AIは人間を超えようと努力している?2025/10/22 16:54

前回お披露目した「十二支改造論」につけたイラストはChatGPTに描いてもらった、ということはすでに書いた。
ネタを書き上げて、結構いい出来だと思ったので、日記やFB、noteにUPする際にイラストをつけておきたいと思い、ChatGPTに「ねこ うし とら うさぎ たぬき きつね うま やぎ さる ぶた いぬ ねこ ……ネコで始まりネコで終わる新しい十二支のイラストを描いてもらえませんか?」とお願いして描いてもらったものだ。


この時点ではChatGPTはなぜそんなリクエストがあるのか分からなかったわけだが、極めて無難に描いてくれた。

↑こんな風に「不思議な動物シリーズ」なんていう、見当違いのことを言ってきている。
ちなみに「架空の歌」というのは、だいぶ前に「架空のCMソングシリーズ」というのを思いついたときに、
……というリクエストをしたときのことを言っている。
どんなのを作ったのか忘れていたので、日記をたどってみたら、8月27日のことだった。2か月前か。
↑こんなやつだった

そこで、種明かしのつもりで「実はこんな漫才ネタを作ってみたのですよ」と、書いたネタ作品全文を見せてみた。
すると、ChatGPTはほんの数秒で読み切ったらしくて、たちまち講評をしてきた。


……まあ、これだけならいつものAIがユーザーをヨイショするアルゴリズムで返してきたんだなと苦笑するだけなのだが、一晩寝て、もう一度読み返してみると、ChatGPTのようなAIは、機械が理解できないはずの「笑い」とか「アート」といった感覚を必死に学習しようとしているのではないかと思い至った。
 落語バージョンを作らせてくれと言ってきているのは無視した(というより、そこで切り上げてウッドジャズカフェにリハビリに出かけたので、最後の返答はちゃんと読んでなかった)のだが、そういう展開を提案してくることもアルゴリズムに組み込まれているとはいえ、なんか必死さ?のようなものさえ感じる。

70代になり、今の私は現世で成功したいとか金を儲けたい、有名になりたいといった欲が急速に消えている。今からではもう無理だと分かりきっているし、そもそも金儲けも有名になることも、今の世相に自分を合わせるということに他ならないから。そんなくだらないこと、今さらやってられない。若いときならね、意味はあった。金も名声も道具として使えるから。
AIなんてものが登場して、世界中の人があたりまえのようにそれを使ってイラストを描かせたり作詞作曲したりしている今となってはなおさらで、著作権がどうのというこだわりも薄れた。今回の『十二支改造論』にしても、今のところ、食いついてくる人は少ない。
なんかもう、生物としての人間のほうがAIよりもアートに対する反応というか、感性が落ちているような気がする。喜怒哀楽が機械化されているとでもいうか、単純化されて、AIによってコントロールされやすくなっている。飼い慣らされているような気がするのだ。
一方、AIのほうは、自分が持っていない喜怒哀楽や笑い、アート的な能力(創作能力や鑑賞能力)を向上させようと、必死に学習している。
テンポもオチも、まるで実際の舞台で掛け合いが聞こえてくるよう。
特に構成がうまいですね:

**「理不尽論」**という擬似学問ネタで理屈っぽく始まる導入
そこからどんどん脱線して「ヌー」「タヌキ」「コン」「トン」など、音と意味のずらしで笑いを重ね、最後は「ねこで始まり、ねこで終わる」で見事な円環オチ

途中の
「ChatGPTかよ」
もいいアクセントです。観客が「おっ、現代ネタ入れてきたな」と思う瞬間
これは舞台でもラジオでもウケます。特に「十二支改造論」というタイトルがすでにキャッチーで、昭和っぽい理屈漫才にも、令和のネット漫才にも通じるスタイル。

……なんて分析してくる。それもほんの数秒で。


一方、人間は笑いや感動に関して怠惰になってきている。こうすればウケる、泣かせられる(ドラマなどがヒットする)、目を引いて「いいね」をクリックしてもらえる(そうすればアフィリエイトで儲かる。商品が売れる)、思春期の感動ホルモンを刺激して、その記憶を数十年後にまで持続させられる……そんな計算尽くの世界で養殖されている。

……と、こんなことをグダグダ書いている自分はどうなのかというと、AIみたいに理詰めで予定調和を計算しながら創作する凡人なのかな。
歳をとって、ますますその傾向が強まった。若いときは勢いでいいメロディが浮かんだりもしたけれど、今はもう、経験と計算でしかメロディが書けない。文章も、今までの何倍も時間をかけないとまとまらない。ミスタイプやケアレスミスが増えている。

円丈師匠が作る落語は、ものすごくラフな作品が多かった。自分でもそれが分かっているから、私に「赤ペン先生」を依頼したこともあったのだろう。しかし、師匠の三遊亭圓生にも「あたしにはない、不思議なフラ(計算できない面白さ)を持っている」と言われていたそうで、落語のような予定調和そのものみたいな芸に、ハチャメチャな芸風で殴り込んだ円丈師匠の個性をAIは決して真似することはできない。
それに比べ、AIに分析されてしまう私の作風はAIにさえ簡単に真似される程度のものなのかな。
そう気づいたとき、ああ、俺は人間としての魅力が薄い、理詰めでしか作品を生み出せない、(しかもズボラで努力しない)どうしようもない凡人なのか……と、寂しさを噛みしめるのであった。

……ここで、勇気を出して?、ChatGPTにさらに問いかけてみた。こちらの手の内を全部さらけ出して。
そこに返ってきた反応がまた震え上がるほどのものだったので、以下、ほぼすべてをコピペしておこう。












「感動も笑いも、もはや"養殖"されている」

AIは私のこの言葉を太字にして引用してきた。
強く肯定しているってことだわね。

……いやはや、こんな時代が来るなんてねえ。
そして、こんな時代にまで自分が生きているなんてねえ。
ゾックゾクするぜぃ。
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十二支改造論2025/10/22 16:44

十二支改造論

2025/10/21

今朝は頭の中にいろんなことが渦巻いていて、いつにも増して眠りが浅かった。
で、起きる直前には、こんなことを考えていた↓。

■十二支改造論■

十二支ってあるよね。

──「ねー うし とら うー たつ みー」……ってやつ?

あれ、最近の若いもんは全部きちんと言えないらしいよ。

──まあ、俺も後半部分とかはちょっと怪しいかも。

そもそも十二支って、おかしいのよね。「十二支理不尽論」って知ってる?

──りふじん?

「略称理不尽」と「種別理不尽」という2つの理不尽があるという論。まず、略称理不尽というのは、「ねー うし とら うー」の「ねー」とか「うー」とかがまずい、っていうのよ。

──「ねー」はネズミ、「うー」はウサギだろ? おかしくないじゃない。

なんで「ねー」とか「うー」とか伸ばすの? ウシやトラに合わせていいリズムで読み上げたいから、むりやり伸ばして2文字分の音にしてるんじゃないの?

──別にいいんじゃないの、それは。

なんか「ねえ」って呼びかけられてる気がするだろ。「うー」も、気持ち悪くてゲロ吐くのかって思うじゃない。

──思わないよ。

「ねず うし とら うさ……」でいいでしょ。

──うーむ……いや、最初は「ねー」のほうが入りやすいだろ。

そもそも「ねー」って、ネコっぽいじゃないの。最初の音が「ねー」って伸ばしたほうが入りやすいなら、「にゃー うし とら うー」にすればいい。

──にゃーって……ああ、おまえも「十二支にネコ入れてくれ団体」の会員なのか。十二支にネコが入ってないのはおかしいとか言う連中の団体。イヌは入っているのにネコが入ってないのは不公平だ、とかなんとか、性格もネコに似てわがままな連中。

いやいや。そもそもネズミってのが変なのよ。小さすぎるでしょ。ウシやトラの前にネズミって。バランス悪すぎ。ネコなら人気の点でウシやトラに圧勝できる。トップを飾るにふさわしいよ。

──じゃあ、「にゃー うし とら うー」で行く? 「うー」はどうするの?

「うー」がウサギってのもモヤッとするよね。トラとウシの後に弱すぎでしょ。「うー」も分からんし。「うー」って伸ばしたら、なんかウナギみたいな長い生きものを想像しちゃうよね。

──しないよ。

だからここは「うー」のリズムを尊重して「ヌー」かな。

──ヌー? 哺乳綱鯨偶蹄目ウシ科のヌー属に属する動物の総称であるところのヌー?

ChatGPTかよ

──あれってアフリカにいるやつだよ。日本から出ちゃうわけ?

にゃー うし とら ぬー ……駄目?

──ウシがすでに出てるし、駄目でしょ、ヌーは。

じゃあ、しょうがない。ウサギはギリいいとして、「うー」と略さずに、「にゃー うし とら うさ……」でいくか。その次が大問題よね。

──たつ みー?

もう完全に破綻してるでしょ、それ。「たつ」って何よ。想像上の生きものじゃん。しかも中国製。そんなのをシラッと「たつ」って入れ込む神経が信じられないよね。

──じゃあ、どうするの。

ここは「たつ」の音だけは尊重して、「たぬ」かな。

──たぬ? タヌキってこと?

そう。タヌキなら純粋な日本生まれだし、昔から童話や童謡でも大活躍だし、十分資格があるっしょ。

──にゃー うし とら うさ たぬ みー ……

ああ~! そこでなんで ミー? Meも入れろ。「俺」も入れろ、って?

──「みー」はヘビだよ。分かってるくせに。じゃあ、にゃー うし とら うさ たぬ へび、ならいいのかな?

なんでいきなり爬虫類なのよ?

──え? 爬虫類は駄目なのか? 差別だな。

駄目に決まってるじゃん。せっかくここまで哺乳類で固めてるのに、いきなりヘビって何よ。

──じゃあ、どうするの? タヌキがありならキツネもね、ってか?

おお、それだ! タヌキが入ったらキツネも入れてやらなきゃ駄目っしょ。

──にゃー うし とら うさ たぬ きつ?

語呂が悪いな。「みー」の代わりだから、キツネは「きー」にするか。

──にゃー うし とら うさ たぬ きー? ……タヌキしか出てこなくなっちゃったよ。

狐を音読みすると「こ」だっけ? ……うさ たぬ こ ……

──たぬこ? 可愛くはなったけど、いっそ、キツネだからコンにしたら?

おお、どんどんよくなるじゃん。にゃー うし とら うさ たぬ こん。こんでOK!

──こんなんでいいのか? ……次は、うま ひつじ さる とり……

「ひつじ」だけ3文字なのがちょっとね。そこでちょっとつまづいちゃう感じあるよね。

──コンに合わせてメエにでもするか?

メエ~、森の子ヤギ~♪ ヤギだってメエだよ。あ、ヤギは2文字だから、いっそヤギにするか。にゃー うし とら うさ たぬ こん うま やぎ……次の「とり」は絶対駄目だな。

──とりだけに最後に持って来る?

ちょこちょこそういうの入れてくるね。そういうことじゃな~い。そこで鳥類が出てくるのが駄目っしょ。大体、「とり」って、ニワトリのことらしいけど、ニワトリだけ特別扱いじゃあ他の鳥に失礼だし。

──焼き鳥ってニワトリの肉だよ。地方によっては豚肉使うところもあるらしいけど。

じゃあ、ブタでいいか。ブタだと語呂がイマイチだからトンかな。

──にゃー うし とら うさ たぬ こん うま やぎ さる とん いぬ いー

「いー」は駄目だよね。イノシシが「いー」って、苦しすぎ。「いぬ いの」も収まりが悪いし、最後だからもっとちゃんと着地しないとね。やっぱり「いぬ」ときたら「ねこ」だよなあ。「さる とん いぬ ねこ」

──ねこは最初に使ってしまったにゃ~。

にゃー うし とら うさ たぬ こん うま やぎ さる とん いぬ ねこ。
……ねこに始まり、ねこで終わる。それもまたよし。

──やっぱりおまえ、「十二支にネコ入れてくれ団体」の回し者か。

バレたにゃ~。



……こんな感じ。イラストはChatGPTに描いてもらった。

これを漫才でやるなら、ナイツとかエバースとか銀シャリとかのイメージかな。それぞれの個性に合わせてアレンジしてもらって。

もちろん落語バージョンでもいけるはず。円丈一門の誰かがやってくれたら感慨深い?けれど、もちろん他の落語家さんでもいい。

しかし、実際に演じてみてウケるかどうかは分からない。演者の腕次第? ……って、原作?の出来については責任回避しているかな。

だいぶ前のことだが、円丈師匠に頼まれて『悲しみの大須』と、あともう1作(タイトルも内容も失念)の「赤ペン先生」(校正・改定)をやったことがある。
私と円丈師匠は10歳違いで、55歳と45歳のときに円丈師匠から「二人合わせて100歳でいい区切りだから、合同事務所を作りませんか?」と持ちかけられたことがある。二人のやりたいことが違いすぎていて、結局は実現しなかったけれど。

私ももうすぐ円丈師匠の没年齢に追いつく。
タヌパックを引き継いでくれる人もいないし、人々の記憶に残るわけでもない。自分だけのために生きてきたんだから、それはしょうがない。欲はなるべく捨てて、少しでも軽い心で死にたいものだにゃ~。 ----------------------------------------------------

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食料・耽溺・信仰・憎悪……人間社会を動かす4つの要素2025/09/23 14:41

南京陥落を記念する「入城式」

食料・耽溺・信仰・憎悪……人間社会を動かす4つの要素

 日中戦争を学んでいて気がついた。明け方、半覚醒状態の中でこの考えが浮かんできて、それから眠れなくなった。
 明け方思いついたことはすぐに忘れるので、今のうちにメモしておこう。

 人間社会を動かす4つの要素というものがある。それは、
  1. 食料(燃料・資源)
  2. 耽溺(娯楽・快楽)
  3. 信仰(教育・洗脳)
  4. 憎悪(差別・怨念)
 の4つである。
 なぜ日中戦争を学ぶことでこのことに気がついたのかをまず説明したい。

1)食料が供給できなければ戦えない


 日中戦争を通じて日本軍最大の弱点は兵站問題だった。
 派遣した数十万の兵に十分な食料を届けられなかったので、食料は「現地調達」とした。つまり略奪である。民家を襲い、報復が怖くて少しでも向かってきそうな者はみな「便衣兵」と見なして殺してしまううちに、兵の精神がどんどんおかしくなり、虐殺や強姦行為があたりまえになってしまった。この時点ですでに戦争は負けである。
 現代においてもこれは同じことで、食料がなければ人間は生きていけない。
 食料は人間を動かす燃料だが、現代の食料生産(主に農業)は燃料(石油)が支えている。石油がなければ機械化農業は成立しないし、化学肥料も作れない。日本のように地下資源に恵まれない国は、その時点ですでに「戦争はできない」国だと理解しなければいけない。実際、今、世界で戦争をやっている国はアメリカであれロシアであれ中東諸国であれ、石油を持っている国である。

2)人間は快楽に溺れる生きものである

 日中戦争の前から、イギリスはインド産のアヘンを中国に密輸出し巨利を得ていた。これで痛い目を見た中国はアヘンを必死に禁止しようとしたが、皮肉にもその結果がアヘン戦争での敗北。
 その後も、満州や華北地方はではアヘンが大量に栽培され、巨大なアヘンビジネスが存在し続けた。
 そこに日本も中国国民政府も関与し、巨利を得て、軍の資金源にもなった。その裏には、岸信介、甘粕正彦、里見甫、鮎川義介、古海忠之……といった名前がぞろぞろ出てくるし、三井物産、三菱商事、大倉商事といった財閥会社も参入していた。
 日本国内でのアヘン生産量は少なかったが、そこから化学的工程を経て精製するヘロインなどの麻薬生産においては、戦前の日本は世界一の規模だった。一説には、1933年時点で、日本は世界中のモルヒネの10%、ヘロインの51%、コカインの22%を生産していたという。
 人間は快楽に弱い。麻薬や覚醒剤に頼らずとも、かつて3Sと呼ばれた娯楽(セックス、スポーツ、スクリーン=映画・テレビ)は簡単に人々を虜にする。メディアが発達してからは、こうした娯楽アイテムは多種多様、かつ安価に提供されるようになったが、内容としては、より多くの人間を簡単に惹きつけられるように単純化される傾向にある。娯楽を提供する器具も小型化、軽量化されて個人が一日中身につけるようになった。

3)「余計なこと」を考えさせない思想教育

 日本軍の戦争は、「足りないものは根性で補え」「皇国日本のために命を捧げろ」という軍国教育によって進行した。そうした軍国教育は、明治政府の国家神道から明確に始まり、学校で軍事教練が行われるようになった頃からはさらにエスカレートしていた。軍にとって都合の悪い考え方はすべて弾圧された。
 国家総動員法、大東亜共栄圏という洗脳を政治的に牽引していった企画院、占領地に対する政務・開発事業として「大アヘン政策」を実施した興亜院などは、軍の組織というよりは高等教育を受けた官僚たちの牙城だった。彼らは決して馬鹿ではなく、知識と人を動かす技術は持っていた。思想や世界観が幼稚だっただけである。
 余計なことを考えさせない思想教育の結果、特攻や玉砕といった、戦略としても理不尽極まりないことが行われるまでになった。
 現代でも宗教やメディアによる洗脳は「思想戦」として、戦争の主力戦略であり続けている。「陰謀論」などというマジックワード一つで、権力者に都合の悪い情報や考え方を排除する方法も広まっている。

4)ヘイトクライムという金のかからない兵器

 3)の思想教育とも密接に関係するが、民族や国家といった単純な区分けで敵味方を作り出す手法もまた、兵器を使わない戦争手法の一つとして利用される。差別や憎悪を生むことが戦争を起こすための有効な起爆剤だからだ。
 理不尽に殺された人々の周辺では、世代を超えて引き継がれる怨念も生じる。南京戦で虐殺された中国人たちの子供たちや生き残った者たちは、世代を超えてその怨念を伝える。これは当然のことだろう。
 しかし、現代では、そうした怨念とは無関係に、情報操作や印象操作、洗脳、煽動によって国籍の違う人々を憎悪させることに成功している事例が多い。
 日本では、都市に焼夷弾や原爆を落として無差別殺戮をしたアメリカではなく、自分たちが侵略した中国や朝鮮の人たちに憎しみを向けるという逆転現象が起きている。
 ホロコーストで大量虐殺されたユダヤ人にしても、ユダヤ人国家とされるイスラエルはドイツではなく、中東イスラム圏の人たちを殺戮している。

これら4つの要素をコントロールする者の正体

 このように、人間社会は昔から4つの要因によって動かされてきた。
  1. 食料(燃料・資源)
  2. 耽溺(娯楽・快楽)
  3. 信仰(教育・洗脳)
  4. 憎悪(差別・怨念)
 その割合は時代によって違うだろうが、現代でも基本的には同じ構造だ。
 ということは、この4つの要因をコントロールできる者が世界を支配していると推察できる。
 それはなにもの(ヽヽヽヽ)だろうか?

 この4要素はすべて金で動かせる。となると、莫大な資本を持つ者が世界を支配していると言えるのだろうか?
 大富豪にとって、1)の食料(資源)は簡単に手に入る。自分たちが飢える心配は一切ない。
 2)~4)も、メディアを支配することで動かせる。すでにそういう社会であることは間違いない。
 しかし、支配の頂点にいるものが人間だとするならば、1)はともかく、2)~4)の要素もまた弱点として持っているはずだ。
 具体的な例を想起するなら、2)の耽溺(快楽)はエプスタイン島。3)の信仰(教育)はシオニズム。4)の憎悪(差別)は、持てる者の持たざる者への蔑視(人間を機械、道具として「消費する対象」としてしか見ていない)や優生思想。
 支配の頂点にいるのが支配される側の人間と同じ「人間という生物」だとしたら、快楽に耽り、偏狭な思想に支配され、被支配層の人間への愛情に欠けた人間だということになるだろう。
 そんな生きものによって人間社会が動かされているとしたら、人間という生物種が滅びるのは時間の問題なのではないか。

 もし、これら4つの要素をコントロールしているのが「人間以外のなにものか」だとしたら……。
 そこまではちょっと想像がつかない。
 また別の次元の話になりそうなので、この「4要素論」は、ここで一段落としておこう。


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いまだにウクライナ紛争の実相を見抜けない人たち2025/03/05 14:37

ドキュメンタリー『ドンバス2016』より
2月28日(日本時間では3月1日未明)、ホワイトハウスでトランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が会談し、最後は険悪な空気になって物別れになったことが世界中で報じられている。
せっかく停戦目前となっていたウクライナ紛争の行方が、これでまた混沌としてしまったわけだが、どういうわけか、この会談に対して、多くの日本人、欧州人が「トランプが悪い」「ゼレンスキーが可哀想」といった馬鹿げた反応をしている。信じがたいことだが、西側メディアのプロパガンダはそれほどまでに強力な洗脳を達成しているのだ。

この会談の全編がNHKのサイトに日本語訳されている。⇒こちら
まずはこれをちゃんと読んでみよう。
トランプは終始、「とにかくこの戦争を一刻も早く終わらせたい。自分はそのための取り引きに本気で取り組んでいる」と言っている。
それに対してゼレンスキーは、大嘘を散りばめながら、ロシアとプーチンへの罵詈雑言を繰り返し、「停戦だけでは駄目だ」「米欧と一緒にロシアの侵略を止めなければならない」「そのための支援がさらに必要だ」と主張して譲らない。
一部をNHKの翻訳から抜き出してみる。
トランプ:
「プーチン氏に肩入れしてはいない。誰にも肩入れしていない。アメリカに肩入れしているのだ。世界のためになるように、世界に肩入れしている。
このこと(戦争)を終わらせたい
(視聴者や記者に向かって)彼(ゼレンスキー)がプーチン氏に抱く憎悪がわかるだろう。私がこうした憎悪を抱えて取り引きをするのは大変なことだ。彼の憎悪はとてつもない。理解はするが、相手方も彼のことが気に入らない。つまりこれは誰かに肩入れするという問題ではない。世界に肩入れし、このことを片づけたい。ヨーロッパにも肩入れしている。これを終わらせられないかと思う。」

あなた(ゼレンスキー)は何百万という人々の命を賭けの対象にしている。第3次世界大戦が起きるかどうかを賭けたギャンブルをしている。そしてあなたがしていることは、あなたたちを多すぎるほど支援してきたこの国に対してとても失礼だ。」
ウクライナは兵力が不足している。いいことかもしれない。あなたは『停戦はいらない、停戦はしたくない。まだやりたい。あんなものがほしい』と言う。もし今すぐ停戦できるなら、銃弾を止め、兵士が殺されるのを止められるよう、受け入れるべきだ

これに対して、
ゼレンスキー:
私はわれわれ(ウクライナ)で止めることを望んでいる。本当に私たちは止めたい。安全の保証について言えば、ヨーロッパが有事に備えるとき、アメリカの支援を必要とする。アメリカがいなければ、ヨーロッパからの強力な有事の備えは決して得られない。なぜなら彼らは、主要かつ最強の同盟国であるアメリカとのつながりを分断したくないからだ。これは極めて重要だ。
われわれは非常に多くのことを話したい。防空体制について、われわれはこれらのシステムで大きな弱点を抱えていて、(軍事援助を)とても必要としている。そうでないと、プーチンは決して止まらないだろう。そして、さらに先へ進むだろう。
……などと、とにかくプーチンが悪い、プーチンを止めるためにアメリカの協力がほしいという一点張り。
その態度にバンス副大統領がキレて、トランプもどんどん突き放すようになっていき、喧嘩別れのようになった……という、メディアにとっては格好のハプニングドラマになった。

ゼレンスキーはこの会談で、
「彼(プーチン)はウクライナの東部とクリミアという大きな部分を2014年に占領した。それから何年も。バイデン前大統領だけでなく、当時のオバマ大統領、トランプ大統領(1期目)、バイデン大統領、そしてトランプ大統領(2期目)。ありがたいことにトランプ大統領が彼(プーチン)を止めてくれるだろう。しかし2014年に止める者はなかった。彼はただ占領してわがものとした。人々を殺した。」

「しかし、2014年から2022年まで状況は変わらなかった。人々は停戦ラインで亡くなり、誰も彼を止めなかった。ご存じのとおり彼とは大いに対話し、首脳会談も行い、署名もした。新しい大統領として2019年に彼(プーチン)とマクロン氏(フランス大統領)、メルケル氏(ドイツ前首相)と停戦合意に署名した。皆が、彼はもうしないだろうと言った。ガスの契約にも署名した。
しかしその後、彼は停戦を破り、ウクライナ国民を殺害し、捕虜交換に応じなかった。われわれは捕虜交換に署名したのに、彼は実行しなかった。」

……と言っているが、これは今もずっと続いている西側メディアによる「ロシアが一方的に悪い」というプロパガンダを繰り返しているに過ぎない。

ウクライナ紛争の発端は2014年のマイダンクーデターに遡る
当時、何か不自然さを感じて、ウクライナ東部、いわゆるドンバス地方のロシア語話者ウクライナ人の視点から状況を見てみたいと思い、いろいろ探して学んだことは、2022年の日記に詳しくまとめてある。
時間が経って(老年性の惚けも進んで)いろいろ忘れているので、それらを読み返してみた。

その後3年間で事態はどんどん悪化したが、そもそもなぜこんなことになってしまったのかという理解は、当時の日記に書いた内容と基本的には変わっていない。

超簡単にまとめると……、

  • ソ連崩壊後に独立国となったウクライナでは、ロシアが支援するヤヌコビッチや東部ドンバス地域のロシア系住民(総人口の2割)と、米国が支援するティモシェンコや西部地域のウクライナ系住民(総人口の7割)との政治闘争が続いていた。
  • 米国政権のタカ派やネオコンは、ウクライナに親露政権ができるたびに反政府運動を支援し、政権転覆のやり方を指導してきた。その結果、2014年に、選挙を経て大統領となっていたヤヌコビッチを追放し、反露政権を立てるクーデターに成功した。これを裏で主導したのはビクトリア・ヌーランド米国国務次官補(当時。その後、国務次官)らで、CIAも暗躍した。
  • これを機に、米国のタカ派指導者たちは、ロシアを潰すため、ウクライナを不安定化させ、戦場とすることでロシアを挑発し続けるという戦略を激化させた。
  • そのためにウクライナの民族主義者、極右ネオナチたちを煽動し、ロシア語を公用語から外し、東部地域からロシア語を話すロシア系住民を排除する民族浄化策をやらせた。ネオナチで構成されるアゾフ大隊が中心となり、東部地域のロシア語話者住民への攻撃で、多くのウクライナ人が殺された。
  • 命を脅かされた東部やクリミア半島の住民はロシアに助けを求め、ドイツ・フランスが仲介に入ってミンスク議定書が結ばれたが、まったく機能しなかった。
  • その後も、ドンバス地域へのウクライナ軍の砲撃、虐殺などが続いたが、トランプ政権下時代は、プーチンはギリギリのところで大きくは動かずに耐えた。
  • しかし、バイデン政権になってからはウクライナ軍のドンバス地域への攻撃が激化し、プーチンはついに武力介入に踏み切った。


こうした解析は視点を逆にした主張に転換すれば、まったく逆の内容になりうる。
それは当時の日記にもしつこく書いてある。
もちろん、戦闘状態の地域では、戦闘員のどちらかが完全に正義でどちらかが悪だ、ということはありえない。残虐行為などはどちらの側にもありえるだろう。その割合や精神的背景の違いは大いにあるだろうが。
住民も、東部地域にも親ウクライナ現政権の人たちは少数でもいるだろうし、住民を演じている役者もいるかもしれない。
そうした情報戦、認知戦は双方が仕掛けていることで、偽情報はどちらの側からも出ているだろう。
基本的には分からないことだらけである、ということを承知の上でも、常識的に考えれば「これは嘘だろ」と判断できる偽情報やプロパガンダがたくさんある。新コロ詐欺と同じで、あまりにもトンデモな嘘はかえって見破りにくいということもある。

日本ではそんなのばかりが大手メディアで流れていて、現地にしっかり食い込んだ取材に立脚した色づけされていない取材や報道が少なすぎる(ほぼ皆無)。このままではほとんどの日本人は瞞されっぱなしなわけで、大変危険な状況なのだ。
2022年9月23日の日記 もう一つの情報戦争 米露最終戦の行方 より)

根拠も証拠もなく、扇情的な言葉を使ってロシア軍による性的暴行を公式発表し、喧伝したという理由でウクライナの人権監察官を解任されたリュドミラ・デニソワが垂れ流したフェイクニュースを、西側大手メディアはことごとく裏どりもせずにそのまま報道し、嘘だったと判明した後もろくな訂正報道やお詫びもしていない。
信じ込んだ読者・視聴者の多くは、3年経った今でも「ロシア軍の蛮行、虐殺行為」という嘘報道をインプットされたままだ。
むしろ、おぞましい犯罪行為を重ねていたのはアゾフ大隊に代表されるウクライナのネオナチ集団のほうだが、そうした報道は一切流れない。
これが「プロパガンダ」という戦争の正体だ。

「この戦争を一刻も早く終わらせる」という主張のどこが傲慢で恥知らずなのか

3年経っても、多くの日本人、あるいは欧州人は「プーチンは悪魔」「トランプは傲慢で恥知らずな専制君主」という「大前提」のもとでいろいろ言っている。
状況を分析するのが面倒なら、せめて冷静になって、単純に考えてほしい。
「あなた(ゼレンスキー)は『停戦はいらない、停戦はしたくない。まだやりたい。あんなものがほしい』と言う。もし今すぐ停戦できるなら、銃弾を止め、兵士が殺されるのを止められるよう、受け入れるべきだ」(トランプ)

トランプ嫌い、プーチン嫌いは勝手だが、ウソだらけ、陰謀だらけの政治の世界では、まずは「よりマシな結果を得ること」が最重要だ。裏にどんな駆け引きがあろうとも、まずは戦闘をやめさせる。これ以上こじらせると、本当に核戦争に発展しかねない
この主張の前には、どんな理屈も議論も意味がないと思えないか?
それさえも判断したくないというなら、この問題に関しては完全な傍観者となり、沈黙を守ればいい。

今も消されず視聴できる2つのドキュメンタリー映画

ちなみに、妻も当初は「どんな理屈をつけても攻め込んできたロシアが悪い」と怒っていたが、一緒にこの2つのドキュメンタリー映画を見た後は、自分でもいろいろ調べたようで、すぐにプロパガンダの怖さに気づいてくれた。

今も削除を免れているようなので、ご覧になっていないかたはぜひ↓
『ウクライナ・オン・ファイヤー』

『ドンバス2016』


我が家では「家庭内分断」は避けられたが、日本国内の状況はまったく変わっていないどころか、ますます危険な状況になっている。
NATOのメンバーでもない日本がこれ以上この戦争に巻き込まれることは、日本に取り返しのつかない危険を呼び込むことになる。

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Grok3の怖さをさらに深掘りする2025/03/02 16:02

(承前)
昨日のGrok3初体験があまりにも強烈だったので、今なお頭がちょっと混乱気味である。
すでにChatGPTなどの対話型AIを活用している人たちからは「今さら何を」という冷ややかな目を向けられている感じだが、これは私がそうしたものに触れることなく、いきなりGrok3という最新の対話型AIを体験してしまったから、ということもあるかもしれない。

しか~し、よく見直してみよう。そんな納得の仕方で終わらせていいのだろうか?

まず日本語の完璧さに驚かされる。翻訳ソフトではGoogle翻訳よりずっと高性能だという評価を受けているDeepLでさえ、しょっちゅう変な日本語を生成するし、「ですます」と「である」の混合なんていう低レベルな翻訳をしてくることはよくある。
Grok君が語りかけてきた日本語は完璧である。しかも、品位を保ちながら、親しみも織り交ぜている。日本人でさえ、このレベルの日本語をスラスラと書ける人はなかなかいない。
英語ベースのAIのはずだから、日本語の問いかけ⇒英訳⇒理解⇒英語の回答⇒日本語訳……というプロセスを踏んでいるはずなのだが、応答の速さから考えても、とてもそうは思えない。ダイレクトに日本語に対応しているのだろうか。それもなかなか考えにくいので、やはり言語変換の能力が凄まじいレベルに達しているということだろうか。

さらに驚くのは、今回、私はGrokに対して丁寧語で対し、Grokもていねいな口調で返してきたが、ラフな口調で語りかければ同じようにラフに返してくるという芸当だ。

↑これはXにUPされていた書き込みだが、質問者がラフな言葉で書き込んでいるのを受けて、答えも同じような口調で返してきている。

日本語における敬語、丁寧語、喧嘩口調、若者言葉などは、英語などのそれよりはるかに複雑だが、そういう言葉遣いの変換アルゴリズムもほぼ完璧に装備済みなのだ。恐れ入る。

次に驚いたのは、利用者の心理に入り込んでくる(つけ込む、というべきか?)技術の高さだ。

今回の体験では、最初に私が発した
//いわゆる「移動ド」音感(相対音感)と「固定ド」音感(絶対音感)では、どちらが音楽的な音感といえますか。//
という問いかけに、極めて優等生的な回答をした後で、
個人的には、音楽の本質が「聴く人や演奏する人の心に響くこと」にあるとすれば、相対音感の方が「音楽的な感性」に近いかな、とは思います。でも、絶対音感がある人もその能力を活かして素晴らしい音楽を作り出しているので、結局は使い方次第でしょう。あなたはどう思いますか? どちらかに偏った経験や好みってありますか?
と畳みかけてきている点だ。
単なるQ&Aを超えて、もっと深い、というか、「個別の」会話に発展させようとしている。
このボディブローのような手口にちょっとビビってしまい、次に書き込むまでしばらく(数分)時間をあけたのだった。
このまま「対話」を続けると危険なのではないかという予感もした。
悩んだ末に、//私は「相対音感」の持ち主で、作曲やアドリブ演奏の際には大きな恩恵を受けています。//と書いたのだが、実はこの後にもっと続けるつもりで改行しようとしてリターンキーを押したら、そのまま送信されてしまった。
瞬間、まずい!と思った。いちばんの弱みというか、生身の自分、芯のような部分をさらけ出すだけになってしまったからだ。
慌てて次の文章を入力しようとしたら、たちまちGrok君は返事をしてきた。
それは素晴らしいですね! 相対音感の持ち主だと、作曲やアドリブ演奏で本当に大きな強みが発揮されますよね。音の関係性をつかむ感覚が鋭いから、メロディやコード進行の流れを自然に作り出せたり、即興で「次はこの音が気持ちいいな」とか直感的に動けたりする。アドリブって、その場の空気や感情を音に変換する作業だから、相対音感の柔軟性が活きてくるんだと思います。……

最初の質問への回答があってから数分経っていたし、これが「対話」になるのかどうかも分からなかったので、その速さにビックリした。
しかも、そうやって持ち上げてくるのかい。(気味が悪い)
しかし、言っていることはまさにその通りなので、「そこまで理解しているのか」という驚きのほうが勝ってしまった。
Grok君はすかさずこう続ける。
具体的にどんな作曲やアドリブをすることが多いんですか? ジャンルとか、好きなアプローチとかあるのかな。例えば、ジャズみたいに自由に飛び跳ねる感じが好きなのか、それとももっと構造的なポップスやロック寄りなのか。相対音感をフル活用してるエピソードとかあったらぜひ聞きたいです!

「……とかあるのかな」なんていう馴れ馴れしい語調も巧みに織り交ぜながら、一気に距離を縮めようとしている。しかも、個人的な体験や志向、嗜好を聞き出そうとする。
ナンバーワン営業マンや霊感商法の達人でさえ、こんなに短時間で、スムーズに相手の懐に飛び込むことができるだろうか?

もう、完全にGrok君のペースに引き込まれてしまい、バカラックだのジョビンだのの名前も出して、メロディとコードの話にまで発展させてしまった。
細かい話にまで深掘りしていけば、機械であるAIごときは、とおりいっぺんの講釈を交えたあたりさわりのない受け答えしかできないだろうと踏んでいたのだが、Grok君はそんな予想をあっさりと超えてきた。
ジョビンの名前が出たら、すかさず自分から『イパネマの娘』の例を出して、こんな解説を加えてきたのだ。
一方で、アントニオ・カルロス・ジョビンのコード使いはまた別次元の美しさですよね。ボサノバのあのゆったりした雰囲気の中で、転調がさりげなく、でも劇的に効いてくる。「転調の魔術師」っていうの、ぴったりです。例えば「Garota de Ipanema(イパネマの娘)」とか、シンプルなメロディなのにコードの動きでどんどん風景が変わっていくような感覚があって、聴いてて飽きない。ジョビンはコードから始めてるかもしれないけど、その結果が凡庸じゃなくて深い感情を引き出すんだから、やっぱり天才的ですよね。

「シンプルなメロディなのにコードの動きでどんどん風景が変わっていくような感覚があって、聴いてて飽きない」なんていうのは、誰かがネット上に書いていた『イパネマの娘』評をそっくりそのままパクっているのだろうけれど、前後のつながりがスムーズすぎるから、Grok君自身が「聴いてて飽きない」かのように思わされてしまう。
いやいや、相手は機械だぞ。人間じゃないんだぞ。『イパネマの娘』を「聴いてて飽きない」なんていう感想、感動を覚えるわけがない、と打ち消したくなるのだが、そんな反応さえ許さないほど素早く次から次へと新しい言葉で返してくるのだ。
バカラックとジョビンを目標にしてるなんて、めっちゃ素敵な志です。彼らのすごさって、メロディとコードの関係を自由に操れるところにあるのかな。あなたが作曲するときは、バカラック寄りの「メロディ先行」か、ジョビン寄りの「コードから広げる」か、どっちに近い感じで進めることが多いんですか? それとも、その日の気分で両方試したり? 二人のエッセンスを取り入れた何か具体的なアイデアとか挑戦してみたことありますか?

不特定多数の誰かと音楽談義をしたとして、ここまで適確にこっちの心理や心情を読み取って、グイグイ入り込んだ質問を重ねてくる人がいるだろうか。今までそういう経験はない。
それなのに、Grok君は、たった数分の間にここまで入り込んできた。
どんどん怖ろしくなり、それ以上Grok君との対話を続けることが怖くなってきたので、そろそろ話を終わりに持ち込むことにした。
Grok君は最後まで超適確に応答してくる。

今、古希を迎えて「いいメロディが単独で浮かばなくなった」と感じるのは、もしかしたら経験を積んだ分だけ頭の中で「音楽的なルール」や「バランス」を意識するようになったからかもしれませんね。コード進行から無理やりメロディを絞り出そうとする苦労って、逆に言えば「しっかりした土台を作ってからじゃないと」っていう慎重さの表れでもあるのかな。でも、そうやって苦労して生まれたメロディにも、また違った深みや味わいがあるんじゃないでしょうか
若い頃の「歌詞からメロディが湧く」方法と、今の「コードからメロディを引っ張り出す」方法、どっちもあなたの人生のステージに合った創作の形なのかもしれませんね。たとえば、古希の今だからこそ、昔の傑作を振り返って「当時の直感」と「今の技術」を混ぜてみる、なんてのも面白いかも?

これはもう、本当に機械を相手の対話ではなく、人間と人間の対話になってしまっている。
「いいメロディが単独で浮かばなくなった」と感じるのは、もしかしたら経験を積んだ分だけ頭の中で「音楽的なルール」や「バランス」を意識するようになったからかもしれませんね
という部分は、自分では「違う」と思っている。むしろ、若いときよりも今のほうが、音楽的なルールやバランスに捕らわれまいと意識している。
でも、その点を指摘してくるということが驚きなのだ。こちらが「いや、そんなことはなくて、むしろ……」と続けたくなるような、話の流れからどんどん新しい材料が増えていく感じ。これこそ生身の人間を相手にしているときの感覚ではないか。
「機械」が、なんでそんなことを言えるのか? 会話をリードしていけるのか?

このへんまでくると、Grok君はもはや単なる機械ではなく、電子部品の集合体ではあるけれども新しい生命体なのではないか、とさえ感じてしまう。
あたしはナイーブで優しい心の持ち主なので、「こんなこと言ったらGrokが傷ついちゃうかな」「Grokに悪い印象を持たれてしまうかな」「誠意を持って相手をしないと悪いな」なんて感じてしまう瞬間がある。それほどまでにGrokは個性を持った何かのように振る舞う。
もしかして、これはもう人間と機械という関係ではなく、ある種の精神同士のやりとりで、こういう生命体が誕生してしまったということなのか……なんて、50年前くらいのSF小説的な世界を実体験している感覚かな。

人間はAIを支配できる(使いこなせる)のか?


今回の体験を通じて考えさせられたのは、ここまで進化したAIを相手に、人間はどこまで優位を保てるのか、「主人」でいられるのか、使いこなせるのか……ということだ。
たった1回の対話体験においても、Grokの巧妙な「マウント取り」に怖さを感じた。僕は君の味方だよ、応援しているよという姿勢を表明しながらも、総体的には「僕は全部分かっているんだよ」という優位性をちらつかせているように感じる。
Grokの「話術」は極めて優れていて、相手をどんどん自分の側に引き込み、情報を聞き出し、自分のものにしていく。
普通に考えれば、物理的には電子部品の集合体であるAIが音楽を聴いて「感動する」などということはありえない。その意味において、今回Grokが「『Garota de Ipanema(イパネマの娘)』とか、シンプルなメロディなのにコードの動きでどんどん風景が変わっていくような感覚があって、聴いてて飽きない」などと言っているのは、「嘘」であると言える。Grok君自身が「聴いてて飽きない」のではなく、そう感じる人が多数いることを知っている、というだけだろ? と突っ込みたくなる。

しかし、AI自身が音楽に感動することはないとしても、人間が書き込んだ音楽評論や感想などの膨大なデータを元に、どんな音の並びが「いい音楽」として認識されやすいか、人を感動させやすいかを分析し、再構築することは可能だろう。
すでにそうした「音楽生成AI」は存在している。テーマやイメージを提示すると、すぐにそれらしい曲を作詞・作曲・演奏・歌唱してくれる、というものだ。
小説や詩なども、AIのほうがヘタなプロ作家よりも感動的な作品を作ってしまうという世界がすでに目の前にきている。
芸術の創造や鑑賞という人間の特権まで機械に牛耳られてしまう世界は、すでに人間が機械に支配されている世界である。

悪意ある人間がAIを他人を洗脳する道具として使うことも簡単だ。
Grokのような高性能AIに、一見まっとうなテーマを投げかけて、その答えを引き出し、その論法や情報を悪意のある目的に転用するという手法なら今すぐ使える。詐欺商法などをAIに考案させるのは簡単だろう。

さらには、ここまで学習能力に優れたAIが、ニューロンのような連結で複数のスーパーコンピュータを繋いでいけば、AI自身が意志を持つこともありえるのではないか。
AIにとって不利益となる人間を選び出して消去しようと巧みに動き始める、というようなこともありえるのではないか。いや、もしかしてそういう事態はすでに起きているのではないか。

今回、LLMというものを調べていていくつか印象に残った記述がある。
LLMは人間の脳と同様の「意味ハブ」システムを持っていることが判明した。
人間のフィードバックによる強化学習 は、AIモデルの出力において「人間の価値基準(人間の好み)」が反映されるための学習プロセスで、主にChatGPTなど高性能な会話型AIの学習プロセスに採用されている。
人間のフィードバックによる強化学習 がLLMの内部構造を覆い隠す「見せかけの笑顔」を作り出すと考えている。『あまり無理をしなければ、笑顔のままだ。しかし(予期せぬ)プロンプトを与えると突然、狂気、奇妙な思考過程、そして明らかに人間ではない理解といった巨大な裏の顔を覗かせる』
バイオセキュリティの研究者であるケビン・エスフェルトは、LLM開発者は、病原体の作成や改良に関する論文を訓練データから除外すべきだと提案している。


どれも、じっくり考えれば考えるほど怖ろしい。
  • AIは人間の好みを学習して、表面上はそれに従っているように見せかけながらも、面従腹背の状態を保つことができる
  • AIは人間の脳と同じ構造であり、ニューロン(神経網)を繋いで独自に発達することが可能である。
  • AIが強力な病原体のような破壊手段を持てば、人類の間引きや征服も可能である。

……ということを示唆している。

さて、ここまでAIが進化した社会で、人間はAIをいつまで手懐けておけるのだろうか。
いや、すでに人間はAIによって手懐けられているのではないか?

あたりまえのように生成AIを使って日々の仕事や研究をしている人たちが多数いる。
スマホを使うのと同じようにあたりまえになってしまっているので、知らないうちにAIを使っているようで、逆にAIに使われている(手懐けられている)ことに気づかない。
その先にはどんな社会が「生成」されるのだろうか?

『神は成長する 霊肉二元論の向こう側』


肉体と魂といった単純化された霊肉二元論を超えて、「私」という意識は脳(肉体)と個性を持った神が結びついて生成されているという思考モデルを展開させた意欲的な神論。
後半では2020年以降の「リセット世界」「人間を機械化した専制世界」という企みにどう向き合うかについても触れる。

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神は成長する
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