IOC利権独占路線での五輪の末路が東京20202021/04/08 15:56

2020年3月、ギリシャで点火された東京五輪用の聖火。トーチの「火種」は古い映画フィルムだった?

誤解だらけのオリンピック史

今年、1年延期された東京五輪が開催されるかどうか極めて怪しい中、異様な聖火リレーが始まった。
森喜朗の「(沿道の密を避けるためには)有名人は田圃を走ったらいい」発言あたりからすでに「何のためにやるんだ?」という当然の疑問が上がっていたが、丸山達也島根県知事の「県内での聖火リレー中止要請もありえる」発言、さらには大音量で音楽を流し、車上でDJ風の男が踊り、沿道の観衆に向けて大声で叫ぶ異様な光景がネットで広まって、SNSでは広告コンボイを出しているスポンサー企業の製品購入ボイコットを呼びかける書き込みまで現れた。

この救いがたい末期症状を見て、「今のオリンピックは商業主義に堕してしまって本来の意義が薄れている」「商業五輪は1984年のロサンゼルス五輪が始まりだ」という声をよく聞くが、どちらも誤解が多く含まれている。

森喜朗発言騒動のおかげで、我々世代が「近代オリンピックの父」として教えられたクーベルタンが、実は「オリンピック競技は男性によって保有されるべきだ」「男性の参加しているすべてのフィールド競技への女性の参加を禁止する」といった発言をするゴリゴリの性差別主義者だったことや、聖火リレーは五輪を政治利用したいナチスの発明で1936年のベルリン五輪から始まっていることなどを改めて知ることになった。
このように、オリンピックの歴史は正しく教えられず、歪められ、美化されて我々庶民に刷り込まれてきたが、「1984年ロス五輪が商業主義五輪の始まり」という悪者イメージの喧伝も間違いである。
ネット上で様々な情報、記録を集めていけば分かるが、今回はそれを分かりやすくまとめてみようと思う。

開催都市立候補がなかった時代

多くの人が忘れている、あるいは知らずにいるが、そもそも、あのとき開催都市に立候補したのはロサンゼルスだけだった。
それまでの五輪を振り返ると、

1968年メキシコシティー大会:黒人隔離政策を続ける南アフリカに抗議してアフリカ諸国がボイコットを表明。旧ソ連など東欧勢も同調して南アは不参加に。大会開催直前にソ連は民主化を進めるチェコスロバキアに侵攻。ようやく開催された大会では、陸上男子200mで優勝したトミー・スミスと3位のジョン・カルロスの2人が表彰台で黒い手袋をして片手を突き上げてアメリカの黒人差別に抗議して物議を醸す。

1972年ミュンヘン大会:大会終盤にさしかかる11日目にパレスチナの過激組織が選手村のイスラエル選手団を襲撃。西ドイツ(当時)の政府が射殺命令を下したSWATと銃撃戦の末、選手団、犯人合わせて14人が死亡するという五輪史上最悪の事件が勃発。

1976年モントリオール大会:南アフリカの人種差別政策を巡る問題が再発。中国は台湾参加に抗議してボイコット。当初3億2000万ドルの予算が15億ドルに膨れあがり、大会は10億ドルの大赤字を計上。これが尾を引いて、カナダはその後長いこと財政悪化に苦しんだ。

モントリオール五輪と同じ1976年に開かれることになっていたアメリカ・デンバーの冬季大会は、市民から環境破壊や経費負担への懸念・批判が凄まじく、1972年10月に実施された住民投票で大会開催が返上されるに至った。(代わりにオーストリアのインスブルックで開催された)

……こうした問題山積の大会が続き、もはや世界のどの都市もオリンピックなど怖くてできない、と考えるようになっていた。
もはや五輪の歴史もこれまでか、という状況で、ロサンゼルスだけが「じゃあ、うちがやろうか」と申し出たのだ。
しかもロサンゼルス市が立候補したというよりは、名乗りを上げたのは南カリフォルニア・オリンピック委員会(SCCOG)という民間の任意団体だった。
同委員会はIOCに対して、「我々が五輪のために完全に民間の組織委員会を設立し、税金を一切投入せず、民間資本だけで独自に大会を組織・運営するという条件を飲むなら引き受ける」と迫った。
王族や元アスリートなど、セレブの集まりみたいなIOCはそれを聞いてビックリ仰天。そんな事態はまさに「想定外」で、とんでもない、と拒否しようとしたが、双方が立てた弁護士団が揉めに揉めた挙げ句、渋々その条件を呑んだ。他に候補地がない以上、拒否すればオリンピックは開けないわけで、条件提示交渉では最初からロス側が優位に立っていた。

徹底した節約と競争原理を働かせた金集め

開催を引き受けた南カリフォルニアオリンピック委員会は、民間「企業」としてロス・オリンピック組織委員会(LAOCC)を設立した。
その組織委員長は一般公募した。条件は「①40歳から55歳までの年齢で、②南カリフォルニアに住み、③自分で事業を始めた経験を持ち、④スポーツが好きで、⑤経済的に独立しており、⑥国際情勢に通じている」という6つ。
応募してきた数百人の中から、コンピュータが選び出したのはピーター・ユベロスという当時42歳の旅行代理店社長だった。
ユベロスはポケットマネーから100ドルを出して口座を開き、小さなオフィスを借り、電話1つに相棒1人で立ち上げた会社を北米第2位の規模にまで育て上げた。その手腕と経歴が評価されての抜擢だった。
組織委員会委員長になったユベロスは、すぐに自分の会社を売却し、大会運営準備に専念した。
基本方針は徹底的な節約と金集め
無駄な金は一切使わない。既存の施設を徹底的に利用する。企業から金を集めまくる。
金集めの面では、マーケティング部長として採用したジョエル・ルーペンスタインが大いに手腕を発揮したという。
メイン会場は1932年のロス五輪当時の競技場を改修。選手村は大学(UCLA)の寮を活用。組織委員会事務所もUCLAのキャンパス内に間借りし、事務局職員は大会直前になっても46人だけ。運営会議は同大学の教室で行い、役員らもマイカー通勤。
大赤字となったモントリオール五輪は、628社のスポンサー企業がついたが、そこからの収入総額は700万ドルにすぎなかった。それなら、大金を出せる企業に絞ったほうがいいと考えた結果、「1業種1社」に限定する方法を考案。これによって、清涼飲料水部門ではコカコーラとペプシがスポンサー契約を争い、競り勝ったコカコーラの契約金は1260万ドルにまで上がり、コカコーラ一社でモントリオール大会の628社分を軽く上回る協賛金を得ることができた。
テレビ放映権料も「放送権料2億ドル以上、プラス放送設備費7500万ドルを前払い」という、それまでの常識をはるかに超えた金額を提示して3大ネットワーク(ABC、NBC、CBS)などに入札制で競わせた。結果ABCが2億2500万ドルの放送権料+7500万ドルの放送設備費で競り勝った。これらの契約金は前払いされたので、ギリギリまで銀行に寝かせて利息を稼いだ。
聖火リレーも3mを1ドルで売って、誰でも金を払えば走れるようにした。これにはさすがにIOC側が「聖火の冒瀆だ」と抵抗したが、押しきって聖火リレーだけで1090万ドルもの収益を生んだ。
その結果、大会は2億1500万ドルの黒字を計上。その黒字のうち60%が米国オリンピック委員会に、40%が南カリフォルニアに寄付され、スポーツ振興にあてられた。

ロス五輪方式をIOCが盗んだ

ロス五輪の成功を見て、ああ、こうやればオリンピックは儲かるのかと知ったIOCは、以後、あらゆる利権を独占するようになった。
先頭を切ってIOCの体質を変えていったのがファン・アントニオ・サマランチ IOC第7代会長だった。
それまでのIOCは、貴族、王族、元アスリートなどのセレブが集まるサロン的な性格が強く、政治やビジネスに長けた人材は少なかったが、サラマンチはロス大会の手法を丸ごとIOC利権として組み入れ、オリンピックの商業化を加速させた
例えばテレビの放映権料については、ロス五輪のときにIOCがロス・オリンピック組織委員会(LAOCC)と結んだ契約では、組織委員会が3分の2、IOCが3分の1を得るという内容だったが、ユベロスの組織委員会側は「放送設備費の7500万ドルは放送権料ではない」として、2億2500万ドルの3分の1だけをIOC側に支払った。
これに腹を立てたIOCは、以後、「IOCの署名がない契約は一切認めない」として、オリンピックに関わるすべての権益をIOCの完全管理下に置いた。
結果、ロス五輪以降の五輪では、開催地側はIOCに運営に関わるすべての権益を握られ、交渉もできなくなっていった。
1988年のカルガリー冬季大会とソウル夏季大会からは、テレビ放映権はサラマンチ会長率いるIOCが開催地大会組織委員会に代わり契約主体になった。
オリンピックの放映権料の大半はアメリカNBCが支払っている。残りを欧州放送連合(EBU)、日本ではNHKと日本民間放送連盟加盟各社で構成されるジャパンコンソーシアム(JC)が支払っているが、日本の場合、IOCが日本向けの放映権販売を電通に委託していて、JCは電通から放映権を購入しているという。
この構図からも、日本のテレビ局がオリンピックに対してマイナスイメージとなるような報道はしにくくなっていることがよく分かる。
例えば、今回の東京2020の聖火リレーでは、聖火ランナーの前方で騒音をまき散らして進むスポンサー企業の広告コンボイ(トラック集団)に批判が集まったが、その映像を流したテレビ局は皆無である。そればかりか、東京新聞の記者がスマホで撮影してYouTubeにUPした動画も、東京新聞が、
IOCのルールに則り、動画は28日夕方までに削除します。このルールは「新聞メディアが撮影した動画を公開できるのは走行後72時間以内」というもので、2月に報道陣に伝えられました。今回の件で抗議や圧力があって削除するものではありません。
とのコメントと共に削除してしまった。
それに対しては江川紹子氏が「聖火リレー報道規制IOC「ルール」に法的根拠はあるのか」と題して疑問を呈している。
この記事の中で江川氏からインタビューを受けた曽我部真裕・京都大教授の「一般人やフリーランスにIOCのコントロールは効かないが、報道機関はコントロールができるから、でしょう」という言葉を、我々一般庶民はしっかり噛みしめる必要があるだろう。

放映権だけでなく、一業種一企業に絞ったスポンサー企業契約も、IOCが権利を統括しているので、開催地の組織委員会が自由に采配できるわけではない。
例えば、我々1964年の東京オリンピックを生で見ていた世代には、シンプルなデザインながら重厚な聖火台の印象が強く残っているが、あの聖火台は埼玉県川口市の鋳物師によって作られた。町工場の職人が腕をふるって素晴らしい五輪遺産を作った物語を日本人は世界に誇れたのだが、今回、あの聖火台は撤去されてしまっている。新しく聖火台をどこかで作っているのかどうか分からないが、その聖火台を製作した工場がオリンピックのスポンサー企業になっていなかった場合、自分たちが聖火台を作ったのだということを公表することができないらしい。中小企業や個人営業の職人さんが五輪開催にどれだけ腕をふるっても、それを認めてもらえない。そんなオリンピックにどんな夢や希望を託せるというのだろう。

IOC利権独占路線での五輪の末路が東京2020

消滅寸前だったオリンピックを救ったのは1984年のロス五輪であり、ピーター・ユベロス組織委員長やジョエル・ルーペンスタイン マーケティング部長らが実現した革新的運営モデルの成功だった。
それを見て、それまでは貴族的なサロン体質が色濃く残っていたIOCを超国家的独占企業に作り替え、世界のスポーツ界を支配したのがサラマンチ会長、ということだろう。
ロス五輪のようにやればオリンピックは儲かる、と分かった後、オリンピック開催地に立候補する都市は増えた。
1996年の開催地には、アトランタ(アメリカ)、アテネ(ギリシャ)、トロント(カナダ)、メルボルン(オーストラリア)、マンチェスター(イギリス)、ベオグラード(ユーゴ)の6都市が、2000年の開催地にはシドニー(オーストリア)、北京(中華人民共和国)、マンチェスター(イギリス)、ベルリン(ドイツ)、イスタンブール(トルコ)の5都市が最終的に立候補した。まさに「ロス以前、ロス以後」でガラッと変わった。
しかし、IOC委員に対して金で票を買う動きも出てきて、2002年のソルトレークシティ冬季大会では、招致をめぐって賄賂が飛び交い、多くのIOC委員が追放される事件にもなった。
今回の東京2020でも、同じように「賄賂で票を買った」疑惑が出ているのは周知の通りだ。

ここまで見てくるとはっきり分かる。東京2020は、手本としなければいけないロス五輪の成功に何も学ばないどころか、IOCが歪めた商業オリンピック路線の悪い部分だけを増殖させた……ということになるだろう。

最後に、1984ロス五輪と2020東京五輪の比較を簡単にまとめてみよう。

候補地立候補
ロス1984:他に立候補する都市はなかった。立候補したのは市ではなく民間団体。ロサンゼルス市議会は、税金を一切投入しないことを決議。
東京2020:2011年の東日本大震災、原発爆発直後、2016年開催地招致にすでに一度落選していた東京が、再立候補を表明。石原慎太郎都知事はすでに乗り気でなく、次期都知事選にも出ないつもりだったが、森喜朗に「それでは息子の伸晃の立場がなくなるぞ」と迫られて「その代わりに伸晃をよろしく」という経緯で……。

IOCに対しての姿勢
ロス1984:「完全に民間の組織委員会を設立し、税金を一切投入せず、民間資本だけで独自に大会を組織・運営するという条件を飲むなら引き受ける」と交渉し合意させる。
東京2020:電通が2013年、東京五輪招致委員会の口座に約6億7000万円を寄付として入金した銀行記録をロイターが伝える。さらに、東京五輪招致委員会はシンガポールのコンサルタント会社、ブラックタイディングス社への計2億円超を含め、海外に送金した総額が11億円超に上ると報じられる。招致委員会は、森喜朗元首相が代表理事・会長を務める非営利団体「一般財団法人嘉納治五郎記念国際スポーツ研究・交流センター」にも約1億4500万円を支払っているが、同団体はすでに解散している。
フランス検察は、東京五輪の招致をめぐる疑惑の贈賄側としてJOC竹田恒和前会長(招致委理事長)を捜査対象にする。武田氏はJOC、IOC役職を辞任。

五輪組織委員会
ロス1984:委員長はピーター・ユベロス(就任時42歳)。一般公募。事務所は大学(UCLA)構内に間借り。職員数は大会直前の最大時で46人。会議は大学の教室で行い、役員も含めて職員は全員マイカー通勤。
東京2020:委員長は森喜朗(就任時76歳)。下村博文五輪担当相と竹田恒和JOC会長、東京都の秋山俊行副知事が都内で3者会談を行い要請を決め、森元首相が受諾。事務所は虎ノ門ヒルズなど数か所。虎ノ門ヒルズの8階(フロア面積は982坪、3,246.3㎡)の1フロアを丸々借りている家賃だけで月に4,300万円。2016年時点での事務所家賃総額は月額6000万円と報じられた(サンデー毎日 2016年11月6日号)。職員数は2021年4月1日時点で3929人。大会時には当初計画通り8000人規模となる見通し(時事com)。

メイン会場と選手村
ロス1984:メイン会場は1932年のロス五輪で使用した競技場を改修。選手村はUCLA学生寮を活用。
東京2020:メイン会場は1964年の東京五輪で使用した国立競技場を壊して新築。一度決まったザハ案が白紙に戻るなどゴタゴタ続き。選手村は晴海の都有地18ヘクタールに14~18階建ての宿泊棟21、約3900戸を新築。大会後は宿泊棟を改修し、新設する50階建ての超高層2棟とともに約5600戸を分譲・賃貸住宅として供給する予定だったが、現在は大会が延期された上に開催そのものが危ぶまれており、住宅として購入契約した人たちとのトラブル続出。ゴーストタウンのようになっているが、コロナ感染者隔離施設として利用する案はまったく無視され続けている。

収支
ロス1984:支出 5億3155万ドル。収入 7億4656万ドルで、2億1500万ドルの黒字。
東京2020:支出 組織委による昨年末の発表(バージョン5)では1兆6440億円だが、最終的には3兆円を下らないのではないかとの予測も。


東京五輪をここまで惨めで情けないものに追い込んだのは決してコロナだけではない。歴史に学ばず、利権まみれ、不正だらけの手法を増長させてきた者たちの罪である。
東京五輪が開催されようとされまいと、これまでの悪行と腐敗した精神を根本的に反省し、日本が今からでも世界のスポーツ界や国家・宗教を超えた平和運動のためにできることは何かという困難な課題に真摯に向き合う覚悟を持たない限り、東京2020は永遠に汚点としてだけ語り継がれることになるだろう。
(主な参考文献)
オリンピックにおけるビジネスモデルの検証──商業主義の功罪(永田 靖 広島経済大学経済学部准教授)
「オリンピックとスポーツ放送権ビジネスと国際社会」(大野俊貴)
ヴァーチャル大学「まっちゃま」
オリンピック・パラリンピックのレガシー(笹川財団)
聖火リレー報道規制IOC「ルール」に法的根拠はあるのか(江川紹子 2021/04/03)
東京五輪、やれなさそうでもやろうとしている スポーツ評論家・玉木さんが語る政治との関係 (京都新聞社 2021/01/21)
東京オリンピック・パラリンピック 招致からこれまで【経緯】(NHK 2020/04/20)
東京五輪・パラ組織委職員3929人 大会時は8000人規模へ(時事.COM 2021/04/01)
森氏が組織委員会会長に就任 正式に受諾(産経ニュース 2014/01/14)



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菅正剛氏スキャンダルで浮かび上がった「電波利権」とは何か2021/02/27 22:20

テレビが言えない地デジの正体(2009年刊)
 菅首相の長男・菅正剛氏が総務省幹部らを接待していたというスキャンダルで、メディアは連日騒いでいる。
 しかし、そもそもなぜそういうことが起きるのかという「電波利権」の構造について解説してはくれない。テレビ局や新聞社にとって、いちばん公にしたくないことだからだ。
 電波利権とはどういうものなのか?
 2009年に上梓した『テレビがいえない地デジの正体』という本(ベスト新書)を読み返してみた。
 元原稿がファイルとして残っていないのだが、下書き段階のものがあった。出版されたときの文章はかなり変わっているし、データ(数字)も十数年前のものになっているので、ポイントをおさらいしながらまとめてみる。

田中角栄と電波利権の始まり

 地上波(UHFやVHF電波)放送は、電波が一定範囲しか届かない、あるいは、隣接する放送局は混信を避けるために十分に間隔をあけた帯域の電波を使うと決められている「不便さ」が、むしろ特別な権益を生み出す。特定地域の視聴者を簡単に「囲い込む」手段になるからだ。
 これにより、地方局は地元企業のテレビ広告を一手に独占できるだけでなく、ローカルニュース送信によって、情報を意のままにコントロールすることもできる。
 テレビ創生期、各地の有力者たちは、こぞってテレビ局を開設したがった。一度、放送免許を得てしまえば、半永久的に、莫大な権益を持つことになるからだ。
 地方テレビ局の誕生には、田中角栄が大きく関係している。
 田中は1957年、39歳の若さで岸内閣の郵政大臣に就任した。
 このとき、日本のテレビ局は、NHKが11局。民放は日本テレビ、ラジオ東京(TBS)、北海道放送、中部日本放送、大阪テレビの5局しかなかった。他にフジテレビとNET(現テレビ朝日)に予備免許が下りていたが、放送はまだ始まっていなかった。
 こんな状況で郵政大臣に就任した田中は、各県ごとに利権を一本化し、一気に34の地方局に放送免許を出した
 一旦開局すれば、テレビというメディアは巨大な利権を生む。かくして、政界と放送局は当初から密接な関係を保ってきた。錦の御旗のように使われる「報道の自由」というスローガンだが、テレビ放送においては、スタート時点からすでに危ういものだったのだ。なにせ、お上から免許が下りないと放送事業は始められないのだから。
 今では考えられないが、地方局のニュースでは、地元出身の政治家が「お国入り」するたびに映像付きで紹介した。これほど強力な選挙運動はない。
 一時期、田中は選挙区のある新潟放送で、「国政報告」の形を取った30分のテレビ番組を2つも持っていた。これに類したことは、田中だけでなく、全国で普通に行われていた。

4大ネットワークはこうしてできた

 現在の4大ネットワーク(JNN、NNN、FNN、ANN)の編成にも政治が大きく関与している。
 1972年、首相になった田中角栄は、全国のテレビ局を大胆に再編成することに乗り出した。これは、無視できない巨大メディアに成長したテレビを傘下におさめたいという大手新聞社の戦略に応えるものだった。
 1973年12月、朝日、読売、毎日の3大新聞社が首脳会談を行い、テレビ局ネットワークと新聞資本を再編成・統一することで合意した。これにより、東京放送(TBS)の新聞資本は毎日新聞社のみに。それまで東京放送(TBS)の準キー局だった大阪の朝日放送は朝日新聞社系列下に。その代わり、毎日放送(MBS)がTBS系列(JNN)に。毎日放送とネットワーク提携していたNET(日本教育テレビ。現テレビ朝日)は朝日放送のネット(ANN)に……といった大幅な再編成が成立した。
 現テレビ朝日の前身であるNETは、設立した1957年時点では、日本経済新聞社、東映、旺文社などが中心株主で、免許交付の条件は「教育番組を50%以上、教養番組を30%以上放送する」というものだったが、1973年には「総合局」の免許が交付され、朝日新聞社が大幅に株式を買い増しして、事実上「朝日系列」に組み入れることに成功した。
 新聞社とテレビ局が完全に系列化することは、ニュース配信時などには情報をすばやく共有でき、取材も連携が取れるといったメリットもあるが、複数の視点による報道、報道が政治権力から独立するという観点からはデメリット、危険性もはらんでいる。
 テレビの不正を新聞社が暴く、あるいはその逆のことができにくい
 放送免許という首根っこを押さえられている放送局が追及しづらい政府のスキャンダルを、新聞社が先陣を切って報道するということもしづらくなる。
 地デジ化を巡る報道などはその端的な例だった。テレビ局の利権に直接関わる問題だけに、新聞も大きく扱わないし、扱ったとしても、問題の核心には迫らず、表面的な報道に終始する。
 新聞社とテレビ局の完全系列化は、報道の基本精神を脅かす危険なものだったと言えるだろう。

携帯電話料金がテレビ局を支えている

 放送局や携帯電話会社にとって、特定の電波帯域を使える権利は大変な資産であり、莫大な利権が発生する。
 では、一旦電波帯を割り当てられた放送局にとって、電波は「ただ」なのだろうか?
 日本では、1993年5月までは実質「ただ」だった。
 1993年5月からは、「電波利用料」というものが導入され、すべての「無線局」は、電波を利用するための利用料金を支払わなければならなくなった。
 この「無線局」というのは、放送局も入れば、携帯電話の利用者(携帯電話端末)も該当する。携帯電話の電波利用料は1台あたり年間140円(当初は540円。その後420円になり、2008年10月より250円、現在は140円)。携帯電話会社が利用料金に組み入れて徴収し、まとめて支払っている。
(2017年度に携帯電話事業者が支払った電波利用料の総額はNTTドコモが167億円、KDDIが114億円、ソフトバンクが150億円だった)。
   一方、テレビ局が使っている電波帯域は非常に広いが、2005年度以前には、年額わずか2万3800円だった。これに対して、携帯電話は当初一律1台540円で、個人で使う携帯電話機1台とテレビ局の電波使用料が44倍しか違わない。つまり、テレビ局の電波使用料が携帯電話機利用者44人分でしかないという、とんでもない料金制度になっていた。
 2005年度からは、使用する電波の帯域幅や地域の人口密度、出力などを考慮した算出法になったが、それでも全国のテレビ・ラジオ局が支払っている電波利用料は携帯電話事業者が支払っている電波利用料に比べれば極端に安い。
 2015年の電波使用料内訳を見ると、携帯電話キャリアのNTTドコモ 201億円、KDDI 131億円、ソフトバンク 165億円に対して、公共放送のNHKが約21億円、日本テレビ系列は約5億円、TBS系・フジテレビ系、テレビ朝日系、テレビ東京系は約4億円で、テレビ局が支払った電波利用料は利益に対して1%未満という微々たるものだった(Wikiより)。

電波利用料がどう使われているのかも不透明

 電波利用料は、「総合無線局監理システムや電波監視システムの整備・運用、周波数逼迫対策のための技術試験事務、携帯電話の過疎地での基地局維持・設置」などに使われることになっているが、2001年度からは地デジ化のために巨額が使われた。テレビ局のことを、なぜ携帯電話利用者が負担しなければいけないのかという疑問の声があったが、結局は押し切られた。
 ついでに言えば、電波利用料の一部は、総務省の出先機関で、美術館のチケット代や野球のボール代など、職員のレクリエーション費にも使われていた。2008年5月、民主党の調査で分かったものだが、民主党の指摘を受けて調査した総務省の発表によれば、計11ある地方総合通信局のうち6つの通信局で、チケット代、ボール代、ボーリングのプレー代などが支出されていたという。民主党の調査では、他にもラジコン購入費や職員のレクリエーションに使った貸し切りバス費用などもあるという。
 これに対して、増田寛也総務相(当時)は、「法律上書いてある」ことで、法的には問題がないとの考えを強調した。

英国BBCを蹴ってグリーンチャンネルを入れた総務省

 BSの電波帯再編における利権争奪戦にまつわる話をさらにまとめると、2009年、BSのアナログハイビジョン放送(NHKが2チャンネル、WOWOWが1チャンネル持っていた)を廃止して、空いた帯域にデジタル放送を入れるという再編時、フルハイビジョンなら6チャンネル分、標準画質なら24チャンネル分が空くことになった。それに加えて新規にBS19という「空き地」へ、18企業・団体から合計22チャンネル分の応募があったが、総務省は英国BBCや米国ディズニー社を落として、スターチャンネル、アニマックス、グリーンチャンネル、Jスポーツなどを「合格」とした
 グリーンチャンネルは「財団法人競馬・農林水産情報衛星通信機構」というところが運営しているが、これは農水省、総務省共同管轄委託放送事業者。日本中央競馬会の関連法人でもある。
 グリーンチャンネルはすでにスカパー!で放送をしていたが、このBS格上げによって、一気に価値の高い「BS委託放送事業者」になった。
 その一方で、英国BBCが「家族層向けのドキュメンタリーやドラマなど娯楽番組の有料チャンネル放送をしたい」という申請は蹴ったのだ。
 これによってどれだけの日本国民が良質の番組を見る機会を失ったことか! ああ、BBC!! 『モンティパイソン』や『グレートブリテン』見たかったよ!! BBC制作のドキュメンタリーが東京五輪問題をどう扱ったのか見たかったよ!!

 今回話題になった菅正剛氏関連のスキャンダルでは、東北新社傘下の「囲碁将棋チャンネル」のBS入りに疑惑の目が向けられたが、こうした不透明な決定は今に始まったことではないのだ。

地上波はローカル放送にして全国ネット番組はBSやネット経由で流せ

 放送事業者選定の不公正感もひどいが、電波帯域の無駄使いも目に余る。
 現在、BSでは広帯域を使う4K放送が始まっているが、内容をしっかり見てほしい。通販番組やら大昔のドラマの再放送(当然画質は粗い)を平気で流している。
 そもそも4K放送など必要なのか? NHKの朝ドラなどはハイビジョン画質と4K放送を同時に流しているので、BSの4Kチャンネル対応チューナーを内蔵したテレビがあるなら見比べてみてほしい。画質の差など分からないし、目を凝らして多少の差が分かったとしても、それがなんだ、という話だ。大切なのは番組内容の質だろうが。
 今回、菅正剛氏が関わる接待スキャンダルで注目された「囲碁将棋チャンネル」は、かつての標準画質のままの番組を流しているので、最後に余ったスロットに割り当てられたのはある意味当然なのだが、それだってもっと違う活用法がある。
  BSのハイビジョン画質1チャンネル分の帯域は、昔の標準画質なら3チャンネル分送信できるのだから、4対3画面時代の再放送をしているのはもったいない。かつての標準画質番組を再放送する専用の狭い帯域のチャンネルとして設けてくれたほうが「囲碁将棋チャンネル」よりは多くの視聴者が喜ぶだろう。囲碁将棋番組はネットでのオンデマンド配信に向いている内容であり、BSでリアルタイム放送する意味はない。

 長くなってきたのでそろそろまとめたい。

 この拙著で私が主張したかったのは、
  • テレビ放送をデジタル放送に移行するのはいいとして、なぜ「地上波」でやる必要があるのか。BSやケーブルテレビ、インターネット回線を使えば全国どこでも同じ数のテレビ局が見られるのに、わざわざ「地上波」にして地域格差をつけるのは利権保守以外の目的は考えられない。
  • 電波は公共財なのだから、裏で変な取り引きをせず、入札や電波利用料をすべて公開して、視聴者の利益を守れ
 ……ということだ。
 10年以上経っても、何にも変わっていない。

 7万円の接待で何を食ったかなんてどうでもいい。総務省とメディアのズブズブ関係によって、我々はもっと大きな損失を被っているのだ。

オマケ:顛末記

 この本は、校了して、印刷所で印刷が始まる直前の部数決定会議で、出版社の社長が突然「なんでこんなくだらない本を出すことになったんだ?」と激怒し、いまさら出版停止にはできないならと、部数を極端に減らした。2000だったか3000だったか忘れたが、とにかく当時の新書の刷り部数としてはありえないような数。書店にまともに並ぶのも難しい数で、まるで「売れては困る」というような異様な決定だった。
 さらには、担当編集者は出版直後に編集部を外されて異動になり、その後、退職してしまった。
 私のせいで熱心な若手編集者の人生まで狂わせてしまい、その後は本を出版することがすごく怖くなったものだ。
 担当編集者は、「何か圧力があったとは思いません。単純にこんなものは売れない、という言われかたでした」と説明していた。
 そうかもしれない。内容を知った政府筋から社長に圧力がかかった、などということはないだろう。単純に「なんでこんな売れそうもない本を出すんだ」ということだったのだと思う。

 10年以上経っても、人々が「与えられたもの」だけを受け入れ、消費していくという社会風潮は変わっていないわけで、電波利権の闇をどうにかしよう、などという本よりも、ゲームの攻略本や有名人のゴシップとか、金儲けの本とか、健康法の本とか、韓国・中国憎しみたいな本が売れる。
 ただでさえ本が売れなくなった時代に、物書きはどう生き延びるか……。そういうことも、今はもう深刻に悩んではいない。
 「一人に向かって」。一人が見えなければ「自分に向かって」、やれることをやる、という心境かなあ。



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30人以上も理事がいるのに……2021/02/13 15:28

今回の騒動で、今さらながら「ルールに従った透明性のある人選を」とか言っているので、 公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の定款や運営規程を読んでみた。

第11条 当法人に、評議員3名以上7名以内を置く。
評議員は、理事及び監事を兼務することはできない
(約款第4章 評議員 より)
第23条 当法人に、次の役員を置く。
(1) 理事3名以上35名以内
(2) 監事1名以上3名以内
理事のうち1名を会長とし、会長以外の理事の中から副会長、専務理事、常務理事を置く。

第24条 理事、監事及び会計監査人は、評議員会の決議によって選任する。
2 会長、副会長、専務理事及び常務理事は、理事会の決議によって選定する。
(約款第6章 役員及び会計監査人 より)
川淵三郎氏は評議員なので、現時点では理事にはなれない。理事ではないので、会長にもなれない。
川淵氏を会長にするには、

1)川淵氏が任期途中で評議員を辞任する
2)川淵氏が抜けた評議会が川淵氏を理事に任命する
3)川淵氏が入った理事会が川淵氏を会長に選任する決議をする

……という3段階が少なくとも必要だった。

現在の理事(会長、副会長、専務理事、常務理事を含む)の名簿は⇒こちら
定員枠35人いっぱいいるので、川淵氏を理事に迎え入れるには誰か一人がやめないといけない。それが森喜朗現会長?

ちなみに、常務理事以上の役職理事10人は全員が男性。

今、次期会長候補として名前があがっている橋本聖子氏(国務大臣・東京オリンピック・パラリンピック競技大会担当)、鈴木大地氏(アジア水泳連盟副会長)は理事にはなっていないので、会長にするためにはまず理事にしないといけない。そのためには評議員会の決議が必要。
室伏広治スポーツ庁長官の名前もあがっているようだが、スポーツ庁長官と兼任というのはどうなのか、という意見が出るだろうし、当人は固辞するだろう。
第 2 章 評議員会の招集の手続等
(招集の手続)
第2条 当法人定款第18条第1項に基づき評議員会を招集する場合には、理事会の決議によって、次の事項を定める。
(1) 評議員会の日時及び場所
(2) 評議員会の目的である事項があるときは、当該事項
(3) 評議員会の目的である事項(当該目的である事項が議案となるものを除く。)に係る議案の概要(議案が確定していない場合にあっては、その旨)
(略)
第3条 評議員会を招集するには、会長(前条第2項の場合にあっては、当該評議員)は、評議員会の開催日の5日前までに、評議員に対して、会議の日時、場所、目的である事項を記載した書面又は評議員の承諾を得た電磁的方法により通知をしなければならない。ただし、会長に事故があるときは、副会長が招集する。
第4条 前条の規定にかかわらず、評議員全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく、評議員会を開催することができる
(評議員会運営規程 より)

理事会運営規程にも同じように、
2 前項の規定にかかわらず、理事会は、理事及び監事の全員の同意があるときは、招集の手続を経ないで開催することができる。
という条項がある。

つまり、最短コースを取ると、
1)評議員全員が同意して評議員会を臨時開催し、新理事を迎え入れることを決議する
2)理事及び監事の全員が同意して理事会を臨時開催し、新理事を会長に選任することを決議する
……ということになるのだろう。

しかし、理事が30人以上もいて、会長は理事会が決めることになっているのに、わざわざ後任会長選定のための「検討委員会」設置って、なんなんだろう。
そもそも理事の役割・職務とは具体的にどんなものなのだろうか。30人を超える理事たちは、組織委員会理事として、今までどんな役割を果たしてきたのだろうか。
約款に記されている仕事の一つが「会長、副会長、専務理事及び常務理事は、理事会の決議によって選定する」なのだが、今回の騒動ではほとんどの理事は何も知らされないまま、メディアが「次期会長は川淵三郎氏で調整中」などと報じた。
その川淵氏は「理事、監事及び会計監査人の選任及び解任」という役割を持つ評議会の一員である。
約款には、
(役員及び会計監査人の解任)
第28条 理事又は監事が次の各号の一に該当するときは、評議員会の決議によって解任することができる。
(1) 職務上の義務に違反し、又は職務を怠ったとき
(2) 心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないとき
という条項もある。
本来、理事のトップである会長を解任したり、新理事を迎え入れることを決定できる権限は評議会にあり、評議員の一人である川淵氏は森会長を諫める役割を担っているはずだ。それなのに、森会長からの約款無視の「次を頼む」要求を受け入れたばかりか、評議会を無視して「森さんを相談役にしたい」などとメディアに話してしまうという滅茶苦茶。

この組織は今まで「組織」として機能していたのか? と言われても仕方がないね。


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東京五輪中止発表前に振り返る 「天罰五輪」の不愉快な備忘録2021/01/21 21:19

未だに中止決定発表がない東京五輪2020だが、もはや開催不可能なことは明白だ。こうしている間にも毎日無駄金が垂れ流されている。さっさと中止を発表し、国全体でしっかり反省を始めなければいけないのに、これでは敗戦を認められずに国民の被害を悲惨なものにしていった終戦前と同じだ。

なんでこんなことになってしまったのか?
WEB上には、大手メディアから個人ブログまで含めて、怒りともため息ともとれる「反省」的なまとめが散見される。
NHKのは書き方がゆるくて核心部分が伝わってこないし、Wikiは力作だけれど長すぎて読む気がしないという人もいるだろう。
不愉快なことではあるけれど、過去のネットでの記事を中心に、自分向けの備忘録を作っておこうと思う。

そもそもの責任は石原慎太郎にある

忘れている人も多いのではないかと思うが、そもそも東京にオリンピック誘致を決めたのは石原慎太郎都知事時代の2006年のことだ。
  • 2006年3月8日、東京都議会で2016年のオリンピック開催招致を決議。4月1日、都庁内に招致本部を設置。
  • 2007年には石原慎太郎直轄の都知事部局に「生活文化スポーツ局スポーツ振興部」を新設(初代部長:後に東京都スポーツ振興局長で2020招致委員会理事→東京臨海熱供給社長)。2007年9月11日、閣議で2016年夏季オリンピックを東京都に招致することを了承(Wikiより)。9月13日がIOCへの立候補受付締め切だったが、東京の他にシカゴ(アメリカ)、マドリード(スペイン)、プラハ(チェコ)、リオデジャネイロ(ブラジル)、ドーハ(カタール)、バクー(アゼルバイジャン)の計7都市が立候補した。
  • 2008年6月、IOC理事会での審査で、上記立候補7都市のうち、東京、マドリード、シカゴ、リオデジャネイロの4都市が残った。
  • 2009年10月、IOC総会で投票が行われ、1回目の投票で東京はマドリード(28票)、リオデジャネイロ(26票)、に次ぐ22票で3位。シカゴが落選。続く第2回投票で東京は最下位となり落選。3回目の決選投票でリオに決定した。


2009年12月4日、時事通信の記事より

このときの招致用パンフレットのPDFは、今もJOCのサイトに残っている

ここでやめておけば傷はまだ浅くて済んだのに、石原はすぐに次の2020年開催地への再立候補への執念を見せた。

2011年3月、東日本大震災が発生し、福島第一原発が爆発。全世界に放射能をばらまくという歴史的大事件が起きた。
その最中の3月14日、石原は蓮舫節電啓発担当相(当時)と会談した後に、報道陣に「この津波をうまく利用して(日本人の)我欲を1回洗い落とす必要がある。これはやっぱり天罰だと思う」などと語った。その直後の会見で記者団から「不謹慎ではないか」と指摘されても、「日本に対する天罰ですよ」「いやそれはやっぱり、これをどう受け止めるかという受け止め方の問題だ」と開き直り、発言の撤回を拒否した。
都庁に非難の電話などが殺到し、翌日には「言葉が足らずに被災者の皆様、国民、都民を深く傷つけたことをおわびし、発言を撤回する」と述べたが、この「天罰発言」はしばらくは人々の頭に残った。
石原都知事、「天罰」発言を撤回し謝罪
東京都の石原慎太郎知事は15日に記者会見し、東日本巨大地震に関して「津波をうまく利用して(日本人の)我欲を一回洗い落とす必要がある。これはやっぱり天罰だと思う」と述べた14日の発言について、「言葉が足らずに被災者の皆様、国民、都民を深く傷つけたことをおわびし、発言を撤回する」と述べた。「かつてない困難にある被災者の失意、無念は拝察するにあまりある」とも語った。(日本経済新聞 2011年3月15日

この有名な「石原天罰発言」を正確に再録すると、
「アメリカのアイデンティティーは自由。フランスは自由と博愛と平等。日本はそんなものはない。我欲だよ。物欲、金銭欲」と指摘した上で、「我欲に縛られて政治もポピュリズムでやっている。それを(津波で)一気に押し流す必要がある。積年たまった日本人の心のあかを」と話した。一方で「被災者の方々はかわいそうですよ」とも述べた。(「大震災は天罰」「津波で我欲洗い落とせ」石原都知事 朝日新聞 2011年3月14日)
……ということらしい。
この発言が、被災した人たちへの配慮が足りなすぎるのはあたりまえだが、「天罰」という言葉を、石油文明にどっぷり浸かって、欲望を満たすだけの生き方を変えようとしなかった現代人への警鐘である、という意味で使ったのであれば、確かに「どう受け止めるか」という問題だとは思う。
しかし、あれだけのことがあっても反省しないどころか、ますます謙虚さを失い、増長し、狂った方向に「我欲に縛られてポピュリズムでやっている政治」を暴走させたのは他ならぬ石原自身だった。
そして、「天罰」という言葉だけを捉えて騒いだ後は、石原の傲慢政治を許してしまったメディアや市民もまた、反省すべき点は多いはずだ。

さらに大きな災厄・森喜朗

森喜朗×田原総一朗「石原慎太郎が揺れた都知事選と東京五輪招致の裏側」という現代ビジネスの記事に、五輪招致ドラマのことが非常に興味深く出ている。
森によれば、2016年五輪の招致に負けたとき、石原慎太郎都知事は帰りの飛行機のベッドの中で泣いていたという。
:翌日、話をしたら「オレ、選挙に負けたことがないんだよ。こんな悔しいことはない。オリンピックはもう止めた」と言うわけね。「JOC(日本オリンピック委員会)副会長の水野(正人)がIOC委員と『ハグ(抱擁)をしろ』とか『もっと心を込めて握手しろ』とか言いやがって冗談じゃない。なんでオレが好きでもない男とハグしなきゃいけないんだ」と言って(笑)、非常に機嫌が悪かったんです。(現代ビジネスの記事 2013.12.31より)

さらには、
  • 2011年のJOC創立百周年パーティで、石原が森のところへ行き「JOC副会長の水野(正人)は生意気で不愉快だから辞めさせろ。あいつを辞めさせないとオリンピック招致をやらないよ」と言った。
  • それで森は、「JOCは純粋なアマチュアスポーツ団体なのに、スポーツ用品メーカー(ミズノ)のトップが副会長や専務理事をやっているのはおかしい」と言ってみたが、竹田恒和JOC会長が水野氏を庇うので、竹田に石原と話し合うように伝えた。ところが、今度は竹田会長が石原都知事に怒鳴られて「オマエも辞めろ。でなきゃ、オレは(オリンピック招致を)やらねえよ」と言われた。さらには森にも石原から「水野も竹田も辞めさせろ」という電話があった。
  • そのゴタゴタに、元西武グループ総帥の堤義明氏が仲介役として入って、石原はなんとか東京五輪招致運動を続けることになったが、2011年2月になって、次の都知事選には出ないと言いだした。
  • 森は慌てて、当時自民党幹事長だった石原の長男・石原伸晃の顔が潰れるからなんとか出てくれと懇願。「石原さん、あなたも人の親だろう。あなたが出馬しないと伸晃はどういう立場になると思う。自民党の幹事長が東京都知事選の候補者を擁立できず、その相手が自分の父親だということになったら、これは大変な問題ですよ。息子の将来を考えるなら、もう一度、考え直してほしい」……そう言って出馬を口説いた。
石原さんが「わかった。やりゃ、いいんだろう。その代わり、伸晃のことを頼む」と言うので「わかりました」と答えたんです。二〇一二年の自民党総裁選挙で、わが派(清和会)から会長の町村信孝だけでなく安倍晋三まで出馬したにもかかわらず、「オレはどちらも応援しない」と言って伸晃を支持したのは、そういう理由があったからなんです。(現代ビジネス 森喜朗×田原総一朗「石原慎太郎が揺れた都知事選と東京五輪招致の裏側」 2013.12.31より)


まさにこの直後に東日本大震災~原発爆発~全世界に放射能をばらまく……という事態が起きたのだ。
石原がその渦中で「我欲に縛られて政治もポピュリズムでやっている。それを(津波で)一気に押し流す必要がある」と口にしたのは、自分を取り巻く政治状況をさしていたのではないかとさえ思う。

石原は結局、森らに押しきられる形で都知事選に再出馬し、東京五輪招致を公約の1つに掲げた。4月10日の都知事選で当選。当選直後には五輪招致を口にしている
朝日新聞 2011年4月10日


2011年6月17日、東京都議会の所信表明でも、石原都知事は2020年夏季オリンピックの招致を目指す意向を表明した。
自分が「天罰」と言った災害の問題を無視して、我欲の塊のような政治家たちと談合し、息子可愛さもあって五輪招致を決める──これこそ天に唾を吐く所業ではないのか。

「呪い」ではなく「天罰」

こんな経緯で始まった東京五輪2020が開催不能となったのは、石原流に言えばまさに「天罰」なのではなかろうか。
新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延で開催が危ぶまれていた2020年3月、麻生副総理(当時)が「呪われたオリンピックってね。マスコミの好きそうな言葉でしょう、これ」と発言したことをとらえて、一部のメディアは石原の「天罰」発言のとき同様に「無神経だ」と非難したが、麻生は単に「40年周期でそういうことが起こってきた」という歴史を語ったに過ぎない。これは「呪われた」ではなく、やはり「天罰」なのだ。
IOCのオリンピック憲章は、オリンピックの理念は「スポーツを文化、教育と融合させ、生き方の創造を探求するもの」と定め、その目的を「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てること」だと表明している。
東京五輪は、誘致から今まで、こうした理念とはまったくかけ離れたものに埋め尽くされてきた。これこそスポーツや競技者への冒瀆だ。

忘れてしまわないように、報道記事ダイジェストでざっと振り返ってみる。
2012年7月 石原都政を引き継いだ猪瀬知事はツイッターで「世界一カネのかからない五輪」だと明言。


2014年、新国立競技場建てかえ問題が紛糾。2015年にはザハ案が白紙撤回。(記事画像はFACTA ONLINE 2014年9月号より)


2015年、五輪ロゴマーク盗作疑惑問題で一度決まったロゴを白紙撤回。



ザハ案から隈研吾設計に変更になった後も、聖火台はどこについている? とか、サブトラックがなければ陸上競技場として使えないのでは? といった問題が噴出。五輪後の維持費問題も浮上して暗雲漂うばかり。(記事画像はダイヤモンドオンライン「新国立競技場やっぱり無駄だらけ、五輪後の採算に赤信号」 2017年11月28日より)



↑そもそも開催地決定の経緯に賄賂や不正工作疑惑が持ち上がり、フランスで訴訟も起こされる。(記事画像はREUTERSより



↑挙げ句の果てに……。(記事画像は時事ドットコムより

これだけのデタラメや不正を重ねてきたのだから、「呪い」などではなく、石原慎太郎の言葉を借りれば「まさに天罰」というべきだろう。

この五輪招致がなければ、国も東京都も、今これだけ緊急支出が必要なときに、もっと余裕を持ってコロナ対策などに向き合えた。
海外からの渡航者チェックによるウイルス水際防止作戦があそこまでガバガバゆるゆるになることもなかったかもしれない。

謙虚さを失い、利権政治の沼にどっぷり浸かったままここまで来てしまった日本。

なぜこんなことをいつまでも続けているのか。
この不愉快な備忘録を見ながら、メディアや政治家だけでなく、我々一般市民も大いに反省する必要がある。


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25年間で4000回以上のWEB日記を書いていた2020/10/02 21:39

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煩悩は続くよどこまでも

思うところあって、2002年からAIC(朝日新聞のWEBコラムサイト Asahi Internet Caster)火曜日に連載していたコラム『デジタルストレス(キング)』から拾ったものを中心にして、エッセイ集を5冊まとめた。
すでにAmazonでも販売している

森トンカツ

エッセイ集を作ったことで、過去のWEB日記も見直してみた。
いちばん古いのは1996年で、まだデジカメもなかった時代。インターネット黎明期で、確かアナログ電話回線でピーガーって音を出すモデムで2400bpsとかでつないでいた。それが4800bpsになり、9600bpsになり……。
使っていたパソコンはIBMのPS-V Visionというやつ。メインメモリが8MBで内蔵HDDが170MBだった(GBじゃないよ)。
プロバイダはインターリンクというしょぼい回線のところから始まって、biglobeに移って、その後はAsahi-Net。1996年だと、biglobeに移ったあたりかな。
当然、写真画像なんて入れられなくて、入れるとしても画像ファイルは30KB以下なんてのが常識だった。30KBのちっちゃな粗いJPEGファイルでも、開くのに時間がかかって、プログレッシブJPEGなんて形式もあって……。

この頃は精神的にはものすごく追い込まれていて、日記に書いている内容もやたらと暗い。

それからなんとなく続いて、気がつくと25年も経っている。

以前のWEBページは、文字コードはShift-JISで、フェイスブックにリンクを張ると拾ったテキストが文字化けする。
ヘッダ情報のタイトルにトピックを入れてなかったので、目次を作るのに内容を拾えなくて苦労する。
それを今回、できうる限り直した。
文字コードをShift-JISからutf-8に変換し、ヘッダにはタイトル情報を全部入れていき、スマホで開いてもなんとか読めるように
<meta name="viewport"  content="width=device-width,initial-scale=1.0" />
というおまじないも入れた。

結果、日記の目次ページが4000行を軽く超えるというすごいことになった。つまり、25年間で軽く4000ページ以上のWEB日記を書いてきたことになる。

さらに困ったのは、何年か前にサーバーを移転したとき、画像ファイルの縦横情報が消えてしまったらしくて、多くの縦位置写真が横に表示されてしまったことだ。
ただ、寝てしまうだけならまだしも、縦横比も入れ替わるのでひどいことになる。それを一つ一つ見つけ出してIrfanViewに読み込み、写真を90度回転させて保存し直してサーバーにアップロードし直す……という、気が遠くなる作業をやった。

リンク切れや、今となっては意味のないリンクはなるべく消したが、まだまだいっぱい変なリンクやらミスが残っているはず。

でもまあ、だいぶよくなっただろう。

それにしても4000ページ以上の日記か……。何やってるんだか。
こういうのも煩悩のなせるわざだなあ。
それを自分の死後にも残したいと思って本にする。どこまでも深き煩悩よ。

  1. この世における自分の人生を嘆く⇒煩悩
  2. この世における自分の人生は諦めるが、自分の死後のこの世に思いをはせる⇒煩悩
  3. この世のことはすべて幻想だと割り切り、別の次元の世界に思いをはせる⇒煩悩

そろそろ第3段階の煩悩へと移行していきたい。

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