アマンのビンディング2010/02/21 12:17

今日21日は、未明からジャンプラージヒル。録画して、結果を見ないように注意しながらじっくりテレビ観戦。今見終わった。
メディアは前日から「葛西が予選でトップ!」とはしゃいでいたけれど、言ってみれば、この予選というのは、無条件で決勝に出られる上位選手以外の選手が出なければいけないものなんであって、メダル争いレベルの戦いをするためにはトップ通過が当然。
予選のとき、試技をした予選免除選手(つまり、今季のトップレベル選手)たちはどうだったのかを伝えなければね。で、アマンは予選のスタート位置より下げた位置から飛んで、軽く危険距離に到達したというのだから、ああ、これは厳しい戦いになりますね、と伝えるべきところだろうなあ。

で、オーストリアチームが、アマンが使用しているビンディング(靴をスキーに留める留め金)がルール違反の危険なものだと抗議したというニュースが流れてきた。
こちら
読んでみたら、どうやら、普通のビンディングはゴムのように伸縮性のあるベルト状のものを後ろに用いているのだが、スイスチームが使っているビンディングは曲線状の鉄でできていて、空中姿勢を保持しやすいんだとか。その代償として、突発的な事態が起きたときは非常に危険だということらしい。
オーストリアチームは以前にこのタイプのビンディングを試みたことがあるが、あまりに危険なために採用しなかったんだとか。そういう危ないものを使っているアマンはよろしくない。ルール違反であるというのがオーストリアチームの主張。
ちなみに同じビンディングをスイスチームのキュッテル選手も使っているけれど、キュッテル選手はラージヒル24位だから、結局はアマンの実力が頭抜けていることに間違いはない。
2位のマリシュ(170cm)といいダントツに強いアマン(173cm)といい、長身ではない。オーストリアのエース、シュリーレンツァウアーは180cm。葛西は177cm。
小柄な日本選手が不利になるように、身長の低い選手は短いスキーしか履けないというルール改悪が行われてからは、しばらく長身選手ばかりが好成績を収めていたが、そこに現れた革命的な技術を持つ選手がマリシュ。そして前々回のソルトレイクシティ五輪で、ワールドカップ無冠のまま出てきていきなりノーマルヒル、ラージヒルで優勝したアマン。
ビンディングが危険なものなのであれば、きちんとしたルールで規制する必要があるだろうが、その前に、身長の高い選手が圧倒的に有利になるような不公正ルールを改正することが先じゃなかろうか。

アマンの強さの秘密2010/02/21 13:01

ついでにアマンの実力の秘密について一考してみた。
バンクーバーオリンピック直前企画・NHKの『ミラクルボディ』シリーズで、アマンが特集されていた。
彼の強さの秘密は、ずば抜けたバランス感覚と、空中姿勢の積極的な保持能力にあるという結果が出ていた。
サッツ(踏切)のタイミングが千分の1秒単位でずれただけで飛距離に大きく影響してくることは知られているが、その後、空中に飛び出した直後から、いかにスキー板の裏側でより大きな空気抵抗を受けるかが大切なことだと分析していた。
一般の選手は、飛び出した後のスキー板が、正面から見ると \ / になる。上から見ていわゆる「V字」になるという意味ではなく、真っ正面から見たスキー板の断面図がこうなるという意味だ。
V字飛行では、股を開いて脚を広げるから、自然と足首が外側に向き、スキーの断面はこの形になる。
これだと、下から受ける空気抵抗に対して、

 \ / 
 ↑ ↑

……こうなるから、上方向に空気が逃げてしまい、浮力が得られない。
これに対して、アマンやマリシュら、トップ選手は、スキーを地面に対して、
 _ _
 ↑ ↑

……この形に保持する能力を持っている。これだと、スキー板の底が空気をしっかり押さえ込めるので、より大きな浮力を得られる。
日本選手を見ていると、みんなサッツのタイミングと、その後の身体の前傾の技術に集中していて、このスキー板を地面に対して極力平行に保持するということをやっていない(やれていない)ように見える。
これをやるには、足首が柔らかいことが条件かもしれない。
アマンやマリシュは、飛び出した直後に、この
「スキー板を  \ / にせず、 _ _ にする」
ということに、ものすごく集中している感じだ。板が空気を掴み、びんびんとしなる様子が、他の選手たちと違う。
葛西選手は極端な前傾で攻めていくタイプだから、風が吹かないとまったく飛ばない。伊藤選手はバランスのとれたフォームを完成させているので、この、
「スキー板が  \ / にならないよう、 _ _ にする」
をマスターすれば、ぐんと伸びるんじゃないだろうか。
せっかくNHKがあそこまでしっかり分析してくれたんだから、利用しない手はない。