民主主義の構造的危機……という話 ― 2011/04/08 17:30
先日、『そうだったのか! 池上彰の学べるニュース』(テレビ朝日系)を見ていました。
原発に代わる代替エネルギー、新エネルギーの話をするというので、私は「ああ、またか」と暗い気持ちになったのですが、池上さんはいわゆる「再生可能エネルギー」「自然エネルギー」「新エネルギー」と呼ばれ、今さかんに持ち上げられているものがいかに脆弱で非効率な発電方法かということをまず説明していました。中でも、風力発電についてはっきりと「低周波による健康被害が問題になってきています」と解説し、「有望視されている次世代エネルギー」として、ガスハイドレートやオイルシェールを紹介したところに、他番組との違い、地上波でもようやく正直な情報を出そうとする動きが出てきたことを感じました。
一方、メディアがきちんとした情報を出そうとしないこと、いつまで経っても東電に牛耳られたような報道しかできていないことについては、ものすごく深く暗い裏があることも見えてきました。
このところ、CSの朝日ニュースターをよく見ています。BSチューナー内蔵のテレビや録画機を持っているかたなら、スカパー!e2の無料試聴期間が2週間あり、ネットなどから申し込んだ数時間後から見られますので、ぜひチェックしてください。
いくつかYouTubeの動画を貼り付けておきます。
↑敢えて6分割の2つめを貼り込んであります。時間に余裕のある方は1/6からご覧ください
↑これを最後に上杉隆氏は活動を半ば休止宣言して番組を降りました
さらに過去に遡ると、こんな番組をやっていたこともありました↓
テレビに出て福島第一原発「人災」の解説をしている人たちの様子が最近になって変わってきたことも、ネット上で話題になっています。
言論統制がひどくなってきているという情報源のまとめが⇒ここにあります。そこのトップに書いてあるまとめが⇒これ。
意外だったのは、通称「赤眼鏡」で一躍有名になった澤田哲生東工大助教が、去年9月に「原子力政策円卓会議2010」のメンバーとして、商業原子力発電の段階的縮小も視野に入れた、原子力政策の大幅見直しを提言していたことです。
主な内容は、
1)商業原発の段階的縮小を含む複数の政策選択肢の検討をせよ
2)核燃料サイクルについての議論が不十分である
3)原子力委員会の頭越しに政策決定が行われていることが問題
4)原子力事業自体が停滞している中での政策見直しが必要である
……といったことだったようですが、皮肉にも、その半年後に、恐れていた最悪の事態が、いともあっさりと起きてしまったわけです。
(実際の提言書は⇒こちら)
ちなみに、この「円卓会議」の世話人を務めた吉岡斉・九州大学副学長が、元原子力資料情報室代表・高木仁三郎氏(故人)のことを語っているインタビュー記事も、非常に興味深い内容です。
このインタビューは2003年1月に行われていて、「市民科学」、市民が科学や政治にどういう形で参加していくかというテーマだと思いますが、それに近い話題として、三重県の歯科医師・武田恵世さんが書かれた著書『風力発電の不都合な真実 風力発電は本当に環境に優しいのか?』(アットワークス刊)をご紹介します。
武田さんは歯学博士で、大阪大学、天理病院を経て現在は伊賀市で開業。中学生時代から野鳥観察などを通じて自然環境の調査活動を続けており、日本生態学会、日本鳥学会に所属、環境省の希少動植物種保存推進員もつとめているかたです。
多くの日本人同様、彼も当初は「風力発電は、石油などの化石燃料を使わないので排気ガスを出さず、CO2を排出しない環境に優しい自然エネルギーだ」と信じ、大きな期待を抱き、出資しようと思っていたひとりでした。しかし、目の前で展開される事業のあまりの杜撰さ、でたらめぶりに疑問を抱き、ひとつひとつ「本当のところはどうなっているのか」と調べていきます。
そうして11年かけて調査し、検討した結果「現状では風力発電は決して推進してはならない」という結論に達し、本書を書くまでに至った、ということがまえがきに書かれています。
新エネルギーの話題では最近必ず出てくる、スマートグリッド、NAS電池、揚水発電所との併用の話も紹介しています。ヨーロッパや中国での風力発電の現状にも触れています。おそらく、多くのかたがたが想像している内容とは違うことが書かれています。
例えば、こんな一節があります。
//現在、日本では風力発電で発電した電気は、開閉器、変圧器などを介して電力会社の電力系統に直接入れられています。
日本全国の電力会社は、強い風が吹いて風力発電所が稼働すると、火力発電所の出力をその分落とすという運用はしたことがありません。
また、火力発電所が廃止されたこともありません。電力系統に大量の電気が急に入ったり、入らなくなったりすると電力系統全体が不安定になり、停電することもあるのですが、まだ風力発電所からの電気は系統全体の1~2%以下で誤算の範囲なので不安定にはならないので何もしていません。
風力発電所が結構増えた北海道電力、東北電力では、風力発電所の発電量が増えると、既存の火力発電所の出力は落とさずに、風力発電所からの送電を止めています(接続制限)。なぜかというと、風は一定の強さで吹き続けるものではないので、それに合わせて火力発電所などの出力を調整するのは難しいからです。
つまり、現状では、風力発電所ができたことで、火力発電所の出力も、数も減らしてはいないので、化石燃料の消費量をまったく減らしてはいないのです。//(37ページ)
このことは、no-windfarm.netでもさんざん書いてきたことですが、未だにきちんと裏をとらずに感情的な反論をしてくる人たちが後を絶ちません。反論には正確なデータが必要です。私もぜひ見たいので、みなさんの力で、事業者や政府にしっかりしたデータを出させてください。お願いします。
さて、いちばん大切なことがあとがきに書いてあります。
以下、「おわりに」の一部を抜粋します。
----------------------------------------------------
この問題で注意したいのは、最初は悪意を持って風力発電を進めた人はおそらくいなかったであろうということです。化石燃料を使わない自然エネルギーとして誰もが期待したものだったのです。
それがなぜこれほどの惨状を招いているのか? 問題点がわかった時点で、素早く適切な対応をしなかったからだと言えましょう。
そして、手厚い、ノーチェックの補助金政策、優遇政策がなされるとともに、それだけを目当てに成り立つ産業構造ができあがってしまいました。産業として補助金なしで成り立つように育成するための補助金であるはずが、補助金がないと成り立たない産業構造を造ってしまう従来の失敗がまたしても繰り返されました。
特別会計によるノーチェックの補助金制度は、全廃するべきです。
また、この風力発電の問題は、住民合意のあり方、環境影響評価のあり方、補助金政策や優遇政策のあり方など、国の民主主義や政策の問題点の縮図でもあります。
(略)
今度こそ、風力発電の問題だけにとどまらず、民主主義や政策の根本を改めないと、同じような問題が今後次々に起こってくるでしょう。この問題をきっかけに、今度こそなんとか改めていきましょう。
----------------------------------------------------
これを読んで、あれっ? と思った人は多いはず。
そう、今、福島第一原発で起きていることに、そっくりそのままあてはまるのです。
----------------------------------------------------
この問題で注意したいのは、最初は悪意を持って原子力発電を進めた人はおそらくいなかったであろうということです。化石燃料を使わない未来のエネルギー産業として誰もが期待したものだったのです。
それがなぜこれほどの惨状を招いているのか? 問題点がわかった時点で、素早く適切な対応をしなかったからだと言えましょう。
そして、国策として強引に進められ、数々の優遇政策がなされるとともに、それだけを目当てに成り立つ「原子力村」という官産学複合体構造ができあがってしまいました。
原子力発電の問題は、住民合意のあり方、環境影響評価のあり方、補助金政策や優遇政策のあり方など、国の民主主義や政策の問題点の縮図でもあります。
今度こそ、原発の問題だけにとどまらず、民主主義や政策の根本を改めないと、同じような問題が今後次々に起こってくるでしょう。この問題をきっかけに、今度こそなんとか改めていきましょう。
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たったひとつだけでもいい。例えば、日本の商用風力発電施設の発電実績データをひとつでもいいから提示し、その分、火力発電が燃料をセーブできていることを示してほしいのです。
プロのジャーナリストでも多分できません。なぜなら、どの風力発電所も発電実績データを公表しないからです。
こうならいいな、という願望のもと、「電力村」(電力会社や国)がお金をかけてPRしてきたことだけを信じていたら、今福島第一原発で起きている悲劇と同じことを繰り返すことになってしまいます。
今の日本には、そんなことをしている余裕はありません。
本当に、今度こそなんとかこの腐った連鎖を断ちきり、改めないと、この国に未来はないのです。
原発に代わる代替エネルギー、新エネルギーの話をするというので、私は「ああ、またか」と暗い気持ちになったのですが、池上さんはいわゆる「再生可能エネルギー」「自然エネルギー」「新エネルギー」と呼ばれ、今さかんに持ち上げられているものがいかに脆弱で非効率な発電方法かということをまず説明していました。中でも、風力発電についてはっきりと「低周波による健康被害が問題になってきています」と解説し、「有望視されている次世代エネルギー」として、ガスハイドレートやオイルシェールを紹介したところに、他番組との違い、地上波でもようやく正直な情報を出そうとする動きが出てきたことを感じました。
一方、メディアがきちんとした情報を出そうとしないこと、いつまで経っても東電に牛耳られたような報道しかできていないことについては、ものすごく深く暗い裏があることも見えてきました。
このところ、CSの朝日ニュースターをよく見ています。BSチューナー内蔵のテレビや録画機を持っているかたなら、スカパー!e2の無料試聴期間が2週間あり、ネットなどから申し込んだ数時間後から見られますので、ぜひチェックしてください。
いくつかYouTubeの動画を貼り付けておきます。
↑敢えて6分割の2つめを貼り込んであります。時間に余裕のある方は1/6からご覧ください
↑これを最後に上杉隆氏は活動を半ば休止宣言して番組を降りました
さらに過去に遡ると、こんな番組をやっていたこともありました↓
テレビに出て福島第一原発「人災」の解説をしている人たちの様子が最近になって変わってきたことも、ネット上で話題になっています。
言論統制がひどくなってきているという情報源のまとめが⇒ここにあります。そこのトップに書いてあるまとめが⇒これ。
意外だったのは、通称「赤眼鏡」で一躍有名になった澤田哲生東工大助教が、去年9月に「原子力政策円卓会議2010」のメンバーとして、商業原子力発電の段階的縮小も視野に入れた、原子力政策の大幅見直しを提言していたことです。
主な内容は、
1)商業原発の段階的縮小を含む複数の政策選択肢の検討をせよ
2)核燃料サイクルについての議論が不十分である
3)原子力委員会の頭越しに政策決定が行われていることが問題
4)原子力事業自体が停滞している中での政策見直しが必要である
……といったことだったようですが、皮肉にも、その半年後に、恐れていた最悪の事態が、いともあっさりと起きてしまったわけです。
(実際の提言書は⇒こちら)
ちなみに、この「円卓会議」の世話人を務めた吉岡斉・九州大学副学長が、元原子力資料情報室代表・高木仁三郎氏(故人)のことを語っているインタビュー記事も、非常に興味深い内容です。
このインタビューは2003年1月に行われていて、「市民科学」、市民が科学や政治にどういう形で参加していくかというテーマだと思いますが、それに近い話題として、三重県の歯科医師・武田恵世さんが書かれた著書『風力発電の不都合な真実 風力発電は本当に環境に優しいのか?』(アットワークス刊)をご紹介します。
武田さんは歯学博士で、大阪大学、天理病院を経て現在は伊賀市で開業。中学生時代から野鳥観察などを通じて自然環境の調査活動を続けており、日本生態学会、日本鳥学会に所属、環境省の希少動植物種保存推進員もつとめているかたです。
多くの日本人同様、彼も当初は「風力発電は、石油などの化石燃料を使わないので排気ガスを出さず、CO2を排出しない環境に優しい自然エネルギーだ」と信じ、大きな期待を抱き、出資しようと思っていたひとりでした。しかし、目の前で展開される事業のあまりの杜撰さ、でたらめぶりに疑問を抱き、ひとつひとつ「本当のところはどうなっているのか」と調べていきます。
そうして11年かけて調査し、検討した結果「現状では風力発電は決して推進してはならない」という結論に達し、本書を書くまでに至った、ということがまえがきに書かれています。
新エネルギーの話題では最近必ず出てくる、スマートグリッド、NAS電池、揚水発電所との併用の話も紹介しています。ヨーロッパや中国での風力発電の現状にも触れています。おそらく、多くのかたがたが想像している内容とは違うことが書かれています。
例えば、こんな一節があります。
//現在、日本では風力発電で発電した電気は、開閉器、変圧器などを介して電力会社の電力系統に直接入れられています。
日本全国の電力会社は、強い風が吹いて風力発電所が稼働すると、火力発電所の出力をその分落とすという運用はしたことがありません。
また、火力発電所が廃止されたこともありません。電力系統に大量の電気が急に入ったり、入らなくなったりすると電力系統全体が不安定になり、停電することもあるのですが、まだ風力発電所からの電気は系統全体の1~2%以下で誤算の範囲なので不安定にはならないので何もしていません。
風力発電所が結構増えた北海道電力、東北電力では、風力発電所の発電量が増えると、既存の火力発電所の出力は落とさずに、風力発電所からの送電を止めています(接続制限)。なぜかというと、風は一定の強さで吹き続けるものではないので、それに合わせて火力発電所などの出力を調整するのは難しいからです。
つまり、現状では、風力発電所ができたことで、火力発電所の出力も、数も減らしてはいないので、化石燃料の消費量をまったく減らしてはいないのです。//(37ページ)
このことは、no-windfarm.netでもさんざん書いてきたことですが、未だにきちんと裏をとらずに感情的な反論をしてくる人たちが後を絶ちません。反論には正確なデータが必要です。私もぜひ見たいので、みなさんの力で、事業者や政府にしっかりしたデータを出させてください。お願いします。
さて、いちばん大切なことがあとがきに書いてあります。
以下、「おわりに」の一部を抜粋します。
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この問題で注意したいのは、最初は悪意を持って風力発電を進めた人はおそらくいなかったであろうということです。化石燃料を使わない自然エネルギーとして誰もが期待したものだったのです。
それがなぜこれほどの惨状を招いているのか? 問題点がわかった時点で、素早く適切な対応をしなかったからだと言えましょう。
そして、手厚い、ノーチェックの補助金政策、優遇政策がなされるとともに、それだけを目当てに成り立つ産業構造ができあがってしまいました。産業として補助金なしで成り立つように育成するための補助金であるはずが、補助金がないと成り立たない産業構造を造ってしまう従来の失敗がまたしても繰り返されました。
特別会計によるノーチェックの補助金制度は、全廃するべきです。
また、この風力発電の問題は、住民合意のあり方、環境影響評価のあり方、補助金政策や優遇政策のあり方など、国の民主主義や政策の問題点の縮図でもあります。
(略)
今度こそ、風力発電の問題だけにとどまらず、民主主義や政策の根本を改めないと、同じような問題が今後次々に起こってくるでしょう。この問題をきっかけに、今度こそなんとか改めていきましょう。
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これを読んで、あれっ? と思った人は多いはず。
そう、今、福島第一原発で起きていることに、そっくりそのままあてはまるのです。
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この問題で注意したいのは、最初は悪意を持って原子力発電を進めた人はおそらくいなかったであろうということです。化石燃料を使わない未来のエネルギー産業として誰もが期待したものだったのです。
それがなぜこれほどの惨状を招いているのか? 問題点がわかった時点で、素早く適切な対応をしなかったからだと言えましょう。
そして、国策として強引に進められ、数々の優遇政策がなされるとともに、それだけを目当てに成り立つ「原子力村」という官産学複合体構造ができあがってしまいました。
原子力発電の問題は、住民合意のあり方、環境影響評価のあり方、補助金政策や優遇政策のあり方など、国の民主主義や政策の問題点の縮図でもあります。
今度こそ、原発の問題だけにとどまらず、民主主義や政策の根本を改めないと、同じような問題が今後次々に起こってくるでしょう。この問題をきっかけに、今度こそなんとか改めていきましょう。
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たったひとつだけでもいい。例えば、日本の商用風力発電施設の発電実績データをひとつでもいいから提示し、その分、火力発電が燃料をセーブできていることを示してほしいのです。
プロのジャーナリストでも多分できません。なぜなら、どの風力発電所も発電実績データを公表しないからです。
こうならいいな、という願望のもと、「電力村」(電力会社や国)がお金をかけてPRしてきたことだけを信じていたら、今福島第一原発で起きている悲劇と同じことを繰り返すことになってしまいます。
今の日本には、そんなことをしている余裕はありません。
本当に、今度こそなんとかこの腐った連鎖を断ちきり、改めないと、この国に未来はないのです。
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風力発電の不都合な真実 風力発電は本当に環境に優しいのか? 武田恵世・著三重県で長年自然環境調査活動を続けてきた著者は、当初は広くPRされているように「風力発電は化石燃料を使わない、CO2を排出しない「環境に優しいエネルギー」だと信じていたが、目の前で展開される巨大風力発電施設建設のでたらめぶりに驚き、調査を開始。11年を経て、この事業が以下に欺瞞に満ちた詐欺的なビジネスであるかを知って戦慄する。風力発電はCO2排出を増加させ、健康被害を引き起こし、補助金制作に頼り切る「使いものにならない」事業だった。原発震災に揺れている今こそ全国民が「正しいエネルギー政策」を考える第一歩として必読の書。 アットワークス刊、2000円+税 ![]() |
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