危機管理能力~加計学園、大坪問題2020/03/15 17:18

危機管理分野であまりにも能天気でありつづける日本は、世界中から奇異な目で見られている。
台湾出身、米国在住の化学者で毒物研究の世界的権威、杜祖健(英語名はアンソニー・トゥー)氏(89)のインタビュー記事が非常に興味深かった。
杜氏は、今後は現状の感染拡大防止措置の強化、徹底などをはかり、治療薬の開発を急ぐとともに、日本の政権中枢に対しては国家レベルでの対外情報収集力の強化や、有事の際の隔離病院船の整備など、教訓を将来に生かすことの重要性を訴えている。

「2003年、中国広東省から感染拡大したSARSに苦慮した台湾では、早期にBSL-4施設を整備し、SARSウイルスをはじめ炭疽菌などを培養、研究してきた」と証言。実際、李登輝政権時代には中国の蘭州発とみられる口蹄疫で養豚業が打撃を受けたこともあり、続投が決まった蔡英文政権でもヒトや家畜なども含め、中国発の未知の病原に強い警戒心が根底にあった。
また、「一般には知られていないが、台湾の研究所でもSARSウイルス漏出騒ぎが発生し、大事に至る前に収束させたことがある」とし、台湾がこの失敗からも危機管理能力を伸長させてきた点を指摘。
「日本は手遅れ」生物兵器の世界的権威が断じる理由 日本は急げ、「対外情報収集力向上」と「隔離船病院の導入」 JBpress 2020/03/15)


89歳でも頭がしっかりしている人はすごいなと驚くと同時に、BSL-4施設といえば、日本では国立感染研と理化学研究所筑波研究所にしかなくて、理研の筑波研究所は住民の反対に遭ってレベル3までの実験しか行わないことになっていることを思い出す。
そして、BSL-3といえば、加計学園の岡山理科大獣医学部問題でも、当初の設計のデタラメさが話題になった。
(国立研究所の動物実験施設管理専門家の指摘) 「ウイルスに汚染される、使用済みケージ、SPF清浄動物、感染動物死体部屋の空気が、同じ狭い廊下を通過する構造となっている。これでレベル3のウイルスを取り扱ったら簡単にバイオハザードがおきる」
【加計問題】「危険なウイルスの漏出100%起きる-専門家が指摘」、内部文書公開の市民団体が警告 志葉玲 2017/08/24)


その後どうなったのかと、岡山理科大獣医学部の公式WEBサイトを覗いてみると……、
動物から人へ
これまでの獣医学は主に動物を対象にした学問でしたが、動物でもヒトでも感染症コントロール、新しい医薬品開発、予防・治療は共通するという考えで、動物とヒトの健康を科学する教育を行います。
「岡山理科大学の獣医学部の特徴」 大学公式WEBサイトより)

 2014年のアフリカにおけるエボラウイルスの大流行は、高病原性の新興感染症ウイルスの脅威を世界に改めて意識させました。1994年にオーストラリアで発生したヘンドラウイルス、1998年からアジアで報告されているニパウイルス、2001年のSARSコロナウイルス(CoV)、2012年から報告されているMERS CoVなど次々と新たなウイルスが出現しています。(略)
このような新興感染症ウイルスに対する対策・研究を国立感染症研究所において、いわば最前線で体験してきたスタッフメンバーによって微生物学講座は、起ち上げられます。
 我々は、バイオセーフティーレベル(BSL)3の実験室を活用して、また日本の、または海外のBSL4施設とも共同研究を実施しながら、最前線での戦いを継続していきます。こうした活動を通じて、この領域で専門家として活躍できる人材の育成を目指します。
微生物講座「One World, One Health」に貢献する! 岡山理科大獣医学部公式WEBサイトより)

で、この岡山理科大獣医学部の微生物講座を率いるために国立感染研究所獣医科学部長を辞めて2019年4月に微生物講座教授として就任したのが森川茂氏で、岡山理大教授就任時には同じ国立感染研のウイルス第一部主任研究官と研究員の2名を引き連れていった……という話も最近読んだばかり。
その森川教授は、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)の「感染症研究課 平成31年(令和元年)度 感染症実用化研究事業(新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業)」に 「動物由来感染症の制御に資する検査・診断・予防法に関する研究」で応募している。
そのAMEDで理事長や委員が「官邸主導の御旗を振りかざして予算や人事を握って一部の人間が行政をゆがめている」「大坪氏が次長になられてから、我々のオートノミー(自立性)は完全に消失している」と告発した、いわゆる「大坪問題」の主役が、大坪寛子厚生労働省官房審議官と、その後ろ盾といわれる和泉洋人首相補佐官

……こう見ていくと、日本が諸外国に比べてあまりにも危機管理能力がない、「対外情報収集力」がなさすぎる、という国家の存亡に関わる大問題もまた、一周回って「大坪問題」や加計学園にたどり着くような気がするのだが……。
いやはや、知れば知るほど、ほんとに「怖い」ね。

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医療現場に任せよ2020/03/15 17:13

キャラクターもののマスクも売り切れ
またまたCOVID-19の話か……とうんざりされそうだが、何年かして読み返すためにやっぱり記録しておこう。
原発爆発後のことも、私自身、あのときどう感じ、どう行動したのか、記憶が薄れているので、たまに当時の日記を自分で読み返して記憶を新たにしている。記録は生々しい内に残したほうがいい。

先日、都内の医師が匿名で投稿したこんな文章を読んでいた。
かいつまむと、
  • 2月末、20代の生来健康な女性が発熱と咳で来院した。レントゲンを撮って肺炎ではないと診断して帰したが、その後も熱が下がらないため、3月7日、12日と3度来院。熱が10日ほど続いているということで、医師から帰国者・接触者センターに電話して、念のためPCR検査をしてほしいと伝えた。
  • センターからの返事は「緊急性がないようであれば、今日は5時で業務が終わっている。明日になっても症状の改善がないなら、医師の方から保健所に連絡をして、指示を仰いでほしい。本人が保健所に電話をしても、検査はしてもらえないので」とのこと。
  • ということは、肺炎等の病状としての「緊急性」がなければ、COVID-19の感染が疑われてもそのまま様子を見てしまってよいということなのか、と、驚いた。
  • 「濃厚接触が疑われる場合であっても、本人から保健所に電話しても相手にされないのか」と確認すると、「濃厚接触者は国が全員を把握しているので患者さん側から申し出があることはあり得ない」との返答だった。だったら、なぜ濃厚接触が疑われる場合は電話相談をするように呼び掛けているのかまったく理解できない。
  • 患者がかかりつけの医療機関を受診しても、肺炎が認められるまでは検査をしてもらえず、あちこちの医療機関を何か所も回ってようやく感染が発覚するという状況が蔓延していると聞いていたが、この対応では当然そうなると分かった。
  • 我々クリニックの現場では、特殊な防護服もなく、マスクさえも手に入らないような状況で診療を続けている。しかも、コロナの感染者が受診したとなれば、風評被害も出るし、業務に支障も出る。こんな状況では診療を行いたくなくなる。
で、この投稿の最後はこう結ばれている。
もし、重症ではないが、コロナかどうかわからない人を通常の日常生活にもどしてしまってさしつかえないのであれば、コロナ感染症を大げさにとりあえず通常の風邪として扱うべきです。そして重症化しない限り心配がないことを広く伝えていくべきです。
もし、コロナ感染症を特別な危険な感染症と本当に考えているのであれば、疑わしい患者さんをしっかり検査して、自宅隔離でも何でもよいので隔離措置をとるべきです。現在行われていることは、このどちらでもなくいたずらに不安と混乱を招き、医療現場を疲弊させる行為であると強く感じました。
新型コロナウイルス、”持ちこたえている”という評価の中で現実に起きていること 医療ガバナンス学会メールマガジンVol.050

こうした状況というのは、SARSや2009年の新型インフルエンザのときに経験済みなはずなのに、日本ではその経験を生かして、次に新種の感染症が上陸したときの対応を整備していなかったので起きている。
やれたはずのシステム改革としては、
  • 高血圧や花粉症の薬をもらうためだけに病院を訪れるような無駄を減らせるよう、ネット診療システムを構築・拡充する
  • 新種の感染症が広がったときに、一般のクリニックは「①発熱外来を別に作り、一般外来患者と診療動線を完全に分けて対応する」「②発熱患者専用病院に切り替わる」「③発熱患者は受け付けず、提携の①か②の病院に回ってもらう」の3通りに臨時編成する
  • 感染の有無を素早く確認できるような検査システムをすぐに作れるようにしておく
  • すぐに動ける専門家対策チームを平常時から組んでおく
といったことだろう。
今日本がやっている大きな間違いは、本来研究機関である感染研が診療体制を仕切っていることだ。感染研がやるべきことは新種の感染症が出た場合、その正体に迫ってデータを積極的に公表することであり、一般診療体制に口を出すべきではない。
診療のための検査と研究のための検査は別物である。感染研はむしろ、発病者に関係なく、一定のエリアで無症状者を含めた定数サンプリングなどをして、新種のウイルスの感染率や発病率などを突きとめることだ。そのデータを医療現場に渡した後は、医療現場でどう対応するかは医療現場のプロに任せればいい。それなのに検査体制全体に口を出し、「重症化した人だけ検査」などということになっている。
ここが根本的な誤りなのに、未だに日本ではPCR検査を増やすべきか抑えるべきかなどという筋違いな議論を続けている。

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COVID-19対策は自治体主導に切り替えよ2020/03/10 18:00

国に頼れないと分かった以上、自治体や民間レベルで万全の構えを!

さて、もはや日本政府や厚労省にはまったく期待できないことが明白になったので、今はもう政府を責めても何も前に進まない。
海外から入ってくるデータをもとに、できる限りの予測をして、悪い方向に進むことを前提にした備えを自治体レベルで早急に進めることが求められる。
新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、素早く設置できる「医療用陰圧テント」のニーズが高まっている。膜構造物メーカーの太陽工業(大阪市)は2020年3月6日、同社が販売してきた医療用陰圧テントについて生産体制を強化すると発表した。
「新型コロナで需要急増、太陽工業が医療用陰圧テントの生産体制強化へ」 日経クロステック/日経アーキテクチュア 2020/03/10)

↑まさにこういうことだ!
  • 各病院はそれぞれの規模に合わせて「発熱外来」の独立設置を確保するように全力で動き始める(駐車場スペースなどを使って別の動線と他の患者との分離を確立した診察棟をテントやプレハブユニットでもいいから作っておく)
  • 医療・介護現場のスタッフが倒れないよう、自治体は共稼ぎ子持ち家庭を全力でバックアップする(国の「要請」を鵜呑みにせず、地域の実情に合わせた臨機応変な対応を毅然とする)
  • 企業は従業員の就労環境改善を劇的に進める
  • マスクやアルコール消毒液は医療機関・介護施設へ優先して渡るようにする(一般家庭ではそれらを買い占めず、手洗いの徹底でよい)
  • だれが感染したらしい、ではなく、だれが弱っているらしいという視点で、病人を早く手当てできるよう周囲が協力する(感染者差別の風潮をやめないと、病人が病状を隠して無理をしたり病院に行かずに引きこもったりして、感染拡大や衰弱死増大につながる)

……そういうレベルで各現場が対応しないと大変なことになる。

メディアは経済が経済がと騒ぐが、経済=株価や為替レートではない。人々の活力が失われ、動けなくなることが最悪の事態へと導く。人が動かなくなると、福祉に支えられている高齢者や、不安定な仕事でぎりぎりの生活をしている貧者などの弱者から順番に倒れていく。被害をどれだけ小さくしていけるかという戦いなのだ。

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深刻すぎる「和泉・大坪問題」2020/02/29 01:44

岡田晴恵教授の「告発」

今日(2月28日)の「羽鳥慎一モーニングショー」で、白鴎大学の岡田晴恵教授(元・厚生労働省国立感染症研究所ウイルス第三部研究員)が悲壮な表情で重大発言をした。
この発言の前に、いつも適確な指摘をする玉川徹氏が、PCR検査が保険適用になればすべての医療機関から民間の検査施設に直接検体を送れるような、ちょっと勘違いな解説を延々としていたので、まずそこを指摘しておきたい。
PCR検査が保険適用になるだけでは事態は全然解決しない。保険適用になっても、検査の依頼が保健所を通してという馬鹿げたシステムのままだったら、入り口が閉じられていることは変わらず、検査数は増えないまま、今は国が負担している検査費用の一部を患者が自分で負担するだけのことになってしまう。
司会の羽鳥氏もそのことを分かっていて、指摘しようとするのだが、玉川氏の熱弁が終わらず、その問題が視聴者に伝わらないままだった。
その間、岡田教授はずっと悲壮な表情をしていた。これから言おうとすることを、本当に言っても大丈夫かどうか、ずっと悩んでいたのだろう。
岡田教授は玉川氏の熱弁が一区切りしたのを見計らい、どこか怯えたような口調でこう切りだした。
私は、あの、プライベートなことはあまり言いたくないんですけど……中枢にある政治家の方からも「こういう説明を受けたんだけど、解釈、これでほんとにいい?」という電話がかかってくるんですけど……まあ、複数の先生方、正直言いまして、クリニックから直接かってことについては、ちょっと待ってくれって言われているんです。だからそれ(PCR検査を他の検査のようにクリニックから直接民間検査会社に出せるかどうかということ)はまだ分からない。
↑これは、玉川氏がその問題にまだ気がついていないことを指摘した「前置き」部分。
注意したいのはこの「先生方」というのは中枢にある政治家(自民党厚労族議員?)の「せんせい」という意味。それも一人ではなく複数だという。
以下のことは、この「先生方」から直接聞いた話として吐露された。
要約するとこうなる。
  • 私は今まで、検査させないのは東京五輪などの巨額な経済事情絡みで、「汚染国」のイメージをつけたくない。そのためには感染者「数」を増やしたくないからなのかと思っていた。
  • しかし、思いきって(自分に意見を求めてきた政治家に)そうぶつけてみると、「ハハハ」と笑いながら「そんな、数をごまかすほど肝が据わった官僚は今どきいません」と。(そうではなく)これは「テリトリー争い」なんだ、と。
  • 要するにこの(PCR検査の)データはすごく貴重で、感染研がそのデータを独占したいと言っている感染研のOBがいる……と。そこらへんがネックだった、と。
  • 各地の衛生研から集まってくるデータは全部感染研で掌握する(しかし、民間に出してしまうと独占できなくなる……という意味)
  • それを聞いて私が思ったのは、そういうことはやめていただきたい、と。
  • 初動が遅れたのは感染検査データが取れなかったから。研究がどうの論文がどうのではなく、人命を救うという感染研の元々の使命に立ち戻ってほしい。

↑岡田教授の、ある意味命がけのこの「告発」を聞いて、スタジオ内はしばし静まりかえった。

要するに、国立感染研究所と政府を結ぶルートに、検査データを民間機関に出したくない、独占したいと強くごり押しする人物(複数)がいるから、ここまでひどいことになったのだ、というわけだ。
しかもこの期に及んで、その勢力はCOVID-19のPCR検査をするためには保健所~自治体の保健衛生部を通させようとしている、と。
保健所や自治体を通さなければ検査に出せないのだとすれば、入り口は固く締まったままなので、民間検査会社を入れようが保険適用にしようが検査数は増えないし、検査のタイミングはどんどん遅れてしまう。
そんな馬鹿なことがありえるのか? と、常人なら誰もが思うわけだが、実際、それと同じことを上昌広医師も前々から言っている。
私は、政府機能を強化することで、感染症対策が上手くいくようになるというのは、何の根拠もない仮説に過ぎないと考えている。むしろ、現状を把握してない政治家・官僚、さらに有識者の権限が強化されることで、被害は増大すると予想している。

厚労省はクリニックでも診断できる簡易キットの開発にご執心で、感染研に予算措置した。確かに簡易検査はあれば便利だが、開発されるまで待つなど、悠長なことは言っていられない。
(「遺伝子検査行う体制作り急げ」2020/02/25)
私は厚労省と国立感染症研究所の内輪の都合が優先されていると考えている。
今回の新型コロナウイルスの流行では、検査だけでなく、治療薬やワクチンの開発も国立感染症研究所が担当するそうだ。巨額の税金が研究開発費として投じられるだろう。
長期的な視野に立つ基礎研究ならともかく、早急な臨床応用が求められる創薬や検査の開発は、メガファーマや検査会社の仕事だ。「研究所」では彼らと競争できない。なぜ、安倍政権は、民間に競争させず、国立の研究機関に独占的に業務を委託したか、「国民の命より、官僚の都合を優先した」と言われても仕方ないのではないか。
私は、新型コロナウイルス対策の迷走の責任は厚生労働省にあると考えている。多くの官僚は真面目に業務に励んでいる。ただ、その方向性が間違っており、利権も絡む
「なぜ厚労省は大がかりなウイルス検査をこれほどまでに拒むのか」文春オンライン 2020/02/14)

ここまで見てきても、やはり我々一般人には理解を超えた非常識、不条理に思える。そんなことがあっていいのか、と。
しかし、これを裏付けるような話は以前からいろいろ漏れてきている。
27日の衆院予算委員会で、立憲民主党の川内博史議員の質問で驚きの事実が発覚。25日に厚労省の研究機関「国立感染症研究所」から北海道庁に派遣された3人の専門家が「検査をさせないようにしている疑念がある」と指摘したのだ。
道の対策本部に派遣された3人は、政府が策定した基本方針に記載のある〈入院を要する肺炎患者の治療に必要な確定診断のためのPCR検査〉の実施を必要以上に強調。暗に、「軽症の患者は検査するな」との意向をにおわせ、道職員や保健所職員の間で「検査し過ぎてはいけないのか……」という空気が生まれているという。川内議員は道議会議員から聴取した内容だと明かした。
「新型コロナ感染者急増の北海道で厚労省“検査妨害”発覚 政権に忖度か」日刊ゲンダイDigital 2020/02/28

想像を絶するほど深刻だった「大坪問題」

国立感染研と厚労省、厚労省と政府……ここにどんな利権問題が生じるのか、という疑問が当然浮かんでくるが、これもいろいろな記事が出てくる。
大坪氏が昨年7月に異例のスピード出世で厚労省審議官に抜擢されたのは和泉氏が強引に大坪氏を推した結果だといわれているが、不倫デートを楽しんだ京都大学iPS細胞研究所への出張では、和泉氏と大坪氏の2人がノーベル賞受賞者の山中伸弥所長に対して、来年から山中所長の取り組むプロジェクトに「国費は出さない」と言い放ち、大坪氏が「iPS細胞への補助金なんて、私の一存でどうにでもなる」と恫喝していたことがわかっている。この予算カットは、文科省が反対していたものを和泉氏が後ろ盾となるかたちで大坪氏が強硬に主張したものだ。

「健康・医療戦略室」は室長が和泉首相補佐官、厚労省の大坪氏が次長を兼任する、まさに不倫関係の舞台となってきた部署だが、もともとは、安倍政権が成長戦略のひとつとして医療関連産業の育成を掲げ、2013年に内閣官房に設置したもの。ただし、厚労省、文科省、経産省が支援する医学研究予算を集約させて効率的に配分するためには専門性と効率性が必要だとし、「健康・医療戦略の司令塔」として独立行政法人日本医療研究開発機構(AMED)を発足させた。 今年1月9日、そのAMEDで理事長や専門委員、さらに大坪氏らも参加するかたちで、第10回AMED審議会が開かれたのだが、ここで委員や理事長から飛び出したのが、大坪氏の独断専行への批判だった。
(「“安倍側近の不倫コンビ”和泉補佐官・大坪審議官の新疑惑を政府機関理事長が告発! 感染症研究などの予算80億円を自分の担当事業に投入」 Litera 2020/02/13)

この記事では、2020/01/09に独立行政法人日本医療研究開発機構(AMED)の審議会で噴出したAMEDの委員や理事長の「告発」が、議事録から抜き出す形で紹介されている。
まとめるとこんな感じだ。
瀧澤美奈子・専門委員(科学ジャーナリスト):「(「週刊文春」が報道したiPSのストック事業にストップをかけた件に言及し)こんな手続が許されているなら、今日のこのような会議も全く無意味ではないかと思います」
官邸主導の御旗を振りかざして予算や人事を握って一部の人間が行政をゆがめているのではないかという疑いが国民の間で今、広がっております。その説明責任をしっかり果たしていただかないと、この会議自体も全く無駄なものになると思います」

末松誠理事長:「昨年の7月以降、実質的にはそれより前から始まっていたかもしれませんけれども、大坪氏が次長になられてから、我々のオートノミー(自立性)は完全に消失しております
「事はiPS細胞ストック事業の問題だけではございません。健康・医療戦略室のイニシアチブのおかげでAMED発足してから最初の3年間あるいは3年半は非常に順調な運営ができたというふうに自分自身でも思いがございますけれども、各省の予算のマネジメントに関する相談等は全部健康・医療戦略室を通してやるようにということと、担当大臣とか政治家の方々とコンタクトをとるなということを大坪次長から言われております。その証拠も残っております」

ここで末松理事長は、それまで使われることのなかった「トップダウン型経費」に昨年末初めて88億4000万円が配分された問題を取り上げようとして、AMED審議会会長の田辺国昭氏に遮られてしまった。
この「トップダウン型経費」のほとんどにあたる約80億円が厚労省の「全ゲノム解析実行計画」に使われることが、大坪氏の独断で決まったことへの抗議だったという。
「全ゲノム解析実行計画」というのは、厚労省ががんと難病の患者を対象に、すべての遺伝情報(ゲノム)を網羅的に調べ、創薬などに活かそうというもの。医療産業に国際競争力をつけるという意味では重要だが、感染症対応のような緊急性や画期的な成果の発見があるわけではなく、「トップダウン型経費」の趣旨とはまったく違う。
にもかかわらず、こんな不可解な予算のつぎ込み方がされたのは、ほかでもない、この「全ゲノム解析実行計画」の厚労省での取りまとめ役が大坪氏だったからだ。つまり、大坪氏は自分の省庁での担当のプロジェクトに金を優先的につぎ込むため、本来の使途を歪めるかたちで予算を充当しようとしていた。末松理事長はそのことを告発しようとしたのである。
同記事より)

他にもある。
問題とされているのは、和泉首相補佐官が国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の理事、執行役および経営企画部長を自らの執務室に呼びつけた上、自分の言うことと、内閣官房健康・医療戦略室の大坪次長の言うことを聞いてうまくやらなければ、人事を動かす、具体的には、「所管府省からの出向ポストを他の府省に振り替えるぞ」といった類いの「恫喝(どうかつ)」をしたというもの。
和泉首相補佐官が問題なのは「不倫」よりも国家公務員幹部人事への専横ぶりだ DIAMOND Online 2020/02/25)
で、この和泉首相補佐官と大坪審議官の関係はすでに有名になったが、大坪審議官はあろうことか今回大問題となったダイヤモンドプリンセス号対応問題では現場で勝手な行動を繰り返して現場のDMATメンバーらから総スカンを食っていたことも分かっている。
(乗船した)医師は、大坪氏が船内で起こした2つの問題行動についてこう証言する。
「作業場であるサボイ・ダイニングは左右に分けられており、右側は食事可能エリア。一方、左側の作業エリアでは、感染対策で飲食ができないルールになっていました。しかし大坪さんは、作業エリアにもスイーツやコーヒーを持ち込み、『美味しい』と言いながら堂々と飲み食いしていたのです。あるときその様子を見咎められ、全体ミーティングで『作業エリアで喫食しないように』と改めて注意喚起がありました」

「基本的に船内では常にマスクをしていなければなりません。外しても良いのは、着席して食事を摂るときくらいです。しかし大坪さんは、マスクをしていない姿がしょっちゅう目撃されています。そのため、こちらも全体ミーティングで看護師から『マスクをしていない人がいる。着用を徹底するように』と注意がありました」
マスクをしていない姿が……大坪寛子審議官が「ダイヤモンド・プリンセス号」で問題行動 文春オンライン 2020/02/26)
大坪氏の経歴を見ると、
  • 1992年 - 東京慈恵会医科大学医学部卒業
  • 2007年 - 国立感染症研究所血液・安全性研究部研究員
  • 2008年 - 厚生労働省入省
  • 2008年 - 厚生労働省医薬食品局血液対策課配属
  • 2009年 - 厚生労働省健康局結核感染症課配属
  • 2010年 - 厚生労働省医薬食品局血液対策課配属
  • 2011年 - 環境省総合環境政策局企画課特殊疾病対策室配属
  • 2011年 - 環境省総合環境政策局企画課石綿健康被害対策室配属
  • 2012年 - 環境省総合環境政策局企画課特殊疾病対策室室長
  • 2013年 - 厚生労働省医政局総務課医療安全推進室室長
  • 2015年 - 内閣官房健康・医療戦略室参事官
  • 2019年 - 厚生労働省大臣官房審議官危機管理、科学技術・イノベーション、国際調整、がん対策、国立高度専門医療研究センター担当)
……となっている(Wikiより)
「大坪氏は『大臣や政治家と勝手にコンタクトを取るな』とか『すべて健康・医療戦略室を通すように』などともAMEDに通告したそうで、さすがに自民党内でも『やり過ぎだ』と問題になった。和泉補佐官と大坪氏、どちらの意向なのかはハッキリしませんが、その独断専行ぶりは、関係者の間で“大坪問題”と呼ばれています」(自民党厚労族議員

野党は和泉補佐官の国会出席を要求し続けているが、与党は官邸に忖度して却下。
研究者は“大坪問題”と…新型肺炎にも影落とす独断専行ぶり 日刊ゲンダイDigital 2020/02/13)

和泉補佐官の名前がスキャンダラスな形で表に出てきたのは今回が初めてではない。3年前のことを忘れてはいけない。
和泉補佐官が最初に前川氏に対し「文科省の対応を早くしてほしい」と求めたほぼ同じタイミングの昨年9月6~7日、加計学園の加計孝太郎理事長が松野博一文科相、山本幸三行革担当相と会っている。文科省の現場は陰に陽に「加計学園獣医学部新設」の圧力を感じていたに違いない

和泉補佐官は9月15日に安倍首相と面会している。これは国家戦略特区WGで「獣医学部の新設」に関するヒアリングが行われ、冒頭、事務局の藤原豊審議官が〈総理からも(略)提案課題について検討を深めようというお話もいただいております〉との発言が飛び出した日の前日だ。
9月26日には内閣府審議官と文科省担当課長の打ち合わせが行われ、内閣府の参加者が〈「できない」という選択肢はなく〉〈官邸の最高レベルが言っている〉と発言したメモが残っている。翌27日には官邸で前川氏と松野文科相が安倍首相と面会しているのだが、おそらく前川氏はあらためて「難しい」と説明したのだろう。そこで、和泉補佐官は再び前川氏を呼び出したという流れだ。
(略)
和泉補佐官は国家戦略特区諮問会議が開かれる2日前の11月7日にも安倍首相と面会。これは、「文科省と話はついた」との報告に出向いたとみられる。つまり、前川氏に対する2度目の“恫喝”で加計学園の獣医学部設置は決まったとみていい。
安倍首相の“影武者” 和泉補佐官が加計学園をねじ込んだ日 日刊ゲンダイDigital 2017/06/01)


結論(もちろん推論だが)は書かない。
しかしまあ、これだけ並べていけば、多くの人は「……そういうことなのか……」と想像はつくだろう。
普通の国だったら、モリカケのときにとっくに吹っ飛んでいたはずの政権、権力機構が、その後も公文書改竄や廃棄という国家を根底から崩壊させるような犯罪、子供でも分かるような嘘を続けてきた。
それを許してきた国民……。

今日読んだこのコラムの結びは、まさに! と思わされた。
少なくとも現状の日本では「民主主義」が機能しているのだから、政治家を罵倒しても、その政治家を選んだのは自分たちであって、意味がない。
もし権力の有効なコントロールを私たちが実現できなければ、「専制と民主のどちらが優れた仕組みなのか」という議論に対して、有力な判断材料を提供することになるだろう。「社会の信頼感や人々の善意という前提の上に、まがりなりにも繁栄してきた『日本という仕組み』」が、果たして生き永らえることができるのか、今回、その答えが出てしまうことになるかもしれない。
そうだとするならば、われわれ日本人としては、国家の強権なしでも個人や民間の自律性によって悲惨な事態の発生を抑え込み、世界に見せてやるという気概を持つべきだ。これは民主国家日本国の興廃を賭した闘いになる。
「スジ」の日本、「量」の中国 田中 信彦 日経ビジネス 2020/02/28)

↑この人はなんとかきれいに結んでいるが、原発爆発のときから何も変わっていないどころか、どんどん劣化していることを見れば、今さら無理だろうと思う。
結局のところ、モリカケのときにいい加減に放置して「法治国家崩壊」を止められなかったことが致命傷になっている。国家の秩序と倫理観を破壊するやっかいな因子を根絶し、増殖を止められなかったために、社会秩序の崩壊パンデミックが起こり、ここまで国が壊れてしまったといえるのだろう。


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新型コロナウイルス 専門家たちの発言・まとめ2020/02/23 22:26

COVID-19について、感染症対策の専門家たちはどう発言しているか、まとめてみた。
参考にしたのは、
  • 岡田晴恵(白鴎大学特任教授・専門は感染症学、公衆衛生学、児童文学)……連日テレビに出演し、すっかり顔が知られているあの人。
  • 岩田健太郎(神戸大学病院感染症内科診療科長・教授)……YouTubeにクルーズ船内の状況がひどいという動画をUPして注目されたあの人。
  • 高山義浩(厚労省技術参与)……岩田教授のYouTube動画についてフェイスブックで一部訂正・反論するコメントを出して注目された人。
  • 上 昌広(医療ガバナンス研究所理事長・元東京大学医科学研究所特任教授)……「そもそも総研」の玉川氏のインタビューなどで、政府がCOVID-19の感染検査を本気でしようとしていないことを批判。
  • 高橋 央(新ゆり内科院長・米国CDC実地疫学認定医。2003年にはWHO短期コンサルタントとして、フィリピンSARS封じ込め チームリーダーとして活動)……2月23日放送の日本テレビ「バンキシャ!」では「東京五輪を強行突破で行ってはいけない。引き返す勇気も必要」と発言。
……など、感染症研究を専門とし、学術だけでなく、実際にパンデミック現場を生で見てきた人たち。

全員がほぼ一致しているのは、
  • 日本での感染はすでに拡大期に入っており、今からできるのは感染者・重症患者の増加カーブをなだらかにする努力だけ
  • ピークカーブを押さえてカーブをなだらかにするために、収束時期が遅くなることは仕方がない
  • 感染ルートはもはや追えないし、追っても意味がないので、これから出てくる重症者をいかに減らすか、重症者を死なせないかが最大の課題
ということだ。

以下、いくつかの意見・見解をまとめてみた。

高山義浩氏が 2020/02/16 にFacebookに投稿した文章の要点
  • 新型コロナに感染したときの臨床像は、上図のような2つのパターンに分けられる。
  • 大半の人は、風邪症状が1週間ぐらい続き、そのまま軽快する。普通の風邪は2、3日で治るが、新型コロナだと長引くのが特徴。
  • その1週間で軽快しない場合は、倦怠感と息苦しさが出てくる。体のむくみや下痢などが出ることもある。高齢者や基礎疾患のある人がここまでこじらせやすいが、子供は稀。
  • 感染してから発症するまでの潜伏期間は5日(1-11日)ぐらい。入院を要するほどに重症化するのは、さらに10日(9.1-12.5日)経ったころだと見積もられている。
  • 感染力が強いのは、発症から3~4日目ぐらいだと考えられるが、重症化すると感染力も維持されて院内感染を引き起こしやくなる。
  • 世代別の疫学報告がまだ出揃っていないので正確なことはいえないが、ざっくりとした印象では、若者の重症化率と致命率はほぼゼロではないか。一方、感染した高齢者の1割ぐらいが重症化して、1%ぐらいが死亡するのではないかと感じている。要介護高齢者や入院患者では、さらにリスクが高まる。
……とした上で、
  • もはや、流行を抑止することは主たる目的ではない。重症化する人を減らし、死亡する人を極力減らすことに力を注ぐべき
  • 高齢者や基礎疾患(糖尿病、高血圧、腎臓病など)のある人(=ハイリスク者)に感染させないようにすることが最重要課題
  • このような家族がいる場合、ウイルスを外から持ち込まないように、玄関先にアルコールを置いて帰宅時の手指衛生を徹底すること。
  • 同居人が風邪をひいたら、症状が治まるまで家庭内で隔離。難しければ、ハイリスクの者を親族の家などに疎開させる。
  • 風邪症状に過ぎないのに新型コロナかどうかを確認するためだけに、救急外来を受診することは避ける。そこでハイリスク者に感染させてしまうことになりかねないから。
  • 高齢者施設の感染管理は極めて重要。100人の入所者がいる施設で新型コロナがアウトブレイクした場合、30人以上が発症し、10人以上が救急搬送を要して、数人が死ぬというイメージが必要。
……と、特に高齢者や病人にウイルスをうつさないことの重要性を強調している。

岩田健太郎氏も2020/02/16付のブログで「COVIDと対峙するために日本社会が変わるべきこと」と題し、同じようなことを言っているが、そもそも「日本の社会風土を変えていかなければいけない」と訴えている。
  • 感染症の広がりはウイルスだけが決めるのではない。社会や個人の振る舞いも大きく影響する。
  • 日本人は風邪症状くらいでは休まないから、他の国より感染が広がる可能性が高い(和歌山の医師が発熱後も解熱剤を飲んで大阪の病院でバイトしていたのがよい例)。
  • COVID-19での死者を減らす方法は、日本の社会風土を変えていくことである。
具体的には、
  • 風邪をひいたり体調を崩したら家で休む。社会もそれを許容する
  • しんどくなったらマスクを付けて速やかに病院を受診する。しんどくなければ必須ではない。しんどさの基準は個人差があるので個々の判断で。
  • 自宅に家族がいれば、病気の人はマスクを付けて、神経質に何かに触るたびに手指消毒をする。何度でも。
  • 仕事や学業を効率化する。人が集まらねばならない会議は最小化して、メールでできること(特に連絡事項)はすべてメールやチャットなどでやる。自宅でできる仕事も自宅でやる。
  • 医療リソースと公衆衛生リソース(役所含む)を大切にする。モノと人、マスクを無駄遣いしない。人も無駄遣いしない。すぐに病院に駆け込まない。「何かあったらすぐ病院に」と勧めない。夜中の記者会見など無駄なことはしない(記者会見もチャットでやればいい。昼間に)

翌、2/17のブログ「結果を出すということ(COVID対策)」ではさらに、こう駄目押ししている。
  • COVID感染者数を全数把握する意味はない。風邪の数を数えても得るものは小さい。
  • 無症状の者を検査する意味はまったくない。一方で、肺炎で死んだ人が新型コロナウイルスに感染していたかどうかの追跡調査は絶対にやらなければいけない。
  • 日本が目指すべきは、中国やその他の国よりもCOVIDの死亡率を減らすこと。
  • なんとなく都市機能を維持し、Skypeを使わない会議を続け、オリンピックもやって、なあなあでやり過ごしていけば、そのうちに世界中に新型ウイルスが蔓延し、問題が大きくなりすぎて誰も非難しなくなる。その流れでいけば政治的には成功したと思うのかもしれないが、感染症対策としては絶対に間違っている。
  • 本来ならば大臣や知事が記者会見をするのではなく、専門家集団が自分たちがやったこと、見つけたこと、これから見つけようとしていることを情報公開すべき。しかし専門家集団の存在そのものが見えてこない。
  • なあなあの対応でやり過ごすことは、長期的には「日本の発表、データは当てにならん」という評価になって大打撃になる。失った信用を取り戻すのはとても時間がかかる。中国はSARSのときにそれを思い知ったから、今必死で名誉挽回を図っている。
  • 新しい感染症が出た後の日本の総括はいつもグダグダだった。何をめざすか(使命)が曖昧なので総括もふわふわになる。今まではそれでやり過ごせたかもしれないが、今回は世界中から日本が注目されている。もうグダグダ、ふわふわは許されない。

しかし、今の日本では曖昧ふわふわグダグダどころか、 ↑こんなことが起きている。

上 昌広氏もほぼ同じことを言っているが、上氏はさらに「現場のことは現場をいちばんよく知る者に任せよ」「国は専門家ではないのだから指示を出すのではなく、後方支援に徹せよ」と強調する。
医療のことは各病院の院長が責任を持って指揮すればよい。現場特有の問題が必ずあって、それに合わせて臨機応変に動かなければいけないのだから、それを国がいちいち縛ったり、的外れな命令をしてはいけない、というわけだ。
ストレートな物言いをするために「反政府の左翼」などというアホな攻撃コメントも数多く目にするが、彼だけでなく、現場で命がけの活動をしてきた人たちは、政治家に期待できないことを嫌というほど学んできている。その結果、どうすればいいのかという具体策の提言をしているだけであり、政治色がどうのではなく、理系人間としての合理主義を貫いているだけなのだ。
上氏は2011年の津波被害や原発爆発後の現場に何度も足を運び、現地での復興の困難さを見てきている。
2015年に上氏が書いているこのリポートなどを読んでも、彼が極めてまっとうな合理主義者であることが分かる。
筆者たちが健診や内部被曝検査などの活動を遂行できたのは、川内村役場のチーム力のおかげだ。遠藤村長が率いる川内村役場の方々は、住民への説明、我々への案内などを完璧にこなしてくれた。
(2015年7月 ブログ「絶望の医療 希望の医療」上昌広 「住民の帰還問題を解決に導く川内村の特養」 より)
↑これを読んで、川内村に7年暮らしていた私も、村長や隣家のけんちゃん(ジョンの飼い主)の顔が浮かんで嬉しくなった。
ちなみに、原発爆発直後に川内村で起きていたことは、⇒2011年3月の日記のこのあたりに詳しく記録しているので、興味があるかたは読んでください。

メディアよ、しっかりしろ

毎度のことだが、メディア(特にテレビ)の報道については、本当にガッカリさせられる。
  • 1)ミステリーとかパニック小説のように、感染経路を追う推理みたいな話にして視聴者を引きつける
  • 2)水際作戦の失敗と市中感染を認めざるをえないとなって、責任論に持っていく
  • 3)あちこちに悲劇やアホ喜劇を見つけようとして、劇場化させる
……という段階が終わり、
  • 4)今までタブーだった東京五輪の開催危機に関して、いよいよ触れないわけにいかず、恐る恐る報じ始めて、政府と庶民(視聴者)の表情を窺う←(今ここ)
  • 5)東京五輪がどうなるのかは分からないが、その後、COVID-19は日常の一部と化していく。「今年のコロナウイルスはC型が主流のようです」なんて、インフルエンザと同じ扱いになるだけ←多分、こんな感じになっていくのではないかなあ……

……3.11の後がまさにこういう流れだった。今回も同じなのか? 何も学ばない、反省しないのか?


上氏はテレビにもときどき出てくるが、事前に「政権批判のようなことは言わないでください」と念押しされることもあるそうだ。
連日テレビに出ずっぱりの岡田晴恵氏は、このところすっかりやつれてしまったように見える。やはり相当なプレッシャーを受けながらの出演で、身体より精神的な疲労が溜まっているのだろう。心配だ。
今日(23日)、日本テレビ「バンキシャ!」に出演した高橋央(ひろし)氏は、静かな笑みを時折浮かべながら、淡々とした口調で、感染がどんどん広がっていくのは専門家なら誰もが分かっていることで想定内だとした上で、「東京五輪は強行突破しようとしてはいけない。引き返す勇気も必要」だと述べた。おそらく、これには番組制作側も慌てたのではないだろうか。
これが最後の起用にならないことを祈りたい。

メディアはどこを見て報道すべきなのか。
誰も見る必要はない。見るべきは人の顔ではなく、現場の実状である。
今起きていることだけを伝えればよい。そして、誰かの代弁者ではなく、今起きていることを正しく分析し、合理的な判断を示してくれる人を呼べばよい。
例えば、23日には千葉市内の中学校に勤める60代の女性教諭が感染していたことが分かったと一斉に報じられた。
校内感染は起きていないのか? と心配するところまでは普通の伝え方だろう。しかし、「生徒たちにうつしていないのでしょうか?」という誘導は絶対にやってはいけない。これは完全なミスリードだからだ。
なぜなら、この教諭はたまたま具合が悪くなって検査をしたから感染が分かっただけであり、誰からいつどうやってうつされたのかは分からない。教諭から生徒へではなく、その逆である可能性がある。教諭より生徒のほうが数は多いし、若年層のほうが発症しにくいことはすでに分かっているのだから、無症状のまま感染している生徒が複数いて、そこから60代の教諭にうつった可能性も高いのだ。
さらにいえば、ウイルスに対して60代の教諭と10代前半の中学生とどちらが「弱者」かを考えれば、明らかに教諭のほうが弱者であろう。
では、この中学校の生徒全員を今からPCR検査できるのか? ……現時点での検査体制(恣意的に検査数を減らそうとしている)ではできないだろうし、するべきなのかどうかという判断も難しい……ということを、専門家たちの発言を聞いて学んだ私たちは知ることができる。
メディアの使命は、視聴者、読者が正しく判断できるような情報を提供することだけである。


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岩田医師と高山医師の絶妙な連係プレー?2020/02/21 22:39

世の中は「新型コロナウイルス」(以下「COVID-19」と表記)のことで連日大騒ぎになっている。
分からないことだらけだが、2月21日の現時点で見えてきたことをまとめてみる。

COVID-19について分かっていること

  • 感染力は強く、当初言われていた接触感染、飛沫感染の他にエアロゾル感染がかなりあるのではないかという情報やデータが出てきた
  • 感染しても気づかないくらい抵抗力のある人もいるが、その人たちも人に感染させる可能性はあるのでやっかい
  • 発症後の症状の最大特徴は「経験のないほどの倦怠感」で、起きて動く気力もなくなるほど。他に、なかなか下がらない熱、咳、ときには下痢など、風邪に似た症状
  • 若年層は感染しても症状が出なかったり、出ても回復が早く、ほとんど重症化しない
  • しかし、高齢者や持病のある人は風邪症状が続いた後、一気に重症化し、死に至ることもある
      ⇒(そのため、致死率は高齢者(65歳~)とそれ以下で分けて算出したほうがいいのではないか?)
  • 重症化の初期タイミングで抗HIV薬の投与により症状改善が望めるらしい
  • 日本での水際作戦は失敗し、2月下旬時点で、すでに日本国内での市中感染がどんどん拡大している
  • 終息予測はたっていない。SARSのときのように気温が高くなれば弱まるのかも不明。一旦感染した人が抗体を持ち、再感染しないのかもよく分からない

ダイヤモンドプリンセス号問題

次に、注目を集めているダイヤモンドプリンセス号の乗員乗客の状況と、それに対する日本政府の対応については、こうなるだろうか。

  • 船籍はイギリス、運営企業はアメリカ(ダイヤモンドクルーズ社)。2月3日に横浜港沖に停泊した時点で乗客は2666人、乗組員が1045人(合計3711人)が船の中にいた
  • 乗客の国籍は56カ国・地域に渡り、このうち日本人の乗客はおよそ半数の1281人(*)。乗組員の国籍構成は詳細不明だが、ほとんどは東南アジア、南アジアの人たちらしい
  • 1月20日  横浜から出航。香港やベトナム、台湾、沖縄をまわって2月4日午前に横浜に帰港するスケジュールだった
  • 2月1日  香港で下船し帰国した乗客(80)がCOVID-19に感染していたと香港政府が発表
  • 2月3日  夜、予定より早く横浜港に到着。着岸はせずに停泊し、日本政府の検疫下に置かれる。厚労省から派遣された検疫官が入船し、発熱などの症状がある人を確認
  • 2月4日  この日の夕食までそれまで通り船内のレストランで食事を提供。シアターやカジノ、カラオケも営業していた(*)
  • 2月5日  乗員乗客のうち10人にCOVID-19感染が確認される。乗客全員を自室待機にする隔離措置を開始
  • 以後、発熱などの症状がある人を中心に感染検査を進めるが、検査体制が1日数百人規模のために追いつかず、検査結果が発表されるたびに感染者数が増大していく。この日、後に死亡する女性Aさん(84・基礎疾患なし)が発熱
  • 2月6日  乗組員にマスク着用命令が出る(*)。Aさんが発熱を訴えて船内医務室で受診
  • 2月10日  後に死亡する男性Bさん(87)が発熱。翌11日に下船して入院。5日に発熱したAさんが船内で問診を受け、投薬・点滴・ウイルスの有無を調べるため検体を採取
  • 2月11日  Aさんが船内で再々受診。医師は入院が必要と判断
  • 2月12日  DMAT(災害派遣医療チーム)などの医師38名、看護師36名、薬剤師17名が診療にあたるも、感染者は毎日確認され、累計が増え続ける。感染者のうち4人(うち日本人3人)が重症化し、集中治療室にて人工呼吸器をつけての治療(*)
     5日に発熱したAさんがようやく下船し、病院に搬送される。入院後、前日採取された検体検査で陽性が確認される。さらには検疫官1人も感染が確認される
  • 2月14日  5日に発熱し、12日に下船~入院したAさんの容態が悪化。酸素マスクをつけるが症状改善せず
  • 2月15日までに計218人の感染者が確認される。感染が確認された者は順次下船させて日本国内の病院等に入院させるが、感染者と同室だった家族などはそのまま部屋に隔離を続ける。さらには乗員は感染検査もほとんど受けられず、狭い相部屋にて過酷な労働を強いられていることが問題視される
  • 海外からは日本政府の検疫方法に非難の声が上がる。特に日本人に次いで乗客が多かったアメリカでは、「感染拡大の第二の震源地を作った」(ABCニュース)「公衆衛生の危機対応で『こうしてはいけません』という教科書の見本のような対応」(ニューヨークタイムズ)などの批判も
  • 2月16日  アメリカ政府はアメリカ国籍の乗客(425人)を船外に待避させるためにチャーター機を派遣し、本国へ移送開始。イギリス、イタリア、カナダ、オーストラリアなどの国も同様の対処をすると発表
  • 2月18日  神戸大学医学研究科感染症内科教授・岩田健太郎医師が、厚労省技術参与・高山義浩医師の助言を受けてDMATの一員という名目でダイヤモンドプリンセスに乗船したものの、すぐに退出を命じられる
  • 2月19日  ウイルス検査を受けて陰性とされた乗客の下船が始まる。この日は乗客443人が下船。バスで横浜駅などのターミナル駅に移動し、解放。公共交通機関などで各々が帰宅の途につく。解放後すぐに横浜駅地下街の寿司屋で食事をする夫婦もいた。この日までに検査が終了したのは3011人。陽性が確認されたのは621人(うち、無症状が322人)。下船直前での検体採取は行っていない ⇒下船後の乗客が後に感染が分かっても、いつ感染したのか追跡調査ができなくなる恐れ
     岩田医師が前日の体験をもとにYouTubeに船内の状況を問題視する動画を公開。たちまち拡散する。夜、高山医師がFacebookで同動画について一部の事実誤認などを指摘し、状況説明を行う
     一方、岩田医師を船から退出させたことについて、橋本岳・厚労副大臣がTwitterで「お見掛けした際に私からご挨拶をし、ご用向きを伺ったものの明確なご返事がなく、よって丁寧に船舶からご退去をいただきました。多少表情は冷たかったかもしれません。専門家ともあろう方が、そのようなルートで検疫中の船舶に侵入されるというのは、正直驚きを禁じ得ません」などと書き込み、「ちなみに現地はこんな感じ。画像では字が読みにくいですが、左手が清潔ルート、右側が不潔ルートです」と、写真を掲載したことで、それを見た人たちから一斉に「やはりグチャグチャじゃないか」と嘲笑と共に大反響が起きる。橋本副大臣はすぐにツイートを全削除した
  • 2月20日  入院していたAさん、Bさんが死亡
     船内で事務業務にあたっていた厚生労働省の職員1人と、内閣官房職員1人の感染を確認
     岩田医師は高山医師からの意見を受けてYouTube動画を削除。同日、日本外国特派員協会でSkype経由の記者会見に応じ、動画の削除の理由(データが公開されるなど対応が改善されたことで、初期使命を終えた)や、動画の中で訴えたことに基本的に間違いはなく、今も同じ考えであることを説明
     加藤勝信厚労相は同日夜に記者会見を開き、「明らかに検疫期間に発症者が減少しており、隔離が有効に行われた」として検疫が有効に作用したとの認識を示す

日本政府と厚労省の対応

こうして見ていくと、厚労省が主張する「検疫・隔離は有効に行われた」という説明を素直に受け止めることはとてもできない。
すでに各方面から指摘されていることだが、
  • 検査体制が十分に整っているのに、民間検査機関での検体検査をなぜ行わなかったのか?
  • 船内に長期間閉じ込めることによって感染が広がり、重症患者が出てしまう危険性になぜもっと早く気づかなかったのか?
  • 対人接触回数が多い乗員の感染チェックがいちばん後になったのはなぜなのか?
……といった疑問がすぐに浮かぶ。
3000人を超える乗員・乗客を隔離して経過観察できる施設がなかったというが(中国武漢からチャーター便で帰国させた人たちの隔離場所であったホテル三日月では相部屋が生じたし、その後の政府関連施設では共同トイレの宿舎)、すでにほぼ完成している東京五輪選手村施設を使うことなどは誰も提案しない。
普通に考えればまっ先に思いつきそうなものだが、政治家もメディアも絶対に選手村のことは口にしない。それができたなら、世界中から「さすがはおもてなしの国だ。素晴らしい」と賞賛され、たとえオリンピックが開催できなくなっても、国のイメージは一気に上がっただろう。
選手村を使えない理由があるならそれを説明してもいいと思うのだが、東京五輪関連の話がリンクすることはトップレベルのタブーになっている感じだ。

高山医師と岩田医師の超絶連係プレー?

岩田医師が公開したYouTube動画については、一部では「スタンドプレー」「ただの目立ちたがり屋」「ヒーロー気取り」「現場にとって迷惑なだけ」といった批判が寄せられたが、それは違うだろう。少なくとも原発爆発の後に1F(いちえふ)に乗り込んだ某議員(なんと今回の専門家会議に政府側から参加しているらしい)のようなのと一緒にしては失礼だ。
岩田医師の動画に対して高山医師がFacebookに書いた文章と、それに対する外からの膨大なコメントが非情に興味深い。
まず、岩田医師、高山医師、両者の話を合わせると、実際にはこういうことだったようだ。

  • 岩田医師は当初からダイヤモンドプリンセス号への対応に疑問を持っていたが、乗客や関係者から「なんとかならないか」という悲痛な訴えを受け、現場に行くことを決意
  • 岩田医師は、現場で指揮にあたっていた高山医師とは旧知の間柄で、今までもこうした現場で共に仕事をしたこともある「仲間」と認識している。そのため高山医師に現場に入りたいと電話で相談する
  • 高山医師は厚労省の役人、自衛隊、DMATなどが複層的に入り乱れている現場で、すでに始まろうとしている乗客の下船手続きなどで手一杯だった。ただでさえこれ以上の混乱を押さえたいところにストレートな性格の岩田医師が乱入してくるとやっかいだと直感し、周囲を刺激せずに入ってもらうため「やり方を考えましょう」と応じる
  • 高山医師は厚労省のスタッフとして動いていたが、誰を入れていいという権限はないので、現場で一緒に動いていた「環境感染学会」に相談してみることを提案する。岩田医師はさっそく環境感染学会に「現場に入りたい」と申し入れるが、しばらく放置された後に断られる
  • そこで高山医師は、次に「DMAT(災害派遣医療チーム)のメンバーとして入ってはどうか」と進言する。その際、「DMATとして入る以上は、DMATの活動をしっかりやってください。感染管理のことについて、最初から指摘するのはやめてください。信頼関係ができたら、そうしたアドバイスができるようになるでしょう」と伝えた。岩田医師は「分かりました」と言ってDMATに合流した
  • 岩田医師はDMAT合流後、DMATのチーフドクターからは「あなたにはDMATの仕事(医療行為など)は期待していない。あなたは感染のプロなのだから、そっち方面の仕事をするべきだ」と言われる
  • それを一種の拒絶とはとらえなかった岩田医師は、すぐに周囲に感染対策アドバイスを始めるが、現場では翌日に迫っている下船のための準備に追われていて、(あなたが言うことはすべてごもっともで、自分たちもそう思いながらここまできたが)今さらそんなことを言われてもどうしようもないという空気になる
  • 結果、煙たがられるだけになってしまい、さらには橋本厚労省副大臣の怒りを買い(「なお昨日、私の預かり知らぬところで、ある医師が検疫中の船内に立ち入られるという事案がありました。事後に拝見したご本人の動画によると、ご本人の希望によりあちこち頼ったあげくに厚生労働省の者が適当な理由をつけて許したとの由ですが、現場責任者としての私は承知しておりませんでした」とツイートしている)、すぐに追い出される
  • 岩田医師は憤懣やるかたなく、すぐにYouTubeに動画をUPした
  • その動画はたちまち波紋を呼び、メディアも岩田医師を追いかけ、テレビ出演させるなどした
  • この状況を見て、高山医師は岩田医師と話し合い、とりあえずYouTubeの動画は削除してもらった
  • 岩田医師は、問題指摘の目的は果たせたし、橋本副大臣が無能ぶりを自ら証明するようなオマケまでつけてくれたことで、高山医師との連携を尊重し、お互いの役割分担、棲み分けを意識しながら、外国特派員協会での会見にも今までより慎重な言葉を選びながら応じた

……この流れを見ていくと、高山医師と岩田医師は、(ご本人たちにはそのような意図はなかったとしても)結果として絶妙な連係プレーをしたのではないかと思う。いっぱいいっぱいの極限状況にあった現場の業務を必要以上にかき乱さず、同時に問題点を広く世に知らしめることになったのだから。
Facebookのコメント(医療関係者が多い)などを見ても、高山医師は人望があることがよく分かる。また、岩田医師とは性格が正反対なようでいて、お互いの能力を信頼し、認め合っていることも察せられる。
このレベルの人たちが司令塔になって最初から問題にあたっていたら、事態はずいぶん違っただろうなと思う。

私も含めて、専門外の一般庶民ができることは、彼らのような優秀な人たちがしっかり活躍できる環境を作れるように、政治、行政、メディアを見張ることしかない。
別の問題でだが、あるコラムで、こんなことを言っている人がいた。
何かを隠蔽する際に「無能を理由にする」というやり方が、日本だけで許されている。場合によっては、後で「ご褒美」の昇進が待っていることすらある。


責任論ということでいえば、それを許している国民の責任がいちばん重いのではないか。


日本は世界一安全なスラム観光国になるのか2020/01/27 16:56

こんな風景に激変している日本列島

安全な廃墟観光地・日本

ツイッターにこんな投稿を見つけた↓。
上司が最近西成に行くと、街を漂う浮浪者を見ながらマッチョな外国人観光客たちが酒をのみ、貧乏宿を満喫し、廃墟の様なエリアをビール片手にホッホッ叫びながら散策し、ホーリーマウンテンの様なモンド感出てたそう。今は西成にとどまってるが、10年後には日本が経済破綻し、こんな風景が全国で見れるかもしれない
 裏庭映画保存会 (@uraniwamoviecom) January 18, 2020


西成かぁ……。
30代の頃(だから、30年くらい前)「狗道研究会」という怪しいグループ(徳間のトンデモ本を得意としていた編集者がリーダー格)に混じって、愛宕山登山のついでに大阪・西成周辺ツアーについていったことがある。
そのグループの中に西成が大好きな人がいて、西成だけでなく、飛田新地とかを先導して案内するというもの。
ヤ印の人がよく集まる飲み屋(実際、指に真新しい包帯を巻いたその筋の人がポツンと呑んでいた)に入って、その案内役の彼が嬉嬉として差別用語や放送禁止用語満載の歌をカラオケで歌う(なんでそんな無法なカラオケが存在するのかも謎)という、トンデモなツアーだった。無事にツアーが終わったのは何よりだった。
30年前にはすでに大阪はそういう観光地として一部マニア?には認識され、楽しまれていたわけだ。今になってそれが海外からの観光客にも人気が出てきたということなんだろう。

あと20年くらいすると、日光も「世界一安全に貧困と混沌世界を見学できる複相観光地」として世界に認識されるのかもしれない。
東照宮は今回の大修理でピカピカになった陽明門や東武動物公園の看板みたいになってしまった三猿あたりがいい感じに寂れてくる。国力が低下し、補修費が出ないので、いい感じに寂れたままになっている。……それはまあ、いい。
鬼怒川温泉は今以上に廃墟ツアーで賑わう。霧降高原はカルト文化、ヒッピー文化の吹きだまりみたいになり、若い欧米の人たちに大人気に。今市は安い定食屋巡りや闇営業ツアーガイドの基地みたいになってたりして……。
でも、地元の人たちはちっとも潤わず、英語ができて、無許可の闇営業が得意な中国人が荒稼ぎする場になっているかもしれない。

そもそも、海外からの観光客を呼び込んで外貨を落としてもらうというのは「貧乏な国」の政策だ。為替レートで円が弱いから旅行先に選ぶのだし、外国に向かって胸を張って売れるものがないから、せめて観光で生き延びようということになる。バブルの頃に日本人が強い円を背景にしてガンガン海外旅行に行っていたことを思い出してみるといい。今はその立場が逆になっているのだ。

観光立国政策が悪いことだらけだというわけではない。しかし、それならなぜ、日本が世界に誇れる森林を壊して巨大風車を林立させ、メガソーラーを敷き詰めるのか。水源地に放射性廃物まみれのゴミを持ち込んできれいな水を汚した挙げ句に、水道事業を外国資本に売り渡して、自国民さえもが安全でうまい水を使えなくさせるのか。
観光で人を呼ぼうという国は、それなりに自国の美点を知り、大切にしている。そうした基本的な「愛国心」さえない国は観光地としての魅力もない。そこに生きる人々が、楽しく、幸せに、誇り高く生きていなければ、「おもてなし」はギブミーチョコレート的な上目遣いサービスに堕してしまうだけだ。
今の日本に必要なのは、「まずはちゃんとしようよ」という根本的な国民総意だ。
為政者や官僚が基本的なルールさえ踏みにじる。嘘をついても不正をしても罰せられないどころか、それによって出世する。それを見ている庶民の心に「あれで済んじゃうんだ」という諦観、虚無感が積み重なっていく。
……これでは「日本人の美徳」もなにもない。

消費増税後の日本2019/12/24 19:19

この楽しみが奪われると社会はどうなるか?

750円だったラーメンが800円になると……

消費税が10%に上がってから3か月になるが、世の中はどうなっただろうか。
目に見えて変化があったのは個人経営の飲食店などだ。大型チェーン店などでは変化が分かりづらいかもしれないが、個人経営の店は軒並み廃業や客離れで劇的な変化を見せている。
先日入ったラーメン屋さんも、今までは750円だったラーメンが800円に、800円だったラーメンは850円になっていて、そのせいか、有名店なのにがらんとしていた。

この店のように、消費税8%のときに税込750円だったラーメンが消費税10%になって税込800円に値上げされたとする。
750円だったときの税抜き価格は750÷1.08=694円である。それに10%の税なら763円だから、客はなんだか便乗値上げされたような気になるかもしれない。
しかし、消費税が上がれば原価も上がっているのである。
今まで税抜き694円のラーメンの価格に200円の儲けが乗せてあったとすると、原価は494円である。
494円というのは材料費や光熱費などの消費税が含まれているはずだから、ここから税の8%を除くと457円。
この457円に今度は消費税10%がかかるので、原価は503円になる。
503円に今まで通り儲け分200円を乗せると703円になる。
703円に消費税10%を乗せると773円になる。まだ800円にはならない。
しかし、考えてみると、店主は自分が生活するために消費増税分今まで以上に稼がなければならないわけで、儲けが200円のままでは貧しくなる。今までの儲け200円に消費税8%分が含まれていると考えると、10%になったら204円乗せないと合わない。それをのせるとラーメンの売値は778円になる。
麺の小麦はほとんど輸入、ガス代の元になる石油や天然ガスもほぼ100%輸入。原材料費は下がる見込みはないどころか、これからもどんどん上がっていきそうだ。遠方からこだわりの材料を取り寄せている場合は送料の値上がりもこたえる。
そもそも一杯200円の儲けなら、50杯作って売ってようやく1万円の儲けである。コンスタントに1日50杯売っても1万円。ひと月25日営業して25万円。1年で300万円。毎日一生懸命スープやチャーシューの仕込みをして、50杯のラーメンを売り続けて1年でようやく300万円……。
……と考えると、750円が800円になっても仕方がない。

本当に怖いのは金銭感覚のリセット

一方で、今まで750円だったラーメンが800円になると、客も今までのように気軽には外食しなくなる。
なにせ、生活は増税分苦しくなるのだから、750円出していた昼食は逆に700円に下げないとやっていけない。
結果、ラーメン屋の客は減り、売り上げが落ちる⇒1杯あたりの儲け204円ではやっていけなくなる⇒店はつぶれる⇒客はお気に入りの店でラーメンを食べる楽しみを奪われる⇒店主も客も日頃のストレスが溜まり、生活はさらに苦しくなる⇒みんなが不幸になり、犯罪や自殺は増え、文化は衰退する。

……景気が悪いとき、国力が衰退しているときに増税すると、そういうことになる。

自分の財布から金を出してラーメンを食うことがない、毎日電車にも乗らず、運転手付きの公用車で移動しているような人たちは、8%が10%になったところで108円が110円になるだけのことではないかと思う。しかし、それはとんでもない間違いで、本当に怖ろしいのはその2%ではなく、庶民の金銭感覚がリセットされることなのだ。
750円でもきついな~と思っていたラーメンが800円になってしまった。800円でラーメンは無理だ……もう気軽には食えなくなったな、という「金銭感覚のリセット」。これが連鎖反応を起こし、世の中全体の経済活動が激変する。その怖ろしさを分からない人たちが「経済」を知ったかぶりで語っても虚しい。

いいようにされ放題の庶民の側にも問題がある。
東京五輪というお祭り騒ぎが終わった後の地獄を、まだみんな甘く見ているんじゃないだろうか。
これに大規模災害でも起きて追い打ちをかけられたら……。
どうにもならなくなってから騒いでも遅いのだ。
いずれにせよ、凄絶なサバイバル時代なのだよ、これからは。



自然災害と「国防」2019/10/20 15:38

箱根町が近づけないほどの大雨で危機に瀕しているときにこれ……
2019年10月、日本列島を襲った台風19号は、接近するずっと前から気象庁が異例の警戒を呼びかけていた。
「今まで経験したことのないような被害に見舞われる可能性がある。命を守る行動を!」というその警告にもかかわらず、民放テレビは土曜日定番のグルメ番組などを流し続けていた。
箱根町が観測史上最大の降雨量を記録し、大雨特別警報が出されている12日午後になっても、よりによってTBSなどは「箱根のお持ち帰りグルメ50品を全部食べきるのにどれだけかかるか」などとやっていた。

被災地以外の国民が被害の大きさ、深刻さを知るようになるのは台風が去ってしばらくしてからだった。テレビに悲惨な映像が次々に映し出される。
被害が出てから「大変です」「ひどいことになってます」と騒ぎ立てても遅い。
民放テレビ局の発想(というか本音)は「視聴者=災害現場ギャラリー」なのだろう。

問題は国を筆頭とした行政である。
颱風も地震も大雨も必ず襲ってくる。それを人間の手で防ぐことはできない。地球温暖化が原因だのなんだのと言ったところで解決しない。人間ができることは、「被害をいかに小さくするか」を考えることである。

警戒地区の中に放射性廃物ゴミを溜め込む


栃木県内でまっ先に「非常に危険」とされた荒川


今回の台風は風の被害より雨による河川氾濫が怖いことは事前に分かっていた。なので、NHKの防災アプリで河川の警戒レベル情報をずっとチェックしていたのだが、栃木県内でまっ先に赤く表示された(危険レベルに達した)のは塩谷町の中を流れる荒川だった↑。
塩谷町は環境省が「放射性物質を含む指定廃棄物の最終処分場の候補地」として指定して、今も地元の反対を押し切って計画を進めようとしている場所。しかもその候補地は水源地である。
その塩谷町の処分場候補地を見に行ったときの日記が⇒こちら(数ページある)
候補地は山の頂上に近い斜面で、進入路は狭く、このときは台風で壊れ、通行止めだった。
山に入っていく道も細くて折れ曲がっており、工事が始まるだけでも大型車が行き交い、大変危険なことになるだろう。

すでにこの時点で、塩谷町は赤く染められた危険区域のまっただ中↑


環境を破壊し、人々の命を危険にさらし、幸福を奪う環境省。進次郎よ、きみの仕事はそんなことではないだろう? この問題をセクシーに解決してくれるのか?

その後、またたくまにほとんどの河川が氾濫危険になってしまった↑

「再生可能エネルギー」で人が殺される


台風19号による河川氾濫被害は広範囲に及び、被害状況全貌は数日経っても摑みきれなかった。
栃木県では鹿沼市の粟野地区で、北から流れてくる思川(おもいがわ)と粟野川の合流地点を中心に、多くの家屋が水没した
この上流にあたる横根高原の斜面に、ミズナラを大規模伐採してメガソーラーを作るという馬鹿げた計画も、事業者はまだ引っ込めてはいない。
鹿沼市と日光市にまたがる100ヘクタールを超える大規模な計画だったが、鹿沼市が難色を示したために、範囲を変えて、今は日光市の部分を59ヘクタールに増やして建てると言っているらしい。

横根高原メガソーラー建設予定地(左上の青い○の場所)と、今回、浸水被害でひどいことになった鹿沼市粟野地区(右下の青い○の場所)との位置関係(⇒拡大
この高原を水源とした川は北側の足尾町にも流れ込んでいる。足尾は過去何度も洪水被害に見舞われている。
ただでさえこうなのに、上流側の木を伐ってメガソーラー? 正気とは思えない。保水作用は奪われ、表土は簡単に流れ、崩れて……もう、殺人行為ではないか。

さらには、那須御用邸のそばにも約37ヘクタールのメガソーラー建設計画があり、地元住民らが反対している
こういう問題が出るたびに、反対する側は揃って「自然エネルギーには賛成だが、場所を考えてほしい」的な主張をするが、「自然エネルギー」「再生可能エネルギー」と呼ばれている風力発電、太陽光発電の正体をしっかり勉強し直してほしい。「自然」だの「再生可能」だのといううたい文句で補助金、税金をかっさらい、建て逃げを図る企業によって、地下資源はむしろ枯渇を早める。もちろん、温暖化が防げるわけでもない。無駄が増えて、その分、一部の企業に金が集まるという構造は原発ビジネスと同じなのだ。
そういう基本的な認識ができず、資源物理学の基礎が分かっていない民主党政権時のトップが、自然エネルギー万歳の能天気な発想でFIT法を制定した罪は極めて重い。結果、現安倍政権と経産省の悪政を強力に後押しし、軌道修正をしにくくさせてしまった。

外国企業が狙う「建て逃げビジネス」

横根高原も那須御用邸脇も、事業者は外資系である。外国企業が日本の山を食い物にして儲けるという図式。
発電効率なんて考えていない。
関西電力と高浜町の原発マネー贈収賄事件が発覚したが、国から巨額の金が出る事業では必ずこうした図式ができあがる。
関西電力の傘下にあるシーテックの本社課長は、ウィンドパーク笠取(2000kw×40基)を建設する際、「風力発電は、発電では採算が合わないのではないか」と質問され、「その通りです。しかし、補助金をいただけますので、建設するのです」と堂々と答えている
儲かるか儲からないかが判断の基本にある企業と、税金の使い方に無神経かつ不正義な政治が結びつくと、必ずこうなる。
発電プラントを製造する企業、建設する企業は、施設を建てた段階で儲けが確定するので、その後の発電事業には極力関わろうとせず「建て逃げ」する。
昨今話題になっている水道事業の民営化問題も、最終的にはそうした図式になっていくことははっきりしている。
何が「再生可能エネルギー」だ。環境破壊、殺人事業以外のなにものでもないではないか。こういうのをこの国では「経済効果」というのか?

国民が危険な目に遭わないようにする、幸福な生活を破壊されないようにする、将来にわたって持続できる社会を維持できるようにするのが「国防」であり、国の使命のはずだ。
その際に最重視すべきは合理性と持続性である。
しかるに、環境省も経産省も、まったく逆のことをしている。


「東電強制起訴無罪判決」の歴史的意味2019/09/25 11:48

「東電強制起訴無罪判決」で、次の一節を思い浮かべた。
本来、国家とは国民の生命と財産を守るのが使命である。ところが国の指導者たちは生命と財産を次々とつぎ込んで、博打のような戦争を起こした。その結果、多くの無辜の命が失われた。しかし、そうした戦争の責任はいまに至っても曖昧なまま放置されている。
(保阪正康・著 『田中角栄と安倍晋三 昭和史で分かる「劣化ニッポン」の正体」序章より)

↑この「戦争」という部分を「原子力ムラ利権構造ビジネス」と置き換えてみれば、今回の構図と同じだと分かる。


首相が国会で「議会については、私は立法府の長であります」とのたまい、官庁は平気で公文書を破棄・偽造する。司法は常識を超えた判決を下す。
三権分立が機能しなくなった国家は、悲惨な崩壊寸前だと知ろう。
「東電強制起訴無罪判決」は、歴史的にはそういう意味を持っている。


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