COVID-19の重篤化に「マイクロバイオーム」関与説2020/05/16 21:00

COVID-19重症化に関する徳田均医師(呼吸器内科)の仮説が非常に興味深い。
人の身体(特に外界と接する領域)には100兆個にもおよぶ微生物が共生しており、ヒトの免疫システムと絶えざる応答を繰り返しつつヒトの健康と病気の成り立ちに重要な役割を担っている。この乱れ(dysbiosis)が免疫の乱れ(dysregulation)をひき起こすと難治性の炎症性疾患が生じる。潰瘍性大腸炎、クローン病だけでなく、肥満、多発性硬化症、糖尿病など実に様々な病気がこの乱れによるものであることが証明されつつある。
 私の仮説は、コロナウイルスと宿主の戦いの中にマイクロバイオームという媒介項を設定すれば、これら様々な謎が解けるのではないか? である。コロナウイルスが気道(あるいは腸)のマイクロバイオームを変改し、そのdysbiosis が第2相の免疫学的異常(暴発)を招来する、と考えてはどうか? である。
COVID-19重症化の謎とマイクロバイオーム関与の可能性 徳田均

マイクロバイオームというのは、簡単に言えば人の身体に巣くっている様々な微生物(細菌、菌類、ウイルス……)の「相」ということらしい。
この構成が地域、人種、年齢などによって異なり、様々な要因により変化するという。
例えば、ビフィズス菌の入った乳酸菌飲料を毎日飲み続ければ腸内にビフィズス菌が増えるというような単純な話ではなく、食生活ではほとんど変化しないらしい。

徳田医師は、さらに具体的な提言として、
  • 自分の経験している臨床例で、風邪の初期段階でトスフロキサシントシル酸塩(抗菌薬)を短期間投与することで改善している
  • しかし、風邪の多くはウイルスが原因であることを考えると「抗菌薬」が直接ウイルスに効いたとは考えられない
  • これは抗菌薬によって上気道のマイクロバイオームが改変され、その結果炎症が鎮まったと考えられる
  • これを踏まえると、COVID-19軽症例の悪化阻止のために、腸内細菌を整える微生物群(乳酸菌やビフィズス菌などが有名)と並んで、ハイリスク患者の発病最初期にごく短期間の抗菌薬投与を考えてもよいのではないか
……という趣旨のことを述べている。

COVID-19に喘息治療薬のシクレソニド(商品名「オルベスコ」)が効くという報告があったときは、多くの医師が「なんで?」と驚いたようだが、あれなども、気道のマイクロバイオームを改変したことで重篤化を抑えられたと解釈することができるのかもしれない。

既存の薬をどう活用するかを目下早急に問われているわけだが、感染初期と重篤化してからでは薬の選択がまったく違ってくることはすでに医師の間では共通認識になってきている。
重症化してから抗菌剤や抗ウイルス薬を投与しても効果がない。むしろ、サイトカインストームを押さえるために、インターロイキン6(IL-6)という免疫系の働きを抑える薬(アクテムラやケブザラなど)が効くという事例がいくつも報告されている。
5月15日の「報道ステーション」では、番組総合演出の伊藤賢治氏(47)が、病室で自撮りした映像と共に生々しい経過報告をしていて注目されたが、ここでも症状が悪化してからのアビガンは効かず、アクテムラが効いたことを伝えていた。

特効薬の開発ということが声高に言われているが、何年かかるか分からない、そもそもできるかどうかわからないことに期待するよりも、まずはこうした既存の薬を使い分けて対処する」具体的方法を共有することが最重要課題ではないかと思う。

このマイクロバイオームについてさらにいろいろ読んでいると、こんな記述も見つけた。
日本人の腸内細菌叢の特徴として,炭水化物の代謝能が高い,鞭毛を持つ菌が少ない,修復関連の遺伝子が少ない,古細菌の一種であるメタノブレウィバクテル・スミティー(Methanobrevibacter smithii)が少ないなどが挙げられます.炭水化物が代謝されると,短鎖脂肪酸,二酸化炭素,水素が生成され,このうち短鎖脂肪酸はヒトの栄養素となり,水素は抗酸化作用を発揮します.ヒトは細菌の鞭毛抗原に対して免疫反応を起こすことから,鞭毛を有する菌が少ないと,免疫による炎症反応が起こりにくくなります.修復関連の遺伝子が少ないことは,DNA損傷が少ないことを意味していると思われます.つまり,日本人の腸内細菌叢の機能的特徴として挙げられた点はいずれもヒトの生理状態に有利に働くもので,こうした特徴が日本人はBMIが低く,また長寿であることと関係しているのかもしれません.
ヒトマイクロバイオーム研究~ 細菌叢メタゲノムからヒトの健康と病気を読み解く~ 服部正平 早稲田大学理工学術院先進理工学研究科 教授)


なぜ日本ではCOVID-19による死者が極端に少ないのかという謎について、すでにいろいろな説が出てきているが、今なお謎のままだ。
HLA型が関係しているのではないかという説はすでに取り上げたのだが、マイクロバイオームの違いが関係しているという説も、大いにありえるな、と感じる。
ノリやワカメなどの海藻に含まれる多糖類を分解するポルフィラナーゼという酵素を、日本人の90%は有しているが、欧米人では3%しか有していない、という話なども、大いに興味が引かれる。

……と、以上は医学界の専門家が論ずるべきことで、私などの専門外素人がどうこう言うことではない。それは重々承知している。
だからここまでは長い「前振り」である。
言いたいことは、
なんにせよ、もし日本でのCOVID-19死者の少なさが、遺伝子的要素やマイクロバイオームの違いに関係しているとすれば、それは単に「運がよかった」ということにすぎないということだ。
感染の次の波がきたとき、同じ運が味方してくれるとは限らない。
悪い事態を予測した上で、合理的、効果的な対策を準備していなければならないのに、この国ではそれがまったくできていないどころか、この期に及んでも政治が私利私欲やトンチンカンなメンツを最重視して暴走している。それをまず止めないと、とんでもないことになってしまう。
感染症で死ぬよりずっと怖ろしい結果が待ち受けている。
ここ数か月での世の中の激変を見ていると、戦争に突入していったときもこんな風に「あっという間」だったのだろうか、と思わされる。
今は爆弾が降ってくる戦争が起きなくても、無能な政治、倫理のない政治によって社会が急速に壊滅しうる。
取り返しがつかない事態になる前に、「暴走」「無法状態」を止めよう! 無関心、見て見ぬ振りは許されない。

一庶民として、それだけは主張しておきたい。

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