を見る限り、そうであるとは思えない。

●よって、一律に何かを禁止したりするのではなく、年代によってリスクが著しく違うことを考慮した対策が必要である。

●つまり、0~29歳は、学校の授業やスポーツなどは元に戻す。クラスター発生が確認されたら、インフルエンザ同様に学級閉鎖などの対応をする。

●30~59歳もリスクは低いので、普通に社会活動をして、感染が分かった場合は監察下での自宅療養。クラスター発生時は職場閉鎖などの対応。

●60~69歳は、現役世代であれば自宅勤務、リモートワークなどで、人との接触を減らすことを推奨。

●70歳以上の世代、特に80歳以上の高齢者の場合、新型コロナに暴露した場合の死亡リスクは、若年者の数百倍から数千倍になり、感染リスクが急速に高まる。よって新型コロナが流行しているときは、これまで行われてきた隔離的な環境を推奨する。 また普段から、コロナ感染予防を徹底しながら外出などを行うなどが求められる。

ここから先は、特に今後、政治・行政が取り組まなければならない重要な提言なので、ほぼ原文のまま拾うと……、
●患者動向を的確にモニタリングし、 また遺伝子解析を早急に行い、現在の新型コロナと同様のウイルス株の再来か、毒性や繁殖力が以前より強くなった「発症力」が高いウイルス株が現れたのか、あるいはより「重症化しやすい」ウイルス株なのかを早急に見極め、それぞれに応じた対策を行えるような体制を早急に整備する。

●現在と同程度のウイルスであると分かっている間は、軽度の患者の対処基準を現状より軽くする。例えば、肺炎が認められる、あるいは呼吸困難が見られる場合は病院へ。肺炎や呼吸困難が認められないが発熱や倦怠感などの症状が強い場合は宿泊所等への隔離。PCR陽性で無症状 ・ 軽症は自宅待機とするなど、季節性インフルエンザと同じ診療方針で行なえるように新型コロナの対処の基準を改定する。

●日本の現場で使用されている新型コロナ治療薬の薬効を評価できるデータを集める仕組みを早期に立ち上げることを提言する。 また、日本人が重症化しにくい原因の解明は、他国の研究からは期待できず、BCG説や腸内細菌影響説が正しい場合、欧米人の薬効データは日本では参考にならないので、国内で使われている薬の効果を示すデータを多施設から吸い上げ、薬効を評価できるビッグデータを収集する仕組みを至急作る。 また、種々の検査データを含めて国内研究を推進する。

……ということである。

ザックリまとめたので、細部のニュアンスや意図は多少変わっているかもしれない。正確にはぜひ原文を読んでほしい。

これを読んだ上での個人的、補完的感想としては、

PCR検査論争はそろそろやめにして、それよりも次にやるべきこと(上の提言の後半部分)に早急に着手すべき。
PCR検査というのは、初期段階で徹底してやっておくべきだった。それがあれば今よりずっとまともなデータが得られて、次の手を打つ対策を練る方法にも根拠が増えたからだ。
しかし、今はもう次の周回に入っている。
今から「無症状者にも徹底的に検査を」というような主張はすでに「周回遅れ」の感が否めない。その費用とマンパワーを、通常医療体制の維持と、重症患者早期発見・治療対策にあてるべきだろう。
COVID-19以外の病気や怪我に対する医療レベルが落ちていくことは絶対に避けなければならない。このままでは、今度の冬にインフルエンザで死ぬ人がCOVID-19で死ぬ人よりずっと多いことになるのではないか。
今までなら大事に至らずにすぐに治療や手術を受けられた人たちが、状態を悪化させ、死んでしまうケースも急増するだろう。それこそ本末転倒である。

さらには、メディアがワクチン待望を煽るのもやめてほしい。季節性インフルエンザと違い、新型コロナでの重症化はサイトカインストームが関係している。ある種の免疫が重症化を引き起こす可能性がある限り、このウイルスに安全・効果的なワクチンができるとは思えない。また、ワクチンや治療薬をめぐる製薬会社と各国政府の契約などは、過去に不透明かつ正当性に疑いのあるケースがいくつもあったことにも注意したい。
ワクチンよりも、個々の症状、病態変化をしっかり観察した上で、これならこれが効くはずだ……という、経験とデータに基づいて既存の医薬品や治療法を活用する道を探るほうがずっと効果的、合理的だろう。

で、最後はいつも通りの「叫び」になるが……、いくら正論や有効であろう提案を明示しても、理解力のない政治家や、保身と前例主義、上からの命令に従うだけの官僚などは動かないのだから、国民が「国の体制を変える覚悟」が必要だ。上が腐っている限り、現場でどれだけ優秀な人が頑張っても、効果が現れにくい。
まずは我々一人一人が、しっかり覚悟を決めて、できることをしていくしかない。

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GoToキャンペーンの「実態」を見よ!2020/07/16 15:07

申請の方法すらまだ「調整中」と言いながら強引に発車
日本政府は、当初から非難囂々だった「GoToキャンペーン」なるものを、当初の予定より前倒しして、2020年7月22日からスタートさせると言っている。
もはや正気の沙汰ではない。
メディアもSNSも「コロナ感染拡大を招く」という論調だが、それ以前に、このキャンペーンの実態を把握していないのではないか。
もう、ほんとにこういうのにつき合うのは嫌なのだが、観光庁の最新のFAQ集から重要ポイントを簡単にまとめてみたので、ぜひ確認してほしい。
とにかく分かりにくい。何度読み直してもよく分からない。しかも「詳細は調整中であり、近日中に改めてお知らせする」なんて答えが随所に出てくる。多分、業界内でも正確に把握している人は少ないだろうし、「詳細は調整中」のまま強行するらしい。

  1. 基本的に、このキャンペーンに登録した旅行業者のツアーが対象
  2. それ以外の個人旅行は、旅費などが対象外であるのはもちろん、宿泊代金も、宿泊先の旅館やホテルなどがキャンペーン登録業者であることが必要
  3. 宿泊業者などが旅行業者を通じずに宿泊させた客などにキャンペーン割引きをするためには、「宿泊施設の予約システムを通じて宿泊記録が外部に確実に蓄積・保管される仕組みが構築されているなど、適正な執行管理のための体制が確保されていること」を条件とした事前登録が必要。
  4. 個人での旅行では、事後に宿泊代の領収書原本、申請書、宿泊証明書(旅館側が発行)、個人情報同意書などを提出する必要がある。
  5. その申請先の事務局はまだ立ちあがっておらず、現時点でもまだ「調整中」いつから申請できるかも「調整中」
  6. 割引適用率は50%で、一泊最大2万円まで。
  7. その50%のうち3割(全体の15%)は9月以降に発行予定の「地域共通クーポン」であてられるので、現時点での旅行では関係がない。よって、現時点での割引きは最大で35%。一泊4万円以上のツアーの場合、その50%の2万円の70%である1万4000円割引きが最高額となる。
  8. 旅行会社の判断で、割引率をきっちり35%にしなくてもよい。
  9. 日帰り旅行では最大1万円というが、旅行会社が組んだツアー旅行だけで、個人で旅行をしたらまったく無関係

●要するに、基本、旅行業者を通さない個人旅行は蚊帳の外。全然関係ない
●三密を避けてなるべく人と接触しないで旅行をするというなら、個人や夫婦などで車を使ったささやかな旅行などをイメージするが、そういうものはまったく対象外。逆に、旅行会社を通した団体旅行(修学旅行や社員旅行など)は丸ごと適用される。
●旅行代理店・業者を通じない個人旅行では、泊まった旅館が登録業者になっていなければならないが、旅館側も「そんな話は聞いていないので何も分からない」と言っている。
●旅館が登録業者になるための手続き申請方法も、個人が後から宿泊代の35%をペイバックしてもらうための申請方法も、未だに「調整中」。準備も何もできていないのに22日からスタートするというありえないお話。
●割引適用の宿泊数に制限はないので、例えば旅行業者を通じて夫婦で一泊4万円以上する旅行を10泊分するならば、旅行会社に支払う金額のうち最大で28万円割引きされる。……庶民とは無縁の話。

Q:本事業による割引旅行・宿泊商品を取り扱う事業者となることを希望しているが、国(事務局)への参加事業者登録はいつから始まるのか。また、具体的にどのような内容を申請することになるのか。

A:参加旅行業者・宿泊事業者の登録は、7月半ば頃から開始することを予定している。詳細は、観光庁HPなどを通じてお知らせする。例えば、事業者の名称・所在地・連絡先、給付金の振込口座等の情報を事務局に申請いただくこと等を想定しているが、いずれにせよ近日中に改めてお知らせする

Q:参加事業者の登録前に商品を割引で販売することは可能か。既存の予約分については予約の時点で登録ができていないが、還付の申請はできるのか。

A:不可。予約の時点で登録ができていない場合であっても還付の申請はできる。ただし、要件を満たさない等の理由により事業者の登録が認められない場合は割引や還付の対象とはならない
観光庁 Go To トラベル事業 よくあるご質問(FAQ)7/13(月)時点版 より)

↑何度読み返してみても、すでに登録済みの旅行業者(あらかじめ選別していた?)を通じての旅行以外ではまったく無理。旅館等がキャンペーン割引き適用の予約を直接取ることも事実上不可能。

結局、13年超の中古車には自動車税を割増し課税するが、「エコカー」認定された高級車を新車で買えば減税するという悪法と同じ、富裕層相手の税金ばらまき。しかも、その予算の多くは「事務手数料」にあてられている⇒アベノマスクと同じ、ピンハネ商法。

こんなものを強行したらどうなるか?
地域経済を混乱させ、地域間ヘイトを無用に増大させ、小規模事業者や個人経営者には今以上に客が回らないようにさせるという、恐ろしいキャンペーン。
そのために使われる金は税金。まさに「GoTo(強盗)」である。

★これを何度か書き直しているうちに、今度は「東京発、東京への旅行は除外する」とか言いだしたらしい……ほんっとに恥ずかしい。

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厚労省が介護現場を混乱させている2020/06/21 14:43

厚労省からの通達
まずは、以下の文章をすんなり理解できるかどうか、読んでみてほしい。
 新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の取扱いについては、「新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて」(令和2年2月17日付厚生労働省老健局総務課認知症施策推進室ほか連名事務連絡。以下、「第1報」という。)等でお示ししているところです。
 本日、通所系サービス事業所(通所介護、通所リハビリテーション、地域密着型通所介護、認知症対応型通所及び介護予防認知症対応型通所介護。以下、同じ。)と短期入所系サービス事業所(短期入所生活介護、短期入所療養介護。以下、同じ。)については、介護支援専門員と連携の上、利用者からの事前の同意が得られた場合には、新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応を適切に評価する観点から、別紙に従い、介護報酬を算定することを可能としたことから、管内市町村、サービス事業所等に周知を図るようお願いいたします。また今回の取扱いについてわかりやすくお伝えする観点から参考資料を作成いたしましたのであわせてご確認ください。
(「係る」や「取扱い」という送り仮名は原文ママ)

これは6月1日付で「各都道府県 指定都市 中核市 介護保険担当主管部(局) 御中」という通達先のもとに厚労省から出された「事務連絡」である。
私も含めて一般人?には、なんのことだかさっぱり分からないだろうから、ザックリと意訳すると、
  • コロナで苦労しているだろうから、利用者が同意すれば、介護報酬額を2段階UPして請求できるようにしたよ
  • そのUPの仕方については資料をつけたから参照してね
  • このことを自治体の行政関係者、介護サービス事業者たちにしっかり知らせなさいね
  • 介護報酬点数の計算をしているケアマネ(介護支援専門員)はしっかり調整してくださいね
……というような話なのだ。

この「利用者が同意すれば」という部分はどうするのかといえば、
必ずしも書面(署名捺印)による同意確認を得る必要はなく、保険者の判断により柔軟に取り扱われたいが、説明者の氏名、説明内容、説明し同意を得た日時、同意した者の氏名について記録を残しておくこと。
また、当該取扱いを適用する場合には、居宅サービス計画(標準様式第6表、第7表等)に係るサービス内容やサービスコード等の記載の見直しが必要となるが、これらについては、サービス提供後に行っても差し支えない。
厚労省サイトのQ&A ⑬の3 より)
……なのだそうだ。

「保険者の判断により柔軟に取り扱われたい」???

当然のことながら、目下、介護現場は大混乱である。特にケアマネ(介護支援専門員)は大迷惑だ。
以前にも、アベノマスクの配達員代わりにされているケアマネの悲劇については紹介した(厚労省がケアマネを「アベノマスク無料配達員」にする恐怖 4/15投稿)が、ただでさえ大変な仕事がコロナでぐちゃぐちゃになっているところに、さらにとんでもない仕事を押しつけられているのだ。

厚労省の官僚が徹夜すればするほど現場は疲弊・混乱する

単に「仕事が大変になる」という話ではない。理不尽なことを間違ったやり方で押しつけてくる霞が関の思考回路崩壊が大問題なのだ。

  • 要介護認定を受けている利用者の多くは、介護保険の利用限度額いっぱいを使っており、超過分は自己負担している。その状態で「2段階UP」による介護報酬ポイント分は、当然、利用者が負担することになる。
  • それでも、介護事業者はコロナのせいで利用者が減ったり事業所の一時閉鎖などがあってただでさえ大変な状況の中、こんな馬鹿な措置であっても、少しでも収入の足しになるなら……と思う。しかし、その事務作業はケアマネが行う
  • 利用者の同意を得ることが前提となっているが、その「同意を得る」のは誰がどのようにやるのか? これまた当然、ケアマネが苦労させられることになる。
  • 「介護支援専門員(ケアマネ)と連携の上、利用者からの事前の同意が得られた場合」というのは、ケアマネが利用者に伝えずに「同意しない」と拒否するケースを許容しているのか? それとも、ケアマネは利用者にこの内容を伝えた上で同意を取るように動けと命じているのか?
  • ケアマネを通さず、事業者側が利用者に直で同意書を手渡しているケースがすでに多数出ていて、ケアマネ事務所には利用者からの問い合わせが殺到している。
  • 利用者は認知症であることが多いし、ただでさえ難解なこの悪文の内容を利用者や利用者家族に説明するだけでも大変な苦労を強いられる。利用者の負担額が増える可能性があるわけだが、そこまで説明しても、利用者は「同意をしないと不利益になるんじゃないか」と、余計な不安を抱え込む。
  • 板挟みになっているケアマネの報酬は増えるわけではない
……一体誰が得をするのか?

この処置も含めて、厚労省のコロナ対応「まとめ」ページには膨大な内容が詰め込まれていて、次から次へと通達が出ていることが分かる。
厚労省は机上の論理で考え、通達しているだけだが、それでもこの仕事量は半端じゃない。毎晩徹夜している職員もいることだろう。
しかし、そんな風に厚労省が仕事に励めば励むほど、介護や医療の現場は混乱し、余計な仕事を背負い込まされ、介護・医療従事者は疲弊し、精神もやられ、事業の質が落ちていく。最終的には介護や医療の事業そのものが破綻しかねない
「霞が関の優秀な官僚が日本を支えている」という神話は完全崩壊している。それこそが、今の日本がいかに危機的状況であるかを知らしめている。

コロナのおかげで、今まで表に出てきづらかったことが次々に可視化されてきた。これをきっかけに、この国をいい方向に向かわせることはできるのか? 舵取りをするべき人たちの能天気ぶり、悪代官ぶりを見るにつけ、絶望のどん底に落ちていく。

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コロナが教える「つぶされない生き方」2020/06/17 11:41

墓地にある石仏が、かつては墓そのものだったらしいと気づいたのは最近のことだ。その時代の人たちの死生観や生活ぶりはどうだったのか。今とは相当違うものだったのだろうとは思うが、具体的なイメージはなかなかわかない。

医学界でも言われ始めた「アジアの幸運」

COVID-19の感染率や重症化に関しては、やはりいくつかの要因があって、アジア諸国では死者が少ない。そのことは医学界でもようやく認知され始めてきたようだ。
この生死を分ける「要因」は何か、という研究が進めば、今のような、すぐ都市封鎖だのソーシャルディスタンスだのマスクだのっていう対策ではない、もっと根本的な「考え方」が形成されていくのだろうか。早くそうならないと、世界はどんどんまずい方向に進んでいきそうで、そのことのほうがウイルスそのものよりもはるかに怖い。

コロナという教師

ともあれ、ここにきて、コロナは、我々に多くのことを教えてくれている「教師」なのではないかという気がしてきている。
今まで見過ごされてきたことに目が向けられるようになって、そこから改めて学ぶことが増えた。
例えば、金は必要以上に持ってはいけないのだなあ、と思う。
負け惜しみではない。「前田ハウス」だの、「安倍首相のお友達」山口敬之氏、有名企業から偽名で月80万円だの、「兜町の風雲児」の最期だのという記事を読むにつけ、心からそう思える。
特に、人が稼いだ金(税金)を使える立場にいるというのは、本来なら大変な責任を背負い、ストレスを抱えるはずなのに、なあなあで(たが)が外れまくっている。開き直ればなんでも通ると思っている(実際そうなってしまっている)。
そうなったら、もうおしまい。壊れた乗り物を運転する薬漬けの廃人と同じなのだろうな……と。

人は必ず死ぬ。この世は夢の世界と同じで、一瞬で消えるバーチャルなもの。そのかりそめの時間の中でさえ、想像力を働かせず、煩悩まみれの生き方に閉じ込められるつまらなさ。永田町の人たちはともかく、霞が関の人たちは、「脳」の可能性という点では、平均よりずっと可能性を持っていた人たちだろうに。
ギャンブル依存症になっている芸人が、それを自虐的に「芸」に取り込もうとするような探究心さえも持てない人たち。可哀想だな、と思うけれど、そういう人たちが、他人の生死を握るような立場にいる、というのが困るし、恐ろしい。

「歴史を学ぶ」のではなく「歴史に学ぶ」

そんなこんなのコロナ疲れもあって、社会の理不尽さを嘆いたり憤ったりする体力もなくなってきた。

先人たちは、様々な失敗体験に基づいて、たとえば「三権分立は大事ですよ」とか「ルールにそって物事を決めましょう」ということを大切にしてきました。こうした知恵が憲法や法律に書き込まれています。
今を生きている人だけで物事を決めてしまうと、大変な悲劇を受けます。
(略)
たとえ「多数派が支持していること」でも「やってはいけないこと」があると考えるのが立憲主義であり、政治的リーダーの本質的な務めではないでしょうか。
安倍首相は「戦後民主主義のあだ花」か?  政治学者中島岳志が分析する「本質を忘れたリーダー」とは HUFFPOST 2020/06/10

「死者の声」に耳傾ける、という言い方をしなくても、要するに「歴史に学ぶ」ことが大切だという話だ。
ただ、その「歴史」は学校で教えてくれるわけじゃない。あれはすでに「編集済み」の読み物だからだ。

出発点は、疑問を持つこと。想像力を働かせること。そして、なるべく自分好みの期待値や裏読みを排除して、実際はどうだったのかと判断していく姿勢だろう。

社会全体がどう動いたのか、そうなっていった要因にはどんなものがあったのかは、ていねいに調べていけば見えてくる。
645年に起きたとされる「乙巳(いっし)の変」(私たちの世代はその年号は「大化の改新」と丸暗記したが、今はこう教えているらしい)が実際にはどんな背景をもち、どのようなものだったのかは、今となっては分からないし、それほど重要だとも思えない。
しかし、幕末から明治にかけての動き、日中戦争から太平洋戦争に至るまでの世相……そういうものはかなりはっきり見えてくるし、今の社会にも大きな影響や因果関係を持っている。これは為政者だけでなく、すべての人が知っておかなければならない事実だ。
しかし、学校の歴史の授業ではそこを教えてくれない。何年に何が起きたか、そのときの人物の名前は、事件の名称は……そんなことを暗記するだけで終わる受験勉強。
歴史を学ぶというよりも「歴史学ぶ」ことが大切なのだ。
しかし、受験生時代にはそんな余裕はまったくなかった。時間的余裕も、精神的な成熟度も足りなかった。
また、「この子は歴史に何を学んだのか」をはかる入学試験などというものはなかったし、今もない。

少し前、勝ち組・負け組という言葉が流行ったけれど、そんな単純なものではないなあ、というのが、人生終盤にきて分かってきた。
大切なのは社会の理不尽に「つぶされない」生き方だと。

私の周囲には「つぶされない生き方」を続ける達人がたくさんいる。その「技術」や「哲学」はそれぞれだけれど、その「それぞれである」という「個性」が守られることが大切なことだ。
個性がつぶされる社会では、最低限の幸福も守れない。
「つぶされない技術」を磨くためにも、つぶされないギリギリの社会を守るためにも、「歴史学ぶ」ことは大切だ。
 
「コロナ休校」がきっかけで始めた中学生向け英語塾。ようやく2冊にまとまった。
ご案内ページは ⇒ こちら


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欧州諸国はアジア諸国の100倍~1000倍COVID-19による死者が出ているという現実2020/05/28 14:02

https://www.worldometers.info/coronavirus/ の統計より
まずは以下のランキングを見てほしい。

ベルギー(808人)、スペイン(580)、イギリス(552)、イタリア(547)、フランス(438)、スウェーデン(418)、オランダ(343)、アイルランド(331)、米国(309)、スイス(222)、エクアドル(186)、カナダ(179)、ポルトガル(133)、ブラジル(121)、ペルー(121)、ドイツ(102)、デンマーク(98)、イラン(90)、パナマ(73)、オーストリア(72)、モルドバ(68)、メキシコ(67)、ルーマニア(64)、北マケドニア(57)、フィンランド(56)、トルコ(53)、ハンガリー(52)、スロベニア(52)、エストニア(50)、ボスニアヘルツェゴビナ、チリ、ドミニカ、ノルウェー、クウェート、アルメニア、イスラエル(31)、チェコ(30)、ロシア(27)、ポーランド(27)、セルビア(27)、UAE(26)、クロアチア(25)、ボリビア、リトアニア、ベラルーシ、ホンジュラス、ブルガリア、ギリシャ、コロンビア、ウクライナ、アルジェリア、キプロス、サウジアラビア(12)、ラトビア、アルゼンチン(11)、アルバニア、カタール(10)、南アフリカ(9)、バーレーン、ギニア、エジプト、フィリピン(8)、オマーン、モーリシャス、日本(7)、カメルーン、キューバ、パキスタン(6)、アフガニスタン、ガボン、エルサルバドル(6)、ウルグアイ、シエラレオネ、トリニダードトバゴ、インドネシア、韓国(5)、モロッコ、アゼルバイジャン、タジキスタン、スロバキア、ニカラグア、リベリア、シンガポール(4)マレーシア(4)、オーストラリア(4)、イラク、スーダン、グアテマラ、ソマリア、ニュージーランド(4)、ギニアビサウ、レバノン、チュニジア、チャド、インド(3)、中国(3)、バングラデシュ(3)、ハイチ、マリ、ニジェール、ブルキナファソ、ジョージア、コンゴ、ジャマイカ、モーリタニア、カザフスタン(2)、ギニア、セネガル、キルギスタン、コスタリカ、パラグアイ、トーゴ、エスワティニ、イエメン、ナイジェリア、ガーナ(1)、コートジボアール、ケニア、南スーダン、ジョーダン(0.9)、タイ(0.8)、コンゴ民主共和国、パレスチナ、リビア、スリランカ、香港(0.5)、ウズベキスタン、ベネズエラ、ザンビア、タンザニア、ボツワナ、ザンビア、台湾(0.3)、ジンバブエ、中央アフリカ、ベニン、シリア、マラウイ、ネパール、ミャンマー(0.1)、アンゴラ、ブルンジ、マダガスカル、エチオピア、モザンビーク、ルワンダ(0)、ベトナム(0)、モンゴル、カンボジア……

……これは何かというと、人口100万人あたりのCOVID-19による死者数、国別ランキングだ。
ワールドメーターズ(https://www.worldometers.info/coronavirus/)というサイトから拾ってきた(2020年5月28日時点)。
ランキング1位はサンマリノの1238人だが、母数が少ないと正確な割合が出ないおそれがあるので、人口が100万人以下の国・地域は外して並べてみた。

人口100万人以上の国では、1位はベルギー(100万人あたり808人)で、以下、スペイン(580)、イギリス(552)、イタリア(547)、フランス(438)、スウェーデン(418)、オランダ(343)、アイルランド(331)……と、ヨーロッパの国々がズラッと並ぶ。
一方でアジア諸国はフィリピンが(人口100万人以下の国・地域も入れたランキングで)ようやく91位(8)に顔を出すくらいで、ほぼ同レベルで日本が95位(7)、以下、パキスタン(6)、韓国(5)、シンガポール(4)、マレーシア(4)、インド(3)、中国(3)、バングラデシュ(3)……と続く。
その下となると、タイ(0.8)が158位、香港(0.5)が162位、台湾(0.3)が170位……。

つまり、ベルギーはタイの1000倍の割合でCOVID-19の死者が出ているし、スペイン(580)、イギリス(552)、イタリア(547)、フランス(438)、スウェーデン(418)では、中国(3)、韓国(5)の100倍、香港や台湾の1000倍くらいの割合で死んでいることになる。
ヨーロッパは人口100万人あたりのCOVID-19による死者が15人以下の国というのはない。アジア・オセアニアではフィリピンの8人、日本の7人が上位1位・2位で、100万人あたり10人以上死んでいる国はない。

日本は欧米諸国に比べればはるかに死者の割合が少ないが、アジアの中で見れば中国、韓国よりも死者の割合は多く、香港や台湾に比べると10倍以上の割合で死んでいることになる。

アジアだけでなくオセアニアも少なくて、ニュージーランド、オーストラリアは116位あたりに並んでいて、共に100万人あたりの死者数は4人しか出ていない。
アフリカや南米は統計が信用できない(実数はもっとずっと多そうだ)から鵜呑みにはできないのだが、それでも欧米諸国に比べると少ないように思える。

ここまで極端に違うと、もはや医療体制の差だとか、マスクだの手洗いだのを真面目にやったからだとかといった説明では無理だろう。
ヨーロッパ諸国がアジア、オセアニア諸国よりずっと不衛生で、不真面目で、医療体制も劣っているとは到底思えない。
「成功モデル」とされているドイツでさえ、100万人あたりの死者は100人を超えていて、中国、韓国、日本より一桁多く、台湾、タイ、香港より2桁多いのだ。
もはや、DNA的な要因などを考えない限り説明がつきそうもない。

そうであれば、幸運なグループに入っている日本では、今からでも検査を増やして、不顕性感染者を集団の中に入り込ませない作戦を徹底するべきだ。それができれば、外出自粛、営業自粛、イベント中止などの防空壕避難的社会生活を合理的に解除でき、社会生活が戻る。

ただ、こうした地域や人種による感染率、重症化率の極端な違いが分かってくると、新たな種類の国家間の軋轢が生まれるのではと予想される。
EU連合の将来に大きな不安を抱かせるし、中国と米国の対立も深まるだろう。
オリンピックのマークになっている五輪の輪のようなグループごとの分裂が進み、5つの輪がバラバラに、独立性を高めて再稼働していくかもしれない。
日本としては、そのへんまで見通した上で、まともな政府と合理的な社会構造を一刻も早く構築し直さないと、アジアの中でも非常に惨めな国に一気に落ちていくのではないか。
オートメーション機械のように次から次へと嘘をつき、法を破り続ける国政組織や、まともなIT事務作業もできないような官僚支配組織を緊急手術することが必要だ。


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