COVID-19の状況は「二周目」に入っている2020/08/06 14:24

COVID-19を巡る情報や対策は、そろそろ一周して、新しい周回に入ってきたように思う。

そう感じていたところ、かなり腑に落ちる意見論文を読めた。
⇒こちら 「新型コロナの実態予測と今後に向けた提言」(高橋泰、武藤真祐、加藤雅之 社会保険旬報 2020.6.21)

PDFだし、長くて読む気が起きないという人のために、ものすごくザックリとまとめると……

●新型コロナはインフルエンザウイルスに比べて毒性が弱く、体内に入っても感染しない(自然免疫の段階で身体が打ち勝つ)ケースが多い。

●日本ではすでに30~45%の人が体内にSARS-CoV-2を取り込んだことがあると思われる。その後、感染はしなかった(細胞内にまで入り込まれなかった)ので抗体検査もマイナスに出る。

●東アジアの人たちは、何らかの要因で、この「ウイルスを取り込んでも感染しない」あるいは「自然免疫だけで打ち勝ったので無症状や軽い風邪症状くらいで済んで、その後、抗体も作られていない」割合が欧米人よりずっと多い。

●COVID-19で重症化する理由には、主に2つの説がある。

 1)今回のウイルスパンデミック以前にあったS型コロナウイルスの感染による抗体が、「抗体依存性免疫増強(ADE)」効果を引き起こし、ある時点で容態急変を起こす。
 2)SARS-CoV-2そのものの毒性によるものではなく、SARS-CoV-2に感染したプレボテラ細菌がサイトカインストームを引き起こす。

●そういうウイルスであるという前提でのシミュレーションを行うと、現状(欧米のような強力な対策をしなかった日本で極端に死者が少ないこと)が説明できる。

●もしインフルエンザ並みに強力なウイルス(暴露すると100%抗体が陽性反応を起こす)であれば、現時点で日本人のほとんど(1億人以上)はSARS-CoV-2を体内に入れていないということになってしまう。そうであれば、これからウイルス暴露が広がれば、今後500万人以上が重篤化し、300万人以上が死ぬ計算になってしまう。

●現状を見る限り、そうであるとは思えない。

●よって、一律に何かを禁止したりするのではなく、年代によってリスクが著しく違うことを考慮した対策が必要である。

●つまり、0~29歳は、学校の授業やスポーツなどは元に戻す。クラスター発生が確認されたら、インフルエンザ同様に学級閉鎖などの対応をする。

●30~59歳もリスクは低いので、普通に社会活動をして、感染が分かった場合は監察下での自宅療養。クラスター発生時は職場閉鎖などの対応。

●60~69歳は、現役世代であれば自宅勤務、リモートワークなどで、人との接触を減らすことを推奨。

●70歳以上の世代、特に80歳以上の高齢者の場合、新型コロナに暴露した場合の死亡リスクは、若年者の数百倍から数千倍になり、感染リスクが急速に高まる。よって新型コロナが流行しているときは、これまで行われてきた隔離的な環境を推奨する。 また普段から、コロナ感染予防を徹底しながら外出などを行うなどが求められる。

ここから先は、特に今後、政治・行政が取り組まなければならない重要な提言なので、ほぼ原文のまま拾うと……、
●患者動向を的確にモニタリングし、 また遺伝子解析を早急に行い、現在の新型コロナと同様のウイルス株の再来か、毒性や繁殖力が以前より強くなった「発症力」が高いウイルス株が現れたのか、あるいはより「重症化しやすい」ウイルス株なのかを早急に見極め、それぞれに応じた対策を行えるような体制を早急に整備する。

●現在と同程度のウイルスであると分かっている間は、軽度の患者の対処基準を現状より軽くする。例えば、肺炎が認められる、あるいは呼吸困難が見られる場合は病院へ。肺炎や呼吸困難が認められないが発熱や倦怠感などの症状が強い場合は宿泊所等への隔離。PCR陽性で無症状 ・ 軽症は自宅待機とするなど、季節性インフルエンザと同じ診療方針で行なえるように新型コロナの対処の基準を改定する。

●日本の現場で使用されている新型コロナ治療薬の薬効を評価できるデータを集める仕組みを早期に立ち上げることを提言する。 また、日本人が重症化しにくい原因の解明は、他国の研究からは期待できず、BCG説や腸内細菌影響説が正しい場合、欧米人の薬効データは日本では参考にならないので、国内で使われている薬の効果を示すデータを多施設から吸い上げ、薬効を評価できるビッグデータを収集する仕組みを至急作る。 また、種々の検査データを含めて国内研究を推進する。

……ということである。

ザックリまとめたので、細部のニュアンスや意図は多少変わっているかもしれない。正確にはぜひ原文を読んでほしい。

これを読んだ上での個人的、補完的感想としては、

PCR検査論争はそろそろやめにして、それよりも次にやるべきこと(上の提言の後半部分)に早急に着手すべき。
PCR検査というのは、初期段階で徹底してやっておくべきだった。それがあれば今よりずっとまともなデータが得られて、次の手を打つ対策を練る方法にも根拠が増えたからだ。
しかし、今はもう次の周回に入っている。
今から「無症状者にも徹底的に検査を」というような主張はすでに「周回遅れ」の感が否めない。その費用とマンパワーを、通常医療体制の維持と、重症患者早期発見・治療対策にあてるべきだろう。
COVID-19以外の病気や怪我に対する医療レベルが落ちていくことは絶対に避けなければならない。このままでは、今度の冬にインフルエンザで死ぬ人がCOVID-19で死ぬ人よりずっと多いことになるのではないか。
今までなら大事に至らずにすぐに治療や手術を受けられた人たちが、状態を悪化させ、死んでしまうケースも急増するだろう。それこそ本末転倒である。

さらには、メディアがワクチン待望を煽るのもやめてほしい。季節性インフルエンザと違い、新型コロナでの重症化はサイトカインストームが関係している。ある種の免疫が重症化を引き起こす可能性がある限り、このウイルスに安全・効果的なワクチンができるとは思えない。また、ワクチンや治療薬をめぐる製薬会社と各国政府の契約などは、過去に不透明かつ正当性に疑いのあるケースがいくつもあったことにも注意したい。
ワクチンよりも、個々の症状、病態変化をしっかり観察した上で、これならこれが効くはずだ……という、経験とデータに基づいて既存の医薬品や治療法を活用する道を探るほうがずっと効果的、合理的だろう。

で、最後はいつも通りの「叫び」になるが……、いくら正論や有効であろう提案を明示しても、理解力のない政治家や、保身と前例主義、上からの命令に従うだけの官僚などは動かないのだから、国民が「国の体制を変える覚悟」が必要だ。上が腐っている限り、現場でどれだけ優秀な人が頑張っても、効果が現れにくい。
まずは我々一人一人が、しっかり覚悟を決めて、できることをしていくしかない。

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