新型コロナウイルスは「バイオ経済テロ」か?2020/02/03 20:12

「陰謀論」というレッテル貼り

世の中のニュースは、大きなものほど真相はよく分からないところがある。
情報はいくらでも作れるし、加工するのはもっと簡単だ。権威のある機関(例えば政府機関とか大新聞社とか○○学会とか)が出している情報だから信頼できるかというと、まったくそんなことはないことを、(公文書改竄、破棄問題などを持ち出すまでもなく)すでに多くの人は理解している。
となると、真偽の分からない様々な情報を集めた上で、最後は自分の知識、経験、そして感覚(勘)などを総動員して、何が真相に近いのかを「推理」するしかない。
真剣に取り組んでも、自分がその事象に対して何かできるわけではないので、一種のゲームだと思って推理する。想像力や合理的判断力を働かせずに「公式発表」を鵜呑みにすることが「常識人」としての分別や品性ではない。
例えば、アポロ11号は本当に月に行ったのか? あれはでっち上げ映像ではないかという話が流れて、映画や本にもなった。この手の話は「陰謀論」とか「トンデモ」などと呼ばれて、ハナから論ずることさえ馬鹿げていると唾棄される傾向がある。
アポロが月に行ったのか、という件に関しては、僕自身は9割方「行った」のだと思っている。ただ、残り1割は「もしかしたら壮大な嘘かもね」と想像してみる「自由」を持ち続けている。陰謀論を打ち消す証拠をさらに検証する作業なども楽しみたい。
一方、ジョン・F・ケネディ大統領暗殺がオズワルドの単独犯行だったという「公式発表」については、9割方「それは違うだろう」と思っている。数々の物証が、オズワルド単独犯行説に無理があることを示している。
9.11で、ソロモンブラザーズビル(第7ビル)が崩壊したのは事前に綿密な計画のもとに爆薬が仕掛けられていたからだ、という説についても、9.9割方「それはそうだろう」と思う。あの映像を見て、ツインタワー倒壊の衝撃で崩れ落ちたなんていう説を信じろというのはまったく無理な話だ。同様に、9.11でペンタゴンに突っ込んだのは乗っ取られた旅客機ではなく、ミサイル状の飛翔体だったという説も、9割方「そうなんだろう」と思っている。
では、9.11計画を立案して実行したのは何者なのか? アルカイダとかビンラディンが単独でやったとは到底思えない。そこから、そもそもビンラディンは役者だったのではないか……と話が発展していく段階で、さらにいろんな陰謀論が出てくる。そこにちょっとした無理や飛躍が見られると、たちまち「アホか」と唾棄され、排除される。こうした論に「トンデモ」だとレッテル貼りをするために、大きな嘘を仕掛けた側がわざとアホな陰謀論者を野放しにしたり、アホ陰謀論者を創り出して露出させることもありえる。

新型コロナウイルスはバイオテロか?

さて、ここで今、世界中で騒いでいる新型コロナウイルスの話に移る。
このウイルスに関しては、当初から武漢のウイルス研究所から流出したという説があり、それはデマだから相手にするなみたいな話も出ている。
元国連紛争調停官の島田久仁彦氏(現・株式会社KS International Strategies代表取締役社長)は、今回のウイルスの起源について、大まかにだが
  • 1)中国人民解放軍の生物兵器研究開発施設で感染した人からの感染(事故によるヒトーヒト感染)
  • 2)中国以外の「何者か」によるバイオテロ(中国・武漢で人為的にばらまいた)
  • 3)公式?発表通り、野生動物由来のウイルスが突然変異して武漢の海鮮市場経由で広まった
……という3つの可能性を示唆している
マスメディアでは1)と2)の可能性については絶対に触れないようにしているようだが、個人的には1)2)3)の順番で可能性が高いのではないかと思っている。(時間が経つにつれ、1)より2)説のほうがありえるかな? とさえ思う)
2)の場合、主目的は中国を中心とした経済市場に打撃と混乱を与えるというものだったのではないか。言い換えれば新種の経済テロ。これは実際そうなっているわけで、ありえる話だと思う。

人への感染そのものが目的だとすれば、致死率の低いウイルスを使った実験的なもの、あるいは「本番」(?)に向けてのシミュレーションという意味合いが強いのではないか。この場合は経済戦争の道具という意味合い以上に怖ろしい。宗教的狂気をはらんでいるからだ。

バイオテロではなく、事故的なもの、あるいは自然発生的なものであったとしても、今、ウイルスが世界中にどのような速度、規模で広がっているかを必死にデータ収集、解析しているグループが必ずいる。このウイルスの感染率、感染速度で致死率を上げたものをばらまいたときに、世界はどのように変化していくかを予測する人たち。
死者の数(何人殺せるか)だけでなく、そのとき各国はどのように対応するか、人々はどのように動くか(動かされるか)、メディアをどのように使えばどのような効果が現れるか……。そうした実験場になっていることは間違いない。

で、そういう現実世界で、我々庶民はどのように対応すればいいか──これはもう、受動的な対応しかできない。ウイルスがなぜ出現したかについて真相を知ったところで何もできないわけで、現状を把握して、自分はそれに対してどう行動すればいいかを考えるしかない。
今回のことでいえば、新型コロナウイルスと呼ばれているものがどの程度の危険性を持っていて、自分の生活とどのように関係してくるかを極力正確に予測し、リスクを下げることしかできない。
この「リスク」には、感染するリスクだけでなく、過剰反応してストレスをためたり、他者を攻撃したりすることで社会が乱れるというリスクも含まれる。現時点ではそうしたリスクのほうが、自分が感染して死んだりするリスクよりはるかに高いことは間違いない。


岩田医師と高山医師の絶妙な連係プレー?2020/02/21 22:39

世の中は「新型コロナウイルス」(以下「COVID-19」と表記)のことで連日大騒ぎになっている。
分からないことだらけだが、2月21日の現時点で見えてきたことをまとめてみる。

COVID-19について分かっていること

  • 感染力は強く、当初言われていた接触感染、飛沫感染の他にエアロゾル感染がかなりあるのではないかという情報やデータが出てきた
  • 感染しても気づかないくらい抵抗力のある人もいるが、その人たちも人に感染させる可能性はあるのでやっかい
  • 発症後の症状の最大特徴は「経験のないほどの倦怠感」で、起きて動く気力もなくなるほど。他に、なかなか下がらない熱、咳、ときには下痢など、風邪に似た症状
  • 若年層は感染しても症状が出なかったり、出ても回復が早く、ほとんど重症化しない
  • しかし、高齢者や持病のある人は風邪症状が続いた後、一気に重症化し、死に至ることもある
      ⇒(そのため、致死率は高齢者(65歳~)とそれ以下で分けて算出したほうがいいのではないか?)
  • 重症化の初期タイミングで抗HIV薬の投与により症状改善が望めるらしい
  • 日本での水際作戦は失敗し、2月下旬時点で、すでに日本国内での市中感染がどんどん拡大している
  • 終息予測はたっていない。SARSのときのように気温が高くなれば弱まるのかも不明。一旦感染した人が抗体を持ち、再感染しないのかもよく分からない

ダイヤモンドプリンセス号問題

次に、注目を集めているダイヤモンドプリンセス号の乗員乗客の状況と、それに対する日本政府の対応については、こうなるだろうか。

  • 船籍はイギリス、運営企業はアメリカ(ダイヤモンドクルーズ社)。2月3日に横浜港沖に停泊した時点で乗客は2666人、乗組員が1045人(合計3711人)が船の中にいた
  • 乗客の国籍は56カ国・地域に渡り、このうち日本人の乗客はおよそ半数の1281人(*)。乗組員の国籍構成は詳細不明だが、ほとんどは東南アジア、南アジアの人たちらしい
  • 1月20日  横浜から出航。香港やベトナム、台湾、沖縄をまわって2月4日午前に横浜に帰港するスケジュールだった
  • 2月1日  香港で下船し帰国した乗客(80)がCOVID-19に感染していたと香港政府が発表
  • 2月3日  夜、予定より早く横浜港に到着。着岸はせずに停泊し、日本政府の検疫下に置かれる。厚労省から派遣された検疫官が入船し、発熱などの症状がある人を確認
  • 2月4日  この日の夕食までそれまで通り船内のレストランで食事を提供。シアターやカジノ、カラオケも営業していた(*)
  • 2月5日  乗員乗客のうち10人にCOVID-19感染が確認される。乗客全員を自室待機にする隔離措置を開始
  • 以後、発熱などの症状がある人を中心に感染検査を進めるが、検査体制が1日数百人規模のために追いつかず、検査結果が発表されるたびに感染者数が増大していく。この日、後に死亡する女性Aさん(84・基礎疾患なし)が発熱
  • 2月6日  乗組員にマスク着用命令が出る(*)。Aさんが発熱を訴えて船内医務室で受診
  • 2月10日  後に死亡する男性Bさん(87)が発熱。翌11日に下船して入院。5日に発熱したAさんが船内で問診を受け、投薬・点滴・ウイルスの有無を調べるため検体を採取
  • 2月11日  Aさんが船内で再々受診。医師は入院が必要と判断
  • 2月12日  DMAT(災害派遣医療チーム)などの医師38名、看護師36名、薬剤師17名が診療にあたるも、感染者は毎日確認され、累計が増え続ける。感染者のうち4人(うち日本人3人)が重症化し、集中治療室にて人工呼吸器をつけての治療(*)
     5日に発熱したAさんがようやく下船し、病院に搬送される。入院後、前日採取された検体検査で陽性が確認される。さらには検疫官1人も感染が確認される
  • 2月14日  5日に発熱し、12日に下船~入院したAさんの容態が悪化。酸素マスクをつけるが症状改善せず
  • 2月15日までに計218人の感染者が確認される。感染が確認された者は順次下船させて日本国内の病院等に入院させるが、感染者と同室だった家族などはそのまま部屋に隔離を続ける。さらには乗員は感染検査もほとんど受けられず、狭い相部屋にて過酷な労働を強いられていることが問題視される
  • 海外からは日本政府の検疫方法に非難の声が上がる。特に日本人に次いで乗客が多かったアメリカでは、「感染拡大の第二の震源地を作った」(ABCニュース)「公衆衛生の危機対応で『こうしてはいけません』という教科書の見本のような対応」(ニューヨークタイムズ)などの批判も
  • 2月16日  アメリカ政府はアメリカ国籍の乗客(425人)を船外に待避させるためにチャーター機を派遣し、本国へ移送開始。イギリス、イタリア、カナダ、オーストラリアなどの国も同様の対処をすると発表
  • 2月18日  神戸大学医学研究科感染症内科教授・岩田健太郎医師が、厚労省技術参与・高山義浩医師の助言を受けてDMATの一員という名目でダイヤモンドプリンセスに乗船したものの、すぐに退出を命じられる
  • 2月19日  ウイルス検査を受けて陰性とされた乗客の下船が始まる。この日は乗客443人が下船。バスで横浜駅などのターミナル駅に移動し、解放。公共交通機関などで各々が帰宅の途につく。解放後すぐに横浜駅地下街の寿司屋で食事をする夫婦もいた。この日までに検査が終了したのは3011人。陽性が確認されたのは621人(うち、無症状が322人)。下船直前での検体採取は行っていない ⇒下船後の乗客が後に感染が分かっても、いつ感染したのか追跡調査ができなくなる恐れ
     岩田医師が前日の体験をもとにYouTubeに船内の状況を問題視する動画を公開。たちまち拡散する。夜、高山医師がFacebookで同動画について一部の事実誤認などを指摘し、状況説明を行う
     一方、岩田医師を船から退出させたことについて、橋本岳・厚労副大臣がTwitterで「お見掛けした際に私からご挨拶をし、ご用向きを伺ったものの明確なご返事がなく、よって丁寧に船舶からご退去をいただきました。多少表情は冷たかったかもしれません。専門家ともあろう方が、そのようなルートで検疫中の船舶に侵入されるというのは、正直驚きを禁じ得ません」などと書き込み、「ちなみに現地はこんな感じ。画像では字が読みにくいですが、左手が清潔ルート、右側が不潔ルートです」と、写真を掲載したことで、それを見た人たちから一斉に「やはりグチャグチャじゃないか」と嘲笑と共に大反響が起きる。橋本副大臣はすぐにツイートを全削除した
  • 2月20日  入院していたAさん、Bさんが死亡
     船内で事務業務にあたっていた厚生労働省の職員1人と、内閣官房職員1人の感染を確認
     岩田医師は高山医師からの意見を受けてYouTube動画を削除。同日、日本外国特派員協会でSkype経由の記者会見に応じ、動画の削除の理由(データが公開されるなど対応が改善されたことで、初期使命を終えた)や、動画の中で訴えたことに基本的に間違いはなく、今も同じ考えであることを説明
     加藤勝信厚労相は同日夜に記者会見を開き、「明らかに検疫期間に発症者が減少しており、隔離が有効に行われた」として検疫が有効に作用したとの認識を示す

日本政府と厚労省の対応

こうして見ていくと、厚労省が主張する「検疫・隔離は有効に行われた」という説明を素直に受け止めることはとてもできない。
すでに各方面から指摘されていることだが、
  • 検査体制が十分に整っているのに、民間検査機関での検体検査をなぜ行わなかったのか?
  • 船内に長期間閉じ込めることによって感染が広がり、重症患者が出てしまう危険性になぜもっと早く気づかなかったのか?
  • 対人接触回数が多い乗員の感染チェックがいちばん後になったのはなぜなのか?
……といった疑問がすぐに浮かぶ。
3000人を超える乗員・乗客を隔離して経過観察できる施設がなかったというが(中国武漢からチャーター便で帰国させた人たちの隔離場所であったホテル三日月では相部屋が生じたし、その後の政府関連施設では共同トイレの宿舎)、すでにほぼ完成している東京五輪選手村施設を使うことなどは誰も提案しない。
普通に考えればまっ先に思いつきそうなものだが、政治家もメディアも絶対に選手村のことは口にしない。それができたなら、世界中から「さすがはおもてなしの国だ。素晴らしい」と賞賛され、たとえオリンピックが開催できなくなっても、国のイメージは一気に上がっただろう。
選手村を使えない理由があるならそれを説明してもいいと思うのだが、東京五輪関連の話がリンクすることはトップレベルのタブーになっている感じだ。

高山医師と岩田医師の超絶連係プレー?

岩田医師が公開したYouTube動画については、一部では「スタンドプレー」「ただの目立ちたがり屋」「ヒーロー気取り」「現場にとって迷惑なだけ」といった批判が寄せられたが、それは違うだろう。少なくとも原発爆発の後に1F(いちえふ)に乗り込んだ某議員(なんと今回の専門家会議に政府側から参加しているらしい)のようなのと一緒にしては失礼だ。
岩田医師の動画に対して高山医師がFacebookに書いた文章と、それに対する外からの膨大なコメントが非情に興味深い。
まず、岩田医師、高山医師、両者の話を合わせると、実際にはこういうことだったようだ。

  • 岩田医師は当初からダイヤモンドプリンセス号への対応に疑問を持っていたが、乗客や関係者から「なんとかならないか」という悲痛な訴えを受け、現場に行くことを決意
  • 岩田医師は、現場で指揮にあたっていた高山医師とは旧知の間柄で、今までもこうした現場で共に仕事をしたこともある「仲間」と認識している。そのため高山医師に現場に入りたいと電話で相談する
  • 高山医師は厚労省の役人、自衛隊、DMATなどが複層的に入り乱れている現場で、すでに始まろうとしている乗客の下船手続きなどで手一杯だった。ただでさえこれ以上の混乱を押さえたいところにストレートな性格の岩田医師が乱入してくるとやっかいだと直感し、周囲を刺激せずに入ってもらうため「やり方を考えましょう」と応じる
  • 高山医師は厚労省のスタッフとして動いていたが、誰を入れていいという権限はないので、現場で一緒に動いていた「環境感染学会」に相談してみることを提案する。岩田医師はさっそく環境感染学会に「現場に入りたい」と申し入れるが、しばらく放置された後に断られる
  • そこで高山医師は、次に「DMAT(災害派遣医療チーム)のメンバーとして入ってはどうか」と進言する。その際、「DMATとして入る以上は、DMATの活動をしっかりやってください。感染管理のことについて、最初から指摘するのはやめてください。信頼関係ができたら、そうしたアドバイスができるようになるでしょう」と伝えた。岩田医師は「分かりました」と言ってDMATに合流した
  • 岩田医師はDMAT合流後、DMATのチーフドクターからは「あなたにはDMATの仕事(医療行為など)は期待していない。あなたは感染のプロなのだから、そっち方面の仕事をするべきだ」と言われる
  • それを一種の拒絶とはとらえなかった岩田医師は、すぐに周囲に感染対策アドバイスを始めるが、現場では翌日に迫っている下船のための準備に追われていて、(あなたが言うことはすべてごもっともで、自分たちもそう思いながらここまできたが)今さらそんなことを言われてもどうしようもないという空気になる
  • 結果、煙たがられるだけになってしまい、さらには橋本厚労省副大臣の怒りを買い(「なお昨日、私の預かり知らぬところで、ある医師が検疫中の船内に立ち入られるという事案がありました。事後に拝見したご本人の動画によると、ご本人の希望によりあちこち頼ったあげくに厚生労働省の者が適当な理由をつけて許したとの由ですが、現場責任者としての私は承知しておりませんでした」とツイートしている)、すぐに追い出される
  • 岩田医師は憤懣やるかたなく、すぐにYouTubeに動画をUPした
  • その動画はたちまち波紋を呼び、メディアも岩田医師を追いかけ、テレビ出演させるなどした
  • この状況を見て、高山医師は岩田医師と話し合い、とりあえずYouTubeの動画は削除してもらった
  • 岩田医師は、問題指摘の目的は果たせたし、橋本副大臣が無能ぶりを自ら証明するようなオマケまでつけてくれたことで、高山医師との連携を尊重し、お互いの役割分担、棲み分けを意識しながら、外国特派員協会での会見にも今までより慎重な言葉を選びながら応じた

……この流れを見ていくと、高山医師と岩田医師は、(ご本人たちにはそのような意図はなかったとしても)結果として絶妙な連係プレーをしたのではないかと思う。いっぱいいっぱいの極限状況にあった現場の業務を必要以上にかき乱さず、同時に問題点を広く世に知らしめることになったのだから。
Facebookのコメント(医療関係者が多い)などを見ても、高山医師は人望があることがよく分かる。また、岩田医師とは性格が正反対なようでいて、お互いの能力を信頼し、認め合っていることも察せられる。
このレベルの人たちが司令塔になって最初から問題にあたっていたら、事態はずいぶん違っただろうなと思う。

私も含めて、専門外の一般庶民ができることは、彼らのような優秀な人たちがしっかり活躍できる環境を作れるように、政治、行政、メディアを見張ることしかない。
別の問題でだが、あるコラムで、こんなことを言っている人がいた。
何かを隠蔽する際に「無能を理由にする」というやり方が、日本だけで許されている。場合によっては、後で「ご褒美」の昇進が待っていることすらある。


責任論ということでいえば、それを許している国民の責任がいちばん重いのではないか。


新型コロナウイルス 2/22時点での今後の予測と対策2020/02/23 16:38

連日テレビへの出演ですっかり痩せてしまった白鴎大学の岡田晴恵特任教授が、昨日(22日)、「(日本国内の感染者は)万単位でいると思います」とサラッと言っていた。
それはそうだろう。今発表されている「感染者数」というのは検査した人だけの数で、その検査数が当初は1日300件とか言われていたのが、2月18日に、「国立感染症研究所で400件、全国の検疫所で580件、地方衛生研究所で1800件、さらに18日からは民間の検査所5か所で900件、大学で150件の、あわせて最大で1日あたり3830件の検査が可能になった」と厚労省が発表したという遅さ。
つまり18日までは民間検査会社を使っていなかった。試薬や検査キットは準備できているのに、だ。これを書いている今でも、民間検査会社は厚労省から「一般のクリニックからの検査依頼は受けないように」と指示されているそうで(複数のクリニック院長がテレビなどで証言)、本気で検査しようとしているとはとても思えない。

医療ガバナンス研究所の上(かみ)昌広理事長は、2月13日の時点ですでにダイヤモンドプリンセス号に乗客を閉じ込めている「水際作戦」「検疫」に対して「ナンセンスだと思う。水際対策というのは航空機の時代(現代)ではまず無理。全員下ろすしかない。水際作戦をやるというのは、国内で流行っていないことが前提。日本国内はすでに感染拡大期に入っているので、今さら水際作戦などやっても意味がない」という趣旨のことを述べていて、そのYouTube動画に対して非難コメントがずらっと並んだが、1週間経って、その通りだったことが証明されている。
(文章にまとめたものが文春オンラインで読める⇒こちら

武漢と東京首都圏の比較

今後どうなっていくのかを予測するのは現時点(2月22日)ではまだまだ難しいが、まず、実際に起きていること、分かっていることを整理してみる。
  • 中国湖北省武漢市でパンデミック(大流行)が起き、医療が追いつかず、大勢人が死んでいる
  • 武漢が完全封鎖されたのは1月23日。ちょうど1か月後の2月22日現時点での死者は2345人。感染者数は確認されただけで7万6000人超
↑これは事実。
武漢市の面積は約8500㎢。人口は1100万人だ。
これに対して、東京-横浜を中心とする「東京都市圏」(横浜、川崎、さいたま、千葉、相模原の5政令都市と、それを含む1都5県149市町村⇒東京に通勤・通学している人口が多い)の圏域面積がほぼ同じ8547㎢。人口は武漢市の3倍以上にあたる約3800万人
ヒト-ヒト感染の起きやすさは武漢より高いであろうということは容易に想像できる。

中国は1100万人が住む武漢市を封鎖したが、東京圏で同じことができるとは到底思えない。しかも、感染はすでに北海道から沖縄まで全国に広がっているので、首都圏だけ封鎖しても意味がない。
この状態で日本はパンデミックを迎え撃たなければいけないということだろう。

極力感染しない・させない生活スタイルを

日本政府がCOVID-19のPCR検査を民間に完全開放し、検査を保険診療に加えれば、感染者の確認数は一気に増える
武漢市で原因不明の最初の肺炎患者が報告されたのは2019年12月8日だが、そこから逆算すると、11月中旬には発生していたと考えられ、実際、11月には民間レベルではかなりの数、「経験のない風邪にかかった」という話が流布していたという。
武漢市の交通封鎖が始まったのは2020年1月23日からだが、すでにその前に武漢から日本へ万単位の人が入ってきている。アメリカ、マカオ、香港での感染者は武漢封鎖前の1月21日には確認されている。すでにこの時点で感染者は中国国外に相当数出てしまっていた。
日本国内にすでに多数の無症状感染者を含めて万単位の感染者がいるとすれば、我々はもはや感染ルートがどうのこうのと騒いでいる段階ではなく、今こうしている間も自分はすでに感染しているかもしれないという意識で生活していくしかない。
できることは、
  • 無理をせず、睡眠・栄養を十分にとり、ストレスをためない生活を心がける(感染・発病しにくい生活をする)
  • 手洗いの習慣を徹底する(ウイルスが体内に入る前に消す)
  • 風邪症状が出たら外に出ず、閉じこもって様子を見る(職場もそれに協力する)
  • 高齢者施設や病院への不要な立ち入りは控え、施設側も感染者が入り込むリスクを極力下げる努力をする(重症化しやすい人たちを保護する)
……といったことしかない。

これはインフルエンザに対する心得と同じだ。
インフルエンザはすでに全世界に蔓延していて、毎シーズン、多数の死者が出ているが、それが「日常」となってしまっているので、今ではあまりニュースにならない。
実際、我が家のように子供がいない家庭では、近所の学校が学年閉鎖、学校閉鎖になっていても気がつかない。これがCOVID-19の感染疑いによる閉鎖なら、今はトップニュースになるだろう。

……結局は「そういうこと」なのではないか。

東京五輪はできるのか?

あと5か月を切った東京五輪は開催できるのか? ということが話題になり始めている。
暖かくなれば感染は下火になるはず、という予測もあるが、逆に、南半球では冬に入っていくので、そこから日本にやってくる人たちが新たな感染源になりうるのではないか、という予測を立てる人もいる。
現時点では、多分、強行するとは思うが、規模や盛り上がりが当初の目論見よりかなり落ち込むことは避けられないだろう。
COVID-19の完全な封じ込め(感染者ゼロ宣言など)はまず無理だから、強行するとしても、データを世界に向けて正直にすべて公開して「こんな状態ですが、開催しますので来てください」というしかない。
今は必死に感染者数を低く見せようとして検査体制を1日3000件台などとしているが、そんな体制のまま東京オリンピックを迎えるのは不可能だ。ちなみに東京五輪選手村の総ベッド数は17000だそうだ。
大型クルーズ船の5倍くらいの規模の臨時生活空間ができるわけだが、五輪にとって各国の選手たちが交流する場を与えることは大切な目的であり、それがぎくしゃくしたり、閉鎖的になったりするだけでも大いに水を差される。
柔道やレスリング、ボクシングなどの格闘技系や、バレーボール、バスケットボール、卓球などの室内球技は、特に神経を使う運営にならざるをえない。
それを覚悟で開催を強行しようというのであれば、データを出し渋っている、あるいは怖がって正確なデータを取ろうとしていないと思われたら、ますます開催が危うくなるということを肝に銘じるべきだ。
これだけ感染が残っていますが、今まで死んだ人は○人しかいません。万一、日本で感染しても、しっかりした医療体制で治療しますから、そんなに怖がらずに来てくださいね。私たちは全力でお迎えする準備を整えています……というスタンスでいくしかないのではないか。それに対して世界がどう反応するかは分からないが。
口だけの「おもてなし」は通用しない。

6月になった時点でパンデミックの勢いが止まらず、毎日死者が出ているような状態になっていたら、これはもう「来てください」というほうが無理だろうから、開催をスパッと諦めるしかない。中国が武漢を封鎖したように。

世界が日本を注視している。
COVID-19によって日本は実力を試されている──それは間違いない。

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新型コロナウイルス 専門家たちの発言・まとめ2020/02/23 22:26

COVID-19について、感染症対策の専門家たちはどう発言しているか、まとめてみた。
参考にしたのは、
  • 岡田晴恵(白鴎大学特任教授・専門は感染症学、公衆衛生学、児童文学)……連日テレビに出演し、すっかり顔が知られているあの人。
  • 岩田健太郎(神戸大学病院感染症内科診療科長・教授)……YouTubeにクルーズ船内の状況がひどいという動画をUPして注目されたあの人。
  • 高山義浩(厚労省技術参与)……岩田教授のYouTube動画についてフェイスブックで一部訂正・反論するコメントを出して注目された人。
  • 上 昌広(医療ガバナンス研究所理事長・元東京大学医科学研究所特任教授)……「そもそも総研」の玉川氏のインタビューなどで、政府がCOVID-19の感染検査を本気でしようとしていないことを批判。
  • 高橋 央(新ゆり内科院長・米国CDC実地疫学認定医。2003年にはWHO短期コンサルタントとして、フィリピンSARS封じ込め チームリーダーとして活動)……2月23日放送の日本テレビ「バンキシャ!」では「東京五輪を強行突破で行ってはいけない。引き返す勇気も必要」と発言。
……など、感染症研究を専門とし、学術だけでなく、実際にパンデミック現場を生で見てきた人たち。

全員がほぼ一致しているのは、
  • 日本での感染はすでに拡大期に入っており、今からできるのは感染者・重症患者の増加カーブをなだらかにする努力だけ
  • ピークカーブを押さえてカーブをなだらかにするために、収束時期が遅くなることは仕方がない
  • 感染ルートはもはや追えないし、追っても意味がないので、これから出てくる重症者をいかに減らすか、重症者を死なせないかが最大の課題
ということだ。

以下、いくつかの意見・見解をまとめてみた。

高山義浩氏が 2020/02/16 にFacebookに投稿した文章の要点
  • 新型コロナに感染したときの臨床像は、上図のような2つのパターンに分けられる。
  • 大半の人は、風邪症状が1週間ぐらい続き、そのまま軽快する。普通の風邪は2、3日で治るが、新型コロナだと長引くのが特徴。
  • その1週間で軽快しない場合は、倦怠感と息苦しさが出てくる。体のむくみや下痢などが出ることもある。高齢者や基礎疾患のある人がここまでこじらせやすいが、子供は稀。
  • 感染してから発症するまでの潜伏期間は5日(1-11日)ぐらい。入院を要するほどに重症化するのは、さらに10日(9.1-12.5日)経ったころだと見積もられている。
  • 感染力が強いのは、発症から3~4日目ぐらいだと考えられるが、重症化すると感染力も維持されて院内感染を引き起こしやくなる。
  • 世代別の疫学報告がまだ出揃っていないので正確なことはいえないが、ざっくりとした印象では、若者の重症化率と致命率はほぼゼロではないか。一方、感染した高齢者の1割ぐらいが重症化して、1%ぐらいが死亡するのではないかと感じている。要介護高齢者や入院患者では、さらにリスクが高まる。
……とした上で、
  • もはや、流行を抑止することは主たる目的ではない。重症化する人を減らし、死亡する人を極力減らすことに力を注ぐべき
  • 高齢者や基礎疾患(糖尿病、高血圧、腎臓病など)のある人(=ハイリスク者)に感染させないようにすることが最重要課題
  • このような家族がいる場合、ウイルスを外から持ち込まないように、玄関先にアルコールを置いて帰宅時の手指衛生を徹底すること。
  • 同居人が風邪をひいたら、症状が治まるまで家庭内で隔離。難しければ、ハイリスクの者を親族の家などに疎開させる。
  • 風邪症状に過ぎないのに新型コロナかどうかを確認するためだけに、救急外来を受診することは避ける。そこでハイリスク者に感染させてしまうことになりかねないから。
  • 高齢者施設の感染管理は極めて重要。100人の入所者がいる施設で新型コロナがアウトブレイクした場合、30人以上が発症し、10人以上が救急搬送を要して、数人が死ぬというイメージが必要。
……と、特に高齢者や病人にウイルスをうつさないことの重要性を強調している。

岩田健太郎氏も2020/02/16付のブログで「COVIDと対峙するために日本社会が変わるべきこと」と題し、同じようなことを言っているが、そもそも「日本の社会風土を変えていかなければいけない」と訴えている。
  • 感染症の広がりはウイルスだけが決めるのではない。社会や個人の振る舞いも大きく影響する。
  • 日本人は風邪症状くらいでは休まないから、他の国より感染が広がる可能性が高い(和歌山の医師が発熱後も解熱剤を飲んで大阪の病院でバイトしていたのがよい例)。
  • COVID-19での死者を減らす方法は、日本の社会風土を変えていくことである。
具体的には、
  • 風邪をひいたり体調を崩したら家で休む。社会もそれを許容する
  • しんどくなったらマスクを付けて速やかに病院を受診する。しんどくなければ必須ではない。しんどさの基準は個人差があるので個々の判断で。
  • 自宅に家族がいれば、病気の人はマスクを付けて、神経質に何かに触るたびに手指消毒をする。何度でも。
  • 仕事や学業を効率化する。人が集まらねばならない会議は最小化して、メールでできること(特に連絡事項)はすべてメールやチャットなどでやる。自宅でできる仕事も自宅でやる。
  • 医療リソースと公衆衛生リソース(役所含む)を大切にする。モノと人、マスクを無駄遣いしない。人も無駄遣いしない。すぐに病院に駆け込まない。「何かあったらすぐ病院に」と勧めない。夜中の記者会見など無駄なことはしない(記者会見もチャットでやればいい。昼間に)

翌、2/17のブログ「結果を出すということ(COVID対策)」ではさらに、こう駄目押ししている。
  • COVID感染者数を全数把握する意味はない。風邪の数を数えても得るものは小さい。
  • 無症状の者を検査する意味はまったくない。一方で、肺炎で死んだ人が新型コロナウイルスに感染していたかどうかの追跡調査は絶対にやらなければいけない。
  • 日本が目指すべきは、中国やその他の国よりもCOVIDの死亡率を減らすこと。
  • なんとなく都市機能を維持し、Skypeを使わない会議を続け、オリンピックもやって、なあなあでやり過ごしていけば、そのうちに世界中に新型ウイルスが蔓延し、問題が大きくなりすぎて誰も非難しなくなる。その流れでいけば政治的には成功したと思うのかもしれないが、感染症対策としては絶対に間違っている。
  • 本来ならば大臣や知事が記者会見をするのではなく、専門家集団が自分たちがやったこと、見つけたこと、これから見つけようとしていることを情報公開すべき。しかし専門家集団の存在そのものが見えてこない。
  • なあなあの対応でやり過ごすことは、長期的には「日本の発表、データは当てにならん」という評価になって大打撃になる。失った信用を取り戻すのはとても時間がかかる。中国はSARSのときにそれを思い知ったから、今必死で名誉挽回を図っている。
  • 新しい感染症が出た後の日本の総括はいつもグダグダだった。何をめざすか(使命)が曖昧なので総括もふわふわになる。今まではそれでやり過ごせたかもしれないが、今回は世界中から日本が注目されている。もうグダグダ、ふわふわは許されない。

しかし、今の日本では曖昧ふわふわグダグダどころか、 ↑こんなことが起きている。

上 昌広氏もほぼ同じことを言っているが、上氏はさらに「現場のことは現場をいちばんよく知る者に任せよ」「国は専門家ではないのだから指示を出すのではなく、後方支援に徹せよ」と強調する。
医療のことは各病院の院長が責任を持って指揮すればよい。現場特有の問題が必ずあって、それに合わせて臨機応変に動かなければいけないのだから、それを国がいちいち縛ったり、的外れな命令をしてはいけない、というわけだ。
ストレートな物言いをするために「反政府の左翼」などというアホな攻撃コメントも数多く目にするが、彼だけでなく、現場で命がけの活動をしてきた人たちは、政治家に期待できないことを嫌というほど学んできている。その結果、どうすればいいのかという具体策の提言をしているだけであり、政治色がどうのではなく、理系人間としての合理主義を貫いているだけなのだ。
上氏は2011年の津波被害や原発爆発後の現場に何度も足を運び、現地での復興の困難さを見てきている。
2015年に上氏が書いているこのリポートなどを読んでも、彼が極めてまっとうな合理主義者であることが分かる。
筆者たちが健診や内部被曝検査などの活動を遂行できたのは、川内村役場のチーム力のおかげだ。遠藤村長が率いる川内村役場の方々は、住民への説明、我々への案内などを完璧にこなしてくれた。
(2015年7月 ブログ「絶望の医療 希望の医療」上昌広 「住民の帰還問題を解決に導く川内村の特養」 より)
↑これを読んで、川内村に7年暮らしていた私も、村長や隣家のけんちゃん(ジョンの飼い主)の顔が浮かんで嬉しくなった。
ちなみに、原発爆発直後に川内村で起きていたことは、⇒2011年3月の日記のこのあたりに詳しく記録しているので、興味があるかたは読んでください。

メディアよ、しっかりしろ

毎度のことだが、メディア(特にテレビ)の報道については、本当にガッカリさせられる。
  • 1)ミステリーとかパニック小説のように、感染経路を追う推理みたいな話にして視聴者を引きつける
  • 2)水際作戦の失敗と市中感染を認めざるをえないとなって、責任論に持っていく
  • 3)あちこちに悲劇やアホ喜劇を見つけようとして、劇場化させる
……という段階が終わり、
  • 4)今までタブーだった東京五輪の開催危機に関して、いよいよ触れないわけにいかず、恐る恐る報じ始めて、政府と庶民(視聴者)の表情を窺う←(今ここ)
  • 5)東京五輪がどうなるのかは分からないが、その後、COVID-19は日常の一部と化していく。「今年のコロナウイルスはC型が主流のようです」なんて、インフルエンザと同じ扱いになるだけ←多分、こんな感じになっていくのではないかなあ……

……3.11の後がまさにこういう流れだった。今回も同じなのか? 何も学ばない、反省しないのか?


上氏はテレビにもときどき出てくるが、事前に「政権批判のようなことは言わないでください」と念押しされることもあるそうだ。
連日テレビに出ずっぱりの岡田晴恵氏は、このところすっかりやつれてしまったように見える。やはり相当なプレッシャーを受けながらの出演で、身体より精神的な疲労が溜まっているのだろう。心配だ。
今日(23日)、日本テレビ「バンキシャ!」に出演した高橋央(ひろし)氏は、静かな笑みを時折浮かべながら、淡々とした口調で、感染がどんどん広がっていくのは専門家なら誰もが分かっていることで想定内だとした上で、「東京五輪は強行突破しようとしてはいけない。引き返す勇気も必要」だと述べた。おそらく、これには番組制作側も慌てたのではないだろうか。
これが最後の起用にならないことを祈りたい。

メディアはどこを見て報道すべきなのか。
誰も見る必要はない。見るべきは人の顔ではなく、現場の実状である。
今起きていることだけを伝えればよい。そして、誰かの代弁者ではなく、今起きていることを正しく分析し、合理的な判断を示してくれる人を呼べばよい。
例えば、23日には千葉市内の中学校に勤める60代の女性教諭が感染していたことが分かったと一斉に報じられた。
校内感染は起きていないのか? と心配するところまでは普通の伝え方だろう。しかし、「生徒たちにうつしていないのでしょうか?」という誘導は絶対にやってはいけない。これは完全なミスリードだからだ。
なぜなら、この教諭はたまたま具合が悪くなって検査をしたから感染が分かっただけであり、誰からいつどうやってうつされたのかは分からない。教諭から生徒へではなく、その逆である可能性がある。教諭より生徒のほうが数は多いし、若年層のほうが発症しにくいことはすでに分かっているのだから、無症状のまま感染している生徒が複数いて、そこから60代の教諭にうつった可能性も高いのだ。
さらにいえば、ウイルスに対して60代の教諭と10代前半の中学生とどちらが「弱者」かを考えれば、明らかに教諭のほうが弱者であろう。
では、この中学校の生徒全員を今からPCR検査できるのか? ……現時点での検査体制(恣意的に検査数を減らそうとしている)ではできないだろうし、するべきなのかどうかという判断も難しい……ということを、専門家たちの発言を聞いて学んだ私たちは知ることができる。
メディアの使命は、視聴者、読者が正しく判断できるような情報を提供することだけである。


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新型コロナ報道のあり方がひどすぎる2020/02/24 22:07

メディア(特にテレビ)がCOVID-19感染関連の報道をする際に、重要なことを言わず、視聴者を煽るのを目的としたようなミスリードをしていることは前回の投稿ですでに書いた。
もうやめようと思っていたのだが、あまりにも目に余るので、また書く。

感染症問題は「加害者・被害者」の関係ではない

今日(2月24日)、テレビのワイドショーに呼ばれた某医師が、千葉の60代女性教諭のことを「具合が悪くなった時点で仕事を休んでいればスプレッダーにならなくてすんだ」と責めていた。そういう言葉がどんどん世間をミスリードしていく。
この60代の教師は「休みたくても休めなかった」「休ませてもらえなかった」のではないかと、日本の社会風土を知る我々は容易に想像できる。そういう職場環境、休めない空気を作りだしていることを問題にすべきである。
そもそも彼女が「スプレッダー」になった証拠は何もない。生徒が感染していてそこからうつされ、過労が重なったので60代教師が最初に発症した可能性もある。
新たな感染者が報告されるたびに、まるでその人が起点となって周囲にウイルスをまき散らし続けたような印象を与える伝え方をするのは報道のあり方として許されることではない。JRの駅員も、給食配膳の人もそうだが、その人はすでにたくさんいる(はずの)感染者の1人に過ぎず、たまたま発熱などの症状が出てきて、たまたまCOVID-19感染検査を受けることができて、その結果陽性反応が出たにすぎない。
多くの感染者の中から「たまたま発症した」のは、その人が感染に対する「弱者」であったからだ。
千葉の女性教諭は、連日の仕事で疲労が溜まっていて、しかも60代という年齢でもあり、ウイルスに勝てなかったのだろう。
こうした「弱者」の存在こそが最もケアされるべきなのであって、新たな病人を「感染源」のように報じるのは、注意喚起の仕方として完全に間違っている
例えば、千葉の女性教諭が勤めている中学校に、70代の用務員とか外部からの80歳の清掃員とか、あるいはペースメーカーをつけた教員とかがいれば、その人たちは「感染弱者」と見なせる。そうした感染弱者に危険が及ばないように、しっかり健康状態を観察して、異変があればすぐに対応する、といった方向の注意喚起をすべきである。

感染検査させない国の方針こそが追及されるべき

韓国の感染者数急増を騒いでいる連中の馬鹿さ加減にもほとほと嫌気がさす。韓国は検査数を増やしたから感染者数が増えたのであって、日本も検査数を増やせばたちまち1桁2桁増える。
韓国で新型コロナウイルスの感染者が全国で出ている中、検査件数も急増している。
中央防疫対策本部によると、23日午前9時現在、6039件の検査が進められている。1日約5000件の検査能力を上回る件数だ。
新型コロナ検査能力 1日1万3千件に拡大へ=韓国 聯合ニュース 2020/02/24
日本は何をやっているんだ、という話である。
1日万単位の検査は可能だといわれているのに、理解不能な縛りをかけて数千件しか検査しようとしない国が世界から信用されるはずはない。
なぜ検査体制を国が統制しようとするのか? メディアはそこをなぜ徹底的に追及しないのか?

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