消費増税後の日本2019/12/24 19:19

この楽しみが奪われると社会はどうなるか?

750円だったラーメンが800円になると……

消費税が10%に上がってから3か月になるが、世の中はどうなっただろうか。
目に見えて変化があったのは個人経営の飲食店などだ。大型チェーン店などでは変化が分かりづらいかもしれないが、個人経営の店は軒並み廃業や客離れで劇的な変化を見せている。
先日入ったラーメン屋さんも、今までは750円だったラーメンが800円に、800円だったラーメンは850円になっていて、そのせいか、有名店なのにがらんとしていた。

この店のように、消費税8%のときに税込750円だったラーメンが消費税10%になって税込800円に値上げされたとする。
750円だったときの税抜き価格は750÷1.08=694円である。それに10%の税なら763円だから、客はなんだか便乗値上げされたような気になるかもしれない。
しかし、消費税が上がれば原価も上がっているのである。
今まで税抜き694円のラーメンの価格に200円の儲けが乗せてあったとすると、原価は494円である。
494円というのは材料費や光熱費などの消費税が含まれているはずだから、ここから税の8%を除くと457円。
この457円に今度は消費税10%がかかるので、原価は503円になる。
503円に今まで通り儲け分200円を乗せると703円になる。
703円に消費税10%を乗せると773円になる。まだ800円にはならない。
しかし、考えてみると、店主は自分が生活するために消費増税分今まで以上に稼がなければならないわけで、儲けが200円のままでは貧しくなる。今までの儲け200円に消費税8%分が含まれていると考えると、10%になったら204円乗せないと合わない。それをのせるとラーメンの売値は778円になる。
麺の小麦はほとんど輸入、ガス代の元になる石油や天然ガスもほぼ100%輸入。原材料費は下がる見込みはないどころか、これからもどんどん上がっていきそうだ。遠方からこだわりの材料を取り寄せている場合は送料の値上がりもこたえる。
そもそも一杯200円の儲けなら、50杯作って売ってようやく1万円の儲けである。コンスタントに1日50杯売っても1万円。ひと月25日営業して25万円。1年で300万円。毎日一生懸命スープやチャーシューの仕込みをして、50杯のラーメンを売り続けて1年でようやく300万円……。
……と考えると、750円が800円になっても仕方がない。

本当に怖いのは金銭感覚のリセット

一方で、今まで750円だったラーメンが800円になると、客も今までのように気軽には外食しなくなる。
なにせ、生活は増税分苦しくなるのだから、750円出していた昼食は逆に700円に下げないとやっていけない。
結果、ラーメン屋の客は減り、売り上げが落ちる⇒1杯あたりの儲け204円ではやっていけなくなる⇒店はつぶれる⇒客はお気に入りの店でラーメンを食べる楽しみを奪われる⇒店主も客も日頃のストレスが溜まり、生活はさらに苦しくなる⇒みんなが不幸になり、犯罪や自殺は増え、文化は衰退する。

……景気が悪いとき、国力が衰退しているときに増税すると、そういうことになる。

自分の財布から金を出してラーメンを食うことがない、毎日電車にも乗らず、運転手付きの公用車で移動しているような人たちは、8%が10%になったところで108円が110円になるだけのことではないかと思う。しかし、それはとんでもない間違いで、本当に怖ろしいのはその2%ではなく、庶民の金銭感覚がリセットされることなのだ。
750円でもきついな~と思っていたラーメンが800円になってしまった。800円でラーメンは無理だ……もう気軽には食えなくなったな、という「金銭感覚のリセット」。これが連鎖反応を起こし、世の中全体の経済活動が激変する。その怖ろしさを分からない人たちが「経済」を知ったかぶりで語っても虚しい。

いいようにされ放題の庶民の側にも問題がある。
東京五輪というお祭り騒ぎが終わった後の地獄を、まだみんな甘く見ているんじゃないだろうか。
これに大規模災害でも起きて追い打ちをかけられたら……。
どうにもならなくなってから騒いでも遅いのだ。
いずれにせよ、凄絶なサバイバル時代なのだよ、これからは。



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