常総市の洪水被害 ソーラーパネル設置箇所をめぐる情報錯綜のまとめ2015/09/15 22:00

■常総市の洪水被害 ソーラーパネル設置箇所をめぐる情報錯綜のまとめ

時系列でまとめ

9月10日
  • 00.15 鬼怒川はん濫危険情報 川島水位観測所(筑西市)はん濫危険水位
  • 00.20 栃木県内全市町村に大雨特別警報
  • 04.02 常総市議・金子てるひさ氏がツイッターで発信
    【鬼怒川氾濫警戒!】若宮戸のソーラー発電開発者によって無堤防地域になっていた場所に到着すると50センチ下まで水が迫っています。途中車が水にはまり危うく乗り捨てるところだった。避難警報が発令されています!対象地区は至急避難してください!

  • 06.30 鬼怒川はん濫発生情報 常総市若宮戸地先(左岸)25.35k付近より越水(最初の越水地点)
 ※早朝時点ですでにソーラーパネル設置場所から越水。常総市はその対応に追われる。
  • 07.45 茨城県内のほとんどの市町村に大雨特別警報。常総市もこの時点で発表
  • 08.00 鬼怒川はん濫発生情報 筑西市船玉(左岸)44.1k付近、筑西市伊佐山(川島橋)(左岸)45.9k付近、常総市若宮戸(左岸)25.35k付近より越水
  • 10.30 三坂町の8つの自治区のうち2つに避難指示。しかしこの後決壊した上三坂地区など6地区には出さず この頃、最初に越水した箇所などから流れ込んだ水で、その後、テレビに映し出されて有名になった大型スーパー「アピタ」などのある広いエリアが浸水し、孤立
  • 12.50 この頃、上三坂地区で堤防が決壊。すでに上流側から越水してきた水も一緒になって浸水域を広げる
 ※テレビでいち早く映し出された決壊場所。すでに上流側から越水してきた水も一緒になって浸水域を広げていった。
  • 13.20 鬼怒川はん濫発生情報 鬼怒川では、常総市新石下地先(左岸)21k付近より氾濫
  • 14.55 決壊場所の上三坂地区を含む鬼怒川東部地区に避難指示
  ※決壊してから避難指示を出していた。しかも決壊した川の反対側に避難しろと指示していたことで、市の対応の遅れと不適切さに非難が集まる。


(ソース:TBS News i、ツイッター、JCASTニュース など多数)

以前から危険性が指摘されていた


2014年3月下旬 若宮戸地区の鬼怒川沿いにソーラーパネル設置のため横150メートル、高さ2メートルにわたって自然堤防を削った。これでは安全に暮らせないと住民が市に通報、相談。

この地区は人工の堤防がない「無堤防」地帯だったが、もともと小高い山があり、自然の堤防となっていた。土地開発されて徐々に平地にされたが、2014年3月まではまだ自然堤防と呼べるぎりぎりの高さがあった。

2014年5月の常総市定例市議会で、風野芳之議員が鬼怒川沿いの太陽光発電事業について質問。
それへの答弁要旨を抜粋すると、
都市建設部長 「鬼怒川左岸の若宮戸地区は堤防が築かれていない無堤部が約1キロメートルあるが、通称十一面山の丘陵部が自然の堤防の役目を果たしていた。今年3月下旬に住民から丘陵部の一部が掘削されているとの通報があり、現地を確認し、鬼怒川を管理している国土交通省関東地方整備局下館河川事務所へ報告した。当該地区は民有地で、民間事業者の太陽光発電事業により丘陵部が延長約150メートル、高さ2メートル程度掘削されていた。出水対策として、下館河川事務所で検討してもらい、太陽光発電事業者の土地を借りて丘陵が崩された付近に掘削前と同程度の高さまで大型土のうを設置することとし、現在常総市とともに交渉を進めている」

道路課長  「ソーラーパネルは、法令上は建築物ではないので、開発申請の類の届け出は市には出ていない。そのため、市でも把握していなかった」

(ソース: 常総市議事録、J-CAST、朝日新聞、報道ステーション など多数)

  ※常総市はこの場所がいちばん危険だと知っていたために、実際にここを起点として越水したことで相当動揺したのではないか? 上三坂地区などに避難指示が遅れたことについても、最初の越水の対応に追われてしまったため、と説明している。(テレビのインタビュー画面など)
  

「ソーラーパネル設置が原因はデマ」「いや、デマではない」の応酬



テレビで最初に大々的に報じられた堤防決壊現場がソーラーパネルで自然堤防を削った若宮戸地区から4~5km南だったことから「場所が全然違う」「これはデマ」といったコメントがネット上にあふれる。

当初、「越水」と「決壊」の言葉の選択を誤っていた書き込みはあったが、堤防決壊の前にそれよりも北側の広いエリアですでに午前中に浸水、孤立していたことは事実。(「アピタ」の周辺など)

早川由起夫氏が作成した今回の浸水被害状況マップは⇒こちら

ソーラーパネル設置場所はそもそも他より低かったので、「決壊」する前に「越水」し、住民は浸水被害を受けていた。このソーラーパネル設置場所からの越水が下流側での決壊に結びついたかどうか(「誘い水」的に働いたかどうか)を検証することは重要だが、たとえ直接結びつかないという結論になったとしても、「まっ先に水が越えてきた」場所であり、それによって多くの建物が浸水し、人が孤立した現実は揺るぎようがない。

同様の危険性が全国で急速に増加

ウィンドタービン(大型発電風車)やメガソーラー施設が、国の「再生可能エネルギー」推進政策(そこからの電力の高額買い取り)によって、新しい投資話、金儲け目当てで急速に建設されている。
山林の多いこれらの施設は山や林を削って建設されることが多く、全国で地形が変えられ、生態系が破壊され、さらには今回のような自然災害を引き起こす原因を作っている。

<太陽光発電>業者、無許可で危険斜面掘削 和歌山の山林
 土砂崩れの恐れがあるとして「土砂災害警戒区域」に指定されている和歌山県紀美野町の山林で、大阪市の太陽光発電事業者が売電用に太陽光パネルの設置工事をした際、無許可で斜面を削るなどしていたことが、同県などへの取材で分かった。県は業者に対し文書指導や是正勧告を繰り返しているが、斜面補強などの対策は取られていない。自然エネルギーの利用促進が災害リスクを高める事態になり、県は設備の撤去命令なども検討している。
(略)
業者は毎日新聞の取材に「危険のある区域とは知っていたが、開発に制限があるという認識がなかった。斜面の掘削は、任せていた工事業者が勝手に削ってしまった。善処するつもりだが、めどは立っていない」と話した。
(毎日新聞 2015/09/06 稲生陽)


豪雨に見舞われた仙台市太白区羽黒台で11日午後、住宅地の斜面に設置してあったソーラーパネルが道路上に崩れ落ちた。
(2015/09/11 共同通信社)


太陽光発電や風力発電が日本の国土、電力事業システムの中でどれだけ有効かという検証がされていないまま、無茶な補助金をつけて優遇、推進されていること自体が間違っているというのは以前から指摘してきたことだが、それ以前の問題として、「ソーラーパネルは建築物ではないので設置に特別な許可はいらない」などという法の未整備を早急に改めなければならない。
除染事業もそうだが、合理性を追求しないままに巨額の税金や公共料金を注ぎ込み、無理に進めた結果、国土が破壊され、住民が苦しむような政策が多すぎる。

利権どろどろの悪代官的政治と、勉強不足による正義感ぶったおっちょこちょい政治、性格は違っても、理不尽で不幸な結果をもたらすことは同じだ。




コメント

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://gabasaku.asablo.jp/blog/2015/09/15/7794001/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。