新型コロナウイルス 2/22時点での今後の予測と対策 ― 2020/02/23 16:38
連日テレビへの出演ですっかり痩せてしまった白鴎大学の岡田晴恵特任教授が、昨日(22日)、「(日本国内の感染者は)万単位でいると思います」とサラッと言っていた。
それはそうだろう。今発表されている「感染者数」というのは検査した人だけの数で、その検査数が当初は1日300件とか言われていたのが、2月18日に、「国立感染症研究所で400件、全国の検疫所で580件、地方衛生研究所で1800件、さらに18日からは民間の検査所5か所で900件、大学で150件の、あわせて最大で1日あたり3830件の検査が可能になった」と厚労省が発表したという遅さ。
つまり18日までは民間検査会社を使っていなかった。試薬や検査キットは準備できているのに、だ。これを書いている今でも、民間検査会社は厚労省から「一般のクリニックからの検査依頼は受けないように」と指示されているそうで(複数のクリニック院長がテレビなどで証言)、本気で検査しようとしているとはとても思えない。
医療ガバナンス研究所の上(かみ)昌広理事長は、2月13日の時点ですでにダイヤモンドプリンセス号に乗客を閉じ込めている「水際作戦」「検疫」に対して「ナンセンスだと思う。水際対策というのは航空機の時代(現代)ではまず無理。全員下ろすしかない。水際作戦をやるというのは、国内で流行っていないことが前提。日本国内はすでに感染拡大期に入っているので、今さら水際作戦などやっても意味がない」という趣旨のことを述べていて、そのYouTube動画に対して非難コメントがずらっと並んだが、1週間経って、その通りだったことが証明されている。
(文章にまとめたものが文春オンラインで読める⇒こちら)
武漢市の面積は約8500㎢。人口は1100万人だ。
これに対して、東京-横浜を中心とする「東京都市圏」(横浜、川崎、さいたま、千葉、相模原の5政令都市と、それを含む1都5県149市町村⇒東京に通勤・通学している人口が多い)の圏域面積がほぼ同じ8547㎢。人口は武漢市の3倍以上にあたる約3800万人。
ヒト-ヒト感染の起きやすさは武漢より高いであろうということは容易に想像できる。
中国は1100万人が住む武漢市を封鎖したが、東京圏で同じことができるとは到底思えない。しかも、感染はすでに北海道から沖縄まで全国に広がっているので、首都圏だけ封鎖しても意味がない。
この状態で日本はパンデミックを迎え撃たなければいけないということだろう。
武漢市で原因不明の最初の肺炎患者が報告されたのは2019年12月8日だが、そこから逆算すると、11月中旬には発生していたと考えられ、実際、11月には民間レベルではかなりの数、「経験のない風邪にかかった」という話が流布していたという。
武漢市の交通封鎖が始まったのは2020年1月23日からだが、すでにその前に武漢から日本へ万単位の人が入ってきている。アメリカ、マカオ、香港での感染者は武漢封鎖前の1月21日には確認されている。すでにこの時点で感染者は中国国外に相当数出てしまっていた。
日本国内にすでに多数の無症状感染者を含めて万単位の感染者がいるとすれば、我々はもはや感染ルートがどうのこうのと騒いでいる段階ではなく、今こうしている間も自分はすでに感染しているかもしれないという意識で生活していくしかない。
できることは、
これはインフルエンザに対する心得と同じだ。
インフルエンザはすでに全世界に蔓延していて、毎シーズン、多数の死者が出ているが、それが「日常」となってしまっているので、今ではあまりニュースにならない。
実際、我が家のように子供がいない家庭では、近所の学校が学年閉鎖、学校閉鎖になっていても気がつかない。これがCOVID-19の感染疑いによる閉鎖なら、今はトップニュースになるだろう。
……結局は「そういうこと」なのではないか。
暖かくなれば感染は下火になるはず、という予測もあるが、逆に、南半球では冬に入っていくので、そこから日本にやってくる人たちが新たな感染源になりうるのではないか、という予測を立てる人もいる。
現時点では、多分、強行するとは思うが、規模や盛り上がりが当初の目論見よりかなり落ち込むことは避けられないだろう。
COVID-19の完全な封じ込め(感染者ゼロ宣言など)はまず無理だから、強行するとしても、データを世界に向けて正直にすべて公開して「こんな状態ですが、開催しますので来てください」というしかない。
今は必死に感染者数を低く見せようとして検査体制を1日3000件台などとしているが、そんな体制のまま東京オリンピックを迎えるのは不可能だ。ちなみに東京五輪選手村の総ベッド数は17000だそうだ。
大型クルーズ船の5倍くらいの規模の臨時生活空間ができるわけだが、五輪にとって各国の選手たちが交流する場を与えることは大切な目的であり、それがぎくしゃくしたり、閉鎖的になったりするだけでも大いに水を差される。
柔道やレスリング、ボクシングなどの格闘技系や、バレーボール、バスケットボール、卓球などの室内球技は、特に神経を使う運営にならざるをえない。
それを覚悟で開催を強行しようというのであれば、データを出し渋っている、あるいは怖がって正確なデータを取ろうとしていないと思われたら、ますます開催が危うくなるということを肝に銘じるべきだ。
これだけ感染が残っていますが、今まで死んだ人は○人しかいません。万一、日本で感染しても、しっかりした医療体制で治療しますから、そんなに怖がらずに来てくださいね。私たちは全力でお迎えする準備を整えています……というスタンスでいくしかないのではないか。それに対して世界がどう反応するかは分からないが。
口だけの「おもてなし」は通用しない。
6月になった時点でパンデミックの勢いが止まらず、毎日死者が出ているような状態になっていたら、これはもう「来てください」というほうが無理だろうから、開催をスパッと諦めるしかない。中国が武漢を封鎖したように。
世界が日本を注視している。
COVID-19によって日本は実力を試されている──それは間違いない。
それはそうだろう。今発表されている「感染者数」というのは検査した人だけの数で、その検査数が当初は1日300件とか言われていたのが、2月18日に、「国立感染症研究所で400件、全国の検疫所で580件、地方衛生研究所で1800件、さらに18日からは民間の検査所5か所で900件、大学で150件の、あわせて最大で1日あたり3830件の検査が可能になった」と厚労省が発表したという遅さ。
つまり18日までは民間検査会社を使っていなかった。試薬や検査キットは準備できているのに、だ。これを書いている今でも、民間検査会社は厚労省から「一般のクリニックからの検査依頼は受けないように」と指示されているそうで(複数のクリニック院長がテレビなどで証言)、本気で検査しようとしているとはとても思えない。
医療ガバナンス研究所の上(かみ)昌広理事長は、2月13日の時点ですでにダイヤモンドプリンセス号に乗客を閉じ込めている「水際作戦」「検疫」に対して「ナンセンスだと思う。水際対策というのは航空機の時代(現代)ではまず無理。全員下ろすしかない。水際作戦をやるというのは、国内で流行っていないことが前提。日本国内はすでに感染拡大期に入っているので、今さら水際作戦などやっても意味がない」という趣旨のことを述べていて、そのYouTube動画に対して非難コメントがずらっと並んだが、1週間経って、その通りだったことが証明されている。
(文章にまとめたものが文春オンラインで読める⇒こちら)
武漢と東京首都圏の比較
今後どうなっていくのかを予測するのは現時点(2月22日)ではまだまだ難しいが、まず、実際に起きていること、分かっていることを整理してみる。- 中国湖北省武漢市でパンデミック(大流行)が起き、医療が追いつかず、大勢人が死んでいる
- 武漢が完全封鎖されたのは1月23日。ちょうど1か月後の2月22日現時点での死者は2345人。感染者数は確認されただけで7万6000人超
武漢市の面積は約8500㎢。人口は1100万人だ。
これに対して、東京-横浜を中心とする「東京都市圏」(横浜、川崎、さいたま、千葉、相模原の5政令都市と、それを含む1都5県149市町村⇒東京に通勤・通学している人口が多い)の圏域面積がほぼ同じ8547㎢。人口は武漢市の3倍以上にあたる約3800万人。
ヒト-ヒト感染の起きやすさは武漢より高いであろうということは容易に想像できる。
中国は1100万人が住む武漢市を封鎖したが、東京圏で同じことができるとは到底思えない。しかも、感染はすでに北海道から沖縄まで全国に広がっているので、首都圏だけ封鎖しても意味がない。
この状態で日本はパンデミックを迎え撃たなければいけないということだろう。
極力感染しない・させない生活スタイルを
日本政府がCOVID-19のPCR検査を民間に完全開放し、検査を保険診療に加えれば、感染者の確認数は一気に増える。武漢市で原因不明の最初の肺炎患者が報告されたのは2019年12月8日だが、そこから逆算すると、11月中旬には発生していたと考えられ、実際、11月には民間レベルではかなりの数、「経験のない風邪にかかった」という話が流布していたという。
武漢市の交通封鎖が始まったのは2020年1月23日からだが、すでにその前に武漢から日本へ万単位の人が入ってきている。アメリカ、マカオ、香港での感染者は武漢封鎖前の1月21日には確認されている。すでにこの時点で感染者は中国国外に相当数出てしまっていた。
日本国内にすでに多数の無症状感染者を含めて万単位の感染者がいるとすれば、我々はもはや感染ルートがどうのこうのと騒いでいる段階ではなく、今こうしている間も自分はすでに感染しているかもしれないという意識で生活していくしかない。
できることは、
- 無理をせず、睡眠・栄養を十分にとり、ストレスをためない生活を心がける(感染・発病しにくい生活をする)
- 手洗いの習慣を徹底する(ウイルスが体内に入る前に消す)
- 風邪症状が出たら外に出ず、閉じこもって様子を見る(職場もそれに協力する)
- 高齢者施設や病院への不要な立ち入りは控え、施設側も感染者が入り込むリスクを極力下げる努力をする(重症化しやすい人たちを保護する)
これはインフルエンザに対する心得と同じだ。
インフルエンザはすでに全世界に蔓延していて、毎シーズン、多数の死者が出ているが、それが「日常」となってしまっているので、今ではあまりニュースにならない。
実際、我が家のように子供がいない家庭では、近所の学校が学年閉鎖、学校閉鎖になっていても気がつかない。これがCOVID-19の感染疑いによる閉鎖なら、今はトップニュースになるだろう。
……結局は「そういうこと」なのではないか。
東京五輪はできるのか?
あと5か月を切った東京五輪は開催できるのか? ということが話題になり始めている。暖かくなれば感染は下火になるはず、という予測もあるが、逆に、南半球では冬に入っていくので、そこから日本にやってくる人たちが新たな感染源になりうるのではないか、という予測を立てる人もいる。
現時点では、多分、強行するとは思うが、規模や盛り上がりが当初の目論見よりかなり落ち込むことは避けられないだろう。
COVID-19の完全な封じ込め(感染者ゼロ宣言など)はまず無理だから、強行するとしても、データを世界に向けて正直にすべて公開して「こんな状態ですが、開催しますので来てください」というしかない。
今は必死に感染者数を低く見せようとして検査体制を1日3000件台などとしているが、そんな体制のまま東京オリンピックを迎えるのは不可能だ。ちなみに東京五輪選手村の総ベッド数は17000だそうだ。
大型クルーズ船の5倍くらいの規模の臨時生活空間ができるわけだが、五輪にとって各国の選手たちが交流する場を与えることは大切な目的であり、それがぎくしゃくしたり、閉鎖的になったりするだけでも大いに水を差される。
柔道やレスリング、ボクシングなどの格闘技系や、バレーボール、バスケットボール、卓球などの室内球技は、特に神経を使う運営にならざるをえない。
それを覚悟で開催を強行しようというのであれば、データを出し渋っている、あるいは怖がって正確なデータを取ろうとしていないと思われたら、ますます開催が危うくなるということを肝に銘じるべきだ。
これだけ感染が残っていますが、今まで死んだ人は○人しかいません。万一、日本で感染しても、しっかりした医療体制で治療しますから、そんなに怖がらずに来てくださいね。私たちは全力でお迎えする準備を整えています……というスタンスでいくしかないのではないか。それに対して世界がどう反応するかは分からないが。
口だけの「おもてなし」は通用しない。
6月になった時点でパンデミックの勢いが止まらず、毎日死者が出ているような状態になっていたら、これはもう「来てください」というほうが無理だろうから、開催をスパッと諦めるしかない。中国が武漢を封鎖したように。
世界が日本を注視している。
COVID-19によって日本は実力を試されている──それは間違いない。
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