いわき市では検診が行われていない?!2013/02/21 20:59

内部被曝被害は想像以上かもしれない

2012年6月21日、「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律(原発事故子ども・被災者支援法)」というものが成立した。
この法律はいわば基本方針を定めたものであって、具体的な施策は、政府が計画をたて・政令などを発しないと動き出さない。
しかし、実際にはこの法律の精神が全然生かされていない、現場で機能していない、間違った方向に金と時間が使われているのではないか、ということで、被災地の住民、弁護士、医師、市民グループなどが、粘り強く中央に働きかけている。
2012年9月5日には、衆議院第一議員会館にて「原発事故子ども・被災者支援法ネットワーク」が、政府、国会議員に向けてこの原発事故子ども・被災者支援法を具体的かつ効果的な施策として反映させてほしいという公開フォーラムが開催された。
しかし、法律制定から8か月経った今でも、被曝した恐れのある人たちへの効果的なフォローはほとんどできていない。

上の動画は、2013年2月20日、参議院議員会館で、昨年9月のとき同様に、原発事故子ども・被災者支援法の効率的、積極的な運用による施策を求めた集会の様子。
左側の長いテーブルに並んでいるのは官僚など。
非常に長い動画だが、この中の1時間58分あたりからのやりとりを抜き出した音声のみのデータがYouTubeなどにアップされていて、それがフェイスブックなどSNSで広まっている。(上の音声データがそれ)
ざっくりとその部分の要旨を書くと、こんな感じだ↓(非常に聴き取りづらい、かつ、そのまま文字起こしが不可能なほど言い回しが不明瞭なので、こちらで意味を変更しない範囲で書き換えている)

井戸謙一弁護士:
  • みなさん(官僚たち)の危機感がないことに驚いている。
  • 今回の甲状腺癌の診断では、確定という診断が3人、疑いありが7人だが、この「疑いあり」は細胞診でクロと出ているのだから、ほとんど確定と診断されていると考えていい。
  • この10人は平成23年度の検査3万8000人のうち、B判定(要再検査)187人からの10人。
  • 24年度はすでにB判定が548人となっているが、この548人の二次検査の結果が公表されていない。
  • 実際にはこの548人にはさらに200人くらいプラスされるだろうと福島医大の医師が言っている。
  • そうなると748人。その18分の1だと40人くらい。これに10人を足せば50人。すでに50人くらい甲状腺癌になっている可能性があるのではないか。
  • さらには、ヨウ素がいちばん多く流れたいわき市方面は検査すら行われていない。25年度にやるといっている。
  • チェルノのときは、翌年から数人単位で甲状腺癌が見つかり、数年経って桁が変わって増えている。
  • 日本では2年目ですでに10人出ている。ということは、一気に増えると予想される数年後にはどうなるのか。
  • すでにこういう現実が目の前にあるのだから、早急に抜本的な対策が必要ではないか。

環境省:
  • 甲状腺癌の成長速度はゆっくりしているので、「スクリーニングバイアス」で1回目は多く発見される(以前から甲状腺癌になっていた人で自覚症状がなかった人も検査で見つかる)。しかし、継続的に検査を行っていくという態勢を作っている。

会場から:
  • 環境省ではなく、厚労省の認識はどうなのか? ⇒厚労省の担当者は返事せず。(いなかった?)

山田真医師:
  • 甲状腺癌の発病はゆっくりだということが前提になってしまっていることがおかしい。
  • チェルノでもすぐに見つかった例はある。
  • 普通に医学的に考えれば、経験的にそうであったとしても、特異な条件の下では違う傾向が出るのではないか、と考えるのはあたりまえ。
  • それなのに「放射能と癌の発症は因果関係がない」という方向に持っていくためにいろんな言い方をしていることがもどかしい。
  • 意味のないような検査をなぜ行っているのか。何か意図があるとしか思えない。
  • もっときちんとした計画的な検査をしないと経費も時間も無駄。きちんと精確な検査が行われるように態勢を見直してほしい。

この井戸弁護士の話を、さらに解説しておく。マスメディアではあまり大きく報道されていなかったからだ。

  • 原発周辺13市町村の3万8114人の子供(被ばく時年齢0-18歳)について、2011年度分の甲状腺エコー検査が昨年3月末までに実施された。
  • その結果、B判定(要再検査)となり、二次検査の対象になったものが186名いた。
  • このうち実際に二次検査をしたものが162名、(再検査11名、二次検査終了151名)その中で、細胞診まで実施したものが76名。
  • 162名のうち66名は良性と診断されたが、10名が悪性もしくは悪性の疑いと判定された。
  • 10名の内訳は男子が3名、女子が7名で、平均年齢は15歳。
  • この10人がどの地域でどのような形で被曝したかについては公表されていないが、この10人のうち何人かを個人的に知っている人の話では、特に地域的な偏りはなく、線量の高いところで、原発事故以降、避難をせずに生活をしていた家族の子どもであったとのこと。
  • 10名の内3人はすでに腫瘍の摘出手術を完了し、組織標本の病理学的診断により悪性腫瘍(甲状腺癌)であることが最終的に確定。
  • 残りの7人は細胞診検査の結果、約8割の確率で甲状腺がんの可能性があるという診断。
  • 2012年度の小児甲状腺エコー検査は進行中。今まで二次検査の対象になったものは549名と発表されているが、結果はまだ公表されていない。
以上は福島県健康調査室による報道などからまとめた内容。
さらに、現場からの話では、目下、郡山市と三春町でも検査を進めているが、さらに200人程度の二次検査対象が出そうだという。

井戸弁護士の話は、こうした現実をもとにしている。
井戸氏の「すでに50人くらいはいるんじゃないか?」という推論は十二分に合理的な思考の結果だと思う。
しかし、この部分(数字)「だけ」がネット上で執拗に繰り返され、どんどん一人歩きしていくと、例によって議論がミスリードされていく可能性があるのでは、と懸念もしている。
癌になるのはもちろん恐ろしいことだが、もっと恐ろしいのは、癌になるかもしれないという恐れを抱きながら暮らさなければならないストレスや生活の崩壊だ。
ヨウ素131による初期被曝に関しては、ヨウ素が大量に流れていったことが分かっているいわき市方面で2011年3月15日前後に屋外に長時間いた人たちが特に心配だ。
しかし、ヨウ素131の半減期は8日だから、今ではまったく痕跡が残っていない。あのときヨウ素が付着したエアロゾルを鼻や口から吸い込み、内部被曝をした人たちを今からホールボディカウンターで測定してもなんにも出ない。被曝したかどうか、まったく分からない。
だから、例えばいわき市の住民を今からWBCで現在の「内部被曝検査」などしても意味がない。いわきの市街地の空間線量は今は十分に低いので(もちろん北西側には深刻なホットスポットが点在することは周知の通りだが)、今からいわきの町を出て逃げろなどというのも見当違い。
しかし、すでにヨウ素でかなり初期被曝をしてしまった人たちが相当数いるのではないか? ということは想像できるわけで、今、いわき市でやるべきなのはWBC検査などではなく甲状腺癌の精密検査などだ。そしてそれはこれからも長期間にわたってやっていかなければならない。
井戸弁護士の話では、そのいわき市では検査が行われていないというのだから、一体どういうことになっていくのか……。
山田医師の言う「条件が違えば違う結果が出るのではないかと考えるのは当然のこと」という主張もあったりまえのことだ。
チェルノブイリでは数年後からしか発病例がないなどと言うが、そもそも住民が放射性物質漏洩で大量被曝した例というのがチェルノブイリくらいしかないのであって、データは圧倒的に不足している。日本人の放射線に対する耐性がロシアやベラルーシの人たちと同じかどうかも分からない。分からないことだらけ、これから調べていかなければならないテーマを前にして「今までの知見からしてそういうことは考えられない」などと言い切る態度が科学的、医学的に許されないことは自明ではないか。

いたずらに不安を煽ることは避けなければならないが、何が起きたのか、そのとき現地の行政機関や国はどう動いていたのかをしっかり振り返り、今後に生かすことは絶対に必要なことだ。故意に情報を隠したり、明らかにミスリードした者たちの責任も問われなければならない。
それでも過去のことは基本的に取り返しがつかない。
今いちばん大切なことは「今やれることをきちんとやらなければ時間も経費も無駄になる。ちゃんとやれ」ということにつきる。それが全然できてないから、業を煮やした人たちが議員会館にまでやってきてこうした集会を開かなければならないのだ。
あらゆる部分でぐだぐだになったまま。人を救うために使われなければいけない税金が、理不尽な被害を受けた人たちをさらに不幸に追い込むように使われる。それは絶対に許せない。
ひどいことを起こしてしまったのだと認めて、今からどうやって対処するかを必死で考え、実行する。それが政治・行政の仕事だろうに。いつまで犯罪者たちの擁護をやっているのか。

全編動画は⇒こちら http://www.ustream.tv/recorded/29419987

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