予定原稿を踏み越えた城臺さんの勇気ある行動 ― 2014/08/10 12:18
長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典における城臺美彌子さんの勇気ある行動
8月6日は広島に、8月9日は長崎に原爆が落とされた日。
毎年、この日には必ず慰霊平和祈念式典のテレビ中継がある。
戦争を経験していない世代がほとんどになった今、ともすればメロンの初競り落札価格がうん万円とか、富士山の山開きが……といった風物詩的なニュースとして見過ごされがちだが、安倍政権が圧倒的議席多数を持って「戦争ができる国」「国家が国民を黙らせ、管理する国」にしようと邁進する今、それに歯止めをかける行動を示すべき重要な日、場になっている。
広島・長崎両市の式典では、必ず市長が「平和宣言」というメッセージを読み上げる。
その予定原稿は事前にマスコミに渡るので、「集団的自衛権」に市長が言及するのかどうか、といった視点で記事を書いていた新聞もある。

↑8月2日 北海道新聞夕刊(Clickで拡大)
↑広島市長は言わない、長崎市長は言う……という姿勢の違いを伝えた記事だが、9日の長崎の式典で市長が読み上げたスピーチは、かなりマイルドに「調整」されたものだった。
自民党県議団、市議団が多数派を占める地方自治体の長としては、これが精一杯なのだろうか。
そんな中、被爆者代表として「平和への誓い」を読み上げた城臺(じょうだい)美彌子さんは、事前に主催者側に提出した原稿を踏み越えて、目の前の貴賓席に座っている安倍総理に、直接訴えかけた。
このスピーチはNHKや民放で生中継されていた。
NHKとTBSニュースバードのものを録画して見たのだが、TBSのほうは字幕テロップが出た。
字幕が出るということは、予定原稿が事前にメディアに渡されているということを意味している。
ところが、その中で、一部分、字幕が途切れる場面があった。
上に貼り付けた箇所だ(削除されていると見られないかもしれない)。
字幕で出た部分(予定原稿)と実際に城臺さんが述べた言葉を比較してみる。
字幕 | 実際の言葉 |
---|---|
今、進められている集団的自衛権の行使容認は、武力で国民の平和を作ると言っていませんか。 日本の未来を担う若者や子供たちを脅かさないでください。 被爆者の苦しみを忘れ、なかったことにしないでください。 |
今、進められている集団的自衛権の行使容認は、日本国憲法を踏みにじった暴挙です。 日本が、戦争ができる国になり、日本の平和を武力で守ろうというのですか。 武器製造、武器輸出は、戦争への道です。 一旦戦争が始まると、戦争は戦争を呼びます。 歴史が証明しているではありませんか。 日本の未来を担う若者や子供たちを脅かさないでください。 平和の保証をしてください。 被爆者の苦しみを忘れ、なかったことにしないでください。 |
太字部分が「予定原稿」になかった部分。あるいは、元々はこうあったのだが、主催者側との事前打ち合わせなどで削られてしまった(?)部分だ。
彼女はこの後も、福島での原発爆発、放射性物質ばらまき事件に触れた。そこでも、字幕では、
「このような状況の中で、原発再稼働等を行っていいのでしょうか。使用済み核燃料の処分法もまだ未知数です。早急に廃炉を含め検討すべきです」
となっているのに対して、実際には、
「このような状況の中で、原発再稼働、原発輸出、行っていいのでしょうか。使用済み核燃料の処分法もまだ未解決です。早急に廃炉を検討してください」
と、しっかり言いきっている。
最近、自分で意見が言えなくなったメディアは、「有識者」と呼ばれる人たちにコラムを書かせたり、インタビュー記事を掲載することで、ぎりぎりの主張を発信しているように見える。
今回の式典スピーチでも、自治体の長という公の立場ではここまでしか言えないので、被爆者自身に語ってもらう、という「手法」で抵抗を示した、という見方もできる。
中継したテレビメディアも、彼女が訴える間、安倍首相のさえない表情を映し出していた。
NHKも今回ばかりは頑張って(?)いて、この後、安倍総理が通り一遍のスピーチをするときは、聴衆のひとりが大あくびをする姿をしっかり「抜いて」いた。ナイスプレーだ。
城臺さんのような勇気ある、そして自立した意志を持った行動が、今後も式典での被爆者代表スピーチの「伝統」となることを祈る。
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