ノーベル賞は「偉い」のか?2018/10/04 20:52

ノーベル物理学賞発表直前のテレビはこんな感じだった

「教科書を信じない」の波紋

一番重要なのは、何か知りたい、不思議だと思う心を大切にする。教科書に書いてあることを信じない。本当はどうなっているのかという心を大切にする。自分の目でものを見る、そして納得する。そこまであきらめない。

先日、ノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑氏のこの言葉が話題になった。
NHKのニュースでのインタビューでも同じことを言っていた↓


この「教科書を信じない」発言は、かなりのインパクトがあったようで、ネット上にはさまざまな反応コメントが飛び交った

この発言を鵜呑みにするな的な反応をまとめると、
「教科書を信じない」を真に受けて教科書も読まないような馬鹿は論外。「教科書を勉強しなくていい」ではない。教科書は信じておいたほうがいい
……となるだろうか。
でも、この手のコメントをムキになって書き込んでいる輩がいっぱいいる時点で、今の日本はかなりダメなんじゃないかと思う。


小学生向けの教科書副読本「わくわく原子力ランド」 2010年11月、文部科学省発行 中学生向けには「チャレンジ!原子力ワールド」という同様の副読本が配布されていた


これは副読本だが、国が作っていた「教科書」だ。
2011年の原発爆発後にすべて回収されたらしいが、「歴史的資料」として、今でもネット上にはあちこち残されている。「わくわく原子力ランド」で検索すれば簡単に見つけられる。こういうものが、ついこの前まで国が作った教科書副読本として小中学生に与えられていたという「歴史的事実」をしっかり記憶に刻んでおきたい。



国会図書館での検索結果



↑「トンデモ本」と呼んでもいい内容なだけでなく、子供たちにトンデモなことを信じ込ませる、巧妙な誘導に終始していた↓



↑火力発電を悪者に仕立てるために、イラストもこんな風にアレンジされているなど、随所にあからさまな「誘導」「洗脳操作」がある


この「副読本問題」については、福島大学放射線副読本研究会というグループが「放射線と被ばくの問題を考えるための副読本」という興味深いものを出しているので、ついでに紹介しておきたい。

学校で使う「教科書」は、国が「検定」している。その時点で、時の政治権力の意向が入っていると考えるほうが自然なことだろう。

ノーベル賞は「偉い」のか?

毎回嫌になるのが、日本人がノーベル賞をとった、とらないということに焦点を絞って報道しているメディアの低俗さだ。
本庶さんがノーベル医学・生理学賞を受賞したことで、翌日、物理学賞もいけるんじゃないかと、ニュース番組では「物理学賞をとれそうな日本人学者リスト」なるものをデカデカとパネルにして待ち構えていたが、日本人以外が受賞と決まった瞬間「残念でした」とだけ伝えて終わってしまった。受賞した学者はどんな人で、どんな研究成果をあげたのかという肝心な部分にまったく触れないのだから、どうしようもない。

↑とれるか? と騒がれた人たちはとんだ迷惑だったのでは?


本庶さん流に言うなら、そもそも

ノーベル賞ってそんなにすごいのか?
ノーベル賞をとることに価値があるのか?

という疑問を持つべきだろう。
ノーベル賞の中でも、平和賞と文学賞は、「西欧社会が世界をどうみているか、どうあるべきだと考えているか」というメッセージ発信ツールになっているという指摘がかねてからされてきた。
特に平和賞の受賞者に関しては常に議論が巻き起こる。
佐藤栄作、金大中、ヘンリー・キッシンジャー、イツハク・ラビン、シモン・ペレス、ヤーセル・アラファト、アル・ゴア……みんなノーベル平和賞受賞者だ。
バラク・オバマは2009年の大統領就任当初(候補者推薦の締切が就任12日後)に受賞しており、大統領として何かを成し遂げたからではなく「黒人がアメリカ大統領に就任したこと自体に意味がある」という解釈しかできない。

平和賞はスウェーデンではなくノルウェーで授与される。選考を司るノルウェー・ノーベル委員会は、ノルウェーの国会が指名する5人の委員と1人の書記で構成されている。つまり授与主体はノルウェー国家である、といってもいい。
西欧先進国社会を代表してノルウェーが、この人に平和賞を与えることが我々が考える世界平和のメッセージだ、と発信している、といえるだろう。

日本人の頭には「ノーベル賞受賞者=歴史に名を残す=偉人」という刷り込みがあるようだが、それは大間違いだ。
今年は金正恩とドナルド・トランプが平和賞の候補ではないかなどと冗談のような噂が飛び交ったが、実際、2000年には「史上初の南北首脳会談を実現させた」という理由で、当時の金大中大韓民国大統領が平和賞を受賞しているし、さらに遡れば、アドルフ・ヒトラー、ベニート・ムッソリーニ、ヨシフ・スターリンといった名だたる独裁者らが候補にあがっていたことも判明している。(ヒトラーは皮肉を込めて推薦されたというが……)


文学賞に関しても同様だ。
例えば、2006年のノーベル文学賞はトルコのオルハン・パムクが受賞したが、これも西欧世界からイスラム社会へのメッセージだという人たちがいる。
彼の受賞にスウェーデン・アカデミーの、選考過程で政治的状況は考慮していないとの公式発表は 全く信じない。『第二次世界大戦回顧録』で受賞したチャーチルがいい例だが、文学賞であれ政治的状況が強く反映されるのは知られている。たとえ優れた作品 をいくら書いたところで、パムク氏がアルメニア人大量殺害を認めない姿勢ならば、受賞は絶対出来なかっただろう。
トーキング・マイノリティ トルコ初のノーベル文学賞受賞

「トルコは東西の懸け橋、と形容されることが多いが、重要なのはパムク氏がヨーロッパ側に橋を渡ってきた人だということ。彼への受賞には、イスラム教徒が固有文化の障壁を自ら越えて西欧的価値観を共有してほしいという、西欧知識人のメッセージが読み取れる」と池内(恵)氏は見る。
(2006/10/17 読売新聞)


2016年は音楽畑のボブ・ディランが受賞して話題になったが、あれも穿った見方をすれば、トランプを大統領にして、乱暴粗雑低教養を加速させているアメリカに対してのヨーロッパ側からの嫌みかもしれない。

その視点で考えれば、日本国内で何年もの間「村上春樹がノーベル文学賞を取れるか」と騒いでいるのは能天気な勘違いであり、昨年、日本で生まれたがイギリス国籍を取得して「イギリス人」になったカズオ・イシグロが受賞したことも頷ける。
ちなみに、日本の文部科学省は、南部陽一郎氏(2008年、物理学賞。アメリカ国籍)、中村修二氏(2014年、物理学賞。アメリカ国籍)は「ノーベル賞を受賞した日本人」としているが、イギリス国籍のカズオ・イシグロ氏は数に入れていない。

NHK大河ドラマの罪

教科書に出てくる武将だの政治家だのは「歴史上の人物」かもしれないが、ほとんどの場合「偉人」ではない。直接間接を問わず、彼らのせいで死んだり殺されたりした人がどれだけいるか考えてみればよい。
人びとにまともな歴史観をもたせなくさせている元凶がテレビの「歴史ドラマ」、映画、歴史小説の類だ。
今年のNHK大河ドラマは西郷隆盛が主人公。それにあやかったわけでもなかろうが、2019年版の中学道徳教科書にこんな題材が入ることになった。
2019年度版の中学3年生向け教科書「中学道徳3 とびだそう未来へ」(教育出版)に、150年前の戊辰戦争で激しく敵対した薩摩藩の西郷隆盛と庄内藩の菅実秀の戦後の深い交流を紹介したコラム「徳の交わり―西郷(せご)どんと菅(すげ)はん」が掲載されている。敗れた庄内藩に対する西郷の寛大な処分と、西郷の人柄に引かれた菅ら庄内藩士と西郷の交わり、西郷の教えを基にした松ケ岡開墾、菅らによる「南洲翁遺訓」の編さんに触れ、郷土の復興に尽くした先人の姿を通じて、郷土の発展のために寄与することの意義を伝えている。
荘内日報 2018/06/25 西郷隆盛と菅実秀「徳の交わり」 中3生の道徳教科書に


これに対して異を唱えているのが「ワッパ騒動義民顕彰会」。⇒こちらのブログにその内容が詳しく出ている。
複数の資料から検証される西郷、菅の実像を紹介した上で、結論部にはこう記されている。
(菅はん」こと菅実秀が、1890(明治23)年に出した)『南洲翁遺訓』に見られる「徳」は、「君子」つまり支配者、治政者、上司としての在り方や心構えの「徳」であり、民主主義の現代社会における価値とは相いれないのではないかと考えられます。
教科書掲載を機に、地域の歴史を学び地域を知り地域を創るきっかけになれば幸いですが、史実に目を閉ざし情緒的な「美談」が流布してしまうことにならないか懸念しています。
道徳教科書への「徳の交わり~西郷どんと菅はん」掲載についての意見書 結び部分)


今年(2018年)から、道徳が小学校の正式な教科として加わった。中学は来年度からだ。↑これは、その教科書の話である。

3.11後、「わくわく原子力ランド」は回収されたが、教育界全体をみると、歴史的大失敗に学ぶどころか、以前にも増して危ない方向に突き進んでいる。
柴山昌彦文部科学相は2日の就任会見で、教育勅語に関し「同胞を大切にする、国際的協調を重んじるといった基本的な記載内容について現代的にアレンジして教えていこうと検討する動きがあると聞いており、検討に値する」と述べた。
日本経済新聞 2018/10/03


新しい文科相は、教育勅語はその中身よりも、それが歴史の中でどのように使われたかということが問題だという認識がまったくできていないようだ。
今、この国のトップには戦前回帰志向という極めて特殊な思考傾向の人たちが集まって、歴史を作ろうとしている。
一方で、「難しいことはよく分からないけど、私の回りではみんなこう言っている」という人が増えている。
そのレベルに合わせて、メディアが「日本人ノーベル賞受賞者」が出るか出ないかで騒いでいていいのか。
そうではないよ、本当はこうなんだよ、こういう考え方もあるんだよ、と分かりやすく教えてあげるのがメディアの仕事ではないのか。


日本の原発は関空よりも孤立しやすい立地2018/09/08 19:23

美浜原発は海岸沿いの細い道と海を渡る橋の先にある

美浜原発は海を渡る橋の先


関西国際空港↑  ↓美浜原発

颱風チェービーが関西方面に与えた被害は凄まじかった。関空では滑走路が1つ海水に冠水して使えなくなっただけでなく、唯一と言ってもいいアクセスルートである橋にタンカーが衝突して壊れ、3000人以上が孤立した。
橋を渡らないと行けない場所に巨大空港というのはどうなのかと改めて思った人は多いと思うが、これを見てすぐに思い出したのは関西電力管内の原発だ。
橋を渡らないとたどり着けないとか、トンネルがいくつもある一本道しかアクセスルートがないという立地ばかりなのだ。
上に示したのは関西電力美浜原発の立地(Googleマップより)。

この美浜原発をかつて見学に行った人は、社員とのこんなやりとりを覚えているという。
社「非常用電源はこれだけたくさん準備しております」
見「で、非常用電源の燃料は何日分置いてあるんですか?」
社(書類を散々調べて)「1日分です」
見「2日目からどうするのですか?」
社「…………」
見「原発へは崖沿いの道とトンネル、細い橋でつながっていますが、船舶はお持ちですか?」
社「当社は1隻も持っていません」
見「非常時はどうするのですか?」
社「チャーターします」
見「非常時にチャーターできる船が近くにあるんでしょうか?」
社「…………」



大飯原発の立地↑ 



高浜原発の立地↑ 
こんな危なっかしい立地である日本の原発。福島第一・第二原発は例外的に比較的交通の便がいい場所に建っていたが、それでも外からの物資搬入さえままならなかった。バッテリーを運び込むことさえできず、最後は駐車場に停まっていた職員らの自家用車からバッテリーをかき集めて計測機器を動かそうとするという落語のような事態になっていた。
海岸沿いの崖っぷち道路、トンネル、海を渡る橋などを通らなければたどり着けない場所にある原発で事故が起きたとき、どう手当てするのか。お手上げ状態になることは目に見えている。
今の日本は、こういうお粗末な国なのだということを自覚した上で、我々庶民は、最大限の「危機管理」意識を持たないといけない、ってことなのだ。

北海道の地震が冬に起きていたら?

で、チェービーが去ったと思ったら、今度は北海道で最大震度7の地震が発生。北海道内の電力のおよそ半分を発電している苫東厚真火力発電所(厚真町)が大ダメージを受けて発電不能になり、一時は北海道内すべてが停電したという。これが冬だったら、一体何人が凍死していたことか。

北海道で震度7が観察されたのは記録が残っている限り初めてだというが、もはや日本列島は今まで数十年とは違う時間に突入している。地球全体が地殻変動期に入り、異常気象も日常的に起きるようになったと認識すべきだろう。その認識がきちんとできない人たちにこれ以上政治や企業経営を任せていると、本当にとんでもないことになる。

停電すれば原発も風力発電も止まる

北海道電力泊発電所も外部からの電源供給ができなくなり、非常用電源(ディーゼル発電機6台)に切り替わった。泊村の震度はわずか2だったが、北海道全体の送電系統がバランスを失い、一斉停電したからだ。
幸い、その後、砂川火力発電所3号機が再稼働したため、札幌の中心部や旭川の一部で電気が復旧し始めると同時に、水力発電所からの送電も使えることが分かり、泊原発にも電気が供給されるようになって事なきを得た。
泊原発の非常用電源の燃料は何日分あったのだろうか。一部報道では1週間分だというのだが、そんな程度でいいのだろうか。
「泊原発には3系統から外部電源が供給されていますが、北電の中で3つの変電所を分けていただけと思われる。北電全体がダウンしてしまえばバックアップにならないことがわかった。今回の地震で、揺れが小さくても外部電源の喪失が起きることを実証してしまった。『お粗末』と言うしかありません」
(岡村真・高知大名誉教授 地震地質学) 震度2で電源喪失寸前だった北海道・泊原発「経産省と北電の災害対策はお粗末」地震学者 Aera.com


で、この期に及んで「原発を止めているから北海道内で大規模停電が起きたのだ」などととんでもない無知を晒している人たちがいる。
止まっているから大ごとにならなかったのであって、稼働中の原発で外部電源喪失が起きたら、現場での緊張は比較にならないほど高まった。
また、原発反対派の人たちの中にも「だから風力や太陽光を増やすべきだ」と、これまた無知をさらけ出す人たちがいる。
風力発電は風だけで発電しているわけではない。外部電源が途絶えれば方向制御などができなくなり、風力発電そのものを止めるしかなくなる。実際、3.11のときには停電とともに風力発電所の風車はすべて止まり、長期間動かせなかった。
送電網の受給バランスを取るのは電力会社にとってもハイレベルな技術を要することで、不安定な風力や太陽光だけで送電を維持することはできない。火力や水力など、人為的に完全コントロールできる発電リソースが必須なのだ。
こうした基本的な知識もないままにいい加減なことを言う政治家や評論家の罪は深い。

「そんなコト考えたことなかったクイズ」のダメなトコ2018/09/01 12:14

番組放送画面より
「平成生まれ3000万人!そんなコト考えた事なかったクイズ」(朝日放送)というのが8月28日のゴールデンタイムに3時間枠を使って放送され、物議を醸した。
ネットでさんざん取り上げられているので、今さら書くのもアホらしいと思いつつ、「いや、突っ込むのはそこじゃない」というところばかりが批判されている気がするので、モヤモヤを吐き出してみる。

結論を先に言えば、この番組がひどいものになった原因は、
  • 「そんなコト考えたことなかった」という着眼点はいいのに、無理矢理「平成生まれは~」ともっていった制作姿勢がダメだった
  • 制作側にも「そんなこと考えたことないし、考えてもしょうがない。私は言われた仕事をこなすだけ」というスタッフが多かった
  • 企画した上のほう(昭和生まれのPやD)が「それは視聴者には難しすぎるからカット」を連発したので、問題の練り込みは雑に、解説部分は間違いだらけでグダグダになった
……ということだと推察する。
言い換えれば、無気力・無教養・傲慢の合わせ技だ。
以下、具体的に見ていきたい。

この番組の意図と見どころについて、番組紹介サイトにはこう書かれている。
昭和生まれにとっての当たり前は平成生まれに通用するのか?
それを検証するため、昭和生まれの芸能人たちが「平成生まれでもさすがに知っているだろう」ということをクイズで出題していくバラエティ!

で、どんなクイズ(質問)が出されたかというと、
  • (1)牛肉は牛の肉。豚肉は豚の肉。ではトリ肉は何の肉?
  • (2)ご飯に梅干しが乗った弁当を一般的に何と呼ぶ?
  • (3)車はガソリンで動いているが、電車は何で動いている?
  • (4)家庭で使うガスは元々地球上のどこにあるもの?
  • (5)トイレのウンチはどこを通り、どこへたどり着く?
  • (6)雲から降る雨は、そもそもどこの水?
  • (7)夜に輝く月。どうして光ってる?
  • (8)1年に366日ある年を何という?

……というもの。

で、ネットで叩いていた人たちの代表的ないい分をまとめると、
  1. 常識のない人は年齢に関係なくいる。「平成生まれは常識がない」という括りが先にある番組制作意図が許せない
  2. 鶏肉と漢字で書けばいいものをわざと「トリ肉」と表記して「鳥の肉」という答えを誤答だとするのはおかしい
  3. あんな常識問題を間違えるはずがない。台本があるヤラセだ

というのが代表的だった。
1 は至極ごもっとも。「こういう子どもに育てた昭和世代の親こそ恥ずかしい」という声もあった。それもごもっとも。
2 は……どうでもいい。この問題を見たら普通、出題者の意図が分からないはずはないし、「鳥」と答えている子はムキになって「スズメとかニワトリとかツバメとかいっぱいいて、その全般みたいな……」と答えていた。別の子は「焼き鳥屋さんとか行ったらスズメとか出てくるじゃないですか」と言っていた。さらに別の子は「一種類なんですか?」とムキになって反論していた。
ネットにいっぱい出てくる「問題が悪い」の声は、まさにこの子と同じで、ニワトリと答えさせたいならちゃんと「鶏肉」と書くなり、「スーパーやコンビニで売っている唐揚げに使われている肉は」と、限定した問いかたにしない番組制作者のほうがバカだ、というもの。それも分かるけれど、まあ、大した問題じゃない。問題の作り方が雑だな~、で終わり。
多分、この人は番組制作側の思惑通りの答えを出したのだと思う
3 については微妙なところ。見直してみても、台本があって、わざとウケ狙いの答えを書かせていたと思えるシーンは少なかった。反論していた子たちの表情や声のトーンで分かる。

番組制作側のスタッフに教養がない

僕がこの番組を見ていて心底ガックリきたのは、解答席に座っていた若い世代(現役大学生や大学合格歴のある人たち)の解答内容がひどかったことよりも、番組を制作している側の教養のなさと、仕事の雑さだ。

ここで改めて、各問題と番組内で「正しいとされた答え」を見てみる。
  • (1)牛肉は牛の肉。豚肉は豚の肉。ではトリ肉は何の肉? ──A:ニワトリ
  • (2)ご飯に梅干しが乗った弁当を一般的に何と呼ぶ? ──A:日の丸弁当
  • (3)車はガソリンで動いているが、電車は何で動いている? ──A:電気
  • (4)家庭で使う都市ガスは元々地球上のどこにあるもの? ──A:地中
  • (5)トイレのウンチはどこを通り、どこへたどり着く? ──A:下水道を通り下水処理場へ
  • (6)雲から降る雨は、そもそもどこの水? ──A:海
  • (7)夜に輝く月。どうして光ってる? ──A:太陽の光を反射している
  • (8)1年に366日ある年を何という? ──A:閏(うるう)年

これを見て、明らかにおかしいのは「雲から降る雨は、そもそもどこの水?」という問題。「どこの水」という問いかたがおかしいし、答えが「海」なのもおかしい。


言うまでもなく、上空に上がっていく水蒸気の元は海の水だけではない。海は広大だから、その割合は大きいとしても、陸から立ち上るものもある。
そもそもこの問題は「水循環」「物質分解」という、地上のあらゆる生命活動を支えているシステムを理解するために重要な問題であり、「雨は海の水が蒸発してまた戻ってくる」と単純に思い込まれたら困る。
地上で行われる生命活動、生産活動、自然現象などで増えたエントロピーが、生態系や大気の循環、水循環によって最終的には熱に変わり、その熱が水蒸気にのって上空に運ばれ、冷やされて水蒸気(水)だけが雨や雪になって戻ってくる際に、エントロピーが熱として宇宙に捨てられている、という仕組みを理解できていないから、間違ったエコロジー信仰、自然エネルギー信仰、リサイクル神話が生まれる。
世代に関係なく、現代人が最も知らなければならない「雨が降る」仕組みこそが「地球で生きていくことを可能にしているシステム」なのだということをないがしろにして、単純に「雨の元は海の水」などという解説にしてもらっては困る。

↑これは正しい

5の「ウンチの行方」にしても、下水道がなかった時代のトイレはどうだったのか、下水道がない地域で水洗トイレを実現するにはどうすればいいのか、下水処理場で使われるエネルギーはどこから得ているのか、といった重要な話が全然出てこない。
トイレのウンチはみんな下水道に流れていく、その後は処理場でうまく処理してくれているはず……という思考こそが、「そもそもの原理、仕組み、道筋を知ろうとしないダメ頭」ではないのか。

せっかくの派生問題解説の内容がひどかった

3時間枠の番組で「クイズ」の問題数が8つだけだったのは、そこから派生する様々な問題、疑問を解説するコーナーに時間を取っていたからだ。
それ自体はいいのだが、内容がひどかった。
例えば、
「車はガソリンで動いているが、電車は何で動いている?」という問題の答えは「電気」でまあいいだろう。「石炭」と答えた人が多数いたが、これなどは確かにヤラセくさかった。だから、問題によってはヤラセがあったのでは? わざと間違えてウケを狙うタレントがいたのでは? という疑惑は残る。
でも、電気の解説のところで、直流・交流という言葉を敢えて避けていたり、日本の東と西で周波数が違うとか、そういう身近なことは説明しようとしていなかった。「電気はプラスからマイナスに流れます」だけでは、かえって理解が難しい。
また、電車は電気で動くが、その電気はどうやって得られるのかというエネルギー政策の話こそ、現代人が今いちばん知らなければいけないことだが、そういうことはまったく触れない。石炭を燃やす火力発電で得られている電気であれば、「電車は石炭で動く」ともいえるのだから。
なんのために「追加解説」の時間を取っているのか。

「夜に輝く月。どうして光ってる?」という問題では、月が自分で光っているという答えを期待しての出題だということはすぐに分かる。実際、そう答えた子が何人かいた。

ああ、我が母校……

しかし、「あたたかいから」「家の光が集まって光ってる」「白いから」といったすごい答えは、番組制作サイドも想定外の「収穫」だったのではないか。
これにも「構成作家がウケけそうな答えを考えて渡してる」「『恒星』って漢字をちゃんと書ける子が、月を恒星だと思っているわけがない」といったヤラセ説をたくさん見た。
そうだろうか? 「家の光が集まって光ってる」は「地球上の照明が月に反射して光っている」といいたいらしいのだが、文になっていないくらいひどい答えで、構成作家が考えた答えとは思えない。「白いから」「あたたかいから」も、発想の次元が違うというか、いわゆる「ウケ狙い」の答えとは違う種類(想定外のトンデモ)のものだと感じる。
ただし、國學院大學の男性タレント(らしい)の「月にいる微生物が光っている」はウケ狙いだろう。さすがに見抜かれたのか、しっかりスルーされていた。収録時にはいじってみたものの、受け答えや演技が下手すぎて白けたから編集でカットされたのかもしれない。
で、それはそうとして、説明で「月は1か月に1度地球の周りを回る」はいくらなんでも雑すぎる。

いくらなんでもこれはまずいでしょ

ここでも太陽暦と太陰暦の話は出てこなかったし、月の自転周期が約27.3日といった解説はしない。それだと視聴者には難しすぎると思っているのか。

このあまりにも雑すぎる番組構成にこそ、いちばんガックリさせられた。
おそらく……、
  1. 今の若い世代は常識がない、と、昭和世代のプロデューサーあたりが考えてこの番組を企画した。平成も終わってしまうことだし、こんなのはどうだ、というノリで思いついたのかもしれない。かつての「クイズ!年の差なんて」(フジテレビで1988年~1994年に放送)のアイデア元である「おっちゃんVSギャル」(朝日放送で1986年~2000年まで放送)あたりの焼き直し企画として浮上したのだろう
  2. 制作にあたっては、「平成」=常識がない 「昭和」=理屈っぽい といったパターンに組み込める絵作りをすればいいくらいに考えていたが……
  3. それだけだと一方的だから、保険として「昭和世代でも考えたことがなかったそこから先の……」的な部分を付け加えておこうか、と編成会議で決まる
  4. しかし、ごくあたりまえの解説でさえ、上のほうから「それは視聴者には難しすぎるから」とストップがかかり、解説部分はポイントがぼけてしまい、かえって分かりづらくなる
  5. そもそも番組を作ったのは外注の制作会社で、スタッフはむしろ平成生まれの若い世代が多かった
  6. 若いスタッフは、エキストラの仕出しやモデル事務所、タレント養成所などに声を掛けて大学生、大学卒の平成生まれをかき集めるといった「作業」や「手配」はできるが、番組の内容については上から与えられた仕事をこなすだけで、自分の頭で裏どりとか、校閲ができない。そこまでやってはいけないとさえ思っている
  7. かき集められた解答者の中には、ただ目立ちたいだけでわざとボケ解答を書くようなタレント志望のお調子者もいた
  8. 番組を企画した昭和世代のテレビ局正社員は無責任で、きちんと最後まで番組の出来を見ていない
……というようなことではないのかな。
結果、テレビ番組を作る現場の無知・無責任・傲慢の三重構造を見せつけられ、今の日本の劣化を証明したような怖ろしい番組になっていた。
繰り返すが、「そんなこと考えたことない」という視点はよかったのだ。ちゃんと考えるくせをつけようよ、と促す番組になっていれば、評価はガラリと変わっただろう。でも、「そんなこと考えたことない」人は世代に関係なくいる。制作スタッフにも結構いた。
ネットでは「平成生まれをひとくくりにして馬鹿にしたいトリ頭の昭和世代こそ、時代に合わせられない可哀想なやつら」みたいな炎上の仕方だったが、世代の断絶感を無用に煽るだけ、あるいは、昭和世代が築いた不正義・不条理の社会に生きていかなければならないストレスを抱えている若い世代の神経を逆なでしただけの結果になっていてやりきれない。

2000年の上智大学でのテスト


ここまで書いて、昔作った「現代の常識チェックテスト」というのを思い出した。
最初は百合丘時代、近所の母親たちに依頼されて、小学校でエコロジー教室的な講演をしたときに用意したものだが、同じものを、数年後、上智大学(外国語学部英語学科)の非常勤講師を引き受けたとき、最初の授業で教室の学生たちに配ってやらせた。
こんな内容だった。

■現代の「常識」チェックテスト


※まず、現時点での自分の知識、感覚だけで答え、( )に書き込みなさい。次に、少しでも自信がなかった項目については、インターネットや本などの資料で調べ、その結果分かった答えをその右に別の色で書き込みなさい。


 ◆次の命題に、「その通り=○」「それは違う=×」「分からない=△」で答えなさい。

1)洗剤は植物性原料のものが安心である。(  )
2)原子力発電は蒸気でタービンを回し発電する。(  )
3)紙おむつは高級パルプでできている。(  )
4)牛乳パックは再生紙原料としては不向きである。(  )
5)石油はやがて枯渇するから、その前に太陽光発電や風力発電など、非化石燃料で得た電気エネルギーを使う文明に切り替える必要がある。(  )
6)地球が温暖化すると南極の氷が増える。(  )
7)豆腐に「消泡剤」を入れると長持ちする(  )
8)「洗濯用」石鹸と「洗顔用」石鹸では製造方法が違う。(  )
9)味噌汁1杯を台所の流しに捨てると風呂桶7杯分の水で薄めなければ海が汚れる。(  )
10)一般に、合成洗剤を使っている家の生活排水と石鹸を使っている家の生活排水では、合成洗剤を使っている家の生活排水のほうがBOD値は低い。(  )


 ◆次のものを知っていますか? 「ある程度説明できる=○」「単語として見たこと(聞いたこと)がある=△」「今初めて目にする=×」

1)グリセリン脂肪酸エステル (  )
2)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩 (  )
3)ソルビトール(ソルビット)(  )
4)亜硫酸塩 (  )
5)亜硝酸塩 (  )
6)脂肪酸カリウム (  )
7)エデト酸塩(  )
8)MOX燃料 (  )
9)モンサント(  )
10)エントロピー (  )


これは2000年よりも前、つまり「前世紀」に作った問題だ。当時は、こういうテーマに興味を持つ主婦層もいたのだが、今はどうだろう。
まあ、こういう内容だと、地上波テレビでは使えないってことは分かる。……いろんな意味でね。
電力会社やケミカル会社はテレビにとって安定したスポンサーだし、「専門的すぎて一般視聴者には分からない」とはねつけられるからね。

収入の男女格差と日本企業の没落2018/08/30 14:01

Amazonでこんな本↓を買ってみたら、




↑こんなことが書いてあった。
ま~たまた~、極端なデータを得るための操作をしてるんじゃないの? と疑ったが、周囲に訊いてみると「そんなもんです」という答えばかり返ってくる。

アラサー女子:独身ひとり暮らし。病弱な母あり。正社員だがボーナスはなしで、給料は手取り14万円くらい。ということはもろもろ引かれる前は17万円くらいだから、12を掛ければ200万円ちょっとで、まさにこの収入帯。
数年前は、歯科衛生士の資格を取るために上京して学校に通うため、バイトを増やして頑張ってみたが、親が病気になって断念。その後、歯科衛生士は諦めて地元の企業に正社員で就職したが、手取り14万円では預金などできるはずもなく、空いている時間はバイト。

アラフォー女子:母子家庭で息子一人扶養。昼間は企業のパートで基本給14万5000円。休日勤務手当や通勤手当を入れて15万円弱。
そこから健康保険料7920円、介護保険料1256円、厚生年金保険料14640円、雇用保険料、所得税、住民税などもろもろ引かれる合計が約3万円。手取り12万円弱。当然やっていけないので、昼の仕事の後はそのまま夜の仕事に。

こういう人たちがしっかり保険料や年金や税金を納めていて、破綻寸前(実質、すでに破綻しているが)の年金、医療保険、介護保険制度をなんとか支えている。
その年金や保険を使って介護施設に入っている認知症老人たちは「自分たちが頑張って働いてきたおかげで今の日本の繁栄があるんだから、何もやましいことはない」と胸を張るが、「今の日本」は繁栄どころか、とっくに経済三等国に成り下がってしまっている。



30年前、この「時価総額ランキング上位50社」のうち、日本企業は32社で断トツトップだった。2位がアメリカで15社。中国企業は1社もなかったし、あのとき、30年後に日本企業が中国企業に抜かされるなんて想像していた人がどれだけいるだろうか。

それが平成30年の現在は、

アメリカ 31社
中国 7社
イギリス 2社
スイス 2社
フランス 2社
日本 1社
韓国 1社
香港 1社
台湾 1社
ベルギー 1社

……で、日本企業は政府が肝いりで支えているトヨタ自動車だけ。
30年前のトップ50社に入っていた日本企業の中には、消えてしまった銀行や原発を爆発させて地球を汚し、後始末もろくにできない電力会社やら、原発絡みで米国企業の巨額の負債を抱え込まされて優良部門を次々身売りしている企業やら、データ偽装で信用失墜の企業やらが並び……おごれる平氏久しからずを見事に実証している。
「株も土地も永遠に上昇を続ける」。今では耳を疑うような話だが、“山”の頂に登った当時は、国も金融機関もそう信じて疑わなかった。
これらの現象はバブルだったとわれわれは後に思い知らされるが、当時は「これこそが新しい時代」と錯覚していたのかもしれない。
ダイヤモンドオンライン 「昭和という「レガシー」を引きずった平成30年間の経済停滞を振り返る」 2018/08/20)


30年前といえば、今90歳の老人は60歳で定年を迎えた年、今80歳の老人は50歳で部下を多数使って異常な金銭感覚の中で仕事をしていたとき。
その記憶のままに惚けてしまい、今を生きる若い世代にオムツを替えてもらい、風呂に入れてもらう日々を送っている。
もっとも、それは十分な年金をもらっている老人たちの話で、全体を見ればそうではない老人のほうがはるかに多いのだろうが。

死んだゴルフ場がメガソーラーというゾンビとして甦る2018/08/03 16:20

京都市メガソーラー航空写真(Googleマップより)

土砂崩れを招く大元の原因は?

ニュース番組で、京都市の山が土砂の不法投棄でとんでもないことになっているというのをやっていた。


他人の土地(山)に土砂を不法投棄しているというのだが……


不法に捨てられた土砂が雨で流れて、麓の住民に土砂災害の危機が……というのだが、そもそもその土砂はどこから運ばれてきたのか?
ドローン映像で一瞬映った周囲のメガソーラーらしき光景が気になったので、Googleマップの航空写真で確認してみたら、すごいことになっていた。

一瞬映し出されたドローン映像にはソーラーパネル群が映っていた



Googleマップで航空写真を見ると、こんなことになっている↑

このメガソーラーの場所はもともとは「伏見桃山ゴルフコース」(京都市伏見区小栗栖山口町)というゴルフ場だった。
経営は(株)伏見桃山ゴルフクラブ。昭和38(1963)年設立の会社で、ここが京都市伏見区にある大岩山に9ホールのゴルフ場を造って開業したのが昭和42(1967)年。しかし、経営が立ちゆかなくなり、平成13(2001)年にゴルフ場の土地・建物を米国外資系のファンド会社、マハリシ・グローバル・ディヴェロップメント・ファンド(日本支店は栃木県那須塩原市)に売却し、その後は運営のみを行っていたが、平成20(2008)年に自己破産を申請。以後、(株)新伏見桃山ゴルフクラブ、伏見桃山ゴルフコース(株)と、マハリシ社から運営受託した会社はいくつか変遷するが、平成26(2014)年6月にゴルフ場閉鎖。土地所有者であるマハリシ・グローバル・ディヴェロップメント・ファンドは土地を売りに出し、以後、あっという間にメガソーラーになった。

そして、
投棄や無許可造成で崩落防止工事中だった土砂が西日本豪雨で崩れ、住宅街に迫った京都市伏見区の大岩山のふもとでは、住民たちが次の豪雨への不安を募らせている。26日には市議会委員会でも取り上げられ、市も台風12号に備えて緊急会議を開催。
毎日新聞 2018/07/27 台風接近「頭上に爆弾」 不法投棄土砂に不安
 
……と、冒頭のテレビニュース報道などにつながっていく。

山を切り拓いてゴルフ場を造った時点でダメだが、その後もよろしくない。ゴルフ場ならまだ草も生えていただろうが、ソーラーパネルを敷き詰めたことによって、土壌がさらに弱くなり、表土が簡単に流出するようになっただろう。
こうなると、資金がない自治体などは対応できず、ひたすら逃げの姿勢になる。

市は今年1月、住民からの通報を受けた調査で違法な盛り土を確認し、業者に崩落防止工事を指導したが、住民には何の説明もなかった。崩落防止工事でも大量の土砂が運び込まれてきたが、住民たちは「まだ不法投棄が続いているのか」と思っていた。
(略)
今後の避難のあり方についても、市は25日まで「住民が自主的に」と回答するなど鈍かった。市防災危機管理室は26日になって「土砂が堆積(たいせき)し、崩れる危険は高まっている。避難勧告などを出す基準を現状より引き上げなければならない。早急に現地を調査する」としたが、自治会の男性(75)は「(毎日新聞などの)報道を受け、ようやく重い腰を上げた」と話した。
毎日新聞 2018/07/27 台風接近「頭上に爆弾」 不法投棄土砂に不安
 

「後は野となれ山となれ」という言葉があるが、ここまで壊してしまうと、簡単には野や山には戻らない。

狙われる経営難ゴルフ場、倒産するソーラー業者

メガソーラー建設を目論む業者にとっては、経営破綻しているゴルフ場は格好のターゲットだ。邪魔な樹木はほとんどないし、相手は経営破綻しているから土地を買い叩ける。その後は「建て逃げ」。

⇒ここに、某ゴルフ場会員権販売会社が独自調査した「ゴルフ場跡地を利用してメガソーラー事業に参入する企業増加 全国閉鎖・廃業・営業停止中ゴルフ場」というリストがある。
膨大な数のゴルフ場がのっていて驚かされた。

私が住む栃木県内やお隣の白河あたりのゴルフ場だけを拾ってみただけでも、↓これだけある。
平成24年
  • 7月02日 福島空港GOLFCLUB(福島)・売却 サニーヘルス(株)
  • 9月23日 ガーデンバレイカントリークラブ(福島)・閉鎖 永和電力(台湾企業)
平成25年
  • 1月 星の郷G&H烏山 競売に出る
  • 1月17日 ロイヤルカントリークラブ(栃木)・ゴルフ場練習場跡地 (株)染宮製作所・オーナー
  • 2月01日 鬼怒川カントリークラブ(栃木)、閉鎖中の9Hに建設 (株)鬼怒川温泉ゴルフ倶楽部
  • 3月05日 黒磯カントリー倶楽部(栃木)・閉鎖 不明
  • 5月15日 那須ちふり湖カントリークラブ(栃木)の隣接地 鹿島建設(株)
  • 5月17日 グランディ那須白河ゴルフクラブ(福島)の隣接地 リゾートトラスト(株)
  • 5月20日 野澤ゴルフガーデン(栃木、ショートコース)跡地 (株)大林組の子会社
  • 6月21日 ディアレイク・カントリー倶楽部(栃木)の遊休地 オリックスグループ
  • 6月27日 SK白河ゴルフ倶楽部(福島)・閉鎖 (株)東京プロパティマネジメント
平成26年
  • 1月20日 那須小川ゴルフクラブ(栃木)の18Hを閉鎖 (株)タカラレーベン
  • 1月20日 新・ユーアイゴルフクラブ(栃木)・閉鎖 (株)オーイズミ
  • 3月5日 JGMゴルフクラブ益子コース(栃木)・閉鎖 不明
  • 6月2日 星の郷ゴルフ&ホテル烏山(栃木)・閉鎖 上海電力日本(株)(中国)
  • 6月2日 ITC白川CC(福島)・18H計画頓挫、跡地 上海電力日本(株)(中国)
  • 6月23日 コリーナGC(栃木、18H計画頓挫)・跡地 京葉プラントエンジニアリング(株)
  • 7月1日 グリーンウッドCC(福島、閉鎖)・跡地 (株)グリーンウッドCC
  • 8月5日 東宇都宮CC(栃木)・閉鎖/新里見CC(茨城)・閉鎖 (株)ケン・コーポレーション
  • 8月28日 随縁CC鬼怒川森林C(栃木)・閉鎖 不明
  • 9月10日 那須野ヶ原CC(栃木、パブリック、27H)・9H (株)那須野ヶ原カントリークラブ
  • 10月23日 ユニオンエースGC(埼玉、27H)・9H閉鎖 IP秩父ソーラー発電合同会社
  • 宇都宮CC(栃木)・遊休地 (株)宇都宮ゴルフクラブ
  • 11月25日 サットンヒルズCC(茨城)・閉鎖 エネルギープロダクト(株)
  • 12月7日 西那須野CC(栃木)・遊休地 SBエナジー(株)
  • 12月12日 ロイヤルCC(栃木、36H)・18Hを閉鎖 不明
平成27年
  • 9月14日 ファイブエイトGC(栃木)・閉鎖 不明
  • 12月20日 サンモリッツCC(栃木)・閉鎖 JGA国際エナジー(株)
平成28年
  • 9月1日 トミーヒルズGC栃木C(栃木)・閉鎖 不明
  • 9月9日 白河国際CC(福島)36H中の18H (株)一条工務店
  • 9月20日 日刊スポーツGC(仮称名、群馬)・頓挫跡地 安中ソーラー
  • 9月21日 ケントスGC(栃木)・閉鎖 不明
  • 9月21日 西の郷CC(福島)・閉鎖 J・R・E(株)
平成29年
  • 1月17日 福島石川CC(福島)、27H中21H閉鎖 不明
  • 10月30日 新白河ゴルフ倶楽部(福島)・閉鎖 不明

行末の企業名は転売先だが、中国などの外資系企業もある。
ソーラー発電所を建てた後はどうなるか? 発電事業を引き受けた企業は実績が上がらなかったり、買い取り価格が下がったりすれば投資額を回収できずに倒産に追い込まれる。しかし、設備を納入したメーカーや施行した土建業者は、その後がどうなろうと利益確定で儲かる。これが「建て逃げ」だ。
京都の伏見桃山ゴルフコース跡地に作られたメガソーラーから5kmほど東の伏見区醍醐陀羅谷には、2013年に閉鎖した京都国際カントリー倶楽部跡地に関西最大級というメガソーラー「京都・伏見メガソーラー発電所」(事業者:京セラTCLソーラー合同会社、設計?施工:三井住友建設株式会社)ができているが、ここにソーラーパネルを納入した唐山海泰新能科技有限公司(HTソーラー)は中国河北省の企業らしい。⇒ここで空撮動画も公開しているので、どのくらいの規模なのか実感できる。

「京都・伏見メガソーラー発電所」 Googleマップより


で、建設会社や設備メーカーは建てた時点で儲かるが、発電事業を引き受けた事業者はこれから先、厳しい道が待っている。
昨年7月に帝国データバンクが発表した「第3回 太陽光関連業者の倒産動向調査」という調査報告書の冒頭にはこうある。
太陽光関連業者の倒産が急増している。 2012 年7月に始まった「再生可能エネルギー固定価格買取制度」(FIT)を機に市場が急拡大した太陽光発電だが、その後、買取価格が連続して引き下げられたことなどでブームは沈静化。この間、太陽光関連企業の倒産が目立つようになっている。

2006 年1月から 2017 年 6 月までの太陽光関連業者の倒産件数は、251 件に達した。(略)
2017 年上半期(1-6 月)の太陽光関連業者の倒産は 50 件と倍増(前年同期比 2.2 倍)、一時は爆発的に市場が拡大した太陽光関連の落ち込みを映し出す結果となった。現在の増加ペースからみて、2017 年通年では 100 件を超えてくる可能性もある。
(略)
これまで、太陽光関連業者の倒産は訪問販売業者やオール電化住宅の販売業者、また設置工事業者などが多かった。その大勢に変わりはないものの、負債額上位には太陽光パネルやセルなどの製造業者も増えている。産業構造に目に見える変化が生じつつあり、関連事業者の苦境は続くだろう。
(帝国データバンク 「第3回 太陽光関連業者の倒産動向調査」

倒産した企業の中で負債額のトップは特定規模電気事業者(PPS)の日本ロジテック協同組合で、負債額162億8200万円。
2位は環境共生型マンションに特化した中古マンション買取・再販業者のシーズクリエイト(株)で、負債額114億4200万円。
3位は中国資本の太陽光発電パネル製造業者(株)ZEN POWERで、負債額52億円。
発電業者、ソーラーパネル付きマンションを売買していた不動産屋、そしてソーラーパネル製造業者までもが大型倒産しているのだから、事態は深刻だ。
巨大企業は、グループ内企業にパネルの卸し販売をさせたり建設業者がいたりして、発電をしなくても建て逃げ利益が出るようにしているのだろうが、こんなビジネスが長続きするわけがない。
そして、この手の「ソーラーバブル」が終わらないうちは、国民は高額な再エネ賦課金をもぎ取られて苦しみ、日本の国土は荒らされ続け、次世代への負の遺産が増え続ける。

税金を投入して不合理な事業を押し進めた結果、国土が荒廃し、経済も疲弊する。
エコエコ詐欺に加担する悪法を作った政治家たちの罪は深い。

↑これは私の「遺言」です

異常気象よりも異常なことが起きている2018/07/17 21:06

7月8日未明、ワールドカップサッカー中継の画面

なぜメディアは気を緩めていたのか

西日本豪雨被害の凄まじさが、当初、首都圏をはじめ、東日本の人びとにはなかなか伝わらなかった。その一因は、テレビの報道があまりにもおざなりだったからだ。
深刻な被害情報が入ってきた7日から8日にかけて、NHKはサッカーワールドカップの中継画面にL字枠で「○人死亡○人安否不明」のテロップを出しっぱなし。その後も特番にはならず、『日曜討論 貿易摩擦・外国人材受け入れ』なんてやっていた。それ「今じゃないでしょ」。
民放も平然と長時間音楽特番を続けていたり、グルメ番組だのアニメだのを流していた。
テレビの報道が(被災地の地方局を含め)緊張感がなく、内容も薄かったのは、政府が本気で動かなかったから、ということも大きいだろう。
緊急災害対策本部が設置されていない段階で災害情報特番を組むことはないというのがテレビ業界の常識なのだろうか。
気象庁が異例の緊急記者会見を開いて警告を発した7月5日から政府が緊急災害対策本部を設置した7月8日までの4日間を時系列で振り返ってみよう。

7月5日
  • 北海道南西部を中心に早朝から大雨被害が続々発生。八雲町の道央自動車道で50mに渡って土砂崩れ。奥尻町でも土砂崩れが派生し80戸停電。岩内町で355世帯660人に避難勧告。
  • 西日本各地で大雨。9.30頃、兵庫県猪名川町で男性作業員3人が排水管に流され1人死亡。神戸市で約10万人に避難勧告。大阪府茨木市、神戸市などでも避難指示。午後の時点で、避難指示・勧告が出されたのは計3府県15市町の約20万人。
  • 神戸市灘区の神戸大で3階建て校舎の裏斜面で土砂崩れ。大学は避難勧告を受け、休校に。
  •  14.00 気象庁が緊急記者会見を開き、「8日にかけて東日本から西日本の広い範囲で記録的な大雨となる恐れがある。早めの避難を心がけてほしい」と発表
  •  15.30 内閣府が各省庁課長らを集て災害警戒会議を開く
  •  20.00 大阪、兵庫など3府県約20万人に避難勧告が出る
  •  そんな中、議員会館内で自民党議員約50人が「赤坂自民亭」なる酒宴を開き、20.30頃、安倍首相も参加。
  •  22.00頃 西村康稔官房副長官が酒宴の様子を写した写真をツイッターに投稿し、「和気あいあいの中、若手議員も気さくな写真を取り放題!まさに自由民主党」などとツイート。片山さつき議員も同様にツイッターに「今日は27回目の赤坂自民亭」「安倍総理初のご参加で大変な盛り上がり」などと写真入りで投稿
安倍首相の地元・山口の獺祭、大規模火災で被災しながら復活した新潟県糸魚川市の名酒・加賀の井、広島の酒・賀茂鶴などが振る舞われたが獺祭を飲めば「安倍支持」、賀茂鶴なら「岸田支持」など9月に迫った自民党総裁選を題材にしたジョークが飛び交った。ちなみに出席議員の大半は結局、獺祭と賀茂鶴の両方を飲む羽目になったという。
乾杯のあいさつは竹下亘総務会長が務め、「自民亭の女将」でもある上川陽子法相の発声で「万歳」をした。
「大炎上「赤坂自民亭」は何が問題だったか」 プレジデントオンライン
7月6日
  •  未明 京都府亀岡市の大路次川で車が水没しているのが発見され、下流で女性が遺体で見つかる。
  •  広島県安芸高田市で、川に流されて行方不明となっていた男性が死亡
  •  北九州市門司区で住宅が土砂崩れに巻き込まれ2人行方不明
  •  7.00頃 オウム死刑囚7人の死刑執行が始まる。テレビでは「今、また死刑が執行されました」とリアルタイムでトップ報道し、死刑囚の顔写真に「執行」とマークを打っていくなどの扇情的な演出。豪雨情報は二の次にされる
  •  10.00 気象庁が数十年に1度の災害を意味する「大雨特別警報」の可能性を示唆
  •  17.10 長崎、福岡、佐賀の3県に大雨特別警報
  •  19.40 広島、岡山、鳥取に大雨特別警報
  •  22.50 京都、兵庫に大雨特別警報。1日で8府県に大雨特別警報が発表される異常事態に。この時点で、死者・行方不明者は少なくとも100人を超えると報道される
  •  23.35 岡山県総社市下原の金属加工会社「朝日アルミ産業」の工場が爆発し、延焼や爆風で広範囲の建物に被害。少なくとも住民ら十数人がけが。浸水で原料が反応した可能性
7月7日
  •  10.01~10.16 政府が首相官邸で関係閣僚会議を15分間開く。安倍首相「人命第一の方針の下、救助部隊を遅滞なく投入し、被災者の救命・救助に全力を尽くしてもらいたい」
  •  11.35 首相が官邸を出て、11.49東京・富ケ谷の私邸着。その後終日来客なく、私邸で過ごす
  •  12.50 岐阜県に大雨特別警報
7月8日
  •  早朝5.00時点で、広島県で約82万世帯、約184万人に避難指示・避難勧告。岡山、岐阜など18府県で約92万世帯、約201万人に避難指示の継続(消防庁)
  •  5.50 高知、愛媛に大雨特別警報。最終的に、11府県で大雨特別警報が発表された
  •  岡山県倉敷市真備町(約8900世帯)で、付近を流れる高梁川支流の決壊で約4500棟が冠水。真備町の面積の27%にあたる約1200ヘクタールが浸水。倉敷市真備支所や公民館、学校も水没。朝の時点で建物の屋上などに1000人以上が取り残されているとの情報。自衛隊や消防などがヘリコプターやボートなどで救出活動
  •  8.00 非常災害対策本部(本部長・小此木八郎防災担当相)を設置。安倍首相は9.02から20分間、同会議に出席
  •  9.48~10.42 安倍首相、ポンペオ米国務長官の表敬を受ける
  •  正午時点で少なくとも死者68人・不明52人(読売新聞)と報道
  •  13.00~13.23 安倍首相、韓国の康京和外相の表敬を受ける
  •  14.16 官邸を出て私邸へ帰宅。以後、来客なく私邸内で過ごす

5日夜の「赤坂自民亭」での浮かれた写真が出席者自らの手でツイッターに投稿されたことで後に大炎上したわけだが、あれだけならまだ「あの時点ではこれだけ深刻な被害は予想できなかった」という言い訳もあったかもしれない。しかし6日の時点ですでに死者・行方不明者が100人を超えていると報道されているのに、非常災害対策本部を設置するのが翌々日というのはどういうことだろうか。
被害が深刻化する中でオウム死刑囚の死刑執行を行い、それが「電波ジャック」のようになってテレビの災害情報報道が追いやられたのも解せない。
7月3日、7人の死刑執行にはんこを押して命令を下した上川法務大臣が、死刑執行前夜に酒盛りに参加して万歳の音頭を取っていたという神経も信じられない。

とにかく税金の使い方をなんとかしてくれ

「国」とはなんだろう。「国を守る」とはどういうことだろう。
政府は13日の閣議で、西日本を中心とする豪雨被害の緊急支援のため、予備費20億848万円の拠出を決定した。麻生太郎財務相は閣議後の記者会見で「被災者の生活に不可欠な水、食料、クーラー、仮設トイレといった物資を緊急調達する」と使途を説明した。
時事ドットコム 2018/07/13

……ため息……。
20億円とはどのくらいの金額なのか?
自衛隊の10式戦車は1台10億円。この戦車2台分が20億円。
安倍政権下での内閣官房機密費、用途不明(領収書なし)は56億円
もんじゅ維持費(廃炉が決まっても、冷やし続けなければ爆発)が年間200億円。今までにもんじゅに投じた額は約1兆2千億円。
楢葉町の沖合約20キロの海上に「東北復興の礎に」と建てた出力2000kwと5000kw、7000kwの3基の風車と変電所の建設費が585億円
経産省によると、この3基の風車の設備利用率は、2000kw風車が34%、5000kw風車(運用開始の2017年2月以降)が12%、7000kw風車が2%。もちろん目安に達していない。(洋上風力、発電不調 福島沖・浮体式、商用化に暗雲 朝日新聞デジタル 2018/07/11)
これはテスト段階で、商用利用には至っていない。つまり、585億円かけて、まだ何にも役に立っていない。このまま計画凍結となれば、巨額の金を使って海に巨大なゴミを置いただけということになる。
たとえ、30%程度の設備利用率が達成できたとしても、投資額を発電「実績」で回収できるとは思えない。維持費もかかるし、修繕するのも洋上なら簡単ではない。
すべてが順調にいったとして、5000kw級の巨大風車が風次第で発電したりしなかったりを繰り返すのだ。発電能力が大きければ大きいほど、発電しないとき(風が吹かない or 暴風で止めるとき)の調整は火力発電所が担わなければならないわけで、火力発電の燃費が悪くなる。
そしてこの不安定な博打発電のために、すべての国民は再エネ賦課金を電気料金に上乗せさせられている。

……とまあ、こんなことやあんなことに使われた金額と比べての20億円という金額を噛みしめてみたい。
さらにいえば、「被災者の生活に不可欠な水、食料、クーラー、仮設トイレといった物資を緊急調達する」というが、そんなものは常に準備できていなければならない。
⇒これをぜひ読んでおきたい。
  • イタリアの避難所に被災後真っ先に届く1つめはトイレ。それも日本でよく見る昔の公衆電話ボックスのような狭いものではなく、車椅子対応のものもある広いユニット。
  • 2つめは巨大なキッチンカー。1台で1時間に1000食提供できる能力を持つキッチンカーで温かな食事を提供。
  • 3つめはベッド。最初は簡易ベッドが、1週間後くらいにはマットレスのある普通のベッドが届く。
  • これらの物資はコンテナに収納されて常に待機しているので、災害が発生したらすぐに運べる。コンテナなので屋外にそのまま置けるから、体育館などの施設が物資で埋まって混乱することもない。
イタリアの避難所に被災後真っ先に届く3つのものとは DIAMOND online リスク対策.com

普通に考えればあたりまえのことなのに、何度も大災害に見舞われながら日本はなぜこうした「あたりまえの対策」「合理的な行動」ができないのか。
日銀が買い支え続けて維持している株価も、もうすぐ出口を失い、破綻する。そうなると、もうどうにもならない「弱り目に祟り目」状態になる。そうなってから現政権が崩壊しても、その後始末は誰にもできない。
経済破綻、国土荒廃、人心混乱の中、日本は世界に向かって「助けてください」と泣きつく弱小国になり果てるだろう。 「赤坂自民亭」を非難するだけでなく、いつまで経っても学ばない、まともな税金の使い方をしない政治に一刻も早くNOを突きつけない限り、この国は思っているよりずっと早く崩壊する。

「道徳教育」が日本を滅ぼす2018/06/04 12:47

「育鵬社」の次に「よ」と入力しただけで、Google検索ではこんな予測検索ワードが表示された

教育現場破壊の問題では地方自治体の首長がいちばん怖い

imidasの「時事オピニオン」コーナーに、前文科省事務次官・前川喜平氏のロングインタビューが掲載されている。主に2020年から導入される予定の新しい学習指導要領についてのQ&Aだが、その内容がとても興味深く、かつ怖ろしいので少し紹介してみたい。

まず、学習指導要領の改定、見直しにあたっては、その前に「政治的な議論」や「圧力」があるという。
小中と同じように「高校でも道徳教育が必要だ」という議論。中には「徴兵制を導入して高校生も鍛え直すべきだ」なんてことを真顔で言う人もいるぐらいで、高校生のための道徳教育、あるいは日本人としての自覚を持たせる教育、愛国心教育みたいな内容を高校教育に織り込ませたいという声が、常に自民党の中にあるわけです。
新しい高校学習指導要領で導入される「公共」という教科などは、まさにそういう議論の中から出てきたものです。

質問者が、「前川さんご自身が愛知県の公立中学で講演をされた際に、自民党の国会議員が文科省に圧力をかけ、名古屋市教育委員会に講演内容などに関して質問し報告を要請したという事件がありましたよね」と話を向けると、こう答えている。
政治が教育に手を突っ込むというのは、大抵、こういうやり方なんですね、要するに「騒ぎ立てる」。今回のように国会議員が騒ぎ立てる場合も多いのですが、怖いのは地方議会ですよ。あと、もっと怖いのが地方自治体の首長です。教育委員会に圧力をかけて「右の教科書」を採用しようとしたりしますからね。
防府市の松浦正人市長が会長を務める「教育再生首長会議」という団体があるのですが、彼らは教育、特に教科書の採択は教育委員会でも、現場の教員でもなく、選挙で選ばれた自分たちが決めるべきだと主張しています。「新しい歴史教科書をつくる会」から分派した団体で、安倍首相直属の諮問機関「教育再生実行会議」の有識者委員でもある八木秀次・麗澤大学教授が理事長を務める「日本教育再生機構」とともに、育鵬社の教科書採択を広める活動を積極的に展開しています。

……と述べている。
公立学校というのはほとんどが県立や市立なのだから、自治体の長が国粋主義者だったりすれば、その地域全体の公教育がガラリと変わることもありえるわけだ。
名古屋市の教育委員会のように毅然とした態度をとれればいいが、そうではない自治体がたくさんあるだろう。

「育鵬社」の次に「よ」と入力しただけで、Google検索ではこんな予測検索ワードが表示された。中田前市長の「功績」だそうだ


ここでも出てきた「育鵬社の教科書」だが、ネットでこのキーワードを検索すると、ヒットするページの多くは、「育鵬社の教科書を採用しないのはけしからん」「日本の未来を引っ張っていく大人に育てるのは育鵬社の教科書しかない」といった主張を展開している。
どうも、この問題に関しては、冷静で具体的な議論がされず、右が~、左が~、というののしり合いになってしまっている印象を受ける。
そんな中で、ああ、これは冷静な議論だなあと感じたのは⇒この東洋経済ONLINEの記事だ。
2001年、いち早く育鵬社の教科書を採択して注目された東京都大田区教育委員会で委員長を務めた経験を持つ櫻井光政弁護士へのインタビュー。
櫻井氏はまず、

歴史教科書を選ぶ際に私が大事だと思うことがいくつかあります。まず、何が歴史を動かしたのかを客観的に観察していること。特に、誤りがなぜ起きたのかきちんと分析することが大事です。

という大前提を述べた上で、育鵬社の歴史教科書にはその視点が欠けていると、いくつかの例を挙げて説明している。

沖縄の問題に関しては、書いてある内容が正反対という印象を受けました。帝国書院は、日本軍によって食料を奪われたり、安全な場所から追い出されたりして犠牲になった住民の様子が書かれています。「最後の一兵まで戦え」という命令を残して自害した日本軍司令官の話もあり、犠牲者が増え続けた理由や責任の所在が分かります。
一方、育鵬社は、沖縄県民の献身的な働きや戦争の悲惨さを描いてはいます。しかし、命令が残っていたために被害が拡大したことには触れられていません。
私は、その戦争の中で立派に行動した人がいた、ということに触れるだけではいけないと思います。負けることが分かった時にどういう指揮を取るか、というのがとても大事で「最後まで戦え」という命令を残して自決するのはリーダーとしては失格ではないでしょうか。自分の美学に殉じるのはよいですが、残った者の命をどう考えるのか。特に非戦闘員の命をどう守るのか考えられない人は、指導者としては批判の対象になるものだからです。そういうことを学ぶのが「歴史」だと私は思います。
[採択相次ぐ!「育鵬社教科書」本当の問題点  「右・左」だけでなく、グローバル視点で課題] 東洋経済ONLINE 2015年6月3日


「自分で考える力」をつけさせるのが教育

話を前川氏のインタビュー記事に戻す。
前川氏も櫻井氏同様に、誤りがなぜ起きたのかきちんと分析することの重要性を強調している。
例えば「ワイマール憲法」という当時では世界で最も民主的な憲法の中から、なぜヒトラーのような独裁者が生まれたのか? こういう愚かなことを日本人だって繰り返さないとは限らないよという、そのことを学ぶってものすごく大事だと思うんです。(略) つまり害虫の巣を残しちゃった国(今の日本)と、完全に駆除した、あるいは、それを常に駆除し続けなきゃいけないと思っている人たち(今のドイツ)との違い。 それだけの痛恨の歴史を持っている国。ワイマール憲法がヒトラーを生み、ヒトラーがホロコーストをしでかして、とんでもない戦争で何千万人もの人を殺したと。そういうとんでもないことを、しかしそれに迎合し支持した国民がいたという……。それだけシビアな歴史観、民主主義観というのが常に彼らの中にはあって、その運用をいかに間違えないかということに対する意識が、常に一定のブレーキというか、必ず考えなければいけないプロセスとして残っているということなんですね。
imidas 前川喜平さんロングインタビュー

しかし、今の日本の教育は、子供に「なぜそうなったのかを考えさせない」「間違いを繰り返さないためにはどうするべきなのかを自分の頭で考える力をつけさせない」方向にどんどん進んでいると危惧している人は多いはずだ。
日大アメフト部事件はまさにそのことをはっきりした形で突きつけた。

こんなツイートを見つけた。

↑まさにこれ!

前川氏のインタビューでも、こう続く。
一方で、政治の側にはそういう「目覚めた主権者」は困ると言う人もいるわけです。(略) 最近の「公文書問題」などを見ても象徴的ですが、現実には「民はよらしむべし。知らしむべからず」みたいな社会に戻ろうとしていますよね。とにかく、真実を国民に伝えないようにしようと。その一方で、他国の脅威とか、ヘイトのような国民のネガティブな感情に訴えて、支持を勝ち取ろうという、ポピュリズム的な政治手法です。 基本的に、国民はバカだと思っているんですよ。だませると、最後までだまし通せると思っている。


日大事件でも、前監督や現理事長の言動を見ていると、まさに「国民はバカだ。最後までだまし通せると思っている」としか思えない。
今は騒いでいても、どうせそのうち忘れる、と。
実際、そうなっている。森友事件では、まだ渦中にありながら、佐川・財務相前理財局長らはさっさと全員不起訴になった。
こんなことが続けば、この国は間違いなく壊れ、また悲惨な状態に陥る。
そうならないように、人を育てるのが教育なのに、教育現場がどんどん壊されていくのは本当に怖ろしいことだ。

前川氏のインタビュー記事はこう結ばれている。
公教育は「国」のためではなく、一人ひとりの「個人」のためにあるはずです。ひたすら強いものに付き従うのではなく「自分で考える力」を身に着けた「目覚めた主権者」の存在なしに、本当の民主主義などありえないのですから。




↑これは私の「遺言」です

ヒキガエルを殺せ、と指示する北海道の狂気2018/05/21 01:22


アズマヒキガエルを「毒ガエル」と名指しし、騒ぎ立てるニュース番組
テレビのニュース番組(特に夕方の時間帯)ではよく、サルが出た、熊が出た、イノシシが出た、スズメバチが出た……と大騒ぎする。またか! いい加減にしろよと思いながらチャンネルを替えるのだが、今日見たこれはあまりにもあまりで、唖然を通り越して空恐ろしくなった。
北海道で「毒を持つ」アズマヒキガエルが大繁殖して住民が悲鳴を上げているというのだ。ほんとかよ。
アズマヒキガエルはごく狭い範囲で増えることはあっても、広範囲に大繁殖するなんてことは聞いたことがない。「異常繁殖」などといっているが、カエルの知識がない者が、繁殖期に一か所に集まってきてカエル相撲をしているのを見て「異常だ!」と騒いでいるだけなんじゃないか?
むしろ、ヒキガエルはほんのちょっとしたことで地域絶滅してしまう、カエルの中でも環境変化に極めて弱い種だ。
実際、我が家(日光市)の周辺は都市部に比べれば自然が残されている地域だが、アズマヒキガエルは見たことがない。意識して水たまりや田んぼを覗き込んで6年間過ごしてきたが、成体はおろか、卵も見たことがない。地元の老人たちに訊くと、かつてはあたりまえにいたというから、圃場整備がきっかけで地域絶滅してしまったのだろう。
ヒキガエルは変態直後は他の小さなカエルよりもずっと小さく、弱々しい。吸盤もなく、ジャンプ力も弱いから、U字溝に落ちると這い上がれず簡単に死んでしまうのだ。
毒を持つというのは確かだが、わざわざ捕まえてペロペロ舐めたりしない限り、腹をこわすこともないし、ましてやヒキガエルの毒が原因で人が死んだなんて聞いたこともない。動きがのろいヒキガエルにとって、体表から毒を分泌するのは自衛の仕組みである。ヒキガエルを補食するヤマカガシはヒキガエルの毒にやられず、逆にその毒を溜め込み濃縮することで「毒蛇」になることが知られている。しかし、そのヤマカガシとて、自分から人間を襲うことはまずないし、マムシのように牙から毒液を出すわけではないので、たとえ噛みつかれたとしても死なない。喉の奥から直接出る毒液が目に入ったり口に入ったりすれば危ないが、そんな状況は普通にはありえない。

なんでこんなトンデモなニュースをやっているのだろうとネットで少し調べたら、こんなページがヒットした。

効果的な駆除方法と時期  浅い池の場合、繁殖時期(5月上旬から下旬)に、ふ化する前の卵の塊(ひも状)を池などから上に引き上げたり、黒色の小型で群れをなすオタマジャクシを網ですくい出して乾燥死させる方法が効果的です。
繁殖期以外は、雑木林や民家の庭などに住みついており庭仕事などの時に見かけますが、夜行性のため成体になってからの駆除には多大な労力が必要です。 土着のカエルと見分けられないときや、異常な大発生を見つけたときは、環境課へご連絡ください。
(「アズマヒキガエルの駆除について」 北海道深川市)

なんと、自治体がヒキガエルを「殺しましょう」と指導しているのだ。
これを鵜呑みにして子供たちが率先してヒキガエル殺戮に興じるかもしれない。それも「大人の指導」で。

北海道でヒキガエルが「異常に」増えているという信頼すべきデータがどこかにあるのか?

なぜヒキガエルを殺さなければならないのか?
どうやら、理由はこういうことらしい。
国内外来種(もともと北海道にいなかった生き物)であるアズマヒキガエル(略)は日常生活に大きな影響を及ぼすものではありませんが、長期的にみて従来の生態系へ及ぼす影響が懸念されるため、北海道の指定外来種に指定されました。(平成27年12月18日指定、平成28年6月19日施行)

北海道生物の多様性保全に関する条例の改正により北海道の指定外来種に指定されましたので、飼養する場合は知事が定める特定飼養等施設に収容し、逃げ出さないようにしなければなりません。また、生息地以外に放つことも禁止され、道の指導や命令に従わない場合は罰則の対象となります


何を言っているんだ? と思う。
もともと日本のヒキガエルは、西日本にいるのがニホンヒキガエル、東日本にいるのがアズマヒキガエル、北海道にいるのはエゾヒキガエル、という3つの亜種(地域による分類だが、交雑生殖は可能)とされていた。しかし、最近「エゾヒキガエル」と呼ばれていたものは、遺伝子を調べるとアズマヒキガエルと同じであり、寒い北海道に適応して身体が小さくなっただけだということになった。
北海道で初めてヒキガエルが発見されたのは1912年、函館でだという。100年以上前のことだ。
エゾヒキガエルと命名されて、最初に発見された函館では「絶滅が危惧される希少種」として大切にされてきた
それが、「遺伝子的には本州のアズマヒキガエルと同じ」という研究結果が出た途端に、「北海道生物の多様性保全」のために、見つけたら殺せ、という号令がかけられたのだ。
生物の多様性保全?? そもそも北海道のだだっぴろ~い風景は、明治以降、人間が森を壊しながら大規模な開拓に開拓を重ねてきた結果ではないか。
100年以上前から棲んでいるカエルを人為的に殺して、何が「生物多様性の保全」か。

石狩の観光資源「イソスミレの絶滅が危惧される」などというが、海岸近くに生息するイソスミレを守りたいなら、まずは石狩の大規模風力発電所計画を撤回させることだ。イソスミレだけでなく、多くの生物が消える危険性を取り除くことになる。ああいうものを認めて、何の罪もないカエルを殺せという行政。デタラメにもほどがある。



違う血が混じることで生き延びる

さらに調べていくと、東京大学のWEBサイトに興味深い記事を見つけた。
5年前の2013年に長谷和子(東京大学 大学院総合文化研究科広域科学専攻 博士課程3年)、二河成男(放送大学 教養学部教養学科自然と環境コース 教授)、嶋田正和(東京大学 大学院総合文化研究科広域科学専攻/情報学環 教授)によって発表された「Population admixture and high larval viability among urban toads」という論文で、
東京都内に自然分布する日本産ヒキガエルの東日本亜種(アズマヒキガエル)の多くの個体が、西日本亜種(ニホンヒキガエル)により遺伝子浸透を受けている点、またその交雑により、都内のヒキガエルの適応度(本研究では幼生(オタマジャクシ)の生存率)が上がった点の、2つを実証した。
記者発表一覧 東京のヒキガエル、西日本型に侵略される 東京大学
……という。
記事の一覧タイトルには「侵略される」などという刺激的な言葉が使われているが、これはWEBページ編集者が勝手に付けたものだろう。
論文の要旨としては、
  • 都内のヒキガエルはすでに東日本亜種とされてきたアズマヒキガエルから西日本亜種のニホンヒキガエルへと「遺伝子浸透」が進んでいる(交雑が進んで、ニホンヒキガエルに近づいている)
  • 東京のヒキガエルの幼生(オタマジャクシ)は、埼玉県新座市や栃木県日光市のアズマヒキガエルの幼生よりも高い生存率を示している(ニホンヒキガエルと交雑した都内型のヒキガエルは、交雑が進んでいない北関東のヒキガエルよりも生命力が強い)
  • つまり、現在の東京のヒキガエル集団は、移入された西日本亜種系統に助けられ、個体数が維持されている可能性が大きい(混血した結果、生き延びている)

……この論文内容要旨からして、記事一覧のタイトルは「西日本型に助けられて生き延びた東京のヒキガエル」とでもするべきだろう。
一見自然豊かに見える我が家の周囲ではすでに地域絶滅しているのに、都内の住宅地には今もヒキガエルが出没している。その理由の一つが「移入種との交雑」だったということか。

血が混じることで環境変化に対応し、種を維持していくことができるというのはとても理解しやすい。愛玩動物として人為的に遺伝子操作されて生み出され、それをどこかの団体が「○○種」として「認定」し、以後「純血種」として繁殖される犬は病気に対する抵抗力が弱く、雑種の犬のほうが生命力が強いとか、一代雑種に名犬がよく生まれるということはよく知られている。

話をカエルに戻せば、関東以北にはトノサマガエルはおらず、トノサマガエルと間違われるのはトウキョウダルマガエルだとされている。しかし、トノサマガエルとトウキョウダルマガエルは交雑が可能で、すでにあちこちで交雑種が生まれているという説もある。
我が家の周辺はカエルといえばトウキョウダルマガエル。アマガエルよりずっと多い。都内ではすでにほぼ絶滅したのではないかといわれているトウキョウダルマガエルが、ここではアカガエルやアマガエルよりも多いのだ。
東大チームの論文を知って、もしかすると我が家の周辺にいっぱいいるトウキョウダルマガエルも、都内のヒキガエルのように、すでにトノサマガエルとの交雑種なのかもしれないと思った。(もちろん、それを確かめてみようとは全然思わないが)

上記の論文紹介記事では、こんなまとめが記されている。
社会的意義と今後の展望
生物多様性の中でも遺伝的多様性は、種の存続性を量る指標として重要である。生息地が失われた野生動物の多くが遺伝的多様性を低下させている。一方で、国内移入亜種との交雑問題など、人為的撹乱がもたらす遺伝的多様性への影響については、未だ知見は少ない。生物多様性の維持は人間社会の存続性にも関わることであり、本研究のような都市部の野生種についての遺伝的多様性研究の必要性は、今後ますます高まると考えられる。

だいぶぼかした言い方をしているが、「国内移入亜種との交雑」を単純に「避けるべきこと」として断じるのは危険であり、問題はもっと複雑で深い、といいたいのだろう。

100年以上前からすでに北海道に生きていたヒキガエルを、「北海道にはもともといなかった移入種」だから、「長期的にみて従来の生態系へ及ぼす影響が懸念される」ため「指定外来種」に指定して、保護どころか、「ふ化する前の卵の塊(ひも状)を池などから上に引き上げたり、黒色の小型で群れをなすオタマジャクシを網ですくい出して乾燥死させる方法が効果的です」と、行政が殺戮を推奨している……。
こんな怖ろしいことがあっていいのだろうか。

あなたは、今まで一緒に暮らしていた仲間を、ある日を境に「おまえは我々とは違う血の人間だそうだな。このまま生かしておくとどんどん血が混じっていくから排除するとお上が決めた。悪いが死んでもらう」といって殺すことができるか?
極論したり、難癖をつけているわけではない。人間社会の中でも実際にそういう歴史があった(ホロコーストや関東大震災でのデマなど……)ということを我々は学んできているし、今、この国ではそうした風潮(ネトウヨ、ヘイトスピーチ、嫌韓嫌中本……)が急速に広がっている。

生物多様性を脅かしている最大の生物は人間である。その反省もなく、机上の論理、しかも間違った論理で生物の生殺与奪を簡単に決めてしまう学者や行政。トンデモな決定に対して「ちょっと待て」と声を上げる者もいない現代日本。
……本当に背筋が寒くなる思いだ。

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「デブリを取り出して廃炉」という幻想2018/03/12 12:11

2018/03/10『報道ステーション』(テレビ朝日)より

言えない立場の増田尚宏氏と言える立場の田中俊一氏



↑2018年3月10日放送の『報道ステーション』(テレビ朝日)の特集コーナーより(以下同)

今日、3月12日は1F1号機が水素爆発を起こした「原発爆発記念日」である。
その映像をテレビで見てすぐに、僕たちは川内村の家から逃げ出し、川崎市の仕事場に避難した。あの日からちょうど7年が経った。
今ではメディアも特集などを組むことは少なくなり、今年は森友文書書き換え問題などに食われている(あれもまた国家の根幹を揺るがすとんでもない事件だが)。

一昨日の『報道ステーション』で、1Fの廃炉がいかに困難かという問題を特集していた。
久しぶりに見る増田尚宏氏の苦渋に満ちた顔。この人がこの日記に登場するのは何回目だろうか。まずは2015年の⇒この日記を読んでいただきたい。
2015年3月、NHKの海外向け放送にてインタビューに答える増田尚宏氏
2015年、このインタビューで増田氏はこう語っている。
溶融燃料についてはわからない。形状や強度は不明。
30メータ上方から遠隔操作で取り除く必要があるが、そういった種類の技術は持っておらず、存在しない

(政府は廃炉作業を2020年に始める意向だとしているが)それはとてつもないチャレンジと言える。正直に言って、私はそれが可能だとは言えない。でも不可能だとも言いたくない。

どのくらいの被ばく線量なら許容されるのか? 周辺住民ににはどんな情報が必要なのか? どうすればよいか教えてくれる教科書はない。
私は、ステップごとに決定を下さなければならないわけだが、正直に申し上げて、私が正しい決定をするということは約束できない

国内で放送されないと知っていたからか、かなり正直に胸の内を吐露している。
それが、3年経った現在では、こう答えている。


使用済み燃料を取り除くことは責任を持ってやらなくてはならないやればできるものだと思っている

この言葉の間にはいくつかの言い訳や説明が挟まれていたが、要するに「できる」「やらなければならない」と言いきっている。
3年前には「溶融燃料(デブリ)についてはわからない。形状や強度は不明」と言っていたが、今ではデブリの状態が想像以上にひどい状況だということが分かってきている。
優秀な専門家である彼には、デブリの取り出しなどとうていできないと分かっている。しかし、組織人として「取り出さなければならない」「やればできると信じている」などと答えなければならない立場に置かれていることの苦しさが、最後には悲鳴にも聞こえるような大きな声での叫びとなって絞り出されたように見えた。

増田氏は東電にとって、いや、日本の原子力業界にとってかけがえのない人材だ。彼のスーパーマン的な活躍がなければ、1F同様、2Fも爆発していただろう。7年前、彼が2Fの所長だったことは本当に幸運だった。
が、その彼も、この数年で顔つきがだいぶ変わったように感じる。どれだけ辛い人生を歩んでいることか、察するに余りある。

デブリは取りだしてはいけない

一方で、その直後に登場した田中俊一・原子力規制委員会前(初代)委員長は、相変わらずのシニカルな表情でこう言ってのけた。









廃炉現場の最高責任者に任命され、今も現場を指揮している増田氏と、規制委員長を辞めた田中氏の立場の違いがはっきり見て取れる。
人間としては増田氏のほうを信頼したいが、この点に関しては、田中氏の言うことが正しい。
「そういうことを言うこと自体が国民に変な希望を与える」という発言のときは、「幻想」と言いかけたのを、少し考えてから「変な希望」と言い換えていた。

圧力容器を突き破って底まで全量溶け落ちたデブリを遠隔操作で取り出すなどという技術は存在しない
そもそも、取り出せたとしても、置き場所がないのだ。きちんと形のある使用済み核燃料でさえ保管場所がないのに、不定形になったデブリをどこでどうやって保管するというのか。これ以上、デブリの取り出しにこだわるのは、莫大な金をかけてリスクを拡大するだけの愚行だ。
つまり、デブリは取り出せないし、今は取り出そうとしてはいけない
では、どうすれば今よりひどい状態にならないで長期間、ある程度の安全を得られるかを、合理的に考えなければいけない。そんなことは、誰が考えたって自明の理だ。

できないことを「そのうちできるだろう」「なんとかなるんじゃないか」といって無理矢理金を投入して始めてしまい、取り返しのつかないことに追い込まれるのは原子力発電事業そのものの構図だ。出てくる核廃物の処理や保管技術がないままに原子力発電所を作り、今なお、この根本的な解決方法は存在しない。日本国内だけでも、行き場のない使用済み核燃料が発電所内にごっそり置かれたままだ。
技術が存在しないどころか、エントロピー増大則に従うしかない物理世界(我々が生きているこの地球上)では、核廃物の根本的な処分方法は今後も見つからないだろう。
できないことをしてはいけない──このあたりまえのことを無視するとどんな結果になるか、すでに手痛く体験したことなのに、なぜこの期に及んでまで、謙虚になれない、合理的に判断できないのだろう。

3年前の増田氏の言葉と今の増田氏の言葉を比較すると、絶望的な状況はますますはっきりしてきたのに、逆に正直に答えることはできなくなったという悲しい現実が見える。
増田氏の「組織人」としての苦悩は痛いほど分かるが、とにもかくにも、彼の上で命令を下す人たちがきちんとした判断を下さず逃げてばかりいる限り、増田氏の高い能力も、今後変な方向に向かいかねない。
それこそ、3年前の彼が漏らした「私は、ステップごとに決定を下さなければならないわけだが、正直に申し上げて、私が正しい決定をするということは約束できない」という言葉の重みが、ますます深刻なものになっているのだ。
その闇の深さ、問題の大きさを、現場の人たちだけに押しつけず、我々一般人も、少しは共有すべきではないか。
次の選挙のときには、このことをぜひ思い出してほしい。
どうしようもない破局が訪れる前に、どうせ自分は死んでしまうだろう、という「食い逃げ」の人生でいいのか、と自問自答してみようではないか。


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日光東照宮の修復作業がひどいという話(3) 陽明門2017/09/02 20:32

陽明門って「日本」じゃないよね




さてさて、ここまできたら国宝・陽明門についても言及せざるをえない。
上の写真を見て、「素晴らしい! さすがは国宝だけある」と感心する人がどれだけいるだろうか。これだけ見たら、中華街の看板かなと思うのでは?
中国にディズニーランドもどきの遊園地ができたときのような「なんだこれ感」といったら、さすがに怒られるだろうか。でも、何度見ても、そういう印象しかない。
そもそも陽明門のテイストや題材は中国そのものであり、当時の殿様がいかに中国、あるいは(中国文化を取り入れた)宮中文化に憧れていたかが分かる。アートを理解していない金持ちの家を訪ねると、庭には石灯籠とミロのビーナス像があって、玄関入ると竜の置物やら巨大な切り株に漆を塗ったやつとかが雑然と飾られている……という光景はよくあるが、そういうのに近い感覚を覚える。
中国テイストでも、一つ一つのモチーフがよく出来ているというならまだいい。しかし、どう見てもこれは違うだろう。
上の獅子↑を見ても、明らかにデッサンがおかしい。こんな前脚ありえないでしょ。
誰が見ても「稚拙」でしかないのだが、陽明門はれっきとした国宝なのである。



修復時の彩色が下手だの色が鮮やかすぎるだのという話ではない。もともとの彫刻が下手すぎるのだ↑ この獅子などは、歯(金歯)の補修もおかしいが、もとの彫りそのものがよろしくないから、どう頑張って彩色したところで国宝にふさわしい深みや凄みは出せないだろう。




う~ん、そうかのう……



ディスられてるよ、俺たち。てへぺろ



歯並びもネイルチップも、こんなのありえな~い


では、なぜ陽明門は国宝なのだろうか?

いろいろ調べているうちに、非常に興味深い論文を見つけた。
東京工業大学付属図書館の学位論文アーカイブの中にあった「古社寺保存法時代の建造物修理手法と保存概念」(平賀あまな 2001年)という論文。
ものすごい力作論文で、分厚い本一冊くらいの分量がある。非常に興味深い内容で驚かされたのだが、引用されている資料も旧仮名遣い文語体がほとんどで、全部読むのは大変なので、ここではそのごくごく一部を、内容をあまり変えないようにコンパクトにしつつ紹介したい。

まず、日光東照宮の修復は、江戸時代は20年に1度くらいのペースで小まめにやられていたようなのだが、明治以降はそう簡単ではなくなった。
それで傷みが目立つようになり、栃木県内の実業家や政治家が政府に保存を訴えたが相手にされず、やむなく明治12(1879)年に二社一寺の保存を目的とした「保晃会」が結成され、修理・保全作業に向けて動き出した。
その結果、明治32(1899)年から大正12(1923年)年にかけて大修復作業が行われた。
最初の工事監督は星野男三郎という人だが、建築家の大江新太郎(1879-1936)が明治40(1907)年から工事監督を引き継いだ。
また、大江の先輩格である伊東忠太(1867-1954)もこの工事には大いに意見を出し、影響を与えていたという。
2人の方針は「造営当初の姿を再現する」ことで、そのためには古い漆や絵の具などを剥がして新たに塗り直すという、当時ではタブーとされていた方法に踏み込んだ。欠損した彫刻は、社殿内に残された類似の彫刻物を参考にして作らせた。
大江は、東照宮の価値は「桃山時代から江戸時代への過渡期における建築や美術の様式を伝える標本」としての価値であり、材料が本物かよりも形や色がいかに当時のものに近いかが重要だと考えた。
また、復元後はできるだけその状態を維持できることを重視し、補修するにあたって江戸時代にはありえなかったコンクリートや新素材も躊躇せずに取り入れたという。
例えば、本殿の屋根はもともとは檜葺きだったことが分かっていたが、銅板に変更し、その下には当時最先端の素材でできたルーフィングを施した。東照宮の改築時には、日光の厳しい冬に耐えられるだけの対策が不足していたとの認識もあった。

しかし、古色ゆかしき風情が消えてけばけばしく生まれ変わった修復後の東照宮を見て、当時、多くの人たちは激しく非難を浴びせた。
そうした批判にも、大江と伊東は「時代を経て変化した色や形に価値を見出すのは意味のないロマンティシズムだ」という論法で敢然と反論したという。

東照宮の補修作業はその後も何度も行われているから、神厩の猿や回廊の眠り猫に限らず、今では元々はどうだったのかを知ることはほとんどできないといえるのだろう。

そういう意味では、三猿の目がパッチリして動物園の看板風になったからといって、大騒ぎすることもないのかもしれない。

大江や伊東のように「東照宮の価値は当時の建築・美術様式のサンプルとしての価値である」と考えるのはおかしくはない。江戸初期の建造物はあまり残っていないわけだから、国宝や国の重文に指定される意義も当然ある。
しかし、美術として、アートとして、芸術としての価値が高いから国宝だと勘違いしている人が多いようにも思う。
国宝である陽明門は、歴史的遺物としての価値は高いが、芸術性という点からはまったくよろしくない。これははっきり言いきっていいと思うのだ。
例えば、上に挙げた陽明門の獅子の彫刻と、長い間しまい込まれて人の目にも触れなかった宇都宮・東下ヶ橋の天棚の獅子の彫刻を並べてみれば、彫り師の力量の差は歴然だ。

陽明門↑



東下ヶ橋の天棚 後ろ鬼板↑



東下ヶ橋の天棚は大きなものだが、彫刻群は飛び抜けてすぐれているとは思わない。もっとよくできた彫刻は他の彫刻屋台などにたくさん刻まれている。一つだけパッと思い浮かぶものをあげておけば……↓

鹿沼 銀座二丁目の彫刻屋台 内欄間↑ (Clickで拡大)
ここで並べて見せたのは、獅子の彫刻としてたまたま目に入ったからにすぎない。それでも、陽明門の獅子と比べればはるかにうまいと、誰もが分かるはずだ。
そして、何よりも忘れてはいけないのは、東照宮は権力者が力と金にものをいわせて、無理な工期で作らせたものだが、彫刻屋台は庶民がなけなしの金を出し合い、職人たちも、金以上に「心意気」で、自由に作ったものという大きな違いがあるということ。
幕府から庶民に華美禁止が言い渡されてからは、彫刻屋台は彩色をせず、白木彫刻でどこまで「粋」や凄みを追求できるかを競った。色をつけられない分、彫りは細かくなり、動物の表情なども「彫り」の技術で細やかに表現した。
工芸としてもアートとしても、どちらが価値があるか……その判断は人それぞれの価値観や美意識次第だが、僕は迷わず彫刻屋台に軍配を上げたい。

だからこそ何度でも言いたいのだ。彫刻屋台への認識を改め、もっと公的援助を出してしっかり保存し、多くの人たちの目に触れるような施策をしてほしいと。

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