大きくなったネコを見ながら、2011年の川内村生活を振り返る2013/11/17 15:23

2011年、拾った直後ののぼみ~と今年夏ののぼみ~

放射能は下がり、ネコは大きくなった けれど

2011年。
僕と妻は全村避難中の川内村に4月末に戻って生活を再開していた。
家の中は大体0.4μSv/h前後。外は0.6μSv/h前後。
村は広い(千代田区の17倍の面積)から一概には言えないが、我が家の汚染状況は平均的なところだっただろうか。役場がある村の中心部は最も低く、0.2μSv/hくらいで首都圏とほとんど変わらなかった。
当時、川内村が避難していた郡山市では、市役所前で1.5μSv/hくらいあったから、「汚染地域」に戻ったという感覚はそれほどなかった。

(当時のテレビ画面↑)

郵便もクロネコも毎日来てくれたし、郵便局もガソリンスタンドも開いていた(佐川や西濃は来てくれなかったが……)。
もともとスーパーはなくて、買い物は20km以上離れた小野町まで行っていたから、格段不便になったということでもなかった。
6月14日、友人がやっていた田んぼがどうなっているのか見に行った。そのとき、道を一本間違えて入り、20km圏立ち入り禁止区域の境界線内側に出てしまった。
Uターンしようとして車を停めたときにニャ~という声がかすかに聞こえた。
そこで拾ってしまった子猫2匹。
今、日光で一緒に暮らしている「のぼる」と「み~」とは、こうして遭遇したのだった。


(↑これは拾った翌日の様子)

あの頃、まだウッドデッキの上は3μSv/hくらいはあったと思う。その上でひっくり返っている二匹を見下ろしながら、困った困ったと思っていた。
飯舘村往復で津島のあたりでは30μSv/hとか、そういうレベルを経験した後だったので、川内村に戻って2μSv/hだの1μSv/hだのという数値は「ほっとする」数値だと感じてしまっていた。
今は川内村の自宅の中で0.2~0.3μSv/h、外で0.3~0.6μSv/hくらいだろうか。かなり下がった。時間と共にいろんな感覚が麻痺している。

(2013年夏ののぼみ~↑ こんなに大きくなった)

先日、のぼるが膀胱炎(後にそう診断された)になって獣医さんに連れていったとき、超音波診断機で膀胱の中の映像を見ていた院長から「かなり大きなかたまりがありますね~。炎症で内出血した血餅だと思います。怖い話をすれば、このかたまりが癌細胞である可能性もゼロではないんですよ。ネコの膀胱癌はとても稀なので、おそらく違いますけれど」と言われた。
そのときは、ふうん、と聞いていたが、家に戻ってからじわじわと、「待てよ。そこそこ被曝したネコたちだからなあ。親猫が妊娠中のときにも相当被曝しているだろうし、普通ならありえないことでもありえるのかもしれない」と、どんどん心配になっていった。
福島で「フクシマ」を経験した人たち、小さな子供を抱えた人たち、あのとき妊娠していた人たち、その家族……みんなこれから先ずっと、同じ不安を抱えて生きていくのだなあと、改めて実感したものだ。

ちなみに↓これはいつ削除されてしまうか分からないが、NHK WORLD (国外向け)の番組。
こうした内容の番組を国内ではほとんど見られず、海外向け放送をネットでたどって見なければいけないという今の日本の状況は異常なのだが、そのことにほとんどの人が気づかず、無頓着であるということが恐ろしい。

今の段階では、内部被曝でいちばん怖いのは「吸い込む」ことだろうと思っている。
おそらく食べたり飲んだりすることでは大したダメージは受けないのではないか。とんでもなく汚染されている食品が出回っているとは思えないし、微量のセシウムなどが食べ物として入っても、多くは排出されるだろうから。
それよりもやはり粉塵などに付着した放射性物質を吸い込み、それが肺に付着するのが怖い。ストロンチウムやプルトニウムも、あまり出なかったとは言われているけれど、ゼロではないから、運悪く吸い込んで肺に付着して長期間アルファ線やベータ線被曝を受け続ける可能性もゼロではないはずだ。運が悪ければ吸い込むことだってあるだろう。これはもう、本当に「運」としか言いようがない。避けることもできない。
で、そういうことが起きていてもまったく分からないし、証明もできない。

家の前の道が未舗装(私道なので、初期の簡易舗装が劣化して完全に剥がれている)で、車が通るたびに砂煙が上がる。それを見るたびに、この砂煙と一緒に確実に放射性物質も舞い上がっているだろうと思う。
小さい子供は、より地面に近いところで呼吸しているわけだから、危険性も高い。もちろん、吸い込んだ場合の影響も大人より大きい。

効率や効果を考えれば、アスファルトに染み込んで固定された状態の放射性物質をわざわざ粉塵をあげながら剥がして移動させるより、汚染地域の未舗装路を舗装して放射性物質を舗装の下に固定させてしまったほうがはるかにいい。でも、「除染」はそこまで考えて行われているわけではなく、金が流れることを是として行われている。多くは仕切っているゼネコンの懐に入る。

飯舘村全村の除染をやると費用が3200億円と試算されているそうだ。
飯舘村の住民一戸あたり1億円……一軒一軒に1億円ずつ配ることができる金額である。
であれば、希望者には半分の5000万円でもいいから不動産賠償として払って新天地で新生活を始めてもらったほうがいいではないか。
一方で、1Fの作業員は、冬の間、防寒下着や携帯カイロさえ支給されず、凍えながら作業している。多重下請けのせいで、除染の日雇いより安い日当で毎日高線量をあびながら作業している人もいる。
「除染」名目で注ぎ込まれる大金はとりあえず元請けのゼネコンの懐へ入る。その下には東電系の系列会社が入る。
本来なら、1Fの収束作業の元締めになる組織は国の直轄で、儲けなど出てはいけない。命を削って働く人たちは手厚い待遇で迎え、これから先気が遠くなるような期間続く作業を支えていく人材を教育し、訓練する組織も必須だ。何よりもそこに金をかけなければならないはずなのに、いまだにピントのずれたことに大金を注ぎ込んでやっている。
許し難いことだ。

未舗装路を砂煙を上げながら通り過ぎる車のそばにいるときは、反射的に息を止める。
そういう生活が「フクシマ」以降はずっと続く。


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