食料・耽溺・信仰・憎悪……人間社会を動かす4つの要素 ― 2025/09/23 14:41
食料・耽溺・信仰・憎悪……人間社会を動かす4つの要素
日中戦争を学んでいて気がついた。明け方、半覚醒状態の中でこの考えが浮かんできて、それから眠れなくなった。明け方思いついたことはすぐに忘れるので、今のうちにメモしておこう。
人間社会を動かす4つの要素というものがある。それは、
- 食料(燃料・資源)
- 耽溺(娯楽・快楽)
- 信仰(教育・洗脳)
- 憎悪(差別・怨念)
なぜ日中戦争を学ぶことでこのことに気がついたのかをまず説明したい。
1)食料が供給できなければ戦えない
日中戦争を通じて日本軍最大の弱点は兵站問題だった。
派遣した数十万の兵に十分な食料を届けられなかったので、食料は「現地調達」とした。つまり略奪である。民家を襲い、報復が怖くて少しでも向かってきそうな者はみな「便衣兵」と見なして殺してしまううちに、兵の精神がどんどんおかしくなり、虐殺や強姦行為があたりまえになってしまった。この時点ですでに戦争は負けである。
現代においてもこれは同じことで、食料がなければ人間は生きていけない。
食料は人間を動かす燃料だが、現代の食料生産(主に農業)は燃料(石油)が支えている。石油がなければ機械化農業は成立しないし、化学肥料も作れない。日本のように地下資源に恵まれない国は、その時点ですでに「戦争はできない」国だと理解しなければいけない。実際、今、世界で戦争をやっている国はアメリカであれロシアであれ中東諸国であれ、石油を持っている国である。
2)人間は快楽に溺れる生きものである
日中戦争の前から、イギリスはインド産のアヘンを中国に密輸出し巨利を得ていた。これで痛い目を見た中国はアヘンを必死に禁止しようとしたが、皮肉にもその結果がアヘン戦争での敗北。その後も、満州や華北地方はではアヘンが大量に栽培され、巨大なアヘンビジネスが存在し続けた。
そこに日本も中国国民政府も関与し、巨利を得て、軍の資金源にもなった。その裏には、岸信介、甘粕正彦、里見甫、鮎川義介、古海忠之……といった名前がぞろぞろ出てくるし、三井物産、三菱商事、大倉商事といった財閥会社も参入していた。
日本国内でのアヘン生産量は少なかったが、そこから化学的工程を経て精製するヘロインなどの麻薬生産においては、戦前の日本は世界一の規模だった。一説には、1933年時点で、日本は世界中のモルヒネの10%、ヘロインの51%、コカインの22%を生産していたという。
人間は快楽に弱い。麻薬や覚醒剤に頼らずとも、かつて3Sと呼ばれた娯楽(セックス、スポーツ、スクリーン=映画・テレビ)は簡単に人々を虜にする。メディアが発達してからは、こうした娯楽アイテムは多種多様、かつ安価に提供されるようになったが、内容としては、より多くの人間を簡単に惹きつけられるように単純化される傾向にある。娯楽を提供する器具も小型化、軽量化されて個人が一日中身につけるようになった。
3)「余計なこと」を考えさせない思想教育
日本軍の戦争は、「足りないものは根性で補え」「皇国日本のために命を捧げろ」という軍国教育によって進行した。そうした軍国教育は、明治政府の国家神道から明確に始まり、学校で軍事教練が行われるようになった頃からはさらにエスカレートしていた。軍にとって都合の悪い考え方はすべて弾圧された。国家総動員法、大東亜共栄圏という洗脳を政治的に牽引していった企画院、占領地に対する政務・開発事業として「大アヘン政策」を実施した興亜院などは、軍の組織というよりは高等教育を受けた官僚たちの牙城だった。彼らは決して馬鹿ではなく、知識と人を動かす技術は持っていた。思想や世界観が幼稚だっただけである。
余計なことを考えさせない思想教育の結果、特攻や玉砕といった、戦略としても理不尽極まりないことが行われるまでになった。
現代でも宗教やメディアによる洗脳は「思想戦」として、戦争の主力戦略であり続けている。「陰謀論」などというマジックワード一つで、権力者に都合の悪い情報や考え方を排除する方法も広まっている。
4)ヘイトクライムという金のかからない兵器
3)の思想教育とも密接に関係するが、民族や国家といった単純な区分けで敵味方を作り出す手法もまた、兵器を使わない戦争手法の一つとして利用される。差別や憎悪を生むことが戦争を起こすための有効な起爆剤だからだ。理不尽に殺された人々の周辺では、世代を超えて引き継がれる怨念も生じる。南京戦で虐殺された中国人たちの子供たちや生き残った者たちは、世代を超えてその怨念を伝える。これは当然のことだろう。
しかし、現代では、そうした怨念とは無関係に、情報操作や印象操作、洗脳、煽動によって国籍の違う人々を憎悪させることに成功している事例が多い。
日本では、都市に焼夷弾や原爆を落として無差別殺戮をしたアメリカではなく、自分たちが侵略した中国や朝鮮の人たちに憎しみを向けるという逆転現象が起きている。
ホロコーストで大量虐殺されたユダヤ人にしても、ユダヤ人国家とされるイスラエルはドイツではなく、中東イスラム圏の人たちを殺戮している。
これら4つの要素をコントロールする者の正体
- 食料(燃料・資源)
- 耽溺(娯楽・快楽)
- 信仰(教育・洗脳)
- 憎悪(差別・怨念)
ということは、この4つの要因をコントロールできる者が世界を支配していると推察できる。
それは
この4要素はすべて金で動かせる。となると、莫大な資本を持つ者が世界を支配していると言えるのだろうか?
大富豪にとって、1)の食料(資源)は簡単に手に入る。自分たちが飢える心配は一切ない。
2)~4)も、メディアを支配することで動かせる。すでにそういう社会であることは間違いない。
しかし、支配の頂点にいるものが人間だとするならば、1)はともかく、2)~4)の要素もまた弱点として持っているはずだ。
具体的な例を想起するなら、2)の耽溺(快楽)はエプスタイン島。3)の信仰(教育)はシオニズム。4)の憎悪(差別)は、持てる者の持たざる者への蔑視(人間を機械、道具として「消費する対象」としてしか見ていない)や優生思想。
支配の頂点にいるのが支配される側の人間と同じ「人間という生物」だとしたら、快楽に耽り、偏狭な思想に支配され、被支配層の人間への愛情に欠けた人間だということになるだろう。
そんな生きものによって人間社会が動かされているとしたら、人間という生物種が滅びるのは時間の問題なのではないか。
もし、これら4つの要素をコントロールしているのが「人間以外のなにものか」だとしたら……。
そこまではちょっと想像がつかない。
また別の次元の話になりそうなので、この「4要素論」は、ここで一段落としておこう。
『用務員・杜用治さんのノート』
Amazonが使えないかたは、こちらからも買えます(ただし、送料がかかり、納期も遅れます)
製本直送にてご購入
----------------------------------------------------
トンデモ時代を生き延びる「古くからの知恵」と「新しい発想」がここにある!
カエルやらカタカムナやら量子論やら…… 森水学園第三分校
「マイルド・サバイバー」 (たくき よしみつ・著、MdN新書)
以下からもご購入できます(Click)
----------------------------------------------------





